説明

有機発光ダイオード用のマトリクス材料としてのフェノチアジン−S−オキシド及びフェノチアジン−S,S−ジオキシドの使用

本発明は、フェノチアジン−S−オキシド及びフェノチアジン−S,S−ジオキシドを有機発光ダイオード用のマトリクス材料として、特に有機発光ダイオードの発光層中のマトリクス材料として用いる使用、少なくとも1種のフェノチアジン−S−オキシド又はフェノチアジン−S,S−ジオキシドをマトリクス材料として含有することに並びその中に分散された少なくとも1種の他の物質を発光体として含有する発光層を含む有機発光ダイオード、少なくとも1種のフェノチアジン−S−オキシド又はフェノチアジン−S,S−ジオキシドをマトリクス材料として含有することに並びその中に分散された少なくとも1種の他の物質を発光体として含有する発光層、マトリクス材料としての1種以上のフェノチアジン−S−オキシド又はフェノチアジン−S,S−ジオキシドを並びにその中に分散された発光体としての少なくとも1種の他の物質からなる発光層、相応の発光層を有する発光ダイオード並びに相応の有機発光ダイオードを有する装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノチアジン−S−オキシド及びフェノチアジン−S,S−ジオキシドを有機発光ダイオード用のマトリクス材料として、特に有機発光ダイオードの発光層中のマトリクス材料として用いる使用、少なくとも1種のフェノチアジン−S−オキシド又はフェノチアジン−S,S−ジオキシドをマトリクス材料として含有することに並びその中に分散された少なくとも1種の他の物質を発光体として含有する発光層を含む有機発光ダイオード、少なくとも1種のフェノチアジン−S−オキシド又はフェノチアジン−S,S−ジオキシドをマトリクス材料として含有することに並びその中に分散された少なくとも1種の他の物質を発光体として含有する発光層、マトリクス材料としての1種以上のフェノチアジン−S−オキシド又はフェノチアジン−S,S−ジオキシドを並びにその中に分散された発光体としての少なくとも1種の他の物質からなる発光層、相応の発光層を有する発光ダイオード並びに相応の有機発光ダイオードを有する装置に関する。
【0002】
発光ダイオード(OLED)においては、電流によって励起された場合に光を放出する材料の特性が用いられる。OLEDは、特に陰極線管及び液晶ディスプレイの代替として、平面ディスプレイの製造のために関心が持たれている。そのコンパクトな構造及び本来低い電流消費に基づいて、OLEDを含む装置は、特に可搬用途、例えば携帯機器、ラップトップなどで使用するために適している。
【0003】
電流による励起に際して光を発する多数の材料が提案されている。これらの材料は、その際それ自体で発光体として機能することができ、又は該材料は、固有の発光体を分散した形で含有するマトリクス材料からなる。
【0004】
フェノキサジン誘導体及びフェノチアジン誘導体は、従来技術によれば一般に電荷輸送材料として使用されている。
【0005】
例えば、EP−A0517542号は、良好な熱安定性に優れ、とりわけフェノチアジン単位を有してよい芳香族アミノ化合物に関する。前記の芳香族アミノ化合物は、OLEDにおいて正孔輸送材料として使用される。
【0006】
EP−A0562883号は、同様に、OLED中で使用されかつ高い熱安定性を有する正孔輸送材料に関する。正孔輸送材料としては、トリス−フェノチアジニル−トリフェニルアミン誘導体又はトリス−フェノキサジニル−トリフェニルアミン誘導体が使用される。
【0007】
DE−A10143249号は、共役オリゴフェノチアジン及びポリフェノチアジンの製造方法及び有機発光ダイオード及び電界効果トランジスタにおける正孔伝導体としてのそれらの使用に関する。オリゴフェノチアジン及びポリフェノチアジンは、官能化されたフェノチアジン誘導体のクロスカップリングによって製造される。
【0008】
EP−A0535672号において、電子写真用の受光体であってその感光層に有機導電性材料を含有する受光体が開示されている。有機導電性材料としては、とりわけフェノチアジン構造単位を有する化合物が適している。
【0009】
US5,942,615号並びにJP−A11−158165号は、フェノチアジン誘導体及びフェノキサジン誘導体、これらの誘導体を含有する電荷輸送材料並びに開示された電荷輸送材料を含有する電子写真用の受光体に関する。該フェノチアジン誘導体又はフェノキサジン誘導体は、一般式:
【化1】

[式中、Ar1及びAr2は、アリール基であり、R1及びR2は、H、低級アルキル又はアリールであり、R3は、低級アルキル、5〜7個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、アリール又はアラルキルを意味し、Xは、S又はOを意味し、かつm及びnは、0又は1を意味する]で示される誘導体である。上述の化合物のルミネセンス、特にエレクトロルミネセンスに関しては、US5,942,615号にもJP−A11−158165号にもなんら情報がない。
【0010】
更に、従来技術から、OLEDの発光層で発光材料として使用される非常に特定の幾つかのフェノチアジン誘導体及びフェノキサジン誘導体が知られている。
【0011】
ここで、JP−A2003−007466号は、フェノチアジン誘導体又はフェノキサジン誘導体を基礎とする繰返単位を有するポリマーを発光材料として含有する長寿命かつ高い輝度を有するOLEDに関する。
【0012】
JP−07−109449号では、とりわけOLED中の材料としてフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体
【化2】

が記載されている。
【0013】
JP−A2000−328052号は、電磁スペクトルの黄色領域ないし赤色領域で発光する発光材料であって、2つの特定の置換基を有する単環式又は縮合多環式の化合物から構成される材料に関する。前記の特定の置換基は、以下の式:
【化3】

の置換基である。
【0014】
前記式中で、
Bは、S又はOを意味し、
1は、H、アルキル又はアリールを意味し、かつ
2、R3は、互いに無関係に、H、CN、ハロゲン、アルキルカルボニル及びアルコキシカルボニルから選択され、R2及びR3がCNを意味することが好ましい。
【0015】
縮合多環式の化合物としては、フェノチアジン誘導体及びフェノキサジン誘導体が挙げられる。
【0016】
KR2003−0029394号は、有機エレクトロルミネセンスに適した赤色発光体に関する。前記発光体は、良好な正孔輸送特性を有するフェノシアニジン基と、良好な電子輸送能を有するアントラセニル基とを有する。該発光体の置換型に応じて、発光体は、黄色及び赤色で発光を示すだけでなく、電磁スペクトルの緑色領域でも発光を示すことができる。前記の特定の発光体は、以下の式
【化4】

を有する。
【0017】
その基R1及びR2は、H、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン又は飽和もしくは不飽和の炭化水素であってよい。前記化合物の特徴としては、該化合物が発光特性を有するだけでなく、正孔輸送特性と電子輸送特性とをそれらの特定の置換型に応じて有することが強調される。
【0018】
JP−A2004−075750号は、式
【化5】

[式中、R1は、芳香族又は脂肪族の化合物基であり、かつR2は、アルキル基、アルケニル基、アルキルエーテル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基又はアリールオキシ基である]で示されるフェノキサジン誘導体に関する。該フェノキサジン誘導体は、OLEDの発光層において蛍光物質として使用される。
【0019】
本発明の課題は、容易に得ることができ、かつ本来の発光体と組み合わせて良好な輝度及び量子収率をOLEDにおいてもたらす、OLEDにおいて使用するための、特にOLEDの発光層において使用するためのマトリクス材料を提供することである。
【0020】
前記課題は、式I
【化6】

