説明

有機バナデートの製造方法

【課題】 有機バナデートを製造する際に、有害な副生物が発生せず有機バナデートを製造する方法を提供すること。
【解決手段】反応物質を反応させ、副生する水を含む低沸点化合物を留去することにより、少なくとも一つのバナジウム−酸素−炭素結合を有する有機バナデートの製造方法において、VO、V、VO及びVから選ばれる少なくとも1種の酸化バナジウムと特定のヒドロキシ化合物とを反応させる。ヒドロキシ化合物は一般式ArOH(Arは炭素風6〜20の芳香族基)で表される芳香族ヒドロキシ化合物であることが好ましく、副生する水を含む低沸点化合物は蒸留法によって除去することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機バナデートの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、酸化バナジウムとヒドロキシ化合物とを反応させて、副生する水を含む低沸点化合物を留去することにより、有機バナデートを有毒な副生成物なしに製造することを可能にする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機バナデートは一般的にはオレフィン重合用触媒やエステル交換用触媒として用いられている。有機バナデートの製造方法としては、塩化バナジウムをアンモニアの存在下で過剰量のヒドロキシ化合物と反応させて有機バナデートと塩化アンモニウムを生成させることにより製造する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの製造方法は有害な塩化アンモニウムが副生するという問題があり、工業的な製造には多大な困難を伴っていた。また、有機バナデートを濾過により塩化アンモニウムから分離する際に、濾過フィルターの塩化アンモニウムによる目詰まりや濾過工程を有機バナデートの加水分解を避けるために密閉系において行う必要があるなど、多くの問題点がある。
【0004】
これを改良するためにいくつかの提案がなされているが、その大部分は有機バナデートを塩化アンモニウムから濾過により分離する工程をジメチルスルホキシドなどを添加することにより簡略化する方法を提供するものであり〔特許文献1〕、塩化アンモニウムなどの有毒な副生物を回避する方法は知られていない。
【0005】
また、塩化バナジウムとヒドロキシ化合物をアンモニアを用いずに反応させて塩化アンモニウムを生成させない方法が提案されている〔非特許文献1〕。しかし、塩化バナジウムとヒドロキシ化合物を反応させる場合、有害な塩化水素が発生するという問題があり、有毒な副生成物なしに有機バナデートを製造する方法は未開示である。
【0006】
【特許文献1】特開昭52−57126号公報
【非特許文献1】Indian J.Chem.、Vol.28、February(1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、酸化バナジウムとヒドロキシ化合物とを反応させて、副生する水を含む低沸点化合物を留去することにより有機バナデートを製造する際に、上記した欠点のない、有害な副生物が発生せずに有機バナデートを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、有機バナデートを製造するに際して、酸化バナジウム、ヒドロキシ化合物からなる反応物質を反応させ、副生する水及び低沸点化合物を反応系外に除去することによって、有害な副生成物無しに有機バナデートが製造可能であることを見いだし本発明を完成させた。本発明により、毒性の非常に低い水を副生成物とする、比較的安全で、工業的に有用な製造方法により有機バナデートを製造することができる。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0009】
[1] 少なくとも一つのバナジウム−酸素−炭素結合を有する有機バナデートの製造方法において、下記一般式(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1種の酸化バナジウムと下記一般式(5)から選ばれる少なくとも1種のヒドロキシ化合物とを反応させることを特徴とする有機バナデートの製造方法。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Rは、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数4〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し、xはアルコールの価数を表し1〜3の整数を表す。)
【0013】
[2] 副生する水を含む低沸点化合物を除去することを特徴とする[1]に記載の有機バナデートの製造方法。
[3] ヒドロキシ化合物が水よりも沸点が高いことを特徴とする[1]または[2]に記載の有機バナデートの製造方法。
[4] 副生する水を含む低沸点化合物の除去を、蒸留法によって行うことを特徴とする[2]に記載の有機バナデートの製造方法。
[5] 副生する水を含む低沸点化合物の除去を、水と共沸混合物を生成する成分を添加し、水を含む共沸混合物を含む低沸点化合物を蒸留することによって行うことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の有機バナデートの製造方法
[6] ヒドロキシ化合物が下記一般式(6)で表される芳香族ヒドロキシ化合物であることを特徴とする[1]または[2]に記載の有機バナデートの製造方法。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Ar1は炭素数6〜20の芳香族基を表す。)
[7] 芳香族ヒドロキシ化合物がフェノールであることを特徴とする[6]に記載の有機バナデートの製造方法。
[8] ヒドロキシ化合物の使用量が、酸化バナジウム中に含まれるバナジウム原子のモル量に対しての1〜500倍の範囲であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の有機バナデートの製造方法。
[9] 反応温度が45〜300℃の範囲であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の有機バナデートの製造方法。
[10] 酸化バナジウムがVであることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載の有機バナデートの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、酸化バナジウムとヒドロキシ化合物を反応させて、副生する水を含む低沸点化合物を留去することにより有機バナデートを製造する際に、有害な副生物が発生せずに有機バナデートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について、詳細に説明する。本発明で反応原料として用いられる酸化バナジウムは下記一般式(1)〜(4)で表されるものである。
