説明

有機性原料のゲル状化加工方法

【課題】 有機性原料の食品加工残渣物等を次加工が行いやすく本来の成分をできるだけ保持し、原料に含まれる残留栄養成分や食物繊維を容易に有効利用できる形に変化させ、これらを連続的に低コストで可能とする方法を提供する。
【解決手段】 有機性原料を温度130℃以上210℃以下、圧力5気圧以上13気圧以下の条件で60秒以上360秒以下撹拌、混練、圧縮磨り潰しを行うことで添加物を加えず一工程で連続的に餅状(ゲル状)に加工する加工方法および装置による。また、有機性原料は、含水率60%〜85%のおからである前記加工方法または加工装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性原料であり比較的流動性のある食品残渣等を有効利用するために組織をわずかに変化させ本来の成分をできるだけ損なうことが無く有効利用しやすい形に加工するための加工方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性原料であり比較的流動性のある食品残渣等で代表されるものにおからがあり、おからの処理方法として「おからとキトサンを酸性下に混合し、次いで中和し直径0.5〜30mmの子孔より押し出してなるおから組織化物」の製法が特開平6−22717号公報(特許文献1)が公知である。
【0003】
また、「大豆由来の水不溶性おからを、100℃を超える300℃までの温度で、かつ圧力がその温度における水の蒸気圧よりも高い圧力状態にある高温高圧水と、100kDa〜1000kDaの質量のおから分解生成物が得られるのに必要な時間接触させておからを部分分解することを特徴とする水溶性おから分解物の製造方法」が特開2002−112724号公報(特許文献2)において開示されている。
【特許文献1】特開平6−22717号公報
【特許文献2】特開2002−112724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機性原料である食品加工残渣として大量に発生するおからやじゃがいもの表皮部やさとうきびの絞り粕やビートの絞り粕等は、その残留栄養成分や食物繊維が豊富にあり有効な再利用が望まれているにもかかわらず活用を見出せず廃棄処分されているのが現状である。例えば前記おからは、豆腐製造副産物として古来より食用として活用されて来ましたが、近年大規模の工場生産が進むにつれて大量に発生し特に都市部ではそのおからは醗酵が早いため産業廃棄物として取り扱われて来ております。おからは食物繊維の代表格として食用及び家畜の飼料として活用がされて来ておりましたが、近年の食文化の変化により、醗酵が早く保存性が利かず食感の悪いことから食品材料としては毛嫌いされてきておるとともに、家畜の飼育環境が農村部郊外へと移り、腐敗等の品質変化が短時間で起きる為、長距離の輸送はできなく利用される量も限られたものである。
【0005】
そこで、このような有機性原料である食品加工残渣物等を次加工が行いやすく本来の成分をできるだけ保持し、原料に含まれる残留栄養成分や食物繊維を容易に有効利用できる形に変化させ、これらを連続的に低コストで可能とすることを目的とするものである。
【0006】
前記した特許文献1に示される装置は、おからとキトサンを酸性下に混合して中和する工程やエクストルーダーにより処理する工程があり、煩雑な作業と高価な装置が必要とされる。また、特許文献2に開示された方法は、バッチ式を前提としたものであり連続作業には不都合があり高温高圧水が必要とされ反応接触時間等の精密な管理が要求される問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、有機性原料を添加物を加えず一工程で連続的に餅状(ゲル状)に加工する加工方法を提案したものである。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、有機性原料を温度130℃以上210℃以下、圧力5気圧以上13気圧以下の条件で60秒以上360秒以下撹拌、混練、圧縮磨り潰しを行うことで添加物を加えず一工程で連続的に餅状(ゲル状)に加工する加工方法を提案したものである。
【0009】
さらに、請求項3記載の発明は、ケーシング内に設けた一つのスパイラル羽根を有する回転可能な回転軸と、該スパイラル羽根の回転により被処理物が移動する流れの上流部に設けられる被処理物投入口と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの下流部に設けられる排出口とを有し、スパイラル羽根終端部と排出口の間には被処理物を移動させるとともに撹拌圧縮磨り潰しを行うパドル部が設けられ、排出口部は被処理物の排出隙間寸法を調整し圧力調節可能とすると共に、前記スパイラル羽根の近傍のケーシングに、温度調節可能なヒーターを設けたことを特徴とする前記0007欄または0008欄のいずれかに記載の加工を連続的に行う有機性原料の加工装置を提案したものである。
