説明

有機感光体、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】本願発明の目的は、波長が350〜500nmの範囲内の波長の光で露光して有機感光体上に高密度の静電潜像を形成した電子写真画像で、反転黒ポチの発生、環境メモリーの発生を防止し、感度や残留電位の特性、或いは、ドット再現性やハーフトーン画像の劣化等が改善された有機感光体を提供することであり、該有機感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【解決手段】導電性支持体上に中間層上、感光層を順次積層した有機感光体であり、該中間層が350〜500nmの波長領域に吸収特性を有する電子輸送性化合物と金属酸化物粒子を含有し、前記波長領域における中間層の最大吸光度が、0.05/μm〜0.50/μmであることを特徴とする有機感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電子写真方式の画像形成装置等に用いる有機感光体に関する発明であり、該有機感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷分野やカラー印刷の分野において、電子写真方式の複写機やプリンタを使用される機会が増加している。該印刷分野やカラー印刷の分野においては、高画質のデジタルのモノクロ画像或いはカラー画像を求める傾向が強い。このような要求に対し、露光光源として短波長のレーザ光を用い、高精細のデジタル画像を形成することが提案されている(特許文献1、2)。しかしながら、該短波長レーザ光を用い、露光のドット径を絞り、電子写真感光体上に細密の静電潜像を形成しても、最終的に得られる電子写真画像は、十分な高画質を達成し得ていないのが現状である。
【0003】
その原因は、短波長の像露光で得られる画像に新たに発生してくる課題を十分に対応できていないことによる。
【0004】
即ち、電子写真感光体としては、従来の長波長レーザ用に開発された有機感光体(以後、単に感光体とも云う)では、短波長レーザ光等を用いて露光のドット径を小さく絞った像露光を行うと、従来の大きなドット径の画像では、目立たなかった反転黒ポチや画像ムラが顕在化し、微細なドット画像の再現性が達成されていない。
【0005】
従来の反転黒ポチやレーザ露光による干渉縞(モアレ)等の防止技術としては、感光体の中間層に酸化チタンに代表される金属酸化物微粒子を分散させて含有し中間層中で適度に光を散乱させる技術が盛んに検討されている(特許文献3、特許文献4)。
【0006】
ところが、耐モアレ性を向上させるために酸化チタンの含有量を多くすると、酸化チタン粒子が中間層中で部分的に凝集したり、層の中で橋渡し構造を形成したりして、感光体として用いた場合にその部分を通して電荷がリークして黒ポチ等の画像結果が発生しやすくなるという課題が発生した。この課題の対策として、酸化チタン等の表面に有機や無機の表面処理を行なって電気抵抗を向上させることや、中間層のバインダー樹脂を高抵抗化すること等の検討が行われている。
【0007】
しかしながら、上記酸化チタン等の表面処理による電気抵抗の向上は、中間層での残留電位の上昇や環境メモリー(温湿度変化が大きいときに発生する部分的な蓄積電荷による画像むら)等を新たに発生させ、可干渉性光源を用いる画像形成装置に使用する電子写真用感光体において高い耐モアレ性と黒ポチ欠陥の低減と、残留電位の上昇や環境メモリー等の諸課題を両立させて解決することの、大きな課題を残していた。
【特許文献1】特開2000−250239号公報
【特許文献2】特開2000−105479号公報
【特許文献3】特開平4−303846号公報
【特許文献4】特開平8−328283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記問題点を解決するためになされた。本発明の目的は、波長が350〜500nmの範囲内の波長の光で露光して有機感光体上に高密度の静電潜像を形成した電子写真画像で、反転黒ポチの発生、環境メモリーの発生を防止し、感度や残留電位の特性、或いは、ドット再現性やハーフトーン画像の劣化等が改善された有機感光体を提供することであり、該有機感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々は上記問題点について検討を重ねた結果、本願発明の上記課題を解決する為には、波長が短波長レーザ光等の像露光の感光層への入射光が、支持体で反射されて発生する反射光を、中間層で散乱させると同時に吸収することが効果的であり、更に、該中間層に電子伝導性を付与することが、効果的であることを見出し、本願発明を達成した。即ち、本願発明は、以下の構成を有することにより達成される。
【0010】
1.導電性支持体上に中間層上、感光層を順次積層した有機感光体であり、該中間層が350〜500nmの波長領域に吸収特性を有する電子輸送性化合物と金属酸化物粒子を含有し、前記波長領域における中間層の最大吸光度が、0.05/μm〜0.50/μmであることを特徴とする有機感光体。
【0011】
2.前記金属酸化物粒子が酸化チタン、アルミナ及び酸化錫から選択された1つ以上の金属酸化物粒子であることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0012】
3.前記金属酸化物粒子が前記350〜500nmの波長領域に吸収特性を有する電子輸送性化合物で表面処理されていることを特徴とする前記1又は2に記載の有機感光体。
【0013】
4.感光層が電荷発生層の上に電荷輸送層を積層した構成であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機感光体。
【0014】
5.有機感光体上に均一な帯電電位を付与する帯電工程、該帯電電位が付与された有機感光体上に波長が350〜500nmの範囲内の波長の光で露光して静電潜像を形成する露光工程、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程、該トナー像を転写媒体に転写する工程を有する画像形成方法において、前記有機感光体に前記1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
【0015】
6.前記5に記載の画像形成方法を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【0016】
7.前記6に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、少なくとも前記1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体と帯電手段、像露光手段、現像手段の少なくとも1つを一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に構成されることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有機感光体、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを用いることにより、高細密のドット画像を形成することができ、ドット再現性が改善され、黒ポチ、環境メモリー等の画像欠陥を防止し、安定した電位安定性を有し、高画質の電子写真画像を得ることのできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本願発明の有機感光体は、導電性支持体上に中間層上、感光層を順次積層した有機感光体であり、該中間層が電子輸送性化合物で表面修飾された金属酸化物を含有し、350〜500nmの波長領域における中間層の最大吸光度が、0.05/μm〜0.50/μmであることを特徴とする。
