説明

有機半導体素子用液状組成物の製造方法

【課題】塗工特性が良好な有機半導体素子用液状組成物であって、その有機半導体素子用液状組成物から有機層を形成した場合に、有機半導体素子の機能の寿命が延長される有機半導体素子用液状組成物、及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】1気圧、25℃において固体である有機化合物を、1気圧、25℃において液体であり、100重量ppm以下のハロゲン化合物濃度を有する有機溶媒に溶解させる工程を包含する有機半導体素子用液状組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体素子を形成するために用いる液状組成物に関し、特に有機エレクトロルミネッセンス素子を形成するために用いる液状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体素子を用いた技術が注目されている。特に、有機半導体素子の一態様である有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」という場合がある。)素子を用いた有機ELディスプレイが注目されている。有機ELディスプレイに用いられる有機EL素子は、陽極と、陰極と、該陽極及び該陰極間に配置される発光層とを含んで構成され、該陽極及び該陰極からそれぞれ注入される正孔及び電子が、該発光層において結合することによって発光する。
【0003】
有機EL素子には、製造が簡易で、大面積化が容易な方法によって発光層等の有機層を形成することができるという利点がある。具体的には、表面に陽極が形成された基板の上に、有機層に含まれる材料を有機溶媒に溶解又は分散させた液状組成物をスピンコート法やインクジェット法などの塗布法を用いて塗布し、該液状組成物の塗布膜を乾燥して正孔注入層や発光層などの有機層を形成する。その後、該有機層上に陰極層を形成して有機EL素子が製造される。
【0004】
有機半導体素子用液状組成物として、例えば、特許文献1には、有機EL素子の発光層を構成する発光化合物と、芳香族系化合物を含む混合溶媒とを含む塗布液が記載されている。この塗布液は、溶媒として、低沸点芳香族化合物及び高沸点芳香族化合物を併用している。そのことにより、この塗布液は比較的高沸点でありながら比較的低粘度に制御され、塗工特性が改良されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−119351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようにして塗工特性を改良した液状組成物から有機層を形成した場合でも、有機半導体素子の機能の寿命は十分には長くなく、有機半導体素子の中でも、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子については、輝度半減寿命が十分には長くなかった。
【0007】
本発明の目的は、塗工特性が良好な有機半導体素子用液状組成物であって、その有機半導体素子用液状組成物から有機層を形成した場合に、有機半導体素子の機能の寿命が延長される有機半導体素子用液状組成物、及びその製造方法を提供することである。また、本発明は、該製造方法で得られた有機半導体素子用液状組成物を用いて製造された有機半導体素子を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、ある種の有機溶媒を媒介して有機半導体素子用液状組成物に導入されるハロゲン化合物が有機層、ひいては有機半導体素子の機能の寿命に悪影響を与えていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、1気圧、25℃において固体である有機化合物を、1気圧、25℃において液体である有機溶媒であって、フッ素を含む化合物の濃度、塩素を含む化合物の濃度、臭素を含む化合物の濃度及びヨウ素を含む化合物の濃度のうち少なくとも1つの濃度が100重量ppm以下である有機溶媒に溶解させる工程を包含する有機半導体素子用液状組成物の製造方法を提供する。
【0010】
ある一形態においては、上記有機溶媒は、
フッ素を含む化合物を含む有機溶媒中のフッ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のフッ素を含む化合物の濃度に低減する工程、
塩素を含む化合物を含む有機溶媒中の塩素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の塩素を含む化合物の濃度に低減する工程、
臭素を含む化合物を含む有機溶媒中の臭素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度に低減する工程、
又は、ヨウ素を含む化合物を含む有機溶媒中のヨウ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のヨウ素を含む化合物の濃度に低減する工程を
包含する方法によって得られたものである。
【0011】
ある一形態においては、上記有機溶媒は、
臭素を含む化合物を含む有機溶媒中の臭素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度に低減する工程を
包含する方法によって得られたものである。
【0012】
ある一形態においては、
フッ素を含む化合物を含む有機溶媒中のフッ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のフッ素を含む化合物の濃度に低減する工程、
塩素を含む化合物を含む有機溶媒中の塩素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の塩素を含む化合物の濃度に低減する工程、
臭素を含む化合物を含む有機溶媒中の臭素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度に低減する工程、
又は、ヨウ素を含む化合物を含む有機溶媒中のヨウ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のヨウ素を含む化合物の濃度に低減する工程が
蒸留工程である。
【0013】
ある一形態においては、上記有機化合物は、蛍光を発光する有機化合物である。
【0014】
ある一形態においては、上記有機化合物は、燐光を発光する有機化合物である。
【0015】
ある一形態においては、上記有機化合物は、高分子化合物である。
【0016】
ある一形態においては、上記有機溶媒は、炭素、水素、酸素及び窒素からなる群から選ばれる2種以上の元素からなる化合物である。
【0017】
ある一形態においては、上記有機半導体素子は有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0018】
ある一形態においては、上記有機化合物を上記有機溶媒に溶解させる上記工程において、得られる液状組成物の全重量に対して、上記有機化合物の量が0.01wt%以上、5.0wt%以下になるように上記有機化合物を上記有機溶媒に溶解させる。
【0019】
ある一形態においては、上記有機半導体素子用液状組成物は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層を形成するために用いられる液状組成物である。
【0020】
ある一形態においては、上記有機半導体素子用液状組成物は、有機エレクトロルミネッセンス素子の電荷輸送層を形成するために用いられる液状組成物である。
【0021】
また、本発明は、第1の電極と、第2の電極と、該第1の電極及び該第2の電極間に設けられた有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該有機層が、上記いずれかの方法で得られた液状組成物を第1の電極上に塗布して形成された層である有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0022】
また、本発明は、上記いずれかに記載の方法により製造された有機半導体素子用液状組成物を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の方法により得られた有機半導体素子用液状組成物を用いれば、簡単な製造方法によって、有機層の品質が向上し、寿命が延長された有機半導体素子を製造することができる。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子については、輝度半減寿命が延長される。このような有機エレクトロルミネッセンス素子は、照明等の平面又は曲面の面状光源;セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置等の表示装置;液晶表示装置等のバックライト等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の有機EL素子の構造の一形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子の構造の他の形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
有機溶媒は、一般に、不純物として該有機溶媒の原料物質又は該有機溶媒の製造過程で生成する中間物質を含有する。その結果、有機半導体素子を形成する過程で、例えば有機層を形成する際に有機溶媒を使用すると、有機半導体素子の有機層には、その有機溶媒の種類に応じた不純物が導入される。
【0026】
本発明の方法で使用される有機溶媒は、有機半導体素子の有機層を構成する化合物を溶解して有機半導体素子用液状組成物を提供することができ、しかも、ハロゲン化合物を含むものである。ハロゲン化合物とは構成元素としてハロゲンを有する化合物をいう。ハロゲン化合物は、通常は、不純物として有機溶媒に含まれている。
【0027】
有機溶媒に不純物として含まれるハロゲン化合物の濃度が高い有機半導体素子用液状組成物を有機半導体素子の製造に用いると、有機半導体素子の機能の寿命が短くなる。有機半導体素子の機能の寿命に悪影響を与えうるハロゲン化合物の濃度は、例えば、実施例に説明される方法で測定された臭素原子の量として、有機溶媒中約250重量ppm以上、約200重量ppm以上又は約150重量ppm以上に相当する量である。
【0028】
尚、本明細書において文言「ppm」は、特に断らない限り、重量ppmを意味する。
【0029】
有機半導体素子用液状組成物の製造方法
以下、有機半導体素子用液状組成物の製造方法について説明し、有機半導体素子用液状組成物、及びその構成要素である有機化合物、有機溶媒の詳細については、後述する。
【0030】
本発明の有機半導体素子用液状組成物の製造方法は、1気圧、25℃において液体である有機溶媒中に1気圧、25℃において固体である有機化合物を溶解させる工程を包含する。本発明の方法は、該有機溶媒として、フッ素を含む化合物の濃度、塩素を含む化合物の濃度、臭素を含む化合物の濃度及びヨウ素を含む化合物の濃度のうち少なくとも1つの濃度が100重量ppm以下である有機溶媒を使用する。
【0031】
フッ素を含む化合物の濃度、塩素を含む化合物の濃度、臭素を含む化合物の濃度及びヨウ素を含む化合物の濃度のうち少なくとも1つの濃度が100重量ppm以下である有機溶媒は、市販品でもよく、また、100重量ppmを超える濃度でハロゲン化合物を含有する有機溶媒中のハロゲン化合物の量をハロゲン化合物濃度が100重量ppm以下となるように低減する工程を実施して得られた有機溶媒でもよい。該工程としては、フッ素を含む化合物を含む有機溶媒中のフッ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のフッ素を含む化合物の濃度に低減する工程、
塩素を含む化合物を含む有機溶媒中の塩素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の塩素を含む化合物の濃度に低減する工程、
臭素を含む化合物を含む有機溶媒中の臭素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度に低減する工程、
ヨウ素を含む化合物を含む有機溶媒中のヨウ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のヨウ素を含む化合物の濃度に低減する工程が挙げられる。ハロゲン化合物の量を低減する工程は、希釈工程でも精製工程でもよいが、精製工程としては、例えば蒸留工程が挙げられる。希釈工程において、希釈剤としては、希釈する有機溶媒よりもハロゲン化合物濃度が低い有機溶媒が使用される。また、前記有機化合物を溶解する前記有機溶媒のハロゲン化合物濃度は、70重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましい。
