説明

有機無機複合材料

【課題】線膨張率が従来より小さい基板を与えることが可能な材料を提供する。

【解決手段】ガラス状物質と樹脂とが混合されてなり、該ガラス状物質が、アルキル基および/またはアリール基とSiおよびOとを含有する物質であることを特徴とする有機無機複合材料。ガラス状物質が、さらにPを含有する物質である前記の有機無機複合材料。形状が、シート状である前記の有機無機複合材料。前記の有機無機複合材料を有する基板。アルキル基および/またはアリール基とSiおよびOとを含有するガラス状物質と有機溶媒(A)とを含有するガラス形成液と、樹脂と有機溶媒(B)とを含有する樹脂形成液とを混合し、得られる液状物質を塗布板上に塗布し、次いで乾燥させ、塗布板上に得られたシート状有機無機複合材料を剥離することを特徴とするシート状有機無機複合材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機複合材料に関する。詳しくは、基板に用いられる有機無機複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
基板は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の装置に用いられている。従来の基板としては、基板材料としてシクロオレフィンポリマーを用いた基板が、特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−202091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の基板は線膨張率が大きく、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の装置に用いると、基板上に電極を設ける際に亀裂が入り、電極の抵抗が大きくなる場合がある。本発明の目的は、線膨張率が従来より小さい基板を与えることが可能な材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記の発明を提供するものである。
<1>ガラス状物質と樹脂とが混合されてなり、該ガラス状物質が、アルキル基および/またはアリール基とSiおよびOとを含有する物質であることを特徴とする有機無機複合材料。
<2>ガラス状物質が、さらにPを含有する物質である前記<1>記載の有機無機複合材料。
<3>ガラス状物質が、式xR12SiO・(1/3)yP25・(2−(2/3)y)H3PO4(ただし、xは1以上4以下の範囲の値であり、yは0以上3以下の範囲の値であり、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基を示す。)で示される組成を有する物質である前記<1>または<2>に記載の有機無機複合材料。
<4>ガラス状物質が、式(a−b)R12SiO・(1/3)cP25・bMO・(2−(2/3)c)H3PO4(ただし、aは2以上3以下の範囲の値であり、bは0以上1.5以下の範囲の値であり、cは0以上3以下の範囲の値であり、R1およびR2は、上記と同じ意味を有し、Mは金属元素を示す。)で示される組成を有するガラス状物質である前記<1>または<2>に記載の有機無機複合材料。
<5>R1およびR2のうち少なくとも1つがフェニル基である前記<3>または<4>に記載の有機無機複合材料。
<6>Mが2価のSnである前記<4>に記載の有機無機複合材料。
<7>樹脂が熱可塑性樹脂である前記<1>〜<6>のいずれかに記載の有機無機複合材料。
<8>形状が、シート状である前記<1>〜<7>のいずれかに記載の有機無機複合材料。
<9>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の有機無機複合材料を有する基板。
<10>前記<9>記載の基板を有する装置。
<11>アルキル基および/またはアリール基とSiおよびOとを含有するガラス状物質と有機溶媒(A)とを含有するガラス形成液と、樹脂と有機溶媒(B)とを含有する樹脂形成液とを混合し、得られる液状物質を塗布板上に塗布し、次いで乾燥させ、塗布板上に得られたシート状有機無機複合材料を剥離することを特徴とするシート状有機無機複合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の有機無機複合材料からなるシート状の有機無機複合材料は、従来の基板より線膨張率が小さいことから、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の装置用の基板として好適である。また、本発明のシート状の有機無機複合材料は、さらに、可撓性を有することから、フレキシブルディスプレイ用の基板、照明装置の基板、包装材用としても好適である。そして、本発明の製造方法によれば、上記の用途に用いることが可能なシート状有機無機複合材料を、より簡便な操作で安価に製造することができる。以上のことから、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の有機無機複合材料は、ガラス状物質と樹脂とが混合されてなり、該ガラス状物質が、アルキル基および/またはアリール基とSiおよびOとを含有する物質であることを特徴とする。
