説明

有機光電素子用材料およびこれを含む有機光電素子

化学式1の非対称化合物を含む有機光電素子用材料およびそれを含む有機光電素子を開示する。前記有機光電素子用材料は、有機発光ダイオードをはじめとする有機光電素子において、正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、または電子注入材料および/または電子輸送材料の役割を果たすことができ、適切なドーパントと共に発光ホストとしての役割も果たすことができる。前記材料を有機発光ダイオードなどの有機光電素子に適用すると、寿命、効率、駆動電圧、電気化学的安定性および熱安定性に優れた有機光電素子が得られうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電素子用材料およびこれを含む有機光電素子に関する。より詳細には、本発明は、有機光電素子の寿命、効率、駆動電圧、電気化学的安定性および熱安定性を向上させることができる有機光電素子用材料およびこれを含む有機光電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機光電素子(organic photoelectric device)は、正孔または電子を利用した電極と有機材料との間での電荷交換を必要とする素子である。
【0003】
有機光電素子は動作原理に応じて次のように分けることができる。第一の有機光電素子は、外部の光源からの光子により有機材料層でエキシトン(exciton)が生成し、このエキシトンが電子と正孔に分離され、そしてこの電子と正孔が互いに異なる電極に電流源(電圧源)として移動することによって駆動される電子素子である。
【0004】
第二の有機光電素子は、少なくとも2つの電極に電圧または電流を加えて前記電極の界面に位置する有機材料半導体に正孔または電子を注入し、そして注入された電子および正孔により素子が駆動される電子素子である。
【0005】
有機光電素子の例としては、有機発光ダイオード(OLED)、有機太陽電池、有機感光体ドラム(organic photo conductor drum)、有機トランジスタ、有機メモリ素子などがあり、これらは正孔注入材料もしくは正孔輸送材料、電子注入材料もしくは電子輸送材料、または発光材料を必要とする。
【0006】
以下、主に有機発光ダイオードについて具体的に説明するが、前記有機光電素子では正孔注入材料もしくは正孔輸送材料、電子注入材料もしくは電子輸送材料、または発光材料が同様の原理で作用する。
【0007】
有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)は、近年、平板ディスプレイ(flat panel display)の需要が増加することに伴って注目されている。一般に有機発光とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに変換させることをいう。
【0008】
このような有機発光ダイオードは、有機発光材料に電流を加えて電気エネルギーを光に変換させる素子であって、陽極(anode)と陰極(cathode)との間に機能性有機材料層が挿入された構造を有する。前記有機材料層は、有機発光ダイオードの効率および安全性を高めるために、それぞれ異なる材料を含む多層、例えば、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)などを含む。
【0009】
このような有機発光ダイオードにおいて、陽極と陰極との間に電圧をかけると、陽極からは正孔(hole)が、陰極からは電子(electron)が有機材料層に注入される。生成した励起子が基底状態(ground state)に移動しながら特定の波長を有する光を生成する。
【0010】
1987年にイーストマンコダック(Eastman Kodak)社では、発光層形成用材料として低分子の芳香族ジアミンとアルミニウム錯体とを含む有機発光ダイオードを最初に開発した(Applied Physics Letters,51,913,1987)。1987年にC.W.Tangらが最初に有機発光ダイオードとして実用的な素子を報告した(Applied Physics Letters,51 12,913〜915,1987)。
【0011】
前記文献によれば有機層はジアミン誘導体の薄膜(正孔輸送層(HTL))とトリス(8−ヒドロキシ−キノレート)アルミニウム(tris(8−hydroxy−quinolate)aluminum、Alq)の薄膜とが積層された構造を有する。
【0012】
最近は、蛍光発光材料のみならず、燐光発光材料も有機発光ダイオードの発光材料として使用され得ることが知られるようになった(D.F.O’Brienら、Applied Physics Letters,74 3,442−444,1999;M.A.Baldoら、Applied Physics letters,75 1,4−6,1999)。このような燐光材料は基底状態(ground state)から励起状態(excited state)に電子が遷移した後、項間交差(intersystem crossing)を通じて一重項励起子が三重項励起子に無輻射遷移した後、三重項励起子が基底状態に遷移して発光するメカニズムによって発光する。
【0013】
前記のように有機発光ダイオードにおいて有機材料層は、発光材料および電荷輸送材料、例えば正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料などを含む。
【0014】
また、発光材料は、発光色に応じて青色、緑色、および赤色発光材料とさらに改善された天然色に近い色を発光させるための黄色および橙色発光材料とに分類される。
【0015】
一方、発光材料として一つの材料のみを使用する場合、分子間相互作用により最大発光波長が長波長側に移動したり、色純度が落ちる、または発光クエンチング効果により素子の効率が低下する。したがって、色純度を改善し、エネルギー移動を通じて発光効率および安定性を増加させるために、発光材料としてホスト/ドーパント系を使用しても良い。
【0016】
有機発光ダイオードが前述した優れた特徴を十分に発揮するためには、有機材料層を構成する材料、例えば正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料、電子注入材料、ホストおよび/またはドーパントなどの発光材料が安定であり且つ良好な効率を有する必要がある。しかしながら、現在まで有機発光ダイオード用の有機材料層を形成する材料の開発がまだ十分ではなく、したがって新たな材料が要求されている。このような材料開発は前述した他の有機光電素子でも同様に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の例示的な実施形態は、正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、または電子注入材料および/または電子輸送材料の役割を果たすことができ、適切なドーパントと共に発光ホストとしての役割も果たすことができる新規な材料を提供する。
【0018】
本発明の他の実施形態は、前記有機光電素子用材料を含み、寿命、効率、駆動電圧、電気化学的安定性、および熱安定性が向上した有機光電素子を提供する。
【0019】
本発明の実施形態は上記の技術的課題に制限されず、当業者であれば他の技術的課題を理解しうる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施形態によれば、下記の化学式1で表される非対称化合物を含む有機光電素子用材料が提供される。
【0021】
【化1】

