説明

有機光電変換素子

【課題】光電変換時の電圧が高い有機光電変換素子を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に光活性層と機能層とを含み、該光活性層が電子供与性化合物と電子受容性化合物とを含み、該機能層が式(I)で表される構造を有する高分子化合物を架橋させた架橋高分子化合物を含む有機光電変換素子。


(I)

(式中、Ar1、Ar2は、2価の芳香族基を表す。Xは、式(II)で表される基又はアジ基、ジ(ヒドロカルビル)アミノ基、ヒドロキシ基、アクリル酸アルキルエステル残基、メタクリル酸アルキルエステル残基、エテニル基、エテニルオキシ基、ペルフルオロエテニルオキシ基、エチニル基、マレイミド残基、ナジイミド残基、トリアルキルシロキシ基及びトリアルキルシリル基からなる群から選択される1つ以上の置換基を含むアリーレン基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミンポリマーを含む機能層を有する有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のため、大気中に放出されるCO2の削減が求められている。CO2の削減の有力な手段として、例えば、家屋の屋根にpn接合型のシリコン系太陽電池などの光電気化学電池を用いるソーラーシステムへの切り替えが提唱されている。しかしながら、上記シリコン系光電気化学電池に用いられる単結晶、多結晶及びアモルファスシリコンは、その製造過程において高温、高真空条件が必要なために高価であるという問題がある。
【0003】
一方、有機薄膜太陽電池は、シリコン系太陽電池のように高温、高真空プロセスが省略でき、塗布プロセスのみで安価に製造できる可能性があり、近年注目されてきている。有機薄膜太陽電池としては、電子供与性化合物としての共役重合体と有機受容性化合物からなる活性層を有する有機薄膜太陽電池(特許文献1)、透明電極と活性層との間にPEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む中間層を有する有機薄膜太陽電池(特許文献2)が知られている。
【0004】
【特許文献1】特表平8−500701号公報
【特許文献2】特表2006−527491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機薄膜太陽電池の光電変換効率を高める要因の1つに、光電変換時の電圧がある。しかしながら、前記有機薄膜太陽電池光電変換時の電圧が、必ずしも高くなく、光電変換時の電圧の更なる向上が望まれている。本発明の目的は、光電変換時の電圧が高い有機光電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は第一に、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に光活性層と機能層とを含み、該光活性層が電子供与性化合物と電子受容性化合物とを含み、該機能層が式(I)で表される構造を有する高分子化合物を架橋させた架橋高分子化合物を含む有機光電変換素子を提供する。

(I)

(式中、Ar1、Ar2は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。窒素原子を挟んで存在するAr1及びAr2において、該Ar1中の原子と該Ar2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。mは1以上の整数を表す。Ar2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。窒素原子を挟んで存在する2個のAr2において、一方のAr2中の原子ともう一方のAr2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。Xは、式(II)で表される基又はアジ基、ジ(ヒドロカルビル)アミノ基、ヒドロキシ基、アクリル酸アルキルエステル残基、メタクリル酸アルキルエステル残基、エテニル基、エテニルオキシ基、ペルフルオロエテニルオキシ基、エチニル基、マレイミド残基、ナジイミド残基、トリアルキルシロキシ基及びトリアルキルシリル基からなる群から選択される1つ以上の置換基を含むアリーレン基を表す。該式(II)で表される基及び該アリーレン基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。


(II)
(式中、R1〜R3は、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基又はハロカルビル基を表し、R4は、単結合、ヒドロカルビレン基、ハロヒドロカルビレン基又はハロカルビレン基を表す。)
【0007】
本発明は第二に、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に光活性層と機能層とを含む有機光電変換素子の製造方法において、一方の電極上に式(I)で表される構造を有する高分子化合物を含む機能層を形成する工程と、該高分子化合物を熱及び/又は光により架橋する工程と、該機能層上に電子供与性化合物と電子受容性化合物とを含む光活性層を形成する工程とを含む有機光電変換素子の製造方法を提供する。

(I)

