説明

有機化合物の発酵製造

本発明は、少なくとも3個のC原子を有するか、または少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子とを有する少なくとも1種の有機化合物を発酵生産する方法であって、以下のステップ:
(a1)デンプン供給材料を粉砕し、それによりデンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分を含むミルベースを得るステップ;
(a2)前記ミルベースを水性液体に懸濁し、酵素的液化および適宜、続く糖化によりミルベース中のデンプン部分を加水分解し、それにより単糖またはオリゴ糖を含む第1の液体(1)を得るステップ;および
(b)単糖またはオリゴ糖を含む液体(1)を、代謝可能な単糖、二糖もしくはオリゴ糖とともに、または代謝可能な単糖、二糖もしくはオリゴ糖を少なくとも50重量%の濃度で含み、かつ水に不溶な固体を原則として含まない組成物とともに、前記有機化合物の過剰生産が可能な微生物を含む発酵培地に発酵条件下で添加するステップ
を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3個のC原子を有するか、または少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子を有する有機化合物の発酵製造に関し、該製造では、微生物を培養するために、デンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分を含む糖含有培地を使用する。
【背景技術】
【0002】
糖含有液体培地は多数の発酵プロセスの基本的な栄養供給源である;該培地中に存在する糖成分は、用いられる微生物によって代謝され、有益な有機生成物を生じさせる。このように製造される微生物代謝産物、すなわち有機化合物の範囲には、例えば、低分子量の揮発性化合物(例えばエタノール)、非揮発性代謝産物(例えばアミノ酸、ビタミンおよびカロテノイド)、および多数の他の物質が含まれる。
【0003】
種々のプロセス条件に応じて、異なる炭素供給材料が、そのような一般に公知の微生物の発酵プロセスに利用される。それらは、ビート由来の純粋なショ糖、および高揮発度糖蜜(high-test molasses)(転化サトウキビ糖蜜(inverted sugarcane molasses))として知られるサトウキビ糖蜜から、デンプン加水分解物由来のグルコースにまでおよぶ。さらに、L−リジンの生物工学的製造のために工業規模で使用できる補基質として、酢酸およびエタノールが挙げられる(Pfefferle et al., Biotechnological Manufacture of Lysine, Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology, Vol. 79 (2003), 59-112)。
【0004】
上述の炭素供給材料に基づいて、微生物代謝産物の、糖ベースの発酵製造に関する種々の方法および手順が確立されている。例としてL−リジンを考慮すると、前記方法および手順は、例えばPfefferleら(上掲)によって、菌株開発、方法開発および工業的製造に関して報告されている。
【0005】
微生物代謝産物の微生物媒介性の発酵製造のための重要な炭素供給材料はデンプンである。デンプンは、まず、先行する反応ステップで液化および糖化されなければならない。その後、炭素供給材料として発酵で利用することができる。この目的を達成するために、デンプンは、通常、天然デンプン供給材料、例えばジャガイモ、キャッサバ、穀類(例えばコムギ、トウモロコシ、オオムギ、ライムギ、ライコムギまたはイネ)から予備精製された形式で取得され、その後、酵素により液化および糖化され、続いて、実際の発酵で所望の代謝産物を製造するために用いられる。
【0006】
そのような予備精製されたデンプン供給材料の使用に加えて、微生物代謝産物の発酵製造用の炭素供給材料の製造に、前処理されていないデンプン供給材料を使用することも報告されている。典型的には、デンプン供給材料は最初に挽いて粉砕される。そしてミルベース(Mahlgut)が液化および糖化に付される。このミルベースは、天然に、デンプンに加えて、発酵に悪影響を与える可能性がある一連の非デンプン性成分を含むため、通常、これらの成分は発酵前に除去される。除去は、粉砕直後(WO 02/077252; JP 2001-072701; JP 56-169594; CN 1218111)、液化後(WO 02/077252; CN 1173541)または糖化後(CN 1266102; Beukema et al.: Production of fermentation syrups by enzymatic hydrolysis of potatoes; potato saccharification to give culture medium (Conference Abstract), Symp. Biotechnol. Res. Neth. (1983), 6; NL8302229)に行うことができる。しかし、すべての変法には、実質的に純粋なデンプン加水分解物を発酵で使用することが含まれる。
【0007】
有機化合物の発酵製造のための新規なプロセスは、特に、発酵前のデンプン供給材料の精製、例えば液化および糖化されたデンプン溶液の精製を含み(JP 57159500)、または再生可能資源からの発酵培地の製造を可能にすることを目的にする方法を提供する(EP 1205557)。
【0008】
一方で、未処理のデンプン供給材料はバイオエタノールの発酵製造で大規模に使用されることが知られている。この場合、通常、穀類全粒であるデンプン供給材料は、まず、乾式製粉に付され、その後、デンプン供給材料のデンプン成分が酵素を使用して加水分解される。この場合、加水分解は、例えば撹拌容器中でバッチ方式で、あるいは例えばジェット調理器具中で連続的に実施することができる。好適な方法の説明は、例えば「The Alcohol Textbook - A reference for the beverage, fuel and industrial alcohol industries」, Jaques et al. (Ed.), Nottingham Univ. Press 1995, ISBN 1-8977676-735, Chapter 2, pp. 7-23, およびMcAloon et al.,「Determining the cost of producing ethanol from corn starch and lignocellulosic feedstocks」, NREL/TP-580-28893, National Renewable Energy Laboratory, October 2000に見出せる。
【0009】
バイオエタノールの発酵製造では、蒸留によって有用な生成物が取得されるため、乾式製粉プロセス由来の予備精製されていない形態のデンプン供給材料の使用は重大な問題にはならない。しかし、他の微生物代謝産物の製造に乾式製粉法を使用する場合、糖液経由で発酵に導入される固体流(Festoffstrom)が問題になる。なぜなら、固体流は発酵に対して、例えば酸素移動速度または使用される微生物の酸素要求に関する悪影響を有するだけでなく(これに関しては、Mersmann, A. et al.: Selection and Design of Aerobic Bioreactors, Chem. Eng. Technol. 13 (1990), 357-370を参照のこと)、その後の加工をかなり複雑にする可能性がある。
【0010】
さらに、固体導入の結果、デンプン含有懸濁液の製造中でさえ、懸濁液の粘性が臨界値に達する可能性があり、その結果、例えば30重量%を超えるトウモロコシ粉を含有する懸濁液はもはや水中に均一に混和されない(Industrial Enzymology, 2nd Ed., T. Godfrey, S. West, 1996)。これは、従来の手順でのグルコース濃度を制限する。バイオエタノールの発酵製造では、発酵に用いられる酵母に対する生成物の毒性のために、いかなる場合においても有意義な様式で変換できない高い濃度では、このことはもはや関係がない。
【0011】
低い糖濃度の糖含有培地を発酵に供給することは、原理的に、エタノール以外の有機代謝産物の発酵製造において不利である。なぜなら、この手順が発酵液の過度の希釈を生じさせ、その結果、達成できる目的の生成物の終濃度が低下し、それにより、まず、これらの生成物を発酵培地から取得する場合のコストが増加し、次に空時収量が減少するからである。特に、大量のバイオエタノールの製造のために製造され、かつ通常は約30または33重量%以下の低い糖またはグルコース濃度を有するデンプン加水分解物を、他の化学物質の製造のための少量の二次発酵に部分的に供給することを目的にする場合に、これらの考察は重要である。
【0012】
これらの困難および制限のせいで、バイオエタノールの製造に広く用いられている乾式製粉法は、現在まで、エタノール以外の微生物代謝産物の発酵製造において特別な経済的重要性を有していない。
【0013】
従来、乾式製粉の考え方および、この方法に関連して原理的に存在する利点を、微生物代謝産物の工業的規模の製造に応用する試みは、デンプン供給材料としてキャッサバを使用して報告されているだけである。例えばJP 2001/275693では、乾燥状態で粉砕された皮むき済みキャッサバ塊茎をデンプン供給材料として用いる、アミノ酸の発酵製造のための方法が記載されている。該方法を実施するために、ミルベースの粒径を150μm以下に調節することが必要である。この目的で用いられるろ過ステップでは、ミルベースの、非デンプン含有成分を含む部分を除去した後、存在するデンプンを液化/糖化し、その後発酵させる。この方法では、中程度の糖濃度が得られる。アミノ酸含有飼料添加物の製造に関してJP 2001/309751に同様の方法が記載されている。
【0014】
発酵に用いられる液体培地中の高い糖濃度は、本出願人のWO 2005/116228(PCT/EP2005/005728)に記載の方法によって、糖化用の、デンプン供給材料の固体の非デンプン性成分を主に含むミルベースを使用することによって達成することができる。驚くべきことに、デンプン供給材料中に存在する固体の非デンプン性成分は発酵前に除去する必要がないことが明らかになった。穀粒より選択されるデンプン供給材料を使用する同様の方法が本出願人のPCT/EP2006/066057(先の特許出願DE 102005042541.0)に記載されている。一部の場合には、微生物の増殖の阻害または遅延が観察された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、有機化合物の発酵製造のための別の方法であって、デンプン供給材料中に存在する非デンプン性固体成分をあらかじめ、少なくとも完全には、除去する必要がない方法を提供することである。さらに、使用される培地を容易に操作できること、および発酵プロセスにおいてそれらを問題なく使用できることによって際立っていなければならない。特に、該方法は、デンプン供給材料として穀類の使用を可能にしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、デンプン供給材料を、該デンプン供給材料の非デンプン性固体成分をあらかじめ除去することなく、粉砕、液化および糖化することによって第1の糖含有液体培地(1)を製造し、そしてこの培地を、代謝可能な単糖、二糖もしくはオリゴ糖とともに、または代謝可能な単糖もしくはオリゴ糖を少なくとも50重量%の濃度で含み、かつ水に不溶な固体を実質的に含まない組成物とともに発酵に供給することにより、上記の先行技術の課題を解決しうることが見出された。
【0017】
ゆえに、本発明は、少なくとも3個のC原子を有するか、または少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子とを有する少なくとも1種の有機化合物を発酵生産する方法であって、以下のステップ:
(a1)デンプン供給材料を粉砕し、それによりデンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分を含むミルベースを得るステップ;
(a2)前記ミルベースを水性液体に懸濁し、酵素的液化および適宜、続く糖化によりミルベース中のデンプン部分を加水分解し、それにより単糖またはオリゴ糖を含む第1の液体(1)を得るステップ;および
(b)単糖またはオリゴ糖を含む液体(1)を、代謝可能な単糖、二糖もしくはオリゴ糖とともに、または代謝可能な単糖、二糖もしくはオリゴ糖を少なくとも50重量%の濃度で含み、かつ水に不溶な固体を原則として含まない組成物とともに、前記有機化合物の過剰生産が可能な微生物を含む発酵培地に発酵条件下で添加するステップ
を含む方法を提供する。
【0018】
酵素的加水分解により得られた、単糖またはオリゴ糖を含む液体(1)を用いることにより、有機化合物の発酵生産におけるコストが大幅に削減される。濃縮された形態での代謝可能な糖(すなわち、代謝可能な単糖、二糖またはオリゴ糖)を追加的に並行して添加することで、発酵液のいかなる望ましくない希釈も回避される。また、高いミルベース濃度でのデンプン供給材料の液化で生じる粘性の問題を、本発明の方法の結果、回避することができる。さらに、同様に、微生物の増殖に伴う問題を回避することができる。
【0019】
単糖またはオリゴ糖を含む液体(1)を指す場合、用語「液体(1)」および「液体培地(1)」は、本明細書中、以下、同義的に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の方法のためのデンプン供給材料として好適であるのは、主に、乾燥穀類または種子であり、その場合、デンプン量は乾燥状態で少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%になる。それらは、現在大規模に栽培されている多数の穀類植物、例えばトウモロコシ、コムギ、カラスムギ、オオムギ、ライムギ、ライコムギ、イネ、サトウダイコン、ジャガイモおよび種々のモロコシおよびキビ種、例えばサトウモロコシおよびミロにおいて見出される。デンプン供給材料は、好ましくは、穀類のうちから、特に好ましくはトウモロコシ、ライムギ、ライコムギおよびコムギ穀粒のうちから選択される。原理的に、本発明の方法は、同様のデンプン供給材料、例えば種々のデンプン含有穀類または種子の混合物を用いて実施することもできる。
【0021】
液体培地(1)を製造するために、目的のデンプン供給材料をステップ(a1)で粉砕する。この作業は、液体、例えば水を添加するか、または添加せずに、好ましくは液体を添加せずに行う。乾式製粉を後の湿式製粉ステップと組み合わせることも可能である。
【0022】
乾式製粉に典型的に用いられる装置は、ハンマーミル、ローターミルまたはローラーミルである;湿式粉砕に好適な装置は、パドルミキサー、撹拌ボールミル、循環ミル、ディスクミル、円環槽ミル、振動ミルまたはプラネタリーミルである。原理的に、他のミルもまた好適である。湿式粉砕に必要とされる液体の量は当業者が通常の実験で決定することができる。通常、乾燥物含量が10〜20重量%の範囲であるように調節される。
【0023】
製粉では、以後のプロセスステップに好適な粒径をもたらす。これに関して、それは、ステップ(a1)の製粉ステップ、特に乾式製粉ステップで得られるミルベースが、100〜630μmの範囲の粒径の穀粉粒子、すなわち微粒子成分を30〜100重量%、好ましくは40〜95重量%、特に好ましくは50〜90重量%の量で有する場合に有利であることがわかっている。好ましくは、得られるミルベースは、100μmを超える粒径の、50重量%の穀粉粒子を含む。一般に、少なくとも95重量%の粉砕穀粉粒子は2mm未満の粒径を有する。これに関して、粒径は振動分析計を使用するスクリーン分析を用いて測定される。原理的には、高い生成物収率を得るために小さい粒径が有利である。しかし、過度に小さい粒径は、ミルベースが液化中または加工中、例えば発酵ステップ後の固体の乾燥中にスラリー化した場合に、問題を生じさせ、特に凝集塊形成/集塊に起因する問題を生じさせる可能性がある。
【0024】
通常、穀粉は抽出率または穀粉グレードによって特徴づけられる。その互いの相関は、穀粉グレードの特性が抽出率の増加とともに高くなるというものである。抽出率は、適用されるミルベースの100重量部に基づく、得られた穀粉の重量に対応する。製粉プロセス中、最初に、例えば穀粒の内部由来の純粋な超微細穀粉が得られるが、さらなる製粉では、すなわち抽出率が増加すると、穀粉中の粗繊維の量および殻含量が増加し、デンプン含量が減少する。したがって、穀粉グレードとして知られる値に抽出率も反映される。穀粉グレードは穀粉(flours)、特に穀類の穀粉(cereal flours)を分類するための数値として使用され、穀粉の灰分含量に基づいている(灰基準として知られる)。穀粉グレードまたは型番号は、穀粉固体100gが焼却された場合に後に残るmg単位の灰(無機質)の量を示す。穀類の穀粉の場合、型番号が大きいほど高い抽出率を意味し、なぜなら、穀粒の核が約0.4重量%の灰を含むのに対し、殻は約5重量%の灰を含むからである。抽出率が低い場合、ゆえに穀類の穀粉は、粉砕胚乳、すなわち穀粒のデンプン成分から主に構成され;抽出率が高い場合、穀類の穀粉は、穀粒の粉砕されたタンパク質含有アリューロン層をも含み;あらびき粉の場合、それらは、タンパク質含有および脂肪含有胚の成分および種子殻の成分をも含み、それは生線維および灰を含む。本発明の目的では、高い抽出率、または大きい型番号の穀粉が原理的に好ましい。デンプン供給材料として穀類を使用する場合、無傷の穀粒をその殻と一緒に粉砕し、適切であればあらかじめ胚および殻を機械的に除去した後に、加工することが好ましい。
【0025】
本発明では、液体培地(1)の調製に使用されるミルベースは、抽出率に対応して、粉砕される穀粒中に存在する非デンプン性固体成分の少なくとも一部分、好ましくは少なくとも20重量%、特に少なくとも50重量%、とりわけ少なくとも90重量%、非常にとりわけ少なくとも99重量%を含む。ミルベースのデンプン性成分(ゆえに液体培地(1)中の単糖、二糖またはオリゴ糖の量)に基づき、ミルベース中の非デンプン性固体成分は、好ましくは、少なくとも10重量%、特に少なくとも15重量%、例えば15〜75重量%、とりわけ20〜60重量%の範囲になる。
【0026】
ステップ(a2)にしたがうミルベースの酵素的加水分解は、当業者に公知の慣用の方法により実施することができ、例えば、冒頭で引用されている"The Alcohol Textbook - A reference for the beverage, fuel and industrial alcohol industries“, Chapter 2, p. 7-23に記載の方法にしたがい実施することができる。
【0027】
この目的では、まずミルベースを水性液体(例えば淡水、(例えば後の発酵由来の)再循環処理水またはこれらの液体の混合物)と混合し、水性懸濁液を得る。この手順は、多くの場合スラリー化とも称される。
【0028】
一般に、ミルベースおよび水性液体の量は、加水分解により単糖、二糖および/またはオリゴ糖の総濃度が100〜750g/kgの範囲内、好ましくは150〜700g/kgの範囲内、とりわけ200〜650g/kgの範囲内にある水性液体培地(1)が得られるように選択される。したがって、ミルベースは、典型的には懸濁液(スラリー)の総重量に基づき150〜800g/kgの量で、多くの場合200〜750g/kgの範囲内で、とりわけ250〜700g/kgの範囲内で用いられる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、ミルベースおよび水性液体の量は、加水分解により単糖、二糖および/またはオリゴ糖の総濃度が100〜400g/kgの範囲内、好ましくは150〜350g/kgの範囲内、とりわけ200〜300g/kgの範囲内にある水性液体培地(1)が得られるように選択される。したがって、ミルベースは、典型的には懸濁液(スラリー)の総重量に基づき150〜550g/kgの量で、多くの場合200〜500g/kgの範囲内で、とりわけ250〜450g/kgの範囲内で用いられる。原理上、単糖、二糖および/またはオリゴ糖のより高い総濃度(例えば、400g/kg〜700g/kgの濃度、特に450〜650g/kgまたは500g/kg〜650g/kg)を実現するために、より大量のミルベースを用いることも可能である。
【0030】
ミルベースのデンプン部分の酵素的加水分解のために、一般に、ミルベースはデンプン液化酵素、一般にα−アミラーゼの存在中でまず液化される。反応条件下で活性な他の酵素および液化された安定なデンプンも用いることができる。
【0031】
ミルベース中に存在するデンプンを液化するために、原理的には、すべての液化酵素を用いることが可能であり、特にα−アミラーゼ(酵素分類EC 3.2.1.1)、例えばバシラス・リケンフォルミス(Bacillus lichenformis)またはバシラス・ステロテルモフィラス(Bacillus staerothermophilus)から得られたα−アミラーゼ、とりわけ、バイオエタノール製造のために、乾式製粉法によって取得される材料の液化に使用される酵素を用いることが可能である。液化に好適なα−アミラーゼはまた、例えばNovozymesからTermamyl 120 L, type Lの名称で;またはGenencorからSpezymeの名称で市販されている。異なるα−アミラーゼの組み合わせを液化に用いてもよい。
【0032】
これにより、ミルベース由来の液化デンプン部分、典型的には、一般に、3〜18個、特に6〜12個の単糖単位(特にグルコース単位)を有するオリゴ糖および用いるミルベースの非デンプン性成分、特に液化に用いるミルベースの固体の非デンプン性成分を含む液体培地が得られる。
【0033】
デンプン液化酵素およびミルベースの量は、ゲル化プロセスでの粘性が、例えば撹拌による、懸濁液の効率的な混合を可能にするために十分に低下するように好都合に選択されるであろう。ゲル化プロセス中の反応混合物の粘性は、好ましくは20Pasを超えず、特に好ましくは15Pasを超えず、非常に特に好ましくは8Pasを超えない。一般に、粘性は、M5測定系およびMVDIN計測手段を備えたHaake粘度計Roto Visko RV20型を使用して、温度50℃および剪断速度200s−1で測定される。
【0034】
α−アミラーゼ(または使用されるデンプン液化酵素)は、最初に反応容器に導入するか、あるいはステップ(a2)中に加えることができる。好ましくは、ステップ(a2)で必要とされるα−アミラーゼの一部分をステップ(a2)の開始時に加えるか、またはこの部分を最初に反応器に導入する。α−アミラーゼの総量は、通常、用いるデンプン供給材料の総量に基づいて、0.002〜3.0重量%、好ましくは0.01〜1.5重量%、特に好ましくは0.02〜0.5重量%の範囲である。
【0035】
液化はゲル化温度より高温または低温で実施することができる。好ましくは、ステップ(a2)の液化を、用いるデンプンのゲル化温度、すなわちアルファ化(gelatinization)温度より少なくとも部分的に高い温度で実施する(調理プロセスとして知られる)。目的のデンプンに必要とされる温度は当業者に公知である(「The Alcohol Textbook - A reference for the beverage, fuel and industrial alcohol industries」(冒頭で引用されている), Chapter 2, p. 11を参照のこと)か、または当業者が通常の実験法によって決定することができる。一般に、選択される温度は、80〜165℃、好ましくは90〜150℃の範囲、特に好ましくは100〜140℃の範囲であり、該温度は、一般に、ゲル化温度より少なくとも5K、特に少なくとも10K、特に好ましくは少なくとも20K、例えば10〜100K、特に20〜80K高い。これらの温度では、デンプンの顆粒状構造は破壊され(ゲル化)、その酵素分解が可能になる。
【0036】
α−アミラーゼ(または使用されるデンプン液化酵素)が最適に効果的であるよう、ステップ(a2)は、好ましくは、少なくともある期間、液化酵素の最適pHで、頻繁には弱酸性範囲、好ましくは4.0〜7.0の範囲、特に5.0〜6.5の範囲のpHで実施される。pH調整は、通常、ステップ(a2)の開始前または開始時に実施される;液化プロセス中にこのpHを検査し、適切であれば再調整することが好ましい。pHは、好ましくは、希釈鉱酸、例えばHSOもしくはHPOまたは希釈水酸化アルカリ水溶液、例えばNaOHもしくはKOHを使用して調整される。
【0037】
ステップ(a2)でミルベース中のデンプン部分を液化するための好ましい実施形態では、ミルベースの少なくとも一部分を連続的にまたはバッチ方式で水性液体に加える。好ましくは、少なくとも40重量%、特に少なくとも50重量%、非常に特に好ましくは少なくとも55重量%を液化プロセスの経過中に、しかしいかなる液化も生じる前に、反応器に加える。添加量は、90重量%、特に85重量%、特に好ましくは80重量%を超えないことが多い。好ましくは、プロセスの経過中に添加されるミルベースの部分は、液化期間中に一般的である条件下で反応器に供給される。添加は、複数の部分に分けて(該部分は、好ましくはそれぞれ液化対象のミルベースの総量の30重量%を超えず、特に好ましくは20重量%を超えず、例えば1〜30重量%、特に2〜20重量%である)バッチ方式で、すなわち少しずつ、あるいは連続的に行うことができる。この実施形態の重要な態様では、液化の開始時に、ミルベースの一部分、好ましくはミルベースの60重量%を超えない量、特に50重量%を超えない量、特に好ましくは45重量%を超えない量のみが反応器中に存在し、一方、残りのミルベースは液化期間中に添加される。
【0038】
液化は、例えば多段階反応カスケードにおいて、連続的に実施することもできる。
【0039】
好ましい実施形態では、ミルベースの総量に基づいて60重量%を超えず、好ましくは50重量%を超えず、特に好ましくは45重量%を超えない量の、例えば10〜60重量%、特に15〜50重量%、特に好ましくは20〜45重量%の部分が最初に水性液体に懸濁され、その後、液化が実施されるように、本発明の方法のステップ(a2)を実施する。
【0040】
好ましい実施形態では、ステップ(a2)でミルベースの一部分を非連続的または連続的に添加、特に少しずつ添加する作業を、液体培地の粘性が20Pasを超えず、好ましくは15Pasを超えず、特に好ましくは8Pasを超えないように実施する。粘性の調節を支援するために、ミルベース中に存在するデンプンのアルファ化温度より高い温度で、添加するミルベースの総量の少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも35重量%、特に好ましくは少なくとも50重量%を加えることが有利であることが示されている。さらに、少なくとも1種のデンプン液化酵素、好ましくはα−アミラーゼ、および/または少なくとも1種の糖化酵素、好ましくはグルコアミラーゼを、それら自体少しずつ加えることによって粘性の調節にさらに影響を与えることもできる。
【0041】
本発明の方法を実施するために、固体のミルベースの懸濁に使用される水性液体を、例えば40〜60℃の範囲の、適度に高い温度にあらかじめ温めることも可能である。しかし、該液体を室温で用いることが好ましい。
【0042】
そして、少なくとも1種のデンプン液化酵素、好ましくはα−アミラーゼをこのミルベースの懸濁液に加える。液化期間中にミルベースの一部分のみを加えるのであれば、α−アミラーゼの一部分、例えばステップ(a2)で用いるα−アミラーゼ全体に基づいて10〜70重量%、特に20〜65重量%のみを開始時に加えることが有利である。期間内のこの時点で添加されるα−アミラーゼの量は、使用されるデンプン供給材料に関する反応条件下での目的のα−アミラーゼの活性に依存し、概して、用いられるデンプン供給材料の総量に基づいて0.0004〜2.0重量%、好ましくは0.001〜1.0重量%、特に好ましくは0.02〜0.3重量%の範囲である。別法として、α−アミラーゼ部分を、懸濁液の作製前に、使用する液体と混合することができる。
【0043】
好ましくは、用いられるα−アミラーゼの総量または一部分を、特に室温または、例えば20〜30℃の範囲の、やや高めた温度で懸濁液に加えた後に、液化に使用される温度への加熱が開始される。
【0044】
そして、そのように作製された懸濁液を加熱し、好ましくは使用されるデンプンのゲル化温度より高い温度にする。一般に、80〜165℃、好ましくは90〜150℃、特に好ましくは100〜140℃の範囲の温度が選択され、該温度は、好ましくは、ゲル化温度(アルファ化温度)より少なくとも5K、特に10K、特に好ましくは少なくとも20K、例えば10〜100K、特に20〜80K高い。粘性をモニタリングしながら、デンプン供給材料の追加部分、例えばそれぞれの場合で、用いられるミルベース全体に基づいて1〜30重量%、特に2〜20重量%を、徐々にデンプン含有懸濁液に加える。液化ステップの経過中に添加される対象のミルベースの一部分を、少なくとも2、好ましくは少なくとも4、特に好ましくは少なくとも6フラクションに分けて反応混合物に加えることが好ましい。別法として、懸濁液の作製に用いられなかったミルベースの一部分を、この実施形態の液化ステップ中に連続的に加えることができる。好都合には、添加中の温度はデンプンのゲル化温度より高く維持されるべきである。
【0045】
所望の温度に達した後、または、適切であれば、すべての穀粉が添加された後、反応混合物を、通常、ある時間、例えば10〜60分間またはそれ以上、必要に応じて、デンプンのゲル化温度より高く設定された温度で維持し、すなわち調理する。そして、一般に、反応混合物を、若干低いが、好ましくはゲル化温度より高い温度、例えば70〜90℃に冷却する。その後、適切であれば、α−アミラーゼの追加部分、好ましくは最大の部分を加える。この場合、期間内のこの時点で添加されるα−アミラーゼの量は、使用されるα−アミラーゼの反応条件下での活性に依存して、用いられるデンプン供給材料の総量に基づいて好ましくは0.002〜2.0重量%、特に好ましくは0.01〜1.0重量%、非常に特に好ましくは0.02〜0.4重量%である。
【0046】
デンプンをデキストリンに完全に分解するために、ヨウ素または、適切であれば、デンプンを検出するための別の試験によるデンプンの検出が陰性になるか、または少なくとも本質的に陰性になるまで、反応混合物を設定温度で維持するか、または、適切であれば、さらに加熱する。適切であれば、このとき、例えば、用いられるデンプン供給材料の総量に基づいて0.001〜0.5重量%、好ましくは0.002〜0.2重量%の範囲の、1以上の追加のα−アミラーゼ部分を反応混合物に加えることができる。