【0022】
前記化学式1において、
Arは、水素、および置換または非置換のアリール基からなる群より選択され、但し、Arが置換されたアリール基である場合、Arの置換基がArと同一ではなく、
ArおよびArは、それぞれ独立して置換または非置換のカルバゾリル基、置換または非置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数2乃至30のアリールアミン基、および置換または非置換の炭素数2乃至30のヘテロアリールアミン基からなる群より選択され、
およびLは、それぞれ独立して置換または非置換のフェニレン、置換または非置換のナフチレン、および置換または非置換のアントラセンからなる群より選択され、
mおよびnは、1乃至4の整数である。
【0023】
本発明の他の実施形態によれば、陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極との間に配置された有機薄膜層を含む有機光電素子が提供される。前記有機薄膜層は、前記有機光電素子用材料を含む。
【0024】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記有機光電素子を含む表示装置が提供される。
【0025】
以下、本発明のさらなる実施形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明の一実施形態による有機光電素子用材料は、ピリミジンコアに対して非対称構造を有する。ピリミジンコアを含むこのような非対称構造は、非晶質特性が強化されてこれによって結晶化を抑制することができるため、有機光電素子の駆動時に有機光電素子の寿命特性を向上させることができる。したがって、効率、駆動電圧、電気化学的安定性および熱安定性に優れた有機光電素子が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施形態による新規な材料は、有機発光ダイオードをはじめとする有機光電素子において、正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、または電子注入材料および/または電子輸送材料の役割を果たすことができ、適切なドーパントと共に発光ホストとしての役割にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の多様な実施形態による化合物を含む有機発光ダイオードを示す断面図である。
【図2】本発明の多様な実施形態による化合物を含む有機発光ダイオードを示す断面図である。
【図3】本発明の多様な実施形態による化合物を含む有機発光ダイオードを示す断面図である。
【図4】本発明の多様な実施形態による化合物を含む有機発光ダイオードを示す断面図である。
【図5】本発明の多様な実施形態による化合物を含む有機発光ダイオードを示す断面図である。
【0029】
図6は、合成例1による化合物に対する示差走査熱量(DSC)測定結果を示すグラフである。
【0030】
<図中の主要な要素を示す符号の説明>
100:有機光電素子、
110:陰極、
120:陽極、
105:有機薄膜層、
130:発光層、
140:正孔輸送層(HTL)、
150:電子輸送層(ETL)、
160:電子注入層(EIL)、
170:正孔注入層(HIL)、
230:発光層+電子輸送層(ETL)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の例示的な実施形態を詳しく説明する。但し、これらの実施形態は単なる例示であり、これらによって本発明が制限されるものではない。
【0032】
本明細書で「置換」の用語は、別途の定義がない限り、炭素数1乃至30のアルキル基、炭素数1乃至10のヘテロアルキル基、炭素数3乃至30のシクロアルキル基、炭素数6乃至30のアリール基、炭素数1乃至30のアルコキシ基、フルオロ基、およびシアノ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されたものを意味する。
【0033】
本明細書で「ヘテロ」の用語は、別途の定義がない限り、一つの環内にN、O、S、P、またはSiを含むヘテロ原子を1乃至3個含有し、残りは炭素であるものを意味する。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、下記の化学式1で表される非対称化合物を含む有機光電素子用材料が提供される。
【0035】
【化2】