[式中、
Xは、基SO又はSO2を意味し、
1は、水素、アルキル、環式のアルキル、複素環式のアルキル、アリール、ヘテロアリール、式II
【化7】

の基、式III
【化8】

の基又は式IV
【化9】

の基を意味し、
1、X2、X3は、互いに無関係に、かつXとは無関係に、基SO又はSO2を意味し、
2、R3、R4、R5、R7、R8、R11、R12は、互いに無関係に、アルキル、アリール又はヘテロアリールを意味し、
m、n、q、r、t、u、x、yは、互いに無関係に、0、1、2又は3を意味し、
6、R9、R10は、互いに無関係に、アルキル、アリール、アルコキシ又はアリールオキシを意味し、
s、v、wは、互いに無関係に、0、1又は2を意味し、
Bは、アルキレン架橋−CH2−Ck2k−を意味し、その際、単位−Ck2k−の1つ以上の隣接していないCH2基は酸素又はNRによって交換されていてよく、
Rは、水素又はアルキルを意味し、
kは、0、1、2、3、4、5、6、7又は8を意味し、
jは、0又は1を意味し、かつ
zは、1又は2を意味する]で示される化合物を、有機発光ダイオードにおけるマトリクス材料として用いる使用によって解決される。
【0021】
本発明により使用される式Iのマトリクス材料は、容易に得ることができ、かつ本来の発光体と組み合わせてOLEDで使用する際に良好な輝度及び量子収率を示す。
【0022】
本発明によるアルキル基並びにアルコキシ基のアルキル基は、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよく、かつ/又は場合によりアリール、アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される置換基で置換されていてよい。有利には、アルキル基は非置換である。好適なアリール置換基は、以下に挙げる。
【0023】
本発明による環式のアルキル基並びにアルコキシ基の環式のアルキル基は、場合により、アリール、アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される置換基で置換されていてよい。有利には、該環式のアルキル基は非置換である。好適なアリール置換基は、以下に挙げる。
【0024】
好適なハロゲン置換基は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、有利にはフッ素、塩素及び臭素、特に有利にはフッ素及び塩素である。
【0025】
好適なアルキル基のための例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルである。その際、前記基のn−異性体も、分枝鎖状の異性体、例えばイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、s−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルヘキシルなども共に含まれる。好ましいアルキル基は、メチル及びエチルである。
【0026】
好適な環式のアルキル基のための例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシルである。場合により、シクロアルキル基は、多環式の環系、例えばデカリニル、ノルボルナニル、ボルナニル又はアダマンチルであってもよい。該環式のアルキル基は、非置換でも、又は場合により前記でアルキル基において例示的に挙げた更なる基1又はそれより多くで置換されていてよい。
【0027】
好適なアルコキシ基は、相応して、前記に定義されたアルキル基から導かれる。例えば、ここでは、OCH3、OC25、OC37、OC49及びOC817を挙げることができる。その際に、C37、C49及びOC817には、n−異性体も分枝鎖状の異性体、例えばイソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル及び2−エチルヘキシルも含まれる。特に有利には、メトキシ、エトキシ、n−オクトキシ及び2−エチル−ヘキソキシである。
【0028】
アリールとは、本発明においては、単環式又は二環式の芳香族化合物から誘導され、環ヘテロ原子を有さない基を指す。単環式の系でない限りは、第二の環についてのアリールという表記の場合、飽和形(ペルヒドロ形)又は部分不飽和形(例えばジヒドロ形又はテトラヒドロ形)は、それぞれの形が知られており、かつ安定であれば可能である。つまり、アリールという表記は、本発明においては、両方の基が芳香族である二環式基も、一方の環のみが芳香族である二環式環も含む。アリールのための例は、フェニル、ナフチル、インダニル、1,2−ジヒドロナフテニル、1,4−ジヒドロナフテニル、インデニル又は1,2,3,4−テトラヒドロナフチルである。特に有利には、アリールは、フェニル又はナフチルであり、殊に有利にはフェニルである。
【0029】
アリール基は、非置換であっても、又は1もしくはそれより多くの他の基で置換されていてよい。好適な他の基は、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリール、ヒドロキシ及びハロゲンからなる群から選択される。有利なアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びハロゲン基は、上述したとおりである。アリール基は、非置換であるか、又は1もしくはそれより多くのアルコキシ基で置換されていることが好ましい。特に有利には、アリールは、非置換のフェニル、4−アルキルフェニル、4−アルコキシフェニル、2,4,6−トリアルキルフェニル又は2,4,6−トリアルコキシフェニルを意味し、その際、4−アルキルフェニル、4−アルコキシフェニル、2,4,6−トリアルキルフェニル及び2,4,6−トリアルコキシフェニルとしては、特に4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル及び2,4,6−トリメトキシフェニルが該当する。
【0030】
好適なアリールオキシ基及びアリールカルボニルオキシ基は、相応して、前記に定義されたアリール基から導かれる。特に好ましいのは、フェノキシ及びフェニルカルボニルオキシである。
【0031】
ヘテロアリールとは、単環式又は二環式の複素芳香族化合物であって、上述のアリール基から部分的に誘導でき、その中でアリール基本骨格において少なくとも1つの炭素が1つのヘテロ原子によって交換されているものを表す。有利なヘテロ原子は、N、O及びSである。特に、ピリジンのような系及びチオフェン、ピロール、イミダゾール又はフランのような5員の複素芳香族化合物から選択される縮合されていてよい基本骨格が好ましい。該基本骨格は、1つの、複数の又は全ての置換可能な位置で置換されていてよく、その際、好適な置換基は、既にアリールの定義で挙げた置換基である。しかしながらヘテロアリール基は非置換であることが好ましい。特にここでは、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、フラン−2−イル、フラン−3−イル及びイミダゾール−2−イル並びに相応のベンゾ縮合された基を挙げることができる。
【0032】
複素環式のアルキルとは、環式のアルキル基本骨格において少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子によって交換されている点で前記の環式のアルキルとは異なる基を表す。有利なヘテロ原子は、N、O及びSである。該基本骨格は、1つの、複数の又は全ての置換可能な位置で置換されていてよく、その際、好適な置換基は、既にアリールの定義で挙げた置換基である。特にここでは、窒素含有の基、つまりピロリジン−2−イル、ピロリジン−3−イル、ピペリジン−2−イル、ピペリジン−3−イル、ピペリジン−4−イルを挙げることができる。
【0033】
アルキレン架橋Bの単位−Ck2k−とは、特に直鎖状のアルキレン鎖−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH24−、−(CH25−、−(CH26−、−(CH27−及び−(CH28−を表す。しかしながらこれらの単位は、分枝鎖状であってもよいので、例えば鎖−CH(CH3)−、−C(CH32−、−CH2−CH(CH3)−、−CH(CH3)−CH(CH3)−、−C(CH32−C(CH32−、−CH(CH3)−CH2−CH(CH3)−、−CH(CH3)−(CH22−CH(CH3)−、−CH(CH3)−(CH23−CH(CH3)−、−CH(CH3)−(CH24−CH(CH3)−、−C(CH32−CH2−C(CH32−又は−C(CH32−(CH22−C(CH32−も該当する。更に、アルキレン架橋Bの単位−Ck2k−において、1つ以上の隣接していないCH2基は酸素又はNRによって交換されていてよい。このための例は、特に−O−C24−O−、−O−(C24−O−)2、−NR−C24−NR−又は−NR−(C24−NR−)2であり、その際、Rは、特に水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル又はt−ブチルを表す。
【0034】
1が式IIの基の意味をとり、zが2である場合には、(R4qと(R5rの両方は、種類及び数値に応じてそれぞれ互いに異なってよい。更に、両方のX1も互いに異なっていてもよい。
【0035】
式I及び式IIの置換されていてよいフェノチアジン骨格が好ましい、つまり(R2m及び(R5r、(R3n及び(R4q、並びにX及びX1(zは1である)もしくは(R2m及び両方の(R5r、(R3n及び両方の(R4q並びにX及び両方のX1(zは2である)は、それぞれ同じ意味を有する。
【0036】
1が式IIIの基の意味をとる場合には、式I及び式IIIの置換されていてよいフェノチアジン骨格は同じであることが好ましい、つまり(R2m及び(R8u、(R3n及び(R7t並びにX及びX2は、それぞれ同じ意味を有する。
【0037】
1が式IVの基の意味をとる場合には、式I及び式IVの置換されていてよいフェノチアジン骨格は同じであることが好ましい、つまり(R2m及び(R11x、(R3n及び(R12y並びにX及びX3は、それぞれ同じ意味を有する。
【0038】
好ましい一実施態様においては、本発明は、式Iで示され、その式中の変数は以下の意味を有する:
Xは、基SO又はSO2を意味し、
1は、水素、メチル、エチル、シクロヘキシル、ピロリジン−2−イル、ピロリジン−3−イル、ピペリジン−2−イル、ピペリジン−3−イル、ピペリジン−4−イル、フェニル、4−アルキルフェニル、4−アルコキシ−フェニル、2,4,6−トリアルキルフェニル、2,4,6−トリアルコキシフェニル、フラン−2−イル、フラン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、ピリミジン−2−イル、ピリミジン−4−イル、ピリミジン−5−イル、sym−トリアジニル、フェニル、4−アルコキシフェニル、式II
【化10】