【0018】
【化1】

【0019】
式中バナジウムの価数はII〜Vであるが、特に制限はなく、また、複数の価数の混合物でもよい。一般的に市販されている酸化バナジウム中のバナジウムの価数を酸化剤や還元剤などで調整したり、一般的な酸化還元法によるバナジウムの価数調整を行ってもよい。
【0020】
酸化剤は、一般的に用いられているものでよく、空気、分子状酸素、オゾン、過酸化水素、酸化銀;過酢酸、過安息香酸、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;亜硝酸、硝酸、塩素酸、次亜塩素酸等のオキソ酸およびその塩類などが挙げられる。好ましくは、空気、分子状酸素、オゾン、過酸化水素、亜硝酸、硝酸が用いられ、さらに好ましくは空気、分子状酸素が用いられる。
【0021】
還元剤は、一般的に用いられているものでよく、ヒドラジン、水素、硫化水素、炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄、シュウ酸、亜硫酸ナトリウム、ヨウ素などが挙げられる。好ましくは水素、ヨウ素、シュウ酸が用いられ、さらに好ましくはシュウ酸が用いられる。
【0022】
酸化還元法によるバナジウムの価数調整は一般的に用いられる手法でよく、例えば酸化バナジウムを還元したいときは、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、水素などの不活性ガス雰囲気中で酸化バナジウムを加熱処理することにより価数を調整する方法があり、酸化バナジウムを酸化したい場合には空気、分子状酸素などの酸化性ガス雰囲気中で酸化バナジウムを加熱処理することにより価数を調整する方法がある。いずれの方法においても加熱処理は価数の変化を迅速に進めるためのものであり、必須なものではない。
【0023】
本発明において反応原料として用いられるヒドロキシ化合物は下記一般式(5)で表されるものである。
【0024】
【化2】

【0025】
式中Rは、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数4〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し、xはアルコールの価数を表し1〜3の整数を表す。
【0026】
このようなRを有するヒドロキシ化合物の例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
また、芳香族ヒドロキシ化合物は下記一般式(6)で表されるものである。
【0027】
【化3】

【0028】
式中、一般式(6)のAr1は炭素数6〜20の芳香族基を表す。
このようなアリール基の例としては、例えば、フェニル、トリル(各異性体)、キシリル(各異性体)、トリメチルフェニル(各異性体)、テトラメチルフェニル(各異性体)、エチルフェニル(各異性体)、プロピルフェニル(各異性体)、ブチルフェニル(各異性体)、ジエチルフェニル(各異性体)、メチルエチルフェニル(各異性体)、ペンチルフェニル(各異性体)、ヘキシルフェニル(各異性体)、シクロヘキシルフェニル(各異性体)等の、フェニル基及び各種アルキルフェニル基類; メトキシフェニル(各異性体)、エトキシフェニル(各異性体)、ブトキシフェニル(各異性体)等の各種アルコキシフェニル基類;フルオロフェニル(各異性体)、クロロフェニル(各異性体)、ブロモフェニル(各異性体)、クロロ(メチル)フェニル(各異性体)、ジクロロフェニル(各異性体)等の各種ハロゲン化フェニル基類;下記一般式(7)で示される各種置換フェニル基類;
【0029】
【化4】

【0030】
(ただし、Aは単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−等の2価の基、下記(8)に示されるアルキレン基もしくは置換アルキレン基、または下記(9)に示されるシクロアルキレン基を表し、また、芳香環は低級アルキル基、低級アルコキシ基、エス テル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン、シアノ基等の置換基によって置換されていてもよい。)
【0031】
【化5】

【0032】
(ここでR、R、R、Rの各々は独立に水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であって、場合により、ハロゲン原子、アルコキシ基で置換されていてもよい。)
【0033】
【化6】

【0034】
(ここでkは3〜11の整数であって、水素原子は低級アルキル基、アリール基ハロゲン原子等で置換されていてもよい)
【0035】
ナフチル(各異性体)、メチルナフチル(各異性体)、ジメチルナフチル(各異性体)、クロロナフチル(各異性体)、メトキシナフチル(各異性体)、シアノナフチル(各異性体)等のナフチル基及び各種置換ナフチル基類;ピリジン(各異性体)、クマリル(各異性体)、キノリル(各異性体)、メチルピリジル(各異性体)、クロルピリジル(各異性体)、メチルクマリル(各異性体)、メチルキノリル(各異性体)等の置換及び無置換 の各種ヘテロ芳香族基類等が挙げられる。好ましくは、フェノール、サリチル酸、サリチル酸フェニル、ビスフェノールなどがあげられ、さらに好ましくは、フェノールである。
【0036】
本発明において製造される有機バナデートは少なくとも一つのバナジウム−酸素−炭素結合を有するものである。このようなバナジウム−酸素−炭素結合を有する有機バナデートの例としては、例えば、下記一般式(10)〜(16)で表されるものである。
【0037】
【化7】

【0038】
(式中、一般式(10)〜(16)のR〜のR10は、それぞれ直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数4〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表す。R〜R10はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0039】
