説明

有機光電変換素子及びその製造に有用な重合体

【課題】光電変換素子の製造に用いた場合に優れた光電変換効率を付与することができる重合体を提供する。
【解決手段】下記式(1a)で表される構造及び/又は下記式(1b)で表される構造と、特定構造の置換基を有することもあるチオフェン又はチアジアゾール骨格を含む構造とからなる繰り返し単位を含む重合体。


(式中、A環は6員環以上の単環の脂環式炭化水素を表す。該脂環式炭化水素は、炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子及びその製造に有用な重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷(電子、ホール)輸送性を有する有機半導体材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機トランジスタ、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサー等)への応用が期待され、種々検討されている。
【0003】
有機半導体材料としては、有機光電変換素子の高性能化の観点から、電荷輸送性の高いものが求められている。この観点から、芳香族化合物が検討されている。有機半導体材料として、具体的には、フルオレンジイル基とチオフェンジイル基とを含むポリフルオレン共重合体が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】Applied Physics Letters Vol.84, No.10 1653-1655 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記ポリフルオレン共重合体では電荷輸送性が十分ではなく、光電変換素子の製造に用いても、光電変換効率が十分ではない。
【0006】
そこで、本発明は、光電変換素子の製造に用いた場合に優れた光電変換効率を付与することができる重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は第一に、下記式(1a)で表される構造及び/又は下記式(1b)で表される構造と、下記式(2)で表される構造とからなる繰り返し単位を含む重合体を提供する。

(式中、A環は6員環以上の単環の脂環式炭化水素を表す。該脂環式炭化水素は、炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよい。)

(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数6〜60のアリール基を表す。xは1又は2であり、yは0又は1であり、zは0、1又は2である。R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々、複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。該アルキル基及び該アルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。該アリール基は、置換基を有していてもよい。)
【0008】
本発明は第二に、一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物を含有する第一の有機層と、該第一の有機層に隣接して設けられ電子供与性化合物を含有する第二の有機層とを有する有機光電変換素子であって、該電子供与性化合物又は該電子受容性化合物が前記重合体である有機光電変換素子を提供する。
【0009】
本発明は第三に、一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子であって、該電子供与性化合物又は該電子受容性化合物が前記重合体である有機光電変換素子を提供する。
【0010】
本発明は第四に、一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子であって、該電子供与性化合物が前記重合体であり、該電子受容性化合物がフラーレン誘導体である有機光電変換素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重合体は、光電変換素子の製造に用いた場合に優れた光電変換効率を付与することができるものである。従って、有機光電変換素子等の製造に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
<重合体>
本発明の重合体は、前記式(1a)で表される構造及び/又は前記式(1b)で表される構造と、前記式(2)で表される構造とからなる繰り返し単位を含むものである。かかる構造を有することにより、本発明の重合体は、分子の平面性が増大し、さらに分子間のパッキング性を向上させることにより、分子間の相互作用を高めることができると推測される。
【0014】
・式(1a)/式(1b)で表される構造
前記式(1a)及び(1b)中、A環は、6員環以上の単環の脂環式炭化水素を表す。前記繰り返し単位中にA環が複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。この脂環式炭化水素は、炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよい。本明細書において、「単環の脂環式炭化水素」とは、縮環した芳香環以外の環状の炭化水素を意味する。本発明の重合体では、A環が単環の脂環式炭化水素であることにより、分子が重なりやすくなり、分子間の相互作用が増大するので、電荷輸送性が向上すると推測される。
【0015】
A環は、得られる重合体の溶媒への溶解性の観点から、10員環以上であることが好ましく、12〜30員環であることがより好ましく、14〜20員環であることが特に好ましい。A環の構造としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、シクロペンタデカン、シクロヘキサデカン、シクロヘプタデカン、シクロオクタデカン、シクロノナデカン等の飽和の脂環式炭化水素;シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘキサデセン、シクロオクタトリエン等の不飽和の脂環式炭化水素等が挙げられる。これらの飽和又は不飽和の脂環式炭化水素中の水素原子の一部又は全部が、炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよい。該アルキル基は、例えば、直鎖状、分岐状等である。
【0016】
A環は、得られる重合体の溶媒への溶解性をより向上させるために、A環に含まれる炭素の合計数が7以上であることが好ましく、8〜30であることがより好ましく、10〜20であることが特に好ましい。本明細書において、「A環に含まれる炭素の合計数」とは、置換基を含めてA環に含まれる全炭素数を意味する。
【0017】
本発明の重合体を有機光電変換素子の製造に用いる場合には、末端基に重合活性基がそのまま残っていると、得られる素子の耐久性等の特性が低下することがあるので、安定な基で保護することが好ましい。
【0018】
末端基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、アリールアミノ基、複素環基等が挙げられ、末端基でホール輸送性を高めるという観点からは、アリールアミノ基などの電子供与基が好ましい。末端基としては、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものも好ましく、例えば、炭素−炭素結合を介してアリール基又は複素環基と結合しているもの等が挙げられる。
【0019】
本発明の重合体は、通常、共役系高分子化合物である。ここで、共役系高分子化合物とは、該化合物を構成する分子の主鎖が実質的に共役している化合物を意味する。
【0020】
前記式(1a)で表される構造としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、以下の例示において、A環に相当する環の内側の数字は、A環における環を構成する炭素原子の数を表す。具体的には、該数字がnの場合には、A環が不飽和結合を有しないn員環であることを意味し、例えば、該数字が9の場合には、A環はシクロノナン環である。
【0021】

