説明

有機溶剤のガス濃度の測定方法および測定装置

【課題】空気中に含む有機溶剤のガスを活性炭吸着槽6で吸着する場合に、吸着前後の空気中のガス濃度を一つの濃度センサ15で測定する。
【解決手段】吸着槽6に至る前の吸着前空気流路、吸着槽6に至った後の吸着後空気流路、および清浄空気を供給する清浄空気供給手段16からの清浄空気流路に対し、該各流路をそれぞれ開閉できる開閉バルブ10、11、19を介して接続され、これら開閉バルブの開閉制御をする制御部23は、吸着前空気、清浄空気、そして吸着後空気の順が繰返されるように開閉制御指令を出力し、それぞれのときの濃度測定をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれる有機溶剤のガス濃度の測定方法および測定装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、クロロメタン、クロロベンゼン、プロパノール等の揮発性が高い有機化合物は、揮発性有機化合物(VOC)と称され、そしてこのものが大気中に揮発してガス化すると、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の要因にもなり、このため人の健康に対して悪影響を与える有害物質として指定され、揮発性有機化合物(以下「VOC」という)のガス排出量の規制がなされている。
ところでこのようなVOCは、化学工場、塗装工場、印刷工場、薬品工場等の各種施設において、反応、抽出、コーティング、脱脂洗浄等の各種工程で広く溶剤として採用されている。そしてこれらVOCは、ガス化したものが施設外に排出しないよう施設の排気流路に、VOCガスを除去(回収)するための除去装置を設けることが義務付けられている。
このような除去装置を設置する場合、除去後の空気のガス濃度を確認する必要があり、そのため除去後の空気流路に濃度センサを設けることが試みられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−293329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの場合に、除去したガス量を知ることは、ガス除去装置のメンテナンス時期等の管理をする場合に必要であり、その場合に、除去後だけでなく、除去前の空気についてガス濃度を測定し、その差によって除去したガス量が算出できることになる。ところがこの場合、除去前流路にも別途濃度センサを設ける必要があって部品点数が多くなるだけでなく、除去前流路に設けられる濃度センサは、高濃度のガスに常時曝されるため、安定した測定値を得るためには頻繁なメンテナンスが要求されるという問題があり、ここに本発明が解決せんとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、有機溶剤のガスを含有した空気が流れる空気流路にガス除去手段を設け、該ガス除去手段の前後の空気中のガス濃度を濃度センサを用いて測定するにあたり、濃度センサは、ガス除去手段に至る前の除去前空気流路、ガス除去手段に至った後の除去後空気流路、および清浄空気を供給する清浄空気供給手段からの清浄空気流路に対し、該各流路をそれぞれ開閉できる開閉バルブを介して接続され、これら開閉バルブの開閉制御をする制御手段は、濃度センサに至る空気が除去前空気流路、清浄空気流路、除去後空気流路の順で流れるよう制御するように設定されていることを特徴とする有機溶剤のガス濃度の測定装置である。
請求項2の発明は、濃度センサに至った空気は、除去前空気流路に還元されることを特徴とする請求項1記載の有機溶剤のガス濃度の測定装置である。
請求項3の発明は、制御手段は、システムスタートをした後の最初の段階では、濃度センサに至る空気が除去前空気流路に流れる前に、清浄空気流路の空気が濃度センサに流れるように設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の有機溶剤のガス濃度の測定装置である。