【0047】
あるいは、デンプン部分を液化するために、最初に、ミルベースを含む水性懸濁液を、蒸気の導入によってデンプン供給材料またはミルベース中に存在するデンプンのアルファ化温度より高い温度に加熱することが可能である。典型的に、目的のアルファ化温度より少なくとも10K、特に少なくとも20K、例えば10〜100K、特に20〜80K高い温度で懸濁液を加熱する。特に、90〜150℃の範囲、とりわけ100〜140℃の範囲の温度に懸濁液を加熱する。
【0048】
懸濁液の加熱に用いられる蒸気は、典型的に、少なくとも105℃、特に少なくとも110℃、例えば110〜210℃の温度を有する過熱蒸気である。蒸気は、好ましくは、大気圧を超える圧力(superatmospheric pressure)で懸濁液に導入される。したがって、蒸気は、好ましくは、少なくとも1.5bar、例えば1.5〜16bar、特に2〜12barの圧力を有する。
【0049】
一般に、懸濁液への蒸気の導入は、該蒸気が大気圧を超える圧力、好ましくは1〜10または11bar、特に1.5〜5barの大気圧を超える圧力で、好ましくは高速で懸濁液に導入されるように行われる。蒸気導入の結果、該懸濁液は、アルファ化温度より高い温度である90℃より高い温度に直ちに加熱される。
【0050】
蒸気での加熱は、好ましくは、連続操作デバイスで実施される。該デバイスに、懸濁液の粘性、供給速度およびデバイスの形状の結果である特定の供給圧で連続的に懸濁液を満たし、懸濁液充填ゾーン中に、調節可能なノズルを介して供給圧に基づく高い圧力で加熱蒸気を満たす。高い圧力での蒸気の供給とは、懸濁液が加熱されるだけでなく、さらに機械的エネルギーが系に導入され、この機械的エネルギーがミルベース粒子のさらなる粉砕を促進し、特に均一のエネルギー供給をもたらし、ゆえに、ミルベース中の顆粒状デンプン粒子の特に均一のアルファ化をもたらすことを意味する。これらのデバイスは、典型的に、チューブの形状を有する。蒸気は、好ましくは、チューブ状デバイスの長軸に沿って送り込まれる。一般に、懸濁液は、少なくとも45°の角度で、または直角に供給される。調節可能なノズルは、典型的に、蒸気の流動方向に向かって細くなる円錐形状を有する。針、または長軸方向に移動可能なロッド上に配置されている円錐がこのノズル内に配置される。針、または円錐は、ノズルの先端と一緒になって開口部を形成する。針、またはロッドを長軸方向に動かすことによって、開口部のサイズ、ゆえにノズル末端の断面積を単純な様式で調節することができ、それにより蒸気の供給速度を単純な様式で調節することができる。
【0051】
これらのデバイスはまた、典型的に、混合管を備えている。懸濁液は、蒸気が供給された後に混合管へ輸送され、該管中で懸濁液はデバイスから出る。この混合管は、通常、蒸気供給に沿って、かつ材料供給に対して垂直に配置される。混合管およびノズルは一緒になって、典型的には開口部を形成し、該開口部を通して懸濁液が輸送される。この開口部の影響として、輸送プロセス中に追加の剪断力が懸濁液に対して作用し、ゆえに、懸濁液に対する機械的エネルギーの供給が増加する。混合管は、長軸方向に移動可能であるように配置することができる。混合管の移動は、開口部のサイズを調節し、ゆえにデバイス中の圧力を低下させる単純な方法である。
【0052】
そのようなデバイスはジェット調理器の名称で先行技術から公知である。該デバイスは、例えば「The Alcohol Textbook」, Chapter 2, 上掲, Figure 13に示されているデバイスであり、例えばHYDROHEATER(登録商標)の名称でHydro Thermal Corp. Waukesha WI, USAから市販されている。
【0053】
反応が連続的に実施される場合、一般に、蒸気で処理された懸濁液は、その後、後反応帯(after-reaction zone)へ輸送される。その目的は、デンプン成分のゲル化を継続することである。典型的には、大気圧を超える圧力、典型的に2〜8barの範囲の絶対圧力が後反応帯にかかっている。後反応帯の温度は、典型的に、90〜150℃の範囲である。この後反応帯の滞留時間は、懸濁液の温度に依存して、1分間〜4時間の範囲でありうる。後反応帯は、典型的に、チューブまたはカラムの形状を有する。一実施形態では、後反応帯は垂直に配置されたカラムの形状を有する。ここで、懸濁液は、蒸気処理デバイスから出ると、カラムの上部領域にアプライされ、下部領域に回収される。本発明の別の実施形態では、後反応帯はチューブの形状を有する。
【0054】
懸濁液が後反応帯から出た後、一般に、圧力が解放され、その後、液化が実施される。圧力の解放は、好ましくは、フラッシュ蒸発の形式で実施される。その目的は、懸濁液を好ましくは100℃未満、特に85℃未満の温度に冷却することである。一般に、そのように分散されたデンプンを、その後、別の反応容器中で液化する。液化は上記のように実施することができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、デンプン液化酵素の少なくとも一部分または全体、概して少なくとも50%、特に少なくとも80%、あるいはすべてを水性液体中のミルベースの懸濁液に加えた後に、蒸気加熱プロセスを行う。この様式では、液化プロセスはすでに行われていて、混合物はアルファ化温度より高い温度に加熱される。蒸気での加熱、および後反応期間は適宜実施される。別の反応容器中の後の液化ステップは省くことができる。しかし、好ましくはそのような液化ステップが、デンプンからデキストリンへの分解を完全にするために実施される。
【0056】
用いられる酵素を安定化するために、適切であれば、例えばCaClを使用して、Ca2+イオンの濃度を酵素特有の最適値に調節する。好適な濃度値は当業者が通常の実験で決定することができる。α−アミラーゼとして例えばTermamylが用いられる場合、液体培地中のCa2+濃度を、例えば、10〜100ppm、好ましくは20〜80ppm、特に好ましくは約30〜70ppmに調節することが有利である。単位ppmは重量に基づく単位であり、g/1000kgを意味する。
【0057】
デンプンをデキストリンに完全に分解するために、ヨウ素または、適切であれば、デンプンを検出するための別の試験によるデンプンの検出が陰性になるか、または少なくとも本質的に陰性になるまで、反応混合物を設定温度で維持する。適切であれば、ここで、例えば、用いられるデンプン供給材料の総量に基づいて、0.001〜0.5重量%、好ましくは0.002〜0.2重量%の範囲の、1以上の追加のα−アミラーゼ部分を反応混合物に加えることができる。
【0058】
これにより、ミルベース由来の液化されたデンプン部分、典型的にはデキストリン、および適切であれば、さらなるオリゴ糖および単糖または二糖、ならびにミルベースの非デンプン性成分、特に液化に用いたミルベースの固体非デンプン成分を含む水性デンプン加水分解物がもたらされる。
【0059】
デンプン液化が終了した後に、それ自体は公知の様式で、継続的にまたはバッチ方式で、液体培地中に存在するデキストリンは糖化され、すなわちグルコースに分解される。液化された培地は、例えば続く発酵ステップで用いる前に、特別な糖化槽中で完全に糖化することができる。
【0060】
本発明の第1の実施形態では、続く発酵の前に、部分的な糖化のみが行われる。例えば、デキストリン(またはもとのデンプン)の総重量に基づき10〜90重量%の範囲、特に20〜80重量%の範囲の、液体培地中に存在するデキストリンの一部が糖化され、得られた糖含有液体培地が発酵に用いられるように、手順が続く。続いてさらなる糖化を発酵培地中でその場で(in situ)行ってもよい。また、糖化は、別個の糖化槽を用いることなしに、発酵槽中で直接(in situ)行うことができる。
【0061】
現場(in situ)糖化、すなわち部分的にまたは完全に発酵槽中で行う糖化の利点は、第1に設備投資が少なくなること;第2に、グルコースの遊離が遅延することで、適切ならば、用いる微生物の阻害または代謝変化を生じることなしに、バッチ中に初めから高い濃度のグルコースを導入することが可能になることである。大腸菌では、例えば、過度に高いグルコース濃度は有機酸(酢酸塩)の形成をもたらし、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisae)では、そのような場合に、たとえ通気された発酵槽中に十分な酸素が存在しても、発酵に切り替わる(クラブトリー効果)。遅延したグルコース遊離は、グルコアミラーゼ濃度を制御することによって調節することができる。このことは、上記の効果を抑制することを可能にし、かつより多くの基質を初めから導入することができ、これにより希釈(付与される供給流の結果である)を低減させられるようになる。
【0062】
液化されたデンプン溶液中のデキストリン(すなわちオリゴ糖)の糖化は、酵素的に、すなわち少なくとも1種のデキストリン糖化酵素を用いて、行うことができる。この目的で用いることができる酵素は、原則として全てのグルコアミラーゼ(酵素分類EC 3.2.1.3)であり、特にアスペルギルスから得られるグルコアミラーゼであり、具体的にはバイオエタノールの製造に関して乾式粉砕法により得られる糖化材料に対して用いられるものである。糖化に好適なグルコアミラーゼは、市販もされており、例えば、Dextrozyme GAの商品名でNovozymesから;またはOptidexの商品名でGenencorから市販されている。異なるグルコアミラーゼの組み合わせを用いてもよい。
【0063】
該少なくとも1種の糖化酵素、特に少なくとも1種のグルコアミラーゼを、液化後に得られたデキストリン含有液体培地に、用いるデンプン供給材料の総量に基づき、通常0.001〜5.0重量%、好ましくは0.005〜3.0重量%、特に好ましくは0.01〜1.0重量%の量で添加する。
【0064】
糖化を発酵槽中で行う場合、一般に、液化されたデンプン溶液を発酵温度(すなわち32〜37℃)まで冷却し、その後、発酵槽に供給する。この場合、糖化のためのグルコアミラーゼ(または少なくとも1種の糖化酵素)を発酵液に直接的に添加する。そして、ステップ(a2)にしたがう液化されたデンプンの糖化は、微生物による糖の代謝と並行して行われる。
【0065】
糖化を糖化槽中で行う場合、液化デンプン溶液は、通常は糖化酵素の至適温度かそれよりも若干低い温度まで(例えば50〜70℃まで)冷却されるかまたは加温され、続いてグルコアミラーゼを用いて処理される。
【0066】
糖化酵素、特にグルコアミラーゼを添加する前に、液体培地のpHを用いるグルコアミラーゼの至適活性範囲の値に、好ましくは3.5〜6.0、特に好ましくは4.0〜5.5、非常に特に好ましくは4.0〜5.0の範囲の値に調整するのが有利である。しかしながら、特に糖化を発酵槽中で直接行う場合、pHを上記の範囲外の値に、例えば6.0〜8.0の範囲の値に調整することも可能である。このことは、このpH範囲での標準的なグルコアミラーゼの活性が制限されるとしても、例えばリジン、パントテン酸塩およびビタミンBの発酵生産では全体として有利であるか、または設定された発酵条件の結果、必要である。
【0067】
好ましい実施形態では、糖化は特別な糖化槽中で行われる。この目的のために、液化されたデンプン溶液を酵素の至適温度またはそれよりも若干低い温度まで加温し、pHを酵素に至適な値まで上述のように調整する。
【0068】
糖化酵素の添加後、好ましくはデキストリン含有懸濁液を設定温度で、例えば2〜72時間または必要ならばそれより長く、特に5〜48時間維持する。この間にデキストリンが糖化されて単糖がもたらされる。糖化プロセスの進行は、公知の方法(例えばHPLC、酵素アッセイまたはグルコース試験紙)を用いて当業者がモニタリングすることができる。単糖濃度が実質的にはもう上昇しないか、再び低下したら、糖化は終了している。
【0069】
一般に、デンプン供給材料の少なくとも一部もしくはすべての成分を含むミルベースが、糖含有液体培地(1)の製造に用いられる(すなわちデンプン供給材料の非デンプン性固体成分が除去されていないか、完全には除去されていない)ため、得られる液体培地(1)もまた、該デンプン供給材料の非デンプン性固体成分の一部分または全体を含む。このことは、例えば穀類由来の、一定量のフィチン酸塩(phytate)の導入をもたらすことが多く、これは見過ごしてはならない量である。それにより生じる阻害効果を回避するために、ステップ(a2)で、糖含有液体培地を発酵ステップに付する前に、該液体培地に少なくとも1種のフィターゼを加えることが有利である。
【0070】
フィターゼは、個別の高温条件に対して十分に安定であれば、液化前、液化中または液化後に加えることができる。
【0071】
フィターゼの活性がそれぞれの場合で反応条件下でわずかにしか影響を受けない限り、いずれのフィターゼを用いてもよい。使用されるフィターゼは、好ましくは、>50℃、特に好ましくは>60℃の熱安定性(T50)を有する。
【0072】
フィターゼの量は、通常、1〜10000単位/デンプン供給材料1kg、特に10〜4000単位/デンプン供給材料1kgである。
【0073】
全体的な糖の収量を上げるために、または遊離アミノ酸を得るために、別の酵素、例えばプルラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、グルカナーゼ、キシラナーゼ、グルコシダーゼまたはプロテアーゼを、糖含有液体培地の製造中に反応混合物に追加的に添加してもよい。これらの酵素の添加は、粘性に対するよい効果(すなわち低い粘性)を有する場合があり(例えば、長鎖(longer-chainとも称される)グルカンおよび/または(アラビノ)キシランを切断することにより)、また代謝可能なグルコシドの遊離および(残留)デンプンの遊離をもたらす場合がある。プロテアーゼの使用は同様によい効果を有し、すなわち発酵に対して増殖因子として作用するアミノ酸の遊離を可能にする。
【0074】
糖化が行われるか否かに依存して、本明細書中に記載のステップ(a1)および(a2)の適用は、デキストリンまたは単糖もしくは二糖を含む液体培地、あるいは上記の範囲の単糖、二糖および/またはオリゴ糖の総濃度を有する液体培地がもたらされる。
【0075】
糖化後に液体培地(1)中に存在する糖は、特にグルコースであり、グルコース以外のヘキソースおよびペントースなどのさらなる単糖、例えばフルクトース、マンノース、ガラクトース、ソルボース、キシロース、アラビノースおよびリボースの存在を伴う場合もある。グルコース以外の単糖の量は、用いるデンプン供給材料およびその中に存在する非デンプン成分に依存し、方法の制御により、例えばセルラーゼの添加によるセルロースの分解により、変化させることができる。糖含有液体培地の単糖は、好ましくは、該糖含有液体培地中に存在する糖の総量に基づいて、少なくとも60重量%、多くの場合少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%、とりわけ少なくとも85重量%のグルコース含量を含む。グルコース含量は、糖含有液体培地中に存在する糖の総量に基づいて、通常、75〜99.9重量%、特に80〜99重量%、とりわけ85〜97重量%の範囲内である。糖化が行われなかった場合、培地(1)中に存在する単糖、二糖およびオリゴ糖のうちのデキストリンの量は、基本的にグルコースの量に対応する。
【0076】