【0019】
本願発明の有機感光体は、上記構成を有することにより、高い耐モアレ特性を有し、黒ポチ、環境メモリー等の画像欠陥の発生もなく、安定した電位安定性を有し、高画質の画像を得ることができる。
【0020】
又、350〜500nmの波長領域における中間層の最大吸光度が、0.05/μm〜0.50/μmである以下であるが、より好ましくは、0.10/μm〜0.45/μmである。
【0021】
以下、本願発明の有機感光体の構成について、詳細に説明する。
【0022】
(金属酸化物)
本発明の中間層で用いられる金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の金属酸化物粒子が例示されるが、中でも、酸化チタン、アルミナ、酸化錫等の金属酸化物粒子が好ましい。
【0023】
さらに本発明に用いられる金属酸化物は、公知の方法、例えば気相法、塩素法、硫酸法、プラズマ法、電解法等の一般的な製造法で作製されたものが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる金属酸化物の数平均一次粒径は1〜300nmの範囲が好ましい。特に好ましくは3〜100nmである。
【0025】
上記金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ)ソフトウエアバージョン Ver.1.32を使用して数平均一次粒径を算出した。
(電子輸送性化合物)
本願発明に係わる電子輸送性化合物について説明する。
【0026】
本願発明に係わる電子輸送性化合物は、電荷輸送特性を有し、その主たる電荷輸送特性が電子の輸送特性から生じる化合物である。化合物分子中に陰性度の高い官能基、即ち、−CN基や−COOH基、あるいはハロゲン原子を含有する化合物等に、電子輸送性の高い化合物が見いだされる。
【0027】
本願発明に係わる電子輸送性化合物は、350〜500nmの波長領域に吸収特性を有している化合物である。
【0028】
電子輸送性化合物が、350〜500nmの波長領域に吸収特性を有している化合物であるとは、この波長領域の少なくとも一部で吸収特性を有するであればよく、この吸収特性の有無は以下のようにして確認する。
350〜500nmの波長領域に吸収特性の有無の確認方法
適当濃度の電子輸送性化合物のエタノール溶液を作成し、長さ1cmの石英ガラスに入れ、分光光度計にて吸光度を測定し、概電子輸送性化合物のモル吸光係数εを算出する。このεが350〜500nmの波長領域において最大ピークもしくは極大ピークとして3000以上の値を示す場合、吸収特性があるとみなす。
【0029】
尚、モル吸光係数εは下記のように定義する。
【0030】
入射光をI、透過光をIとしたとき、吸光度(A)は、A=log(I/I)と定義される。吸光度Aとモル吸光係数εと溶液濃度c(mol/l)、長さd(cm)の関係は下記で定義される。
【0031】
A=εcd
上記の中で、吸光度は、U−3500(日立製作所)の分光光度計を用いて測定した。
【0032】
又、本願発明に係わる化合物の電子輸送性の有無は、以下のようにして検知する。
電子輸送性有無の確認方法
導電性支持体上に中間層として、検査対象の化合物をポリアミド中に分散した乾燥膜厚5.0μmの中間層を作製し、その上にチタニルフタロシアニン顔料をブチラール樹脂に分散した電荷発生層を0.3μmを塗布し電子輸送性確認試料Sを作製する。一方、該電子輸送性確認試料Sから中間層の検査対象化合物を除去した比較用電子輸送性確認試料SHを作製する。これらS及びSHの試料に−300Vの均一帯電を付与した後、405nmの露光を行い光感度E1/2を測定する。比較試料SHに比し、検査対象試料Sの感度が誤差範囲を超えて、増加していれば検査対象の化合物に電子輸送性があると見なす。なお、光感度の測定にはEPA−8100((株)川口電気製作所製)を使用した。
【0033】
以下に、本願発明の上記吸収特性を満たす電子輸送性化合物の具体例を記載する。
【0034】
【化1】

【0035】
これら例示の電子輸送性化合物は、化合物自体としては、既に公知の化合物である。
【0036】
又、電子輸送性化合物は単独でまたは2種以上を混合して、金属酸化物粒子の表面処理に使用することができる。
【0037】
電子輸送性化合物による金属酸化物粒子の表面処理について、
本発明に係わる電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子を電子輸送性化合物を用いて表面処理することにより、得ることが出来る。該表面被覆処理するに際し、金属酸化物粒子100質量部に対し、電子輸送性化合物を表面処理剤として0.1〜100質量部、溶媒50〜5000質量部を用いて湿式メディア分散型装置を使用して処理することが好ましい。
【0038】
即ち、金属酸化物粒子と電子輸送性化合物の表面処理剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式粉砕することにより、金属酸化物粒子を微細化すると同時に金属酸化物粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化するので、均一でしかもより微細な電子輸送性化合物により表面処理された金属酸化物粒子を得ることができる。
【0039】
本発明において用いられる表面処理装置である湿式メディア分散型装置とは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた攪拌ディスクを高速回転させることにより、金属酸化物粒子の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置であり、その構成としては、金属酸化物粒子に表面処理を行う際に金属酸化物粒子を十分に分散させ、かつ表面処理できる形式であれば問題なく、たとえば、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が採用できる。具体的にはサンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミル等が使用できる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズ等の粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、専断、ズリ応力等により微粉砕、分散が行われる。
【0040】