このようなRを有する有機バナデートの例としては、例えば、アルキル基を持つものとしては、バナジウム(II)ジメトキシド、バナジウム(III)トリメトキシド、バナジウム(III)メトキシドオキシド、バナジウム(IV)テトラメトキシド、バナジウム(IV)ジメトキシドオキシド、バナジウム(V)トリメトキシドオキシド、バナジウム(V)ペンタメトキシドオキシド、バナジウム(II)ジエトキシド、バナジウム(III)トリエトキシド、バナジウム(III)エトキシドオキシド、バナジウム(IV)テトラエトキシド、バナジウム(IV)ジエトキシドオキシド、バナジウム(V)トリエトキシドオキシド、バナジウム(V)ペンタエトキシド、バナジウム(II)ジプロポキシド、バナジウム(III)トリプロポキシド、バナジウム(III)プロポキシドオキシド、バナジウム(IV)テトラプロポキシド、バナジウム(IV)ジプロポキシドオキシド、バナジウム(V)トリプロポキシドオキシド、バナジウム(V)ペンタエトキシド、バナジウム(II)ジブトキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリブトキシド(各異性体)、バナジウム(III)ブトキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラブトキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジブトキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリブトキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタブトキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジペントキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリペントキシド(各異性体)、バナジウム(III)ペントキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラペントキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジペントキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリペントキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタペントキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジヘキサオキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリヘキサオキシド(各異性体)、バナジウム(III)ヘキサオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラヘキサオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジヘキサオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリヘキサオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタヘキサオキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジヘプチルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリヘプチルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)ヘプチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラヘプチルオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジヘプチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリヘプチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタヘプチルオキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジオクチルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリオクチルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)オクチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラオクチルオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジオクチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリオクチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタオクチルオキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジノニルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリノニルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)ノニルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラノニルオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジノニルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリノニルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタノニルオキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジデシルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリデシルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)デシルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラデシルオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジデシルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリデシルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタデシルオキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジデシルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリデシルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)デシルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラデシルオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジデシルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリデシルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタデシルオキシド(各異性体)が挙げられる。