【0022】

【0023】

【0024】
これらの中でも、以下のものが好ましい。

【0025】
前記式(1b)で表される構造としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、以下の例示において、A環に相当する環の内側の数字は、前述と同じ意味を有する。
【0026】

【0027】

【0028】

【0029】
これらの中でも、以下のものが好ましい。

【0030】
本発明の重合体に含まれる前記式(1a)で表される構造及び前記式(1b)で表される構造は、一種のみであっても二種以上であってもよい。
【0031】
本発明の重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常、103〜108であり、好ましくは103〜107であり、より好ましくは103〜106である。
【0032】
・式(2)で表される構造
前記式(2)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6で表されるアルキル基は、炭素数が、1〜18であることが好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。アルキル基は、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0033】
前記式(2)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6で表されるアルコキシ基は、炭素数が、1〜18であることが好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0034】
前記式(2)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6で表されるアリール基は、炭素数が、6〜30であることが好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0035】
前記式(2)で表される構造としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0036】

【0037】
本発明の重合体に含まれる前記式(2)で表される構造は、一種のみであっても二種以上であってもよい。
【0038】
・本発明の重合体
本発明の重合体が含む繰り返し単位は、式(1a)/式(1b)で表される構造の説明の項、式(2)で表される構造の説明の項で具体的に示した構造を組み合わせてなるものであることが好ましく、下記式(3a)又は(3b)で表されるものであることがより好ましい。
【0039】

