説明

有機フィロシリケートナノ複合材料組成物の製造法

【課題】有機フィロシリケートナノ複合材料組成物の製造法
【解決手段】
本発明は、水性有機フィロシリケートスラリー又は濾過ケーキ中の有機フィロシリケートに付随する水を置き換えるための、モノマー、オリゴマー又はポリマーを用いる低水分の有機フィロシリケート組成物の製造方法を提供する。
本発明はさらに、ポリマーマトリクスへの濃縮有機フィロシリケート組成物の分散によって、該組成物から有機フィロシリケートナノ複合材料を生成する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として有機フィロシリケートナノ複合材料の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、有機モノマー、オリゴマー及びポリマーを用いて、有機フィロシリケートスラリー及び濾過ケーキから水を除去する効率を上げる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ複合材料、すなわち、ポリマーハイブリッドを形成するポリマー中の有機親和性粘土のナノメーターサイズ分散液の製造における近年の進歩によって、大きな関心が生み出されている。ナノ複合材料は、機械特性、耐熱性、熱安定性において、及び衝撃力の損失なしにベースポリマーのガス透過性を減少させることにおいて飛躍的な改善をもたらすことが示されている。それら増強されたバリア特性及び透明性によって、ナノ複合材料は、包装用途におけるガス輸送バリア材としての使用に非常に適する。例として、単層あるいは多層フィルムの内部にナノ複合材料層を組み込んでいる、食料及び飲料包装用の、ナイロンベースのナノ複合材料等がある。ガス拡散の減少は、拡散経路の長さを増やす役割をする粘土粒子の存在によって達成される。
【0003】
概して、ナノ複合材料に使用される有機粘土は、精製粘土の水性ベースのスラリーを、水溶性ポリマー及び界面活性剤などの様々な有機化合物と接触させることによって調製される。現在の製造技術は、スラリーから有機粘土が回収されること、そして有機粘土がさらなる加工をされ得る前に低水分レベルに乾燥されることが要求される。フィルム乾燥及び噴霧乾燥は、有機粘土の低水分レベルを獲得するための通常の方法である。しかしながら、有機粘土は非常に強い水の保持力を有し、さらなる加工に適する水分レベルに有機粘土を乾燥させることは難しく、大きな熱エネルギーであり、時間がかかり、その上高価でもある。実際、有機粘土スラリー及び濾過ケーキに会合する多量の水を蒸発させるために使用されるエネルギーは、従来技術を用いてナノ複合材料を生産するのに使用される有機粘土を製造する費用の約1/3の割合を占める。
【0004】
それゆえ、ナノ複合材料マトリクス中に組み入れる前に、有機粘土の乾燥の必要性を排除又は減ずる、ナノ複合材料の製造方法の必要性が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの局面は、水性有機フィロシリケートスラリー又は濾過ケーキと、有機フィロシリケートに会合する水を置き換えることが出来るモノマー、オリゴマー又はポリマーを組み合わせることによる、濃縮有機フィロシリケート組成物の製造方法を提供することである。この方法において、モノマー、オリゴマー又はポリマーは、スラリー又は濾過ケーキ中の粘土凝集体から水を物理的に置き換え、それによって、さらなる加工の前に有機フィロシリケートを乾燥させるのに必要な時間およびエネルギーを減じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施態様は、有機フィロシリケートの濾過ケーキ又はスラリーと、有機フィロシリケートに会合する水分子を置き換えることができるモノマー、オリゴマー又はポリマーを混合し、続いて置き換えられた水の少なくとも一部分を除去する段階により、低水分で高濃度の有機フィロシリケート組成物の製造方法を提供する。この実施態様は、フィルム乾燥や噴霧乾燥といった、従来のエネルギーのかかる乾燥工程を用いることなく、約10質量%未満の水分含量を有する濃縮有機フィロシリケート組成物を提供し得る。これは、得られた濃縮有機フィロシリケート組成物は約5質量%未満の水分含量を有する実
施態様が含まれ、また、濃縮有機フィロシリケート組成物は約1質量%未満の水分含量を有する実施態様がさらに含まれる。この実施態様において、濾過ケーキ又はスラリーに加えられるモノマー、オリゴマー、又はポリマーの量は、フィロシリケートから少なくとも幾分かの水分子を置き換えるのに十分であり、それによって、有機フィロシリケートによる水分保持を減少させ、水の除去を促進させる。概して、フィロシリケートとモノマー、オリゴマー又はポリマーとの約1:99乃至約95:1の質量比率は、この目的には十分である。これは、フィロシリケートとモノマー、オリゴマー又はポリマーの比率は約90:10乃至約25:75である実施態様が含まれ、又、フィロシリケートとモノマー、オリゴマー又はポリマーの比率は約75:25乃至約40:60である実施態様がさらに含まれる。モノマー、オリゴマー、又はポリマーは液体として加えられ得、摩砕機又は押出機中で有機フィロシリケートスラリー又は濾過ケーキと一緒に混合され得る。