糖化が行われなかった場合、代謝可能なグルコース相当物は、原則としてオリゴ糖の形態で、特にデキストリンの形態で存在する。これらのオリゴ糖、またはデキストリンの主成分は典型的にはグルコースであり、該培地が少量の単糖および/または二糖および他の単糖単位からなるオリゴ糖単位を含有する場合もある。そのような場合、液体培地(1)中の糖含有成分、すなわち単糖、二糖およびオリゴ糖は、典型的には、少なくとも60重量%、多くの場合70重量%、特に80重量%、とりわけ90重量%のオリゴ糖、特にデキストリンを含み、すわなち、単糖および二糖は、40重量%未満、多くの場合30重量%未満、特に20重量%未満、とりわけ10重量%未満を占める。遊離型または結合型で存在するグルコースは、グルコース相当物の総量に基づき、培地(1)のグルコース相当物の50〜99重量%、特に75〜97重量%、とりわけ80〜95重量%を占める。
【0077】
本発明によれば、続く発酵は、液体培地(1)と、該液体培地以外の代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖の供給材料(以下では糖供給材料とも称される)の両者を用いて行われる。この目的で用いられる単糖、二糖および/またはオリゴ糖は、そのまま利用することもできるし、代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖を培地の総重量に基づき少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%の濃度で含む組成物の形態で利用することもできる。該組成物は、水性液体培地(1)とは異なり、水に不溶な固体を原則として含まない。
【0078】
糖供給材料中に存在する単糖、二糖またはオリゴ糖は、好ましくは、単糖、通常ヘキソースおよび/またはペントース(例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、ソルボース、キシロース、アラビノースおよびリボース)より選択され、具体的にはグルコース、フルクトースおよびガラクトース、ならびにスクロース、マルトース、ラクトースなどの二糖、具体的にはスクロースより選択される。単糖および二糖の混合物、ならびに組み込まれたグルコース成分を高い割合で含むオリゴ糖、およびこれらと単糖および/または二糖との混合物も好適である。
【0079】
代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖を少なくとも50重量%の濃度で含み、かつ水に不溶な固体を原則として含まない組成物の例には、グルコースシロップ、スクロースシロップ、高濃ジュース、マルトースシロップ、デキストリンシロップ、また糖製造からの廃棄産物(糖蜜)、特にビート糖製造からの糖蜜およびサトウキビ糖製造からの糖蜜が含まれる。
【0080】
単糖および/または二糖、特にグルコースおよび/またはスクロースを主に含む物質、グルコースおよび/またはスクロースと組み込まれたグルコース成分を高い割合で含むオリゴ糖とを含む混合物が特に好ましく、そのようなものは、例えば、グルコース、スクロース、グルコースシロップ、スクロースシロップ、高濃ジュースおよび糖蜜である。
【0081】
液体培地(1)と同様、単糖、二糖および/またはオリゴ糖、ならびにそれらを含む組成物は、発酵培地の最初の調製(バッチ期間)のみならず、発酵中の供給(流加、または半継続的な形態で行われる場合)でも利用することができる。
【0082】
液体培地(1)の添加により発酵に導入される単糖、二糖および/またはオリゴ糖の総量は、好ましくは発酵に導入される単糖、二糖およびオリゴ糖の総量の少なくとも40重量%、特に50重量%、特に好ましくは60重量%、例えば40〜95重量%、特に50〜90重量%、とりわけ60〜90重量%を占める。
【0083】
液体培地(1)と単糖、二糖および/またはオリゴ糖、またはそれらを含む組成物は、それぞれ別個に、または一緒に発酵に供給することができる。
【0084】
本発明の好適な実施形態では、液体培地(1)と単糖、二糖および/またはオリゴ糖、またはそれらを含む組成物は、発酵に供給される前に互いに混合される。したがって、一般に、100〜400g/kgの単糖、二糖およびオリゴ糖の低い総濃度を有する液体培地を用いる場合、ステップ(a1)および(a2)の後に得られる糖含有液体培地(1)の糖総含量は、好ましくは少なくとも50g/kg、特に少なくとも100g/kg、とりわけ少なくとも150g/kg、例えば50〜300g/kg、特に100〜250g/kg、とりわけ120〜200g/kgまで上昇し、総重量に基づき40重量%より多く、好ましくは少なくとも45重量%、特に少なくとも50重量%、とりわけ好ましくは少なくとも55重量%を占める。
【0085】
これら糖供給材料の液体培地(1)への添加後、得られる液体培地は好ましくは総重量に基づき45〜80重量%の範囲、特に好ましくは50〜75重量%または55〜75重量%の範囲の乾燥物含量を有する。これに関して、例えば温度を調節することにより、液体培地(1)の粘性を制御し、最大値が20Pas、特に好ましくは15Pas、非常に特に好ましくは8Pasを超えないようにするのが有利である。
【0086】
本発明の好ましい実施形態では、単糖および/または二糖を、糖製造のグルコースまたはスクロース含有副産物の形態で、第1の液体培地(1)に添加する。例えば、糖蜜は、サトウキビ糖または特にビート糖からの糖製造で生成されるものである。
【0087】
本発明によれば、ステップ(a1)および(a2)で調製される液体培地(1)と、それとは異なる糖供給材料とを発酵に供給し、それらは微生物の培養のために役立つ。発酵では、該微生物により微生物代謝産物が生成される。
【0088】
発酵は、当業者に公知の慣用の方法で行うことができる。この目的のために、所望の微生物を、一般に、本明細書中に記載の方法により得られる液体培地中で培養する。
【0089】
発酵法は、バッチ方式または流加方式(中間生成物の回収を伴う流加を含む)で行うことができ、流加プロセスが好ましい。
【0090】
例えば、本発明の方法により得られる液体培地(1)または慣用の糖供給材料、すなわち代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖、または代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖を少なくとも50重量%の濃度で含み、かつ典型的には水に不溶な固体を原則として含まない組成物、あるいはそれらの混合物に、適切ならば水での希釈および慣用の培地成分(例えばバッファー、栄養塩類、窒素供給材料(例えば硫酸アンモニウム、尿素等)、アミノ酸を含む複合栄養培地成分(例えば酵母エキス、ペプトン、CSL等))の添加後に、所望の微生物を接種することができ、そしてこの微生物を、該微生物の濃度が発酵に望ましい定常状態に達するまで発酵条件下で増殖させることができる。この場合、液体培地(1)中に存在する糖が代謝され、所望の代謝産物が形成される(バッチプロセスまたはバッチ期間としても知られる)。
【0091】
流加プロセスを実施する場合、その後、本発明にしたがう方法により得られるさらなる液体培地(1)および液体培地(1)以外の糖供給源を付与することにより、特に液体培地(1)と液体培地(1)以外の糖供給材料を混合することにより得られる液体培地を付与することにより、発酵プロセスを継続させ、微生物により過剰生産される代謝産物が発酵液中に蓄積し、このとき該代謝産物は微生物の細胞内および発酵培地の水相の両方に存在することが可能である。
【0092】
発酵は好ましくは流加プロセスとして実施される。そうするためには、まず、糖含有液体培地を用いて(例えば液体培地(1)または別の糖供給材料を用いて)、発酵槽中で所望の微生物濃度が達成されるまで微生物を増殖させるように手順が続く。その後、液体培地(1)を別の糖供給材料(すなわち、代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖、または代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖を少なくとも50重量%の濃度で含み、水に不溶な固体を原則として含まない培地)とともに発酵槽に供給する。これにより発酵プロセスが維持され、微生物により過剰生産される代謝産物が発酵液中に蓄積する(上記を参照されたい)。供給される糖含有液体培地(1)および別の糖供給材料と、バッチ培地(初めに導入され、微生物を含む)との容積比は、おおむね約1:10〜10:1の範囲内、好ましくは約1:5〜5:1、とりわけ1:1〜5:1の範囲内である。発酵液中の糖含量は、特に糖含有液体培地の供給速度をもって制御することができる。一般に、供給速度は、発酵液中の単糖含量が>0重量%〜約5重量%の範囲内にあるように、特に3重量%の値を超えないように調節される。
【0093】
ステップ(a2)で得られる糖含有液体培地、または別の糖供給材料とのその混合物は、適切ならば、発酵前に滅菌することができ、このとき微生物は通常、熱的にまたは化学的方法により破壊される。この目的のために、糖含有液体培地は、通常は80℃を超える温度に加熱される。細胞の破壊または溶解は、発酵の直前に行うことができる。この目的のために、糖含有液体培地の全体を溶解または破壊に付する。これは、熱的手段、機械的手段または化学的手段により実施することができる。
【0094】
本発明は、特に、少なくとも3個のC原子を有するか、または少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子を有する有機非揮発性化合物の製造方法に関する。これに関して、非揮発性有機化合物とは、分解を受けずに発酵液からの蒸留によって回収することができない化合物を意味すると理解される。一般に、これらの化合物は、大気圧下で、水の沸点より高い沸点、頻繁には150℃より高い沸点、特に200℃より高い沸点を有する。一般に、それらは標準条件(298K、101.3kPa)下で固体である化合物である。
【0095】
しかし、大気圧下で、水の沸点より低い融点および/または油状の粘稠性を有する非揮発性の微生物代謝産物を製造するための発酵に、本発明による糖含有液体培地を用いることも可能である。
【0096】
用語、非揮発性の微生物代謝産物は、特に、好ましくは3〜10個の炭素原子を有し、かつ、適切であれば、それらに結合している1個以上の、例えば1、2、3または4個のヒドロキシル基を有する有機モノ−、ジ−およびトリカルボン酸、例えば酒石酸、イタコン酸、コハク酸、プロピオン酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、2,5−フランジカルボン酸、グルタル酸、レブリン酸(levulic acid)、グルコン酸、アコニチン酸およびジアミノピメリン酸、クエン酸;タンパク質原性および非タンパク質原性アミノ酸、例えばリジン、グルタミン酸、メチオニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、トリプトファンおよびトレオニン;プリンおよびピリミジン塩基;ヌクレオシドおよびヌクレオチド、例えばニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)およびアデノシン−5’−一リン酸(AMP);脂質;好ましくは10〜22個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪酸、例えばγ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸;好ましくは3〜8個の炭素原子を有するジオール、例えばプロパンジオールおよびブタンジオール;3個以上の、例えば3、4、5または6個のOH基を有する多価アルコール(高い官能性を有するアルコールとも称される)、例えばグリセロール、ソルビトール、マンニトール、キシリトールおよびアラビニトール(arabinitol);少なくとも4個の炭素原子、例えば4〜22個の炭素原子を有する長鎖(longer-chainとも称される)アルコール、例えばブタノール;炭水化物、例えばヒアルロン酸およびトレハロース;芳香族化合物、例えば芳香族アミン、バニリンおよびインジゴ;ビタミンおよびプロビタミン、例えばアスコルビン酸、ビタミンB、ビタミンB12およびリボフラビン、補因子および、栄養補助剤として知られるもの;タンパク質、例えば酵素、例えばアミラーゼ、ペクチナーゼ、酸性、ハイブリッドまたは中性セルラーゼ、エステラーゼ、例えばリパーゼ、パンクレアーゼ(pancreases)、プロテアーゼ、キシラナーゼおよびオキシドレダクターゼ、例えばラッカーゼ、カタラーゼおよびペルオキシダーゼ、グルカナーゼ、フィターゼ;カロテノイド、例えばリコペン、β−カロテン、アスタキサンチン、ゼアキサンチンおよびカンタキサンチン;好ましくは3〜10個の炭素原子および、適切であれば、1個以上のヒドロキシル基を有するケトン、例えばアセトンおよびアセトイン;ラクトン、例えばγ−ブチロラクトン、シクロデキストリン、生体ポリマー、例えばポリヒドロキシアセテート、ポリエステル、例えばポリラクチド、多糖、ポリイソプレノイド、ポリアミド;および上述の化合物の前駆体および誘導体を含む。非揮発性の微生物代謝産物として好適な他の化合物はGutcho, Chemicals by Fermentation, Noyes Data Corporation (1973), ISBN: 0818805086に記載されている。
【0097】
用語「補因子」は、正常な酵素活性の発生に必要とされる非タンパク質性化合物を含む。これらの化合物は有機または無機化合物でありうる;好ましくは、本発明の補因子分子は有機分子である。そのような分子の例はNADおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)である;これらの補因子の前駆体はナイアシンである。
【0098】
用語「栄養補助剤」は、植物および動物、特にヒトの健康を促進する食品添加物を含む。そのような分子の例は、ビタミン、酸化防止剤および特定の脂質、例えば多価不飽和脂肪酸である。
【0099】
製造される代謝産物は、特に酵素、アミノ酸、ビタミン、二糖、3〜10個のC原子を有する脂肪族モノ−およびジカルボン酸、3〜10個のC原子を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸、3〜10個のC原子を有するケトン、4〜10個のC原子を有するアルカノールおよび3〜10個、特に3〜8個のC原子を有するアルカンジオールのうちから選択される。
【0100】
そのように発酵製造される化合物は、それぞれの場合で、用いられる微生物によって生産されるエナンチオマー型(異なるエナンチオマーが存在する場合)として得られることが当業者には明らかである。ゆえに、一般には、アミノ酸の場合、それぞれのL−エナンチオマーが得られる。
【0101】
発酵に用いられる微生物は、以下で詳細に記載されるように、それ自体公知の様式で、目的の微生物代謝産物に依存する。それらは天然起源であっても、遺伝子改変型であってもよい。好適な微生物および発酵プロセスの例を以下の表Aに挙げる。
【表1】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】

【0107】

【0108】