上記サンドグラインダーミルで用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料としたボールが使用可能であるが、特にジルコニア製やジルコン製のものが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1〜2mm程度のものを使用するが、本発明では0.3〜1.0mm程度のものを用いるのが好ましい。
【0041】
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製など種々の素材のものが使用できるが、本発明では特にジルコニアまたはシリコンカーバイドといったセラミック製のディスクや容器内壁が好ましい。
【0042】
以上のような湿式処理により、電子輸送性化合物による表面処理により、電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子を得ることができる。
【0043】
尚、電子輸送性化合物として、前記化合物E−1〜E−5を用いた場合、これらの化合物の−CN基や−OH基は、一般的に金属酸化物粒子の表面に存在する水酸基との化学反応により化学的な結合を形成して、強固に金属酸化物粒子の表面を修飾することができる。
【0044】
上記のようにして得られた電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子は、有機感光体の中間層中に含有させることにより、感光層から注入される電子の移動を容易にし、中間層での電子の蓄積を防止し、黒ポチの発生や、環境メモリーの発生を防止して、良好な電子写真画像を提供することができ。
【0045】
中間層の構成
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、前記したように電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子を含有し、350〜500nmの波長領域における中間層の最大吸光度が、0.05/μm〜0.50/μmである中間層を設ける。
【0046】
350〜500nmの波長領域における中間層の最大吸光度は、中間層の350〜500nmの波長領域における膜厚(μm)当たりの吸光度を測定することにより求めることができる。
【0047】
中間層の吸光度=−log(T/100)/中間層の膜厚(μm) Tは透過率
上記中間層の吸光度は、中間層の350〜500nmの波長領域の中で、最も高い吸光度の値である。
【0048】
中間層の吸光度の測定方法
吸光度は、中間層の塗布液をワイヤーバーを用いて透明なPETベースに塗布・乾燥して作成したサンプルを分光光度計で測定することで得られる。なお、測定に使用する分光光度計は、U−3500(日立製作所)を用いて測定した。
【0049】
本願発明に係わる中間層の吸光度は、主として前記電子輸送性化合物の吸収により得られるものである。そこで、中間層中の電子輸送性化合物の含有量を変えることにより、中間層の吸光度を変化させることが可能である。
【0050】
本願発明に係わる中間層を形成するために作製する中間層塗布液は、前記金属酸化物粒子の他にバインダー樹脂、分散溶媒等から構成される。
【0051】
電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子の中間層中での比率は、中間層のバインダー樹脂との質量比(バインダー樹脂の質量を1とすると)で1.0〜20倍が好ましい。中間層中でこのような高密度で電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子を用いることにより、中間層の整流性が高まり、膜厚を厚くしても残留電位の上昇や画像メモリーの発生を効果的に防止でき、良好な電子画像を形成できる有機感光体を得ることができる。
【0052】
一方、これらの金属酸化物粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂、アルキド樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が好ましい。この内、ポリアミド樹脂としては、下記のようなポリアミド樹脂が好ましい。
【0053】
中間層のバインダー樹脂としてはアルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。有機感光体の中間層のバインダー樹脂としては、中間層を均一な膜厚で形成するために、溶媒溶解性の優れた樹脂が必要とされている。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂としては、前記した6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂が知られているが、これ以外にも下記のようなポリアミドも好ましく用いることができる。
【0054】
【化2】

【0055】
又、上記ポリアミド樹脂の分子量は数平均分子量で5,000〜80,000が好ましく、10,000〜60,000がより好ましい。数平均分子量が5,000以下だと中間層の膜厚の均一性が劣化し、本発明の効果が十分に発揮されにくい。一方、80,000より大きいと、樹脂の溶媒溶解性が低下しやすく、中間層中に凝集樹脂が発生しやすく、黒ポチの発生やドット画像の劣化を起こしやすい。
【0056】
上記ポリアミド樹脂はその一部が既に市販されており、例えばダイセル・デグサ(株)製のベスタメルトX1010、X4685等の商品名で販売されて、一般的なポリアミドの合成法で作製することができるが、以下に合成例の一例を挙げる。
【0057】
上記ポリアミド樹脂やアルキド樹脂を溶解し、塗布液を作製する溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。これらの溶媒は全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、更には50〜100質量%が好ましい。前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0058】
本発明の中間層の膜厚は0.5〜10μmが好ましい。中間層の膜厚が0.5μm未満では、黒ポチ等が発生しやすく、ドット画像の劣化を起こしやすい。10μmを超えると、残留電位の上昇が発生しやすく、ドット画像が劣化しやすい。中間層の膜厚は0.5〜5μmがより好ましい。
【0059】
又、上記中間層は実質的に絶縁層であることが好ましい。ここで絶縁層とは、体積抵抗が1×10Ω・cm以上である。本発明の中間層及び保護層の体積抵抗は1×10〜1015Ω・cmが好ましく、1×10〜1014Ω・cmがより好ましく、更に好ましくは、2×10〜1×1013Ω・cmである。体積抵抗は下記のようにして測定できる。
【0060】
測定条件;JIS:C2318−1975に準ずる。
【0061】
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:30±2℃、80±5RH%
体積抵抗が1×10Ω・cm未満では中間層の電荷ブロッキング性が低下し、黒ポチの発生が増大し、有機感光体の電位保持性も劣化し、良好な画質が得られない。一方1015Ω・cmより大きいと繰り返し画像形成で残留電位が増大しやすく、良好な画質が得られない。