(式中、Ar1、Ar2は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。窒素原子を挟んで存在するAr1及びAr2において、該Ar1中の原子と該Ar2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。mは1以上の整数を表す。Ar2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。窒素原子を挟んで存在する2個のAr2において、一方のAr2中の原子ともう一方のAr2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。Xは、式(II)で表される基又はアジ基、ジ(ヒドロカルビル)アミノ基、ヒドロキシ基、アクリル酸アルキルエステル残基、メタクリル酸アルキルエステル残基、エテニル基、エテニルオキシ基、ペルフルオロエテニルオキシ基、エチニル基、マレイミド残基、ナジイミド残基、トリアルキルシロキシ基及びトリアルキルシリル基からなる群から選択される1つ以上の置換基を含むアリーレン基を表す。該式(II)で表される基及び該アリーレン基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。


(II)
(式中、R1〜R3は、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基又はハロカルビル基を表し、R4は、単結合、ヒドロカルビレン基、ハロヒドロカルビレン基又はハロカルビレン基を表す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機光電変換素子は、光電変換時の電圧が高いため、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の有機光電変換素子は、式(I)で表される構造を有する高分子化合物を架橋させた架橋高分子化合物を含む機能層を有する。式(I)中、Xは、式(II)で表される基又はアジ基、ジ(ヒドロカルビル)アミノ基、ヒドロキシ基、アクリル酸アルキルエステル残基、メタクリル酸アルキルエステル残基、エテニル基、エテニルオキシ基、ペルフルオロエテニルオキシ基、エチニル基、マレイミド残基、ナジイミド残基、トリアルキルシロキシ基及びトリアルキルシリル基からなる群から選択される1つ以上の置換基を含むアリーレン基を表す。


(II)
(式中、R1〜R3は、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基又はハロカルビル基を表し、R4は、単結合、ヒドロカルビレン基、ハロヒドロカルビレン基又はハロカルビレン基を表す。)
【0011】
ここで、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0012】
ヒドロカルビル基とは、炭素原子及び水素原子からなる1価の基を意味し、具体例としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基などのアルキル基等が挙げられる。ヒドロカルビル基に含まれる炭素原子の数は、1〜20が好ましい。
【0013】
ハロヒドロカルビル基とは、炭素原子、ハロゲン原子及び水素原子からなる1価の基を意味し、具体例としては、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ブロモフェニル基などのハロゲン化アリール基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、クロロブチル基、クロロオクチル基、ブロモメチル基、ブロモオクチル基などのハロゲン化アルキル基等が挙げられる。ハロヒドロカルビル基に含まれる炭素原子の数は、1〜20が好ましい。
【0014】
ハロカルビル基とは、炭素原子及びハロゲン原子からなる1価の基を意味し、具体例としては、ペンタクロロフェニル基、ヘプタクロロナフチル基、ペンタブロモフェニル基、ヘプタブロモナフチル基などのアリール基、トリクロロメチル基、ペンタクロロエチル基、トリブロモメチル基、ペンタブロモエチル基などのアルキル基等が挙げられる。ハロカルビル基に含まれる炭素原子の数は、1〜20が好ましい。
【0015】
ヒドロカルビレン基とは、炭素原子及び水素原子からなる2価の基を意味し、フェニレン基などのアリーレン基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基などのアルキレン基等が挙げられる。ヒドロカルビレン基に含まれる炭素原子の数は、1〜20が好ましい。
【0016】
ハロヒドロカルビレン基としては、クロロフェニレン基、ジクロロフェニレン基、トリクロロフェニレン基などのハロゲン化アリーレン基、クロロメチレン基、クロロエチレン基、クロロプロピレン基、クロロブチレン基、クロロオクチレン基、ブロモメチレン基、ブロモオクチレン基などのハロゲン化アルキレン基等が挙げられる。ハロヒドロカルビレン基に含まれる炭素原子の数は、1〜20が好ましい。
【0017】
ハロカルビレン基としては、テトラクロロフェニレン基、ヘキサクロロナフチレン基、テトラブロモフェニレン基、ヘキサブロモナフチレン基などのアリーレン基、ジクロロメチレン基、テトラクロロエチレン基、ジブロモメチレン基、テトラブロモエチレン基などのアルキレン基等が挙げられる。ハロカルビレン基に含まれる炭素原子の数は、1〜20が好ましい。
【0018】
ジ(ヒドロカルビル)アミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などのジアリールアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジオクチルアミノ基などのジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0019】
アクリル酸アルキルエステル残基としては、アクリル酸メチル基、アクリル酸エチル基、アクリル酸ブチル基等の残基が挙げられる。アクリル酸アルキルエステル残基中、アルキルに含まれる炭素原子の数は、1〜4が好ましい。
【0020】
メタクリル酸アルキルエステル残基としては、メタクリル酸メチル基、メタクリル酸エチル基、メタクリル酸ブチル基等の残基が挙げられる。メタクリル酸アルキルエステル残基中、アルキルに含まれる炭素原子の数は、1〜4が好ましい。
【0021】
マレイミド残基としては、マレイミド基、N−メチルマレイミド基、N−エチルマレイミド基、N−ブチルマレイミド基、N−オクチルマレイミド基、N−フェニルマレイミド基等の残基が挙げられる。
【0022】
ナジイミド残基としては、ナジイミド基、N−メチルナジイミド基、N−エチルナジイミド基、N−ブチルナジイミド基、N−オクチルナジイミド基、N−フェニルナジイミド基等の残基が挙げられる。
【0023】
トリアルキルシロキシ基としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリブチルシロキシ基等が挙げられる。トリアルキルシロキシ基中、アルキルに含まれる炭素原子の数は、1〜4が好ましい。
【0024】
トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基等が挙げられる。トリアルキルシリル基中、アルキルに含まれる炭素原子の数は、1〜4が好ましい。
【0025】
Xが、アジ基、ジ(ヒドロカルビル)アミノ基、ヒドロキシ基、アクリル酸アルキルエステル残基、メタクリル酸アルキルエステル残基、エテニル基、エテニルオキシ基、ペルフルオロエテニルオキシ基、エチニル基、マレイミド残基、ナジイミド残基、トリアルキルシロキシ基及びトリアルキルシリル基からなる群から選択される1つ以上の置換基を含むアリーレン基である場合、該置換基の具体例としては、下記基等が挙げられる。