【0008】
上記ガラス状物質において、アルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基を挙げることができる。また、アリール基としては、炭素数6〜12のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、1,3,5−トリメチルフェニル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、1,3,5−トリエチルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基を挙げることができる。
【0009】
上記ガラス状物質は、アルキル基および/またはアリール基とSiおよびOとを含有し、さらに、P、B、Ge、Ca、Mg、Sr、Ba、Ga、Sn、Zn、Sb、Biを含有していてもよい。ガラス状物質の有機溶媒への溶解性の観点において、Pが好ましい。
【0010】
本発明において、ガラス状物質として具体的には、式(1)で示される組成を有するガラス状物質を挙げることができる。
xR12SiO・(1/3)yP25・(2−(2/3)y)H3PO4 (1)
(ただし、xは1以上4以下の範囲の値であり、yは0以上3以下の範囲の値であり、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基を示す。)
【0011】
式(1)において、xは2以上3以下の範囲の値が好ましく、x=3である場合がより好ましい。式(1)におけるR1、R2として具体的には上述の基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、1,3,5−トリメチルフェニル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、1,3,5−トリエチルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基を挙げることができ、ガラス状物質の有機溶媒への溶解性の観点において、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、R1とR2の一方がフェニル基である場合がより好ましく、R1とR2の一方がフェニル基で他方がメチル基である場合がさらにより好ましい。
【0012】
また本発明において、ガラス状物質として具体的には、式(2)で示される組成を有するガラス状物質を挙げることができる。
(a−b)R12SiO・(1/3)cP25・bMO・(2−(2/3)c)H3PO4 (2)
(ただし、aは2以上3以下の範囲の値であり、bは0以上1.5以下の範囲の値であり、cは0以上3以下の範囲の値であり、R1およびR2は、上記と同じ意味を有し、Mは2価の金属元素を示す。)
【0013】
式(2)において、好ましいaおよびbの値としては、a=3かつbが0.5以上1以下の範囲の値であることが好ましい。式(2)におけるR1、R2として具体的には上述の基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、1,3,5−トリメチルフェニル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、1,3,5−トリエチルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基を挙げることができ、ガラス状物質の有機溶媒への溶解性の観点において、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、R1とR2の一方がフェニル基である場合がより好ましく、R1とR2の一方がフェニル基で他方がメチル基である場合がさらにより好ましい。式(2)におけるMとしては、Ca、Mg、Sr、Ba、Ga、Sn、Znからなる群より選ばれる1種以上を挙げることができ、SnおよびZnからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、2価のSnがより好ましい。
【0014】
本発明におけるガラス状物質の組成は、例えば、蛍光X線、赤外線、ガスクロマトグラフィーを用いることにより、分析することができる。
【0015】
本発明において、樹脂として具体的には、熱可塑性樹脂を挙げることができ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度、高密度)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体;ポリメチルメタクリルイミドなどのアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン−アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどの疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などの水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチック系樹脂を挙げることができる。