【0007】
本発明の方法には、有機粘土に会合する水を置き換えることができる、いずれのモノマー、オリゴマー又はポリマーをも使用し得る。適切なオリゴマーの一種は疎水性オリゴマーである。一つの実施態様において、該オリゴマーはポリオレフィン樹脂である。別の実施態様において、該オリゴマーはワックスである。また別の実施態様において、該オリゴマーはオイルである。様々な好ましい実施態様において、該オリゴマーは約10℃乃至約160℃の融点を有する。適切なモノマーの限定されない例としては、スチレンモノマー、メチルメタクリレートなどのアクリレートモノマー、ビニルアセテートなどのアセテートモノマー、アクリロニトリルモノマー、ブタジエンモノマー及びそれらの混合物等がある。
【0008】
乾燥段階で使用されるモノマーが重合可能である場合、モノマーは、最初の乾燥が行われた後、有機フィロシリケートの存在下で重合され得る。同様に、乾燥段階で使用されるオリゴマーが架橋可能である場合、オリゴマーは、最初の乾燥段階後に有機フィロシリケートの存在下で架橋され得る。
【0009】
本発明の第二の局面は、ポリマーマトリクス中へ、上記記載の濃縮有機フィロシリケート組成物の一種を分散させることによる、有機フィロシリケートナノ複合材料の製造方法を提供することである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、エネルギーの大量消費や高価な乾燥工程を必要とせずに、ポリマーナノ複合材料中への有機フィロシリケートの効率的な混和を促進するために、有機フィロシリケートと共にモノマー、オリゴマー及びポリマーを使用することをベースとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
当業者には明らかなように、ここに論じられるフィロシリケートは本質的に基底面を有し、互いに積み上げられている粒子の層に配列されている。フィロシリケート粒子の積層は、フィロシリケート層の間に中間層又はギャラリーを提供する。これらギャラリーは、概してナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムイオン又はそれらの組合せといったカチオンによって、通常、占有される。水もまたギャラリー中に存在し、カチオンと結びつきやすい。
【0012】
有機フィロシリケートは、たとえば粘土などの、水性又は有機混合物中で個々の粘土小片の剥離を経て粘土がより容易に分散されるように、有機界面活性剤にて変形された基底面を有するフィロシリケートである。
【0013】
本発明の方法の使用に適する有機フィロシリケートは、当業者に周知である。もともと、疎水性の有機粘土は、ジメチル二水素化牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルベンジル水
素化牛脂アンモニウムクロリド、及びメチルベンジル二水素化牛脂アンモニウムクロリドなどの、高分子量の第四級アミンによる表面交換によってスメクタイト粘土から製造されている。文献に記載された有機粘土を製造するための他のバリエーションは、オニウムイオン交換と、それに続く親水性及び疎水性ポリマー溶融液のインターカレーションによる、疎水性の有機粘土の製造法を含む。その他の適切な有機粘土は、米国特許出願第10/078,992号明細書及び米国特許出願第10/100,381号明細書に記述されており、その全ての開示がここに参照として組み入れられる。
【0014】
フィロシリケートのいずれも本発明の使用に適してはいるものの、好ましいフィロシリケートは、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ベイデライト、スティーブンサイト、及びノントロナイトなどのスメクタイト粘土鉱物である。また、市販のラポナイト7などの合成スメクタイト粘土も含まれる。タルク、天然及び合成マイカ、及びハイドロタルサイトもまた、本発明によって生成されるナノ複合材料において有用である。
【0015】
この開示の目的において、「水性有機フィロシリケートスラリー」という用語は、単に、比較的低い有機フィロシリケート粒子濃度を有する、有機フィロシリケート粒子の水性懸濁液を意味する。有機フィロシリケートスラリー中の有機フィロシリケートの濃度は、広範囲に変動し得るが、少なくとも幾分かの乾燥なしに、有機フィロシリケートがポリマーナノ複合材料中に容易に組み入れられることを可能にするには低すぎることを特徴とする。