【0036】
前記化学式1において、
Arは、水素、および置換または非置換のアリール基からなる群より選択され、但し、Arが置換アリール基である場合、Arの置換基がArと同一ではなく、
ArおよびArは、それぞれ独立して置換または非置換のカルバゾリル基、置換または非置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数2乃至30のアリールアミン基、および置換または非置換の炭素数2乃至30のヘテロアリールアミン基からなる群より選択され、
およびLは、それぞれ独立して置換または非置換のフェニレン、置換または非置換のナフチレン、および置換または非置換のアントラセンからなる群より選択され、
mおよびnは、1乃至4の整数である。
【0037】
前記化学式1において、Arは、アリール基またはアリール置換基を有するアリール基であることが好ましい。前記アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル(chrysenyl)基などが挙げられる。
【0038】
Arは、炭素数1乃至30のアルキル基、炭素数1乃至10のヘテロアルキル基、炭素数3乃至30のシクロアルキル基、炭素数6乃至30のアリール基、炭素数1乃至30のアルコキシ基、フルオロ基、およびシアノ基からなる群より選択される置換基で置換される。前記アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、およびクリセニル基からなる群より選択されるアリール基が挙げられ、前記ヘテロアルキル基の例としては、アルキルシリル基が挙げられる。しかしながら、前記アリール基およびヘテロアルキル基がこれらに限定されるわけではない。
【0039】
Arが置換されたアリール基である場合、Arの置換基がArと同一ではない。Arが置換されたアリール基であり、Arの置換基がArと同一ではない場合、ピリミジンコアを基準とした非対称構造が得られる。このような非対称構造を有する有機光電素子用材料は結晶化を抑制し、そのため有機光電素子の寿命特性を向上させることができる。
【0040】
前記化学式1において、ArおよびArで表されるヘテロアリール基としては、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリニル基、アクリジル基、イミダゾピリジニル基、イミダゾピリミジニル基などが挙げられる。
【0041】
前記化学式1において、ArおよびArで表されるヘテロアリールアミン基の例としては、ジフェニルアミン基、ジナフチルアミン基、ジビフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、フェニルジフェニルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、カルバゾイル基、トリフェニルアミン基、ジピリジルアミン基などが挙げられる。
【0042】
前記化学式1において、ArおよびArで表されるそれぞれの置換基は、置換または非置換でありうる。ArおよびArが置換されている場合には、これらは炭素数1乃至30のアルキル基、炭素数1乃至10のヘテロアルキル基、炭素数3乃至30のシクロアルキル基、炭素数6乃至30のアリール基、炭素数1乃至30のアルコキシ基、フルオロ基、およびシアノ基からなる群から選択される1つで置換されていても良い。前記アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、およびクリセニル基からなる群より選択されるアリール基が挙げられ、前記ヘテロアルキル基の例としては、アルキルシリル基が挙げられる。しかしながら、前記アリール基およびヘテロアルキル基はこれらに限定されるわけではない。
【0043】
前記化学式1において、LおよびLは、フェニレンであることが好ましい。
【0044】
本発明による前記化学式1の化合物は、ピリミジンコアとAr乃至Arの置換基とを含む。ピリミジンは芳香族化合物であり、ベンゼンのような電子構造を有する。このピリミジンは熱的安定性を有する、または耐酸化性が比較的高いが、2−、4−、および6−位に対する反応性の差によって非対称化合物を合成することができる。
【0045】
一実施形態によれば、前記ピリミジンコア部分は互いに同一ではない置換基で置換されて非対称構造を形成する。非対称性置換基を有するピリミジンコア構造では、非晶質特性が高められて結晶化が抑制され、有機光電素子の駆動時に寿命特性を向上させる。一方、同一な置換基を有する対称化合物は、結晶化しやすく、そのため、有機発光ダイオードの寿命特性を短縮させる原因となることもある。
【0046】
上記の特徴を有するピリミジンに多様な置換基(Ar乃至Ar)を導入して有機光電素子に必要な特性を付与する。
【0047】
例えば、ArおよびArにピリジニル基、キノリニル基、およびイソキノリニル基のようなn−型特性を有する置換基を導入することによって、熱的、電気的に安定したn−型材料を合成することができ、p−型特性を有する置換基を導入することによって、p−型材料を合成することができる。また、n−型置換基とp−型置換基との両方を導入することによって、n−型のみならずp−型の特性も有する両親性材料を提供することができる。
【0048】
n−型特性とは、電子生成による陰イオン特性を有するように、LUMO準位に応じた導電特性の性質を意味する。p−型特性とは、正孔生成による陽イオン特性を有するように、HOMO準位に応じた導電特性の性質を意味する。
【0049】
前記化学式1で表される化合物は、多様な置換基が導入されることによって、全体的な分子の特性がn−型またはp−型へとさらに強化されうる。つまり、化学式1中の置換基部分に特定の置換基が導入されて化学式1の化合物の特性がいずれか一方により強くなると、化学式1で表される化合物は、正孔注入、正孔輸送、発光、電子注入または電子輸送のための材料としての条件をより適するように満たす化合物となり得る。
【0050】
例えば、ArおよびArをヘテロアリールアミン基で置換する場合、化学式1で表される化合物は、正孔注入層(HIL)および正孔輸送層(HTL)用材料など応用範囲が広くなる。
【0051】
一方、ArおよびArをヘテロアリール基のような電子親和性に優れた材料で置換する場合、化学式1で表される化合物は、電子注入層または電子輸送層(ETL)用材料として応用され得る。
【0052】
さらに、Arをフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基などのような置換基で置換する場合、熱的安定性または耐酸化性を増加させることができ、ArまたはArをそれぞれヘテロアリールアミン基およびヘテロアリール基の置換基で同時に置換すれば両親性を有する材料を提供することができ、この材料を発光層に適用できる。
【0053】
上述のように化学式1のAr乃至Arの位置に多様な置換基を導入することによって、多様なエネルギーバンドギャップを有する化合物を合成することができる。
【0054】
したがって、前記化学式1で表される化合物は多様な置換基により正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層、電子注入層および電子輸送層に要求される条件を満たす化合物となり得る。
【0055】
化合物1の置換基に応じた適切なエネルギー準位を有する化合物を選択し、これを有機電子素子に適用することによって、駆動電圧が低く、光効率が高い素子を達成することができる。
【0056】
前記化学式1で表される化合物の具体的な例としては、下記化合物(1)乃至(90)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
【化3−1】