【0062】
次に、上記中間層を有する本発明に係る有機感光体の構成をより詳しく説明をする。
【0063】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0064】
本発明の有機感光体の構成は、本発明に係わる前記中間層に特徴を有するものであり、感光層を単層で構成してもよいが、好ましくは、以下に示すような構成が挙げられる;
1)導電性支持体上に中間層、電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した構成;
2)導電性支持体上に中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層(表面層)を順次積層した構成;
電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを有機感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味し、該電荷輸送機能の具体的な検出は、電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検知することにより確認することができる。
【0065】
次に、有機感光体の層構成を上記1)の構成を中心にして記載する。
【0066】
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0067】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0068】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗10Ωcm以下が好ましい。本発明の導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。該アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
【0069】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、前記したように電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子を含有する中間層を設ける。
【0070】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に、感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。
【0071】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0072】
電荷発生層
本発明の有機感光体には、電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、多感キノン顔料等公知の電荷発生物質を用いることができる。これらの電荷発生物質は1種で用いることもできるし、2種以上併用で用いてもよい。
【0073】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3μm〜2μmが好ましい。
【0074】
電荷輸送層
本発明では電荷輸送層を複数の電荷輸送層から構成し、且つ最上層の電荷輸送層に本発明の無機微粒子を含有させた構成を用いてもよい。
【0075】
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により前記した無機微粒子の他に酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0076】
電荷輸送物質(CTM)としては、公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0077】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0078】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
【0079】
電荷輸送層の合計膜厚は、10〜30μmが好ましい。該合計膜厚が10μm未満では、現像時の潜像電位を十分に獲得しにくく、画像濃度の低下やドット再現性の劣化が発生しやすく、又、30μmを超えると、電荷キャリアの拡散(電荷発生層で発生した電荷キャリアの拡散)が大きくなり、ドット再現性が劣化しやすい。また、電荷輸送層を複層で形成した場合、表面層となる電荷輸送層の膜厚は1.0〜8.0μmが好ましい。
【0080】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の地球環境に優しい溶媒が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0081】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、スライドホッパー型塗布装置の他に、浸漬塗布、スプレー塗布等の塗布加工法が用いられる。
【0082】
上記塗布液供給型の塗布装置の中でもスライドホッパー型塗布装置を用いた塗布加方法は、前記した低沸点溶媒を用いた分散液を塗布液として用いる場合に最も適しており、円筒状の感光体の場合は特開昭58−189061号公報等に詳細に記載されている円形スライドホッパー型塗布装置等を用いて塗布することが好ましい。
【0083】
又、本発明に係わる感光体の表面層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。表面層は感光体の帯電時の活性ガス、例えばNOxやオゾン等で酸化されやすく、画像ボケが発生しやすいが、酸化防止剤を共存させることにより、画像ボケの発生を防止することが出来る。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。
【0084】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0085】
次に、本発明に係わる有機感光体を用いた画像形成装置について説明する。
【0086】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0087】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0088】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0089】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0090】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光徐電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0091】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0092】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードを像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜50μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0093】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0094】
