説明

有機溶剤含有ガス回収処理システム

【課題】回転式の吸着体を用いて、低濃度の揮発性有機溶剤を含有する原ガスから当該有機溶剤を回収する有機溶剤含有ガス回収処理システムにおいて、より効率的に吸着および脱着の処理を行なうことのできる有機溶剤含有ガス回収処理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】第1吸着体100、第1吸着部110および第1脱着部120を有する第1濃縮装置1000と、第2吸着体200、第2吸着部210および第2脱着部220を有する第2濃縮装置2000と、回収装置3000とを備える。第1吸着体100は、第2吸着体200よりも有機溶剤に対する吸着除去性能が高い。第2吸着体200は、第1吸着体100よりも有機溶剤に対する飽和吸着容量が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低濃度の揮発性有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガス(以下、原ガスと称する)から有機溶剤を回収する有機溶剤含有ガス回収処理システムに関し、特に、原ガスを濃縮するための回転式の吸着体を備えた有機溶剤含有ガス回収処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図6を参照して、回転式の吸着体10を備えた有機溶剤含有ガス回収処理システムS10の構成について説明する。有機溶剤含有ガス回収処理システムS10は、濃縮装置1と、回収装置3とを備えている。濃縮装置1は、吸着体10、吸着領域11および脱着領域12を有している。回収装置3は、クーラー5および回収部6を有している。
【0003】
吸着体10は筒状であり、筒軸9の周りに回転可能に設けられている。吸着体10は、たとえばハニカム構造(ハニカムローター)を呈している。吸着体10は、回転方向ARに回転することができる。吸着領域11および脱着領域12は、吸着体10の回転方向ARに並んで規定されている。吸着体10が回転することにより、吸着体10は、吸着領域11および脱着領域12の内部を交互に通過する。
【0004】
次に、動作について説明する。吸着体10は連続的に回転方向ARに回転する。吸着体10が回転することにより、吸着体10は吸着領域11に到達する。吸着領域11に到達した後、吸着領域11を通過する吸着体10に、有機溶剤を含有する原ガスG1が供給される。供給された原ガスG1は、吸着体10に含まれる吸着剤と接触する。原ガスG1に含まれる有機溶剤は、当該吸着剤に吸着される。濃縮装置1は、吸着剤により有機溶剤を除去された原ガスG1を、清浄ガスG2として排出する。
【0005】
吸着体10が回転方向ARにさらに回転することにより、吸着体10は脱着領域12に到達する。脱着領域12に到達した後、脱着領域12を通過する吸着体10に脱着用ガス(高温の気体)G3が供給される。脱着用ガスG3は、たとえばヒーター2を用いて高温状態にする。供給された脱着用ガスG3は、有機溶剤を吸着している吸着体10の吸着剤と接触する。吸着体10の吸着剤に吸着している有機溶剤は、当該吸着剤から脱着される。濃縮装置1は、脱着された有機溶剤を、脱着領域12から濃縮ガスG4として排出する。
【0006】
回収装置3は、濃縮ガスG4が供給される。回収装置3は、クーラー5により濃縮ガスG4を冷却し、濃縮ガスG4に含まれる有機溶剤を凝縮させる。回収装置3は、回収部6により凝縮した有機溶剤を回収液7として回収する。なお、クーラー5により凝縮できなかった濃縮ガスG7aについては、脱着用ガスG3と合流させて、ヒーター2により高温状態にした後、再び脱着領域12を通過する吸着体10に供給するよう構成してもよい。また、濃縮ガスG7aについては、図示しない燃焼装置などを用いて酸化分解処理するよう構成してもよい。
【0007】
濃縮装置1の吸着体10は、脱着領域12において有機溶剤が脱着されることにより再生される。再生された吸着体10は、さらに回転することにより吸着領域11に到達する。なお、吸着体10が吸着領域11に到達する前に低温の気体を供給されて冷却されることもある。再生された吸着体10は、再び原ガスG1を供給され、原ガスG1に含まれる有機溶剤を吸着する。有機溶剤含有ガス回収処理システムS10は、上記の一連の動作を繰り返すことにより、大量の原ガスG1を連続的に濃縮することができる。
【0008】
下記の特許文献1には、上記の有機溶剤含有ガス回収処理システムS10と同様の回転式の吸着体を用いたガス吸脱着処理装置が開示されている。当該ガス吸脱着処理装置は、上記の有機溶剤含有ガス回収処理システムS10とは異なる所定の経路により原ガスまたは濃縮ガスなどを導入および排出させている。特許文献1に記載されるガス吸脱着処理装置によれば、所定の経路により上記の有機溶剤含有ガス回収処理システムS10に比べてより高い除去率を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−238046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1に記載されるガス吸脱着処理装置は、吸着・脱着処理を行なうための1つの吸着体と、有機溶剤を回収するための回収装置とを用いて、所定の経路に原ガスまたは濃縮ガスなどを導入および排出させることにより、上記の有機溶剤含有ガス回収処理システムS10に比べてより高い除去率を得ている。
【0011】
ここで、原ガス中に含まれる有機溶剤をより多く除去するためには、吸着体の脱着領域から排出される濃縮ガスの濃度を高くする必要がある。
【0012】
