説明

有機レーザーアレイの製造方法

【課題】ロールオフの小さい有機レーザーアレイを提供することであって、2層の有機EL層が並列接続される単位素子構成を有するパッシブマトリクス型有機レーザーアレイの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも反射電極、第1の色の光を発する第1有機EL層、第1透明電極、第1の色と同じ第2の色の光を発する第2有機EL層および第2透明電極をこの順に備える有機レーザーアレイの製造方法であって、(1)反射電極と第1有機EL層とを備える第1有機発光基板を用意する工程と、(2)第2透明電極と第2有機EL層とを備える第2有機発光基板を用意する工程と、(3)第1透明電極を両面に備える中間電極基板を用意する工程と、(4)第1有機EL層と第2有機EL層がそれぞれ第1透明電極に面するように、中間電極基板を第1有機発光基板と第2有機発光基板の間に配置する工程と、を有する有機レーザーアレイの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機レーザーアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に適用される発光素子の一例として、有機化合物の薄膜積層構造を有する有機レーザー素子が知られている。有機レーザー素子は、薄膜型のレーザー素子であることから広い応用範囲が期待され、それらの実用化に向けて様々な検討がなされている。
有機レーザー素子は、陽極と陰極の間に少なくとも有機発光層を備えた構造を有している。有機レーザー素子は、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層を介在させた構造を有する。陽極と陰極の間に電圧が印加されると有機レーザー素子内に正孔および電子が注入される。注入された正孔および電子は有機発光層で再結合して、その結果有機発光層中の有機EL物質が高エネルギー状態に高められる。有機EL物質が高エネルギー状態から基底状態に遷移する際に発光する。
有機レーザーアレイは多くのレーザー単位を画素としてマトリクスに配列して構成する。画素のマトリクスの駆動方法には種々あるが、単純マトリクス駆動と呼ばれる方法は、構成が比較的簡単でよく使われている。単純マトリクス駆動するディスプレイでは、陽極および陰極がそれぞれストライプ状に複数列構成され、陽極列と陰極列が互いに直交して配置されることが特徴である。特定の信号は、選択された陽極列と選択された陰極列の交差する画素に表示される。
【0003】
特許文献1に開示されているように有機レーザでは2×10W/cm以上の高パワー密度でクエンチング現象によりロールオフが見られる。注入電流でいえば約1A/cm以上の高電流密度領域においてレーザーアレイのロールオフ現象を防止する方法が望まれている。
我々は鋭意その点を検討した結果、発光層を多段に積層し、それらを並列接続することがひとつの解であることを見出した。すなわち、並列構造とすることにより、各並列レーザー素子での電圧は一定であり、電流はレーザー素子全電流の半分とすることができる。ロールオフの小さい特性領域の特性を2個組み合わせたレーザー素子をアレイに適用することで、前記と同一の電流で駆動する単独素子アレイのロールオフを改善することができる。
【特許文献1】特開2003−329913号公報
【特許文献2】特許第3189438号公報
【特許文献3】特開平9−167684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2には、同一色の光を発する有機EL素子を並列に接続して積層することにより、発光素子を流れる電流密度の低減および素子の長寿命化を実現することが開示されている。従来、パッシブマトリクス型有機EL素子を製造する場合、基板側からたとえば第1の透明電極、第2の透明電極、第3金属電極と3種の電極を形成するが、これらは、それぞれストライプ状にパターン形成される必要があり、また、第1の透明電極列と第3の金属電極列は同極性であり並行配置され、第2の透明電極列は他の極性であり、第1の透明電極、第3に金属電極とは直交するように配置される。
しかし、特許文献2に開示された構造をマトリクス配列したアレイにそのまま適用することは出来ない。