【0032】
蒸留工程は、常圧下において行っても、減圧下において行ってもよい。蒸留法としては、薄膜蒸留法、単蒸留法、精密蒸留法等があげられる。蒸留条件は、常圧下、減圧下共に、使用する溶媒によって決定される。常圧で高沸点の物質、沸点近傍で分解しやすい物質は、通常、蒸留工程は減圧下で行われる。蒸留工程を行うことで、前記有機溶媒中に含まれるハロゲン化合物の量を低減することができる。
【0033】
有機半導体素子用液状組成物が2種以上の有機溶媒を含む場合、少なくとも1種の有機溶媒中に含まれるハロゲン化合物の量を低減すればよいが、全ての有機溶媒中に含まれるハロゲン化合物の量を低減することが好ましい。また、2種以上の有機溶媒を混合して混合溶媒を製造し、その後、該混合溶媒中のハロゲン化合物の量を低減してもよい。
【0034】
本発明の有機半導体素子用液状組成物の製造に使用する有機溶媒が、第一の有機溶媒及び第二の有機溶媒の混合溶媒になることがある。この場合、各有機溶媒のハロゲン化合物の濃度を考慮して、混合溶媒のハロゲン化合物濃度が100重量ppm以下になるように、各有機溶媒のハロゲン化合物の濃度又は混合比を調節する。
【0035】
例えば、第一の有機溶媒が100重量ppmを超える臭素を含む化合物の濃度を有し、第二の有機溶媒が100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度を有する場合、第一の有機溶媒中に含まれる臭素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度に低減する工程を行い、次いで、第二の有機溶媒と混合することができる。その結果、どのような割合で両者を混合しても、混合溶媒中の臭素を含む化合物の濃度は100重量ppm以下になる。
【0036】
特に好ましい実施形態では、第一の有機溶媒は、10重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度になるまで臭素を含む化合物の量が低減される。第二の有機溶媒も、10重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度になるまで臭素を含む化合物の量が低減される。その結果、どのような割合で両者を混合しても、混合溶媒中の臭素を含む化合物の濃度は10重量ppm以下になる。
【0037】
本発明の有機半導体素子用液状組成物の製造方法は、1気圧、25℃において固体である有機化合物を1気圧、25℃において液体である有機溶媒に溶解させる工程を含む。
【0038】
有機化合物を該有機溶媒に溶解させる工程としては、例えば、該有機溶媒中に該有機化合物を浸漬し、攪拌、振とう、超音波等の外的因子を加えることによって、溶解する方法が挙げられる。
【0039】
有機化合物を溶解させる工程において、溶解させるのに必要な時間を短縮するために、25℃から、用いる有機溶媒の沸点の範囲で、加熱しながら有機化合物を溶解させてもよい。有機溶媒の沸点が60℃以上の場合は、25℃から60℃の範囲で加熱しながら有機化合物を溶解させることが好ましい。
【0040】
有機半導体素子用液状組成物が2種以上の有機溶媒を含む場合、有機溶媒を2種以上混合して混合溶媒を製造し、有機化合物を前記等の方法で該混合溶媒に溶解させてもよいし、ある1種類の有機溶媒に有機化合物を溶解させ、その後他の有機溶媒を加えてもよい。
【0041】
有機化合物を有機溶媒に溶解させる雰囲気としては、大気雰囲気、不活性気体の濃度が大気雰囲気中に含まれる不活性気体の濃度以上である雰囲気等が挙げられる。不活性気体の濃度が大気雰囲気中に含まれる不活性気体の濃度以上である雰囲気は、雰囲気中の不活性気体の濃度が、体積比で99%以上である雰囲気であってもよい。不活性気体としては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスなどが挙げられる。
【0042】
有機化合物を有機溶媒に溶解させる環境は、380nm以下の紫外光領域の波長の光を遮光した環境であってもよい。好ましくは500nm以下の波長の光を遮光した環境である。
【0043】
本発明の有機半導体素子用液状組成物の製造方法として、有機溶媒中に含まれるハロゲン化合物の量を低減する工程、該有機化合物を該有機溶媒に溶解させる工程以外の工程を含んでいてもよい。
【0044】
その他の工程としては、有機半導体素子用液状組成物のろ過工程等が挙げられる。
【0045】
有機半導体素子用液状組成物
次に、本発明に用いられる有機半導体素子用液状組成物について説明する。
本発明における有機半導体素子用液状組成物とは、半導体としての性質を示す有機半導体素子の製造に用いる液状組成物を意味する。有機半導体素子は有機層を含んで構成されており、その有機層が有機半導体素子用液状組成物から形成される。有機半導体素子としては、具体的には、有機EL素子、有機電界効果トランジスタ、有機太陽電池等が挙げられる。好ましい有機半導体素子は、有機EL素子である。
【0046】
つまり、有機半導体素子用液状組成物は有機半導体素子の有機層に含まれる材料を有機溶媒に溶解又は分散させた液状組成物である。
【0047】
まず、本発明に用いられる有機半導体素子用液状組成物に含まれる有機溶媒について、説明する。該有機溶媒は、1気圧、25℃において液体である有機化合物であり、不純物としてハロゲン化合物を含む。
【0048】
有機溶媒中に含まれるハロゲン化合物としては、フッ素原子を含む化合物、塩素原子を含む化合物、臭素原子を含む化合物、ヨウ素原子を含む化合物が挙げられる。低減することで有機EL素子の輝度半減寿命が長くなる効果がより高いのは、塩素原子を含む化合物、臭素原子を含む化合物であり、効果がさらに高いのは、臭素原子を含む化合物である。
【0049】
本発明において、有機溶媒中に含まれるハロゲン化合物の量を低減した後、該有機溶媒中のハロゲン化合物の濃度としては、通常100重量ppm未満であるが、好ましくは70重量ppm未満であり、より好ましくは10重量ppm未満であり、さらに好ましくは1重量ppm未満であり、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0050】
有機溶媒は、好ましくは炭素、水素、酸素、窒素及び硫黄からなる群から選ばれる2種以上の元素からなる化合物であり、より好ましくは、炭素、水素、酸素及び窒素からなる群から選ばれる2種以上の元素からなる化合物であり、さらに好ましくは、炭素、水素及び酸素からなる群から選ばれる2種以上の元素からなる化合物である。
【0051】
有機溶媒の具体例としては、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、スルホキシド溶媒、アミド溶媒、水及びそれらの組合せ等が挙げられる。
【0052】
炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカヒドロナフタレン、石油エーテル、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、プソイドクメン、メシチレン、ブチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デカチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0053】
エーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、アニソール、メチルアニソール、ジフェニルエーテル、フェノキシトルエン、フェノキシキシレン、ジトリルエーテル、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、ジオキサン、テトラヒドロピラン、4−メチル−1,3−ジオキサン、4−フェニル−1,3−ジオキサン等が挙げられる。
【0054】
アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、シクロペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、3−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルブタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0055】
ケトン溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルメチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−ヘキサノン、ジイソプロピルケトン、2−ヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヘプタノン、イソアミルメチルケトン、3−ヘプタノン、2−ヘプタノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2−メチルシクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、5−メチル−2−オクタノン、3−メチルシクロヘキサノン、2−シクロヘキセン−1−オン、4−メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4−tert−ブチルシクロヘキサノン、ベンジルアセトン等が挙げられる。
【0056】
ニトリル溶媒としては、アセトニトリル、アクリロニトリル、プロピオニトリル、ピバロニトリル、イソブチロニトリル、n−ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、2−メチルブチロニトリル、イソバレロニトリル、N−バレロニトリル、n−カプロニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、3−エトキシプロピオニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、n−ヘプタンニトリル、グリコロニトリル(glycolonitrile)、ベンゾニトリル、エチレンシアノヒドリン、スクシノニトリル、アセトンシアノヒドリン、3−n−ブトキシプロピオニトリル等が挙げられる。
【0057】
スルホキシド溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジ−n−ブチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド等が挙げられる。
【0058】
アミド溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アシルアミド、2−アセトアミドエタノール、N,N−ジメチル−m−トルアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルドデカンアミド、エプシロン−カプロラクタム、N,N−ジエチルアセトアミド、N−tert−ブチルホルムアミド、ホルムアミド、ピバルアミド、N−ブチルアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−ホルミルエチルアミン、アセトアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、1−ホルミルピペリジン、N−メチルホルムアニリド等が挙げられる。
【0059】
本発明の有機半導体素子用液状組成物が2種類の有機溶媒が含まれる場合、成膜性の観点からは、1種類の溶媒は沸点が180℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃以下のものであることが好ましく、1種類の溶媒は沸点が200℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃以下のものであることがより好ましい。
【0060】
本発明の有機半導体素子用液状組成物が3種類の有機溶媒が含まれる場合、成膜性の観点からは、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以上の溶媒であり、かつ、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以下の溶媒であることが好ましく、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が200℃以上300℃以下の溶媒であり、かつ、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以下の溶媒であることがより好ましい。