【0040】
シクロアルキル基を持つものとしては、例えば、バナジウム(II)ジシクロペントキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリシクロペントキシド(各異性体)、バナジウム(III)シクロペントキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラシクロペントキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジシクロペントキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリシクロペントキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタシクロペントキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジシクロヘキシルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリシクロヘキシルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)シクロヘキシルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラシクロヘキシルオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジシクロヘキシルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリシクロヘキシルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタシクロヘキシルオキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジシクロヘプチルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリシクロヘプチルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)シクロヘプチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラシクロヘプチルオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジシクロヘプチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリシクロヘプチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタシクロヘプチルオキシド(各異性体)、
【0041】
アルケニル基を持つものとしては、例えば、バナジウム(II)ジビニルオキシド、バナジウム(III)トリビニルオキシド、バナジウム(III)ビニルオキシドオキシド、バナジウム(IV)テトラビニルオキシド、バナジウム(IV)ジビニルオキシドオキシド、バナジウム(V)トリビニルオキシドオキシド、バナジウム(V)ペンタビニルオキシドオキシド、バナジウム(II)ジアリルオキシド、バナジウム(III)トリアリルオキシド、バナジウム(III)アリルオキシドオキシド、バナジウム(IV)テトラアリルオキシド、バナジウム(IV)ジアリルオキシドオキシド、バナジウム(V)トリアリルオキシドオキシド、バナジウム(V)ペンタアリルオキシドオキシドが挙げられる。
【0042】
アラルキル基を持つものとしてはバナジウム(II)ジベンゾキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリベンゾキシド(各異性体)、バナジウム(III)ベンゾキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラベンゾキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジベンゾキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリベンゾキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタベンゾキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジフェネチルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリフェネチルオキシド(各異性体)、バナジウム(III)フェネチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラフェネチルオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジフェネチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリフェネチルオキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタフェネチルオキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジフェニルプロポキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリフェニルプロポキシド(各異性体)、バナジウム(III)フェニルプロポキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラフェニルプロポキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジフェニルプロポキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリフェニルプロポキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタフェニルプロポキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジフェニルブトキシド(各異性体)、バナジウム(III)トリフェニルブトキシド(各異性体)、バナジウム(III)フェニルブトキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)フェニルブトキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジフェニルブトキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリフェニルブトキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタフェニルブトキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジ(メトキシベンジル)オキシド、バナジウム(III)トリ(メトキシベンジル)オキシド、バナジウム(III)(メトキシベンジル)オキシドオキシド、バナジウム(IV)(メトキシベンジル)オキシド、バナジウム(IV)ジ(メトキシベンジル)オキシドオキシド、バナジウム(V)トリ(メトキシベンジル)オキシドオキシド、バナジウム(V)(メトキシベンジル)オキシド、バナジウム(II)ジ(メトキシメチル)オキシド、バナジウム(III)トリ(メトキシメチル)オキシド、バナジウム(III)(メトキシメチル)オキシドオキシド、バナジウム(IV)(メトキシメチル)オキシド、バナジウム(IV)ジ(メトキシメチル)オキシドオキシド、バナジウム(V)トリ(メトキシメチル)オキシドオキシド、バナジウム(V)ペンタ(メトキシメチル)オキシド、バナジウム(II)ジ(メトキシエチル)オキシド、バナジウム(III)トリ(メトキシエチル)オキシド、バナジウム(III)(メトキシエチル)オキシドオキシド、バナジウム(IV)(メトキシエチル)オキシド、バナジウム(IV)ジ(メトキシエチル)オキシドオキシド、バナジウム(V)トリ(メトキシエチル)オキシドオキシド、バナジウム(V)(メトキシエチル)オキシド、バナジウム(II)ジ(シアノエチル)オキシド、バナジウム(III)トリ(シアノエチル)オキシド、バナジウム(III)(シアノエチル)オキシドオキシド、バナジウム(IV)(シアノエチル)オキシド、バナジウム(IV)ジ(シアノエチル)オキシドオキシド、バナジウム(V)トリ(シアノエチル)オキシドオキシド、バナジウム(V)ペンタ(シアノエチル)オキシドなどが挙げられる。
【0043】
また、アリール基を持つものとしては、例えば、バナジウム(II)ジフェノキシド、バナジウム(III)トリフェノキシド)、バナジウム(III)フェノキシドオキシド、バナジウム(IV)ジフェノキシド、バナジウム(IV)ジフェノキシドオキシド、バナジウム(V)トリフェノキシドオキシド、バナジウム(V)ペンタフェノキシド、バナジウム(II)ジ(メチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(メチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)メチルフェノキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラメチルフェノキシド(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(メチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(メチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(メチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(II)ジ(エチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(エチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)(エチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラ(エチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(エチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(エチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(エチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(II)ジ(プロピルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(プロピルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)(プロピルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラ(プロピルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(プロピルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(プロピルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(プロピルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(II)ジ(アリルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(アリルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)(アリルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラ(アリルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(アリルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(アリルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(アリルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(II)ジ(ブチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(ブチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)(ブチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラ(ブチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(ブチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(ブチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(ブチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(II)ジ(ペンチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(ペンチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)(ペンチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラ(ペンチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(ペンチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(ペンチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(ペンチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(II)ジ(ヘキシルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(ヘキシルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)(ヘキシルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラ(ヘキシルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(ヘキシルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(ヘキシルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(ヘキシルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジ(ヘプチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(ヘプチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)ヘプチルフェノキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラ(ヘプチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(ヘプチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(ヘプチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(ヘプチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(II)ジ(オクチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(オクチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)オクチルフェノキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラ(オクチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(オクチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(オクチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(オクチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、
バナジウム(II)ジノニル(エチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)トリ(オクチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(III)オクチルフェノキシドオキシド(各異性体)、バナジウム(IV)テトラ(オクチルフェノキシド)(各異性体)、バナジウム(IV)ジ(オクチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)トリ(オクチルフェノキシド)オキシド(各異性体)、バナジウム(V)ペンタ(オクチルフェノキシド)オキシド(各異性体)等が挙げられる。
これらの有機バナデートは単核で存在していても複合体のように多核で存在していてもよい。多核で存在する有機バナデートとしては、例えば、Vを2核持つものとしては下式(17)〜(37)で示すようなものが挙げられる。
【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
(式(17)〜(37)中、nはR−酸素−バナジウム結合を持つVの価数から1を引いた、0〜4の間の整数である。また、mはR−酸素−バナジウム結合を持つVの価数から2を引いた、0〜3の間の整数である。
【0049】
これらの有機バナデートの中で、本発明において好ましく製造されるのはヒドロキシ化合物が芳香族である芳香族バナデートであり、さらに好ましくは芳香族がフェノールであるフェニルバナデートであり、バナジウムが単核として存在している場合、バナジウム(II)ジフェノキシド、バナジウム(III)フェノキシドオキシド、バナジウム(III)トリフェノキシド、バナジウム(IV)テトラフェノキシド、バナジウム(IV)ジフェノキシドオキシド、バナジウム(V)ペンタフェノキシド、バナジウム(V)トリフェノキシドオキシドである。さらに好ましくは酸化バナジウムとしてVを用いて製造されるフェニルバナデートである。
【0050】
本発明で用いられる、水と共沸混合物を生成する成分には特に制限はなく、一般的に用いられる成分でよく、アクリルアルデヒド、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、アセチルアセトン、アニソール、アニリン、安息香酸エチル、エタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、オクタン、ギ酸、クロロベンゼン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸メチル、四塩化炭素、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ジデカン、トリメチルアミン、トルエン、ナフタレン、ニトロエタン、ピリジン、フェノール、1−ブタノール、2−ブタノール、フルフリルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ヘキサノール、ヘキサン、ヘキシルアミン、1−ヘプタノール、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ベンゼン、1−ペンタノール、2−ペンタノール、メタクリル酸メチル、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、酢酸メチルなどが挙げられる。好ましくはアニソール、安息香酸エチル、オクタン、クロロホルム、四塩化炭素、トルエン、ピリジン、ヘキサン、ベンゼンである。