なぜなら、従来のパッシブマトリクス型有機EL素子の構造は図2に示すように、上部電極27の分離用の隔壁28を備えているからである。この隔壁28を備えた素子構造は、積層方向に直列接続される素子の電極のパターン形成には有効であるが、上記並列接続した積層構造に適用することは容易ではない。すなわち、隔壁28で分離された上部電極列27上に第2の有機EL層を形成し、隔壁28を横断するように第3電極を形成する場合、隔壁28の高さが上部電極27を分離できるよう2〜10μmと十分高いため、厚さ100〜300nmの第3電極層も隔壁28で分断され、電極列を形成できない。さらに、第3電極形成のための分離用隔壁を上部透明電極27形成後に形成することは極めて困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、ロールオフの小さい有機レーザーアレイを提供することであって、2層の有機EL層が並列接続される単位素子構成を有するパッシブマトリクス型有機レーザーアレイの製造方法を提供することにある。
即ち、本発明の有機レーザーアレイの製造方法は、少なくとも反射電極、第1の色の光を発する第1有機EL層、第1透明電極、第1の色と同じ第2の色の光を発する第2有機EL層および第2透明電極をこの順に備え、前記反射電極および第2透明電極が同一の極性を有し、前記第1透明電極が前記反射電極、第2透明電極と異なる極性を有する有機レーザーアレイの製造方法であって、(1)反射電極と第1有機EL層とを備える第1有機発光基板を用意する工程と、(2)第2透明電極と第2有機EL層とを備える第2有機発光基板を用意する工程と、(3)第1透明電極を両面に備える中間電極基板を用意する工程と、(4)第1有機EL層と第2有機EL層がそれぞれ第1透明電極に面するように、中間電極基板を第1有機発光基板と第2有機発光基板の間に配置する工程とを有することを特徴とする。
これらの工程(1)〜(4)により、有機EL層2層の並列接続を容易に形成でき、駆動電圧上昇を伴わない素子を形成できるとの効果が得られる。
【0006】
また、好ましくは、工程(4)において、前記第1有機EL層、または、第2有機EL層、もしくはこれらの両方が、それぞれ第1透明電極に、さらに金属薄膜を介して接する。
有機EL層と透明電極の間に金属薄膜を挟むことで、有機EL層と透明電極との電気的コンタクトが改善する効果が得られる。
また、工程(1)、(2)において、前記第1有機EL層および前記第2有機EL層がそれぞれ、画素となる複数の領域ごとに分離していることが、画素間のリークを抑制する上で好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロールオフを低減した有機レーザーアレイを容易に作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の製造方法により得られる有機EL素子の基本構成である積層体400を示す模式図である。
積層体400は基板(図示せず)上に2つの発光部を有し、反射電極312の上に、第1有機EL層401、中間電極(第1透明電極)330、第2有機EL層402および第2透明電極322を順に積層したものである。第1有機EL層より発する第1の色の光101と、第2有機EL層より発する第2の色の光102は、同一(同じ色)である。
第1有機EL層401と第2有機EL層402はそれぞれ、有機発光層316、326を少なくとも含み、必要に応じて電子注入層314、324、電子輸送層315、325、正孔輸送層317、327および/または正孔注入層318、328を含む。具体的には、下記のような層構成からなるものが有機EL層として採用される。
(a)有機発光層
(b)正孔注入層/有機発光層
(c)有機発光層/電子注入層
(d)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
(e)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
(f)正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層
(g)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
(上記において、陽極として機能する電極が有機発光層、正孔輸送層または正孔注入層に接続され、陰極として機能する電極が有機発光層、電子輸送層または電子注入層に接続される)
図1の積層体400においては、反射電極312が第1有機EL層401の陰極であり、中間電極330が第1有機EL層および第2有機EL層402の共通の陽極であり、第2透明電極322が第2有機EL層の陰極である。
【0009】
本発明においては、積層体400を以下のように製造する。
(1)図示しない基板上に反射電極312と第1有機EL層401とを備える第1有機発光基板を用意し、(2)図示しない基板上に第2透明電極322と第2有機EL層402とを備える第2有機発光基板を用意し、(3)図示しない基板の両面に中間電極として第1透明電極を備える中間電極基板3300を用意し、(4)第1有機EL層と第2有機EL層がそれぞれ第1透明電極に面するように、中間電極基板を第1有機発光基板と第2有機発光基板の間に挟んで、これらを重ねあわせ配置することにより積層体、すなわち有機レーザーアレイを作製する。この積層体を封止し、駆動回路に接続して有機レーザーアレイを駆動する。なお、ここで「面する」とは有機EL層と第1透明電極が直接電気的に接合する場合の他、以下に説明するように金属薄膜等の導電体膜を介して接合する場合を含む。
図3は本発明の方法によって作製される有機レーザーアレイの部品構成の1実施態様を示す模式図であり、図3(a)は第1有機発光基板310、図3(b)は第2有機発光基板320、図3(c)は中間電極基板3300の、それぞれ実施態様を示す。
図3(a)は、紙面に垂直方向に伸びる2つの反射電極と2つの画素領域とを含む断面を表す、第1有機発光基板の部分断面図である。第1有機発光基板310は、基板311上に、高反射性金属膜からなる反射電極312と、画素領域を規定する第1層間絶縁膜313と、これらの上方に第1有機EL層401及び金属薄膜319を積層してなる。第1有機EL層は少なくとも電子輸送層315、第1有機発光層316と正孔輸送層317を順次積層してなる。
【0010】
図3(b)は、紙面に垂直方向に伸びる2つの第2透明電極膜と2つの画素領域を含む断面を表す、第2有機発光基板の部分断面図である。第2有機発光基板320は、基板321上に、透明導電体からなる第2透明電極322と、画素領域を規定する第2層間絶縁膜323と、これらの上方に第2有機EL層402及び金属薄膜329を積層してなる。第2有機EL層は少なくとも電子輸送層325、第2有機発光層326、正孔輸送層327を順次積層してなる。
図3(c)は、貫通孔と画素2つ分の領域を含む断面を表す、中間電極基板の部分断面図である。中間電極基板3300は、基板331の両面上に、バリア層332、334を介して透明導電膜からなる第1透明電極333、335が形成されてなる。2つの第1透明電極は、貫通孔336に充填される導電体によって電気的に接合され、中間電極を構成する。
図3(a)、(b)では、有機EL層401,402として先に例示した層構成(f)の例を示している。有機EL層の構成としては、さらに必要に応じて正孔注入層、および電子注入層を追加してもよい。透明電極322、333、335はIZO(インジウム亜鉛酸化物)またはITO(インジウムスズ酸化物)などの透明導電体からなるアモルファス膜とすることが好ましい。
【0011】
以下、有機発光基板310、320と中間電極基板3300の作製方法を説明する。
第1有機発光基板310は、例えば、以下のようにして形成できる。まず蒸着ないしスパッタリングまたはその他の方法で、洗浄した基板311の上に金属膜を形成し、フォトエッチングでストライプ状にパターニングして複数の電極列からなる反射電極312とする。
基板311には、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの高分子材料を用いることができる。高分子材料を用いる場合、基板311は剛直であっても可撓性であってもよい。金属膜の材料には、高反射性の金属、例えば、Al、Ag、Mo、W、Ni、Cr等、また、アモルファス合金、例えば、NiP、NiB、CrP、CrB等を用いることができる。
パターニングされた反射電極312の上に、画素となる部分を除いて、例えば格子状に、基板全面に第1層間絶縁膜313を形成する。層間絶縁膜は、例えば、フォトレジストなどの有機材料、または、SiOx、SiNxなどの無機材料を用いて形成することができる。第1層間絶縁膜313によって規定される画素領域に対応する開口部を有するマスクを用い、画素領域以外の部分にマスクをした状態で有機材料を蒸着し、第1有機EL層401を島状に積層する。有機EL層は画素領域ごとに分離する。また、有機EL層の平面形状は画素ごとに、例えば四角形や長方形など略方形である。
【0012】
第1有機EL層401における各層の材料としては、特に限定されるものではなく公知のものを使用することが可能である。電子注入層(図示せず)にはLiFなどのアルカリ金属化合物を用いる。電子輸送層315はAlqを用いることができ、これにLiなどのアルカリ金属をドープしてもよい。