用いられる光ビームとしては半導体レーザを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0095】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0096】
〈トナー〉
本発明の有機感光体上に形成された静電潜像は現像によりトナー像として顕像化される。現像に用いられるトナーは、粉砕トナーでも、重合トナーでもよいが、本発明に係わるトナーとしては、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
【0097】
重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0098】
なお、トナーの体積平均粒径、即ち、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってドット画像の再現性が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0099】
〈現像剤〉
本発明に係わるトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0100】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0101】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0102】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0103】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0104】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25、爪分離手段250等によって、転写紙P上に転写され、該転写紙Pも感光体から分離され、その後、転写紙Pは転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送され、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0105】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0106】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0107】
更に、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0108】
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
【0109】
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0110】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0111】
図2は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0112】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0113】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0114】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0115】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0116】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0117】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0118】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザ光学系などが用いられる。
【0119】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0120】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0121】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0122】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0123】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0124】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0125】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0126】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0127】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0128】
次に図3は本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置(少なくとも有機感光体の周辺に帯電手段、露光手段、複数の現像手段、転写手段、クリーニング手段及び中間転写体を有する複写機あるいはレーザビームプリンタ)の構成断面図である。ベルト状の中間転写体70は中程度の抵抗の弾性体を使用している。
【0129】
1は像形成体として繰り返し使用される回転ドラム型の感光体であり、矢示の反時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0130】
感光体1は回転過程で、帯電手段(帯電工程)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段(像露光工程)3により画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のカラー画像のイエロー(Y)の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0131】