【0016】
上記の熱可塑性樹脂の中でも、本発明の有機無機複合材料をディスプレイ用基板等の光を取り出す用途にも用いる観点から、透明であることが好ましい。また、上記の熱可塑性樹脂の中でも、基板の線膨張率をさらにより小さくする観点では、そのTg(ガラス転移点)は、150℃以上であることが好ましく、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。また、本発明の有機無機複合材料の形成が容易である観点から、本発明の有機無機複合材料の製造が容易である観点では、上記熱可塑性樹脂の中でも、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂から選ばれる樹脂を選択することが好ましい。
【0017】
本発明において、ガラス状物質と樹脂とが混合されてなるとは、ガラス状物質が樹脂中に分散している状態で存在してなるか、または、樹脂がガラス状物質中に分散している状態で存在してなることを意味する。本発明の有機無機複合材料からなる基板の可撓性を高める観点では、ガラス状物質が樹脂中に分散している状態で存在してなることが好ましい。また、ガラス状物質と樹脂との混合比率は、ガラス状物質:樹脂の重量比において、通常、10重量%〜70重量%:90重量%〜30重量%であり、本発明の有機無機複合材料からなる基板の可撓性を高める観点で好ましくは、20重量%〜60重量%:80重量%〜40重量%である。
【0018】
また、本発明の有機無機複合材料は、その効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0019】
次に本発明の有機無機複合材料の製造方法について説明する。
本発明におけるガラス状物質は、アルキル基および/またはアリール基を有するクロロシランを用いて製造することができる。さらには、該クロロシランとリン酸または亜リン酸とを反応させることにより、Pを含有するガラス状物質を製造することができる。該ガラス状物質が、Ge、Ca、Mg、Sr、Ba、Ga、Sn、Zn、Sb、Biを含有する場合にはそれぞれの塩化物を反応中に共存させればよい。またBを含有する場合にはホウ酸を共存させればよい。
【0020】
アルキル基および/またはアリール基を有するクロロシランとしては、Si原子にアルキル基および/またはアリール基が2個、塩素原子が2個結合したジクロロシランが好ましく、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルエチルジクロロシランがより好ましい。
【0021】
本発明におけるガラス状物質として好ましいガラス状物質である上記式(1)で示される組成を有するガラス状物質を製造するには、クロロシラン:リン酸または亜リン酸モル比が所定の比率となるように秤量し、混合して反応させ、ガラス状物質とする。なお、この反応は室温でも進行するが、短時間で終了させるために、250℃までの温度で加熱して進めてもよい。
【0022】
所定の比率は、クロロシランのモル量とリン酸または亜リン酸モル量の比が、Si:P=1:2〜4:2となる範囲の比であり、Si:P=2:2〜3:2の範囲が好ましく、Si:P=3:2となる場合がより好ましい。
【0023】
また、本発明において、ガラス状物質として好ましいガラス状物質である式(2)で示される組成を有するガラス状物質を用いる場合は、このガラス状物質は、金属元素を含む塩化物を反応中に共存させて、上記の式(1)で示される組成を有するガラス状物質と同様にして製造することができる。
【0024】
上記により得られるガラス状物質は有機溶媒(A)に溶解させることができる。有機溶媒(A)としては、ケトン類およびトルエンからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、溶解性の観点において、トルエン、アセトン、2−ペンタノンおよび2−ヘプタノンからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、2−ペンタノンおよび2−ヘプタノンからなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましい。これらの有機溶媒(A)を用いて、ガラス状物質を溶解させ、ガラス状物質と有機溶媒(A)を含有するガラス形成液を製造する。溶解を促進させる目的で、溶解の前にガラス状物質を、乳鉢、ローラー粉砕機、ボールミル、振動ミル等の工業的に通常用いられる粉砕機を用いて粉砕してもよい。また、有機溶媒と該ガラス状物質をボールミルや振動ミル等の粉砕機に仕込んで粉砕と溶解を同時に行ってもよい。
【0025】