本発明の好ましい実施形態では、製造される有機化合物は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびトリカルボン酸(ヒドロキシル基が結合していてもよく、3〜10個のC原子を有する)、タンパク質原性アミノ酸および非タンパク質原性アミノ酸、プリン塩基、ピリミジン塩基;ヌクレオシド、ヌクレオチド、脂質;飽和および不飽和脂肪酸;4〜10個のC原子を有するジオール、3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール、少なくとも4個のC原子を有する長鎖アルコール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン、プロビタミン、補因子、栄養補助剤、タンパク質、カロテノイド、3〜10個のC原子を有するケトン、ラクトン、生体ポリマーならびにシクロデキストリンのうちから選択される。
【0109】
本発明の第1の好ましい実施形態は、酵素、例えばフィターゼ、キシラナーゼまたはグルカナーゼの発酵製造における、本発明にしたがって得ることができる糖含有液体培地の使用に関する。
【0110】
本発明の第2の好ましい実施形態は、アミノ酸、例えばリジン、メチオニン、トレオニンおよびグルタミン酸の発酵製造における、本発明にしたがって得ることができる糖含有液体培地の使用に関する。
【0111】
本発明の別の好ましい実施形態は、ビタミン、例えばパントテン酸およびリボフラビン、ならびにその前駆体および誘導体の発酵製造における、本発明にしたがって得ることができる糖含有液体培地の使用に関する。
【0112】
本発明のさらなる好ましい実施形態は、以下の物質の発酵製造での本発明にしたがい得られる糖含有液体培地の使用に関する:
− モノ−、ジ−およびトリカルボン酸、特に3〜10個のC原子を有する脂肪族モノ−およびジトリカルボン酸、例えばプロピオン酸、フマル酸、およびコハク酸、
− 3〜10個のC原子を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸;
− 上記長鎖アルカノール、特に4〜10個のC原子を有するアルカノール、例えばブタノール;
− 上記ジオール、特に3〜10個、特に3〜8個のC原子を有するアルカンジオール、例えばプロパンジオール;
− 上記ケトン、特に3〜10個のC原子を有するケトン、例えばアセトン;および
− 上記炭水化物、特に二糖、例えばトレハロース。
【0113】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物は、ポリヒドロキシアルカノアート、例えばポリ−3−ヒドロキシブチラートおよび他の有機ヒドロキシカルボン酸、例えば3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ酪酸およびSteinbuchel(上掲)に記載の他のもの(例えば長鎖(longer-chainとも称される)ヒドロキシカルボン酸、例えば3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸および3−ヒドロキシテトラデカン酸が含まれる)とのコポリエステル、およびこれらの混合物である。発酵を実施するために、例えばS.Y. Lee, Plastic Bacteria Progress and prospects for polyhydroxyalkanoate production in bacteria, Tibtech, Vol. 14, (1996), pp. 431-438に他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いてよい。
【0114】
したがって、好ましい実施形態では、発酵に用いられる微生物は、以下の代謝産物の少なくとも1つを過剰生産する天然または組み換え微生物のうちから選択される:
− 酵素、例えばフィターゼ、キシラナーゼまたはグルカナーゼ;
− アミノ酸、例えばリジン、トレオニンまたはメチオニン;
− ビタミン、例えばパントテン酸およびリボフラビン;ならびにその前駆体および/または誘導体;
− 二糖、例えばトレハロース;
− 3〜10個のC原子を有する脂肪族モノ−およびジカルボン酸、例えばプロピオン酸、フマル酸、およびコハク酸;
− 3〜10個のC原子を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸;
− ポリヒドロキシアルカノアート、例えばポリ−3−ヒドロキシブチラートおよび、3−ヒドロキシ酪酸のコポリエステル;
− 3〜10個のC原子を有するケトン、例えばアセトン;
− 4〜10個のC原子を有するアルカノール、例えばブタノール;および
− 3〜8個のC原子を有するアルカンジオール、例えばプロパンジオール。
【0115】
好適な微生物は、通常、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、バシラス属(Bacillus)、アッシビヤ属(Ashbya)、エシェリキア属(Escherichia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、アクチノバシラス属(Actinobacillus)、アネロビオスピリラム属(Anaerobiospirillum)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、リゾプス属(Rhizopus)およびクロストリジウム属(Clostridium)のうちから選択され、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、バシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)、アッシビヤ・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)、大腸菌(Escherichia coli)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはアスカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)、アネロビオスピリラム・スクシニプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniproducens)、アクチノバシラス・スクシンゲネス(Actinobacillus succinogenes)、ラクトバシラス・デルブリュッキイ(Lactobacillus delbruckii)、ラクトバシラス・レイキマンニイ(Lactobacillus leichmannii)、プロピオニバクテリウム・アラビノサム(Propionibacterium arabinosum)、プロピオニバクテリウム・シェルマニイ(Propionibacterium schermanii)、プロピオニバクテリウム・フロイデンレイキイ(Propionibacterium freudenreichii)、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)、クロストリジウム・ホルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、リゾプス・アリザス(Rhizopus arrhizus)およびリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)の株のうちから選択される。
【0116】
好ましい実施形態では、発酵に用いられる微生物はコリネバクテリウム属(genus Corynebacterium)の株であり、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)の株である。特に、それは、アミノ酸、とりわけリジン、メチオニンまたはグルタミン酸を過剰生産するコリネバクテリウム属の株であり、とりわけコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である。
【0117】
別の好ましい実施形態では、発酵に用いられる微生物はエシェリキア属(genus Escherichia)の株であり、特に大腸菌(Escherichia coli)の株である。特に、それは、アミノ酸、とりわけリジン、メチオニンまたはトレオニンを過剰生産するエシェリキア属の株であり、とりわけ大腸菌である。
【0118】
特定の好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はリジンである。その発酵を実施するために、例えばPfefferle et al., 上掲およびUS 3,708,395に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。原理的に、連続的および非連続的(バッチまたは流加)様式の操作がともに好適であり、流加様式が好ましい。
【0119】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はメチオニンである。その発酵を実施するために、例えばWO 03/087386およびWO 03/100072に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0120】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はパントテン酸である。その発酵を実施するために、例えばWO 01/021772に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0121】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はリボフラビンである。その発酵を実施するために、例えばWO 01/011052, DE 19840709, WO 98/29539, EP 1 186 664およびFujioka, K.: New biotechnology for riboflavin (vitamin B2) and character of this riboflavin. Fragrance Journal (2003), 31(3), 44-48に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0122】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はフマル酸である。その発酵を実施するために、例えばRhodes et al, Production of Fumaric Acid in 20-L Fermentors, Applied Microbiology, 1962, 10 (1), 9-15に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0123】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はコハク酸である。その発酵を実施するために、例えばInt. J. Syst. Bacteriol. 26, 498-504 (1976); EP 249773 (1987) (Lemme and Datta); US 5504004 (1996) (Guettler, Jain and Soni); Arch. Microbiol. 167, 332-342 (1997); Guettler MV, Rumler D, Jain MK., Actinobacillus succinogenes sp. nov., a novel succinic-acid-producing strain from the bovine rumen. Int J Syst Bacteriol. 1999 Jan;49 Pt 1:207-16; US 5,723,322, US 5,573,931, US 5,521,075, WO99/06532, US 5,869,301またはUS 5,770,435に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0124】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はフィターゼである。その発酵を実施するために、例えばWO 98/55599に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0125】
発酵によって発酵液が生成される。該発酵液は、所望の微生物代謝産物に加えて、本質的に、発酵中に生産されるバイオマス、糖化デンプン溶液の代謝されない成分および、特に、デンプン供給材料の非デンプン性固体成分、例えば線維および利用されない糖、およびさらに利用されないバッファーおよび栄養塩類を含む。本出願では、この液体培地は発酵液とも称され、発酵液という用語は、(糖含有)液体培地をも含み、そこに存在する糖は部分的または不完全な発酵による変換にしか付されておらず、すなわち、そこでは、利用可能な糖(例えば単糖および二糖)の部分的または不完全な微生物による代謝しか起こっていない。
【0126】
微生物代謝産物の単離もしくは枯渇前または発酵液の揮発性成分の除去前に、上記様式で滅菌ステップを実施してもよい。
【0127】
本発明の特定の実施形態は、少なくとも1種の微生物代謝産物を発酵液から枯渇させるか、または単離する方法に関する。次いで、発酵液のほとんどの揮発性成分を除去し、固体または半固体のタンパク質組成物を生じさせる。そのような方法を実施するための、および得られるタンパク質組成物についてのさらに詳細な説明は、本出願人のWO 2005/116228(PCT/EP2005/005728)の対象である。該文献はさらなる詳細に関して参照される。
【0128】
発酵液からの代謝産物、すなわち、少なくとも3個のC原子を有するかまたは少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子を有する有機化合物(以下、有益な生成物とも称される)の単離または枯渇は、通常、発酵液から少なくとも1種の代謝産物が枯渇または単離され、残留する発酵液中のこの代謝産物の含量が、それぞれの場合で残留発酵液の総重量に基づいて、20重量%を超えず、特に10重量%を超えず、とりわけ5重量%を超えず、非常にとりわけ2.5重量%を超えない量になるように実施される。
【0129】
微生物代謝産物は、1以上のステップで発酵液から単離するか、または枯渇させることができる。これに関して必須のステップは、発酵液から固体成分を除去することである。このステップは、有益な生成物の単離前または単離後に実施することができる。有益な生成物のおおまかな清浄および入念な精製のため、および製剤化のためのステップをさらに含む、当技術分野で慣用の方法は、有益な生成物の単離および固体の除去、すなわち固液相分離の両者に関して公知である(例えばBelter, P.A, Bioseparations: Downstream Processing for Biotechnology, John Wiley & Sons (1988), およびUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th ed. on CD-ROM, Wiley-VCHに記載されている)。
【0130】
