説明

有機光電構成素子およびその製造方法

有機光電構成素子であって、第1の電極と、該第1の電極の上に配置された第1の平坦化層と、該第1の平坦化層の上に配置された第1の注入層と、該第1の注入層の上に配置された有機機能層と、該有機機能層の上に配置された第2の電極とを有し、第1の電極がアノードである場合には、エネルギーレベルに対して:E−EHOMO、Inj.<E−EHOMO、Plan.かつE−EHOMO、Inj.<E−EHOMO、Funk.が成り立ち、または第1の電極がカソードである場合には、エネルギーレベルに対して:ここでEはフェルミエネルギー、EHOMOはそれぞれの層が最大で有するエネルギーレベルのエネルギー、そしてELUMOはそれぞれの層が最小で有しないエネルギーレベルのエネルギーである有機光電構成素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許願は、ドイツ特許出願102009047883.3の優先権を主張するものであり、その開示内容はここに参照として取り入れる。
【0002】
請求項1による有機光電構成素子が記載される。
【背景技術】
【0003】
有機光電構成素子の製造の際の大きな問題は、構成素子の内部を指す電極の表面上に小さな粒子または他の汚染物が堆積することがあり、またはこの表面がたとえば金属先端を有することがあることである。これはたとえば構成素子における局所的短絡、または局所的に高抵抗の電流経路の原因となり得る。この問題を取り除くためにこれまで使用された手段は、表面に非常に面倒なクリーニング法を施すことである。別の解決アプローチは、厚い層を電極の上に取付け、金属先端を覆うことである。このような層ではとりわけ、ランダムなばらつきが電流電圧特性曲線に発生するという問題が生じる。その原因は、たとえば汚染に起因する局所的な層厚の変動である。ここからさらに、プロセス安定性に不利に作用する抵抗変動が生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の課題は、多数の構成素子における電流電圧特性曲線のランダムなばらつきが緩和された有機光電構成素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1による有機光電構成素子によって解決される。有機光電構成素子のさらなる実施形態は従属請求項の対象である。
【0006】
本発明の実施形態による有機光電構成素子は、
・第1の電極と、
・該第1の電極の上に配置された第1の平坦化層と、
・該第1の平坦化層の上に配置された第1の注入層と、
・該第1の注入層の上に配置された有機機能層と、
・該有機機能層の上に配置された第2の電極とを有し、
第1の電極がアノードである場合には、エネルギーレベルに対して:
−EHOMO、Inj.≦E−EHOMO、Plan.かつE−EHOMO、Inj.<E−EHOMO、Funk.が成り立ち、または
第1の電極がカソードである場合には、エネルギーレベルに対して:
LUMO、Inj.−E≦ELUMO、Plan.−EかつELUMO.Inj.−E<ELUMO、Funk−Eが成り立ち、
ここでEはフェルミエネルギー、EHOMOはそれぞれの層が最大で有するエネルギーレベルのエネルギー、そしてELUMOはそれぞれの層が最小で有しないエネルギーレベルのエネルギーである。
【0007】
第1の電極がアノードである場合には、有利にはエネルギーレベルに対して:
−EHOMO、Inj.<E−EHOMO、Plan.かつE−EHOMO、Inj.<E−EHOMO、Funk.が成り立ち、または
第1の電極がカソードである場合には、エネルギーレベルに対して:
LUMO、Inj.−E<ELUMO、Plan.−EかつELUMO.Inj.−E<ELUMO、Funk−Eが成り立つ。
【0008】
第1の平坦化層を第1の注入層と所期のように組み合わせることにより、電流電圧特性曲線におけるランダムなばらつきが格段に低減される。第1の平坦化層、第1の注入層、および有機機能層のエネルギーレベルを所期のように整合することにより、内部リザーブが形成される。有機光電構成素子の作動中に第1の電極から放出される電荷担体は、第1の平坦化層を通って第1の注入層へ移動する。エネルギーレベルに基づいて第1の注入層内にはポテンシャルポットが形成され、このポテンシャルポット内に電荷担体が集まることができる。注入層のポテンシャルポットにより形成されたこの内部リザーブは有機光電構成素子内部にあり、すなわち構成素子の2つの電極間にある。したがってこの内部リザーブにより、電極または平坦化層の局所的な抵抗変動を調整することができる。構成素子内の電荷担体輸送がこれにより安定し、場合により発生する電界変動または抵抗変動を調整することができる。ポテンシャルポットは電荷担体に対する固有のソースであり、このソースは構成素子の作動中に電荷担体を一定の量で、有機機能層が続く所定の平面に放出することができる。これにより電極の内側に汚染または金属先端が存在しても、安定した電荷輸送を構成素子内で達成することができる。