【0058】
【化3−2】

【0059】
【化3−3】

【0060】
【化3−4】

【0061】
【化3−5】

【0062】
【化3−6】

【0063】
上記化合物を含む有機光電素子用材料は、正孔注入、正孔輸送、発光、または電子注入および/または電子輸送の役割を果たすことができ、適切なドーパントと共に発光ホストとしての役割も果たすことができる。本発明の実施形態によれば、有機光電素子用化合物は、有機薄膜層に含まれると有機光電素子の寿命ならびに電気化学的安定性および熱安定性を向上させることができ、寿命特性および効率特性を向上させるために駆動電圧を低下させることができる。
【0064】
本発明の他の一実施形態によれば、前記有機光電素子用材料を含む有機光電素子が提供される。前記有機光電素子としては、有機発光ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機感光体ドラム、有機メモリ素子などが挙げられる。
【0065】
有機太陽電池の場合には、本発明の新しい化合物は電極または電極バッファー層に含まれ、これによって量子効率を増加させることができる。有機トランジスタの場合には、ゲート、ソース−ドレイン電極などの電極材料として使用され得る。
【0066】
以下、有機発光ダイオードについてより詳細に説明する。本発明の他の実施形態によれば、陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極との間に配置された少なくとも一層の有機薄膜層を含む有機発光ダイオードが提供される。前記有機薄膜層は、前記有機光電素子用材料を含む。
【0067】
前記有機薄膜層は、発光層;および正孔輸送層(HTL)、正孔注入層(HIL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、正孔阻止層およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。少なくとも一つの層は、本発明による有機光電素子用材料を含む。
【0068】
図1乃至図5は、本発明の一実施形態による有機光電素子用材料を含む有機発光ダイオードの断面図である。
【0069】
図1乃至図5を参照すれば、本発明の実施形態による有機発光ダイオード100、200、300、400、および500は、陽極120および陰極110との間に配置された少なくとも一層の有機薄膜層105を含む。
【0070】
陽極120は、有機薄膜層への正孔注入を容易にするように仕事関数が大きい陽極材料を含む。前記陽極材料としては、ニッケル、白金、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、および金のような金属またはこれらの合金;酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物(ITO)、およびインジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;またはポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前記陽極としてITO(indium tin oxide)などの透明電極を含む。
【0071】
陰極110は、有機薄膜層への電子注入を容易にするように仕事関数が小さい陰極材料を含む。陰極材料としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、および鉛、のような金属またはこれらの合金;LiF/Al、Liq/Al、LiO/Al、LiF/Ca、LiF/Al、およびBaF/Caのような多層材料などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前記陰極としてアルミニウムなどの金属電極を含む。
【0072】
図1を参照すれば、有機光電素子100は、発光層130のみを含む有機薄膜層105を含む。
【0073】
図2を参照すれば、2層型有機光電素子200は、電子輸送層(ETL)を含む発光層230と正孔輸送層(HTL)140とを含む有機薄膜層105を含む。発光層230は電子輸送層(ETL)としても機能し、正孔輸送層(HTL)140はITOのような透明電極との結合性に優れる、または正孔輸送性に優れる。
【0074】
図3を参照すれば、3層型有機光電素子300は、電子輸送層(ETL)150、発光層130、および正孔輸送層(HTL)140を含む有機薄膜層105を含む。発光層130は独立して設置され、電子輸送性に優れた層または正孔輸送性に優れた層が別々に積層される。
【0075】
図4に示されるように、4層型有機光電素子400は、電子注入層(EIL)160、発光層130、正孔輸送層(HTL)140、およびITOの陽極との結合のための正孔注入層(ETL)170を含む有機薄膜層105を含む。
【0076】
図5に示されるように、5層型有機光電素子500は、電子輸送層(ETL)150、発光層130、正孔輸送層(HTL)140、および正孔注入層(HIL)170を含む有機薄膜層105を含み、低電圧を達成するために電子注入層(EIL)160をさらに含む。
【0077】
前記図1乃至図5において、電子輸送層(ETL)150、電子注入層(EIL)160、発光層130および230、正孔輸送層(HTL)140、正孔注入層(HIL)170、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つを含む有機薄膜層105は、前記有機光電素子用材料を含む。前記有機光電素子用材料は、電子輸送層(ETL)150または電子注入層(EIL)160を含む電子輸送層(ETL)150に使用されても良い。電子輸送層(ETL)に用いられる場合、さらなる正孔阻止層(図示せず)を必要としないため、より単純化した構造の有機光電素子を提供することができる。
【0078】
また、前記有機光電素子用材料が発光層130および230内に含まれる場合、前記有機光電素子用材料は、燐光もしくは蛍光ホスト、または蛍光青色ドーパントとして含まれても良い。
【0079】
前述した有機発光ダイオードは、基板上に陽極を形成し;真空蒸着(evaporation)、スパッタリング(sputtering)、プラズマメッキ、およびイオンメッキのようなドライコーティング法;またはスピンコーティング(spin coating)、浸漬(dipping)、フローコーティング(flow coating)のようなウエットコーティング法によって有機薄膜層を形成し;そして、その上に陰極を形成することによって作製されうる。
【0080】
本発明の他の実施形態は、上記の実施形態による有機光電素子を含む表示装置を提供する。
【実施例】
【0081】
以下の実施を用いて本発明をより詳細に説明する。但し、これらの実施例によって本発明が制限されてはならないことが理解されるであろう。
【0082】
(有機光電素子用材料の調製)
合成例1:化合物(1)の合成
有機光電素子用材料の具体的な例として、化合物(1)を下記反応式1に従って2段階で合成した。
【0083】
【化4】