有益な生成物を単離するために、有利には、まず、例えば遠心分離またはろ過によって、発酵液から固体成分を除去し、次いで、例えば結晶化、沈殿、吸着または蒸留によって、液相から有益な生成物を単離する手順にしたがうことができる。別法として、例えばクロマトグラフ法または抽出法を使用することによって、有益な生成物を発酵液から直接単離することもできる。特に述べる必要があるクロマトグラフ法はイオン交換クロマトグラフィーであり、その場合、有益な生成物をクロマトグラフィーカラムで選択的に単離することができる。この場合、残留する発酵液からの固体の除去は、例えばデカント、蒸発および/または乾燥によって、有利に実施することができる。
【0131】
揮発性または油性化合物の場合、一般に、処理中、特に乾燥中に、最高温度をモニタリングすることが必要である。これらの化合物は、それらを吸着剤上で偽固体(pseudo-solid form)に製剤化することによって有利に製造することもできる。この目的に好適な吸着剤は、例えば本出願人のWO 2005/116228(PCT/EP2005/005728)に詳述されている。この様式で好都合に製造できる化合物の例は、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸、さらにまたプロピオン酸、乳酸、プロパンジオール、ブタノールおよびアセトンである。偽固体製剤であるこれらの化合物も、本発明の目的で、固体の非揮発性の微生物代謝産物であると理解される。
【0132】
別の特定の実施形態は、非揮発性の微生物代謝産物をあらかじめ単離するか、または枯渇させることなく、かつ適切であれば、あらかじめ少なくとも一部の固体成分を除去することなく、発酵液の揮発性成分を大部分または完全に除去し、非揮発性の微生物代謝産物の固体製剤を生じさせる方法に関する。そのような方法を実施するためのさらに詳細な説明は、本出願人のPCT/EP2006/066057(先の特許出願DE 102005042541.0)に見出せる。
【0133】
「大部分」とは、揮発性成分が除去されて、固体または少なくとも半固体残留物が残り、半固体残留物は、適切であれば、固体を加えることによって固体生成物に変換することができることを意味する。一般に、これは、30重量%を超えず、頻繁には20重量%を超えず、特に15重量%を超えない残留水分含量に至るまでの揮発性成分の除去を意味する。一般に、発酵液の揮発性成分は、有利には、発酵液から除去され、乾燥後に決定される固体成分の総重量に基づいて0.2〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜15重量%、非常に特に好ましくは5〜15重量%の範囲の残留水分含量に至る。残留水分含量は、当業者が熟知している慣用の方法によって、例えば熱重量分析(Hemminger et al., Methoden der thermischen Analyse [Methods of thermal analysis], Springer Verlag, Berlin, Heidelberg, 1989)を用いて、決定することができる。
【0134】
発酵液から固体の非揮発性代謝産物(群)を得る作業は、1、2またはそれ以上のステップで、特に1ステップまたは2ステップの手順で行うことができる。一般に、固体の代謝産物を得るための少なくとも1ステップ、特に最終ステップは、乾燥ステップを含む。
【0135】
1ステップの手順では、所望の残留水分含量に達するまで、発酵液の揮発性成分を、適切であれば上述の予備的な除去後に、除去する。
【0136】
2ステップまたは多段階の手順では、まず、例えばろ過(マイクロフィルトレーション、限外ろ過)によって、または揮発性成分の一部分を熱によって蒸発させることによって、発酵液を濃縮する。このステップで除去される揮発性成分の量は、一般に、発酵液の揮発性成分の乾燥物に基づいて10〜80重量%、特に20〜70重量%を占める。1以上の以後のステップでは、所望の残留水分含量に達するまで、発酵液の残りの揮発性成分を除去する。
【0137】
この実施形態では、有益な生成物をあらかじめ枯渇させるか、または実際に単離することなく、揮発性成分を液体培地から本質的に除去する。したがって、発酵液の揮発性成分を除去する場合、非揮発性代謝産物は、本質的に、液体培地の揮発性成分と一緒には除去されず、発酵液由来の他の固体成分の少なくとも一部分、通常そのほとんど、特にその全体とともに、得られる残留物中に残留する。しかし、そうすると、一定量(好ましくは少量)の、一般に、代謝産物の総乾燥物に基づいて20重量%を超えず、例えば0.1〜20重量%、好ましくは10を超えず、特に5重量%を超えず、特に好ましくは2.5重量%を超えず、非常に特に好ましくは1重量%を超えない量の、所望の非揮発性の微生物代謝産物を、発酵液の揮発性成分を除去する際にこれらの成分と一緒に取り出すことも可能である。非常に特に好ましい実施形態では、それぞれの場合で代謝産物の総乾燥重量に基づいて、少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%、とりわけ99重量%、非常にとりわけ約100重量%までの所望の非揮発性の微生物代謝産物が、揮発性成分の除去後に得られた発酵培地の固体成分の一部分と、または発酵培地のすべての固体成分と混合された固体として残留する。
【0138】
所望であれば、揮発性成分の除去前に、例えば遠心分離またはろ過によって、非デンプン性固体成分の一部分、例えば5〜80重量%、特に30〜70重量%を発酵液から分離することができる。適切であれば、非揮発性の微生物代謝産物を含まないか、または少量しか含まない粗固体粒子を除去するために、そのような予備的分離を実施する。この予備的ろ過は、当業者に公知の慣用の方法を使用して、例えば粗いふるい、ネット、穴のあいたオリフィスプレート等を使用して実施することができる。適切であれば、遠心力分離装置で粗固体粒子を分離して除いてもよい。ここで用いられる設備、例えばデカンタ、遠心分離機、セジカンター(sedicanter)および分離装置も当業者に公知である。この様式では、固体または半固体(例えばペースト状)の残留物が得られ、それは、デンプン供給材料の非揮発性代謝産物および非揮発性の、概して固体の、非デンプン性成分または少なくともその大部分、頻繁には固体の非デンプン性成分の少なくとも90重量%または全体を含む。
【0139】
発酵の固体成分とともに存在する乾燥代謝産物の特性は、製剤化補助剤(例えば担体)およびコーティング材料、結合剤および他の添加物の添加によって、とりわけ種々のパラメータに関して、例えば活性物質含量、粒径、粒子の形状、粉塵化傾向、吸湿性、安定性、特に保存安定性、色、匂い、流動挙動、凝集傾向、帯電、光感受性および温度感受性、機械的安定性および再分散性に関して特異的にそれ自体知られた様式で製剤化することができる。
【0140】
慣用の製剤化補助剤には、例えば、結合剤、担体材料、粉末化/流動補助剤、さらにまた着色顔料、殺生物剤、分散剤、消泡剤、粘性調節剤、酸、アルカリ、酸化防止剤、酵素安定化剤、酵素阻害剤、吸着剤(adsorbates)、脂肪、脂肪酸、油またはこれらの混合物が含まれる。そのような製剤化補助剤は、製剤化および乾燥方法、例えばスプレー乾燥、流動床乾燥および凍結乾燥を使用する場合に特に、乾燥助剤として有利に用いられる。さらなる詳細はPCT/EP2006/066057(先の出願DE 102005042541.0)に見出せる。
【0141】
上述の添加物および、適切であれば、追加の添加物、例えばコーティング材料の量は、目的の代謝産物の特定的な要求および用いられる添加物の特性に依存して、大きく変動しうる。それは、例えば、それぞれの場合で生成物またはその最終剤形の物質混合物の総重量に基づいて、0.1〜80重量%の範囲、特に1〜30重量%の範囲でありうる。
【0142】
製剤化補助剤の添加は、発酵液の加工(製品製剤化または固体設計とも称される)前、加工中または加工後に行うことができ、特に乾燥中に行うことができる。発酵液または代謝産物の加工前の製剤化補助剤の添加は、特に、加工対象の物質または生成物の加工性を改善するために有利でありうる。製剤化補助剤は、得られた固体の代謝産物に、あるいは該代謝産物を含む溶液もしくは懸濁液に、例えば発酵完了後の発酵液に直接、または加工中および最終乾燥ステップ前に得られた溶液もしくは懸濁液に加えることができる。
【0143】
ゆえに、例えば、補助剤を微生物代謝産物の懸濁液と混合することができる;そのような懸濁液は、担体材料に、例えばスプレーするか、または混合することによって付加することもできる。乾燥中の製剤化補助剤の添加は、例えば代謝産物を含む溶液または懸濁液がスプレーされる場合に重要でありうる。製剤化補助剤の添加は、例えばコーティング/コーティング層を乾燥粒子に付加する場合に、特に乾燥後に行う。乾燥後および追加のコーティングステップ後のいずれでも、生成物に追加の補助剤を加えることができる。
【0144】
発酵液からの揮発性成分の除去は、液相から固相を分離するための通例の方法によって、それ自体公知の様式で行われる。該方法には、ろ過による方法および液相の揮発性成分を蒸発させる方法が含まれる。有用な生成物をおおまかに清浄するためのステップおよび製剤化ステップを含んでもよいそのような方法は、例えばBelter, P. A, Bioseparations: Downstream Processing for Biotechnology, John Wiley & Sons (1988), およびUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th ed. on CD-ROM, Wiley-VCHに記載されている。発酵終了後の製品製剤化または加工の範囲内で用いることができる、当業者に公知の方法、設備、補助剤および一般的または特異的実施形態は、さらにまた、EP 1038 527, EP 0648 076, EP 835613, EP 0219 276, EP 0394 022, EP 0547 422, EP 1088 486, WO 98/55599, EP 0758 018およびWO 92/12645に記載されている。
【0145】
この実施形態の第1のバリエーションでは、非揮発性の微生物代謝産物は、液相で溶解された状態で存在すれば、例えば結晶化または沈殿によってそれを液相から固相に変換される。その後、例えば遠心分離、デカントまたはろ過によって、非揮発性固体成分(代謝産物が含まれる)を分離する。同様の様式で油性代謝産物を分離して除いてもよく、吸着剤、例えばシリカ、シリカゲル、ローム、クレイおよび活性炭の添加によって、目的の油性発酵産物が固体に変換される。
【0146】
この実施形態の第2のバリエーションでは、蒸発によって揮発性成分を除去する。蒸発はそれ自体公知の様式で行うことができる。揮発性成分を蒸発させるために好適な方法の例は、スプレー乾燥、流動床乾燥または流動床凝集、凍結乾燥、空気ドライヤーおよび接触ドライヤー、および押出乾燥である。上述の方法と、形状を付与する方法、例えば押し出し、ペレット化またはプリル化(prilling)の組み合わせを実施してもよい。これらの最後に記載される方法では、部分的にまたは大部分が事前乾燥済みの代謝産物含有物質混合物を用いることが好ましい。
【0147】
好ましい実施形態では、発酵液の揮発性成分の除去は、スプレー乾燥法または流動床乾燥法(流動床顆粒化が含まれる)を含む。この目的を達成するために、適切であれば、たとえあったにしても少量の非揮発性の微生物代謝産物しか含まない粗固体粒子を取り出すための予備的分離後に、発酵液を1種以上のスプレー乾燥または流動床乾燥装置に送り込む。固体を含む発酵液の輸送、すなわち送り込みは、便宜上、固体を含む液体のための通例の輸送デバイス、例えばポンプ、例えば偏心シングルロータースクリューポンプ(例えばDelasco PCM製)または高圧ポンプ(例えばLEWA Herbert Ott GmbH製)を用いて行われる。
【0148】
発酵は、以下のように実施することもできる:
(i)総重量に基づいて50重量%を超えない、例えば5〜45重量%の範囲の部分を、ステップ(a2)で得られた液体培地(1)または別の糖供給材料とのその混合物から取り出し、該部分はデンプン供給材料の非デンプン性固体成分を含み、かつ残りの部分が適切であれば別の糖供給材料(例えば上記で定義)と一緒に、第1の代謝産物(A)、例えば固体の非揮発性代謝産物(A)または揮発性代謝産物(A)を製造するための発酵に供給され;かつ
(ii)取り出された部分を、適切であればデンプン供給材料の非デンプン性固体成分の全体または一部分を、あらかじめ除去した後に、代謝産物(A)と同一であるか、または異なる第2の代謝産物(B)を製造するための発酵に、適切であれば上記で定義した別の糖供給材料と一緒に供給する。
【0149】
(ii)の非デンプン性固体成分が分離される場合、液体培地の残りの部分の固体含量は、好ましくは50重量%を超えず、特に30重量%を超えず、特に好ましくは10重量%を超えず、非常に特に好ましくは5重量%を超えない量になる。そのような場合、第2の代謝産物(B)を製造するための発酵前に、すべての固体を分離することが特に好ましい。
【0150】
この手順により、(ii)の分離発酵において、例えば酸素移動速度に関して、一定の最小限の要求を満たす必要がある微生物を使用することが可能になる。(ii)の分離発酵において用いるために好適な微生物は、例えば、バシラス属の種、好ましくはバシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)である。分離発酵においてそのような微生物によって生産される化合物は、特にビタミン、補因子および栄養補助剤、プリンおよびピリミジン塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチド、脂質、飽和および不飽和脂肪酸、芳香族化合物、タンパク質、カロテノイドから選択され、とりわけビタミン、補因子および栄養補助剤、タンパク質およびカロテノイドから選択され、非常にとりわけリボフラビンおよびパントテン酸カルシウムから選択される。
【0151】
この手順の好ましい実施形態は、2つの別個の発酵における同一の代謝産物(A)および(B)の並行製造に関する。これは特に同一代謝産物の異なる適用が異なる純度要求を有する場合に有利である。したがって、第1の代謝産物(A)、例えば飼料添加物として使用されるアミノ酸、例えばリジン、メチオニン、トレオニンまたはグルタミン酸を、固体含有発酵液を使用して製造し、かつ同一の第2の代謝産物(B)、例えば食品添加物として使用される同一のアミノ酸を、(ii)の固体が除去された発酵液を使用して製造する。非デンプン性固体成分の完全または部分的除去のおかげで、適用分野が高い純度要求を有する、例えば食品添加物としての代謝産物を加工する場合の精製の複雑さを低減することができる。
【0152】