【0009】
本発明の別の実施形態では、第1の電極がアノードである場合にエネルギーレベルに対して:
−EHOMO、Plan.<E−EHOMO、Funk.が成り立ち、または
第1の電極がカソードである場合には、エネルギーレベルに対して:
LUMO、FUnk−E<ELUMO、Plan.−Eが成り立つ。
【0010】
エネルギーレベルを対応して整合することにより、ポテンシャルポットの高い「側壁」を決定することができる。この側壁の高さは、エネルギー的には電荷担体が次に隣接する層へ達するために乗り越えなければならない抵抗である。この抵抗を十分に高く選択すれば、ポテンシャルポット内に十分な電荷担体が集まることが保証され、注入層内の電荷担体を、これに続く層への注入のためにいつでも使用できるようになる。したがって電荷担体を、時間的および/または空間的に均等に一定に放出することができる。側壁の高さにより、ポテンシャルポットの電荷担体における「貯蔵能力」も調整することができる。
【0011】
本発明の別の実施形態では、第1の電極から放出された電荷担体が第1の注入層内に蓄積される。これは、有機光電構成素子の作動中に電荷担体密度が注入層においては、これに直接隣接する層におけるよりも高いことを意味する。
【0012】
本発明の別の実施形態では、第1の注入層に蓄積された電荷担体がこれに続く層に注入される。
【0013】
蓄積された電荷担体のこれに続く層への注入は、これに続く層に連続的に一定の電荷担体が供給されることを保証し、これにより構成素子内での電荷輸送が安定化される。
【0014】
本発明の別の実施形態では、第1の平坦化層(RPlan.)と第1の注入層(RInj.)の抵抗Rならびに境界面抵抗に対しては第1の平坦化層と第1の注入層とが接触することにより(RKontakt、Inj.)、ならびに境界面抵抗に対しては第1の注入層と有機機能層とが接触することにより(RKontakt、Funk.)条件:
Plan.+RKontakt、Inj.≦RInj.+RKontakt、Funk.が成り立つ。
【0015】
ここで平坦化層の抵抗は好ましくは、注入層の抵抗の範囲にある。
【0016】
本発明の別の実施形態では、第1の注入層は1から20nmの層厚を有する。
【0017】
ここでは1から3nmの範囲が好ましい。非常に薄い注入層は電荷担体輸送の安定性を格段に高めることができる。これの利点は、すでに厚い平坦化層を非常に厚い層の上に施与する必要がないことである。そうでないと、構成素子の層厚全体が拡大することになってしまう。
【0018】
さらにより好ましくは3から20nmの範囲である。この厚さの層は、電荷輸送に関してすでに良好な安定特性を有している。
【0019】
本発明の別の実施形態では、第1の注入層にドープされる。第1の電極がアノードの場合、第1の注入層は好ましくはpドープされる。第1の電極がカソードの場合、第1の注入層は好ましくはnドープされる。
【0020】
注入層をドープすることにより、たとえばそのエネルギーレベルを所期のように調整することができる。さらにドープすることにより、注入層での電荷担体輸送または電荷担体蓄積を改善することができる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、ドープ物質は次から選択される:MoO、MoO、WO、ReO、Re、V。これらのドープ物質は、好ましくはpドーパンドとして使用される。
【0022】
本発明の別の実施形態では、第1の注入層は次から選択される混合材料を有する:
Alq(LUMO−3.1eV)、BCP(LUMO−2.9eV)、Bphen(LUMO−2.9eV)、NTCDA(LUMO−4.0eV)、ZnPc、THAP(LUMO−4.6eV)。ここでこの混合材料は以下の物質の1つによりnドープされている:Li、Cs、BEDT−TTF、ピロニン−B−塩化物、CsCO、Ru(テルピー)、CoCp。ここで「LUMO」は、最小の非占有分子軌道に対するものである。
【0023】
本発明の別の実施形態では、第1の注入層は次から選択される物質を有する:4、4’4、4’’−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミノ、フタロシアニン銅複合体、4、4’、4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミノ、N、N’−ビス(ナフタリン−1−yl)−N、N’−ビス(フェニル)ベンジジン、2、2’、7、7’−テトラキス(N、N−ジフェニルアミン)−9、9’−スピロビフルオレン、ジ−[4=(N、N−ジトリルアミン)−フェニル]シクロヘキサン、N、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N、N’ービス(フェニル)−ベンジジン。