濃縮ガスの濃度を高くするためには、濃縮装置の吸着体(ハニカムローター)の大きさを大きくする必要がある。しかしながら、吸着体の大きさを大きくすると、濃縮装置の全体の大きさが大きくなるばかりでなく、原ガス中に含まれる有機溶剤に対する吸着能(除去性能)が低下し、吸着および脱着を効率的に行なうことができない。
【0013】
濃縮ガスの濃度を高くするためには、脱着領域を通過する吸着体に供給する脱着用ガスの風速を遅くすることが可能である。しかしながら、脱着領域を通過する吸着体に供給する脱着用ガスの風速を遅くすると、濃縮装置全体としての処理速度が低下し、吸着および脱着を効率的に行なうことができない。
【0014】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、回転式の吸着体を用いて、低濃度の揮発性有機溶剤を含有する原ガスから当該有機溶剤を回収する有機溶剤含有ガス回収処理システムにおいて、より効率的に吸着および脱着の処理を行なうことのできる有機溶剤含有ガス回収処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に基づいた有機溶剤含有ガス回収処理システムにおいては、揮発性を有する低濃度の有機溶剤を含有する原ガスから上記有機溶剤を回収する有機溶剤含有ガス回収処理システムであって、第1筒軸の周りに回転可能に設けられた筒状の第1吸着体と、上記第1吸着体の回転方向に並んで規定され上記第1吸着体が回転することにより上記第1吸着体をその内部に交互に通過させる第1吸着領域および第1脱着領域とを有し、上記第1吸着領域を通過する上記第1吸着体に上記原ガスを供給することにより上記原ガスに含有される上記有機溶剤を吸着させ、上記第1脱着領域を通過する上記有機溶剤を吸着した上記第1吸着体に脱着用ガスを供給することにより上記第1吸着体から上記有機溶剤を脱着させ、第1濃縮ガスを排出する第1濃縮装置を備えている。
【0016】
また、第2筒軸の周りに回転可能に設けられた筒状の第2吸着体と、上記第2吸着体の回転方向に並んで規定され上記第2吸着体が回転することにより上記第2吸着体をその内部に交互に通過させる第2吸着領域および第2脱着領域とを有し、上記第2吸着領域を通過する上記第2吸着体に上記第1濃縮ガスを供給することにより上記第1濃縮ガスに含有される上記有機溶剤を吸着させ、上記第2脱着領域を通過する上記第2吸着体に第1不活性化ガスを供給することにより上記第2吸着体から上記有機溶剤を脱着させ、第2濃縮ガスを排出する第2濃縮装置を備えている。
【0017】
さらに、上記第2濃縮ガスが供給され、上記第2濃縮ガスを冷却することにより上記第2濃縮ガスに含まれる上記有機溶剤を凝縮させ、凝縮した上記有機溶剤を回収する回収装置を備えている。上記第1吸着体は、上記第2吸着体よりも上記有機溶剤に対する吸着除去性能が高く、上記第2吸着体は、上記第1吸着体よりも上記有機溶剤に対する飽和吸着容量が大きくなっている。
【0018】
上記発明の他の形態においては、上記第1吸着体に含まれている吸着剤はZSM−5型ゼオライトであり、上記第2吸着体に含まれている吸着剤は、Y型ゼオライト、シリカゲルまたは活性炭のいずれかを含んでいる。
【0019】
上記発明の他の形態においては、上記第1吸着体に含まれている上記吸着剤は、飽和水分吸着率が約0.5重量%以下のZSM−5型ゼオライトである。
【0020】
上記発明の他の形態においては、上記第2脱着領域は、上記第2吸着体の回転方向における上記第2脱着領域の下流側に位置する冷却領域を含み、上記冷却領域を通過する上記第2吸着体に第2不活性化ガスが供給されることにより、上記冷却領域を通過する上記第2吸着体が冷却される。
【0021】
上記発明の他の形態においては、上記冷却領域を通過する上記第2吸着体に上記第2不活性化ガスが供給されることにより第3不活性化ガスが排出され、上記冷却領域から排出された上記第3不活性化ガスの一部または全てを、上記第2脱着領域を通過する上記第2吸着体に供給するための帰還路をさらに備えている。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、回転式の吸着体を用いて、低濃度の揮発性有機溶剤を含有する原ガスから当該有機溶剤を回収する有機溶剤含有ガス回収処理システムにおいて、より効率的に吸着および脱着の処理を行なうことのできる有機溶剤含有ガス回収処理システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1における、有機溶剤含有ガス回収処理システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態2における、有機溶剤含有ガス回収処理システムの全体構成を示す模式図である。
【図3】実施の形態3における、有機溶剤含有ガス回収処理システムの全体構成を示す模式図である。
【図4】実施の形態3に基づく実験(実験1〜実験3)の結果を示す図である。
【図5】実施の形態3に基づく実験(実験1〜実験3)、および比較例1〜比較例4に用いられる吸着剤の特性を示す図である。
【図6】一般的な有機溶剤含有ガス回収処理システムの全体構成を示す模式図である。
【図7】本発明に関する実験(比較例1〜比較例4)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に基づいた各実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1〜S3について、以下、図1〜図3をそれぞれ参照しながら説明する。その後、図4および図5を参照して、本発明(実施の形態3)に基づいた実験結果(実験1〜実験3)について説明する。最後に、図6および図7などを参照して、本発明に関する比較実験結果(比較例1〜比較例4)について説明する。