(式中、R5は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基又はハロカルビル基を表し、R6は、ヒドロカルビレン基、ハロヒドロカルビレン基又はハロカルビレン基を表し、pは0又は1を表す。R5、R6を複数個有する場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0026】
Xが、式(II)で表される基である場合、該基の具体例としては、下記基等が挙げられる。

(式中、R5、R6は、前述と同じ意味を表す。)
【0027】
Xは、式(II)で表される基が好ましい。
【0028】
Ar1、Ar2は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。該芳香族基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、スチルベンジイル基及びフルオレンジイル基が好ましい。該芳香族基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アリール基等があげられる。
【0029】
mは1以上の整数を表す。1〜5であることが好ましい。
【0030】
式(I)中、窒素原子を挟んで存在するAr1及びAr2において、該Ar1中の原子と該Ar2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。また、窒素原子を挟んで存在する2個のAr2において、一方のAr2中の原子ともう一方のAr2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。具体的には、式(I)で表される構造が、下記構造等である場合が挙げられる。



(式中、Xは、前述と同じ意味を表す。Yは、単結合、−O−、−S−又は−NR7−を表し、R7は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、S、N、O、P、B及びSiからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換されたヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基、S、N、O、P、B及びSiからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換されたハロヒドロカルビル基を表す。該ヒドロカルビル基、該ハロヒドロカルビル基中の水素原子は、Xで置換されていてもよい。)
【0031】
7で表されるハロゲン原子、ヒドロカビル基、ハロヒドロカルビル基の具体例は、前述と同じ原子、基が挙げられる。
【0032】
7で表されるS、N、O、P、B及びSiからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換されたヒドロカルビル基の具体例は、以下の基等が挙げられる。


(式中、Meはメチル基を表す。)
【0033】
7で表されるS、N、O、P、B及びSiからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換されたハロヒドロカルビル基の具体例は、以下の基等が挙げられる。


(式中、Meはメチル基を表す。)
【0034】
好ましいR7としては、炭素数1〜20のヒドロカルビル基があげられ、より好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、またはアリール基である。
【0035】
式(I)で表される構造の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。