本発明の様々な実施態様において、有機フィロシリケートスラリーは約60質量%未満の有機フィロシリケート濃度を有するものである。これは、約40質量%未満の有機フィロシリケート濃度を有するスラリーが含まれ、また、約20質量%未満の有機フィロシリケート濃度を有するスラリーがさらに含まれる。
【0016】
この開示の目的において、「有機フィロシリケート濾過ケーキ」は、水性有機フィロシリケートスラリーから分離され、加圧濾過後にフィルターに残された、圧縮された固体若しくは半固体の有機フィロシリケート物質である。幾分かの水がスラリーから濾過ケーキを形成するために既に除去されたとしても、ナノ複合材料に有機フィロシリケートを混和する前に、少なくともいくらかの残留水を除去することが一般に望ましい。
【0017】
本発明の一つの局面は、フィルム乾燥又は噴霧乾燥などのエネルギーを大量消費する乾燥工程の必要なしに、高い有機フィロシリケート濃度を有する、低水分の有機フィロシリケート組成物を製造するためにフラッシング操作を用いる。これらの方法において、疎水性であり得る一種以上のモノマー、オリゴマー又はポリマーは、水性有機フィロシリケート懸濁液又は濾過ケーキと混合され、そこでそれらは有機フィロシリケートの表面を湿らせ、それにより有機フィロシリケート粒子の表面から捕捉された水を物理的に放出する。フィロシリケートから置き換えられた水は別個の相を形成し、該相は有機フィロシリケートからエネルギーを節約する蒸気又は液体として容易に分離され、ポリマー中に容易に分散してナノ複合材料を形成する濃縮有機フィロシリケート組成物を生成する。幾つかの実施態様において、濃縮有機フィロシリケート組成物は少なくとも約50質量%の有機フィロシリケート濃度を有する。これは、濃縮有機フィロシリケート組成物は少なくとも約60質量%の有機フィロシリケート濃度を有する実施態様が含まれ、また、濃縮有機フィロシリケート組成物は少なくとも約70質量%の有機フィロシリケート濃度を有する実施態様がさらに含まれる。水分含量の観点からは、好ましい濃縮有機フィロシリケート組成物は約10質量%未満の水分含量を有する。これは、濃縮有機フィロシリケート組成物の水分含量は約50質量%未満の水分含量を有する実施態様が含まれ、濃縮有機フィロシリケート組成物の水分含量は約10質量%未満の水分含量を有する実施態様がさらに含まれる。
【0018】
有機フィロシリケートから置き換えられた水は、混合が行われる温度に応じて、また、混
合が解放系で又は密閉系で実施されるかで、液体又はガスの形態を取り得る。置き換えられた水は、当技術分野で既知である慣用の方法により除去され得る。たとえば、単に水をデカントすることによって、水は物理的に分離し得る。あるいは、水は混合しながらの加熱によって、又は、混合物を真空下に晒すことによって、蒸発除去され得る。重合可能なモノマーが乾燥段階に用いられる場合、置き換えられた水が除去された後、有機フィロシリケートの存在下で、該モノマーを重合してナノ複合材料を生成し得る。重合は、さらなるモノマーが該系に添加された後に起こり得る。同様に、架橋可能なオリゴマーが乾燥段階に用いられると、置き換えられた水が除去された後、有機フィロシリケートの存在下で、該オリゴマーを架橋してナノ複合材料を生成し得る。この場合にも、架橋は、さらなるオリゴマーが該系に添加された後に起こり得る。重合又は架橋プロセスを促進させるために、様々な重合開始剤及び架橋開始剤が混合物に添加され得る。重合又は架橋開始剤の正確な種類は、添加されるモノマー及びオリゴマーによって決まるが、しかしながら、多くの適切な開始剤は周知であり市販されている。
【0019】
本発明に使用されるオリゴマーは、好ましくは、約10℃乃至約160℃の融点を有する。これは、オリゴマーは約30℃乃至約120℃の融点を有する実施態様が含まれ、さらに、オリゴマーは約40℃乃至約100℃の融点を有する実施態様が含まれる。様々な実施態様において、オリゴマーは20,000以下の平均分子量を有する。これは、オリゴマーは10,000以下の平均分子量を有する実施態様が含まれ、さらに、オリゴマーは5,000以下の平均分子量を含む実施態様が含まれる。オリゴマーは樹脂、ワックス、又はオイルであり得る。様々な実施態様において、オリゴマーはポリオレフィンである。本発明の方法に用いられる適切なワックスの例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンモンタンワックス、ベジタブルワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、又はそれらの組合せ等がある。好ましくは約25℃乃至約100℃の融点を有するパラフィンワックスが、特に本発明の方法の使用に適している。ポリプロピレンワックス及びポリプロピレンオイルもまた本発明の方法の使用に特に適する。高いメルトインデックスを有し、約175℃、好ましくは約150℃より下の温度で、低粘度物質を生産するためにビスブレーキングを受けることができるポリプロピレン樹脂が、本発明の使用にとりわけ適しているオリゴマーである。