【0010】
さらにまた、請求項4記載の発明は、有機性原料は、豆腐製造過程において発生する含水率60%〜85%のおからである前記0007欄、0008欄、0009欄いずれかに記載の加工方法または加工装置を提案したものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の加工方法によれば、有機性原料である食品加工残渣物等を添加物を加えずに加工するため、添加物を加える工程が不要であるとともに、原料の本来の成分を損なうことや変化させることが少なく、容易に安価な加工が可能である。また、一工程で連続的に加工するため、食品加工残渣物が発生する加工ライン上に組み込み可能であり、餅状(ゲル状)に加工するため後工程での取り扱い性が向上する。
【0012】
また、請求項3の発明の加工装置によると、ケーシング内に設けたスパイラル羽根を有する回転軸により、投入口より投入された被処理物が連続的に移動されるとともに、排出口部は隙間を調節することで被処理物が通過する抵抗力が変化しケーシング内に発生する圧力を調整可能であり、スパイラル羽根の回転数を調整することと共用するとさらに精密な圧力調整が可能である。さらにスパイラルのピッチや内径を被処理物の種類や調整目的等に合わせて変更することでさらに対応範囲が広くなる。
【0013】
さらに、スパイラル羽根近傍のケーシングに温度調節可能なヒーターを設けたことで、スパイラル羽根により圧縮混錬されることにより発生する発熱のみに頼ることなく正確に温度管理が可能である。さらにスパイラル羽根により被処理物がケーシング内を適度に混錬されるとともに移動することで、満遍なくヒーターの温度を被処理物に伝導させることができる。
【0014】
また、スパイラル羽根終端部と排出口の間に被処理物を移動させると共に撹拌磨り潰しをするパドル部が設けられたことにより、スパイラル羽根によりある程度圧縮混錬された被処理物をさらに混錬磨り潰しして均一にでき、パドル部の長さや径を変更することで被処理物の装置内に滞留する時間や温度を調節することが可能である。また、パドル部の撹拌羽根を変更することで、排出量や排出抵抗等を変更することが可能である。
【0015】
このような構成とすることで、装置全体をコンパクトに構成することができる。これにより既存の製造ラインに容易に組み込み可能となり、被処理物を一時保管や移動等をすることがなく効率的に処理が可能となった。また、バッチ式ではなく一工程で処理ができるため工程が単純化され、ランニングコストも低く抑えることができる。
【0016】
請求項4の発明において、有機性原料は含水率60%〜85%のおからである場合、前記方法で加工することで、水を加えることなくおからが含有する大豆蛋白質及び食物繊維が加水分解及びα化により可溶化され粘性を持った餅状(ゲル状)となるため、可溶化成分が向上することで水に溶けやすく、食品の添加物や増量剤として活用が図れるとともに水不溶性多糖類が減少することでおから特有のざらざらした食感がソフトで口当たりの良い食感となる。また、pHが6.5前後の中性で乾物糖度が向上するため、多種多様な食品等に利用可能となり、乾燥させ利用時に水で戻すことも可能で保存性の良い栄養価の高い食物繊維を有した食材料として利用範囲が飛躍的に拡大し、廃棄物扱いされていたおからが有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。図1はこの発明を行うための一実施例を示す装置の断面図である。
【0018】
有機性原料であり食品加工残渣として大量に発生するおからやじゃがいもの表皮部、さとうきびの絞り粕、ビートの絞り粕、果物類の絞り粕等は、その残留栄養成分や食物繊維が豊富にあり有効な再利用が望まれているにもかかわらず活用を見出せず廃棄処分されているのが現状であった。
【0019】
有機性原料である食品加工残渣には、蛋白質や食物繊維を多く含むものが多数ある。本発明は、これら蛋白質や食物繊維を原料以外の添加物を加えずに水分調整のみで加水分解により、糖度及び可溶化成分を増やして、それら食品の機能性を向上させるもので、原料に含まれる残留栄養成分や食物繊維を容易に有効利用できる形態に変化させるものである。そして、これらが容易に生産ラインに組込みできるように連続作業が可能で、低コストでの導入ができるようにしたものである。
【0020】
また、有機性原料であり食品加工残渣の代表格であるおからは、様々な加工方法が提案されてきているが、添加物が必要であったり高額なエクストルーダーを基本とした加工方法であるため実用化が浸透していない現状である。
【0021】