次いで、その静電潜像がイエロー(Y)の現像手段:現像工程(イエロー色現像器)4Yにより第1色であるイエロートナーにより現像される。この時第2〜第4の現像手段(マゼンタ色現像器、シアン色現像器、ブラック色現像器)4M、4C、4Bkの各現像器は作動オフになっていて感光体1には作用せず、上記第1色目のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0132】
中間転写体70はローラ79a、79b、79c、79d、79eで張架されて時計方向に感光体1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0133】
感光体1上に形成担持された上記第1色目のイエロートナー画像が、感光体1と中間転写体70とのニップ部を通過する過程で、1次転写ローラ5aから中間転写体70に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体70の外周面に順次中間転写(1次転写)されていく。
【0134】
中間転写体70に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光体1の表面は、クリーニング装置6aにより清掃される。
【0135】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のクロ(ブラック)トナー画像が順次中間転写体70上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した重ね合わせカラートナー画像が形成される。
【0136】
2次転写ローラ5bで、2次転写対向ローラ79bに対応し平行に軸受させて中間転写体70の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0137】
感光体1から中間転写体70への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスはトナーとは逆極性で、バイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜+2kVの範囲である。
【0138】
感光体1から中間転写体70への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程において、2次転写ローラ5b及び中間転写体クリーニング手段6bは中間転写体70から離間することも可能である。
【0139】
ベルト状の中間転写体70上に転写された重ね合わせカラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、2次転写ローラ5bが中間転写体70のベルトに当接されると共に、対の給紙レジストローラ23から転写紙ガイドを通って、中間転写体70のベルトに2次転写ローラ5bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。2次転写バイアスがバイアス電源から2次転写ローラ5bに印加される。この2次転写バイアスにより中間転写体70から第2の画像担持体である転写材Pへ重ね合わせカラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着手段24へ導入され加熱定着される。
【0140】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0142】
(電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物(KS−1)の作製)
数一次平均粒径10nmの酸化チタンを100質量部と電子輸送性化合物(E−1)10質量部の表面処理剤とを、ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル2.0質量%の酢酸エチル溶液200質量部、水10質量部の溶媒中に分散したスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式メディア分散型装置(ディスパーマット 独VMA−GETZMANN社製)で湿式粉砕・分散することにより、酸化チタン粒子を微細化すると同時に酸化チタン粒子のE−1による表面処理を行なった。その後、溶媒を除去して粉体化するので、均一でしかもより微細な電子輸送性化合物(E−1)により表面処理された酸化チタン粒子(KS−1)を得ることができた。
【0143】
(各種電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子(KS−2)〜(KS−11)の作製)
前記電子輸送性化合物(E−1)で表面処理された酸化チタン粒子(KS−1)の作製において、酸化チタンを表1に示す各種酸化物粒子に変更し、金属酸化物粒子(A)と表面処理剤(B)の比率(仕込み量比((A)/(B))等も表1のように変更して、各種電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子(KS−2)〜(KS−11)を得た。
【0144】
(メチルハイドロジェンシロキサンで表面処理された金属酸化物粒子(KS−12)の作製)
電子輸送性化合物(E−1)で表面処理された酸化チタン(KS−1)の代わりに、メチルハイドロジェンシロキサンで処理された酸化チタンを用いた他は、(KS−1)と同様にして(KS−12)を作製した。
【0145】
【表1】

【0146】
表1中、MHSはメチルハイドロジェンシロキサンを示す。
【0147】
表1中、(A)/(B)は、金属酸化物粒子と表面処理剤(電子輸送性化合物)の仕込み質量比を示す。
【0148】
尚、表中の表面処理剤の350〜500nmの波長領域に吸収特性の有無、及び表面処理剤の電子輸送性の有無については、前記した各々の確認方法により判定した。
【0149】
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
【0150】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、十点表面粗さRz=0.5(μm)の導電性支持体を用意した。
〈中間層〉
中間層1
上記導電性支持体上に、下記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚3.0μmの中間層1を形成した。
【0151】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
【0152】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(例示ポリアミドN−1) 1部
電子輸送性化合物(E−1)で表面処理された酸化チタン(KS−1) 3.5部
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比) 10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
【0153】
〈電荷発生層:CGL〉
電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で5少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料) 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0154】