の基、式III
【化11】

の基又は式IV
【化12】

の基を意味し、
1、X2、X3は、互いに無関係に、かつXとは無関係に、基SO又はSO2を意味し、
2、R3、R4、R5、R7、R8、R11、R12は、互いに無関係に、アリールを意味し、
m、n、q、r、t、u、x、yは、互いに無関係に、0又は1を意味し、
6、R9、R10は、互いに無関係に、アルキル又はアルコキシを意味し、
s、v、wは、互いに無関係に、0又は1を意味し、
Bは、アルキレン架橋−CH2−Ck2k−を意味し、
kは、0、1、2、3、4、5、6、7又は8を意味し、
jは、0又は1を意味し、かつ
zは、1又は2を意味する、化合物の使用に関する。
【0039】
基R2、R3、R4、R5、R7、R8、R11及びR12におけるアリールは、互いに無関係に、フェニル、ナフチ−1−イル又はナフチ−2−イルであることが好ましい。
【0040】
1が式IIの基の意味をとり、zが2である場合には、(R4qと(R5rの両方は、種類及び数値に応じてそれぞれ互いに異なってよい。更に、両方のX1も互いに異なっていてもよい。
【0041】
式I及び式IIの置換されていてよいフェノチアジン骨格が好ましい、つまり(R2m及び(R5r、(R3n及び(R4q、並びにX及びX1(zは1である)もしくは(R2m及び両方の(R5r、(R3n及び両方の(R4q並びにX及び両方のX1(zは2である)は、それぞれ同じ意味を有する。
【0042】
1が式IIIの基の意味をとる場合には、式I及び式IIIの置換されていてよいフェノチアジン骨格は同じであることが好ましい、つまり(R2m及び(R8u、(R3n及び(R7t並びにX及びX2は、それぞれ同じ意味を有する。
【0043】
1が式IVの基の意味をとる場合には、式I及び式IVの置換されていてよいフェノチアジン骨格は同じであることが好ましい、つまり(R2m及び(R11x、(R3n及び(R12y並びにX及びX3は、それぞれ同じ意味を有する。
【0044】
式Iで示され、その式中、R1が水素、アルキル、環式のアルキル、複素環式のアルキル、アリール又はヘテロアリールの意味に適している化合物のための例を、以下に挙げる:
【化13】

式中、R1'は、以下の基
【化14】

を意味する。
【0045】
式Iで示され、その式中、R1が式IIの基の意味に適している化合物のための例を、以下に挙げる:
zが1である場合には:
【化15】

zが2である場合には:
【化16】

【0046】
式Iで示され、その式中、R1が式IIIの基の意味に適している化合物のための例を、以下に挙げる:
【化17】

【0047】
式Iで示され、その式中、R1が式IVの基の意味に適している化合物のための例を、以下に挙げる:
【化18】

その際、式I/IVa及び式I/IVcにおけるkは、それぞれ0又は1〜8の値をとることができ、かつ式I/IVb及びI/IVdについては、架橋単位−(B)j−CH2−におけるjの値は、それぞれ0である。
【0048】
上述の本発明により使用される式Iのフェノチアジン−2−オキシド誘導体又はフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体は、当業者に公知の方法に従って製造することができる。
【0049】
式Iの化合物の製造は、有利には、市販のフェノチアジン骨格(すなわちmとnが両者とも0である)の相応の置換によって行われる。基R2及び/又はR3は、その際、求電子的芳香族置換によって導入される。好適な反応条件は、当業者に公知である。基R1は、該基が水素でない限りは、窒素での求電子置換によって、例えば好適なアルキルハロゲン化物又はアリールハロゲン化物との反応によって導入される。フェノチアジン骨格中の硫黄をSO基又はSO2基に酸化させることは、通常は最後の合成段階で行われる。
【0050】
しかしながらまた選択的に、式Iの化合物の製造は、フェノチアジン−S−オキシド誘導体又はフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体の製造に適した既に官能化された構成単位から出発して実施することができる。例えば、本発明により使用されるフェノチアジン誘導体は、基R2及び/又はR3で官能化されたジフェニルアミン誘導体から出発して、硫黄とともに加熱することによって製造することができる。官能化されたジフェニルアミン誘導体の製造は、当業者に公知である。ここでもまた、次いで、フェノチアジン骨格中の硫黄をSO基又はSO2基に酸化させることは、通常は最後の合成段階で行われる。
【0051】
フェノチアジンを、本発明により使用されるフェノチアジン−S−オキシド及びフェノチアジン−S,S−ジオキシドへと酸化させるのに適した方法は、当業者に公知であり、例えばM.Tosa他著のHeterocyclic Communications,Vol.7,No.3,2001,第277〜282頁に示されている。
【0052】
フェノチアジン−S−オキシド誘導体への酸化は、例えばエタノールもしくはエタノール−アセトン混合物中のH22又はシュウ酸中のH22、過硫酸アンモニウム、硝酸、亜硝酸、無機窒素酸化物と一緒に場合により(空気)酸素、NO+BF4-/O2、ピリジン中のCrO3、オゾン、テトラメチルオキシラン、ペルフルオロアルキルオキサジリジンによって又は電気化学的方法によって行われる。更に、相応の官能化された式Iのフェノチアジンの、相応の式Iのフェノチアジン−S−オキシド誘導体への酸化は、CH2Cl2中のm−クロロ過安息香酸によって0〜5℃の温度で又は発煙硝酸及び酢酸をCCl4中に入れた混合物によって行われる(例えばM.Tosa他著のHeterocyclic Communications,Vol.7,No.3,2001,第277〜282頁を参照のこと)。
【0053】
フェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体への酸化は、例えば過酸、例えば過酢酸(それは、例えばH22とAcOHとから得ることができる)又はm−クロロ過安息香酸、過ホウ酸ナトリウム、NaOCl又は重金属系、例えばKMnO4/H2O、有機媒体中のEt3PhN+MnO4-、OsO4/N−メチルモルホリン−N−オキシドによって行われる。例えば、相応に官能化された式Iのフェノチアジンの、相応の式Iのフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体への酸化は、KMnO4の水溶液及びCHCl3中のC1635N(CH33+Cl-によって室温で又はCH2Cl2中のm−クロロ過安息香酸によって室温で実施することができる(例えばM.Tosa他著のHeterocyclic Communications,Vol.7,No.3,2001,第277〜282頁を参照のこと)。
【0054】
フェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体の製造のために、フェノチアジン誘導体と酸化剤、有利にはm−クロロ過安息香酸とは、一般に1:1.8〜1:4、有利には1:1.9〜1:3.5、特に有利には1:1.9〜1:3のモル比で使用される。
【0055】
フェノチアジン−S−オキシド誘導体の製造のために、フェノチアジン誘導体と酸化剤とは、一般に1:0.8〜1:1.5、有利には1:1〜1:1.3のモル比で使用される。更なる酸化が起こり、相応のS,S−ジオキシド誘導体としない酸化剤、例えばH22は、フェノチアジン誘導体について上記の量より大過剰で使用することができる。
【0056】
酸化は、一般に溶剤、有利にはハロゲン化炭化水素及び双極性の非プロトン性溶剤からなる群から選択される溶剤中で行われる。前者の溶剤もしくは後者の溶剤のための例は、塩化メチレンもしくはアセトニトリル及びスルホランである。
【0057】
酸化剤に依存して、フェノチアジン−S−オキシド誘導体への酸化は、通常は、常圧で−10℃〜+50℃の温度範囲で行われ、かつフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体への酸化は、通常は、常圧で0〜+100℃の温度範囲で行われる。酸化の反応時間は、一般に0.25〜24時間である。
【0058】
フェノチアジン誘導体を、それぞれ相応のフェノチアジン−S−オキシド誘導体もしくはフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体に酸化させるために適した条件は、しかしながらそれぞれの場合に当業者によって問題なく予備試験において決定できる。例えば、酸化の進行状況を分析法で、例えばIR分光法によって観察することができる。
【0059】
好ましい一別形においては、一般式Iのフェノチアジン−S−オキシド誘導体は、式Iの相応のフェノチアジン誘導体を、CH2Cl2中の酸化剤としてのm−クロロ過安息香酸によって、0〜20℃で酸化させることによって製造される。
【0060】
式Iのフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体は、有利には、式Iの相応のフェノチアジン誘導体を、CH2Cl2中の酸化剤としてのm−クロロ安息香酸によって、0〜40℃で酸化させることによって製造される。
【0061】
得られたフェノチアジン−S−オキシド及びフェノチアジン−S,S−ジオキシドの単離及び後処理は、当業者に公知の方法に従って行われる。
【0062】
以下に、本発明により使用される式Iの化合物の製造を例示する。これによって従来技術の知識をもって、当業者は、他の本発明により使用される化合物を製造することができる。
【0063】
式Iで示され、その式中、R1が水素、アルキル、環式のアルキル、複素環式のアルキル、アリール又はヘテロアリールを意味する化合物の製造は、有利には式1
【化19】