【0025】
以下に説明する各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。以下に説明する各実施の形態において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0026】
(実施の形態1)
(構成)
図1を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1の構成について説明する。有機溶剤含有ガス回収処理システムS1は、第1濃縮装置1000と、第2濃縮装置2000と、回収装置3000とを備えている。
【0027】
第1濃縮装置1000は、第1吸着体100と、第1吸着領域110および第1脱着領域120とを有している。第1吸着体100は筒状であり、第1筒軸101の周りに回転可能に設けられている。第1吸着体100は、たとえばハニカム構造(ハニカムローター)を呈している。第1吸着体100は、回転方向AR1に回転することができる。
【0028】
第1吸着領域110および第1脱着領域120は、第1吸着体100の回転方向AR1に並んで規定されている。第1吸着体100が回転することにより、第1吸着体100は、第1吸着領域110および第1脱着領域120の内部を交互に通過する。第2濃縮装置2000は、第1濃縮装置1000と略同様の構成である。
【0029】
第2濃縮装置2000は、第2吸着体200と、第2吸着領域210および第2脱着領域220とを有している。第2吸着体200は筒状であり、第2筒軸201の周りに回転可能に設けられている。第2吸着体200は、たとえばハニカム構造(ハニカムローター)を呈している。第2吸着体200は、回転方向AR2に回転することができる。
【0030】
第2吸着領域210および第2脱着領域220は、第2吸着体200の回転方向AR2に並んで規定されている。第2吸着体200が回転することにより、第2吸着体200は、第2吸着領域210および第2脱着領域220の内部を交互に通過する。回収装置3000は、クーラー310および回収部320を有している。
【0031】
ここで、第1濃縮装置1000の第1吸着体100は、第2濃縮装置2000の第2吸着体200よりも、被処理ガスである原ガス(G10)中に含まれる有機溶剤に対する吸着除去性能が高くなるように構成される。また、第2濃縮装置2000の第2吸着体200は、第1濃縮装置1000の第1吸着体100よりも、被処理ガスである原ガス(G10)中に含まれる有機溶剤に対する飽和吸着容量が大きくなるように構成される。
【0032】
より具体的には、たとえば、原ガス(G10)中に含まれる有機溶剤がトルエンであり、原ガス(G10)風量が約120Nm/min、原ガス(G10)濃度が1000ppmである場合には、第1濃縮装置1000の第1吸着体100を次のように構成するとよい。すなわち、第1吸着体100は、約80重量%のZSM−5ゼオライトと、約20重量%の無機繊維若しくは耐熱性有機繊維とを含むように構成された吸着材を用いてハニカム成形された、ディスク型ローターを用いるとよい。このような第1吸着体100に対して、回転速度約3〜約6rph、濃縮倍率約6倍で処理するように構成することで、第1吸着体100は原ガス(G10)中に含まれるトルエンに対して、約98%以上の吸着除去性能(除去率)を得ることができる。
【0033】
一方、第2濃縮装置2000の第2吸着体200は、約75重量%のY型ゼオライトと、約25重量%の無機繊維若しくは耐熱性有機繊維を含むように構成された吸着材を用いてハニカム成形された、ディスク型ローターを用いるとよい。上記のような第1吸着体100の第1脱着領域120を通過した第1濃縮ガスG16は、たとえば風量約24Nm/minである。したがってこのような場合、第2吸着体200に対して、回転速度約1〜約4rph、濃縮倍率10倍で処理するように構成することで、第2吸着体200は第1濃縮ガスG16a中に含まれるトルエンに対して約60%の吸着除去性能(除去率)を得ることができる。
【0034】
なお、第1吸着体100と第2吸着体200とを上記のように構成した場合は、第2吸着体200の第2脱着領域220を通過した第2濃縮ガスG22を、クーラー310により5℃まで冷却し、凝縮させて回収部320において28kg/hrでトルエンを回収するよう構成するとよい。
【0035】
上記の構成とすることにより、第1濃縮装置1000の第1吸着体100の吸着除去性能は約98%以上となり、かつ第2濃縮装置2000の第2吸着体200の吸着除去性能は約60%となる。こうして、第1吸着体100は、第2吸着体200よりも、被処理ガスである原ガス(G10)中に含まれる有機溶剤に対する吸着除去性能が高くなる。
【0036】
また、上記の構成とすることにより、第1濃縮装置1000の第1吸着体100の飽和吸着容量はトルエン約3000ppm、30℃の条件で約5重量%となり、かつ第2濃縮装置2000の第2吸着体200の飽和吸着容量は約15重量%となる。したがって、第2吸着体200は、第1吸着体100よりも、被処理ガスである原ガス(G10)中に含まれる有機溶剤に対する飽和吸着容量が大きくなる。
【0037】
(動作)
図1を引き続き参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1の動作について説明する。第1濃縮装置1000の第1吸着体100は連続的に回転方向AR1に回転する。第1吸着体100が回転することにより、第1吸着体100は第1吸着領域110に到達する。第1吸着領域110に到達した後、第1吸着領域110を通過する第1吸着体100に有機溶剤を含有する原ガスG10が供給される。