〈電荷輸送層(CTL)〉
電荷輸送物質(CTM):下記CTM−6 225部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(下記AO−1) 6部
THF/トルエン混合液(体積比3/1混合) 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚20.0μmの電荷輸送層1を形成し、感光体1を作製した。
【0155】
【化3】

【0156】
感光体2〜8
感光体1において、中間層中の電子輸送性化合物で表面処理された酸化チタン(KS−1)の代わりに、表2に記載のように電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物(KS−2)〜(KS−8)を用い、含有量も表2のようにへんかさせた他は、感光体1と同様にして感光体2〜8を作製した。
感光体9
感光体1において、中間層分散液の作製を下記のように変更した以外は感光体1と同様にして感光体9を作製した。
【0157】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:
アルキド樹脂〔ベッコーゾル TD−50−30(大日本インキ化学工業製)〕
0.7部
メラミン樹脂〔ベッカミン P−138(大日本インキ化学工業製)0.3部〕)
1部
電子輸送性化合物(E−5)で表面処理された酸化チタン(KS−9) 3.5部
メチルエチルケトン 10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
感光体10
感光体1において、中間層分散液の作製を下記のように変更した以外は感光体1と同様にして感光体10を作製した。
【0158】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(レゾール型フェノール樹脂(商品名:ブライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%) 1.43部
電子輸送性化合物(E−1)で表面処理されたアルミナ(KS−10) 3.5部
2−メトキシ−1−プロパノール 10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
感光体11、12
感光体1において、中間層中の電子輸送性化合物で表面処理された酸化チタン(KS−1)の代わりに、表2に記載のように電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物(KS−11)、(KS−12)を用い、含有量も表2のように変化させた他は、感光体1と同様にして感光体11、12を作製した。
【0159】
尚、感光体1〜12の中間層のみを透明シート上に乾燥膜厚1μmで塗布乾燥し、中間層の吸光度測定試料1〜12を作製した。これら吸光度測定試料を用いて、前記した中間層の吸光度の測定方法に従い、各中間層の吸光度を測定した。その結果は、以下の表2に示した。(尚、中間層の吸光度測定においては、透明シートの吸光度も同時に測定し、透明シートの吸光度を差し引いて、中間層のみの吸光度を測定した。
【0160】
(評価1)
以上のようにして得た感光体を基本的に、図2の構成を有する市販のフルカラー複合機bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)の書き込みドット径可変改造機に搭載し、像露光光源として405nmの短波長レーザ光源を用い、書き込み光源の主査方向の露光径を30μmで、1200dpiとし、該露光径のスポット露光が感光体面上で0.5mWになるように設定した。尚、上記フルカラー複合機は画像形成ユニットを4組有しているので、それぞれの画像形成ユニットの感光体を同一種類の感光体(例えば、感光体1の場合は、4本の感光体1を用意して)で統一して、評価を行った。各評価は、30℃80%RHの条件で、画素率7%の画像をA4紙に5万枚の画出し耐刷試験後に、20℃60%RHの環境下で評価した(但し、環境メモリーの評価については、評価条件が異なる)。
【0161】
評価項目と評価基準
カブリ(白黒画像で評価)
カブリ濃度はべた白画像をマクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。該反射濃度は相対濃度(印刷していないA4紙の濃度を0.000とする)で評価した。
【0162】
◎:濃度が0.010未満(良好)
○:濃度が0.010以上、0.020以下(実用上問題ないレベル)
×:濃度が0.020より高い(実用上問題となるレベル)
黒ポチ(白黒画像で評価)
周期性が感光体の周期と一致し、目視できる黒ポチ、黒筋状の画像欠陥が、A4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0163】
◎;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:全ての印刷画像が5個/A4以下(良好)
○;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:6個/A4以上、10個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×;0.4mm以上の画像欠陥の頻度:11個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
環境メモリー
環境メモリー:前記フルカラー複合機bizhub PRO C6500をHH下に24hr放置後、低湿低温下(LL:20RH%、10℃)に置き、30分後、コピーした。オリジナル画像で0.4の濃度のハーフトーン画像を0.4の濃度にコピー、コピー画像の濃度差(ΔHD=最大濃度−最小濃度)で判定
◎:ΔHDが0.05以下(良好)
○:ΔHDが0.05より大で0.1未満(実用上問題なし)
×:ΔHDが0.1以上(実用上問題あり)
カラー画像の評価
前記フルカラー複合機bizhub PRO C6500の4組の画像形成ユニットを作動させ、人物顔写真を含むハーフトーン画像をA4紙に印刷し、下記の基準で評価した(良好)
◎;ハーフトーンのカラー画像がなめらかに再現され、目立つ画像ムラやポチが見あたらない。
【0164】
○;干渉縞や筋状ムラが部分的に発生しているが、ハーフトーンのカラー画像がなめらかに再現されている(実用上問題なし)
×;ハーフトーンのカラー画像に、干渉縞、筋状ムラ或いはポチが全面に発生している(実用上問題有り)
【0165】
【表2】

【0166】
表2より、中間層が350〜500nmの波長領域に吸収特性を有する電子輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子を含有し、前記波長領域における中間層の最大吸光度が、0.05/μm〜0.50/μmである本願発明内の感光体1〜7、9、10は、各評価項目で良好な結果を得ているのに対し、本願発明外の感光体8、11、12は、いずれかの評価項目で、実用性が十分でない評価を示していることが見いだされる。