【0084】
第1段階:中間体生成物(A)の合成
2,4,6−トリクロロピリミジン75.0g(409mmol)、フェニルボロン酸54.8g(450mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム11.8g(10mmol)をテトラヒドロフラン450mlとトルエン300mlとの混合溶媒に懸濁させて懸濁液を得た。炭酸カリウム113.0g(818mmol)を水300mlに溶解した溶液にこの懸濁液を加え、得られた混合物を9時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0085】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、得られた結晶をろ過により分離し、トルエンで洗浄し、中間体生成物(A)64.7g(収率:70.3%)を収得した。
【0086】
第2段階:化合物(1)の合成
中間体生成物(A)2.3g(10mmol)、2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ピリジン(B)6.3g(22mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.6g(0.5mmol)をテトラヒドロフラン70mlとトルエン50mlとの混合溶媒に懸濁させて懸濁液を得た。炭酸カリウム5.7g(41mmol)を水50mlに溶解した溶液にこの懸濁液を加えた。得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0087】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、得られた結晶をろ過によって分離し、トルエンで洗浄し、化合物(1)3.9g(収率:67.9%)を収得した。
【0088】
H NMR(300MHz、CDCl)8.85(d、2H)、8.75(d、2H)、8.45(d、2H)、8.34(d、2H)、8.21(m、4H)、8.08(s、1H)、7.80(m、4H)、7.60(m、3H)、7.27(m、2H);MS[M+1]463。
【0089】
合成例2:化合物(2)の合成
有機光電素子用材料の具体的な例として、化合物(2)を下記反応式2に従って2段階で合成した。
【0090】
【化5】

【0091】
第1段階:中間体生成物(C)の合成
2,4,6−トリクロロピリミジン75.0g(409mmol)、ナフチルボロン酸77.3g(450mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム11.8g(10mmol)をテトラヒドロフラン450mlとトルエン300mlとの混合溶媒に懸濁させて懸濁液を得た。炭酸カリウム113.0g(818mmol)を水300mlに溶解した溶液にこの懸濁液を加え、得られた混合物を9時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、その有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0092】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、得られた結晶をろ過により分離し、トルエンで洗浄し、中間体生成物(C)80.0g(収率:71.1%)を収得した。
【0093】
第2段階:化合物(2)の合成
中間体生成物(C)3.2g(12mmol)、2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ピリジン(B)7.2g(26mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.7g(0.6mmol)をテトラヒドロフラン100mlとトルエン65mlとの混合溶媒に懸濁させて懸濁液を得た。炭酸カリウム6.4g(47mmol)を水65mlに溶解した溶液にこの懸濁液を加えた。得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、その有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0094】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、析出した結晶をろ過により分離し、トルエンで洗浄し、化合物(2)4.1g(収率:69.0%)を収得した。
【0095】
H NMR(300MHz、CDCl)8.85(d、2H)、8.76(d、2H)、8.45(m、3H)、8.20(m、4H)、8.01(m、3H)、7.80(m、5H)、7.61(m、3H)、7.27(m、2H);MS[M+1]513。
【0096】
合成例3:化合物(10)の合成
有機光電素子用材料の具体的な例として、化合物(10)を下記反応式3に従って合成した。
【0097】
【化6】