【0038】
供給された原ガスG10は、第1吸着体100に含まれる吸着剤と接触する。原ガスG10に含まれる有機溶剤は、当該吸着剤に吸着される。第1濃縮装置1000は、吸着剤により有機溶剤を除去された原ガスG10を、第1吸着領域110から第1清浄ガスG12として排出する。
【0039】
第1濃縮装置1000の第1吸着体100が回転方向AR1にさらに回転することにより、第1吸着体100は第1脱着領域120に到達する。第1脱着領域120に到達した後、第1脱着領域120を通過する第1吸着体100に脱着用ガス(高温の気体)G14が供給される。脱着用ガスG14は、たとえばヒーター14を用いて高温状態にする。
【0040】
脱着用ガスG14は、第1吸着領域110から排出された一部の第1清浄ガスG12aと合流させるよう構成してもよい。この場合、脱着用ガスG14と一部の第1清浄ガスG12aとを、ヒーター14などを用いて高温状態とし、第1脱着領域120を通過する第1吸着体100に供給するように構成するとよい。
【0041】
第1脱着領域120を通過する第1吸着体100に供給された脱着用ガスG14は、有機溶剤を吸着している第1吸着体100の吸着剤と接触する。第1吸着体100の吸着剤に吸着している有機溶剤は、当該吸着剤から脱着される。第1濃縮装置1000は、脱着された有機溶剤を、第1脱着領域120から第1濃縮ガスG16として排出する。
【0042】
排出された第1濃縮ガスG16は、第2濃縮装置2000に供給される。具体的には、第2濃縮装置2000の第2吸着体200は連続的に回転方向AR2に回転している。第2吸着体200が回転することにより、第2吸着体200は第2吸着領域210に到達する。第2吸着領域210に到達した後、第2吸着領域210を通過する第2吸着体200に、有機溶剤を含有する第1濃縮ガスG16が供給される。
【0043】
第1濃縮ガスG16が高温である場合、クーラー17を用いて第1濃縮ガスG16を冷却してもよい。クーラー17により低温の第1濃縮ガスG16aを得て、低温の第1濃縮ガスG16aを、第2吸着領域210を通過する第2吸着体200に供給してもよい。
【0044】
第2吸着領域210を通過する第2吸着体200に供給された第1濃縮ガスG16aは、第2吸着体200に含まれる吸着剤と接触する。第1濃縮ガスG16aに含まれる有機溶剤は、当該吸着剤に吸着される。第2濃縮装置2000は、吸着剤により有機溶剤を除去された第1濃縮ガスG16aを、第2吸着領域210から第2清浄ガスG18として排出する。
【0045】
第1濃縮ガスG16aに含まれる有機溶剤の濃度が、たとえば約9000ppmであるとき、第2清浄ガスG18に含まれる有機溶剤の濃度は、約3000ppmとなる場合がある。したがってこの場合は、第2清浄ガスG18を、ふたたび原ガスG10に合流させて、原ガスG10とともに第1吸着領域110を通過する第1吸着体100に供給するように構成するとよい。また、第2清浄ガスG18の一部またはすべてを、図示しない燃焼装置などを用いて酸化分解処理するように構成してもよい。
【0046】
第2濃縮装置2000の第2吸着体200が回転方向AR2にさらに回転することにより、第2吸着体200は第2脱着領域220に到達する。第2脱着領域220に到達した後、第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に高温の第1不活性化ガスG20が供給される。第1不活性化ガスG20は、たとえばヒーター20を用いて高温状態にする。第1不活性化ガスG20は、たとえば窒素などである。
【0047】
第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給された第1不活性化ガスG20は、有機溶剤を吸着している第2吸着体200の吸着剤と接触する。第2吸着体200の吸着剤に吸着している有機溶剤は、当該吸着剤から脱着される。第2濃縮装置2000は、脱着された有機溶剤を、第2脱着領域220から第2濃縮ガスG22として排出する。第1不活性化ガスG20として窒素を用いると、高温の水蒸気を用いて脱着を行なう場合に比べて第2濃縮ガスG22に含まれる水分濃度を低下させることができる。
【0048】
回収装置3000は、第2濃縮ガスG22が供給される。回収装置3000は、クーラー310により第2濃縮ガスG22を冷却し、第2濃縮ガスG22に含まれる有機溶剤を凝縮させる。回収装置3000は、回収部320により凝縮した有機溶剤を回収液301として回収する。なお、クーラー310により凝縮できなかった濃縮ガスG301aについては、第1不活性化ガスG20と合流させて、ヒーター20により高温状態にした後、再び第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給するよう構成してもよい。また、一部または全ての濃縮ガスG301aを、図示しない燃焼装置などを用いて酸化分解処理するよう構成してもよい。
【0049】
(効果)
第1濃縮装置1000の第1吸着体100は、第1脱着領域120において脱着用ガスG14が供給されることにより再生する。再生された第1吸着体100は、さらに回転することにより、第1吸着領域110において再び原ガスG10に含まれる有機溶剤を吸着する。
【0050】
同様に、第2濃縮装置2000の第2吸着体200は、第2脱着領域220において第1不活性化ガスG20が供給されることにより再生する。再生された第2吸着体200は、さらに回転することにより、第2吸着領域210において再び第1濃縮ガスG16aに含まれる有機溶剤を吸着する。本実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1によれば、上記の一連の動作を繰り返すことにより、大量の原ガスG10を連続的に濃縮することができる。