【0061】
中でも好ましい有機溶媒は、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、デカリン、メチルアニソール、ジフェニルエーテル、フェノシキトルエンである。これらは比較的沸点が高く低粘度であり、有機半導体素子用液状組成物の塗工特性及び成膜性を改良する効果が高くなるからである。
【0062】
次に、本発明に用いられる有機半導体素子用液状組成物に含まれる有機化合物について、説明する。該有機化合物は、有機半導体素子用液状組成物に含まれる結果、有機半導体素子の層を構成する材料になる。該有機化合物は、1気圧、25℃において固体である。該有機化合物は、主として蛍光及び/又は燐光を発光する発光性有機化合物、発光性有機化合物の発光機能を補助するドーパントであることが好ましい。ドーパントは、例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために蛍光及び/又は燐光を発光する発光性有機化合物に加えられる。有機化合物は、液状組成物から塗布により成膜可能な低分子化合物、高分子化合物であってよい。成膜性の観点からは、高分子化合物が好ましく、ポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10である高分子化合物がより好ましい。
【0063】
高分子化合物としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、下記に例示するような、色素系ドーパント材料や金属錯体系ドーパント材料を高分子量化した化合物などを挙げることができる。
【0064】
低分子化合物としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、CBPに代表されるようなカルバゾール誘導体等が挙げられる。
【0065】
上記発光性有機化合物のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、及びそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。中でも高分子化合物であるポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体が好ましい。
【0066】
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、及びそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。中でも高分子化合物であるポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体が好ましい。
【0067】
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、及びそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。中でも高分子化合物であるポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体が好ましい。
【0068】
色素系のドーパント材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンを挙げることができる。
【0069】
金属錯体系のドーパント材料としては、例えば、中心金属に、Al、Zn、Beなど、又はTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体を挙げることができる。該金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体を挙げることができる。
【0070】
本発明の有機半導体素子用液状組成物に含まれる有機化合物の濃度に関しては、有機化合物が有機半導体素子用液状組成物の全重量に対して、0.01重量(wt)%以上10.0wt%以下の割合で含まれることが好ましい。より好ましくは、0.01wt%以上5.0wt%以下の割合で含まれる。さらに好ましくは、0.1wt%以上5.0wt%以下の割合で含まれる。該有機半導体素子用液状組成物の粘度は、塗布する際の塗布法によって異なるが、25℃において0.5〜500mPa・sの範囲が好ましく、インクジェットプリント法等の有機半導体素子用液状組成物が吐出装置から吐出する塗布法の場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために、粘度が、25℃において0.5〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0071】
有機半導体素子用液状組成物は、さらに、粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤、酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0072】
有機半導体素子用液状組成物が含有してもよい粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤としては、例えば、粘度を高めるための高分子量の化合物(増粘剤)や貧溶媒、粘度を下げるための低分子量の化合物、表面張力を下げるための界面活性剤等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて使用する。
【0073】
高分子量の化合物としては、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、通常、有機半導体素子用液状組成物に含まれる有機溶媒に可溶な化合物である。高分子量の化合物としては、例えば、高分子量のポリスチレン、高分子量のポリメチルメタクリレートが挙げられる。高分子量の化合物は、ポリスチレン換算の重量平均分子量は50万以上が好ましく、100万以上がより好ましい。
【0074】
また、貧溶媒を増粘剤として用いることもできる。有機半導体素子用液状組成物中の有機化合物に対して少量の貧溶媒を添加することで、該有機半導体素子用液状組成物の粘度を高めることができる。貧溶媒を添加する場合、該有機半導体素子用液状組成物中の固形分が析出しない範囲で、貧溶媒の種類と添加量を選択すればよい。保存時の安定性を考慮すると、貧溶媒の量は、液状組成物全体に対して50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
【0075】
低分子量の化合物としては、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、通常、有機半導体素子用液状組成物に含まれる有機溶媒に可溶な化合物である。
界面活性剤としては、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、通常、有機半導体素子用液状組成物に含まれる有機溶媒に可溶な化合物である。界面活性剤としては、例えば、サーフィノールが挙げられる。
【0076】
有機半導体素子用液状組成物が含有してもよい酸化防止剤としては、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよい。酸化防止剤を用いることにより、本発明の有機半導体素子用液状組成物の保存安定性を改善し得る。
【0077】
有機EL素子
次に、本発明の有機半導体素子の例として、有機EL素子について説明する。図1は、本発明の有機EL素子の構造の一形態を模式的に示す断面図である。この有機EL素子1は、基板2上に、第1の電極3、第2の電極7、及び該第1の電極及び該第2の電極の間に設けられた有機層6を有している。
【0078】
以下、図1に示す有機EL素子1を例として、有機層6の形成工程について説明し、有機EL素子1のその他の構成要素の詳細については、後述する。
【0079】
有機層6中の有機化合物を含む薄膜は、第1の電極3上に、本発明の有機半導体素子用液状組成物の製造方法で得られる有機半導体用液状組成物を塗布することで形成される。
【0080】
有機半導体素子用液状組成物を用いた塗布法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、インクジェットプリント法等が挙げられる。
【0081】
有機層6は、大気雰囲気下、雰囲気中の不活性気体の濃度が大気雰囲気中に含まれる不活性気体の濃度以上である雰囲気下で形成されることが好ましい。不活性気体としては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスなどを挙げることができ、これらのなかでも素子作製の容易さの観点からは、窒素ガスが好ましい。
【0082】
有機層6は、有機EL素子の寿命特性の観点からは、酸素濃度が体積比で1000ppm以下及び/又は水分濃度が体積比で1000ppm以下の雰囲気下で形成されることが好ましく、酸素濃度が体積比で10ppm以下及び/又は水分濃度が体積比で10ppm以下の雰囲気下で形成されることがより好ましい。
【0083】
有機層6の形成後、雰囲気中の酸素濃度及び水分濃度を、体積比でそれぞれ1000ppm以下に保った状態で有機層6を焼成することが好ましい。前記有機層6の焼成は、通常、該有機層6の形成工程に続いて行う。この焼成によって、有機層に含まれる溶媒が除去される。
【0084】
焼成は、有機EL素子の発光特性及び寿命特性の観点から、50℃〜250℃の範囲内の温度で行うことが好ましい。焼成時間は、有機層6に含まれる有機化合物の成分によって適宜選択され、例えば、通常5分〜2時間程度である。
【0085】
有機層6の焼成は、有機EL素子の長寿命化の観点からは、不活性気体を含有する雰囲気下において行うことが好ましい。不活性気体としては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスなどを挙げることができ、これらのなかでも素子作製の容易さから窒素ガスが好ましい。これらの不活性気体は、素子前駆体を収容する収容装置内に導入される。雰囲気中の不活性気体の濃度は、体積比で通常99%以上であり、好ましくは、99.5%以上である。
【0086】
また有機層6の焼成は、有機EL素子の発光特性及び寿命特性の観点からは、雰囲気中の酸素濃度及び水分濃度が体積比でそれぞれ600ppm以下に保った状態で行われることが好ましく、より好ましくは、酸素濃度及び水分濃度が体積比でそれぞれ300ppm以下であり、さらに好ましくは、酸素濃度及び水分濃度が体積比でそれぞれ100ppm以下であり、特に好ましくは、酸素濃度及び水分濃度が体積比でそれぞれ10ppm以下である。
【0087】
また有機層6の焼成は、有機EL素子の長寿命化の観点からは、10Pa以下の雰囲気下において行われることが好ましい。有機層6の焼成は、不活性気体が導入されるとともに、減圧された収容装置内で行われることが好ましい。減圧された雰囲気下で焼成を行うと、大気圧下での焼成に比べ、有機層6に含まれる溶媒をより除去することができる。
【0088】
有機層6に含まれる有機膜を形成した後に、第2の電極7を有機層6上に形成することによって、有機EL素子1が製造される。
【0089】
本発明の好ましい一実施形態では、有機EL素子1における第1の電極3は陽極であり、第2の電極7は陰極であり、有機層6は発光層である。
【0090】
図2は、本発明の有機EL素子の構造の他の形態を模式的に示す断面図である。この有機EL素子1’は、基板2の上に、第1の電極3と、第2の電極7と、該第1の電極3及び該第2の電極7の間に設けられた第1の有機層4、第2の有機層5及び第3の有機層6’とを有している。
【0091】
本発明の好ましい一実施形態では、有機EL素子1’における第1の電極3は陽極であり、第2の電極7は陰極である。この場合、有機層の構成は、陰極と隣接している第3の有機層6’が発光層である。そして、第3の有機層と第1の電極との間に位置する第1の有機層4は正孔注入層であり、第2の有機層5は正孔輸送層である。
【0092】
以下、図2に示す有機EL素子を例として、前記有機層の形成工程について説明し、有機EL素子の他の構成要素の詳細については後述する。
【0093】
有機層は、第1の電極上に有機半導体用液状組成物を塗布することで形成される。第1の電極上に有機半導体用液状組成物を塗布することで形成するとは、第1の電極の表面上に有機半導体用液状組成物を塗布して形成する場合、第1の電極の上方にある正孔注入層の表面上に有機半導体用液状組成物を塗布して形成する場合及び第1の電極の上方にある正孔輸送層の表面上に有機半導体用液状組成物を塗布して形成する場合を含む。