請求項4の発明は、有機溶剤のガスを含有した空気が流れる空気流路にガス除去手段を設け、該ガス除去手段の前後の空気中のガス濃度を濃度センサを用いて測定するにあたり、濃度センサは、ガス除去手段に至る前の除去前空気流路、ガス除去手段に至った後の除去後空気流路、および清浄空気を供給する清浄空気供給手段からの清浄空気流路に対し、該各流路をそれぞれ開閉できる開閉バルブを介して接続され、これら開閉バルブの開閉制御をする制御手段は、濃度センサに至る空気が除去前空気流路、清浄空気流路、除去後空気流路の順で流れるよう制御していることを特徴とする有機溶剤のガス濃度の測定方法である。
請求項5の発明は、制御手段は、システムスタートをした後の最初の段階では、濃度センサに至る空気が除去前空気流路に流れる前に、清浄空気流路の空気が濃度センサに流れるように制御していることを特徴とする請求項4記載の有機溶剤のガス濃度の測定方法である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1または4の発明とすることで、一つの濃度センサで、ガスの除去前後の濃度測定ができ、しかも該濃度センサは、ガス濃度が高い除去前空気の測定をした後、清浄空気で洗浄されることになって安定性が向上する。
請求項2の発明とすることで、ガス濃度が測定された空気を除去前の流路に還元できることになって、ガスに汚染された空気が大気に放出されることを回避できる。
請求項3または5の発明とすることで、除去後空気のガス濃度が基準値を超えてシステム終了した後、ガス除去手段をメンテナンスして再開する場合に、最初に濃度センサの洗浄がなされることになって、濃度センサが基準値を超えた汚染状態で再開されることがなく、濃度検知の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図面において、1はVOCガスを発生するガス発生施設(ガス発生装置)であって、該ガス発生施設1からの排気流路2の流路末端には、高風量型の第一の吸引ポンプ3が設けられ、該吸引ポンプ3の吸引によってガス発生施設1内の空気が排気流路2を経由して外気に排出されるようになっている。
【0007】
前記排気流路2には、該ガス発生施設1から第一吸引ポンプ3に至るまでのあいだに、アクチュエータ駆動により開閉する例えば電磁弁に代表される自動開閉式の第一開閉バルブ(以下に記載する「開閉バルブ」も全てアクチュエータ駆動により開閉するものであるので、その説明は省略する)4、第二開閉バルブ5、吸着槽(本実施の形態では活性炭による吸着であって、本発明の「ガス除去手段」に相当する)6、第三開閉バルブ7が設けられており、そして前記ガス発生施設1で発生したVOCガスを含む空気は、VOCガスが吸着槽6によって吸着されたものとなって基準値以下のガス濃度で排気するようになっている。
【0008】
前記排気流路2には、第一と第二開閉バルブ4と5とのあいだ、および第三開閉バルブ7と吸引ポンプ3とのあいだに第一、第二の分岐流路8、9が形成されているが、第一分岐流路8と第二分岐流路9とは、各分岐流路8、9にそれぞれ設けた第四、第五の開閉バルブ10、11を経由したものが合流12し、該合流流路13には、流路末端に低風量の第二の吸引ポンプ14が設けられると共に、該第二吸引ポンプ14に至る前に位置して濃度センサ15が設けられている。
【0009】
一方、16は清浄空気を供給するための清浄空気供給装置であって、該清浄空気供給装置16は、吸引した清浄外気をさらに空気フィルター17によって清浄にしたものを清浄空気供給流路18に供給するようになっているが、該清浄空気供給流路18は第六開閉バルブ19を経由したものが前記第一分岐流路8に合流20するようになっている。さらに吸引ポンプ14からの排気流路21は第二開閉バルブ5と吸着槽6とのあいだの吸着前流路に合流22するようになっている。
【0010】
23はPLC若しくはFPGA等の電子回路を用いて構成される制御部であって、前記濃度センサ15において検知された濃度値(センサ値)を入力すると共に、前記各開閉バルブ4、5、7、10、11、19に対して開閉の制御指令を出力するようになっており、該各開閉バルブ4、5、7、10、11、19は制御部23からの制御指令に基づいて開閉制御されるようになっている。
【0011】
次に、前記制御部23による濃度検知制御の手順について説明する。制御部23は、システムスタートをすると、初期化し、必要なデータ読み込みをした後、必要制御を実行することになるが、このものでは次のようになっている。第一吸引ポンプ3に対して駆動指令を出力すると共に、第一、第二、第三開閉バルブ4、5、7の開路(「開成」とも表現される。以下同じ。)指令を出力してガス発生施設1で発生したVOCガスの吸着作業の運転を実行することになるが、この場合において、次のようなガス濃度の測定制御の手順が実行される。