【0051】
本実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1によれば、第1吸着体100は、第2吸着体200よりも、原ガスG10中に含まれる有機溶剤に対する吸着除去性能が高くなるように構成されている。つまり、第1吸着体100に構成されている吸着剤の細孔径が、第2吸着体200に構成されている吸着剤の細孔径より小さいため、原ガス中の溶剤ガスを素早く吸着できる。したがって、原ガスG10が第1吸着体100を通過した後の、第1清浄ガスG12としての有機溶剤の含有濃度を、効果的に低くすることができる。
【0052】
さらに、第1吸着体100は第2吸着体200に比べて高い吸着除去性能を有しているため、第1吸着体100は第2吸着体200に比べて、有機溶剤の吸着除去に好適である。このため、第1脱着領域120を通過する第1吸着体100に脱着用ガスG14が供給されたとき、排出される第1濃縮ガスG16に含まれる有機溶剤の濃度をより高濃度にすることができる。
【0053】
なお、第1吸着体100に構成されている吸着剤の細孔径と、第2吸着体200に構成されている吸着剤の細孔径とについて、より詳細には次のとおりにするとよい。第1吸着体100の吸着剤の細孔径は、約7Å未満にするとよく、より好ましくは約6Å未満にするとよい。これに対し、第2吸着体200の吸着剤の細孔径は、約7Å以上にするとよい。第2吸着体の吸着剤としてゼオライトまたはシリカゲルを用いる場合、第2吸着体200の吸着剤の細孔径は、約7Å以上約30Å以下にするとよい。各吸着剤の細孔径を上記のとおりにすることにより、原ガスG10が第1吸着体100を通過した後の、第1清浄ガスG12としての有機溶剤の含有濃度を、より効果的に低くすることができる。
【0054】
本実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1によれば、第2吸着体200は、第1吸着体100よりも、被処理ガスである原ガスG10中に含まれる有機溶剤に対する飽和吸着容量が大きくなるように構成されている。つまり、第2吸着体200に構成させている吸着剤の細孔表面積が第1吸着体100に構成されている吸着剤より大きいため、第1濃縮ガスG16aに含まれる有機溶剤を大量に吸着できる。したがって、第1不活性化ガスG20を供給することによって、第2吸着体200の第2脱着領域220から第2濃縮ガスG22が排出されたとき、当該第2濃縮ガスG22中に含まれる有機溶剤の濃度をより高濃度にすることが可能となる。
【0055】
さらに、第2吸着体200は第1吸着体100に比べて大きな飽和吸着容量を有しているため、第2吸着体200は第1吸着体100に比べて有機溶剤の回収に好適である。このため、第2吸着領域210を通過する第2吸着体200に第1濃縮ガスG16aが供給されたとき、より多くの有機溶剤を吸着させることができる。第2吸着体200がより多くの有機溶剤を吸着しているため、第1不活性化ガスG20が供給されたときに排出する第2濃縮ガスG22の濃縮倍率を大幅に向上させることが可能となる。
【0056】
第2濃縮ガスG22の濃縮倍率が向上するため、回収装置3000においてより高濃度の回収液を回収することができる。第2濃縮ガスG22の濃縮倍率が向上するため、回収装置3000に供給する第2濃縮ガスG22の風量を小さくすることも可能であり、さらに回収装置3000の容量も小さくすることが可能である。
【0057】
なお、原ガスG10に含まれる有機溶剤(トルエンとする)の濃度が約3000ppmである場合、第1吸着体100の吸着剤および第2吸着体200の吸着剤の当該有機溶剤に対する飽和吸着容量は、それぞれ次のとおりにするとよい。第1吸着体100の吸着剤の飽和吸着容量は、約10重量%未満にするとよく、より好ましくは、約4重量%以上約8重量%以下にするとよい。これに対し、第2吸着体200の吸着剤の飽和吸着容量は、約10重量%以上にするとよく、より好ましくは、約15重量%以上にするとよい。各吸着剤の飽和吸着容量を上記のとおりにすることにより、第1脱着領域120を通過する第1吸着体100に脱着用ガスG14が供給されたとき、排出される第1濃縮ガスG16に含まれる有機溶剤の濃度をさらに高濃度にすることが可能となる。
【0058】
したがって、本実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1によれば、第1または第2濃縮装置の吸着体の大きさを大きくする必要が無いため、原ガスG10中に含まれる有機溶剤に対する吸着能を低下させることもない。本実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1によれば、冒頭で説明した1つの吸着体を用いる場合に比べ、原ガス中に含まれる有機溶剤をより多く除去することができる。
【0059】
本実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1によれば、第2濃縮ガスG22に含まれる有機溶剤の濃度を高くするために、第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給する第2不活性化ガスG20の風速を遅くする必要がない。
【0060】
したがって、本実施の形態における有機溶剤含有ガス回収処理システムS1によれば、システム全体としての処理速度を低下させることなく、吸着および脱着の処理を効率的に行なうことができる。
【0061】
(実施の形態2)