【0036】

【0037】

【0038】
本発明に用いられる高分子化合物は、さらに、繰り返し単位としてフルオレンジイル基および/または式(III)で表される基を含んでいてもよい。


(III)
(式中、Ar3、Ar4は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。窒素原子を挟んで存在するAr3及びAr4において、該Ar3中の原子と該Ar4中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。nは1以上の整数を表す。Ar4が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。窒素原子を挟んで存在する2個のAr4において、一方のAr4中の原子ともう一方のAr4中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。Ar5は、置換基を有していてもよい1価の芳香族基を表す。Ar5が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0039】
好ましいフルオレンジイル基としては、式(IV)で表される基が挙げられる。

(IV)
(式中、R8、R9は、水素原子又は置換基を表す。)
【0040】
8、R9で表される置換基としては、炭素数1〜20のヒドロカルビル基が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基が挙げられる。
【0041】
フルオレンジイル基の具体例としては、下記基等が挙げられる。

【0042】
Ar3、Ar4で表される2価の芳香族基の具体例としては、前述のAr1で表される2価の芳香族基と同様の基が挙げられる。
【0043】
式(III)において、窒素原子を挟んで存在するAr3及びAr4において、該Ar3中の原子と該Ar4中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。また、窒素原子を挟んで存在する2個のAr4において、一方のAr4中の原子ともう一方のAr4中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。具体的には、式(III)で表される基が、下記基等である場合が挙げられる。




(式中、Y’は、単結合、−O−、−S−又は−NR10−を表し、R10は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、S、N、O、P、B及びSiからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換されたヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基、S、N、O、P、B及びSiからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換されたハロヒドロカルビル基を表す。
【0044】
式(III)で表される基の具体例としては、以下のような基が挙げられる。


