説明

有機溶剤回収システム

【課題】水素やアセチレンなどの反応性の高いガスをキャリアガスとした有機溶剤含有被処理ガスを処理する場合において、安全に処理することができ、不活性ガスの消費量を抑制した処理装置を提供する。
【解決手段】吸着材を充填した複数基の吸着槽を備えた有機溶剤回収装置において、
各吸着槽に有機溶剤を含有する被処理ガスを導入し、有機溶剤を該吸着槽に充填された吸着材で吸着処理し、有機溶剤濃度が減少した処理済みガスを排出する吸着工程と、
該吸着槽における吸着処理が完了した後に、該吸着槽へ水蒸気を導入し、吸着層に充填された吸着材から有機溶剤を脱着し、それによって吸着材を再生する脱着工程を、
交互に繰り返す有機溶剤回収装置であって、
該被処理ガスを導入する前に、該吸着槽及び配管を不活性ガスで置換し、酸素濃度を低下させた後に、
該被処理ガスを処理する有機溶剤回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性の高いガスである水素やアセチレンなどをキャリアガスとした有機溶剤含有ガスを、好適に処理することができる有機溶剤回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場などから排出される有機溶剤含有ガスを、有機溶剤回収装置により吸着、回収することで清浄化し、地球環境を改善する取り組みが多数なされている。
【0003】
従来、有機溶剤を有機溶剤含有ガスから回収・再利用し、かつ有機溶剤が大気中へ放出することを防ぐ処理装置において、吸着材として粒状活性炭または活性炭素繊維を充填させた吸着槽を2基以上有し、さらに各吸着槽へ有機溶剤含有被処理ガスを供給する吸着手段と、水蒸気を噴出する脱着手段とを設け、前記吸着槽にて被処理ガスを吸着する工程と脱着手段にて脱着する工程とを交互に行うことで、連続的に有機溶剤含有ガスを処理することができるシステムを設けた構成がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ただし、上記システムでは、水素やアセチレンなどの反応性の高いガスをキャリアガスとした有機溶剤含有ガスを処理する場合においては、装置内の配管及び吸着槽などに滞留している酸素と前記ガスが激しく反応し爆発する恐れがあった。
【0005】
そのため、反応性の高いガスをキャリアガスとした有機溶剤含有ガスを処理する場合においては、予め装置内の配管及び吸着槽などを不活性ガスにてパージしておくことで、安全に有機溶剤含有ガスのみを吸着処理することができ、処理ガスは大気中へ放出するあるいは再度製造工程に戻すなどの処置を行うことが可能であった。
【0006】
しかし、上記システムでは、装置内の配管及び吸着槽などをパージするために使用する不活性ガスも、キャリアガスと同時に装置外へ放出されてしまい、不活性ガスの消費量が多く、ランニングコストが多くかかってしまうといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−66605号公報
【特許文献2】特開平8−47638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は水素やアセチレンなどの反応性の高いガスをキャリアガスとした有機溶剤含有被処理ガスを処理する場合において、安全に処理することができ、不活性ガスの消費量を抑制した処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の構成からなる。
1.吸着材を充填した複数基の吸着槽を備えた有機溶剤回収装置において、
各吸着槽に有機溶剤を含有する被処理ガスを導入し、有機溶剤を該吸着槽に充填された吸着材で吸着処理し、有機溶剤濃度が減少した処理済みガスを排出する吸着工程と、
該吸着槽における吸着処理が完了した後に、該吸着槽へ水蒸気を導入し、吸着層に充填された吸着材から有機溶剤を脱着し、それによって吸着材を再生する脱着工程を、
交互に繰り返す有機溶剤回収装置であって、
該被処理ガスを導入する前に、該吸着槽及び配管を不活性ガスで置換し、酸素濃度を低下させた後に、
該被処理ガスを処理する有機溶剤回収装置。
2.処理済みガスの一部を、吸着槽導入前の被処理ガスに戻す配管を有する上記1記載の有機溶剤回収装置。
3.有機溶剤回収装置内の吸着槽内の酸素濃度が8%以下である上記1または2の有機溶剤回収装置。
4.吸着材が粒状活性炭または繊維状活性炭である上記1〜3のいずれかに記載の有機溶剤回収装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機溶剤回収装置を用いることで、水素やアセチレンなどの反応性の高いガスをキャリアガスとした有機溶剤含有ガスを、安全に処理することができ、さらに使用する不活性ガスを循環、再利用させることでランニングコストを大幅に低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による有機溶剤回収装置の一例を示したものである。
【図2】一般的な有機溶剤回収装置の一例を示したものである。