(式中、A環、R1、R2、R3及びR4は、前記と同じ意味を表す。)
【0040】
本発明の重合体の具体例としては、以下のものが挙げられる。

(式中、mは繰り返し単位数を表す。)
【0041】
本発明の重合体において、前記繰り返し単位は、該重合体中の全繰り返し単位に対して、通常、20〜100モル%であり、高光電変換効率を得る観点から、好ましくは50〜100モル%である。
【0042】
<重合体の製造方法>
本発明の重合体は、如何なる方法で製造されたものであってもよいが、例えば、用いる重合反応に適した官能基を有するモノマーを合成した後に、必要に応じて有機溶媒に溶解し、アルカリや適当な触媒、配位子等を用いた公知のアリールカップリングによる重合方法を用いて重合することにより合成することができる。前記モノマーの合成は、例えば、特開2006−182920号公報、特開2006−335933号公報等に示された方法を参考にして行うことができる。
【0043】
アリールカップリングによる重合方法は、特に限定されないが、例えば、ホウ酸残基又はホウ酸エステル残基を有するモノマーと、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、又はトリフルオロメタンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマーとを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩基の存在下、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のパラジウム錯体若しくはニッケル錯体と、必要に応じて、さらにトリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子とからなる触媒を用いたSuzukiカップリング反応により重合する方法;ハロゲン原子又はトリフルオロメタンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマー同士をビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のニッケルゼロ価錯体とビピリジル等の配位子からなる触媒を用い、若しくは[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のニッケル錯体と、必要に応じ、さらにトリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子とからなる触媒と亜鉛、マグネシウム等の還元剤を用い、必要に応じて脱水条件で反応させる、Yamamotoカップリング反応により重合する方法;ハロゲン化マグネシウム基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とを[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のニッケル触媒を用い、脱水条件で反応させる、アリールカップリング反応により重合するKumada−Tamaoカップリング反応により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法等が挙げられる。
【0044】
前記アリールカップリングによる重合方法では、通常、溶媒が用いられる。この溶媒は、用いる重合反応、モノマー及びポリマーの溶解性等を考慮して選択すればよい。具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒、又はそれらと水との二相系が例示される。Suzukiカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒、又はそれらと水との二相系が好ましい。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。Yamamotoカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒が好ましい。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0045】
前記アリールカップリングによる重合方法の中でも、反応性の観点から、Suzukiカップリング反応、Yamamotoカップリング反応が好ましく、Suzukiカップリング反応とニッケルゼロ価錯体を用いたYamamotoカップリング反応がより好ましい。より詳細には、Suzukiカップリングによる重合に関しては、例えば、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.39,1533−1556(2001)に記載されている公知の方法を参考にできる。Yamamotoカップリングによる重合に関しては、例えば、Macromolecules 1992,25,1214−1223に記載されている公知の方法を参考にできる。
【0046】
前記アリールカップリングによる重合方法において、反応温度は、反応溶液が液状を保つことができる温度範囲であれば、特に限定されないが、その下限は、反応性の観点から、好ましくは−100℃、より好ましくは−20℃、特に好ましくは0℃であり、その上限は、安定性の観点から、好ましくは200℃、より好ましくは150℃、特に好ましくは120℃である。
【0047】
前記アリールカップリングによる重合反応において、反応終了後の反応系からの本発明の重合体の取り出しは公知の方法に準じて行うことができる。例えば、メタノール等の低級アルコールに反応溶液を加えて析出させた沈殿をろ過、乾燥することにより、本発明の重合体を得ることができる。得られた重合体の純度が低い場合は、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
【0048】
<有機光電変換素子>
本発明の有機光電変換素子は、例えば、一対の電極と、該電極間に設けられ、電子受容性化合物と電子供与性化合物とが隣接したヘテロ接合を有する層を有しているものであり、具体的には、
1.一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物を含有する第一の有機層と、該第一の有機層に隣接して設けられ電子供与性化合物を含有する第二の有機層とを有する有機光電変換素子であって、該電子供与性化合物又は該電子受容性化合物が前記重合体である有機光電変換素子;
2.一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子であって、該電子供与性化合物又は該電子受容性化合物が前記重合体である有機光電変換素子;
3.一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子であって、該電子供与性化合物が前記重合体であり、該電子受容性化合物がフラーレン誘導体である有機光電変換素子;
等が挙げられる。前記一対の電極は、通常、少なくとも一方が透明又は半透明であり、以下、その場合を一例として説明する。
【0049】
また、前記3.の有機光電変換素子では、電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する有機層における該電子受容性化合物の割合が、該電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。
【0050】
次に、有機光電変換素子の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーが電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0051】
有機光電変換素子が高い光電変換効率を有するためには、前記電子受容性化合物、前記電子供与性化合物が所望の入射光のスペクトルを効率よく吸収することができる吸収域を有するものであること、ヘテロ接合界面が励起子を効率よく分離するためにヘテロ接合界面を多く含むこと、ヘテロ接合界面が生成した電荷を速やかに電極へ輸送する電荷輸送性を有することが重要である。
【0052】
このような観点から、本発明の有機光電変換素子としては、前記2.又は前記3.が好ましく、ヘテロ接合界面を多く含むという観点からは、前記3.がより好ましい。また、本発明の有機光電変換素子には、少なくとも一方の電極と該素子中の有機層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層等が挙げられる。
【0053】
本発明の有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0054】
前記の透明又は半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。さらに電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができ、好ましくは一対の電極のうち一方の電極は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0055】
前記付加的な層としての電荷輸送層、即ち、ホール輸送層、電子輸送層に用いられる材料として、それぞれ後述の電子供与性化合物、電子受容性化合物を用いることができる。付加的な層としてのバッファ層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等無機半導体の微粒子を用いることもできる。
【0056】
・有機薄膜
本発明の有機光電変換素子における前記有機層(本発明の重合体を含有する有機層)としては、例えば、本発明の重合体を含有する有機薄膜を用いることができる。
【0057】
前記有機薄膜は、膜厚が、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0058】
前記有機薄膜は、本発明の重合体を一種単独で含んでいても二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、前記有機薄膜のホール輸送性を高めるため、前記有機薄膜中に電子供与性化合物及び/又は電子受容性化合物として、低分子化合物及び/又は本発明の重合体以外の重合体を混合して用いることもできる。
【0059】
前記電子供与性化合物としては、本発明の重合体のほか、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0060】
前記電子受容性化合物としては、本発明の重合体のほか、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体等が挙げられ、とりわけフラーレン類及びその誘導体が好ましい。
【0061】
なお、前記電子供与性化合物、前記電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0062】
フラーレン類としては、C60、C70、カーボンナノチューブ、及びその誘導体が挙げられる。誘導体の具体的構造としては、以下のようなものが挙げられる。
【0063】