有機発光層316の材料は、所望する色調に応じて選択することが可能であり、例えば青色から青緑色の発光を得るためには、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、べンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などを使用することが可能である。ホスト材料としては、アルミキレート、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、2,5−ビス(5−tert−ブチル−2−ベンゾオキサゾルイル)−チオフェン(BBOT)、を用いる。青色ドーパントとしては、ぺリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(TBP)、4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)などを0.1〜5wt%、赤色ドーパントとしては、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、4,4−ジフロロ−1,3,5,7−テトラフェニル−4−ボラ−3a,4a,−ジアザ−s−インダセン、プロパンディニトリル(DCJT1)、ナイルレッドなどを0.1〜5wt%添加することが用いられる。
【0013】
正孔輸送層317はα−NPDを用いてもよく、これにF4−TCNQなどのルイス酸化合物をドーピングしてもよい。
島状有機EL層の形成には、通常はマスクを用いた真空蒸着法が用いられる。あるいは、特許文献3に開示されているように、あらかじめ有機EL材料を形成したドナーシートを基板に近接離間配置して、所望の領域にレーザーなどの熱源を照射して、有機EL材料を基板上に堆積させる近接離間形成法で形成してもよい。
第1有機EL層401の各層の膜厚については駆動電圧および透明性等を考慮して適宜選択することができるが、通常は、正孔輸送層317は20〜80nm、有機発光層316は20〜40nm、電子輸送層315は20〜40nmである。しかし、これらに限定するものではない。
略方形に形成された島状有機EL層の最上部に金属薄膜319を形成する。形成法は、マスク蒸着法(蒸着すべき箇所以外の部分をマスクで覆って蒸着を行う方法)による真空蒸着、あるいは、上述の近接離間形成法でもよい。この金属薄膜は、後述する中間電極基板3300上の第1透明電極333とのコンタクトの改善に有効である。
次に、前工程において得られた積層体にエッチング処理を施して、層間絶縁膜313全体を、金属薄膜319と同一レベルまで除去して面一とする。当該エッチング処理は、ドライエッチング処理、フォトエッチング処理、またはレーザーエッチング処理とすることが好ましい。これらのエッチング処理において、金属薄膜319は第1有機EL層401の保護膜である。これによって、金属薄膜表面と中間電極基板3300との接触が段差なく実現できるのである。
【0014】
また、金属薄膜319と第1透明電極333との組み合わせにより、特定の発光、例えば青緑発光を選択透過する微小空洞共振器を構成することが好ましい。具体的には、反射電極、第1有機EL層、金属薄膜(ハーフミラー)、第1透明電極の積層体により微小空洞共振器とする。特定波長の光を選択透過する共振器を積層体内に設けることで、特定光の光強度と色純度が向上する効果が得られる。
第2有機発光基板320は、例えば、以下のようにして形成できる。まず蒸着ないしスパッタリングまたはその他の方法で、洗浄した基板321の上に透明導電膜を形成し、フォトエッチングでストライプ状にパターニングして複数の電極列からなる第2透明電極322とする。
基板321には、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの高分子材料を用いることができる。高分子材料を用いる場合、基板321は剛直であっても可撓性であってもよい。透明導電膜の材料には、例えば、ITO、酸化スズ、酸化インジウム、IZO、酸化亜鉛、亜鉛−アルミニウム酸化物、亜鉛−ガリウム酸化物、またはこれらの酸化物に対してF、Sbなどのドーパントを添加した導電性透明金属酸化物等を用いることができる。
【0015】