【0024】
以下の表にはそれぞれの物質がそれぞれ最高で有する分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルが記入されている。
【表1】

【0025】
HOMOの位置はたとえばサイクロボルタンメトリーによって決定することができる。
【0026】
本発明の別の実施形態では、第1の注入層は次から選択される物質を有する:
PEDOT:PSS、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、ポリ(N、N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N、N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリアニリン。
【0027】
以下の表にはこれら3つの物質に対するHOMO範囲が記入されている。
【表2】

【0028】
個々の層の正確なエネルギーレベル値は、それぞれのドーピングにより調整することができる。したがって第1の注入層と第1の平坦化層に対して、正確なエネルギーレベルをドープ物質により調整することのできる同じ混合材料を使用することができる。
【0029】
本発明の別の実施形態では、第1の平坦化層は次から選択される物質を有する:
PEDOT:PSS、PEDOTベースの材料、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、ポリ(N、N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N、N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリアニリン。
【0030】
本発明の別の実施形態では、第1の平坦化層は無機平坦化層を有する。これは次から選択される物質を有することができる:InO、GaO、ZnO、SnO、MoO、VO、SbO、BiO、ReO、TaO、WO、NbO、NiO。
【0031】
第1の注入層または第1の平坦化層のエネルギーレベルの知識により、これらをドーピングおよび/または材料選択および材料混合により前に説明した関係でのエネルギーレベルが存在するように互いに整合することができる。対応することが第1の注入層と有機機能層とのエネルギーレベルの整合に対しても当てはまる。
【0032】
前記物質は電極上に平坦化層として、または平坦化層の上に注入層として施与される。
【0033】
本発明の別の実施形態では、第1の平坦化層は電極上に直接配置されている。したがって第1の平坦化層は、第1の電極上の起伏部の高さよりも大きな厚さを有する。これにより、第1の平坦化層により第1の電極上の起伏部を調節することができる。
【0034】
本発明の別の実施形態では、有機光電構成素子は付加的に、
・第2の電極と有機機能層との間に配置された第2の平坦化層と、
・第2の平坦化層と有機機能層との間に配置された第2の注入層とを有する。
【0035】
この実施形態で2つの電極はそれぞれ1つの平坦化層を有し、2つの平坦化層と有機機能層との間にはそれぞれ1つの注入層が配置されている。これによりカソードからの電子の放出と、アノードから有機機能層への正孔の放出とがそれぞれ1つの注入層により安定化される。したがってこのような実施形態はとくに安定した電荷担体輸送を有する。
【0036】
本発明の別の実施形態では有機光電構成素子がエレクトロルミネセンス構成素子として形成されている。
【0037】
これはたとえば有機発光ダイオード(OLED)である。OLEDを形成することのできる層積層体はアノードとカソードを有する。電圧の印加により一方の電極から正孔または電子が放出され、それぞれ他方の電極に移動する。ここで電荷担体は、これが発光層に互いに到着する前に正孔輸送層または電子輸送層を最初に通って移動する。ここでは電子が正孔と励起子を形成する。励起子は、放射層に存在する発光物質を、光線を放射させるために励起することができる。OLEDは、たとえば発光層、電荷担体ブロック層もしくは電荷担体輸送層またはそれらの組合せとすることのできる有機機能層を有することができる。
【0038】
本発明の少なくとも1つの別の実施形態は、有機光電構成素子の製造方法に係るものである。
【0039】
有機光電構成素子の製造方法の実施形態でこの方法は、
A)第1の電極を準備する工程、