【0020】
モノマー、オリゴマー又はポリマーは、当技術分野に既知のあらゆる適切な方法で、水性有機フィロシリケートスラリー又は濾過ケーキと液体形態で混合され得る。一つの実施態様において、モノマー、オリゴマー又はポリマーと、濾過ケーキ又はスラリーとを、パグミルなどの摩砕機又は押出機の中に一緒に供給することによって、モノマー、オリゴマー又はポリマーは、有機フィロシリケートスラリー又は濾過ケーキと混合される。この実施態様の一つの変形において、摩砕機又は押出機は約100℃又はより高い温度、好ましくは100℃乃至約130℃で運転され、そして、この系を真空にすることによって水を水蒸気の形態で除去する。
【0021】
一つの実施態様において、ポリプロピレンと有機過酸化物を反応させ、それによりポリプロピレン鎖が壊れて低分子量又は高メルトインデックスの物質がもたらされることにより、ポリプロピレンワックスが押出機のバレル内で直接調製される。反応が完了した時点で、有機フィロシリケート濾過ケーキが押出機に加えられる。
【0022】
本発明はまた、上記記載の濃縮有機フィロシリケート組成物を用いて製造された有機フィロシリケートナノ複合材料を提供する。これらナノ複合材料は、複合材料物質を作るために、ポリマーマトリクス内に濃縮有機フィロシリケート組成物を分散することによって作られる。フィロシリケートの個々の小片はナノメーター範囲の厚さを有しているため、ポリオレフィンなどの他の物質内に分散されているこれら小片の複合材料は、ナノ複合材料
と呼ばれる。ポリオレフィンマトリクスの至るところに分散されたフィロシリケート小片は概して可視光の波長より小さいために、ポリオレフィンナノ複合材料の光学特性はほぼ全く変化を受けない。しかしながら、個々のフィロシリケートの小片はより短波長の紫外線放射を散乱し吸収するのに適したサイズであるため、ナノ複合材料は優れた紫外線保護と、紫外線放射の劣化の影響に対する一層の耐性を提供し得る。注目すべきは、最も望ましくは、本発明のフィロシリケートが完全に剥離し、個々の小片がポリマーマトリクスの至るところに均等に分散され、塊が存在しないことであるが、ここに使用されるナノ複合材料という用語は、フィロシリケートが実質的に均一にポリオレフィンポリマーの至るところに分散されている組成物をも含む、ということである。「実質的に均一に分散される」という用語は正確な定義に結びつくものではないとしても、当業者であれば、ナノ複合材料特性を示すフィロシリケート小片のあらゆる分散液が本発明に含まれることを意味すると理解するであろう。
【0023】
本発明によって製造されたポリマーナノ複合材料は、特にこれらポリマーが既に用いられていたありとあらゆる商業製品への使用に適する。これら製品には、包装材料、車体パネル、車内パネル、薄膜などがある。
【0024】
ナノ複合材料は、濃縮有機フィロシリケート組成物を、有機フィロシリケートを溶解できる任意の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーに分散させることによって生成される。これは、エラストマー及びポリオレフィンなどの無極性ポリマーが含まれる。ポリマー溶融物への濃縮有機フィロシリケート組成物の分散方法は、当技術分野に周知の技術であり、様々なミキサーや押出機が含まれる。概して、ポリマーに取りこまれる有機フィロシリケートは、約0.1乃至約10質量%である。
【0025】
本有機フィロシリケートが分散できるポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、などのポリオレフィン、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート−コ−メタクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−メタクリレート)、ポリ(エチレン−コ−メタクリル酸)などのコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、そして、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル)、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン−コ−スチレン)などのエラストマー、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートなどがある。本発明の有機フィロシリケートはまた、スチレン、メチルメタクリレート、イソプレン、ブタジエン、ビニルアセテート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリジノン、アクリルアミドなどの様々なモノマー又はモノマー混合物に分散され得、それらは次に当業者に既知の適切な方法によって重合され得る。