【0098】
中間体生成物(A)2.3g(10mmol)、1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)イソキノリン(D)7.5g(22mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.6g(0.5mmol)をテトラヒドロフラン70mlとトルエン50mlとの混合溶媒に懸濁させて懸濁液を得た。炭酸カリウム5.7g(41mmol)を水50mlに溶解した溶液にこの懸濁液を加えた。得された混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、その有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0099】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、析出した結晶をろ過により分離し、トルエンで洗浄し、化合物(10)3.9g(収率:68.0%)を収得した。
【0100】
H NMR(300MHz、CDCl)8.94(d、2H)、8.68(d、2H)、8.52(d、2H)、8.39(d、2H)、8.21(d、2H)、8.16(s、1H)、7.94(m、6H)、7.72(m、4H)、7.61(m、5H);MS[M+1]563。
【0101】
合成例4:化合物(11)の合成
有機光電素子用材料の具体的な例として、化合物(11)を下記反応式4に従って合成した。
【0102】
【化7】

【0103】
中間体生成物(C)2.7g(10mmol)、1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)イソキノリン(D)7.2g(22mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.6g(0.5mmol)をテトラヒドロフラン80mlとトルエン55mlとの混合溶媒に懸濁させて懸濁液を得た。炭酸カリウム5.4g(39.1mmol)を水55mlに溶解した溶液にこの懸濁液を加えた。得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、その有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0104】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、析出した結晶をろ過により分離し、トルエンで洗浄し、化合物(11)4.5g(収率:65.0%)を収得した。
【0105】
H NMR(300MHz、CDCl)8.93(d、2H)、8.67(d、2H)、8.53(d、2H)、8.45(d、1H)、8.21(d、2H)、7.96(m、10H)、7.72(m、5H)、7.64(m、4H);MS[M+1]613。
【0106】
合成例5:化合物(19)の合成
有機光電素子用材料の具体的な例として、化合物(19)を下記反応式5に従って合成した。
【0107】
【化8】

【0108】
中間体生成物(A)4.0g(18mmol)、3−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)キノリン(E)13.0g(39mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.0g(0.9mmol)をテトラヒドロフラン120mlとトルエン80mlとの混合溶媒に懸濁させて懸濁液を得た。炭酸カリウム9.8g(71mmol)を水80mlに溶解した溶液にこの懸濁液を加えた。得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、その有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0109】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、析出した結晶をろ過により分離し、トルエンで洗浄し、化合物(19)6.5g(収率:64.7%)を収得した。
【0110】
H NMR(300MHz、CDCl)9.31(d、2H)、8.89(d、2H)、8.40(m、6H)、8.17(d、2H)、8.09(s、1H)、7.92(m、6H)、7.75(m、2H)、7.59(m、5H);MS[M+1]563。
【0111】
合成例6:化合物(63)の合成
有機光電素子用材料の具体的な例として、化合物(63)を下記反応式6に従って合成した。
【0112】
【化9】