【0094】
発光層としての第3の有機層6’の形成工程は、前述の有機EL素子1中の有機層6の形成工程と同様にして行われる。
【0095】
第2の有機層5は、発光層に隣接しており、電荷の輸送の機能を有する層(電荷輸送層)を意味する。
【0096】
以下、正孔輸送層としての第2の有機層5を例として、有機層の形成方法について説明する。この場合、第1の有機層4は正孔注入層である。
【0097】
まず、第1の電極3及び第1の有機層4を基板2上に形成する。その後、第1の有機層4上に、本発明の有機半導体素子用液状組成物の製造方法で得られた有機半導体素子用液状組成物を塗布し、第2の有機層5を形成する。
【0098】
正孔輸送層5は、有機EL素子を容易に製造できる点から、大気圧下、不活性気体を含有する雰囲気下において形成することが好ましい。不活性気体としては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスなどを挙げることができ、これらのなかでも素子作製の容易さから窒素ガスが好ましい。
【0099】
正孔輸送層5は、例えば、大気雰囲気下で形成されてもよいし、雰囲気中の不活性気体の濃度が、体積比で通常99%以上である雰囲気下で形成されてもよい。素子寿命の長寿命化の観点からは、不活性気体の濃度が99.5%以上の雰囲気下で形成されることが好ましい。
【0100】
正孔輸送層5は、有機EL素子の発光特性及び寿命特性の観点からは、酸素濃度が体積比で1000ppm以下及び/又は水分濃度が体積比で1000ppm以下の雰囲気下で正孔輸送層5を形成されることが好ましく、酸素濃度が体積比で10ppm以下及び/又は水分濃度が体積比で10ppm以下の雰囲気下で正孔輸送層5を形成されることがさらに好ましい。
【0101】
正孔輸送層5を形成した後、雰囲気中の酸素濃度及び水分濃度を、体積比でそれぞれ1000ppm以下に保った状態で正孔輸送層5を焼成することが好ましい。この焼成によって、正孔輸送層5に含まれる溶媒が除去される。
【0102】
焼成は、有機EL素子の発光特性及び寿命特性の観点からは、50℃〜250℃の範囲内の温度で行うことが好ましい。焼成時間は、正孔輸送層5に含まれる有機化合物の成分によって適宜選択され、通常、5分〜2時間程度である。
【0103】
正孔輸送層5の焼成は、有機EL素子の長寿命化の観点からは、不活性気体を含有する雰囲気下において行うことが好ましい。不活性気体としては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスなどを挙げることができ、これらのなかでも素子作製の容易さから窒素ガスが好ましい。これらの不活性気体は、素子前駆体を収容する収容装置内に導入される。雰囲気中の不活性気体の濃度は、体積比で通常99%以上であり、好ましくは、99.5%以上である。
【0104】
また正孔輸送層5の焼成は、有機EL素子の長寿命化の観点からは、10Pa以下の雰囲気下において行われることが好ましい。正孔輸送層5の焼成は、不活性気体が導入されるとともに、減圧された収容装置内で行われることが好ましい。
【0105】
また正孔輸送層5の形成及び該正孔輸送層の焼成は、有機EL素子の発光特性及び寿命特性の観点からは、雰囲気中の酸素濃度及び水分濃度が体積比でそれぞれ600ppm以下に保った状態で行われることが好ましく、より好ましくは、酸素濃度及び水分濃度が体積比でそれぞれ300ppm以下であり、さらに好ましくは、酸素濃度及び水分濃度が体積比でそれぞれ100ppm以下であり、特に好ましくは、酸素濃度及び水分濃度が体積比でそれぞれ10ppm以下である。
【0106】
正孔輸送層5を形成した後に、正孔輸送層5上に、前記の方法によって、発光層としての第3の有機層6’を形成し、さらにその上に、第2の陰極7を形成することによって、有機EL素子1’が製造される。
【0107】
以下、有機EL素子の素子構成及び各構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0108】
本発明の有機EL素子は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極及び第2の電極の間に配置される発光層を必須の構成要件として有している。なお、第1の電極(例えば、陽極)と第2の電極(例えば、陰極)との間には、例えば素子特性を向上させるために、前述の発光層に加えて、さらなる機能層が設けられる場合がある。
【0109】
陰極と発光層との間に設けられる機能層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。また陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という場合がある。
【0110】
電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する層である。電子輸送層は、陰極、電子注入層又は陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお電子注入層、及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
【0111】
正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製することによって確認することができる。例えば正孔ブロック層を備えず、ホール電流のみを流す素子と、該素子に正孔ブロック層を挿入した構成の素子とを作製し、正孔ブロック層を備える素子の電流値の減少で、正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を示すことを確認できる。
【0112】
陽極と発光層との間に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。陽極と発光層との間に、正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に接する層を正孔注入層といい、この正孔注入層を除く層を正孔輸送層という場合がある。
【0113】
正孔注入層は、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔輸送層は、陽極、正孔注入層又は陽極により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する層である。電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお正孔注入層、及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。
【0114】
電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、例えば電子電流のみを流す素子を作製することによって確認することができる。例えば電子ブロック層を備えず、電子電流のみを流す素子と、該素子に電子ブロック層を挿入した構成の素子とを作製し、電子ブロック層を備える素子の電流値の減少で、電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を示すことを確認できる。
【0115】
本実施の形態の有機EL素子がとりうる素子構成の一例を以下に示す。
a)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
g)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
h)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
i)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
k)陽極/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。
以下同じ。)
【0116】
有機EL素子は、2層以上の発光層を有していてもよい。a)〜m)に示す各構成において、陽極と陰極との間に設けられる層をそれぞれ「繰り返し単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子としては、以下のn)に示す素子構成を挙げることができる。
n)陽極/(繰り返し単位A)/電荷発生層/(繰り返し単位A)/陰極
また「(繰り返し単位A)/電荷発生層」を「繰り返し単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子としては、具体的には、以下のo)に示す素子構成を挙げることができる。
o)陽極/(繰り返し単位B)x/(繰り返し単位A)/陰極
ここで、記号「x」は2以上の整数を表し、「(繰り返し単位B)x」は、(繰り返し単位B)を「x」段積層した構成を表す。電荷発生層とは電界を印加することにより、正孔と電子とが発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0117】
有機EL素子は、さらに封止のための封止膜又は封止板などの封止部材で覆われていてもよい。有機EL素子を基板に設ける場合は、通常基板側に陽極が配置されるが、基板側に陰極を配置するようにしてもよい。
【0118】
本実施の形態の有機EL素子は、内部で発生した光を外に取出すために、通常、発光層を基準にして光が取出される側に配置される全ての層を透明なものとしている。透明の程度としては、光の取出される側の有機EL素子の最表面と、発光層との間の可視光透過率が40%以上であることが好ましい。紫外領域又は赤外領域の発光が求められる有機EL素子の場合には、当該領域において40%以上の光透過率を示すものが好ましい。
【0119】
本実施の形態の有機EL素子は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入性の改善のために、電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよい。また界面での密着性向上や混合の防止などのために、前述した各層間に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0120】
積層する層の順序、層数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜設定することができる。
【0121】
次に、有機EL素子を構成する各層の材料及び形成方法について、より具体的に説明する。
【0122】
<基板>
基板は、有機EL素子を製造する工程において化学的に変化しない材料が好適に用いられ、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、及びシリコン基板、並びにこれらを積層したものなどが用いられる。前記基板としては、市販のものが使用可能であり、また公知の方法により製造することができる。
【0123】
<陽極>
陽極は、陽極を通して発光層からの光を取出す構成の有機EL素子の場合、透明又は半透明の電極が用いられる。透明電極又は半透明電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属などの薄膜を用いることができ、光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、及び銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0124】
陽極には、光を反射する材料を用いてもよく、該材料としては、仕事関数3.0eV以上の金属、金属酸化物、金属硫化物が好ましい。
【0125】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができ、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0126】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、及び酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系化合物、スターバースト型アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、及びポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0127】
正孔注入層の成膜方法としては、例えば正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、前述した有機溶媒等を用いてもよい。