【0026】
後述の限定されない実施例は開示された発明の利点をさらに説明する役割をする。
【実施例】
【0027】
実施例1
この実施例は、スチレンモノマーを用いて有機粘土濾過ケーキから水及び塩をフラッシュするための本発明の使用を説明する。有機粘土濃縮物は、さらなるモノマーでさらに希釈され、重合されてナノ複合材料を生成した。
【0028】
有機粘土をNa+モンモリロナイト(クロイサイト Na、サザンクレイプロダクツ社)
から調製した。粘土を2.5質量%(wt%)の固体濃度で脱イオン水に分散させた。粘
土小片の縁を、1−ヒドロキシココイル−1,1−ジホスホネート(ソルティア社)のアンモニウム塩との反応によって疎水性にした。添加したジホスホネートの量は、乾燥粘土の質量に対して3質量%であった。次に粘土スラリーの温度を室温から70℃に上昇させた後、粘土の基底面を粘土100g当たり110ミリグラム当量(meq)のベンジルジメチル(水素化牛脂)アンモニウムクロリド(アルカード DMHTB−75、アクゾノーベル社)と交換することによって変性させた。粘土100g当たり4gの濃度のポリ(エチレングリコール)を第四級アミンと組み合わせた。ポリ(エチレングリコール)は、有機粘土の底面間隔を大きくすることにより、有機粘土表面の溶媒和の手助けをする。それは、高温グリースの調製の間にミネラルオイルへの有機粘土の分散の手助けに使用される低分子量極性活性剤と同様に働く。粘土スラリーへの第四級アミンの添加後、1時間攪拌を続け、分散液を濾過し、温かい(70℃)脱イオン水で洗浄した。有機粘土をおよそ80質量%の水を含んだ圧縮濾過ケーキとして回収した。
【0029】
有機粘土:スチレンモノマーの50:50混合物を生成するのに十分な量のスチレンモノマーと組み合わせることによって濾過ケーキから水を除去した。有機粘土をモノマーと組み合わせると、水の大半が粘土からフラッシュされて、混合物からデカントされた別個の水相を生成した。混合物の温度を次に100℃に上昇し、蒸発によって残留水を除去した。粘土濃縮物を次にさらなるスチレンモノマーで希釈し、5質量%の有機粘土を含む透明な粘土分散液を生成した。
【0030】
スチレンの重合を0.5質量%のベンゾイル過酸化物の添加と120℃への加熱によって開始した。分散液を密封されたテフロン(登録商標)コンテナ中で、一晩オーブン内に放置した。ナノ複合材料の圧縮形成フィルムは無色透明であった。偏光を用いたフィルムの顕微鏡検査は分散していない粘土の形跡を示さなかった。重合反応を静止状態で行ったにもかかわらず、ナノ複合材料の透過型電子顕微鏡写真(例えば図1参照)は、有機粘土の底面間隔が19Åから60乃至300Åに増加したことを示した。これは、最大底面間隔が35Åを示した従来技術(例えば米国特許出願第6,252,020号明細書)より得られたものより極めて大きな底面間隔である。
【0031】
実施例2
この実施例は、開示された発明を用いたポリウレタンナノ複合材料の調製を説明するものである。実施例1の有機粘土濾過ケーキを市販のポリオール(ボラノール 5287、ダウケミカルカンパニー)と組み合わせて、50:50の最終質量比率とした。濾過ケーキを室温にてポリオールと組み合わせ、それから70℃に加熱した。水が濾過ケーキからフラッシュされると、それはデカントされた。液体の水がもやは発生しなくなると、分散液の温度を100℃に上昇させ、20分間攪拌をし続けた。分散液をそれから更なるポリオールと組み合わせ、有機粘土濃度を3質量%とした。思いがけなくも、透明分散液の粘度はニートポリオールと比べて顕著には高くなかった。これは、一晩45℃のオーブンにて有機粘土を最初に乾燥をすることによって調製した分散液とは対象的であった。乾燥有機粘土をポリオール中に分散させると、粘度は著しく増大した。実際、ポリオールは注入したり供給したり出来ない固いゲルに変化した。
【0032】
ポリオール:粘土分散液を、窒素雰囲気中で一晩、静止状態で125℃に加熱することにより、トルエンジイソシアネートと架橋した。ナノ複合材料のx線回折像(図2参照)は当初の粘土の底面反射をもはや示さなかった。
【0033】
実施例3
この実施例において、有機粘土濾過ケーキはポリエチレンワックスにてフラッシュされ、ポリエチレン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE))及びエチレンプロピレンコポリマーに