【0045】

【0046】
<有機光電変換素子>
本発明の有機光電変換素子において、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に、1層以上の光活性層と有機層である機能層を有する。光活性層は、全て有機層であってもよく、酸化チタン等の無機物が含まれていてもよい。有機光電変換素子の製造プロセスの観点からは、光活性層は、全て有機層であることが好ましい。
本発明の有機光電変換素子の好ましい形態としては、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、p型の有機半導体とn型の有機半導体との有機組成物から形成される光活性層を有する。この形態の有機光電変換素子の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーがフラーレン誘導体等の電子受容性化合物及び/又は共役高分子化合物等の電子供与性化合物で吸収され、電子とホールが結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると、界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0047】
本発明の有機光電変換素子の具体的な例としては、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられる光活性層と、光活性層と電極間に式(I)で表される構造を有する高分子化合物を架橋させた架橋高分子化合物を含む機能層を有する有機光電変換素子が挙げられる。
【0048】
前記機能層の厚みは、通常、1nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは、1nm〜100nm、さらに好ましくは、1nm〜20nmである。
【0049】
本発明に用いる機能層は、電極上に積層されたPEDOT等の中間層の上に積層して用いてもよい。
【0050】
本発明に用いる機能層は、高分子化合物を含む溶液を電極上に塗布して膜を成膜した後、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上の温度をかけて高分子化合物を架橋させることにより製造することができる。
【0051】
本発明の有機光電変換素子に含まれる光活性層は、電子供与性化合物と電子受容性化合物とを含む。電子供与性化合物としては、共役高分子化合物であることが好ましく、該共役高分子化合物が、チオフェン環構造を含むことがより好ましい。また、電子受容性化合物としては、フラーレン又はフラーレン誘導体であることが好ましい。
【0052】
電子受容性化合物としてフラーレン誘導体を用いる場合、フラーレン誘導体の割合が、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。
【0053】
光活性層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは20nm〜200nmである。
【0054】
本発明の有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0055】
前記の透明又は半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。さらに電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができ、好ましくは一対の電極のうち一方の電極は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0056】
付加的な層としてのバッファ層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等無機半導体の微粒子を用いることもできる。
【0057】
<機能層の製造方法>
前記機能層の製造方法は、例えば、高分子化合物を含む溶液からの成膜による方法が挙げられる。
【0058】
成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0059】
本発明の有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0060】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
合成例1
(ポリマーAの合成)
A)ジフェニルベンゾシクロブタンアミン(化合物1)の合成
窒素気流下、還流冷却器を装備した500mLの三つ口丸底フラスコ中で、酢酸パラジウム(II)(196mg、1.20mmol)及びトリ(o−トリル)ホスフィン(731mg、2.40mmol)をトルエン100mLに添加した。パラジウム触媒が溶解し溶液が黄色になるまで、混合物を窒素中、室温で撹拌した。ジフェニルアミン(20.0g、118mmol)、ブロモベンゾシクロブタン(23.8g、130mmol)及びトルエン400mL、続いてt−ブトキシドナトリウム(22.8g、237mmol)を添加した。t−ブトキシドナトリウムを添加すると、反応物が黒色になった。反応物を窒素下で22時間加熱還流した後、1M塩化水素(HCl)水溶液30mLを添加することによって、反応を止めた。トルエン層を2M炭酸ナトリウム(Na2CO3)(100mL)で洗浄し、次いで、トルエン溶液を塩基性アルミナに通した。トルエンを蒸発させると、黄色オイルが得られた。オイルをイソプロパノールとともに撹拌することによって、生成物を沈殿させ、固体を収集し、熱イソプロパノールで再結晶化し、ジフェニルベンゾシクロブタンアミンを得た。1H NMR(CDCl3−d)δ:7.3−6.8(m,13H,Ar),3.12(d,4H,−CH2CH2−)。
【0063】
B)ジ(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブタンアミン(化合物2)の合成
250mLの丸底フラスコ中で、ジフェニルベンゾシクロブタンアミン(8.00g、29.5mmol)を氷酢酸5滴を含有するジメチルホルムアミド(DMF)100mLに添加した。撹拌中の溶液に、N−ブロモスクシンイミド(NBS、10.5g、60.7mmol、1.97eq.)を添加した。5時間撹拌した後、反応混合物をメタノール/水(体積比1:1)600mLに注ぎ入れることによって、反応を止めた。灰色固体をろ過によって回収し、イソプロパノールで再結晶化し、ジ(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブタンアミン(化合物2)を得た。1H NMR(CDCl3−d)δ:7.3(d,4H,Ar),7.0(d,4H,Ar),6.95(t,Ar),6.8(s,Ar),3.12(d,4H,−CH2CH2−)。
【0064】
C)ポリマーAの合成
還流冷却器を装備した1リットルの三つ口丸底フラスコに、次のモノマー:2,7−ビス(1,3,2−ジオキシボロール)−9,9−ジ(1−オクチル)フルオレン(3.818g、8.14mmol)、N,N−ジ(p−ブロモフェニル)−N−(4−(ブタン−2−イル)フェニル)アミン(3.177g、6.919mmol)及び化合物2( 0.524g、1.221mmol)を添加した。第四級アンモニウムクロライド触媒の0.74Mトルエン溶液(Aliquat(登録商標)336、Sigma−Aldrich社製、3.1mL)、続いてトルエン50mLを添加した。PdCl2(PPh32触媒(4.9mg)を添加した後、混合物を、モノマーのすべてが溶解する(約15分間)まで油浴(105℃)中で撹拌した。炭酸ナトリウム水溶液(2.0M、14mL)を添加し、反応物を油浴(105℃)中、16.5時間撹拌した。次いで、フェニルボロン酸(0.5g)を添加し、反応物を7時間撹拌した。その後、水層を除去し、有機層を水50mLで洗浄した。有機層を反応フラスコに戻し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.75g及び水50mLを添加し、反応物を油浴(85℃)中、16時間撹拌した。水層を除去し、有機層を水(3×100mL)で洗浄し、次いでシリカゲル及び塩基性アルミナのカラムに通した。次いで、トルエン/ポリマー溶液をメタノールに注いでポリマーを沈殿させ(2回)、ポリマーを60℃で真空乾燥し、ポリマーAを得た。ポリマーAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したところ、ポリスチレン換算の重量平均分子量(M w)は324000であり、分散(Mw/Mn)は3.5であった。
【0065】
実施例1
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、PEDOTを含む溶液を塗布し、70nmの膜厚の中間層を作製し、その後、200℃で10分間ベークした。その上から更にポリマーAのキシレン溶液を塗布してポリマーAを含む層を作製し、その後、180℃で10分間ベークしてポリマーAを架橋させ、機能層を作製した。次に、共役高分子化合物であるP3HT((ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(Poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)、Sigma−Aldrich社製)及びフラーレン誘導体であるPCBM(phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製)を含むオルトジクロロベンゼン溶液を用い、スピンコートにより塗布して光活性層を作製した(膜厚約180nm)。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを厚さ4nmで蒸着し、次いでAlを厚さ100nmで蒸着した。得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜太陽電池の光電変換時の電圧をソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)で測定したところ、0.97Vであった。