B)第1の平坦化層を第1の電極上に取り付ける工程、
C)第1の注入層を第1の平坦化層上に取り付ける工程、
D)有機機能層を第1の注入層上に取り付ける工程、
E)第2の電極を有機機能層の上に取り付ける工程、を有し、
第1の電極がアノードである場合には、エネルギーレベルに対して:
−EHOMO、Inj.≦E−EHOMO、Plan.かつE−EHOMO、Inj.<E−EHOMO、Funk.が成り立ち、または
第1の電極がカソードである場合には、エネルギーレベルに対して:
LUMO、Inj.−E≦ELUMO、Plan.−EかつELUMO.Inj.−E<ELUMO、Funk−Eが成り立ち、
ここでEはフェルミエネルギー、EHOMOはそれぞれの層が最大で有するエネルギーレベルのエネルギー、そしてELUMOはそれぞれの層が最小で有しないエネルギーレベルのエネルギーである。
【0040】
さらに本方法は、前記特徴の1つまたは複数を備える有機光電構成素子が製造できるという特徴と工程を有する。
【0041】
第1の平坦化層は、方法工程B)で第1の電極の上に気相析出または湿式化学処理によって取り付けることができる。第1の平坦化層により、たとえば埃、ガラス、金属または有機粒子のような汚染物から保護される。このような汚染物はクリーニングしても電極上に存在することがある。さらに電極の金属ピークを取り囲むような厚さを有する第1の平坦化層が取り付けられる。この厚さは第1の電極を作製するためのスパッタ技術により生じることができる。これにより有機光電構成素子の作動中に形成される電極間の過剰の電界が減衰され、この汚染物への電気的影響も低減される。注入層を方法工程C)で取り付け、有機機能層を方法工程D)で適切なエネルギーレベルにすることにより、上記の形のポテンシャルポットが形成される。第1の注入層と有機機能層の両方は、ガス気相析出によっても湿式化学処理によっても取り付けることができる。
【0042】
本発明の別の変形実施形態では、第1の注入層が方法工程C)で湿式化学法によって取り付けられる。
【0043】
本発明の別の変形実施形態では、第1の平坦化層が方法工程B)で湿式化学法によって取り付けられる。
【0044】
本発明の別の変形実施形態では、有機機能層が方法工程D)で湿式化学法によって取り付けられる。
【0045】
湿式化学処理を使用することにより、処理コストを低減することができる。この層はたとえばスピンコート法、ドクター法、または印刷法により取り付けることができる。そのためにたとえば溶剤ベースの有機材料を使用することができる。
【0046】
択一的に第1の注入層、第1の平坦化層、および有機機能層を、それぞれ互いに依存しないで気相から析出することができる。
【0047】
本発明の別の変形実施形態では、本方法は付加的に:
F)第2の電極を注入層を有機機能層の上に取り付ける工程、
G)第2の平坦化層を第2の注入層の上に取り付ける工程、を有する。
【0048】
ここで工程F)とG)は方法工程E)の前に実施される。
【0049】
したがって付加的工程F)とG)を備える方法の後に作製された構成素子は、2つの電極上のそれぞれ有機機能層に向いた側に平坦化層と注入層を有する。
【0050】
本発明の別の変形実施形態では、第2の注入層が方法工程F)で湿式化学法によって取り付けられる。
【0051】
本発明の別の変形実施形態では、第2の平坦化層が方法工程G)で湿式化学法によって取り付けられる。
【0052】
択一的に第2の注入層、第2の平坦化層を、それぞれ互いに依存しないで気相から析出することができる。
【0053】
本発明のさらなる利点および有利な実施形態は、図1Aから6Bに関連して説明する以下の実施形態から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態の概略的断面図である。
【図2】第2の平坦化層と第2の注入層を有する本発明の実施形態の概略的断面図である。
【図3】本発明の実施形態の有機光電構成素子に関与する層のそれぞれのエネルギースキームを示す図である。
【図4】有機光電構成素子の5つの電流/電圧特性曲線を示す線図である。
【図5】実施形態による本発明の構成素子の特性曲線と、第1のポリマーを備える従来の構成素子の特性曲線とを比較して示す線図である。