【0012】
つまり、システムスタートがなされた最初の段階では、吸引ポンプ14の駆動をした後、第四、第五開閉バルブ10、11を閉路(「閉成」とも表現される。以下同じ。)し、第六開閉バルブ19を開路して清浄空気を濃度センサ15に流して該濃度センサ15を洗浄すると共に、そのガス濃度を測定する清浄空気濃度の測定制御を実行する。
次いで定常状態の測定制御が実行されるが、これは、第四開閉バルブ10を開路し、第五、第六開閉バルブ11、19を閉路して吸着前の空気を濃度センサ15に供給して吸着前空気のガス濃度を測定する吸着前空気濃度の測定制御をした後、前記清浄空気のガス濃度を測定する清浄空気濃度の測定制御をし、しかる後、第四、第六開閉バルブ10、19を閉路し、第五開閉バルブ11を開路して吸着後空気のガス濃度を測定する吸着後空気濃度の測定制御をすることが繰り返されものであり、そして吸着後空気のVOCガス濃度が予め設定される基準値(設定値)を超えた(破過点に達した)と判断された場合、吸引ポンプ14を停止してガス濃度の測定制御を停止すると共に、第一吸引ポンプ3を停止し、第一、第二、第三開閉バルブ4、5、7に対して閉路指令を出力して吸着作業の運転を停止するようになっている。
【0013】
前記測定制御は、まず、前記対応する開閉バルブ10、11、19の開閉指令を出力すると共に、吸引ポンプ14を駆動してガス濃度の測定をしようとする空気を濃度センサ15に供給することになるが、ここでは、開閉バルブ10、11、19の開閉指令出力時間(あるいは吸引ポンプ14の駆動時間)Tと濃度センサ15のセンサ出力取得時間ΔTとが予め設定されている。そして開閉バルブ10、11、19の開閉指令を出力してから時間「T−ΔT」を経過したか否かが判断され、経過したと判断された場合に、開閉バルブ10、11、19に対して開閉指令を出力してから時間「T」を経過するまでのあいだ、濃度センサ15のセンサ出力を取得すると共にそれらの平均値を算出し、これを測定濃度として登録する。そして時間「T」を経過すると、吸引ポンプ14を停止すると共に、開路している開閉バルブ10、11、19に対して閉路指令を出力し、これによってガス濃度の測定が終了するようになっている。
【0014】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、ガス濃度の測定制御として、第四開閉バルブ10を開路し、第五、第六開閉バルブ11、19を閉路して吸着前の空気を濃度センサ15に供給して吸着前空気のガス濃度を測定する吸着前空気濃度の測定制御をした後、第四、第五開閉バルブ10、11を閉路し、第六開閉バルブ19を開路して清浄空気のガス濃度を測定する清浄空気濃度の測定制御をし、しかる後、第四、第六開閉バルブ10、19を閉路し、第五開閉バルブ11を開路して吸着後空気のガス濃度を測定する吸着後空気濃度の測定制御をすることが繰り返し行われることになり、この結果、一つの濃度センサ15を用いて吸着前後のガス濃度の測定ができ、これに基づいて凡その吸着量を求めることができ、これによって吸着槽6のメンテナンス時期等の管理ができることになる。
【0015】
しかもこの場合に、濃度センサ15は、ガス濃度が高い吸着前空気の測定をした後、清浄空気で洗浄される(リフレッシュされる)ため、常時高濃度のガスに曝されている場合に比して安定性が高くなる。しかもこの場合に、濃度センサ15は、洗浄後にガス濃度が測定された吸着後空気は、含有するガス濃度が低いためガスによる汚染は問題にならず、そのためここでは清浄空気で洗浄することなく吸着前空気のガス濃度測定に移行することになるため、その分、吸着前後におけるガス濃度の測定のインターバルが短くなって測定精度の維持が図れる。
【0016】
そのうえ吸着後空気のガス濃度が規定値を超えて破過点に達したことにより吸着運転を停止した後、吸着装置6について活性炭を交換する等の必要なメンテナンスをすることになるが、該メンテナンス後、システムスタートをして吸着運転を再開する場合に、ガス濃度の測定制御として最初の段階では、前述したように清浄空気によるガス濃度の測定制御が実行されるため、濃度センサ15は、前記破過点に達した検知で汚染された状態での運転再開ではなく、清浄化された状態になっての運転再開となり、この結果、濃度測定制御が確実に行われ信頼性の向上が図れることになる。