の基本骨格から出発して、
aa)式1の基本骨格のN−アルキル化又はN−アリール化、
ab)ハロゲン化、
ac)所望の基R2及びR3に相応する前駆化合物とのカップリング反応、
ad)SをSOもしくはSO2にする酸化
によって行われ、その際、工程aa)は、R1が水素とは異なる場合にのみ実施される(以下の式Iの化合物の製造のための実施態様において、N−アルキル化もしくはN−アリール化並びにN−アルキル化された、もしくはN−アリール化された、とは、基R1の定義に関しては、アルキル基によるN置換だけでなく、環式のアルキル基及び複素環式のアルキル基でのN置換を表し、あるいはアリール基によるN置換だけでなく、ヘテロアリール基によるN置換も表す;この意味で、N−アルキル化もしくはN−アリール化するための相応のアルキル試薬もしくはアリール試薬とは、シクロアルキル試薬及びヘテロシクロアルキル試薬もしくはヘテロアリール試薬をも表す)。
【0064】
工程aa)、ab)、ac)及びad)の実施のために適した反応条件は、当業者に公知である。以下に、工程aa)、ab)、ac)及びad)の好ましい別形を挙げる。
【0065】
工程aa)
N−アルキル化もしくはN−アリール化は、有利には式1の基本骨格と、式R1−Halで示され、その式中、R1が前記に定義したものであり、かつHalがCl、Br又はI、有利にはIを意味するアルキルハロゲン化物もしくはアリールハロゲン化物とを反応させることによって行われる。この場合に、塩基の存在下に作業され、塩基は当業者に公知である。有利には、塩基は、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)2、アルカリ金属水素化物、例えばNaH、KH、アルカリ金属アミド、NaNH2、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩、例えばK2CO3又はアルカリ金属アルコキシド、例えばNaOMe、NaOEtである。更に、上述の塩基の混合物が適している。特に、NaOH、KOH又はNaHが好ましい。
【0066】
N−アルキル化(例えばM.Tosa他著のHeterocyclic Communications,Vol.7,No.3,2001,第277〜282頁に記載されている)もしくはN−アリール化(例えばH.Gilman及びD.A.Shirley著のJ.Am.Chem.Soc.66(1944)888;D.Li他著のDyes and Pigments 49(2001)181−186に記載されている)は、有利には溶剤中で実施される。好適な溶剤は、例えば極性の非プロトン性溶剤、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド又はアルコールである。同様に、過剰の使用されるアルキルハロゲン化物又はアリールハロゲン化物を溶剤として使用することができ、その際、過剰のアルキルヨウ化物又はアリールヨウ化物を使用することが好ましい。該反応は、更に、非極性の非プロトン性溶剤、例えばトルエン中で実施することができるが、それは、相転移触媒、例えば硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウムが使用される場合である(例えばI.Gozian他著のJ.Heterocycl.Chem.21(1984)613−614に開示されている)。
【0067】
しかしながらまた、N−アリール化は、式1の化合物とアリールハロゲン化物、有利にはアリールヨウ化物との銅触媒によるカップリングによって行うことができる(Ullmann反応)。銅ブロンズの存在下でのフェノチアジンのN−アリール化のために適した方法は、例えばH.Gilman著のJ.Am.Chem.Soc.66(1944)888−893に開示されている。
【0068】
式1の化合物と式R1−Halのアルキルハロゲン化物もしくはアリールハロゲン化物とのモル比は、一般に1:1〜1:2、有利には1:1〜1:1.5である。
【0069】
N−アルキル化もしくはN−アリール化は、通常、常圧でかつ0〜220℃の温度範囲において、もしくは使用される溶剤の沸点までで実施される。反応時間は、一般に0.5〜48時間に達する。
【0070】
式1の化合物のN−アルキル化もしくはN−アリール化のために適した条件は、それぞれの場合に当業者によって問題なく予備試験において決定することができる。例えば、N−アルキル化もしくはN−アリール化の進行状況は、分析法、例えばIR分光法によって観察することができる。
【0071】
得られた粗生成物は、当業者に公知の方法に従って後処理される。
【0072】
工程ab)
ハロゲン化は、当業者に公知の方法に従って実施することができる。有利には、式1の場合によりN−アルキル化又はN−アリール化された基本骨格の3位及び7位において臭素化又はヨウ素化が行われる。
【0073】
場合により工程aa)においてN−アルキル化又はN−アリール化された式1の基本骨格の該基本骨格の3位及び7位における臭素化は、例えばM.Jovanovich他著のJ.Org.Chem.1984,49,1905−1908に従って酢酸中で臭素と反応させることによって行うことができる。更に、臭素化は、C.Bodea他著のAcad.Rep.Rom.13(1962)81−87に開示された方法に相応して行うことができる。
【0074】
場合により工程aa)でN−アルキル化又はN−アリール化された式1の基本骨格の該基本骨格の3位及び7位におけるヨウ素化は、M.Sailer他著のJ.Org.Chem.2003,68,7509−7512に開示された方法に従って実施することができる。その際に、まず場合によりN−アルキル化又はN−アリール化された式1の3,7−ジブロモ置換された基本骨格のリチウム化を行い、引き続きリチウム化された生成物のヨウ素化を行う。
【0075】
リチウム塩基、例えばn−ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミドによるリチウム化は、一般に−78〜+25℃、有利には−78〜0℃、特に有利には−78℃の温度で、当業者に公知の方法に従って実施することができる。引き続き、該反応混合物を室温に加熱し、そして当業者に公知の方法に従って後処理する。
【0076】
工程ac)
本発明により使用される式Iのフェノチアジン−S−オキシド誘導体及びフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体の基礎となる(酸化されていない)フェノチアジン誘導体は、有利には所望の基R2及びR3に相応する前駆化合物とのカップリング反応によって製造される。好適なカップリング反応は、例えばSuzukiカップリング及びYamamotoカップリングであり、その際、Suzukiカップリングが好ましい。
【0077】