分散できる有機粘土濃縮物を生成した。有機粘土をNa+モンモリロナイト(クロイサイ
トNa、サザンクレイプロダクツ社)から調製した。粘土を固体濃度2.5質量%にて脱イオン水に分散した。粘土の縁を、1−ヒドロキシココイル−1,1−ジホスホネート(ソルティア社)のアンモニウム塩との反応により疎水性とした。添加したジホスホネートの量は、乾燥粘土の質量に対して0.5質量%であった。粘土分散液の温度を70℃に上昇させた後、粘土小片の基底表面を、粘土100g当たり90meqのジメチル水素化牛脂アンモニウムクロリド(アルカード 2HT−75、アクゾノーベル社)にて交換することにより変性させた。粘土の質量に対して2000ppmのイルガノックスB225(チバ社)を第四級アミンに組み合わせた。酸化防止剤(イルガノックスB225)は、ポリオレフィンへの混合の間に、有機粘土へのフリーラジカルによるダメージを妨げるために用いられた。アミン変換完了後、有機粘土スラリーを濾過し、脱イオン水(70℃)に再分散し、圧力濾過して35質量%の固体を含む濾過ケーキを生成した。残留水及び塩を、ポリエチレン−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(HLB4、アルドリッチ社)にてフラッシュすることによって除去した。フラッシングはL/Dが52の2軸押出機(NFMウェルディングエンジニアーズ社)を用いて実施した。50:50の混合物を生成するのに十分なコポリマーと組み合わされた濾過ケーキを、バレルの供給ゾーンが温度100℃に設定された押出機中に供給した。他の全てのゾーンは温度130℃に保たれた。押出機には合わせて6箇所の加熱ゾーンが存在している。ゾーン5に設置された真空ポートを、有機粘土濃縮物から水蒸気の最後の痕跡を除去するために用いた。真空ラインを冷却トラップに連結して有機粘土生成物の残留水をさらに減少させた。ドライブシャフトからバレルを密封するグランドを外すことにより、押出機を変形した。フラッシング操作の間、水は逆流して有機粘土+コポリマーに流れ、グランドの撤去によって作られた開口部を通ってバレルから回収された。
【0034】
有機粘土濃縮物を、ブラベンダープラスティコーダーにて130℃で100rpmで20分間混合することにより、LDPEと組み合わせた。最終生成物における有機粘土の濃度は8質量%であった。生成物は明るい緑色で、透明なナノ複合材料であった。
【0035】
透明で無色のおよそ厚さ5ミルのフィルムを、130℃の圧縮成形によって調製した。0%湿度における酸素透過率(OTR)を30℃にて測定した。測定したOTRとフィルムの厚さから酸素透過性を算出し、有機粘土を含まない基準LDPEから測定された値と比較した。ナノ複合材料の透過性は、基準フィルムと比べて14倍減少した。
【0036】
実施例4
この実施例において、有機粘土濾過ケーキはポリエチレンワックスでフラッシュされ、ポリエチレン(例えばLLDPE、LDPE、HDPE)及びエチレンポリプロピレンコポリマーに分散可能な有機粘土濃縮物を生成した。有機粘土をNa+モンモリロナイト(ク
ロイサイトNa、サザンクレイプロダクツ社)から調製した。粘土を固体濃度2.5質量%にて脱イオン水に分散した。粘土の縁を、1−ヒドロキシココイル−1,1−ジホスホネート(ソルティア社)のアンモニウム塩との反応により疎水性とした。添加したジホスホネートの量は、乾燥粘土の質量に対して3質量%であった。粘土分散液の温度を70℃に上昇させた後、粘土小片の基底表面を、粘土100g当たり1100meqのジメチル水素化牛脂アンモニウムクロリド(アルカード 2HT−75、アクゾノーベル社)にて交換することにより変性させた。乾燥粘土の質量に対して、分子量1000のポリ(プロピレングリコール)4質量%、粘土の質量に対して2000ppmのイルガノックスB225(チバ社)を第四級アミンに組み合わせた。酸化防止剤(イルガノックスB225)は、ポリオレフィンへの混合の間に、有機粘土へのフリーラジカルによるダメージを妨げるために用いられた。アミン変換完了後、有機粘土スラリーを濾過し、70℃の脱イオン水に再分散し、圧力濾過して35質量%の固体を含む濾過ケーキを生成した。残留水及び塩を、パラフィンワックス(融点55−60℃、アルドリッチ社)にてフラッシュするこ
とによって除去した。フラッシングはL/Dが52の2軸押出機(NFMウェルディングエンジニアーズ社)を用いて実施した。75:25の混合物を生成するのに十分なワックスと組み合わせた濾過ケーキを、バレルの供給ゾーンが温度70℃に設定された押出機中に供給した。他の全てのゾーンは温度100℃に保たれた。押出機には合わせて6箇所の加熱ゾーンが存在している。ゾーン5に設置された真空ポートを、有機粘土濃縮物から水蒸気の最後の痕跡を除去するために用いた。真空ラインを冷却トラップに連結し、有機粘土生成物の残留水をさらに減少させた。ドライブシャフトからバレルを密封するグランドを外すことにより、押出機を変形した。フラッシング操作の間、水は逆流して有機粘土+ワックスに流れ、グランドの撤去によって作られた開口部を通ってバレルから回収された。