【図6】実施形態による本発明の構成素子の特性曲線と、第2のポリマーを備える従来の構成素子の特性曲線とを比較して示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1aからdは、本発明の実施例を断面図に示す。層積層体の左横にある矢印9は、層が順次取り付けられる順序を示す。この取り付けはそれぞれ、上に説明した方法の方法工程A)からE)にしたがって行われる。構成素子の上または下にあるブロック矢印10は、それぞれの構成素子の光放射方向を示す。4つの実施例のそれぞれは、表面に非平坦部6を備える第1の電極1を含む層列を有し、非平坦部は汚染物または電極表面の表面構造によって形成される。非平坦部は、その上に配置された第1の平坦化層2によって覆われ、これにより調整される。第1の平坦化層2には、これと比較して薄い第1の注入層3が続く。これに続く有機機能層4とともに、材料を適切に選択することにより第1の注入層3内にはポテンシャルポットが冒頭部分に述べたように形成される。さらにこの層列は第2の電極5を有する。
【0056】
図2aからdは、本発明の実施形態の概略的断面を示す。この実施形態は、図1aからdに示した実施形態都は異なり付加的に第2の平坦化層2’と第2の注入層3’を有する。これらは上記の方法工程F)とG)により形成することができる。ここで第2の平坦化層2’は、第2の電極5と第2の注入層3’との間に配置されている。第2の注入層3’は、第2の平坦化層2’と有機機能層4との間に配置されている。
【0057】
有機機能層4は、たとえば発光層、電荷担体ブロック層もしくは電荷担体輸送層またはそれらの組合せとすることができる。
【0058】
第1および/または第2の電極1、5は、互いに依存せずにスパッタリングされた電極、熱的に蒸着された電極、また溶液から化学処理された電極とすることできる。
【0059】
図3aと3bは、第1の平坦化層2、これに続く第1の注入層3ならびに有機機能層4のエネルギースキームを示す。上半分はそれぞれコンタクトが形成される前のエネルギースキームであり、下半分は個々の層のコンタクトが形成された後のエネルギースキームを示す。コンタクト形成の後、熱力学的調整がポテンシャルポットを形成するため行われる。図中のEにより、フェルミにエネルギーが示されている。
【0060】
図3aには、最高で有する分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルが示されている。電極(この場合はアノード)から、図では左から正孔7が第1の平坦化層2に放出される。個々の層のコンタクト形成により、第1の注入層3内にはポテンシャルポットが形成され、この中に正孔7を蓄積することができる。このポテンシャルポットから正孔を、これに続く有機機能層4に放出することができる。これは、隣接する有機機能層4に正孔7を均等かつ持続的に供給することを保証する。このことは構成素子内の電荷輸送の安定化に寄与する。
【0061】
図3bには、最低で有しない分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルが示されている。ここでは電極(この場合はカソード)から、図では右から電子8が平坦化層2に注入される。ここでも物質の適切な選択により、第1の注入層3内にポテンシャルポットが形成され、これにより電子8がポテンシャルポットに収集される。このポテンシャルポットから電子8を、有機機能層4に放出することができる。
【0062】
図4には、5つの異なる構成素子に対する5つの電流電圧特性曲線がローマ数字IからVにより示されている。それぞれ電流密度Jが印加される電圧Uに対してプロットされている。この構成素子は、もっぱら正孔を電荷担体とする構成素子(いわゆるホールオンリー素子)である。これらは次の構造を有する。ITOアノード、同時に正孔注入層(HIL)として用いられる120nm厚の平坦化層、場合により20nm厚のpドープされた注入層、100nm厚のN、N’−ジ(ナフサ−1−yl)−N、N’−ジフェニル−ベンジジン、およびAlカソード。特性曲線IとIIが記録された構成素子はそれぞれ第1の注入層を有しておらず、したがって本発明の構成素子ではない。これに対して特性曲線IIIからIVが測定された構成素子は、注入層を有する構成素子である。特性曲線IとIIIの構成素子に対しては、第1の平坦化層と第1の注入層に対してそれぞれ同じポリマーが選択された。同じことが特性曲線IIおよびIVが記録された構成素子にも当てはまる。したがって特性曲線IとIIIが記録された構成素子と特性曲線IIとIVが記録された構成素子とは、それぞれ第1の注入層が存在するかまたは存在しないかの点で異なる。特性曲線Vが記録された構成素子は、第1の平坦化層および第1の注入層を有していない。線図から分かるように、1つの平坦化層しか有しておらず、注入層を有しない構成素子の特性曲線はかなり異なっているが、平坦化層と注入層を有する構成素子の特性曲線は1から7Vの範囲でほとんど重なっている。
【0063】
図5aと5bおよび図6aと6bには、それぞれ構造の同じ32の構成素子に対する電流電圧特性曲線が重ねて図示されている。ここでも電流密度Jが電圧Uに対してプロットされている。各図には、32の構成素子に対して所定の測定点で存在するばらつきが示されている。測定された構成素子はそれぞれ4mmの活性面積を有する。構成素子はそれぞれ白色発光OLEDである。