図2を参照して、有機溶剤含有ガス回収処理システムS2について説明する。有機溶剤含有ガス回収処理システムS1と有機溶剤含有ガス回収処理システムS2とは、第2濃縮装置2000の第2脱着領域220が、冷却領域221を含んでいる点において相違する。
【0062】
より具体的には、第2濃縮装置2000の第2脱着領域220は、第2吸着体200の回転方向AR2における第2脱着領域220の下流側に位置する冷却領域221を含んでいる。冷却領域221を通過する第2吸着体200には、第2不活性化ガスG30が供給される。第2不活性化ガスG30が供給されることにより、冷却領域221を通過する第2吸着体200は冷却される。第2不活性化ガスG30は、たとえば窒素である。
【0063】
冷却領域221を通過する第2吸着体200に第2不活性化ガスG30が供給されることにより、冷却領域221から第3不活性化ガスG32が排出される。第2不活性化ガスG30は、第2脱着領域220の下流側に位置する冷却領域221に供給されるため、冷却領域221から排出された第3不活性化ガスG32には、有機溶剤がほとんど含まれていない場合もある。なお、冷却領域221から排出された一部の第3不活性化ガスG32aを第1濃縮ガスG16a(G16)と合流させ、第1濃縮ガスG16aとともに、第2吸着領域210を通過する第2吸着体200に供給するよう構成してもよい。
【0064】
第2不活性化ガスG30として窒素を用いると、高温の水蒸気を用いて脱着を行なう場合に比べて第3不活性化ガスG32に含まれる水分濃度を低下させることもできる。
【0065】
一般的に、吸着体に吸着した有機溶剤を脱着させるためには、高温の気体が用いられる。高温の気体が吸着体に供給されることにより、吸着体からは有機溶剤が脱着するが、同時に吸着体も加熱されて高温状態となる。吸着体への有機溶剤の吸着量は、低温で大きくなり、高温で小さくなる。回転式の吸着体において、高温状態のまま再び吸着体が吸着領域に到達すると、有機溶剤に対する吸着量の低下を招く。
【0066】
有機溶剤含有ガス回収処理システムS2によれば、第2吸着体200が再び第2吸着領域210に到達する前に、冷却領域221において冷却されるため、高温状態のまま第2吸着体200が第2吸着領域210に到達することがない。有機溶剤含有ガス回収処理システムS2によれば、第2濃縮装置2000における有機溶剤に対する吸着量の低下を防止することができる。
【0067】
(実施の形態3)
図3を参照して、有機溶剤含有ガス回収処理システムS3について説明する。有機溶剤含有ガス回収処理システムS2と有機溶剤含有ガス回収処理システムS3とは、帰還路32をさらに備えている点において相違する。
【0068】
冷却領域221を通過する第2吸着体200に第2不活性化ガスG30が供給されることにより第3不活性化ガスG32が排出される。帰還路32は、排出された第3不活性化ガスG32の一部の第3不活性化ガスG32bを、第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給する。帰還路32は、排出された第3不活性化ガスG32のすべてを、第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給するよう構成してもよい。
【0069】
第3不活性化ガスG32bが低温である場合、ヒーター20により加熱し、第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給するよう構成してもよい。
【0070】
第3不活性化ガスG32bは、第1不活性化ガスG20とともに第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給されてもよいし、第1不活性化ガスG20とは別々に第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給されてもよい。第1不活性化ガスG20とは別々に第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給されるとき、第3不活性化ガスG32bは、第1不活性化ガスG20に対して回転方向AR2の上流側に供給されてもよく、下流側に供給されてもよい。
【0071】
有機溶剤含有ガス回収処理システムS3によれば、第3不活性化ガスG32bを第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給している。第2脱着領域220を通過する第2吸着体200に供給された第3不活性化ガスG32bは、有機溶剤を吸着している第2吸着体200の吸着剤と接触する。第2吸着体200の吸着剤に吸着している有機溶剤は、当該吸着剤から脱着される。第3不活性化ガスG32bは、第1不活性化ガスG20とともに、第2吸着体200から有機溶剤を脱着させる。
【0072】
有機溶剤含有ガス回収処理システムS3によれば、第3不活性化ガスG32bによっても第2脱着領域220を通過する第2吸着体200から有機溶剤を脱着させることができる。有機溶剤含有ガス回収処理システムS3によれば、帰還路32を備えていない場合に比べ、第1不活性化ガスG20の使用量を少なくすることが可能となる。
【0073】
(実験結果)
次に、図4および図5を参照して、上記の実施の形態3の構成に基いた実験結果(実験1〜実験3)について説明する。図4中に示している第1吸着体の吸着剤および第2吸着体の吸着剤(ゼオライトI〜ゼオライトIII,活性炭)は、図5中にその詳細を示している。
【0074】
(実験1)