【0037】
有機粘土濃縮物を、2軸押出機にて130℃で150rpmで混合することにより、LDPEと組み合わせた。最終生成物における有機粘土の濃度は4質量%であった。生成物は明るい緑色で、透明なナノ複合材料であった。
【0038】
透明で無色のフィルムを130℃で圧縮成形によって調製した。動的機械熱分析を圧縮フィルムに対して行い、ガラス転移温度(Tg)及び機械特性を測定した。ナノ複合材料のTgは、基準フィルムの−23.3℃に対して−20.8℃であった。ナノ複合材料と基準フィルムの貯蔵弾性率の値を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例5
この実施例は、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマーに使用する有機粘土濃縮物を調製するための本発明の使用を説明する。実施例5の有機粘土濾過ケーキをビスブレーキングされたポリプロピレン(v−PP)にてフラッシュした。v−PPの融点を示差走査熱量計によって測定したところ、140℃であった。v−PPを、2.16kgで230℃にて3.5のメルトフローインデックスと、およそ160℃の融点を有するPPから調製した。v−PPは、PPと7質量%のイルガノックス101(アクゾノーベル社)を組み合わせ、バレル温度を170℃に設定した50rpmの2軸押出機へ供給することによって調製した。
【0041】
v−PPの僅かに高い融点に適合するために、バレル温度を140℃に設定した以外には、実施例4で使用したのと同じ押出し機条件下で、濾過ケーキをv−PPにてフラッシュした。実施例4と同様、供給ゾーンを130℃に保った。v−PP濃縮物の最終有機粘土濃度は75質量%であった。有機粘土濃縮物をそれから、3.5のメルトインデックスを
有するPPと混合し、5質量%の有機粘土を含むナノ複合材料を製造した。ヤング率、貯蔵弾性率、損失率、破断点伸び、酸素透過性、及びガラス転移温度の測定値は、基準ポリマーと比べて検出可能な変化を示さなかった。しかしながら、有機粘土は溶融粘度に著しい影響を有した。低剪断力における粘度は、純ポリマーと比べて著しく増大し(図3参照)、熱成形用途への使用に理想的なナノ複合材料となった。
【0042】
当業者には明らかなように、ありとあらゆる目的のために、特に明細書を提供する観点では、ここに開示された全ての範囲はまた、ありとあらゆる考えられる部分的な範囲とそれらの組合せを包含する。記載された範囲のいずれも、十分に記述され、同一範囲を少なくとも均等に1/2、1/3、1/4、1/5、1/10などに分割することができる、として容易に認識される。
限定されない例として、ここに開示された其々の範囲は、下1/3、中1/3、上1/3などに用意に分割され得る。当業者には明らかなように、「最大」「少なくとも」「より大きい」「未満」などのあらゆる用語は列挙された数字を含み、その後に上記の部分的な範囲に分解され得る範囲を言及する。
【0043】
好ましい実施態様が説明され記述されているが、後述の請求項に定義された広範囲な態様内の本発明から離れることなく、当業者によって変更及び変形を為し得ることが理解されるべきである。
【0044】
本発明は米国エネルギー省によって裁定された第W−31−109−ENG−38号規約に基づく政府支援にて行われた。政府は本発明に一定の権利を有している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、実施例1によって調製されたポリスチレンナノ複合材料の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、実施例2によって調製された粘土/ポリウレタンナノ複合材料のX線回折像である。
【図3】図3は、ポリプロピレンナノ複合材料と基準ポリプロピレンとについての粘度対剪断速度の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)会合する水分子を有する有機フィロシリケートからなる水性スラリー又は濾過ケーキと、該水分子を置き換えることができる物質(該物質はモノマー及びオリゴマーからなる群から選択される)とを混合して、有機フィロシリケートから水の少なくとも一部分を分離すること、及び
(b)前記スラリー又は濾過ケーキから置き換えられた水の少なくとも一部分を除去して濃縮有機フィロシリケート組成物を形成すること、
からなる濃縮有機フィロシリケート組成物の製造方法。
【請求項2】