パターニングされた第2透明電極322の上に、画素となる部分を除いて、第1層間絶縁膜と同様例えば格子状に、基板全面に第2層間絶縁膜323を形成する。この絶縁膜は、第1層間絶縁膜313と同様、例えば、フォトレジストなどの有機材料、または、SiOx、SiNxなどの無機材料を用いて形成することができる。第2層間絶縁膜323によって規定される画素領域に対応する開口部を有するマスクを用い、画素領域以外の部分にマスクをした状態で有機材料を蒸着し、第2有機EL層を島状に積層する。有機EL層は画素領域ごとに分離する。また、有機EL層の平面形状は画素ごとに、例えば四角形や長方形など略方形である。第2有機EL層の平面形状と第1有機EL層の平面形状は、後述する積層体を形成する際画素ごとに面対称となるよう形成される。
第2有機EL層を構成する各層も、特に限定されるものではなく公知のものを使用することが可能である。電子輸送層325はAlqを用いることができ、これにLiなどのアルカリ金属をドープしてもよい。第2有機EL層は、第1有機EL層の発する第1の色の光(図1の101)と同一(同じ色)の光(図1の102)を発する。
正孔輸送層327はα−NPDを用いてもよく、これにF4−TCNQなどのルイス酸化合物をドーピングしてもよい。
【0016】
第2有機EL層の膜厚についても駆動電圧および透明性等を考慮して適宜選択することができる。通常は、正孔輸送層327は20〜80nm、有機発光層326は20〜40nm、電子輸送層325は20〜40nmである。しかし、これらに限定するものではない。
島状有機EL層の最上部にマスク蒸着、あるいは、近接離間形成法により金属薄膜329を形成する。
また、金属薄膜329と第1透明電極335との組み合わせにより、特定の発光、例えば青緑発光を選択透過する微小空洞共振器を構成することが好ましい。
中間電極基板3300は、基板331の両面に、バリア層332、334を介して第1透明電極333,335をストライプパターン状にそれぞれ形成したものである。
基板331としては、通常、膜厚50〜500μm程度の透明、かつ、比較的高い耐熱性を有するプラスチックフィルムが用いられ、例えばPC(ポリカーボネイト)、PET(ポリエチレンテレフタレート)およびPES(ポリエーテルスルフォン)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリオレフィン(PO )等を好適に用いることができる。また、この基板331に用いる材料としては、これらの材料に限定されることはなく、多層膜の樹脂フィルムをベースとしたフィルムを用いてもよい。
【0017】
バリア層は、例えばCVD法によりSiOxまたはSiNxを成膜して得られる。膜厚は200〜500nmが好ましい。第1透明電極は、例えばスパッタ法によりITOまたはIZOを成膜して得られる。膜厚は100〜300nmが好ましい。
フィルム状基板331の上に透明電極をストライプパターン状に形成する前に、基板331にレーザービーム照射、機械的な穴抜きなどで貫通孔336を形成しておく。透明電極333,335形成時に、この貫通孔336内側面に基板331の表面および裏面に形成する透明電極材料が回り込み、両面の電極材料が接触する。これによって、表面および裏面が導通し、同一極性を実現できるのである。貫通孔336を形成する箇所は、ストライプパターン内のどこでもよいが、好ましくは画素領域と干渉しない箇所に形成される。
上記のように形成された中間電極基板3300を第1有機発光基板310と第2有機発光基板320の間に配置し、これをグローブボックス内の乾燥窒素雰囲気(酸素および水分濃度ともに10ppm以下)下において貼り合わせ、有機レーザーアレイを完成する。このとき各層と電極が図1に示す積層体400を構成するよう、さらに反射電極312と第2透明電極322の各電極列が平行となり、第1透明電極333,335の電極列がこれに交差、例えば直交するように各基板が配置される。第1有機EL層と第2有機EL層が、画素ごとに対向し、第1透明電極に面するように、中間電極基板3300を第1有機発光基板310と第2有機発光基板320の間に挟み、重ねあわせる。各基板が有機EL層上に金属薄膜を有する場合は、これらの金属薄膜を介して、各有機EL層が第1透明電極に接合する。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を用いて、本発明を更に説明する。
<実施例1>
以下に示す作製法に従い、500mm×500mm×0.50mmの第1のガラス基板311上に、画素サイズ0.148mm×0.704mm、画素間隔0.130mmの画素構成である第1発光部を形成した。
まず、蒸着法にて高反射電極として、厚さ100nmのAlを全面蒸着し、続いて研磨を行って反射電極312を形成した。Al上にレジスト剤「OFRP−800」(商品名、東京応化製)を塗布した後、フォトリソグラフィー法にてパターニングを行い、幅0.204mm、間隔0.074mm、膜厚100nmのストライプパターンからなる陰極列として反射電極312を得た。