【0064】
図5aと6aに示された構成素子はそれぞれ本発明の構成素子である。
これらはそれぞれ次の構造を有する。ITOアノード、100nm厚の第1の平坦化層、20nm厚の第1の注入層、90nm厚の有機機能層およびAlカソード。図5aと図6aで測定された2つの構成素子は、平坦化層と注入層に使用されたポリマーが異なっているだけである。
【0065】
これに対して図5bと6bは、本発明の構成素子で測定されたものではない。それらの構造は、図5aと6aに示した本発明の構成素子に対して、第1の平坦化層と第1の注入層の組合せではなく、120nm厚の1つの平坦化層しか使用されていない点で異なる。この平坦化層の厚さは、第1の平坦化層と第1の注入層からなる本発明の構成素子での層厚の和に相当する。図5aと5bで測定された構成素子に対しては、それぞれ同じポリマーが平坦化層に使用された。同じことが図6aと6bの構成素子に対しても当てはまる。
【0066】
線図から明らかなように、本発明の2つの実施例は、電流密度が約1mA/cmの際に、それぞれ図5bと6bに示した第1の注入層を備えない本発明ではない構成素子よりも格段にばらつきが小さい。したがって、第1の平坦化層と第1の注入層を所期のように組合わせることにより、電流電圧特性曲線における統計的ばらつきを格段に低減できることが分かる。したがって本発明の構成素子は、3Vから4Vの典型的な作動電圧の範囲で、注入層を備えない本発明ではない構成素子よりも格段に改善された処理安定性を有する。
【0067】
本発明は、実施例に基づく説明によって限定されるものではない。むしろ本発明はいずれの新規の特徴、ならびに特徴のいずれの組合せも含むものであり、これらの特徴またはこれらの組合せが明示的に特許請求の範囲または実施例に記載されていなくても、とりわけ請求の範囲の特徴のいずれの組合せも含むものである。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図3a】

【図3b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
・第1の電極(1)と、
・該第1の電極(1)の上に配置された第1の平坦化層(2)と、
・該第1の平坦化層(2)の上に配置された第1の注入層(3)と、
・該第1の注入層(3)の上に配置された有機機能層(4)と、
・該有機機能層(4)の上に配置された第2の電極(5)とを有する有機光電構成素子であって、
前記第1の電極(1)がアノードである場合には、エネルギーレベルに対して:
−EHOMO、Inj.<E−EHOMO、Plan.かつE−EHOMO、Inj.<E−EHOMO、Funk.が成り立ち、または
前記第1の電極(1)がカソードである場合には、エネルギーレベルに対して:
LUMO、Inj.−E<ELUMO、Plan.−EかつELUMO.Inj.−E<ELUMO、Funk−Eが成り立ち、
ここでEはフェルミエネルギー、EHOMOはそれぞれの層が最大で有するエネルギーレベルのエネルギー、そしてELUMOはそれぞれの層が最小で有しないエネルギーレベルのエネルギーである有機光電構成素子。
【請求項2】
前記第1の電極(1)がアノードである場合には、エネルギーレベルに対して:
−EHOMO、Plan.<E−EHOMO、Funk.が成り立ち、または
前記第1の電極(1)がカソードである場合には、エネルギーレベルに対して:
LUMO.Funk.−E<ELUMO、Plan.−Eが成り立つ、
請求項1に記載の有機光電構成素子。
【請求項3】
前記第1の電極(1)から放出される電荷担体が前記第1の注入層(3)に蓄積される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の注入層(3)に蓄積された電荷担体が、該注入層(3)に続く層に注入される、請求項3に記載の有機光電構成素子。
【請求項5】
前記第1の平坦化層(2)(RPlan.)と第1の注入層(3)(RInj.)の抵抗Rならびに境界面抵抗に対しては前記第1の平坦化層(2)と前記第1の注入層(3)とが接触することにより(RKontakt、Inj.)、および境界面抵抗に対しては前記第1の注入層(3)と有機機能層(4)とが接触することにより(RKontakt、Funk.)条件:
Plan.+RKontakt、Inj.≦RInj.+RKontakt、Funk.が成り立つ、請求項1から4のいずれか一項に記載の有機光電構成素子。
【請求項6】
前記第1の注入層(3)の層厚は1から20nmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機光電構成素子。