【0128】
溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、ノズルコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。
【0129】
正孔注入層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなるので好ましくない。従って正孔注入層の膜厚は、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0130】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリフルオレン誘導体、芳香族アミン残基を有する高分子化合物などを挙げることができる。
【0131】
これらの中で正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリフルオレン誘導体、芳香族アミン残基を有する高分子化合物が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリフルオレン誘導体、芳香族アミン残基を有する高分子化合物である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0132】
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
【0133】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、前述した有機溶媒等を用いてもよい。
【0134】
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔中注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができ、長寿命化の観点からは、前述した有機層形成工程と同様の雰囲気中において成膜することが好ましい。
【0135】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0136】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚は、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0137】
<発光層>
発光層に含まれる材料としては、前述の発光性有機化合物が挙げられる。該発光層は、該発光性有機化合物と前記ドーパントとの組成物を含んでいてもよい。
なお、このような発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0138】
発光層の成膜方法としては、前述したように、発光材料を含む溶液からの成膜によって形成される。溶液からの成膜に用いる溶媒としては、前述した有機溶媒等を用いてもよい。
【0139】
発光材料を含む溶液を塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法及びノズルコート法などのコート法、並びにグラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。パターン形成や多色の塗分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法などの印刷法が好ましい。
【0140】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0141】
これらのうち、電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0142】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子の電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、又は溶液若しくは溶融状態からの成膜を挙げることができ、高分子の電子輸送材料では溶液又は溶融状態からの成膜を挙げることができる。なお溶液又は溶融状態からの成膜する場合には、高分子バインダーを併用してもよい。溶液から電子輸送層を成膜する方法としては、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する方法と同様の成膜法を挙げることができ、前述した隣接層形成工程と同様の雰囲気中において成膜することが好ましい。
【0143】
電子輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0144】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうちの1種類以上含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、又はこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、及び炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、例えばLiF/Caなどを挙げることができる。電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。
電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0145】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す有機EL素子では、発光層からの光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。
陰極には、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びIII−B族金属を用いることができる。陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金を挙げることができる。また、陰極としては導電性金属酸化物及び導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。
具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、及びIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお、陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお、電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0146】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0147】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【0148】
<絶縁層>
絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料などを挙げることができる。膜厚2nm以下の絶縁層を設けた有機EL素子としては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けたもの、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けたものを挙げることができる。
【0149】
以上説明した有機EL素子は、曲面状や平面状の照明装置、例えばスキャナの光源として用いられる面状光源、及び表示装置に好適に用いることができる。
【0150】
有機EL素子を備える表示装置としては、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、及び液晶表示装置などを挙げることができる。なお有機EL素子は、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置において、各画素を構成する発光素子として用いられ、セグメント表示装置において、各セグメントを構成する発光素子として用いられ、ドットマトリックス表示装置、及び液晶表示装置において、バックライトとして用いられる。
【実施例】
【0151】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0152】
有機溶媒中の臭素原子の定量分析方法
有機溶媒に含まれる臭素原子は下記の方法で定量した。
有機溶媒20mgをボードに秤り取り、該ボードを自動試料燃焼装置(三菱化学アナリテック社製「AQF−100」)に導入し、溶媒を酸素雰囲気下で燃焼し、生成物を自動試料燃焼装置に備え付けられた吸収液に溶解させて回収した後、該吸収液をイオンクロマトグラフ(Dionex社製「DX−500」)で測定し、有機溶媒中に含まれる臭素原子の量を測定した。
【0153】
イオンクロマトグラフの測定条件は、カラムはDionex社製「IonPac AS−17」を使用し、溶離液は10mMの水酸化カリウム(KOH)水溶液を用い、溶離液の流速は1.0ml/minとした。
【0154】
実施例1
(有機半導体素子用液状組成物1の製造)
有機溶媒としてシクロへキシルベンゼン(Acros社製、98%グレード)及び4−メチルアニソール(AlfaAeser社製、99%グレード)を用いた。シクロヘキシルベンゼン中に含まれる臭素原子の量を測定したところ、260重量ppmの臭素原子が検出された。一方、4−メチルアニソール中に含まれる臭素原子の量を測定したところ、検出限界の10重量ppm未満であった。シクロヘキシルベンゼン中のハロゲン化合物の量を低減する工程として、下記減圧蒸留を行った。
【0155】
1L丸底フラスコに、磁気攪拌子、ト字管、リービッヒ冷却器、二又アダプター、受器(200mL、及び500mL)、温度計(塔頂温測定)、圧力計を備えた減圧一定装置、真空ポンプを備えた減圧蒸留装置を、温度調節器の付いたオイルバスに設置した。397gのシクロヘキシルベンゼンを仕込み、室温下、0.75kPaまで減圧した。圧力を0.7〜0.8kPaに保ったまま、オイルバスを120℃まで加熱し、105gを初留分とし、191gを本留分として得た。本留分留出時の圧力は0.71〜0.73kPa、塔頂温は87.0〜89.0℃であった。本留分留出後、室温まで冷却した後、大気圧に復圧した。釜残の量は88gであった。
【0156】
蒸留工程後のシクロヘキシルベンゼン中の臭素原子の量は67重量ppmであった。
【0157】
ハロゲン化合物の量を低減する工程を経て得られたシクロヘキシルベンゼン4mLと、4−メチルアニソール1mLをあらかじめ混合し、混合溶媒を得た。この混合溶媒に、青色発光高分子材料1の濃度が1.9wt%となるように青色発光高分子材料1を加え、大気雰囲気下、室温にて溶解し、有機半導体素子用液状組成物1を得た。
【0158】
実施例2
(有機半導体素子用液状組成物2の製造)
実施例1と同様のハロゲン化合物の量を低減する工程を経て得られたシクロヘキシルベンゼン4mLと、4−メチルアニソール1mLをあらかじめ混合し、得られた混合溶媒を得た。この混合溶媒に、緑色発光高分子材料1の濃度が2.0wt%となるように緑色発光高分子材料1を加え、大気雰囲気下、室温にて溶解し、有機半導体素子用液状組成物2を得た。
【0159】
実施例3
(有機半導体素子用液状組成物3の製造)
実施例1と同様の方法にて得られたシクロヘキシルベンゼン4mLと、4−メチルアニソール1mLをあらかじめ混合し、得られた混合溶媒を得た。この混合溶媒に、赤色発光高分子材料1の濃度が1.9wt%となるように赤色発光高分子材料1を加え、大気雰囲気下、室温にて溶解し、有機半導体素子用液状組成物3を得た。
【0160】
実施例4
(有機半導体素子用液状組成物1を用いた有機EL素子の作製)
以下の構成の有機EL素子を作製した。
「ガラス基板/ITO(150nm)/Baytron P(65nm)/高分子化合物1(20nm)/青色発光高分子材料1(60nm)/Ba(5nm)/Al(80nm)」
【0161】
スパッタ法により厚みが150nmのITO膜(陽極)が形成されたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルク社製;Baytorn P)の懸濁液をスピンコート法により塗布し、厚みが65nmの薄膜を形成し、さらにホットプレート上で200℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔注入層を得た。なお正孔注入層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程は大気雰囲気下において行った。