ポリマーA
【0066】
比較例1
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
機能層を有さない以外は、実施例1と同様の方法で有機光電変換素子を作製し、光電変換時の電圧を測定したところ、0.47Vであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に光活性層と機能層とを含み、該光活性層が電子供与性化合物と電子受容性化合物とを含み、該機能層が式(I)で表される構造を有する高分子化合物を架橋させた架橋高分子化合物を含む有機光電変換素子。


(I)

(式中、Ar1、Ar2は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。窒素原子を挟んで存在するAr1及びAr2において、該Ar1中の原子と該Ar2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。mは1以上の整数を表す。Ar2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。窒素原子を挟んで存在する2個のAr2において、一方のAr2中の原子ともう一方のAr2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。Xは、式(II)で表される基又はアジ基、ジ(ヒドロカルビル)アミノ基、ヒドロキシ基、アクリル酸アルキルエステル残基、メタクリル酸アルキルエステル残基、エテニル基、エテニルオキシ基、ペルフルオロエテニルオキシ基、エチニル基、マレイミド残基、ナジイミド残基、トリアルキルシロキシ基及びトリアルキルシリル基からなる群から選択される1つ以上の置換基を含むアリーレン基を表す。該式(II)で表される基及び該アリーレン基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。


(II)
(式中、R1〜R3は、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基又はハロカルビル基を表し、R4は、単結合、ヒドロカルビレン基、ハロヒドロカルビレン基又はハロカルビレン基を表す。)
【請求項2】
Xが、式(II)で表される基である請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項3】
高分子化合物が、さらに、繰り返し単位としてフルオレンジイル基および/または式(III)で表される基を含む請求項1又は2に記載の有機光電変換素子。


(III)
(式中、Ar3、Ar4は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。窒素原子を挟んで存在するAr3及びAr4において、該Ar3中の原子と該Ar4中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。nは1以上の整数を表す。Ar4が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。窒素原子を挟んで存在する2個のAr4において、一方のAr4中の原子ともう一方のAr4中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。Ar5は、置換基を有していてもよい1価の芳香族基を表す。Ar5が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【請求項4】
電子供与性化合物が、共役高分子化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
共役高分子化合物が、チオフェン環構造を含む請求項4に記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
電子受容性化合物が、フラーレン又はフラーレン誘導体である請求項1〜5のいずれかに記載の有機光電変換素子。
【請求項7】
請求項1〜7のいずれかに記載の有機光電変換素子を含むイメージセンサー。
【請求項8】
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に光活性層と機能層とを含む有機光電変換素子の製造方法において、一方の電極上に式(I)で表される構造を有する高分子化合物を含む機能層を形成する工程と、該高分子化合物を熱及び/又は光により架橋する工程と、該機能層上に電子供与性化合物と電子受容性化合物とを含む光活性層を形成する工程とを含む有機光電変換素子の製造方法。

(I)

(式中、Ar1、Ar2は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。窒素原子を挟んで存在するAr1及びAr2において、該Ar1中の原子と該Ar2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。mは1以上の整数を表す。Ar2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。窒素原子を挟んで存在する2個のAr2において、一方のAr2中の原子ともう一方のAr2中の原子とが、単結合又は2価の基を介して結合していてもよい。Xは、式(II)で表される基又はアジ基、ジ(ヒドロカルビル)アミノ基、ヒドロキシ基、アクリル酸アルキルエステル残基、メタクリル酸アルキルエステル残基、エテニル基、エテニルオキシ基、ペルフルオロエテニルオキシ基、エチニル基、マレイミド残基、ナジイミド残基、トリアルキルシロキシ基及びトリアルキルシリル基からなる群から選択される1つ以上の置換基を含むアリーレン基を表す。該式(II)で表される基及び該アリーレン基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。


(II)
(式中、R1〜R3は、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基又はハロカルビル基を表し、R4は、単結合、ヒドロカルビレン基、ハロヒドロカルビレン基又はハロカルビレン基を表す。)

【公開番号】特開2010−10246(P2010−10246A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165412(P2008−165412)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】