【請求項7】
前記第1の注入層(3)はドープされている、請求項1から6のいずれか一項に記載の有機光電構成素子。
【請求項8】
ドーピング物質は、MoO、MoO、WO、ReO、Re、Vから選択されている、請求項7に記載の有機光電構成素子。
【請求項9】
前記第1の注入層(3)は次から選択された物質を含む:4、4’4、4’’−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミノ、フタロシアニン銅複合体、4、4’、4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミノ、N、N’−ビス(ナフタリン−1−yl)−N、N’−ビス(フェニル)ベンジジン、2、2’、7、7’−テトラキス(N、N−ジフェニルアミン)−9、9’−スピロビフルオレン、ジ−[4=(N、N−ジトリルアミン)−フェニル]シクロヘキサン、N、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N、N’ービス(フェニル)−ベンジジン、請求項1から8のいずれか一項に記載の有機光電構成素子。
【請求項10】
前記第1の注入層(3)は次から選択された物質を含む:PEDOT:PSS、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、ポリ(N、N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N、N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリアニリン、請求項1から9のいずれか一項に記載の有機光電構成素子。
【請求項11】
前記第1の平坦化層(2)は次から選択された物質を含む:PEDOT:PSS、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、ポリ(N、N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N、N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリアニリン、請求項1から10のいずれか一項に記載の有機光電構成素子。
【請求項12】
付加的に:
・前記第2の電極(5)と前記有機機能層(4)との間に配置された第2の平坦化層(2’)と、
・前記第2の平坦化層(2’)と前記有機機能層(4)との間に配置された第2の注入層(3’)とを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の有機光電構成素子。
【請求項13】
エレクトロルミネセンス構成素子として構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の有機光電構成素子。
【請求項14】
機光電構成素子の製造方法において、
A)第1の電極(1)を準備する工程、
B)第1の平坦化層(2)を前記第1の電極(1)上に取り付ける工程、
C)第1の注入層(3)を前記第1の平坦化層(2)上に取り付ける工程、
D)有機機能層(4)を前記第1の注入層(3)上に取り付ける工程、
E)第2の電極(5)を前記有機機能層(4)の上に取り付ける工程、
を有し、
前記第1の電極(1)がアノードである場合には、エネルギーレベルに対して:
−EHOMO、Inj.≦E−EHOMO、Plan.かつE−EHOMO、Inj.<E−EHOMO、Funk.が成り立ち、または
前記第1の電極(1)がカソードである場合には、エネルギーレベルに対して:
LUMO、Inj.−E<ELUMO、Plan.−EかつELUMO.Inj.−E<ELUMO、Funk−Eが成り立ち、
ここでEはフェルミエネルギー、EHOMOはそれぞれの層が最大で有するエネルギーレベルのエネルギー、そしてELUMOはそれぞれの層が最小で有しないエネルギーレベルのエネルギーである製造方法。
【請求項15】
前記第1の注入層(3)は、方法工程C)において湿式化学法により取り付けられる、請求項14に記載の方法。

【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2013−506949(P2013−506949A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531418(P2012−531418)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064494
【国際公開番号】WO2011/039277
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】