次にポジ型フォトレジスト[WIX−2A](商品名、日本ゼオン製)を用い画素領域に対応する部分に0.148×0.704mmの開口部を形成するように、厚さ0.5μmの層間絶縁膜313を陰極上に形成した。層間絶縁膜313端部の基板に対する角度は鋭角となっている。
以上の工程に続き、前記反射電極312、層間絶縁膜313を形成した基板を抵抗加熱蒸着装置内に装着した。0.148×0.704mmサイズの開口部を副画素領域に対応して有するマスクを用いて、電子輸送層315、有機発光層316、正孔輸送層317を、真空を破らずに順次成膜した。成膜に際して真空槽内圧は1×10−4Paまで減圧した。電子輸送層315はAlq3を20nm積層した。
【0019】
有機発光層316はホスト材料4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)に、青色ドーパント4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)5wt%ドープして20nm積層した。正孔輸送層317はα−NPDを20nm積層した。この後、同様なマスク製膜により、厚さ5nmのAlからなる金属薄膜319を、真空を破らずに形成した。形成した積層体に、層間絶縁膜313と金属薄膜319の表面とが面一となるように、ドライエッチングを行った。このようにして、第1有機発光基板310を作製した。
続いて、500mm×500mm×0.50mmの第2のガラス基板321上に、上記画素構成の第2の発光部を形成した。その作製法は、反射電極312に替えてストライプ状の第2透明電極322を反射電極と平行に形成すること以外は、第1有機発光基板と同じである。
第2透明電極322の形成を以下のように行った。まず、スパッタ法にてITOを全面成膜し、続いて研磨を行って透明電極を形成した。ITO上にレジスト剤「OFRP−800」(商品名、東京応化製)を塗布した後、フォトリソグラフィー法にてパターニングを行い、幅0.204mm、間隔0.074mm、膜厚100nmのストライプパターンからなる陰極列として第2透明電極322を得た。このようにして第2有機発光基板を作製した。
【0020】
500mm×500mm×0.50mmのポリイミドフィルム基板331を用いて中間電極基板3300を以下の方法で作製した。
基板331の両面にバリア層332、334としてSiN膜をスパッタ法で形成した。続いてKrFエキシマレーザーを用い、レーザースポット径50μm、レーザー出力100mJ/パルス〜450mJ/パルスの条件で、画素領域間のポリイミドフィルム基板およびSiN膜に貫通穴336を形成した。
次に、スパッタ法にてITOを基板331の両面にバリア層332,334を介して全面成膜した。このとき、あらかじめあけておいた貫通孔336の内側に、両面からITOが回りこみ、コンタクトを形成し、両面が電気的に接続された。次に両面に形成したITO上にYAGレーザーを掃引して、画素領域と非画素領域とを分離する。YAGレーザーは、得られる陽極列が陰極列と直交するストライプ形状となるよう掃引される。こうしてRGB画素に位置する、幅0.204mm、間隙0.048mm、膜厚100nmのストライプパターンからなる陽極列(第1透明電極333、335の複数の組)を得た。
上記のようにして得られた第1有機発光基板310と、第2有機発光基板320と、中間電極基板330とをグローブボックス内に導入する。第1有機発光基板と、第2有機発光基板のそれぞれの各画素領域が対向し、かつ陰極列と陽極列が直交するように、各基板310,320,330を配置し重ねる。金属薄膜319、329の間に第1透明電極333、335を挟み、乾燥窒素雰囲気(酸素および水分濃度ともに10ppm以下)下において、UV硬化接着剤を用いて封止した。
【0021】
得られた有機レーザー素子の反射電極および第2透明電極を電源の負極に接続し、第1透明電極を電源の正極に接続して電圧を印加したところ、青緑発光が得られた。
<比較例1>