【0064】
・有機薄膜の製造方法
前記有機薄膜は、如何なる方法で製造してもよく、例えば、本発明の重合体を含む溶液からの成膜による方法で製造してもよいし、真空蒸着法により薄膜に形成してもよい。
【0065】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明の重合体を溶解させるものであれば特に制限はない。この溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が挙げられる。本発明の重合体は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0066】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0067】
有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0068】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0069】
<素子の用途>
本発明の有機光電変換素子は、複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュール、有機イメージセンサーを構成することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
ポリスチレン換算の数平均分子量はサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)により求めた。
カラム: TOSOH TSKgel SuperHM-H(2本)+ TSKgel SuperH2000(4.6mm I.d. × 15cm);検出器:RI (SHIMADZU RID-10A);移動相:テトラヒドロフラン(THF)
【0072】
<合成例1>(化合物Cの合成)
3口の丸底フラスコ(500ml)に2−ブロモヨードベンゼン25.1g、ナフタレンボロン酸20.0g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.427g及び炭酸カリウム25.5gを加えた後、トルエン92ml及び水91mlを加え、加熱還流した。24時間攪拌した後、室温まで冷却した。反応溶液をシリカゲルを通してろ過し、溶媒を留去し、粗生成物25gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した後、ヘキサンを用いて再結晶を行い、下記式:

で表される化合物Aを白色固体として12.2g得た。
【0073】
300mlの3口フラスコを窒素置換し、化合物A 5.00g(17.7mmol)を加え、100mlのTHFに溶解させた。−78℃に冷却後、12.6mlのn−ブチルリチウム(1.54Mヘキサン溶液、19.4mmol)を滴下した。30分保温後、4.75g(21.2mmol)のシクロペンタデカノンを25mlのTHFに溶解させた溶液を滴下した。5分間保温後、冷浴を外し、室温まで昇温させ、8時間保温した。水1ml及びトルエン100mlを加え、シリカゲルを敷いたグラスフィルターを通し、ろ過した。溶媒を留去し、8.99gの粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=40:1)し、下記式:

で表される化合物Bを5.18g得た。
【0074】
窒素雰囲気下200mlの2口フラスコに三フッ化ホウ素エーテル錯体を仕込み、ジクロロメタン25mlを加えて攪拌した。水浴中で冷却しながら、化合物B 5gをジクロロメタン50mlに溶かした溶液を加えた。1時間攪拌した後、水100mlを加えて反応を停止し、クロロホルム50mlで二回抽出を行った。得られた有機相はプレコートした。シリカゲルを通してろ過し、下記式:

で表される化合物C 4.1gを得た。なお、この混合物は、これ以上精製することなく次の反応に用いた。
【0075】
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ1.30−1.52(m,24H),1.85(q,4H),7.33(t,1H),7.43(d,1H),7.50(t,1H),7.58〜7.65(m,2H),7.68(d,1H),7.82(d,1H),7.94(d,1H),8.36(d,1H),8.76(d,1H)
【0076】
<合成例2>(化合物Dの合成)
窒素雰囲気下、300mlの3口フラスコに化合物C 4.6gを仕込み、ジクロロメタン50mlを加えて溶解し、酢酸を70ml加えて油浴中50℃に加熱した。加熱しながら塩化亜鉛3.35gを加えて攪拌し、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド9.61gをジクロロメタン21mlに溶かした溶液を加熱還流しながら30分かけて加えた。さらに50℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却し、次いで、水100mlを加えて反応を停止した。分液し、水相はクロロホルム50mlで抽出し、有機相を合一した。有機相は飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液100mlで洗浄後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液150mlで洗浄し、最後に水100mlで洗浄した。得られた有機相はプレコートしたシリカゲルを通してろ過し、粗生成物6.8gを得た。この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記式:

で表される化合物D1.98gを得た。
【0077】
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ1.26−1.6(m,24H),1.76(q,4H),7.55(dd,1H),7.5807.71(m,2H),7.68(S,1h),7.96(S,1h),8.17(d,1H),8.38(dd,1H),8.67(d,1H)
【0078】
<合成例3>(化合物Fの合成)

【0079】
窒素雰囲気下、100 mLの三口フラスコに、化合物D 7.24g(12.7mmol)及び無水テトラヒドロフラン50mLを仕込み、攪拌しながら−78℃まで冷却した。そこへn−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.59M)17.6mL(28.0mmol)を30分かけて滴下し、さらに−70℃で5時間攪拌した。得られた溶液に、化合物E 6.8g(36.5mmol)を30分かけて滴下した後、室温まで昇温し、そのまま終夜攪拌した。得られた溶液に、1N塩酸水を1mL加え攪拌した後、得られた反応液を水50mL中に滴下した。次いで、得られた溶液を、酢酸エチル100mLで2回抽出し、得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレータにて有機相を濃縮することで粗結晶を4.44g得た。これをヘキサン/メタノール系で再結晶することでホウ酸エステル体(化合物F)を4.27g(収率50.8%)得た。
【0080】
1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ 1.40(s、24H)、1.30−1.56(m、24H)、1.83−1.93(m、4H)、7.56(t、1H)、7.62(t、1H)、7.91(d、1H)、7.97(s、1H)、8.26(s、1H)、8.37(d、1H)、8.80(d、1H)、8.88(d、1H)
【0081】
<合成例4>(高分子化合物1の合成)
窒素雰囲気下、三つ口フラスコに化合物F 1.15g(1.75mmol)と5,5'−ジブロモ−2,2'−ビチオフェン0.57g(1.75mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)0.88mg、及びメチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:aliquat336、Aldrich製、CH3N[(CH2)7CH3]3Cl、密度:0.884g/ml(25℃))0.2gを入れ、そこへ、あらかじめ30分間窒素バブリングしたトルエン18mlを加えた。得られた溶液を、105℃まで加熱し、2mol/lの炭酸ナトリウム水溶液3.23mlを滴下した。滴下終了後、得られた溶液を4時間加熱還流した。得られた溶液にフェニルボロン酸0.02gを加えて更に5時間加熱還流した後、そこへ、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物0.5gとイオン交換水6.18mlを加えて90℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、水相を除去し、有機相を60℃のイオン交換水30mlで3回、2重量%酢酸水溶液で3回、更に60℃のイオン交換水で3回洗浄した。シリカゲル−アルミナカラムで精製し、メタノールに沈殿させることにより、下記式:

(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
で表される高分子化合物1を0.79g得た。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは2.3×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.7×104であった。
【0082】
<合成例5>(高分子化合物2の合成)
化合物D(0.568g)及び2,2’−ビピリジル(0.422g)を、脱水したテトラヒドロフラン72mLに溶解した。次いで、窒素雰囲気下において、得られた溶液にビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)2}(0.743g)を加え攪拌し、60℃まで昇温後、3時間反応させた。得られた反応液を室温まで冷却し、25重量%アンモニア水4mL/メタノール72mL/イオン交換水72mLの混合溶液中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して減圧乾燥し、トルエン60mlに溶解させた。得られた溶液にラヂオライト4.6gを加えて2時間30分攪拌し、不溶解物を濾過した。得られた濾液を、アルミナカラムを通して精製した。次に、得られた有機相に5.2重量%塩酸水110mLを加え3時間攪拌した後に水相を除去した。次いで、得られた有機相に4重量%アンモニア水110mLを加え、2時間攪拌した後に水相を除去した。さらに、得られた有機相にイオン交換水約110mLを加え1時間攪拌した後、水相を除去した。その後、得られた有機相を30mlまで減圧濃縮し、メタノール90mlに注加して0.5時間攪拌し、析出した沈殿をろ過して減圧乾燥した。こうして、下記式:

(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
で表される高分子化合物2を0.12g得た。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは3.1×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは4.0×105であった。
【0083】
<合成例6>(化合物Kの合成)

【0084】
窒素雰囲気下にて、500 mLの三口フラスコに化合物G(15 g、64.4 mmol)、無水テトラヒドロフラン120mlを仕込み、−70℃まで冷却した。そこへ、n-ブチルリチウムへキサン溶液(1.59M)44.5ml(70.8 mmol)を30分かけて滴下し、そのまま同温度で2時間攪拌した。シクロペンタデカノン17.3g(77.1mmo.l)を30分かけて滴下後、室温に上げ、そのまま終夜攪拌した。得られた反応液を飽和塩化アンモニウム水200ml中に滴下し、酢酸エチル100mlによって2回抽出し、得られた有機相を水100mlによって洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレータにて濃縮し、得られた残渣に対してシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=95/5(容積割合))を行い、分画をそれぞれHPLC(高速液体クロマトグラフ)で分析し、HPLC純度90%以上の分画を集め、エバポレータで濃縮することにより油状の化合物Hを4.15 g得た。
【0085】

【0086】
0℃に冷却した三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体15.6g(110mmol)の100mlジクロロメタン溶液中に、化合物H 4.15gをジクロロメタン50mlに溶解させた液をゆっくり加え、室温で1時間攪拌した。水100mlを加えて反応を停止し、クロロホルム100mlで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレータで濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)にて精製することで油状物の化合物Iを3.65g(10.1mmol)得た。
1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ 1.30−1.70(m、24H)、1.70−1.82(m、4H)、7.31(t、2H)、7.33(t、2H)、7.59(d、2H)、7.72(d、2H)
【0087】

【0088】
窒素雰囲気下、100ml3口フラスコに化合物I 3.65g(10.1mmol)及びジクロロメタン12.5mlを加え、さらに酢酸50mlを加えた後、50℃に加熱した。加熱しながら塩化亜鉛2.9g(21.3mmol)を加え、攪拌した後、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド8.26g(21.2mmol)をジクロロメタン12.5mlに溶解した溶液を加熱還流しながら90分かけて加えた。さらに、こうして得られた溶液を50℃で30分間攪拌した後、室温まで冷却した。得られた溶液に水50mlを加えて反応を停止した。得られた溶液を、クロロホルム30mlを用いて抽出した。得られた有機相を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液50mlで洗浄後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、水50mlで順番に洗浄した。洗浄後の有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレータで濃縮することで化合物Jの粗生成物固体を得た。得られた固体について再結晶(ヘキサン/メタノール)を繰り返し、化合物J(白色固体)3.60g (HPLC純度>99.9%(254nm)、収率72.1%)を得た。
【0089】
1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ 1.30−1.70(m、24H)、1.70−1.82(m、4H)、7.46(d、2H)、7.54(d、2H)、7.58(s、2H)
【0090】