Suzukiカップリングによって、所望の基R2及びR3で式1の(場合によりN−アルキル化又はN−アリール化された)フェノチアジン骨格の3位及び7位で置換されている化合物を製造することができ、その際、相応の3,7−ハロゲン化された、特に3,7−臭素化されたフェノチアジンを、Pd(0)触媒下でかつ塩基の存在下で、所望のR2及びR3に相応するボロン酸又はボロン酸エステルと反応させる。
【0078】
所望の基R2及びR3に相当するボロン酸又はボロン酸エステルの代わりに、所望のR2及びR3を有する別のホウ素含有化合物を、ハロゲン化されたフェノチアジン誘導体との反応において使用することができる。係るホウ素含有化合物は、一般式R2−B(O−[C(R′)2n−O)及びR3−B(O−[C(R′)2n−O)に相当し、その式中、R2及びR3は、上述の意味を有し、R′は、同一又は異なって、水素又はC1〜C20−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル又はn−オクタデシル;有利にはC1〜C12−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル又はn−デシル、特に有利にはC1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル及びt−ブチル、殊に有利にはメチルを意味し;かつnは、2〜10の整数、有利には2〜5の整数である。
【0079】
所望の基R2及びR3に相応するボロン酸、ボロン酸エステル及びホウ素含有化合物は、従来技術で公知の方法に従って製造できるか、又は市販されている。例えば、ボロン酸及びボロン酸エステルの製造は、グリニャール試薬又はリチウム試薬とボラン、ジボラン又はボレートとの反応によって可能である。
【0080】
Pd(0)触媒としては、全ての通常のPd(0)触媒が適している。例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を使用することができる。更に、Pd(II)塩を、配位子との混合物で使用することができ、それは例えばPd(ac)2又はPdCl2及びPPh3であり、その際、Pd(0)はその場で形成される。カップリングの実施のためには、過剰のPPh3を添加してよい。触媒は、一般に、使用されるハロゲン化されたフェノチアジン誘導体に対して、0.001〜15モル%、有利には0.01〜10モル%、特に有利には0.1〜5モル%の量で使用される。
【0081】
Suzukiカップリングでは、このために通常使用されるあらゆる塩基を使用することができる。有利には、アルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムである。塩基は、一般に、使用されるハロゲン化されたフェノチアジン誘導体に対して2〜200倍、有利には2〜100倍、特に有利には2〜80倍のモル過剰で使用される。
【0082】
所望の基R2及びR3に相応する成分(ボロン酸、相応のボロン酸エステル又は別の好適なホウ素含有化合物)は、ハロゲン化されたフェノチアジン誘導体に対して100〜400モル%、有利には100〜300モル%、特に有利には100〜150モル%の比率で使用される。
【0083】
該反応は、通常、常圧下で、40〜140℃、有利には60〜120℃、特に有利には70〜100℃の温度で行われる。
【0084】
該反応は、一般に酸素排除下で実施される。通常は、該反応は、溶剤中で、例えばベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、エタノール又は石油エーテル中で行われる。同様に、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン又はエタノール及び水の混合物を溶剤として使用することも可能である。
【0085】
本方法の特に好ましい別形では、ハロゲン化されたフェノチアジン誘導体を溶剤中で保護ガス下で装入し、そして溶解されて(例えばジメトキシエタン/水混合物中に溶解されて)存在するのが好ましい塩基及び所望の基R2及びR3に相応するボロン酸と混合させる。引き続き、保護ガス下でPd(0)触媒を添加する。一般に2〜120時間、有利には4〜72時間、特に有利には6〜48時間の時間にわたり、上述の温度及び圧力で撹拌される。それに引き続き、反応ガス混合物を、当業者に公知の方法に従って後処理される。
【0086】
更に、所望の基R2及びR3で、式1の(場合によりN−アルキル化された又はN−アリール化された)フェノチアジン骨格の3位及び7位で置換されている化合物を製造することができ、その際、相応の3,7−ハロゲン化された、特に3,7−臭素化されたフェノチアジンを、Ni(0)触媒下で、所望の基R2及びR3に相応するハロゲン化合物と、特に臭素化合物と反応させる(Yamamotoカップリング)。
【0087】
有利には、Yamamotoカップリングの場合に、酸素排除下で、Ni(0)化合物、有利にはNi(COD)2とビピリジルとから等モル量で製造された触媒の溶液、有利にはDMF溶液が使用される。前記の溶液に、酸素排除下で、ハロゲン化された、有利には臭素化されたフェノチアジン誘導体及び所望の基R2及びR3に相応するハロゲン化合物、特に臭素化合物を溶剤、有利にはトルエン中に添加する。
【0088】
Yamamotoカップリングによりフェノチアジン誘導体の製造における反応条件、例えば温度、圧力、溶剤及びハロゲン化された、有利には臭素化されたフェノチアジンと基R2及びR3に相応する成分との比率は、Suzukiカップリングのそれに相当する。
【0089】
触媒の製造のためにNi(0)化合物としては、全ての通常のNi(0)化合物が適している。例えば、Ni(C243、Ni(1,5−シクロオクタジエン)2("Ni(COD)2")、Ni(1,6−シクロオクタジエン)2又はNi(1,5,9−オール−トランス−シクロドデカトリエン)2を使用することができる。該触媒は、一般に、使用されるハロゲン化されたフェノチアジン誘導体に対して、1〜100モル%、有利には5〜80モル%、特に有利には10〜70モル%の量で使用される。
【0090】
好適な方法条件及び触媒、特にSuzukiカップリングのための方法条件及び触媒は、例えばSuzuki−Miyaura−クロスカップリング:A.Suzuki著のJ.Organomet.Chem.576(1999)147−168;B−アルキル−Suzuki−Miyaura−クロスカップリング:S.R.Chemler他著のAngew.Chem.2001,113,4676−4701及びそれらに挙げられる文献に開示されている。
【0091】
工程ad)
フェノチアジンの相応のフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体への酸化のために好ましい酸化剤及び方法条件は、上述したとおりであり、かつ例えばM.Tosa他著のHeterocyclic Commun.7(2001)277−282に開示されている。
【0092】
式Iで示され、その式中、R1が式II又は式IIIの基を意味する化合物の製造は、有利には式1
【化20】