図4をまず参照して、本実験では、原ガスG10として、成分が酢酸エチル、風量が約120Nm/min、濃度が約500ppmである気体を用いた。第1吸着体100の吸着剤としてゼオライトIを用い、第2吸着体200の吸着剤としてゼオライトIIIを用いた。図5を参照して、ゼオライトIとは、飽和水分吸着率が約2%であり、吸着剤としての構造がZSM−5型のゼオライトである(以下同じ)。ゼオライトIIIとは、飽和水分吸着率が約2%であり、吸着剤としての構造がY型のゼオライトである(以下同じ)。
【0075】
図4を再び参照して、本実験によれば、原ガスG10に含まれる有機溶剤を約98%除去することが可能であった。また、回収した回収液301中の水分濃度は約0.5%であった。
【0076】
(実験2)
本実験では、第1吸着体100の吸着剤としてゼオライトIIを用い、第2吸着体200の吸着剤としてゼオライトIIIを用いた。図5を再び参照して、ゼオライトIIとは、飽和水分吸着率が約0.5%未満であり、吸着剤としての構造がZSM−5型のゼオライトである(以下同じ)。その他の構成は実験1と同様である。
【0077】
図4を再び参照して、本実験によれば、原ガスG10に含まれる有機溶剤を約98%除去することが可能であった。また、回収した回収液301中の水分濃度は約0.2%未満であった。
【0078】
(実験3)
本実験では、原ガスG10として、成分がトルエン、風量が約120Nm/min、濃度が約500ppmである気体を用いた。第1吸着体100の吸着剤としてゼオライトIIを用い、第2吸着体200の吸着剤として活性炭を用いた。図5を再び参照して、活性炭とは、飽和水分吸着率が約10%であり、吸着剤としての構造がヤシガラ炭の活性炭である(以下同じ)。
【0079】
図4を再び参照して、本実験によれば、原ガスG10に含まれる有機溶剤を約98%除去することが可能であった。また、回収した回収液301中の水分濃度は約0.2%未満であった。
【0080】
一般的に、ZSM−5型のゼオライトの表面積は、約400m/g〜約420m/gである。Y型のゼオライトの表面積は約660m/g〜約920m/gである。
【0081】
ゼオライトの上記特性と、実験1〜実験3の結果とから、第1吸着体100はZSM−5型のゼオライトであり、かつ第2吸着体200は、Y型のゼオライトまたは活性炭のいずれかを含んでいるとよいことがわかる。また、第1吸着体100は、飽和水分吸着率が約0.5重量%以下のZSM−5型のゼオライトであるとさらによいことがわかる。
【0082】
これは、原ガスG10は、少なからず湿った状態であり、水分を多く含んでいる場合がある。原ガスG10に一定量の水分が含まれている場合に、第1吸着体100として飽和水分吸着率の高い吸着剤を用いると、第1吸着体100から脱着される第1濃縮ガスG16の中には、有機溶剤だけでなく水分も一緒に含まれることになる。これは、結果として、第2濃縮装置2000を経て回収される回収液301の中にも、水分が所定の量だけ含まれることになる。
【0083】
したがって、第1吸着体100に、飽和水分吸着率の低い吸着剤を使用することで、第1濃縮装置1000から排出される第1濃縮ガスG16にはほとんど水分が含まれないこととなる。これは、結果として、第2濃縮装置2000を経て回収される回収液301の中にも、水分がほとんど含まれないことになる。よって、第1吸着体100は、飽和水分吸着率が約0.5重量%以下のZSM−5型のゼオライトであるとさらによいことがわかる。
【0084】
なお、実験1〜実験3の結果から、第1吸着体100がZSM−5型ゼオライトである場合、第2吸着体200はシリカゲルであってもよいことがわかる。
【0085】
(比較実験結果)
次に、図6および図7を参照して、本発明に関する比較実験結果について説明する。図7中に示す比較例1および比較例2は、図6に示す構成に基づき行なった比較実験結果をそれぞれ示している。図7中に示している(第1)吸着体の吸着剤(ゼオライトIII,活性炭)は、上記実験1〜実験3の場合と同様に、図5中にその詳細を示している。
【0086】
(比較例1)
図6および図7を参照して、本比較例では、原ガス(G1)として、成分が酢酸エチル、風量が約120Nm/min、濃度が約500ppmである気体を用いた。(第1)吸着体10の吸着剤としてゼオライトIIIを用いた。本比較例では、図6に示すように1つの吸着体10のみが用いられている。
【0087】
本比較例によれば、原ガスG1に含まれる有機溶剤を約20%除去することが可能であった。また、回収した回収液7中の水分濃度は約0.5%未満であった。上記の実験1〜実験3と比べると、有機溶剤の除去率が低いことがわかる。
【0088】
(比較例2)
図6および図7を再び参照して、本比較例では、原ガス(G1)として、成分がトルエン、風量が約120Nm/min、濃度が約500ppmである気体を用いた。(第1)吸着体10の吸着剤として活性炭を用いた。本比較例では、比較例1と同様に、1つの吸着体10のみが用いられている。
【0089】
本比較例によれば、原ガスG1に含まれる有機溶剤を約15%除去することが可能であった。また、回収した回収液7中の水分濃度は約0.5%未満であった。上記の実験1〜実験3と比べると、有機溶剤の除去率が低いことがわかる。
【0090】
(他の比較実験結果)
次に、図7を参照して、本発明に関する他の比較実験結果について説明する。図7中に示す比較例3および比較例4は、上記の実施の形態3に対し、第1吸着体100および第2吸着体200に用いる吸着剤を同一のものとして行なった比較実験結果をそれぞれ示している。図7中に示している第1吸着体の吸着剤および第2吸着体の吸着剤(ゼオライトI,ゼオライトIII)は、上記実験1〜実験3の場合と同様に、図5中にその詳細を示している。
【0091】
(比較例3)