実施例1と同様に、500mm×500mm×0.50mmのガラス基板上に、画素サイズ0.148mm×0.704mm、画素間隔0.130mmの画素構成をもつ発光部を形成した。幅0.204mm、間隔0.074mm、膜厚100nmのAlからなるストライプ状の反射電極(陰極)、0.148mm×0.704mmの開口部を有する層間絶縁膜を陰極上に形成し、ついで、電子輸送層Alq3を20nm、発光層はDPVBiに青色ドーパントDPAVBiを5wt%ドープして20nm、正孔輸送層α−NPDを20nm、厚さ5nmのAl薄膜を積層し、第1有機発光基板とした。次に、500mm×500mm×0.50mmのガラス基板上に、幅0.204mm、間隔0.074mm、膜厚100nmのストライプパターンからなる陽極IZOを形成し、第2有機発光基板とした。最後に第1有機発光基板と第2有機発光基板とをUV硬化接着材で貼り合わせて封止を行い、単一の青色発光有機EL層を有する有機EL素子を得た。
(評価)比較例1の従来方式の単一素子の電流―輝度特性を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
電流密度が上昇するにつれて、輝度のロールオフが顕著に見られている。電流密度1A/cmでの比較例の電圧は、8.2Vである。表2に、実施例1における並列素子の電流―輝度特性を比較例1との比で示した。
表2 実施例1および実施例2の輝度の比較例1との比較
【0024】
【表2】

【0025】
このように、並列構造とすることにより、高電流密度領域でも単独素子よりも15%以上の輝度が改善される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の有機レーザーアレイの製造方法によれば、ロールオフによる輝度低下の改善をした有機レーザーアレイを容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の製造方法により得られる有機レーザーアレイの基本構成を示す模式図である。
【図2】従来の隔壁を有する有機EL素子の構造を示す模式図である。
【図3】本発明の製造方法により得られる有機レーザーアレイの部品構成の1実施態様を示す模式図である。(a)、(b)は夫々、2つの画素領域を含み、陰極列に直交する要部断面を示す模式図、(c)は2つの画素領域に対応する、陽極列に平行な要部断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0028】
310:第1有機発光基板
311、321:基板
312:反射電極
313:第1層間絶縁膜
323:第2層間絶縁膜
314、324:電子注入層
315、325:電子輸送層
316:第1有機発光層
326:第2有機発光層
317、327:正孔輸送層
318、328:正孔注入層
319、329:金属薄膜
320:第2有機発光基板
322:第2透明電極
330:中間電極(第1透明電極)
3300:中間電極基板
331:基板
332、334:バリア層
333、335:第1透明電極
336:貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも反射電極、第1の色の光を発する第1有機EL層、第1透明電極、第1の色と同じ第2の色の光を発する第2有機EL層および第2透明電極をこの順に備え、前記反射電極および第2透明電極が同一の極性を有し、前記第1透明電極が前記反射電極、第2透明電極と異なる極性を有する有機レーザーアレイの製造方法であって、
(1)反射電極と第1有機EL層とを備える第1有機発光基板を用意する工程と、
(2)第2透明電極と第2有機EL層とを備える第2有機発光基板を用意する工程と、
(3)第1透明電極を両面に備える中間電極基板を用意する工程と、
(4)第1有機EL層と第2有機EL層がそれぞれ第1透明電極に面するように、中間電極基板を第1有機発光基板と第2有機発光基板の間に配置する工程と、
を有することを特徴とする有機レーザーアレイの製造方法。
【請求項2】
工程(4)において、前記第1有機EL層または第2有機EL層、もしくはこれらの両方がそれぞれ第1透明電極に、さらに金属薄膜を介して接する請求項1記載の有機レーザーアレイの製造方法。
【請求項3】
工程(1)、(2)において、前記第1有機EL層および前記第2有機EL層がそれぞれ、画素となる複数の領域ごとに分離していることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の有機レーザーアレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−146698(P2009−146698A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322185(P2007−322185)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】