の基本骨格から出発して、
ba)ハロゲン化、
bb)それぞれ、所望の基R2及びR3もしくはR4及びR5もしくはR7及びR8に相応する前駆化合物とのカップリング、
bc)所望の基R2及びR3もしくはR4及びR5もしくはR7及びR8で置換されたフェノチアジンの、基
【化21】

に相応する化合物でのN−アルキル化、
bd)SをSOもしくはSO2にする酸化
によって行われる。
【0093】
工程ba)、bb)及びbd)の実施のために適した反応条件は、既に相応の反応工程ab)、ac)及びad)について上述したとおりである。
【0094】
工程bc)は、有利には工程aa)と同様に実施される。単位
【化22】

と単位
【化23】

の1つ/両方との、相応のフェニレン単位もしくはビフェニリル単位
【化24】

を介したカップリングは、この場合に、式1a及び式1b
【化25】

の化合物と、式2
【化26】

の相応のアリールハロゲン化物、有利にはアリールヨウ化物との銅触媒によるカップリングによって、もしくは式1a及び式1c
【化27】

の化合物と、式3
【化28】

の相応のアリールジハロゲン化物、有利にはアリールジヨウ化物との銅触媒によるカップリングによって行われる。対称的な化合物
【化29】

を製造することが望ましければ、反応物の化学量論比を考慮しつつ、フェノチアジンのN−アリール化に基づき、銅ブロンズの存在下に、H.Gilman他著のJ.Am.Chem.Soc.66(1944)888−893に従って行うことができる。
【0095】
前記の方法様式は、式1a及び式1bの異なるフェノチアジン誘導体の場合に、例えばzが1であれば、生成物混合物PT1−phen−PT1、PT1−phen−PT2、PT2−phen−PT2をもたらし、その際、PT1及びPT2は、それぞれ、式1a及び式1bの相応の化合物から誘導される種々のフェノチアジン単位を表し、あるいはphenは、相応の式2の化合物から誘導される置換されていてよいフェニレン単位を表す。更に単位phenが非対称であれば、生成物混合物中の種々の化合物の数は高まる。それというのも化合物PT1−phen−PT2意外にも、更に他の異性体混合物PT2−phen−PT1が存在するからである。
【0096】
式1a及び式1cのフェノチアジン誘導体が異なり、化合物PT1−biphen−PT1、PT1−biphen−PT3及びPT3−biphen−PT3が得られる場合に、並びに非対称の単位biphenの場合については、更になおもPT1−biphen−PT3に対する異性体化合物PT3−biphen−PT1が得られる場合に同様のことが言える。PT1及びPT3は、それぞれ式1a及び式1cの相応の化合物から誘導される異なるフェノチアジン単位を表し、もしくはbiphenは、式3の相応の化合物から誘導される置換されていてよいビフェニリル単位を表す。
【0097】
しかしながら、好適な実験操作によって、所望の生成物の収率を高めることも可能である。例えば、アリールハロゲン化物もしくはビフェニルジハロゲン化物を、場合により不活性溶剤中に溶解させて、銅粉末と一緒に装入し、そして第一のフェノチアジン(PT1−H)を、場合により同様に同じ不活性溶剤中に溶解させて添加してよい。これによって、大部分まで、生成物PT1−phen−HalもしくはPT1−biphen−Halが形成し、それを次いで後続段階において、第二のフェノチアジン誘導体(PT2−HもしくはPT3−H)と反応させて、生成物PT1−phen−PT2(zが1の場合)もしくはPT1−biphen−PT3が得られる。異性体生成物PT2−phen−PT1もしくはPT3−biphen−PT1の形成は、しかしながら通常の場合に、係る方法様式によって影響されえない。
【0098】
反応条件に関しては、上述の方法様式の場合に、対称的な化合物の製造をもとに指針が決められる。他の従来技術を考慮すれば、当業者には、場合により追加の予備試験を実施することで、大きな労力を伴わずに好適な条件を理解できる。
【0099】
選択的に、工程bc)においては、式1a及び式1b
【化30】

の化合物と相応の式2′
【化31】

のアリールフッ化物との塩基を触媒とする反応、もしくは
式1a及び式1c
【化32】

の化合物と相応の式3′
【化33】

のアリールジフッ化物との塩基を触媒とする反応を行ってもよい。塩基としては、この場合に工程aa)で挙げた化合物が該当する。特に塩基としてはNaHが適している。
【0100】
塩基によって脱プロトン化された式1a及び式1bもしくは式1a及び式1cの化合物を、次いで、求核的な芳香族置換下に、式2′もしくは式3′の化合物と反応させる。式Iで示され、その式中、R1が式II又は式IIIの基を意味する対称的及び非対称的な化合物の製造に関しては、理にかなうように前記の実施態様が指摘される。
【0101】
式Iで示され、その式中、R1が式IVの基を意味する化合物の製造は、有利には式1
【化34】

の基本骨格から出発して、
ca)ハロゲン化、
cb)それぞれ、所望の基R2及びR3もしくはR4及びR5もしくはR7及びR8に相応する前駆化合物とのカップリング、
cc)所望の基R2及びR3もしくはR4及びR5もしくはR7及びR8で置換されたフェノチアジンの、基
【化35】

に相応する化合物でのN−アルキル化、
cd)SをSOもしくはSO2にする酸化
によって行われる。
【0102】
工程ca)、cb)及びcd)の実施のために適した反応条件は、既に相応の反応工程ab)、ac)及びad)について上述したとおりである。
【0103】
工程cc)は、工程aa)に記載したN−アルキル化と同様に実施される。
【0104】
式Iで示され、その式中、R1が式IVの基を意味する対称的及び非対称的な化合物の製造に関しては、理にかなうように同様に前記の実施態様が指摘される。
【0105】
上述の製造方法で最後に挙げられた酸化工程であって、フェノチアジン骨格の硫黄を基SOもしくはSO2に変換する工程は、当然のように、より早期の時点にも実施することができる。相応して、前記の製造方法の別形において、例えば式1′
【化36】

で示され、式中のXがSO又はSO2を表す化合物から出発してもよい。
【0106】
式Iの化合物は、有機発光ダイオード(OLED)においてマトリクス材料として使用するために極めて適している。特に、該化合物は、OLEDの発光層中のマトリクス材料として極めて良好に適している。
【0107】
従って、本発明の更なる対象は、式Iの化合物を、有機発光ダイオードの発光層中でマトリクス材料として用いる使用である。
【0108】
式Iの化合物のマトリクス材料としての使用は、この場合に、これらの化合物自体が光を発することを排除しないべきである。しかしながら、本発明により使用されるマトリクス材料は、通常では、発光体としてOLED中で使用される化合物の場合に、それ以外で通常のマトリクス材料に対して、それが前者に埋包されているときに輝度及び量子収率の増大を達成することをもたらす。
【0109】
多くの発光体化合物は、金属錯体を基礎としており、その際、特に金属のRu、Rh、Ir、Pd及びPtの錯体、とりわけIrの錯体が重要性を有する。本発明により使用される式Iの化合物は、特に係る金属錯体を基礎とする発光体用のマトリクス材料として適している。特に、該化合物は、Ru、Rh、Ir、Pd及びPtの錯体と一緒にマトリクス材料として使用するために、特に有利にはIrの錯体と一緒に使用するために適している。
【0110】
OLED中のマトリクス材料として式Iの化合物と一緒に使用するために適した金属錯体は、例えば文献WO02/60910号A1、WO02/68453号A1、US2001/0015432号A1、US2001/0019782号A1、US2002/0055014号A1、US2002/0024293号A1、US2002/0048689号A1、EP1191612号A2、EP1191613号A2、EP1211257号A2、US2002/0094453号A1、WO02/02714号A2、WO00/70655号A2、WO01/41512号A1及びWO02/15645号A1に記載されている。
【0111】
OLED中のマトリクス材料として式Iの化合物と一緒に使用するために適した金属錯体は、例えばまたカルベン錯体であり、例えばこれらは以前の国際出願PCT/EP/04/09269号に記載されている。前記の出願の開示内容は、参照をもって詳細に記載されたものとし、この開示内容は、本発明の内容において一緒に取り込まれたものと見なすべきである。特に、OLED中のマトリクス材料として式Iの化合物と一緒に使用するために適した金属錯体は、以下の以前の国際出願PCT/EP/04/09269号に開示された構造(変数の指示は、出願PCT/EP/04/09269号に記載から借用した;変数の正確な定義に関しては、明確にはこの出願を指摘する):
【化37】