【0162】
次に、キシレンに正孔輸送材料である高分子化合物1を溶解させ、キシレン溶液1を作製した。このキシレン溶液1における高分子化合物1の濃度を0.8重量%とした。次に大気雰囲気下において、キシレン溶液1をスピンコート法により正孔注入層上に塗布し、膜厚が20nmの正孔輸送層用の薄膜を形成し、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された窒素雰囲気下において180℃、1時間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔輸送層を得た。
【0163】
次に、実施例1で製造した有機半導体素子用液状組成物1を、大気雰囲気下において、スピンコート法により正孔輸送層上に塗布し、膜厚が60nmの発光層用の薄膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された雰囲気下において130℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、発光層を得た。なお正孔輸送層及び発光層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程における圧力は大気圧とした。
【0164】
次に1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、バリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでアルミニウムを約80nmの厚さで蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0165】
作製した有機EL素子は、青色発光し、最大電流効率は4.9cd/Aであった。また、初期輝度5,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)は、60時間であった。
【0166】
実施例5
(有機半導体素子用液状組成物2を用いた有機EL素子の作製)
以下の構成の有機EL素子を作製した。
「ガラス基板/ITO(150nm)/Baytron P(65nm)/高分子化合物1(20nm)/緑色発光高分子材料1(80nm)/Ba(5nm)/Al(80nm)」
【0167】
スパッタ法により厚みが150nmのITO膜(陽極)が形成されたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルク社製;Baytorn P)の懸濁液をスピンコート法により塗布し、厚みが65nmの薄膜を形成し、さらにホットプレート上で200℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔注入層を得た。なお正孔注入層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程は大気雰囲気下において行った。
【0168】
次に、キシレンに正孔輸送材料である高分子化合物1を溶解させ、キシレン溶液1を作製した。このキシレン溶液1における高分子化合物1の濃度を0.8重量%とした。次に大気雰囲気下において、キシレン溶液1をスピンコート法により正孔注入層上に塗布し、膜厚が20nmの正孔輸送層用の薄膜を形成し、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された窒素雰囲気下において180℃、1時間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔輸送層を得た。
【0169】
次に、実施例2で製造した有機半導体素子用液状組成物2を、大気雰囲気下において、スピンコート法により正孔輸送層上に塗布し、膜厚が80nmの発光層用の薄膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された雰囲気下において130℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、発光層を得た。なお正孔輸送層及び発光層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程における圧力は大気圧とした。
【0170】
次に1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、バリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでアルミニウムを約80nmの厚さで蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0171】
作製した有機EL素子は、緑色発光し、最大電流効率は10.3cd/Aであった。また、初期輝度8,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)は、367時間であった。
【0172】
実施例6
(有機半導体素子用液状組成物3を用いた有機EL素子の作製)
以下の構成の有機EL素子を作製した。
「ガラス基板/ITO(150nm)/Baytron P(65nm)/高分子化合物1(20nm)/赤色発光高分子材料1(80nm)/Ba(5nm)/Al(80nm)」
【0173】
スパッタ法により厚みが150nmのITO膜(陽極)が形成されたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルク社製;Baytorn P)の懸濁液をスピンコート法により塗布し、厚みが65nmの薄膜を形成し、さらにホットプレート上で200℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔注入層を得た。なお正孔注入層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程は大気雰囲気下において行った。
【0174】
次に、キシレンに正孔輸送材料である高分子化合物1を溶解させ、キシレン溶液1を作製した。このキシレン溶液1における高分子化合物1の濃度を0.8重量%とした。次に大気雰囲気下において、キシレン溶液1をスピンコート法により正孔注入層上に塗布し、膜厚が20nmの正孔輸送層用の薄膜を形成し、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された窒素雰囲気下において180℃、1時間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔輸送層を得た。
【0175】
次に、実施例3で製造した有機半導体素子用液状組成物3を、大気雰囲気下において、スピンコート法により正孔輸送層上に塗布し、膜厚が80nmの発光層用の薄膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された雰囲気下において130℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、発光層を得た。なお正孔輸送層及び発光層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程における圧力は大気圧とした。
【0176】
次に1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、バリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでアルミニウムを約80nmの厚さで蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0177】
作製した有機EL素子は、赤色発光し、最大電流効率は21.0cd/Aであった。また、初期輝度8,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)は、354時間であった。
【0178】
比較例1
(有機半導体素子用液状組成物4の製造)
シクロヘキシルベンゼン中のハロゲン化合物を低減しない以外は、実施例1と同じ操作を行い有機半導体素子用液状組成物4を得た。
【0179】
比較例2
(有機半導体素子用液状組成物5の製造)
シクロヘキシルベンゼン中のハロゲン化合物を低減しない以外は、実施例2と同じ操作を行い、有機半導体素子用液状組成物5を得た。
【0180】
比較例3
(有機半導体素子用液状組成物6の製造)
シクロヘキシルベンゼン中のハロゲン化合物を低減しない以外は、実施例3と同じ操作を行い、有機半導体素子用液状組成物6を得た。
【0181】
比較例4
(有機半導体素子用液状組成物4を用いた有機EL素子の作製)
以下の構成の有機EL素子を作製した。
「ガラス基板/ITO(150nm)/Baytron P(65nm)/高分子化合物1(20nm)/青色発光高分子材料1(60nm)/Ba(5nm)/Al(80nm)」
【0182】
スパッタ法により厚みが150nmのITO膜(陽極)が形成されたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルク社製;Baytorn P)の懸濁液をスピンコート法により塗布し、厚みが65nmの薄膜を形成し、さらにホットプレート上で200℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔注入層を得た。なお正孔注入層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程は大気雰囲気下において行った。
【0183】
次に、キシレンに正孔輸送材料である高分子化合物1を溶解させ、キシレン溶液1を作製した。このキシレン溶液1における高分子化合物1の濃度を0.8重量%とした。次に大気雰囲気下において、キシレン溶液1をスピンコート法により正孔注入層上に塗布し、膜厚が20nmの正孔輸送層用の薄膜を形成し、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された窒素雰囲気下において180℃、1時間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔輸送層を得た。
【0184】
次に、比較例1で製造した有機半導体素子用液状組成物4を、大気雰囲気下において、スピンコート法により正孔輸送層上に塗布し、膜厚が60nmの発光層用の薄膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された雰囲気下において130℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、発光層を得た。なお正孔輸送層及び発光層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程における圧力は大気圧とした。
【0185】
次に1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、バリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでアルミニウムを約80nmの厚さで蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0186】
作製した有機EL素子は、青色発光し、最大電流効率は4.7cd/Aであった。また、初期輝度5,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)は、48時間であった。
【0187】
比較例5
(有機半導体素子用液状組成物5を用いた有機EL素子の作製)
以下の構成の有機EL素子を作製した。
「ガラス基板/ITO(150nm)/Baytron P(65nm)/高分子化合物1(20nm)/緑色発光高分子材料1(80nm)/Ba(5nm)/Al(80nm)」
【0188】
スパッタ法により厚みが150nmのITO膜(陽極)が形成されたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルク製;Baytorn P)の懸濁液をスピンコート法により塗布し、厚みが65nmの薄膜を形成し、さらにホットプレート上で200℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔注入層を得た。なお正孔注入層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程は大気雰囲気下において行った。