本発明において、樹脂としては上記のものを挙げることができ、これらの樹脂は有機溶媒(B)に溶解させることができる。有機溶媒(B)としては、例えば、水、メタノール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、アセトン、N−メチルピロリドン、ケトン類等が挙げられる。これらの有機溶媒(B)を用いて、樹脂を溶解させ、樹脂と有機溶媒(B)を含有する樹脂形成液を製造する。
【0026】
ガラス状物質と有機溶媒(A)を含有するガラス形成液と、樹脂と有機溶媒(B)を含有する樹脂形成液とを混合し、得られる液状物質を乾燥することにより、本発明の有機無機複合材料を得ることができる。混合方法としては、例えば、攪拌による方法を挙げることができる。乾燥方法としては、減圧乾燥、熱風乾燥、赤外線乾燥等を挙げることができ、目視で、液状物質から固形分に変化したと認められる程度にまで乾燥する。
有機溶媒(B)は有機溶媒(A)との相溶性の観点から、ケトン類およびトルエンからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、トルエン、アセトン、2−ペンタノンおよび2−ヘプタノンからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。有機溶媒(A)と有機溶媒(B)とは同じであるのがよい。
【0027】
上記には、液状物質を得るために、ガラス形成液と樹脂形成液とを混合する方法を示しているが、ガラス形成液に樹脂を溶解させる方法、樹脂形成液にガラス状物質を溶解させる方法、また、樹脂とガラス状物質とを加熱混練して得られた混練物を有機溶媒に溶解させる方法を挙げることができる。これらの方法の中で、有機無機複合材料の成分制御の観点で好ましいのは、ガラス形成液と樹脂形成液とを混合する方法である。
【0028】
また液状物質中におけるガラス状物質および樹脂の固形分の濃度[(ガラス状物質の重量+樹脂の重量)/(液状物質の重量)×100]は、通常5〜50重量%であり、好ましくは10〜35重量%である。固形分の濃度が5重量%よりも少ないと、シート状有機無機複合材料を得る場合には、シート厚みの制御が困難になる場合があり、また、50重量%よりも多いと、混合物の液の粘度が高く、液状物質の操作性が問題となる場合もある。
【0029】
また、本発明における有機無機複合材料の成分は、例えば、蛍光X線、赤外線、ガスクロマトグラフィー、SEMを用いることにより、分析することができる。
【0030】
本発明の有機無機複合材料を、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、照明装置等の装置用の基板として用いるには、有機無機複合材料の形状をシート状とするのがよい。
【0031】
シート状有機無機複合材料を得るには、上記により得られる液状物質を、塗布板の上に塗布し、乾燥して、必要に応じて剥離すればよい。より具体的には、塗布は、液状物質を塗工液として、ガラス、金属、樹脂フィルム等を塗布板として用い、ダイレクトグラビア法やリバースグラビア法及びマイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、及びドクターナイフ法やダイコート法、ディップコート法、バーコーティング法やこれらを組み合わせたコーティング法などにより行うことができる。乾燥方法としては、減圧乾燥、熱風乾燥、赤外線乾燥等を挙げることができ、乾燥温度は、樹脂の耐熱温度にもよるが、通常は室温〜400℃である。
【0032】
上記により得られるシート状有機無機複合材料について、加熱処理(アニール)を行い、該材料中のガラス状物質をより硬化してもよい。このときの加熱は、通常、上記の乾燥した温度よりも高い温度で、樹脂の耐熱温度より低い温度範囲で行うのがよい。ここで言う樹脂の耐熱温度とは、樹脂が分解・変質する温度である。加熱は、上記の乾燥方法と同様に行えばよいが、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0033】
シート状有機無機複合材料の厚みとしては、通常は20μm〜1000μm(1mm)の範囲であり、可撓性を高める観点で好ましくは、30μm以上300μm以下の範囲である。
【0034】
また、本発明のシート状有機無機複合材料は、導電層、透明導電層、保護層、光反射層、偏光層、発光層等の層が1層以上積層されていてもよい。
【0035】
本発明の有機無機複合材料は、シート状とした場合に、その線膨張率が小さく、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、照明装置等の装置の基板材料として有用である。なお、本発明における装置は、本発明の有機無機複合材料を有する基板を有するものであれば、上記に挙げた装置に限定されなくてもよいし、また上記の装置が発現する機能(例えば、発光、偏光等の機能)を示す最小の構成要素、例えば、当該基板上に電極、発光層、偏光層等を有するものであってもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。
実施例1
・ガラス形成液の製造