これらを鑑みて本発明は行われており、発明者は最も効率よく有機性原料の機能性を向上させ有効利用できる形態に変化させることに適した条件であると共に、低コストで実現可能な条件を設定したもので、処理温度130℃以上210℃以下、圧力を5気圧以上13気圧以下の条件で保持時間を60秒以上360秒以下の各条件で被処理物を撹拌、混練、圧縮磨り潰しを行う。これにより有機性原料が含有する蛋白質及び食物繊維の一部が加水分解及びα化(膨軟化)により可溶化され粘性を持った餅状(ゲル状)に加工される。この際有機性原料の水分は60%〜85%に調節されていると加水分解に有効であり保持時間を調整することで加水分解率を調整することができる。
【0022】
図1において、前記条件で処理できる装置の一例を説明する。1は装置を駆動するモータであり、モータ1の出力軸に固着された駆動プーリ10から、Vベルト12を介して装置の入力軸13に固着された従動プーリ11に伝達され装置は作動する。
【0023】
伝達された動力は、スパイラル羽根2が固着されて回転可能に設けられた回転軸3に伝達される。被処理物がスパイラル羽根2の回転により移動する流れの上流部には被処理物を投入する投入口40が設けられていて、被処理物がスパイラル羽根2の回転により移動する流れの下流部には被処理物が排出される排出口6が設けられている。
【0024】
回転可能に設けられた回転軸3のスパイラル羽根2は、被処理物投入口40側が一定外径の円筒状で形成された第1搬送部41と、これに連続して排出口6側の中間部は排出口6に向かってテーパー状に外径が漸減した形状に形成された第2搬送部42と、さらにこれに連続して投入口40側のスパイラル羽根2外形より小径の一定外形である撹拌羽根70が形成されたパドル部7で構成されている。これらを覆うケーシング4内壁はスパイラル羽根2外径に沿うように近接して形成されている。
【0025】
投入口40より投入された被処理物は、投入口40下方の回転するスパイラル羽根2により排出口6側へ送られるとともに、スパイラル羽根ピッチの変化や排出口6に向かってテーパー状に外径が漸減した形状のスパイラル羽根により順次圧縮されると共に混錬・圧縮され排出口6側へ移動される。
【0026】
スパイラル羽根2近傍のケーシング4内に設けたヒーター5は、温度調節可能に制御されていて、移動する被処理物を通過中に所定の温度に加温する。スパイラル羽根2の作用により被処理物は、軸方向に平行にのみ移動することなく回転しながら移動するような作用をなすため、ヒーター5の熱が均一に作用することになる。
【0027】
前記排出口6部分は、ケーシング4側がパドル部7内径から回転軸3側にテーパー状に減径された部分を有し、さらに連続して回転軸3とわずかの隙間を持たせた一定外径部分と、これに連続してテーパー状に増径された形状に形成され、回転軸3側もこれに添うように形成されている。パドル部7の出口側の回転軸3とわずかの隙間を持たせた一定外径部分手前には、流量調整プレート61が回転軸3に挿入されて設けられ、該流量調整プレート61内径部分円周には複数の処理物通過溝が設けられていて、該溝の数や大きさをそれぞれの条件に合った圧力や流量の調節のために設定すると良い。出口側に設けた掻き出し羽根63は、回転軸3の排出口6部分の外周に放射状に設けてあり、排出された被処理物をケーシング4内から掻き飛ばすためのものである。
【0028】
処理圧力は、前記流量調整プレート61で調節可能であるとともに排出口6部分の隙間調節やスパイラル羽根2の回転数を調節することで容易に調整でき、スパイラル羽根のピッチの異なるものに変更することでも可能である。
【0029】
本例では、スパイラル羽根の形状を第1搬送部41と第2搬送部42のような異形形状としたが、同径のスパイラル羽根のみの形状でも良く、被処理物の所定の圧力と温度および保持時間が確保できる構成であれば良い。前記のように被処理物の種類により異なる処理条件の調整は、通過時間や通過量及び圧力を調節すると共にヒーターの温度を調節しながら排出させ処理を行う。
【0030】
排出口6直前の被処理物を混錬撹拌するパドル部7は、被処理物を混錬撹拌するための撹拌羽根70が回転軸芯を中心に放射状に且つ回転軸線方向に螺旋状に取付けてある。該撹拌羽根70の形状や配置位置を任意に選択することで、被処理物の種類による条件に合った混錬撹拌を行うとともに被処理物の排出抵抗を調節することで内部圧力の調節も可能である。また、パドル部7のケーシング4にはヒーター5が設けてあり、混錬撹拌されながら被処理物が均一に設定温度に保持される。
【0031】