【0051】
本発明で行われる反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく通常0.1〜50時間、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。
反応温度は、用いる反応原料の種類によって異なるが、原料であるヒドロキシ化合物の融点以上かつ反応速度向上の面から可能な限り高温で行うことが好ましいが、反応器の材質や耐圧能力を考慮する必要がある。それらを考慮した上で、通常40〜350℃、好ましくは45〜300℃、より好ましくは90〜230℃の範囲で行われる。
【0052】
反応圧力は、用いる反応原料の種類や反応温度などにより異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常0.1〜 2.0×107Paの範囲で行われる。副生成物である水を酸化バナジウムとヒドロキシ化合物が存在している液から抜出すことにより反応の促進が期待できるため、大気圧〜減圧の状態が好ましい場合が多い。
【0053】
本発明においては、必ずしも反応溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする、反応を完結させる等の目的で適当な不活性溶媒、例えば、エーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類等を反応溶媒として用いることができる。
【0054】
本発明において、反応器の形式に特に制限はなく、攪拌槽方式、多段攪拌槽方式等、公知の種々の方法が用いられる。これらの反応器はバッチ式、連続式のいずれでも使用できる。平衡を生成系側に効率的にずらすという点で、低沸点生成物を反応系から留去することが好ましい。
反応の有無、反応進行度、及び反応終了は反応により生成した水を定量することにより確認する。水の定量方法は特に制限はなく、カールフィッシャー法などの公知の方法が用いられる。
【0055】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。液中の酸性・アルカリ性はリトマス試験紙を用いて分析した。
【0056】
液中の有機成分濃度は、ガスクロマトグラフを用いて分析した。
(1)ガスクロマトグラフィー分析条件
カラム:DB−1(J&W Scientific)
液相:100%ジメチルポリシロキサン
長さ:30m
内径:0.25mm
フィルム厚さ:1μm
カラム温度:50℃(10℃/minで昇温)300℃
インジェクション温度:300℃
検出器温度:300℃
検出法:FID
(2)定量分析法
各標準物質の標準サンプルについて分析を実施し作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
【0057】
液中の塩素の定量分析はイオンクロマトグラフを用いて行った。
(1)酸素燃焼による前処理
装置: 三菱化学製 TOX−100
燃焼温度:800℃
分析対象を0.1g採取し、上記の装置による酸素燃焼を行った。
(2)イオンクロマトグラフ法による定量分析
装置: 日本ダイオネクス製 DX−300
検出法: 電気伝導度検出器
カラム: AG−4A+AS−4A
除去液: 12.5mmol/L HSO
溶離液: 10mmol/L Na
前処理から得た残渣物を水溶液に調製したのち、塩素の標準サンプルを用いて作成した検量線に基づいて、分析サンプル中の塩素の定量を行った。
【実施例】
【0058】
本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
(酸化バナジウムを原料とした有機バナデートの合成)
五酸化バナジウム(東京化成社製)6.42g(0.035mol)とフェノール(東京化成社製)112.86g(1.2mol)を300mlナスフラスコに入れ、攪拌機及び減圧するための装置、及び温度調節器を備えたオイルバスに浸漬した。オイルバスを約170℃に保った。約5分後にオイルバスの温度を190℃、該ナスフラスコ内を約73kPaまで減圧した。約3時間後に約10gの留去された混合液を回収した。約10分後に該混合液の色が深い赤色に変化した。約30分後に該圧力を約47kPaまで減圧し、生成する水を含む混合液を留去した。その後該圧力を約33kPaまで減圧し、引き続き生成する水を含む混合液を留去し、約2時間後に室温(約23℃)で固体の混合物が留去された。その後圧力を約0.7kPaまで減圧し、残留フェノールを留去した。残留フェノールを留去後、ナスフラスコをオイルバスから取り出し、放冷し、室温(約23℃)まで冷却した後に約9gの黒く着色したバナジウムトリフェノキシドオキシドを含む固体混合物を回収した。留去された液からは塩素が検出されなかった。また、回収されたバナジウムトリフェノキシドオキシドを含む固体混合物からも塩素が検出されなかった。
【0059】
[比較例1]
(塩化バナジウムを原料とした有機バナデートの合成)
バナジウムオキシトリクロライド(アルドリッチ社製)6.1g(0.035mol)とフェノール(東京化成社製)113.03g(1.2mol)を300mlナスフラスコに入れ、攪拌機及び減圧するための装置、留出ガスを吸収するための水を保持した装置、及び温度調節器を備えたオイルバスに浸漬した。オイルバスを約170℃に保った。約5分後にオイルバスの温度を190℃、該ナスフラスコ内を約73kPaに設定した。30分後に該圧力を約47kPaに設定し、生成する気体を含む混合液を留去した。該気体にアンモニア水を近づけると白煙が発生した。その後該圧力を約33kPaまで減圧し、引き続き生成する白い気体を含む混合液を留去し、約2時間後に室温(約23℃)で固体の混合物が留去された。その後圧力を約0.7kPaまで減圧し、残留フェノールを留去した。留出ガスを吸収するための水を保持した装置内の水をリトマス試験紙に浸透させたところリトマス試験紙は強酸性を示した。ナスフラスコをオイルバスから取り出し、放冷し、室温(約23℃)まで冷却した後に約4gの黒く着色したバナジウムトリフェノキシドオキシドを含む固体混合物を回収した。留去された液からは塩素が検出された。また、回収されたバナジウムトリフェノキシドオキシドを含む固体混合物からも塩素が検出された。