前記物質はモノマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノマーはスチレン、アクリレート、ブタジエン、ビニルアセテート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソプレン、ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミドモノマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記物質はオリゴマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オリゴマーは20,000以下の分子量を有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記物質はワックス、樹脂及びオイルからなる群から選択されるオリゴマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記物質はポリオールオリゴマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記物質はパラフィンワックス、マイクロクリスタリンモンタンワックス、ベジタブルワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、及びそれらの組合せからなる群から選択されるワックスであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記物質は約10℃乃至約160℃の融点を有するオリゴマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項10】
前記物質はポリオレフィン樹脂であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
有機フィロシリケートと前記物質の質量比率は約90:10乃至約25:75であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
有機フィロシリケートと前記物質の質量比率は約75:25乃至約40:60であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
濃縮有機フィロシリケートは約10質量%以下の水を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
濃縮有機フィロシリケートはフィルム乾燥又は噴霧乾燥をせずに製造されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーへ濃縮フィロシリケート組成物を分散して有機フィロシリケートナノ複合材料を形成することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
濃縮有機フィロシリケート組成物の存在下でモノマーを重合させて有機フィロシリケートナノ複合材料を形成することをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
重合の前に、さらなるモノマーを用いて濃縮有機フィロシリケートを希釈することをさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
濃縮有機フィロシリケート組成物の存在下でオリゴマーを架橋させて有機フィロシリケートナノ複合材料を形成することをさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項19】
架橋の前に、さらなるオリゴマー、架橋可能ポリマー、又はそれらの混合物を用いて濃縮有機フィロシリケートを希釈することをさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
濃縮有機フィロシリケートを、置き換えられた水の少なくとも一部分を蒸発除去させるのに十分な温度に加熱することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−525218(P2006−525218A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506534(P2006−506534)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001275
【国際公開番号】WO2004/096736
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(502261163)ザ・ユニバーシティー・オブ・シカゴ (4)
【Fターム(参考)】