【0113】
第1段階:中間体生成物(F)の合成
カルバゾール50.8g(304mmol)、1,4−ジブロモベンゼン71.6g(304mmol)、塩化第一銅3.76g(38mmol)、および炭酸カリウム83.9g(607mmol)をジメチルスルホキシド322mlに懸濁させ、窒素雰囲気下で加熱しながら8時間還流した。得られた反応流体を室温まで冷却し、メタノールを使用して再結晶した。
【0114】
得られた結晶をろ過により分離し、収得した生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、中間体生成物(F)55.9g(収率:61.3%)を収得した。
【0115】
第2段階:中間体生成物(G)の合成
中間体生成物(F)37.8g(117mmol)をテトラヒドロフラン378mlに溶解し、アルゴン雰囲気下で−70℃でn−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M)100.5ml(161mmol)を加え、次いで得られた溶液を−70乃至−40℃で1時間攪拌した。反応流体を−70℃まで冷却した後、イソプロピルテトラメチルジオキサボロラン47.9ml(235mmol)を滴下して加えた。得られた溶液を−70℃で1時間攪拌した後、室温まで昇温させて6時間攪拌した。得られた溶液に水200mlを添加した後20分間攪拌した。
【0116】
反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0117】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、得られた結晶をろ過により分離し、トルエンで洗浄し、中間体生成物(G)28.9g(収率:66.7%)を収得した。
【0118】
第3段階:中間体生成物(H)の合成
中間体生成物(G)26.8g(73mmol)、化合物(C)20.0g(73mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.1g(1.8mmol)をテトラヒドロフラン600mlとトルエン400mlとの混合溶媒に懸濁させて懸濁液を得た。炭酸カリウム20.1g(154mmol)を水400mlに溶解した溶液にこの懸濁液を加え、得られた混合物を8時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0119】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、得られた結晶をろ過により分離し、トルエンで洗浄し、中間体生成物(H)23.0g(収率:65.4%)を収得した。
【0120】
第4段階:化合物(63)の合成
中間体生成物(H)6.0g(12mmol)、化合物(E)4.5g(14mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.36g(0.3mmol)をテトラヒドロフラン180mlとトルエン120mlとの混合溶媒に懸濁させて懸濁液を得た。炭酸カリウム3.4g(25mmol)を水120mlに溶解した溶液にこの懸濁液を加えた。得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0121】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、得られた結晶をろ過により分離し、トルエンで洗浄し、化合物(63)7.2g(収率:88.3%)を収得した。
【0122】
H NMR(300MHz、CDCl)9.31(s、1H)、8.92(d、2H)、8.62(d、2H)、8.45(m、2H)、8.19(d、3H)、7.71(m、20H);MS[M+1]651。
【0123】
合成された化合物のガラス転移温度および熱分解温度を示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)および熱重量分析(Thermogravimetry:TGA)によって測定して決定した。合成例1による化合物(1)の結果を図6に示す。
【0124】
(有機光電素子の製造)
実施例1
コーニング社(Corning.Inc)製の15Ω/cm(1200Å)のITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断してイソプロピルアルコールおよび純水の中でそれぞれ5分間超音波洗浄した後、30分間UVおよびオゾン洗浄した。
【0125】
前記ガラス基板の表面上にN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−[4−(フェニル−m−トリルアミノ)−フェニル)]−ビフェニル−4,4’−ジアミン(N,N’−diphenyl−N,N’−bis−[4−(phenyl−m−tolyl−amino)−phenyl]−biphenyl−4,4’−diamine:DNTPD)(40nm)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)(10nm)、EB−46(イーレイ(E−Ray)オプトエレクトロニクステクノロジー社製の蛍光青色ドーパント):EB−512(イーレイオプトエレクトロニクステクノロジー社製の青色蛍光ホスト)6%(40nm)および前記合成例1で得られた化合物(1)(10nm)を順に熱真空蒸着して正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層、および電子輸送層(ETL)を形成した。
【0126】
前記ETL上に電子注入層(EIL)としてLiFを0.5nmの厚さに真空蒸着し、Alを100nmの厚さに真空蒸着してLiF/Al電極を形成した。得られた有機光電素子の構造を図5に示す。
【0127】
実施例2
化合物(1)の代わりに合成例2で得られた化合物(2)(10nm)を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で有機光電素子を製造した。
【0128】
実施例3
化合物(1)の代わりに合成例3で得られた化合物(10)(10nm)を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で有機光電素子を製造した。
【0129】
実施例4
化合物(1)の代わりに合成例4で得られた化合物(11)(10nm)を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で有機光電素子を製造した。
【0130】
実施例5
化合物(1)の代わりに合成例5で得られた化合物(19)(10nm)を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で有機光電素子を製造した。
【0131】
実施例6
化合物(1)の代わりに合成例6で得られた化合物(63)(10nm)を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で有機光電素子を製造した。
【0132】
比較例1
化合物(1)の代わりに下記化学式2で表される化合物であるAlq(10nm)を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で有機光電素子を製造した。
【0133】
【化10】