【0060】
[実施例2]
(有機バナデートを触媒とするエステル交換反応)
実施例1で得られた有機バナデートを両端をスェージロックで固定可能な内径6mm、長さ50mmのSUS製チューブに11mg(バナジウム分が全液量の約400ppmとなるような量)仕込み、さらにジブチルカーボネート0.65g(3.7ミリモル)、フェノール0.35g(3.7ミリモル)を仕込みスェージロックのキャップを締めて密栓した。温調器を備えたオイルバスの温度を220℃として、上記リアクターを浸漬して0.4時間反応させた。反応終了後、リアクターをオイルバスから取り出して放冷し、室温(約22℃)に冷却したのち、キャップをあけて反応液を取り出した。反応液をガスクロマトグラフィー(FID検知器)で分析したところブチルフェニルカーボネートが2.4重量%、ジフェニルカーボネートが0.01重量%得られた。反応液からは塩素が検出されなかった。
【0061】
[実施例3]
(有機バナデートを触媒とする不均化反応)
両端をスェージロックで固定可能な内径6mm、長さ50mmのSUS製チューブにブチルフェニルカーボネート0.99g及び実施例1で合成した有機バナデート2.5mg(バナジウムとして全液量の約1000ppmとなるような量)を仕込み、スェージロックのキャップを締めて密栓した。温調器を備えたオイルバスの温度を220℃として、上記リアクターを浸漬して0.5時間反応させた。反応終了後、リアクターをオイルバスから取り出して放冷し、室温(約22℃)に冷却したのち、キャップをあけて反応液を取り出した。反応液をガスクロマトグラフィー(FID検知器)で分析したところジフェニルカーボネートが3.5重量%得られた。ブチルフェニルエーテルは検出限界以下であった。反応液からは塩素が検出されなかった。
【0062】
[比較例2]
(塩素を含む有機バナデートを触媒とするエステル交換反応)
比較例1で得られた有機バナデートを両端をスェージロックで固定可能な内径6mm、長さ50mmのSUS製チューブに2.2mg(バナジウム分が全液量の約1000ppmとなるような量)仕込み、さらにジブチルカーボネート0.65g(3.7ミリモル)、フェノール0.35g(3.7ミリモル)を仕込みスェージロックのキャップを締めて密栓した。温調器を備えたオイルバスの温度を220℃として、上記リアクターを浸漬して0.4時間反応させた。反応終了後、リアクターをオイルバスから取り出して放冷し、室温(約22℃)に冷却したのち、キャップをあけて反応液を取り出した。反応液をガスクロマトグラフィー(FID検知器)で分析したところブチルフェニルカーボネートが2.2重量%得られた。反応液からは塩素が検出された。
【0063】
[比較例3]
(塩素を含む有機バナデートを触媒とする不均化反応)
両端をスェージロックで固定可能な内径6mm、長さ50mmのSUS製チューブにブチルフェニルカーボネート0.99g及び比較例1で合成した有機バナデート2.2mg(バナジウムとして全液量の約1000ppmとなるような量)を仕込み、スェージロックのキャップを締めて密栓した。温調器を備えたオイルバスの温度を220℃として、上記リアクターを浸漬して0.5時間反応させた。反応終了後、リアクターをオイルバスから取り出して放冷し、室温(約22℃)に冷却したのち、キャップをあけて反応液を取り出した。反応液をガスクロマトグラフィー(FID検知器)で分析したところジフェニルカーボネートが3重量%得られた。反応液からは塩素が検出された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、酸化バナジウムとヒドロキシ化合物を反応させて、副生する水を含む低沸点化合物を留去することにより有機バナデートを製造する際に、有害な副生物が発生せず有機バナデートを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのバナジウム−酸素−炭素結合を有する有機バナデートの製造方法において、下記一般式(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1種の酸化バナジウムと下記一般式(5)から選ばれる少なくとも1種のヒドロキシ化合物とを反応させることを特徴とする有機バナデートの製造方法。
【化1】

【化2】

(式中Rは、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数4〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し、xはアルコールの価数を表し1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
副生する水を含む低沸点化合物を除去することを特徴とする請求項1に記載の有機バナデートの製造方法。
【請求項3】
ヒドロキシ化合物が水よりも沸点が高いことを特徴とする請求項1または2に記載の有機バナデートの製造方法。
【請求項4】
副生する水を含む低沸点化合物の除去を、蒸留法によって行うことを特徴とする請求項2に記載の有機バナデートの製造方法。
【請求項5】
副生する水を含む低沸点化合物の除去を、水と共沸混合物を生成する成分を添加し、水を含む共沸混合物を含む低沸点化合物を蒸留することによって行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機バナデートの製造方法
【請求項6】
ヒドロキシ化合物が下記一般式(6)で表される芳香族ヒドロキシ化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機バナデートの製造方法。
【化3】

(式中、Ar1は炭素数6〜20の芳香族基を表す。)
【請求項7】
芳香族ヒドロキシ化合物がフェノールであることを特徴とする請求項6に記載の有機バナデートの製造方法。
【請求項8】
ヒドロキシ化合物の使用量が、酸化バナジウム中に含まれるバナジウム原子のモル量に対しての1〜500倍の範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機バナデートの製造方法。
【請求項9】
反応温度が45〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機バナデートの製造方法。
【請求項10】
酸化バナジウムがVであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の有機バナデートの製造方法。

【公開番号】特開2006−335739(P2006−335739A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165140(P2005−165140)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】