本装置において被処理物が処理される過程を説明すると、投入口40より投入された被処理物は、スパイラル羽根2を有する回転軸3が回転することで排出口6側へ送られる。送られる際には、排出口側に移動するに従いスパイラル羽根2のピッチが漸減しているため徐々に圧縮されるとともに混練される。また、テーパー状に外径が漸減した形状に形成された第2搬送部42によりさらに圧力が上昇できる。この搬送過程において、被処理物はスパイラル羽根2により混練されながら周方向にも移動するため、スパイラル羽根2外周のケーシング4に設けたヒーター5により、満遍なく温度調節される。そして温度130℃〜210℃、圧力5気圧〜13気圧の条件に達すると蛋白質や食物繊維が含有する水分により加水分解をおこし糖度及び可溶化成分が増えていく。さらにスパイラル羽根2の終端に連続して設けたパドル部7に移動し、撹拌、混練、圧縮磨り潰しが行われ被処理物はさらに均一な成分となる。そして、前記スパイラル羽根2による押出し圧力とパドル部7の撹拌羽根70の作用により排出口6より排出される。排出される際には、パドル部7終端部の流量調整プレート61の内径部に設けた複数の溝の通過抵抗や回転軸3とケーシング4側との隙間通過抵抗によりケーシング4内の圧力が保持させる。これにより排出された有機性原料は、含有する蛋白質及び食物繊維が加水分解及びα化(膨軟化)により可溶化され粘性を持った餅状(ゲル状)に加工される。
【0032】
次に示す表1は、有機性原料である豆腐製造過程において発生する含水率60%〜85%のおからを本発明装置で加工したデーターを示したもので、おからには蛋白質や食物繊維等の栄養成分が豊富に含まれていることは知られている。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から、130℃においてやや飴色に変化するとともに食感はややマイルドとなる。この時の可溶化成分と糖度はやや減少しているが温度上昇とともに上昇していく。160℃前後においてはおから色から飴色に変色するものの糖度が1.8倍程度に上昇し、食感は非常にマイルドとなる。また、210℃域では食感がマイルドであるが変色が進行し褐色となる。この間pHは中性域または弱酸性程度で推移する。尚、処理圧力は6気圧から9気圧、滞留時間は240秒から360秒の範囲で実施したものである。
【0035】
このように、おから本来の蛋白質や食物繊維を加水分解させ、おからの可溶化成分を向上させマイルドで口当たりのよい食感とおからの特性を向上させた新おから食材としての活用を図ることができる。従来のおからのようなザラザラ感が無く、大豆本来の風味を生かしたまろやかな食感となり、pHも中性域であるため多方面の食材への利用の可能性がある。すなわち各食材のつなぎ材や増量材、またおから本来の高蛋白質食品素材としてや菓子類の原料としての利用等を図る事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施例を示す装置断面図。
【符号の説明】
【0037】
1 モータ
10 駆動プーリ
11 従動プーリ
12 Vベルト
13 入力軸
2 スパイラル羽根
3 回転軸
4 ケーシング
40 投入口
41 第1搬送部
42 第2搬送部
5 ヒーター
6 排出口
61 流量調整プレート
63 掻き出し羽根
7 パドル部
70 撹拌羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性原料を添加物を加えず一工程で連続的に餅状(ゲル状)に加工する加工方法。
【請求項2】
有機性原料を温度130℃以上210℃以下、圧力5気圧以上13気圧以下の条件で60秒以上360秒以下撹拌、混練、圧縮磨り潰しを行うことで添加物を加えず一工程で連続的に餅状(ゲル状)に加工する加工方法。
【請求項3】
ケーシング内に設けた一つのスパイラル羽根を有する回転可能な回転軸と、該スパイラル羽根の回転により被処理物が移動する流れの上流部に設けられる被処理物投入口と、被処理物がスパイラル羽根の回転により移動する流れの下流部に設けられる排出口とを有し、スパイラル羽根終端部と排出口の間には被処理物を移動させると共に撹拌圧縮磨り潰しを行うパドル部が設けられ、排出口部は被処理物の排出隙間寸法を調整し圧力調整可能とするとともに、前記スパイラル羽根の近傍のケーシングに、温度調節可能なヒーターを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の加工を行う有機性原料の加工装置。
【請求項4】
有機性原料は、豆腐製造過程において発生する含水率60%〜85%のおからである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の加工方法または加工装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−295824(P2007−295824A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125168(P2006−125168)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】