本比較例では、原ガス(G10)として、成分が酢酸エチル、風量が約120Nm/min、濃度が約500ppmである気体を用いた。第1吸着体100および第2吸着体200の吸着剤としてゼオライトIを用いた。本比較例では、第1吸着体100および第2吸着体200に用いた吸着剤は同一である。
【0092】
本比較例によれば、原ガスに含まれる有機溶剤を約80%除去することが可能であった。また、回収した回収液(301)中の水分濃度は約0.5%未満であった。上記の実験1〜実験3と比べると、有機溶剤の除去率が低いことがわかる。
【0093】
(比較例4)
本比較例では、原ガス(G10)として、成分が酢酸エチル、風量が約120Nm/min、濃度が約500ppmである気体を用いた。第1吸着体100および第2吸着体200の吸着剤としてゼオライトIIIを用いた。本比較例では、比較例3と同様に、第1吸着体100および第2吸着体200に用いた吸着剤は同一である。
【0094】
本比較例によれば、原ガスに含まれる有機溶剤を約85%除去することが可能であった。また、回収した回収液(301)中の水分濃度は約0.5%未満であった。上記の実験1〜実験3と比べると、有機溶剤の除去率が低いことがわかる。
【0095】
以上、本発明の発明を実施するための形態について説明したが、今回開示された形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1 濃縮装置、2,14,20,33 ヒーター、3 回収装置、5,17 クーラー、6,320 回収部、7,301 回収液、9 筒軸、10 吸着体、11 吸着領域、12 脱着領域、32 帰還路、100 第1吸着体、101 第1筒軸、110 第1吸着領域、120 第1脱着領域、200 第2吸着体、201 第2筒軸、210 第2吸着領域、220 第2脱着領域、221 冷却領域、310 クーラー、1000 第1濃縮装置、2000 第2濃縮装置、3000 回収装置、AR,AR1,AR2 回転方向、G1,G10 原ガス、G2 清浄ガス、G3 脱着用ガス、G4,G7a,G301a 濃縮ガス、G12,G12a 第1清浄ガス、G14 脱着用ガス、G16,G16a 第1濃縮ガス、G18 第2清浄ガス、G20 第1不活性化ガス、G22 第2濃縮ガス、G30 第2不活性化ガス、G32,G32a,G32b 第3不活性化ガス、S1,S2,S3,S10 有機溶剤含有ガス回収処理システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性を有する低濃度の有機溶剤を含有する原ガスから前記有機溶剤を回収する有機溶剤含有ガス回収処理システムであって、
第1筒軸の周りに回転可能に設けられた筒状の第1吸着体と、前記第1吸着体の回転方向に並んで規定され前記第1吸着体が回転することにより前記第1吸着体をその内部に交互に通過させる第1吸着領域および第1脱着領域とを有し、前記第1吸着領域を通過する前記第1吸着体に前記原ガスを供給することにより前記原ガスに含有される前記有機溶剤を吸着させ、前記第1脱着領域を通過する前記有機溶剤を吸着した前記第1吸着体に脱着用ガスを供給することにより前記第1吸着体から前記有機溶剤を脱着させ、第1濃縮ガスを排出する第1濃縮装置と、
第2筒軸の周りに回転可能に設けられた筒状の第2吸着体と、前記第2吸着体の回転方向に並んで規定され前記第2吸着体が回転することにより前記第2吸着体をその内部に交互に通過させる第2吸着領域および第2脱着領域とを有し、前記第2吸着領域を通過する前記第2吸着体に前記第1濃縮ガスを供給することにより前記第1濃縮ガスに含有される前記有機溶剤を吸着させ、前記第2脱着領域を通過する前記第2吸着体に第1不活性化ガスを供給することにより前記第2吸着体から前記有機溶剤を脱着させ、第2濃縮ガスを排出する第2濃縮装置と、
前記第2濃縮ガスが供給され、前記第2濃縮ガスを冷却することにより前記第2濃縮ガスに含まれる前記有機溶剤を凝縮させ、凝縮した前記有機溶剤を回収する回収装置と、を備え、
前記第1吸着体は、前記第2吸着体よりも前記有機溶剤に対する吸着除去性能が高く、
前記第2吸着体は、前記第1吸着体よりも前記有機溶剤に対する飽和吸着容量が大きい、
有機溶剤含有ガス回収処理システム。
【請求項2】
前記第1吸着体に含まれている吸着剤はZSM−5型ゼオライトであり、
前記第2吸着体に含まれている吸着剤は、Y型ゼオライト、シリカゲルまたは活性炭のいずれかを含む、
請求項1に記載の有機溶剤含有ガス回収処理システム。
【請求項3】
前記第1吸着体に含まれている前記吸着剤は、飽和水分吸着率が約0.5重量%以下のZSM−5型ゼオライトである、
請求項2に記載の有機溶剤含有ガス回収処理システム。
【請求項4】
前記第2脱着領域は、前記第2吸着体の回転方向における前記第2脱着領域の下流側に位置する冷却領域を含み、
前記冷却領域を通過する前記第2吸着体に第2不活性化ガスが供給されることにより、前記冷却領域を通過する前記第2吸着体が冷却される、
請求項1から3のいずれかに記載の有機溶剤含有ガス回収処理システム。
【請求項5】
前記冷却領域を通過する前記第2吸着体に前記第2不活性化ガスが供給されることにより第3不活性化ガスが排出され、
前記冷却領域から排出された前記第3不活性化ガスの一部または全てを、前記第2脱着領域を通過する前記第2吸着体に供給するための帰還路をさらに備えた、
請求項4に記載の有機溶剤含有ガス回収処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−62645(P2011−62645A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215809(P2009−215809)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】