【0134】
有機光電素子の性能測定
前記実施例1乃至6、および比較例1で製造されたそれぞれの有機光電素子に対して電圧による発光効率を測定した。測定方法は次のとおりである。
【0135】
1)電圧変化による電流密度の変化の測定
前記実施例1乃至6、および比較例1で調製されたそれぞれの有機光電素子に対し、電圧を0Vから14Vまで上昇させ、電流−電圧計(Keithley 2400(登録商標))を利用して単位素子に流れる電流値を測定した。前記電流値を面積で割ってこれらの電流密度を測定した。
【0136】
2)電圧変化による輝度の変化の測定
前記実施例1乃至6、および比較例1によるそれぞれの有機光電素子に対し、電圧を0Vから14Vまで上昇させ、輝度計(Minolta Cs−1000A)を利用して輝度を測定した。
【0137】
3)電力効率(発光効率)の測定
前記「1)電圧変化による電流密度の変化の測定」および「2)電圧変化による輝度の変化の測定」で測定された電流密度および輝度、ならびに電圧(V)から電力効率(発光効率)を計算した。その結果を下記表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
表1を参照すれば、比較例1のAlqを電子輸送層として使用した場合に比べ、本発明による有機光電素子用材料を使用して電子輸送層を形成した実施例1乃至6の有機光電素子は、低い駆動電圧と共に優れた電力効率(lm/W)を有することが分かる。したがって、本発明の一実施形態による有機化合物は、高い熱安定性を有し、有機光電素子の性能評価結果からわかるように、低い駆動電圧および高い発光効率を有するため、有機光電素子の寿命を向上させることができると予想される。有機光電素子用材料が有する非対称性により非晶質特性が強化され、そのため結晶化を抑制されて素子の寿命が向上したと考えられる。
【0140】
4)熱的特性の測定
合成例1乃至6で得られた化合物を示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)で1次分析を行い、その後、1次分析済みの化合物について2次分析を行なった。合成例1の化合物に対する分析結果を図6に示す。図6を参照すれば、合成例1の化合物は1次分析で融点ピークを示したが、2次分析では融点ピークを示さなかった。この結果から、合成例1の化合物が安定した非晶質状態で存在することが確認された。
【0141】
また、合成例2乃至6の化合物も同様な方法で非晶質状態で存在することが確認された。したがって、合成例1乃至6の各化合物を含む有機発光ダイオードは、駆動時にジュール熱により影響を受けることなく、既存の有機光電素子に比べて向上した寿命特性を示すと予測される。
【0142】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、当業者によって特許請求の範囲の精神および技術的範囲に含まれる多様な変形および等価の形態で製造されうる。したがって、上記の実施例は例示的なものであり、本発明をいかようにも限定するものではないことを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される非対称化合物を含む、有機光電素子用材料:
【化1】

前記化学式1において、
Arは、水素、および置換または非置換のアリール基からなる群より選択され、但し、Arが置換されたアリール基である場合、Arの置換基がArと同一ではなく、
ArおよびArは、それぞれ独立して置換または非置換のカルバゾリル基、置換または非置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数2乃至30のアリールアミン基、および置換または非置換の炭素数2乃至30のヘテロアリールアミン基からなる群より選択され、
およびLは、それぞれ独立して置換または非置換のフェニレン、置換または非置換のナフチレン、および置換または非置換のアントラセンからなる群より選択され、
mおよびnは、1乃至4の整数である。
【請求項2】
Arは、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、およびクリセニル基からなる群より選択される、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
Arは、炭素数1乃至30のアルキル基、炭素数1乃至10のヘテロアルキル基、炭素数3乃至30のシクロアルキル基、炭素数6乃至30のアリール基、炭素数1乃至30のアルコキシ基、フルオロ基、およびシアノ基からなる群より選択される置換基で置換される、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
ArおよびArは、それぞれ独立してイミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリニル基、アクリジル基、イミダゾピリジニル基、イミダゾピリミジニル基、ジフェニルアミン基、ジナフチルアミン基、ジビフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、フェニルジフェニルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、カルバゾイル基、トリフェニルアミン基、およびジピリジルアミン基からなる群より選択される、請求項1に記載の材料。
【請求項5】
およびLは、フェニレンである、請求項1に記載の材料。
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物は、下記化合物(1)乃至(90)またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の材料。
【化2−1】

【化2−2】

【化2−3】

【化2−4】

【化2−5】

【化2−6】

【化2−7】

【請求項7】
陽極;陰極;および前記陽極と前記陰極との間に配置された少なくとも1つの有機薄膜層を含み、
前記有機薄膜層のうち少なくとも1つは、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機光電素子用材料を含む、有機光電素子。
【請求項8】
前記有機薄膜層は、発光層;ならびに正孔輸送層(HTL)、正孔注入層(HIL)、電子注入層(EIL)、正孔阻止層およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの層を含む、請求項7に記載の有機光電素子。
【請求項9】
前記有機光電素子用材料は、電子輸送層(ETL)または電子注入層(EIL)に含まれる、請求項7に記載の有機光電素子。
【請求項10】
前記有機光電素子用材料は、発光層に含まれる、請求項7に記載の有機光電素子。
【請求項11】
前記有機光電素子用材料は、発光層に燐光または蛍光ホストとして含まれる、請求項7に記載の有機光電素子。
【請求項12】
前記有機光電素子用材料は、発光層に青色蛍光ドーパントとして含まれる、請求項7に記載の有機光電素子。
【請求項13】
有機発光ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機感光体ドラム、および有機メモリ素子からなる群より選択される、請求項7に記載の有機光電素子。
【請求項14】
請求項7に記載の有機光電素子を含む、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−501091(P2012−501091A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524896(P2011−524896)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004730
【国際公開番号】WO2010/024572
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】