感光体21の作製
下記の様に感光体21を作製した。
【0167】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、十点表面粗さRz=0.5(μm)の導電性支持体を用意した。
〈中間層〉
中間層21
上記導電性支持体上に、下記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚3.0μmの中間層21を形成した。
【0168】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
【0169】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(例示ポリアミドN−1) 1部
酸化チタン(10nm) 3部
電子輸送性化合物(E−1) 0.2部
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比) 10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
【0170】
該中間層21の上に、感光体1の作製で用いた電荷発生層及び電荷輸送層を同じように塗布、乾燥して感光体21を作製した。
感光体22〜28
感光体21において、中間層中の金属酸化物粒子と電子輸送性物質、およびその質量比を表3に従い変更した他は、感光体21と同様にして感光体22〜28を作製した。
感光体29
感光体21において、中間層分散液の作製を下記のように変更した以外は感光体21と同様にして感光体29を作製した。
【0171】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:
アルキド樹脂〔ベッコーゾル TD−50−30(大日本インキ化学工業製)〕
0.7部
メラミン樹脂〔ベッカミン P−138(大日本インキ化学工業製)〕 0.3部
酸化チタン(70nm) 3部
電子輸送性化合物(E−5) 0.5部
メチルエチルケトン 10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
感光体30
感光体21において、中間層分散液の作製を下記のように変更した以外は感光体21と同様にして感光体30を作製した。
【0172】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(レゾール型フェノール樹脂(商品名:ブライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%) 1.43部
アルミナ(30nm) 5部
電子輸送性化合物(E−5) 0.2部
2−メトキシ−1−プロパノール 10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
感光体31、32
感光体21において、中間層中の酸化チタン、電子輸送性化合物(E−1)の代わりに、表3に記載のように、酸化チタン、電子輸送性化合物等を用い、含有量も表3のように変化させた他は、感光体21と同様にして感光体31、32を作製した。
【0173】
尚、感光体21〜32の中間層のみを透明シート上に乾燥膜厚1μmで塗布乾燥し、中間層の吸光度測定試料21〜32を作製した。これら吸光度測定試料を用いて、前記した中間層の吸光度の測定方法に従い、各中間層の吸光度を測定した。その結果は、以下の表3に示した。(尚、中間層の吸光度測定においては、透明シートの吸光度も同時に測定し、透明シートの吸光度を差し引いて、中間層のみの吸光度を測定した。
【0174】
感光体21〜32を感光体1と同様の方法で評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0175】
【表3】

【0176】
表3より、中間層が350〜500nmの波長領域に吸収特性を有する電子輸送性化合物と、金属酸化物粒子を含有し、前記波長領域における中間層の最大吸光度が、0.05/μm〜0.50/μmである本願発明内の感光体21〜27、29、30は、各評価項目で良好な結果を得ているのに対し、本願発明外の感光体28、31、32は、いずれかの評価項目で、実用性が十分でない評価を示していることが見いだされる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図3】本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置の構成断面図である。
【符号の説明】
【0178】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に中間層上、感光層を順次積層した有機感光体であり、該中間層が350〜500nmの波長領域に吸収特性を有する電子輸送性化合物と金属酸化物粒子を含有し、前記波長領域における中間層の最大吸光度が、0.05/μm〜0.50/μmであることを特徴とする有機感光体。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子が酸化チタン、アルミナ及び酸化錫から選択された1つ以上の金属酸化物粒子であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子が前記350〜500nmの波長領域に吸収特性を有する電子輸送性化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機感光体。
【請求項4】
感光層が電荷発生層の上に電荷輸送層を積層した構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項5】
有機感光体上に均一な帯電電位を付与する帯電工程、該帯電電位が付与された有機感光体上に波長が350〜500nmの範囲内の波長の光で露光して静電潜像を形成する露光工程、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程、該トナー像を転写媒体に転写する工程を有する画像形成方法において、前記有機感光体に請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成方法を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、少なくとも請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体と帯電手段、像露光手段、現像手段の少なくとも1つを一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に構成されることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−127963(P2010−127963A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299238(P2008−299238)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】