ガラス状物質の原料としてフェニルメチルジクロロシラン(PhMeSiCl2、信越化学株式会社)とリン酸(H3PO4、和光純薬株式会社製)を用いた。両者の混合比はモル比で3:2(Si−ClとH−POが全量反応する量論比)とした。攪拌羽根を有する反応容器を用いて、窒素雰囲気下で、容器内にリン酸を投入した。50℃に加熱し、攪拌しながらフェニルジクロロシランをリン酸に滴下した。反応物は極めて粘調で白濁した発泡体となった。その後100℃、150℃、200℃で順次それぞれ1時間保持し、試料中のHClガスを除去し、透明な粘調液体を得た。この試料を室温まで冷却し、3MePhSiO・P25で表される組成を有するガラス状物質を得た。該ガラス状物質を破砕し粉末状にした後、粉末と同重量のトルエンを添加し、窒素雰囲気下で攪拌することによりガラス形成液1を製造した。
・樹脂形成液の製造
500mL容器に、シクロオレフィンポリマー(以下、COPという。JSR株式会社製、商品名アートンF5023)30gと、トルエン70gとを入れ、80℃にて1時間攪拌し、COPの30重量%トルエン溶液である樹脂形成液2を製造した。
・液状物質の製造
2.6gのガラス形成液1と7.4gの樹脂形成液2とを、攪拌3分、脱泡2分行うことにより混合し、透明の液状物質3を得た。
・シート状有機無機複合材料の製造
バーコータによるコーティング法を用いてガラス基板(塗布板)上に、液状物質3(塗工液)を塗布し、オーブンにより130℃窒素雰囲気下で乾燥し、シート状有機無機複合材料をガラス基板上に得た。さらにオーブンにより250℃窒素雰囲気下で加熱処理を行い、シート状有機無機複合材料1をガラス基板から剥離した。
・シート状有機無機複合材料の評価
シート状有機無機複合材料1を、熱分析装置(セイコーインスツルメント株式会社製、熱分析システムSSC5000型)を用い、昇温速度を10℃/分として線膨張率を測定(JIS K−7197)したところ、40℃〜80℃の平均線膨張率は26ppm/℃(26×10-6/℃)であり、線膨張率が小さいことがわかった。また、シート状有機無機複合材料1は、透明であり、可撓性を有していたことから、フレキシブルディスプレイ用の基板として有用であることがわかる。
【0037】
比較例1
塗工液として樹脂形成液2を用いた以外は、実施例1と同様にして、COPからなるシート状樹脂を得た。実施例1と同様の方法で、線膨張率を測定したところ、40℃〜80℃の平均線膨張率は80ppm/℃(80×10-6/℃)であり、線膨張率が大きいことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス状物質と樹脂とが混合されてなり、該ガラス状物質が、アルキル基および/またはアリール基とSiおよびOとを含有する物質であることを特徴とする有機無機複合材料。
【請求項2】
ガラス状物質が、さらにPを含有する物質である請求項1記載の有機無機複合材料。
【請求項3】
ガラス状物質が、式xR12SiO・(1/3)yP25・(2−(2/3)y)H3PO4(ただし、xは1以上4以下の範囲の値であり、yは0以上3以下の範囲の値であり、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基を示す。)で示される組成を有するガラス状物質である請求項1または2に記載の有機無機複合材料。
【請求項4】
ガラス状物質が、式(a−b)R12SiO・(1/3)cP25・bMO・(2−(2/3)c)H3PO4(ただし、aは2以上3以下の範囲の値であり、bは0以上1.5以下の範囲の値であり、cは0以上3以下の範囲の値であり、R1およびR2は、上記と同じ意味を有し、Mは金属元素を示す。)で示される組成を有するガラス状物質である請求項1または2に記載の有機無機複合材料。
【請求項5】
1およびR2のうち少なくとも1つがフェニル基である請求項3または4に記載の有機無機複合材料。
【請求項6】
Mが2価のSnである請求項4に記載の有機無機複合材料。
【請求項7】
樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1〜6のいずれかに記載の有機無機複合材料。
【請求項8】
形状が、シート状である請求項1〜7のいずれかに記載の有機無機複合材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の有機無機複合材料を有する基板。
【請求項10】
請求項9記載の基板を有する装置。
【請求項11】
アルキル基および/またはアリール基とSiおよびOとを含有するガラス状物質と有機溶媒(A)とを含有するガラス形成液と、樹脂と有機溶媒(B)とを含有する樹脂形成液とを混合し、得られる液状物質を塗布板上に塗布し、次いで乾燥させ、塗布板上に得られたシート状有機無機複合材料を剥離することを特徴とするシート状有機無機複合材料の製造方法。

【公開番号】特開2008−1765(P2008−1765A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171032(P2006−171032)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】