【0091】
窒素雰囲気下100 mLの三口フラスコに化合物J 3.60g(6.94mmol)及び無水テトラヒドロフラン50mLを仕込み、攪拌しながら−70℃まで冷却した。そこへn−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.59M)9.6mL(15.3mmol)を30分かけて滴下し、さらに−70℃で1時間攪拌した。化合物E 3.87g(20.8mmol)を30分かけて滴下した後、室温まで昇温し、そのまま終夜攪拌した。その後、得られた溶液に1N塩酸水1mLを加え攪拌した後、得られた反応液を水50mL中に滴下した。こうして得られた溶液を、酢酸エチル50mLを用いて抽出した。次いで、得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレータにて濃縮することで粗結晶を得た。これを再結晶(ヘキサン/メタノール)を繰り返すことでホウ酸エステル体化合物K 2.14g(HPLC純度99.8%(254nm)、収率50.3%)を得た。
【0092】
1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ 1.38(s、24H)、1.30−1.62(m、24H)、1.70−1.82(m、4H)、7.75(d、2H)、7.82(d、2H)、7.89(s、2H)
【0093】
<合成例7>(高分子化合物3の合成)
窒素雰囲気下、三つ口フラスコに、化合物K 0.367g(0.599mmol)、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン0.206g(0.630mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)0.4mg及びメチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:aliquat336、Aldrich製、CH3N[(CH2)7CH3]3Cl、密度:0.884g/ml(25℃))0.1gを入れ、そこにあらかじめ30分間窒素バブリングしたトルエン19mlを加えた。得られた溶液を105℃まで加熱し、そこに2mol/lの炭酸ナトリウム水溶液2mlを滴下した。滴下終了後、3時間加熱還流した。得られた溶液にフェニルボロン酸0.01gを加えて更に5時間加熱還流し、そこにN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物0.1gとイオン交換水2mlを加えて90℃で3時間撹拌した。得られた溶液を室温まで冷却後、水相を除去し、有機相を60℃のイオン交換水30mlで2回、2重量%酢酸水溶液で2回、更に60℃のイオン交換水で2回洗浄した。得られた有機相をエバポレータで濃縮し、得られた残渣をシリカゲル−アルミナカラムで精製し、メタノールに沈殿させることにより、下記式:

(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
で表される高分子化合物3を0.05g得た。高分子化合物3のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは2.5×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは4.9×103であった。
【0094】
<合成例8>(高分子化合物4の合成)
下記式:

で表される化合物L(特開2006−169502号公報に記載の方法に準じて合成した)9.98gと2,2’−ビピリジル7.03gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして、脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)1200mLを加えた。次に、得られた溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を12.36g加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
反応後、この反応溶液を冷却した後、この溶液に、25重量%アンモニア水86ml/メタノール770ml/イオン交換水770ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿を濾過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。得られたトルエン溶液を濾過し、不溶物を除去した。こうして得られたトルエン溶液を、アルミナを充填したカラムを通過させた。次に、得られたトルエン溶液を、1N塩酸水溶液で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、約3重量%アンモニア水で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、メタノール中にそそぎ込み、再沈生成した。
次に、生成した沈殿を回収し、メタノールで洗浄した後、得られた沈殿を減圧乾燥して、下記式:

(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
で表される高分子化合物4を9.94g得た。高分子化合物4のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは9.8×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは4.3×105であった。
【0095】
<合成例9>(高分子化合物5の合成)
窒素置換した1L三つ口フラスコに、下記式:

で表される化合物M 18.55g(34.98mmol)、5,5'−ジブロモ−2,2'−ビチオフェン 11.72g(36.17mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:aliquat336、Aldrich製、CH3N[(CH2)7CH3]3Cl、密度:0.884g/ml(25℃))4.00g、Pd(PPh3)2Cl2 0.023g及びトルエン300mlを入れ、55℃に加熱、撹拌した。そこへ、2mol/lの炭酸ナトリウム水溶液60mlを滴下し、滴下終了後、95℃に昇温し、24時間反応させた。得られた溶液に、フェニルボロン酸2.0g、テトラヒドロフラン40ml及びPd(PPh3)2Cl2 0.023gを加え、更に24時間反応させた。得られた溶液を400mlのトルエンで希釈し、有機相を抽出後、温水600mlで3回洗浄した。得られた溶液に7.5重量%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物水溶液300mlを加え、80℃で一晩撹拌した。静置して水相を除去後、2重量%酢酸600mlで洗浄し、続いて温水600mlで2回洗浄した。得られた溶液に500mlのトルエンを加え、3Lのメタノールに2回に分けて注加、再沈殿させた。得られた溶液をろ過して回収した重合体を1Lのメタノールで洗浄し、60℃で終夜真空乾燥した。得られた重合体を2Lの熱トルエンに溶解させ、セライト、シリカゲル及び塩基性アルミナを用いたカラムを通した。800mlの熱トルエンでカラムを洗浄し、得られた溶液を1300mlまで濃縮した。3Lのメタノールに2回に分けて注加し、重合体を再沈殿させ、得られた沈殿物をろ過して重合体を回収した。この重合体を、メタノール、アセトン、メタノール(各500ml)で順番に洗浄し、60℃で真空乾燥することにより、下記式:

(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
で表される高分子化合物5を得た。高分子化合物5のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは2.2×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは4.4×104であった。
【0096】
<実施例1>
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
電子受容性化合物であるPCBM(Phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製、商品名:E100)と、電子供与性化合物である高分子化合物1を、3対1(重量割合)で、o−ジクロロベンゼンに溶解させた。得られた溶液を、1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液を調製した。
【0097】
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、前記塗布液を用い、スピンコートにより塗布し、有機薄膜太陽電池の活性層(膜厚:80nm)を得た。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを4nm、次いで、アルミニウムを100nm蒸着することにより、有機薄膜太陽電池を作製した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜9×10-3Paであった。こうして得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜太陽電池の変換効率をソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUN II:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0098】
<実施例2、3、比較例1〜3>
実施例1において、電子供与性化合物である高分子化合物1、PCBMに対する割合(重量割合)を、表1の実施例2及び3並びに比較例1〜3の欄に示す高分子化合物、PCBMに対する割合(重量割合)に代えた以外は実施例1と同様にして、有機薄膜太陽電池を作製し、その評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0099】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1a)で表される構造及び/又は下記式(1b)で表される構造と、下記式(2)で表される構造とからなる繰り返し単位を含む重合体。

(式中、A環は6員環以上の単環の脂環式炭化水素を表す。該脂環式炭化水素は、炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよい。)

(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数6〜60のアリール基を表す。xは1又は2であり、yは0又は1であり、zは0、1又は2である。R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々、複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。該アルキル基及び該アルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。該アリール基は、置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
繰り返し単位が、下記式(3a)又は(3b)で表されるものである請求項1に記載の重合体。

(式中、A環、R1、R2、R3及びR4は、前記と同じ意味を表す。)
【請求項3】
A環に含まれる炭素数が7以上である請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
有機光電変換素子に用いられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項5】
一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物を含有する第一の有機層と、該第一の有機層に隣接して設けられ電子供与性化合物を含有する第二の有機層とを有する有機光電変換素子であって、該電子供与性化合物又は該電子受容性化合物が請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体である有機光電変換素子。
【請求項6】
一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子であって、該電子供与性化合物又は該電子受容性化合物が請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体である有機光電変換素子。
【請求項7】
一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子であって、該電子供与性化合物が請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体であり、該電子受容性化合物がフラーレン誘導体である有機光電変換素子。
【請求項8】
電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する有機層における該電子受容性化合物の割合が、該電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部である請求項7に記載の有機光電変換素子。

【公開番号】特開2008−247943(P2008−247943A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87282(P2007−87282)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】