[式中、
*は、金属中心への配位子の結合位置を意味し、
z、z′は、同一又は異なって、CH又はNを意味し、
12、R12'は、同一又は異なって、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はアルケニル基、有利にはアルキル基又はアリール基を意味するか、又は
それぞれ2つの基R12もしくはR12'は、一緒になって、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、有利にはNを有してよい縮合された環を形成し、有利には
それぞれ2つの基R12もしくはR12'は、一緒になって縮合された芳香族C6環を形成し、その際、これらの、有利には6員の芳香族環に、場合により1つ以上の他の芳香族環が縮合されていてよく、その際、それぞれの考えられる縮合が可能であり、かつ該縮合された基は、またしても置換されていてよく;又は
基R12もしくはR12'は、ドナー作用又はアクセプター作用を有する基、有利にはハロゲン基、有利にはF、Cl、Br、特に有利にはF;アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、CHF2、CH2F、CF3、CN、チオ基及びSCNからなる群から選択される基を意味し、
t及びt′は、同一又は異なって、有利には同一で、0〜3を意味し、その際、tもしくはt′が1より大きい場合には、基R12もしくはR12'は、同一又は異なってよく、有利には、tもしくはt′は、0又は1であり、基R12もしくはR12'は、tもしくはt′が1である場合に、カルベン炭素原子に隣接する窒素原子との結合位置に対してオルト位、メタ位又はパラ位で存在し、
4、R5、R6、R7、R8、R9及びR11は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基、有利にはハロゲン基、好ましくは、F、Cl、Br、特に好ましくはF、、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、エステル基、アミン基、アミド基、CH2F基、CHF2基、CF3基、CN基、チオ基及びSCN基から選択される基、有利には水素、アルキル、ヘテロアリール又はアリールを意味し、
10は、アルキル、アリール、ヘテロアリール又はアルケニル、有利にはアルキル、ヘテロアリール又はアリールを意味し、又は
それぞれ2つの基R10は、一緒になって、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、有利には窒素を有していてよい縮合された環を形成し、有利には
それぞれ2つの基R10は、一緒になって縮合された芳香族のC6環を形成し、その際、これらの、有利には6員の芳香族環に、場合により1つ以上の他の芳香族環が縮合されていてよく、その際、それぞれの考えられる縮合が可能であり、かつ縮合された基は、またしても置換されていてよく;又は
10は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基、有利にはハロゲン基、有利には、F、Cl、Br、特に有利にはF;アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、CHF2、CH2F、CF3、CN、チオ基及びSCNからなる群から選択される基を意味し、
vは、0〜4、有利には0、1又は2、殊に有利には0を意味し、その際、vが0である場合に、R10で置換されていてよい式cにおけるアリール基の4個の炭素原子は、水素原子を有する]のカルベン配位子を有する。
【0112】
特に、OLED中でマトリクス材料として式Iの化合物と一緒に使用するために適した金属錯体は、以下の、以前の国際出願PCT/EP/04/09269号に開示された構造:
【化38】

[式中の変数は、既に上述した意味を有する]のIr−カルベン錯体を含む。
【0113】
OLED中でマトリクス材料として式Iの化合物と一緒に使用するために適した他の金属錯体は、また特に:
【化39】

【0114】
【化40】

【0115】
【化41】

【0116】
【化42】

【0117】
【化43】

[式中、Mは、Ru(III)、Rh(III)、Ir(III)、Pd(II)又はPt(II)を表し、nは、Ru(III)、Rh(III)及びIr(III)については、3の値を表し、Pd(II)及びPt(II)については、2の値をとり、かつY2及びY3は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はt−ブチルを意味する]が挙げられる。有利には、Mは、Ir(III)であり、その際、nは3である。Y3は、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はt−ブチルを意味する。
【0118】
OLED中でマトリクス材料として式Iの化合物と一緒に使用するために適した他の金属錯体は、また特に:
【化44】

[式中、Mは、Ru(III)、Rh(III)、Ir(III)、Pd(II)又はPt(II)を表し、nは、Ru(III)、Rh(III)及びIr(III)については、3の値を表し、Pd(II)及びPt(II)については、2の値をとり、かつY3は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はt−ブチルを意味する]が挙げられる。有利には、Mは、Ir(III)であり、その際、nは3である。Y3は、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はt−ブチルを意味する。
【0119】
OLED中でマトリクス材料として式Iの化合物と一緒に使用するために適した他の金属錯体は、また特に:
【化45】

[式中、Mは、Ru(III)、Rh(III)及び特に、Ir(III)、Pd(II)又はPt(II)を表し、nは、Ru(III)、Rh(III)及びIr(III)については、3の値を表し、Pd(II)及びPt(II)については、2の値をとる]が挙げられる。
【0120】
OLED中でマトリクス材料として式Iの化合物と一緒に使用するために適した他の金属錯体は、また特に:
【化46】

【0121】
【化47】

[式中、Mは、Ru(III)、Rh(III)及び特に、Ir(III)、Pd(II)又はPt(II)を表し、nは、Ru(III)、Rh(III)及びIr(III)については、3の値を表し、Pd(II)及びPt(II)については、2の値をとる]が挙げられる。
【0122】
更に、種々のカルベン配位子及び/又は配位子Lを有する錯体も該当し、その際、後者はモノアニオン性もしくはジアニオン性であり、かつ一座でも二座であってもよい。
【0123】
以下の表をもとに、三価の金属中心及び2つの異なるカルベン配位子L′及びL′′を有する錯体ML′(L′′)2を図式的に挙げたい
【表1】

その際、Mは、例えばRu(III)、Rh(III)又はIr(III)、特にIr(III)を表し、かつL′及びL′′は、例えば配位子L1〜L7
【化48】

の群から選択される配位子を表し、Y2は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はt−ブチルを表し、かつY3は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はt−ブチルを指す。
【0124】
種々のカルベン配位子(L′=L4であり、その際、Y2=水素、かつY3=メチル;L′′=L2であり、その際、Y2=水素、かつY3=メチル)を有する前記錯体の代表は、例えば:
【化49】

である。
【0125】
当然のように、式Iのマトリクス材料中で発光体として使用される三価の金属中心(例えばRu(III)、Rh(III)又はIr(III)の場合に)の錯体において、全ての3つのカルベン配位子は互いに異なってもよい。
【0126】
配位子L(ここではモノアニオン性の二座の配位子)を有する、"傍観者配位子"としての三価の金属中心Mの錯体のための例は、LML′L′′、LM(L′)2及びL2ML′であり、その際、Mは、例えばRu(III)、Rh(III)又はIr(III)、特にIr(III)を表し、かつL′及びL′′は、上述の意味を有する。錯体LML′L′′におけるL′及びL′′の組合せについては、この場合に:
【表2】

となる。
【0127】
配位子Lとしては、とりわけアセチルアセトネート及びそれらの誘導体、ピコリネート、シッフ塩基、アミノ酸並びに、WO02/15645号に挙げられる二座のモノアニオン性の配位子が該当し、特にアセチルアセトネート及びピコリネートに関心が持たれる。錯体L2ML′の場合には、配位子Lは、同一又は異なってよい。
【0128】
種々のカルベン配位子(L′=L4であり、その際、Y2=水素、かつY3=メチル;L′′=L2であり、その際、Y2=水素、かつY3=メチル)を有する前記錯体の代表は、例えば:
【化50】