【0189】
次に、キシレンに正孔輸送材料である高分子化合物1を溶解させ、キシレン溶液1を作製した。このキシレン溶液1における高分子化合物1の濃度を0.8重量%とした。次に大気雰囲気下において、キシレン溶液1をスピンコート法により正孔注入層上に塗布し、膜厚が20nmの正孔輸送層用の薄膜を形成し、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された窒素雰囲気下において180℃、1時間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔輸送層を得た。
【0190】
次に、比較例2で製造した有機半導体素子用液状組成物5を、大気雰囲気下において、スピンコート法により正孔輸送層上に塗布し、膜厚が80nmの発光層用の薄膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された雰囲気下において130℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、発光層を得た。なお正孔輸送層及び発光層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程における圧力は大気圧とした。
【0191】
次に1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、バリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでアルミニウムを約80nmの厚さで蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0192】
作製した有機EL素子は、緑色発光し、最大電流効率は10.6cd/Aであった。また、初期輝度8,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)は、289時間であった。
【0193】
比較例6
(有機半導体素子用液状組成物6を用いた有機EL素子の作製)
以下の構成の有機EL素子を作製した。
「ガラス基板/ITO(150nm)/Baytron P(65nm)/高分子化合物1(20nm)/赤色発光高分子材料1(80nm)/Ba(5nm)/Al(80nm)」
【0194】
スパッタ法により厚みが150nmのITO膜(陽極)が形成されたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルク製;Baytorn P)の懸濁液をスピンコート法により塗布し、厚みが65nmの薄膜を形成し、さらにホットプレート上で200℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔注入層を得た。なお正孔注入層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程は大気雰囲気下において行った。
【0195】
次に、キシレンに正孔輸送材料である高分子化合物1を溶解させ、キシレン溶液1を作製した。このキシレン溶液1における高分子化合物1の濃度を0.8重量%とした。次に大気雰囲気下において、キシレン溶液1をスピンコート法により正孔注入層上に塗布し、膜厚が20nmの正孔輸送層用の薄膜を形成し、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された窒素雰囲気下において180℃、1時間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔輸送層を得た。
【0196】
次に、比較例3で製造した有機半導体素子用液状組成物6を、大気雰囲気下において、スピンコート法により正孔輸送層上に塗布し、膜厚が80nmの発光層用の薄膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された雰囲気下において130℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、発光層を得た。なお正孔輸送層及び発光層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程における圧力は大気圧とした。
【0197】
次に1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、バリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでアルミニウムを約80nmの厚さで蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0198】
作製した有機EL素子は、赤色発光し、最大電流効率は20.2cd/Aであった。また、初期輝度8,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)は、197時間であった。
【0199】
実施例7
(有機半導体素子用液状組成物7の製造)
有機溶媒としてシクロへキシルベンゼン(Acros社製、98%グレード)及び4−メチルアニソール(AlfaAeser社製、99%グレード)を用いた。シクロヘキシルベンゼンは、実施例1の方法でハロゲン化合物の量を低減した。4−メチルアニソール中のハロゲン化合物の量を低減する工程として、下記減圧蒸留を行った。
【0200】
1L丸底フラスコに、磁気攪拌子、ト字管、リービッヒ冷却器、二又アダプター、受器(200mL、及び500mL)、温度計(塔頂温測定)、圧力計を備えた減圧一定装置、真空ポンプを備えた減圧蒸留装置を、温度調節器の付いたオイルバスに設置した。401gの4−メチルアニソール(AlfaAeser社製、99%グレード)を仕込み、室温下、2.5kPaまで減圧した。圧力を2.0〜2.5kPaに保ったまま、オイルバスを94℃まで加熱し、96gを初留分とし、195gを本留分として得た。本留分留出時の圧力は2.0kPa、塔頂温は65.0〜65.5℃であった。本留分留出後、室温まで冷却した後、大気圧に復圧した。釜残の量は105gであった。
【0201】
蒸留工程後の4−メチルアニソール中の臭素原子の量は、検出下限の10重量ppm未満であった。
【0202】
実施例1の方法でハロゲン化合物の量を低減したシクロヘキシルベンゼン4mLと、ハロゲン化合物の量を低減する工程を経て得られた4−メチルアニソール1mLをあらかじめ混合し、混合溶媒を得た。この混合溶媒に、緑色発光高分子材料1の濃度が2.0wt%となるように緑色発光高分子材料1を加え、大気雰囲気下、室温にて溶解し、有機半導体素子用液状組成物7を得た。
【0203】
実施例8
(有機半導体素子用液状組成物8の製造)
実施例1と同様の方法にて得られたシクロヘキシルベンゼン4mLと、実施例7と同様の方法にて得られた4−メチルアニソール1mLをあらかじめ混合し、得られた混合溶媒を得た。この混合溶媒に、赤色発光高分子材料1の濃度が1.9wt%となるように赤色発光高分子材料1を加え、大気雰囲気下、室温にて溶解し、有機半導体素子用液状組成物8を得た。
【0204】
実施例9
(有機半導体素子用液状組成物7を用いた有機EL素子の作製)
以下の構成の有機EL素子を作製した。
「ガラス基板/ITO(150nm)/Baytron P(65nm)/高分子化合物1(20nm)/緑色発光高分子材料1(80nm)/Ba(5nm)/Al(80nm)」
【0205】
スパッタ法により厚みが150nmのITO膜(陽極)が形成されたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルク社製;Baytorn P)の懸濁液をスピンコート法により塗布し、厚みが65nmの薄膜を形成し、さらにホットプレート上で200℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔注入層を得た。なお正孔注入層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程は大気雰囲気下において行った。
【0206】
次に、キシレンに正孔輸送材料である高分子化合物1を溶解させ、キシレン溶液1を作製した。このキシレン溶液1における高分子化合物1の濃度を0.8重量%とした。次に大気雰囲気下において、キシレン溶液1をスピンコート法により正孔注入層上に塗布し、膜厚が20nmの正孔輸送層用の薄膜を形成し、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された窒素雰囲気下において180℃、1時間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔輸送層を得た。
【0207】
次に、実施例7で製造した有機半導体素子用液状組成物7を、大気雰囲気下において、スピンコート法により正孔輸送層上に塗布し、膜厚が80nmの発光層用の薄膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された雰囲気下において130℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、発光層を得た。なお正孔輸送層及び発光層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程における圧力は大気圧とした。
【0208】
次に1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、バリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでアルミニウムを約80nmの厚さで蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0209】
作製した有機EL素子は、緑色発光し、最大電流効率は10.7cd/Aであった。また、初期輝度8,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)は、395時間であった。
【0210】
実施例10
(有機半導体素子用液状組成物8を用いた有機EL素子の作製)
以下の構成の有機EL素子を作製した。
「ガラス基板/ITO(150nm)/Baytron P(65nm)/高分子化合物1(20nm)/赤色発光高分子材料1(80nm)/Ba(5nm)/Al(80nm)」
【0211】
スパッタ法により厚みが150nmのITO膜(陽極)が形成されたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(スタルク社製;Baytorn P)の懸濁液をスピンコート法により塗布し、厚みが65nmの薄膜を形成し、さらにホットプレート上で200℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔注入層を得た。なお正孔注入層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程は大気雰囲気下において行った。
【0212】
次に、キシレンに正孔輸送材料である高分子化合物1を溶解させ、キシレン溶液1を作製した。このキシレン溶液1における高分子化合物1の濃度を0.8重量%とした。次に大気雰囲気下において、キシレン溶液1をスピンコート法により正孔注入層上に塗布し、膜厚が20nmの正孔輸送層用の薄膜を形成し、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された窒素雰囲気下において180℃、1時間加熱することによって薄膜を焼成し、正孔輸送層を得た。
【0213】
次に、実施例8で製造した有機半導体素子用液状組成物8を、大気雰囲気下において、スピンコート法により正孔輸送層上に塗布し、膜厚が80nmの発光層用の薄膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度が体積比で、10ppm以下に制御された雰囲気下において130℃、10分間加熱することによって薄膜を焼成し、発光層を得た。なお正孔輸送層及び発光層の形成において、薄膜の形成工程及び焼成工程における圧力は大気圧とした。
【0214】
次に1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、バリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでアルミニウムを約80nmの厚さで蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0215】