【0017】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないものであることは勿論であって、清浄空気による濃度センサの洗浄時、必ずしも濃度測定をする必要はないが、ここで濃度を測定することで濃度センサの洗浄度の確認ができることになって都合がよい。またこの場合に、前記実施の形態では、清浄空気による洗浄時間について、吸着前後空気のガス濃度測定時間Tと同じ時間に設定にした(吸着前後のガス濃度測定時間についても異ならしめることができる)が、これに限定されず、洗浄能力に対応して長短自由な時間を設定できる。さらには洗浄しているときに測定されるセンサ値が予め設定される濃度値以下(または未満)になったことの判断で洗浄工程については停止するように設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】制御装置のブロック回路図である。
【図2】有機溶剤のガス濃度の測定装置のフローチャート図である。
【図3】制御手順のフローチャート図である。
【図4】ガス濃度測定手順を記すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ガス発生施設
2 排気流路
3 第一吸引ポンプ
6 吸着槽
10 開閉バルブ
11 開閉バルブ
14 第二吸引ポンプ
15 濃度センサ
16 清浄空気供給装置
19 開閉バルブ
23 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤のガスを含有した空気が流れる空気流路にガス除去手段を設け、該ガス除去手段の前後の空気中のガス濃度を濃度センサを用いて測定するにあたり、濃度センサは、ガス除去手段に至る前の除去前空気流路、ガス除去手段に至った後の除去後空気流路、および清浄空気を供給する清浄空気供給手段からの清浄空気流路に対し、該各流路をそれぞれ開閉できる開閉バルブを介して接続され、これら開閉バルブの開閉制御をする制御手段は、濃度センサに至る空気が除去前空気流路、清浄空気流路、除去後空気流路の順で流れるよう制御するように設定されていることを特徴とする有機溶剤のガス濃度の測定装置。
【請求項2】
濃度センサに至った空気は、除去前空気流路に還元されることを特徴とする請求項1記載の有機溶剤のガス濃度の測定装置。
【請求項3】
制御手段は、システムスタートをした後の最初の段階では、濃度センサに至る空気が除去前空気流路に流れる前に、清浄空気流路の空気が濃度センサに流れるように設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の有機溶剤のガス濃度の測定装置。
【請求項4】
有機溶剤のガスを含有した空気が流れる空気流路にガス除去手段を設け、該ガス除去手段の前後の空気中のガス濃度を濃度センサを用いて測定するにあたり、濃度センサは、ガス除去手段に至る前の除去前空気流路、ガス除去手段に至った後の除去後空気流路、および清浄空気を供給する清浄空気供給手段からの清浄空気流路に対し、該各流路をそれぞれ開閉できる開閉バルブを介して接続され、これら開閉バルブの開閉制御をする制御手段は、濃度センサに至る空気が除去前空気流路、清浄空気流路、除去後空気流路の順で流れるよう制御していることを特徴とする有機溶剤のガス濃度の測定方法。
【請求項5】
制御手段は、システムスタートをした後の最初の段階では、濃度センサに至る空気が除去前空気流路に流れる前に、清浄空気流路の空気が濃度センサに流れるように制御していることを特徴とする請求項4記載の有機溶剤のガス濃度の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−241384(P2008−241384A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80641(P2007−80641)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(399031883)株式会社モリカワ (19)
【Fターム(参考)】