別の好ましい実施形態では、この手順を例えば以下のように実施することができる。代謝産物A、例えばアミノ酸、例えばリジン、メチオニン、グルタミン酸またはトレオニン、クエン酸またはエタノールの製造のための好ましくは大量発酵は、例えばWO 2005/116228(PCT/EP2005/005728)またはPCT/EP2006/066057(先の出願DE 102005042541.0)に記載の方法にしたがって、またはバイオエタノールの発酵製造についての公知の先行技術(上記を参照)にしたがって実施される。(i)では、ステップ(a2)で得られる液体培地(1)の一部分を取り出すか、または別の糖供給材料とのその混合物を取り出す。(i)にしたがって取り出された部分は、(ii)にしたがって、通例の方法、例えば遠心分離またはろ過によって固体を完全にまたは部分的に除去することができ、それはBを製造するための発酵において必要とされるものに依存する。このように得られた液体培地(1)(場合により完全にまたは部分的に固体が除去されている)は、(ii)にしたがって、代謝産物Bを製造するための発酵に、適切ならば上記で定義した別の糖供給材料と一緒に供給される。(ii)にしたがって分離された固体流は、有利には、大量発酵の糖含有液体培地の流れに戻される。
【0153】
大量発酵で製造される微生物代謝産物(A)がエタノールである場合、これは液体培地(1)から回収される。このとき、液体培地(1)はエタノール(バイオエタノール)の発酵製造で通常の糖含量を有していなければならず、それは例えば20〜30重量%の範囲である。通常は、この方法では、ステップ(i)で得られる糖含有液体培地(1)がA(この場合、エタノール)の製造のために発酵に供給される。ステップ(i)で取り出された糖含有液体培地(1)の部分は、別の糖供給材料と一緒に、適切ならばステップ(ii)にしたがい固体が除去された後に、Bの発酵製造に供給される。
【0154】
上述の手順のさらなる好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物Bはリボフラビンである。その発酵を実施するために、例えばWO 01/011052, DE 19840709, WO 98/29539, EP 1186664およびFujioka, K.: New biotechnology for riboflavin (vitamin B2) and character of this riboflavin. Fragrance Journal (2003), 31(3), 44-48に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0155】
方法のこのバリエーションを実施するために、上記のように、代謝産物A、例えばアミノ酸、例えばリジン、メチオニン、トレオニンまたはグルタミン酸、またはクエン酸またはエタノールを製造するための、好ましくは大量発酵を実施する。(i)にしたがって、ステップ(a2)で得られた糖含有液体培地の一部分を取り出し、(ii)にしたがって、通例の方法、例えば遠心分離またはろ過によって、完全にまたは部分的に固体を除去する。得られた、本質的に完全にまたは部分的に固体が除去されている糖含有液体培地を、別の糖供給材料の添加後に、(ii)にしたがって、代謝産物B(この場合、リボフラビン)を製造するための発酵に供給する。(ii)にしたがって分離された固体流は、有利には、大量発酵の糖含有液体培地の流れに戻される。
【0156】
(ii)にしたがいそのように作製されたリボフラビン含有発酵液は、例えばDE 4037441, EP 464582, EP 438767およびDE 3819745に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順によって加工することができる。細胞集団の溶解後、好ましくはデカントによって、結晶状態で存在するリボフラビンを分離する。固体を分離する他の方法、例えばろ過もまた可能である。その後、好ましくはスプレー乾燥機および流動床乾燥機を用いて、リボフラビンを乾燥する。別法として、(ii)にしたがって製造されたリボフラビン含有発酵混合物を、例えばEP 1048668およびEP 730034に記載の条件および手順と類似の条件および手順によって加工することができる。低温殺菌後、発酵液を遠心分離し、残留する固体含有フラクションを鉱酸で処理する。形成されたリボフラビンをろ過によって水性酸性培地から取り出し、適切であれば洗浄し、次いで乾燥する。
【0157】
この手順の別の好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物Bはパントテン酸である。その発酵を実施するために、例えばWO 01/021772に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0158】
この方法のバリエーションを実施するために、リボフラビンに関して上に記載されるような手順にしたがってよい。(ii)にしたがって予備的精製に付され、かつ好ましくは固体が本質的に除去されている糖含有液体培地(1)、または別の糖供給材料とのその混合物を、パントテン酸の製造のために、(ii)にしたがって発酵に供給する。ここで、固体含有液体培地と比較して粘性が低減されることが特に有利である。分離された固体流は、好ましくは、大量発酵の糖含有液体培地の流れに戻される。
【0159】
(ii)にしたがって製造されたパントテン酸含有発酵液は、例えばEP 1 050 219およびWO 01/83799に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順によって加工することができる。すべての発酵液を低温殺菌した後、例えば遠心分離またはろ過によって、残留する固体を分離する。固体分離ステップにおいて得られた透明な流出液を、部分的に蒸発させ、適切であれば塩化カルシウムで処理し、乾燥、特にスプレー乾燥する。
【0160】
分離して除かれた固体は、並行大量発酵法の範囲内で、それぞれの所望の微生物代謝産物(A)とともに得ることができる。
【0161】
乾燥および/または製剤化ステップ後、全粒または粉砕された穀粒、好ましくはトウモロコシ、コムギ、オオムギ、キビ、ライコムギおよび/またはライムギを製品製剤またはタンパク質組成物に加えてよい。
【0162】
以下に挙げる実施例は、本発明の個別の態様を説明するためのものであり、決して限定的であると理解すべきではない。
【実施例】
【0163】
I.デンプン供給材料の製粉
本明細書の以下で使用したミルベースを次のように製造した。トウモロコシ全粒をローターミルで完全にすり潰した。異なるビーター、製粉経路またはスクリーン要素を用いて、3つの異なる粒度を得た。研究室用振動スクリーン(振動分析器:Retsch Vibrotronic タイプVE1;スクリーニング時間5分間、振幅:1.5mm)によってミルベースのスクリーン分析により表1に示した結果を得た。
【表2】

【0164】
II.酵素的デンプン液化およびデンプン糖化
II.1. 糖化ステップでフィターゼを用いない場合
II.1(a)酵素によるデンプンの液化
320gの乾式粉砕したトウモロコシ粉(T71/03)を480gの水に懸濁し、続いて310mgの塩化カルシウムを連続的に攪拌することによって混合した。全実験期間中、攪拌を続けた。pHをHSOで6.5に合わせ、混合液を35℃に加温して、2.4gのTermamyl(ターマミル) 120L タイプL(Novozymes社 A/S)を添加した。40分の間に反応混合液を86.5℃まで加熱し、必要に応じて、pHを上記値にNaOHで再調整した。30分以内に、さらに400gの乾式粉砕したトウモロコシ粉(T71/03)を加え、そのプロセス中は、温度を91℃に上げた。反応混合物をこの温度に約100分間保持した。続いて、さらに2.4gのTermamyl 120Lを加え、温度を約100分間保持した。液化の進行を、ヨウ素デンプン反応を用いて実験の間、モニタリングした。最後に温度を100℃に上げ、反応混合物をさらに20分間煮沸した。この時点で、もうデンプンを検出することはできなかった。反応槽を35℃に冷却した。
【0165】
II.1(b)糖化
II.1(a)で得られた反応混合物を絶えず攪拌しながら、61℃に加熱した。全実験期間中、攪拌を続けた。pHをHSOで4.3に合わせた後、10.8g(9.15ml)のDextrozyme GA(デキストロザイムGA)(Novozymes社 A/S)を添加した。温度を約3時間保持し、その間、反応の進行をグルコース試験紙(Boehringer社のS-Glucotest)でモニターした。結果は、以下の表2に示している。続いて、反応混合物を80℃まで加熱した後、冷却した。これにより、約1.2kg/Lの濃度で約1180gの液体産物、および赤外線乾燥機で測定したときに総量約53.7重量%の乾燥物含量が得られた。水で洗浄した後、約14重量%の乾燥物含量(水溶性成分なし)が得られた。反応混合液のグルコース含有量は、HPLCで測定すると、総量380g/Lになった(表2、サンプル7参照)。
【表3】

【0166】
II.2. 糖化ステップにフィターゼを用いる場合
II.2(a)デンプン液化
乾式粉砕したトウモロコシ粉サンプルをII.1(a)に記載のようにして液化した。
【0167】
II.2(b)糖化
II.2(a)で得られた反応混合物を絶えず攪拌しながら、61℃まで加熱した。全実験期間中、攪拌を続けた。pHをHSOで4.3に合わせた後、10.8g(9.15ml)のDextrozyme GA(Novozymes社 A/S)および70μlのフィターゼ(700単位のフィターゼ、BASF AG社のNatuphyt Liquid 10000L)を添加した。温度を約3時間保持している間、反応の進行をグルコース試験紙(Boehringer社のS-Glucotest)でモニタリングした。続いて、反応混合物を80℃で加熱した後、冷却した。得られた産物を赤外線乾燥機で乾燥させ、水で洗浄した。反応混合物のグルコース量は、HPLCで測定した。
【0168】
II.3 デンプンの酵素的液化および糖化のためのさらなるプロトコル
II.3(a)トウモロコシ粉
360gの脱イオン水を反応槽に入れた。1.54mlのCaCl原液(100g CaCl×2HO/L)をスラリーに加え、最終濃度を約70ppm Ca2+にした。240gのトウモロコシ粉をゆっくりと、絶えず攪拌しながら前記水の中に流し込んだ。pHを50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて6.5に合わせた後、4.0ml(=酵素/乾燥物で2重量%)のTermamyl 120L タイプL(Novozymes社 A/S)を添加した。その後、スラリーを85℃に急速加熱した。このプロセスの間、pHを絶えずモニタリングし、適当な場合には、pHを調整した。
【0169】
最終的な温度に達した後、さらにまず穀粉を50g加えた。また、Ca2+濃度を70ppmで維持するために0.13mlのCaCl原液をスラリーに添加した。添加の間、温度を85℃で一定に保持した。さらなる追加分(50gの穀粉と0.13mlのCaCl原液)を加える前に反応が完了していることを確実にするため、少なくとも10分間の時間を置いた。追加分を2回加えた後、1.67mlのTermamylを加えた。その後、さらに2回の追加分(それぞれ50gの穀粉と0.13mlのCaCl原液)を添加した。乾燥物含量は、55重量%に達した。添加後、温度を100℃に上げ、スラリーを10分間煮沸した。
【0170】
サンプルを採取し、室温まで冷却した。サンプルを脱イオン水で希釈(約1:10)した後、濃縮ルゴール液(1リットルあたり5gのヨウ素と10gのヨウ化カリウムの混合液)を1滴加えた。強い青に呈色したときはデンプンが残っていることを示し、また全てのデンプンが加水分解されたときは茶色の呈色が観察された。実験結果が、デンプンが残っていることを示した場合には、温度を再び85℃に下げて一定に保った。さらに、1.67mlのTermamylをヨウ素−デンプン反応が陰性になるまで加えた。
【0171】
その後の糖化反応のために、デンプン検査で陰性となった混合物を61℃にした。pHを50%硫酸で4.3にした。反応期間を通して、pHをこの値に保持した。温度を61℃に保持した。5.74ml(=酵素/乾燥物で1.5重量%)のDextrozym GA(Novozymes社 A/S)を、液化デンプンをグルコースに転換するために加えた。反応は1時間行った。酵素を失活させるために、混合物を85℃で加熱した。熱い状態の反応物を滅菌容器に充填し、その後4℃で保存した。最終濃度で420g/Lのグルコースが得られた。
【0172】
II.3(b)ライムギ粉(セルラーゼ/ヘミセルラーゼでの前処理を含む)
360gの脱イオン水を反応槽に入れた。155gのライムギ粉を絶えず攪拌しながら水にゆっくりと流し込んだ。温度を50℃で一定に保持した。pHを50重量%のNaOH水溶液で5.5に合わせた後、3.21ml(=酵素/乾燥物で2.5重量%)のViscozyme(ビスコザイム)L(Novozymes社 A/S)を添加した。30分後、さらにまず穀粉を55g加えた。その30分後、さらに50gの穀粉を加えた。続く30分に、さらに40gの穀粉を加えた。最後の添加から30分後に、液化を開始させた。
【0173】
1.7mlのCaCl原液(100g CaCl×2HO/L)を加えた。pHを50重量%のNaOH水溶液で6.5に合わせた後、5.0ml(=酵素/乾燥物で2重量%)のTermamyl 120L タイプL(Novozymes社 A/S)を添加した。その後、スラリーを85℃に急速加熱した。このプロセス中、pHを連続してモニタリングし、適当な場合には調整した。
【0174】
最終的な温度に達した後、さらに穀粉をまず60g加えた。加えて、Ca2+濃度を70ppmで維持するために0.13mlのCaCl原液をスラリーに添加した。添加の間、温度を85℃で一定に保持した。追加分(40gの穀粉と0.1mlのCaCl原液)をさらに加える前に反応が完了していることを確実にするため、少なくとも10分間の時間を置いた。1.1mlのTermamylを加え、その後、さらに追加分(40gの穀粉と0.1mlのCaCl原液)を加えた。乾燥物含量は55重量%に達した。添加後、温度を100℃に上げて、その後スラリーを10分間煮沸した。
【0175】
サンプルを採取し、室温まで冷やした。サンプルを脱イオン水で希釈(約1:10)した後、濃縮ルゴール液(1リットルあたり5gのヨウ素と10gのヨウ化カリウムの混合液)を1滴加えた。強い青に呈色したときはデンプンが残っていることを示し、また全てのデンプンが加水分解されたときは茶色の呈色が観察された。実験結果がデンプンの残存を示した場合には、温度を再び85℃に下げて一定に保った。さらに、1.1mlのTermamylをヨウ素−デンプン反応が陰性になるまで加えた。
【0176】
続いて、糖化反応のために、デンプン検査で陰性となった混合物を61℃にした。pHを50%硫酸の添加によって4.3にした。反応期間を通して、pHをこの値に保持した。温度を61℃に保持した。5.74ml(=酵素/乾燥物で1.5重量%)のDextrozym GA(Novozymes社 A/S)を、液化デンプンをグルコースに転換するために加えた。1時間反応を行った。酵素を失活させるために、混合物を85℃で加熱した。熱い状態の反応物を滅菌容器に充填し、その後4℃で保存した。最終濃度で370g/Lのグルコースが得られた。
【0177】
II.3(c)コムギ粉(キシラナーゼでの前処理を含む)
360gの脱イオン水を反応槽に入れた。水を55℃に加熱し、pHを50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて6.0に合わせた。温度およびpHを調整した後、3.21ml(=酵素/乾燥物で2.5重量%)のShearzyme(シーアザイム)500L(Novozymes社 A/S)を添加した。155gのコムギ粉を、絶えず攪拌しながら溶液中にゆっくりと流し込んだ。温度およびpHは、一定に保持された。30分後、さらに55gの穀粉を加え、その30分後、さらに50gの穀粉を加えた。そして、そのまた30分後に40gの穀粉を加えた。最後の添加から30分後、液化を開始させた。