作製した有機EL素子は、赤色発光し、最大電流効率は21.4cd/Aであった。また、初期輝度8,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)は、373時間であった。
【0216】
合成例
(正孔輸送材料である高分子化合物2の合成)
不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(5.20g)、ビス(4−ブロモフェニル)−(4−セカンダリブチルフェニル)−アミン(4.50g)、酢酸パラジウム(2.2mg)、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン(15.1mg)、第四級アンモニウムクロライド触媒の0.74Mトルエン溶液(Aliquat336)(0.91g、アルドリッチ製)、トルエン(70ml)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2重量モル炭酸ナトリウム水溶液(19ml)を滴下し、4時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸(121mg)を加え、さらに3時間還流させた。次いでジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え80℃で4時間撹拌した。冷却後、水(60ml)で3回、3重量%酢酸水溶液(60ml)で3回、水(60ml)で3回洗浄し、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール(3L)に滴下し、3時間撹拌した後、得られた固体をろ取し乾燥させた。得られた高分子化合物2の収量は5.25gであった。
【0217】
高分子化合物2のポリスチレン換算数平均分子量は、1.2×105であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は2.6×105であった。
【0218】
実施例11及び比較例7
青色高分子発光材料1の代わりにサメイション社製青色高分子発光材料「Lumation BP361」を用いる以外は実施例1と同様にして有機半導体素子用液状組成物を製造し、該有機半導体素子用液状組成物を用い、高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いる以外は実施例4と同様に有機EL素子を製造する(実施例11)。また、青色高分子発光材料1の代わりにサメイション社製青色高分子発光材料「Lumation BP361」を用いる以外は比較例1と同様にして有機半導体素子用液状組成物を製造し、該有機半導体素子用液状組成物を用い、高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いる以外は比較例4と同様に有機EL素子を製造する(比較例7)。
【0219】
作製される素子は、ともに青色発光する。そして、それらの有機EL素子の特性を実施例4と同様にして測定すると、初期輝度5,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)について、実施例11の有機EL素子には比較例7の有機EL素子と比較して顕著な向上が観察される。
【0220】
実施例12及び比較例8
緑色高分子発光材料1の代わりにサメイション社製緑色高分子発光材料「Lumation GP1300」を用いる以外は実施例2と同様にして有機半導体素子用液状組成物を製造し、該有機半導体素子用液状組成物を用い、高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いる以外は実施例5と同様に有機EL素子を製造する(実施例12)。また、緑色高分子発光材料1の代わりにサメイション社製緑色高分子発光材料「Lumation GP1300」を用いる以外は比較例2と同様にして有機半導体素子用液状組成物を製造し、該有機半導体素子用液状組成物を用い、高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いる以外は比較例5と同様に有機EL素子を製造する(比較例8)。
【0221】
作製される素子は、ともに緑色発光する。そして、それらの有機EL素子の特性を実施例5と同様にして測定すると、初期輝度8,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)について、実施例12の有機EL素子には比較例8の有機EL素子と比較して顕著な向上が観察される。
【0222】
実施例13及び比較例9
赤色高分子発光材料1の代わりにサメイション社製赤色高分子発光材料「Lumation RP158」を用いる以外は実施例3と同様にして有機半導体素子用液状組成物を製造し、該有機半導体素子用液状組成物を用い、高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いる以外は実施例6と同様に有機EL素子を製造する(実施例13)。また、赤色高分子発光材料1の代わりにサメイション社製赤色高分子発光材料「Lumation RP158」を用いる以外は比較例3と同様にして有機半導体素子用液状組成物を製造し、該有機半導体素子用液状組成物を用い、高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いる以外は比較例6と同様に有機EL素子を製造する(比較例9)。
【0223】
作製される素子は、ともに赤色発光する。そして、それらの有機EL素子の特性を実施例6と同様にして測定すると、初期輝度8,000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の50%となるまでの時間(輝度半減寿命)について、実施例13の有機EL素子には比較例9の有機EL素子と比較して顕著な向上が観察される。
【符号の説明】
【0224】
1、1’…有機EL素子、
2…基板、
3…陽極、
4…第1の有機層、
5…第2の有機層、
6…有機層、
6’…第3の有機層、
7…陰極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1気圧、25℃において固体である有機化合物を、1気圧、25℃において液体である有機溶媒であって、フッ素を含む化合物の濃度、塩素を含む化合物の濃度、臭素を含む化合物の濃度及びヨウ素を含む化合物の濃度のうち少なくとも1つの濃度が100重量ppm以下である有機溶媒に溶解させる工程を包含する有機半導体素子用液状組成物の製造方法。
【請求項2】
1気圧、25℃において固体である有機化合物を、1気圧、25℃において液体である有機溶媒であって、臭素を含む化合物の濃度が100重量ppm以下である有機溶媒に溶解させる工程を包含する有機半導体素子用液状組成物の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒は、
フッ素を含む化合物を含む有機溶媒中のフッ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のフッ素を含む化合物の濃度に低減する工程、
塩素を含む化合物を含む有機溶媒中の塩素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の塩素を含む化合物の濃度に低減する工程、
臭素を含む化合物を含む有機溶媒中の臭素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度に低減する工程、
又は、ヨウ素を含む化合物を含む有機溶媒中のヨウ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のヨウ素を含む化合物の濃度に低減する工程を
包含する方法によって得られたものである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒は、
臭素を含む化合物を含む有機溶媒中の臭素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度に低減する工程を
包含する方法によって得られたものである請求項2に記載の方法。
【請求項5】
フッ素を含む化合物を含む有機溶媒中のフッ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のフッ素を含む化合物の濃度に低減する工程、
塩素を含む化合物を含む有機溶媒中の塩素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の塩素を含む化合物の濃度に低減する工程、
臭素を含む化合物を含む有機溶媒中の臭素を含む化合物の量を、100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度に低減する工程、
又は、ヨウ素を含む化合物を含む有機溶媒中のヨウ素を含む化合物の量を、100重量ppm以下のヨウ素を含む化合物の濃度に低減する工程が
蒸留工程である請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機化合物が、蛍光を発光する有機化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記有機化合物が、燐光を発光する有機化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機化合物が、高分子化合物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が、炭素、水素、酸素及び窒素からなる群から選ばれる2種以上の元素からなる化合物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記有機化合物を前記有機溶媒に溶解させる前記工程において、得られる液状組成物の全重量に対して、前記有機化合物の量が0.01wt%以上、5.0wt%以下になるように前記有機化合物を前記有機溶媒に溶解させる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の電極と、第2の電極と、該第1の電極及び該第2の電極間に設けられた有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該有機層が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法で得られた液状組成物を第1の電極上に塗布して形成された層である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法により製造された有機半導体素子用液状組成物。
【請求項13】
前記有機溶媒がメシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、デカリン、メチルアニソール、ジフェニルエーテル及びフェノシキトルエンからなる群から選択される少なくともひとつを含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒がシクロヘキシルベンゼンを含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記有機化合物が、蛍光及び/又は燐光を発光する発光性有機化合物、又は蛍光及び/又は燐光を発光する発光性有機化合物と該発光性有機化合物の発光機能を補助するドーパントである請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記有機溶媒は、第一の有機溶媒及び第二の有機溶媒の混合溶媒であり、
100ppmを超える臭素を含む化合物の濃度を有する第一の有機溶媒中の臭素を含む化合物の濃度を、100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度に低減する工程;及び
得られた有機溶媒を100重量ppm以下の臭素を含む化合物の濃度を有する第二の有機溶媒と混合する工程;
を包含する方法によって得られたものである請求項2〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第一の有機溶媒がシクロヘキシルベンゼンを含み、前記第二の有機溶媒が4−メチルアニソールを含む請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−165661(P2011−165661A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5994(P2011−5994)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】