【図3】従来の不活性ガスを導入する機構を備えた有機溶剤回収装置の一例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者は、吸着材を充填した複数基の備えた吸着槽を有する有機溶剤回収装置において、有機溶剤を含有する被処理ガスのキャリアガスが、反応性の高いガス、例えば、水素、アセチレンなどの酸素と反応することで爆発の危険性のあるガスである場合、該被処理ガスを吸着槽に導入し、上記有機溶剤のみを吸着槽に充填された吸着材へ吸着させ有機溶剤濃度が減少した処理済みガスを排出する吸着工程と、該吸着槽における吸着処理が完了した後に、該吸着槽へ水蒸気を導入し、吸着槽に充填された吸着材から有機溶剤を脱着し、それによって吸着材を再生する脱着工程と、脱着の際に発生する有機溶剤含有水蒸気を凝縮、分離することで回収する回収工程を行う際に、被処理ガスを吸着槽に導入する前に上記回収装置内を不活性ガスで置換し、さらに被処理ガスと共に不活性ガスを注入し処理を行い、不活性ガスを含んだ処理ガスの一部を被処理ガス側に戻すことで不活性ガスを循環、再利用することができ、ランニングコストを大幅に低減させることができることを見出した。
【0013】
該有機溶剤が発熱性が高い溶剤の場合や、有機溶剤を爆発下限以上で処理せざるを得ず装置内で爆発する危険性がある場合においても、上記回収装置を用いることで安全に処理することが可能である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態を図1にて説明する。有機溶剤含有被処理ガス2は送風機3にて、吸着工程中の吸着槽7に、自動下ダンパー5または6より送られる。被処理ガス中の有機溶剤は吸着工程中の吸着槽7内に充填されている吸着材8の通過中に吸着され、処理済みガスは自動上ダンパー10または11を通り、排気口9へ送られて大気中に放出される。
【0015】
一方、脱着工程中の吸着槽7内に充填されている吸着材8に吸着された有機溶剤は、水蒸気ライン12より導入された水蒸気によって脱着され、回収ライン13を通じてコンデンサー16へ導入され凝縮され、凝集された有機溶剤は回収溶剤15として得られる。
【0016】
本装置においては、有機溶剤含有被処理ガス2を吸着工程の吸着槽に導入する前に、不活性ガス注入ライン17より回収装置内に不活性ガスを注入し、回収装置内の酸素濃度を低下させておき、さらに、その後有機溶剤含有被処理ガス2と同時に不活性ガス導入ライン17より不活性ガスを導入し処理を行う。
【0017】
排気口9より放出される不活性ガスを含んだ処理済みガスの一部を、戻りライン18より吸着槽導入前の被処理ガスに戻すことで不活性ガスを循環させることが好ましい。
【0018】
前記不活性ガスを含んだ処理済みガスの一部を吸着槽導入前の被処理ガスに戻すラインの途中にデミスター19を設置しても良い。そうすることで被処理ガスの湿度を低減させることができ処理性能の向上が見込める。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の有機溶剤回収装置を用いることで、水素やアセチレンなどの反応性の高いガスをキャリアガスとした有機溶剤含有ガスを、安全に処理することができ、さらに使用する不活性ガスを循環、再利用させることでランニングコストを大幅に低減させることが可能であり、産業界に寄与すること大である。
【符号の説明】
【0020】
1 有機溶剤含有ガス処理装置
2 有機溶剤含有被処理ガス
3 送風機
4 送風ダクト
5、6 自動下ダンパー
7 吸着槽
8 吸着材
9 排気口
10、11 自動上ダンパー
12 水蒸気ライン
13 回収ライン
14 溶剤回収部
15 回収溶剤
16 コンデンサー
17 不活性ガス導入ライン
18 戻りライン
19 デミスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材を充填した複数基の吸着槽を備えた有機溶剤回収装置において、
各吸着槽に有機溶剤を含有する被処理ガスを導入し、有機溶剤を該吸着槽に充填された吸着材で吸着処理し、有機溶剤濃度が減少した処理済みガスを排出する吸着工程と、
該吸着槽における吸着処理が完了した後に、該吸着槽へ水蒸気を導入し、吸着層に充填された吸着材から有機溶剤を脱着し、それによって吸着材を再生する脱着工程を、
交互に繰り返す有機溶剤回収装置であって、
該被処理ガスを導入する前に、該吸着槽及び配管を不活性ガスで置換し、酸素濃度を低下させた後に、
該被処理ガスを処理する有機溶剤回収装置。
【請求項2】
処理済みガスの一部を、吸着槽導入前の被処理ガスに戻す配管を有する請求項1記載の有機溶剤回収装置。
【請求項3】
有機溶剤回収装置内の吸着槽内の酸素濃度が8%以下である請求項1または2の有機溶剤回収装置。
【請求項4】
吸着材が粒状活性炭または繊維状活性炭である上記1〜3のいずれかに記載の有機溶剤回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71115(P2013−71115A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214733(P2011−214733)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】