【0178】
液化および糖化は、II.3(b)で記載したように行った。最終濃度で400g/lのグルコースが得られた。
【0179】
III. ATCC13032 lysCfbr株
以下のいくつかの実施例では、改変されたコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)株を使用した。この株は、WO 05/059144に記載され、ATCC13032 lysCfbrという登録名で登録されている。
【0180】
実施例1
各場合において、トウモロコシ、コムギおよびライムギ穀粉の加水分解物を本明細書の以下の(1)に記載したように調製した。各培地における糖総含量は、種々の糖溶液(グルコース、粗糖、糖蜜を含む)を添加することで増加させた。培地は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)(ATCC13032 lysCfbr)およびバシラス(Bacillus)PA824(WO 02/061108中に詳細に記載されている)を用いた振とうフラスコ実験において、炭素供給材料として使用した。
【0181】
(1)穀粉加水分解物の調製
(a)トウモロコシ粉加水分解物
360gの脱イオン水を反応槽に入れた。155gのトウモロコシ粉を絶えず撹拌しながらゆっくりと前記水の中に流し込んだ
・液化
pHを50重量%のNaOH水溶液で5.8に合わせた後、2.6ml(=酵素/乾燥物質で2重量%)のLiquozyme(リコザイム)SC(Novozymes社 A/S)を添加した。スラリーを100℃に急速加熱して、10分間煮沸した。このプロセス中、pHを絶えずモニタリングし、適当であれば調整した。
【0182】
サンプルを採取し、室温に冷やした。サンプルを脱イオン水で希釈(約1:10)した後に、濃縮ルゴール液(1Lあたり5gのヨウ素と10gのヨウ化カリウムの混合液)を1滴加えた。強い青に呈色したときはデンプンが残っていることを示し、また全てのデンプンが加水分解されたときは茶色の呈色が観察された。
【0183】
・糖化
その後、糖化反応のために、デンプン検査で陰性となった混合物を61℃にした。pHを50%硫酸の添加で4.3にした。反応期間を通して、pHをこの値に保持した。温度を61℃に保持した。2.0ml(=酵素/乾燥物で1.5重量%)のDextrozym GA(Novozymes社 A/S)を、液化デンプンをグルコースに転換するために加えた。反応は1時間行った。酵素を失活させるために、混合物を85℃で加熱した。熱い状態の反応物を滅菌容器に充填し、その後4℃で保存した。
【0184】
(b)コムギ粉加水分解物
・キシラナーゼ前処理
360gの脱イオン水を反応槽に入れた。水を55℃に加熱し、pHを50重量%のNaOH水溶液を用いて6.0に合わせた。温度およびpHを調整した後、3.21ml(=酵素/乾燥物で2.5重量%)のShearzyme 500L(Novozymes社 A/S)を添加した。155gのコムギ粉を、絶えず攪拌しながら前記溶液中にゆっくりと流し込んだ。温度およびpHは一定に保持した。最終添加の30分後、液化を開始させた。
【0185】
液化および糖化は、1(a)に記載のように行った。
【0186】
(c)ライムギ粉加水分解物
・セルラーゼ/ヘミセルラーゼでの前処理
360gの脱イオン水を反応槽に入れた。155gのライムギ粉を前記水に絶えず攪拌しながらゆっくりと流し込んだ。温度を50℃で一定に維持した。pHを50重量%硫酸を用いて5.5に合わせた後、3.21ml(=酵素/乾燥物で2.5重量%)のViscozyme L(Novozymes社 A/S)を添加した。最終添加の30分後、液化を開始させた。
【0187】
液化および糖化は、1(a)に記載のように行った。
【0188】
(2) 種菌の調製
(a)コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に関して
細胞を滅菌CM+CaAc寒天(組成:表1参照;121℃で20分滅菌)上に塗りつけ、30℃で一晩インキュベートした。続いて、細胞をプレートから掻き取り、生理食塩水に再懸濁した。2つのバッフルを備えた250mlエルレンマイヤーフラスコに入れた25mlの培地(表4参照)のそれぞれに、吸光度が610nmで0.5のOD610値に達するように調整された細胞懸濁液量を接種した。
【表4】

【0189】
(b)バシラス(Bacillus)に関して
2つのバッフルを備えた250mlエルレンマイヤーフラスコに入れた42mlの前培養培地(表2参照)のそれぞれに0.4mlの凍結培養物を接種し、加湿振とう機で振とう(250rpm)しながら43℃で24時間インキュベートした。
【表5】

【0190】
2つのバッフルを備えた250mlエルレンマイヤーフラスコに入れた42mlの本培養培地(表6参照)のそれぞれに、1mlの前培養液を播種した。
【0191】
(3) 発酵液の調製
(a)コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に関して
フラスコ培地の組成を表4に示す。培地は、最初に60g/Lの糖濃度を有するべきである。糖の半分は加水分解物起源であった(発酵培地(1))が、他の半分は糖溶液の形態で添加されたものだった。この目的を達成するために、加水分解物と糖溶液の混合物を調製し、フラスコ培地に加えた。対応する量のグルコース溶液を対照培地で用いた。
【0192】
・糖添加した穀粉加水分解物の調製
以下の溶液を調製した(表3参照)。
【表6】

【表7】

【0193】
接種後、フラスコを加湿振とう機(200rpm)で振とうさせながら、3日間30℃でインキュベートした。発酵終了後、リジン含量をHPLCで測定した。HPLC分析は、Agilent 1100シリーズ LCシステムで行った。アミノ酸濃度は、Agilent 1100シリーズ LCシステムHPLCの高圧液体クロマトグラフィーによって測定した。オルトフタルアルデヒドを用いたプレカラム誘導体化により、形成されたアミノ酸の定量が可能となる。アミノ酸混合物は、Agilent Hypersil AAカラムを用いて分離する。結果を表5にまとめる。
【表8】

【0194】
(b)バシラス(Bacillus)に関して
フラスコ培地の組成は、表6に示している。培地は、最初に28.6g/Lの糖濃度を有するべきである。糖の半分は加水分解物起源であったが、他の半分はグルコース溶液の形態で添加されたものだった。対応する量のグルコース溶液を対照培地で使用した。
【表9】

【0195】
接種後、フラスコを加湿振とう機(250rpm)で振とうさせながら、24時間43℃でインキュベートした。発酵終了後、グルコースおよびパントテン酸含量をHPLCで測定した。グルコースは、Bio-Rad社のAminex HPX-87Hカラムを用いて測定した。パントテン酸は、Aqua C18カラム (Phenomenex社)での分離を介して測定した。
【0196】
結果を表7にまとめた。
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3個のC原子を有するか、または少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子とを有する少なくとも1種の有機化合物を発酵生産する方法であって、以下のステップ:
(a1)デンプン供給材料を粉砕し、それによりデンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分を含むミルベースを得るステップ;
(a2)前記ミルベースを水性液体に懸濁し、酵素的液化および適宜、続く糖化によりミルベース中のデンプン部分を加水分解し、それにより単糖またはオリゴ糖を含む第1の液体(1)を得るステップ;および
(b)単糖またはオリゴ糖を含む液体(1)を、代謝可能な単糖、二糖もしくはオリゴ糖とともに、または代謝可能な単糖、二糖もしくはオリゴ糖を少なくとも50重量%の濃度で含み、かつ水に不溶な固体を原則として含まない組成物とともに、前記有機化合物の過剰生産が可能な微生物を含む発酵培地に発酵条件下で添加するステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
ステップ(a2)で得られる液体(1)の単糖、二糖およびオリゴ糖の総濃度が、100〜400g/kgの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体(1)の添加により発酵に導入される単糖、二糖および/またはオリゴ糖の量が、発酵に導入される単糖、二糖およびオリゴ糖の総量のうち、40〜95重量%を占める、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の液体(1)中の単糖、二糖およびオリゴ糖の総濃度を、代謝可能な単糖、二糖および/もしくはオリゴ糖の添加により、または代謝可能な単糖、二糖および/もしくはオリゴ糖を少なくとも50重量%の濃度で含み、かつ水に不溶な固体を原則として含まない培地の添加により、少なくとも50g/kgまで上昇させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
液体(1)中の単糖、二糖およびオリゴ糖の総濃度を、450〜600g/kgの値まで上昇させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
代謝可能な単糖またはオリゴ糖を含む用いる組成物が、グルコースおよび/またはスクロース、および適宜デキストリンを含む糖製造の副産物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖を含む用いる組成物が、ビート糖製造からの糖蜜である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a1)のデンプン供給材料が穀粒である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a2)において、前記水性液体に、ステップ(a1)で得られたミルベースの少なくとも一部分を、加水分解条件下で連続的にまたはバッチ方式に添加することにより、該ミルベースの少なくとも一部分を加水分解する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a2)において、ミルベースの懸濁液を、該懸濁液に蒸気を導入することによりミルベース中に存在するデンプンのアルファ化(gelatinization)温度よりも高く上昇させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
製造された有機化合物が、ヒドロキシル基が結合していてもよく、3〜10個の炭素原子を有する、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびトリカルボン酸より、タンパク質原性および非タンパク質原性アミノ酸、プリン塩基、ピリミジン塩基;ヌクレオシド、ヌクレオチド、脂質;飽和および不飽和脂肪酸;4〜10個の炭素原子を有するジオール、3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール、少なくとも4個の炭素原子を有する長鎖アルコール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン、プロビタミン、補因子、栄養補助剤、タンパク質、カロテノイド、3〜10個の炭素原子を有するケトン、ラクトン、生体ポリマーおよびシクロデキストリンより選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
発酵に用いる微生物が、以下の代謝産物:酵素、アミノ酸、ビタミン、二糖、3〜10個のC原子を有する脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、3〜10個のC原子を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸、3〜10個のC原子を有するケトン、4〜10個のC原子を有するアルカノール、3〜8個のC原子を有するアルカンジオールおよびポリヒドロキシアルカノアートのうち少なくとも1つを過剰生産する天然または組み換え微生物より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
微生物が、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、バジラス属(Bacillus)、アッシビヤ属(Ashbya)、エシェリキア属(Escherichia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、アクチノバシラス属(Actinobacillus)、アネロビオスピリラム属(Anaerobiospirillum)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、プロピオネバクテリウム属(Propionibacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)およびリゾプス属(Rhizopus)より選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
発酵に用いる微生物が、アミノ酸を過剰生産する天然または組み換え微生物より選択される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
微生物が、コリネバクテリウム属(genus Corynebacterium)の株である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
発酵に用いる微生物が、酵素を過剰生産する天然または組み換え微生物より選択される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項17】
微生物が、フィターゼ過剰生産微生物より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
有機化合物が発酵液から枯渇するか単離され、続いて発酵液の揮発性成分を実質的に除去して、固体または半固体のタンパク質組成物を得る、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
発酵液の揮発性成分の少なくとも一部分を、非揮発性微生物代謝産物の事前の単離または枯渇なしに、かつ、適宜、固体成分の事前の除去なしに除去し、非揮発性微生物代謝産物の固体製剤を得る、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−517010(P2009−517010A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541756(P2008−541756)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068926
【国際公開番号】WO2007/060233
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】