[式中、記号
【化51】

中のz1及びz2は、配位子Lの両方の座を表す]である。Y3は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はt−ブチル、特にメチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピルを指す。
【0129】
従って、本発明の対象は、少なくとも1種の式Iの化合物をマトリクス材料として、かつその中に分散された少なくとも1種の他の物質を発光体として含有する発光層を含む有機発光ダイオードである。
【0130】
更に、本発明の更なる対象は、少なくとも1種の式Iの化合物をマトリクス材料として、かつその中に分散された少なくとも1種の他の物質を発光体として含有する発光層である。
【0131】
特に、本発明の更なる対象は、マトリクス材料としての少なくとも1種の式Iの化合物並びにその中に分散された発光体としての少なくとも1種の他の物質からなる発光層である。
【0132】
有機発光ダイオードは、基本的に複数の層:
例えば
1.アノード
2.正孔輸送層
3.発光層
4.電子輸送層
5.カソード
から構成されている。
【0133】
また、上述の構造とは異なる当業者に公知の層順序も可能である。例えば、OLEDは、上記の層の全てを有しなくともよく、例えば層(1)(アノード)、(3)(発光層)および(5)(カソード)を有するOLEDも同様に適しており、その際、層(2)(正孔輸送層)および層(4)(電子輸送層)の機能は、隣接する層によって引き受けられる。層(1)、(2)、(3)及び(5)又は層(1)、(3)、(4)及び(5)を有するOLEDは、同様に適している。
【0134】
式Iのフェノチアジン−S−オキシド誘導体及びフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体は、電荷輸送性材料、特に正孔輸送性材料として使用することができるが、それらの誘導体は、有利には発光層中でマトリクス材料として使用される。
【0135】
本発明により使用される式Iのフェノチアジン−S−オキシド誘導体又はフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体は、単独のマトリクス材料として(更なる添加剤を用いずに)発光層中に存在してよい。しかしながら、同様に、本発明により使用される式Iのフェノチアジン−S−オキシド誘導体又はフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体の他に、発光層中に他の化合物が存在することも可能である。例えば、現存の発光体分子の発色を変化させるために、蛍光染料が存在していてよい。更に、希釈材料を使用することができる。この希釈材料は、ポリマーであってよく、例えばポリ(N−ビニルカルバゾール)又はポリシランであってよい。しかしながら、希釈材料は、同様に、小分子であってよく、例えば4,4′−N,N′−ジカルバゾールビフェニル(CBP=CDP)又は第三級の芳香族アミンであってよい。希釈材料が使用される場合に、本発明により使用される式Iのフェノチアジン−S−オキシド誘導体又はフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体の発光層中での割合は、一般に依然として、フェノチアジン−S−オキシド誘導体又はフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体と希釈剤との全質量に対して、少なくとも40質量%、有利には50〜100質量%である。
【0136】
前記のOLED層の各々は、更に2又はそれ以上の層から構成されていてよい。例えば、正孔輸送層は、電極から正孔が注入される層と、正孔が正孔注入層から発光層へと輸送される層とから構成されていてよい。電子輸送層は、同様に、複数の層からなっていてよく、例えば電子が電極を通じて注入される層と、電子注入層から電子が得られ、そして発光層中に輸送される層とから成ってよい。これらの前記の層は、エネルギー準位、耐熱性及び電荷担体移動度並びに前記の層と有機層又は金属電極とのエネルギー差のような要素に応じてそれぞれ選択される。当業者は、OLEDの構造を、本発明により発光体物質として使用される有機化合物に最適に適合されるように選択することができる。
【0137】
特に効率的なOLEDを得るためには、正孔輸送層のHOMO(最高占有分子軌道)をアノードの仕事関数に合わせることが望ましく、かつ電子輸送層のLUMO(最低非占有分子軌道)をカソードの仕事関数に合わせることが望ましい。
【0138】
本発明の更なる対象は、少なくとも1種の式Iの化合物をマトリクス材料として、かつその中に分散された少なくとも1種の他の物質を発光体として含有するか、又はマトリクス材料としての1種以上の式Iの化合物並びにその中に分散された発光体としての少なくとも1種の他の物質からなる発光層を有するOLEDである。
【0139】
アノード(1)は、正の電荷担体を提供する電極である。該電極は、例えば、金属、種々の金属の混合物、金属合金、金属酸化物又は種々の金属酸化物の混合物を含有する材料から構成されてよい。選択的に、アノードは導電性ポリマーであってよい。好適な金属は、元素の周期系の第Ib族、第IVa族、第Va族及び第VIa族の金属並びに第VIIIa族の遷移金属を含む。アノードが光透過性であることが望ましい場合に、一般に元素の周期系(旧IUPAC版)の第IIb族、第IIIb族及び第IVb族の混合金属酸化物、例えばインジウム−スズ酸化物(ITO)が使用される。同様に、アノード(1)は、有機材料、例えばポリアニリンを含有することができ、これらは例えばNature,Vol.357,第477頁〜第479頁(1992年6月11日)に記載されている。少なくともアノード又はカソードのいずれかは、形成された光を出力結合しうるために、少なくとも部分的に透明であることが望ましい。
【0140】
本発明によるOLEDの層(2)のために適した正孔輸送材料は、例えばKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technologie,第4版、第18巻、第837〜第860頁、1996に開示されている。正孔輸送性の分子もポリマーも、正孔輸送材料として使用することができる。通常使用される正孔輸送性分子は、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N′−ビス(4−メチルフェニル)−N,N′−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1′−(3,3′−ジメチル)ビフェニル]−4,4′−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N′,N′−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、α−フェニル−4−N,N−ジフェニル−アミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)−ベンゾアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル)(4−メチル−フェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPR又はDEASP)、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N′,N′−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジアミン(TTB)、4,4′,4′′−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDTA)、ポルフィリン化合物及びフタロシアニン、例えば銅フタロシアニンからなる群から選択される。通常使用される正孔輸送性ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン及びポリアニリンからなる群から選択される。同様に、正孔輸送性ポリマーは、ポリマー、例えばポリスチレン及びポリカーボネート中に正孔輸送性分子をドープすることによって得ることができる。適当な正孔輸送性分子は、既に前記された分子である。
【0141】
本発明によるOLEDの層(4)に適した電子輸送性材料は、オキシノイド化合物とキレート化された金属、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、フェナントロリンを基礎とする化合物、例えば2,9−ジメチル,4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA=BCP)又は4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)及びアゾール化合物、例えば2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)及び3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を含む。この場合に、層(4)は、電子輸送の軽減のため、ならびにOLEDの層の境界面での励起子の消光を回避するために緩衝層又は障壁として使用することができる。有利には、層(4)は、電子の移動度を改善し、そして励起子の消光を低減させる。
【0142】
前記に、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料として挙げた材料によって、幾つかの複数の機能を満たすことができる。例えば、電子伝導性材料の幾つかは、該材料が低いところにあるHOMOを有する場合には、同時に正孔障壁性材料である。
【0143】
電荷輸送層は、使用される材料の輸送特性を改善させるために、一方で、層厚を大規模に構成するために(ピンホール/短絡の回避)、そして他方で、デバイスの駆動電圧を最少化させるために、電子ドーピングされていてもよい。例えば、正孔輸送材料は、電子受容体でドープされていてよく、例えばフタロシアニン又はアリールアミン、例えばTPD又はTDTAは、テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)でドープされていてよい。電子輸送材料を、例えばアルカリ金属でドープしてよく、例えばAlq3をリチウムでドープしてよい。電子ドーピングは、当業者に公知であり、例えばW.Gao、A.Kahn著のJ.Appl.Phys.,第94巻、第1号、2003年7月1日、p−ドープされた有機層;A.G.Werner、F.Li、K.Harada、M.Pfeiffer、T.Fritz、K.Leo著のAppl.Phys.Lett.,第82巻、第25号、2003年6月23日及びPfeiffer他著のOrganic Electronics 2003,4,89−103に開示されている。
【0144】
カソード(5)は、電子または負の電荷担体の供給に用いられる電極である。カソードに適した材料は、元素の周期系の第Ia族のアルカリ金属、例えばLi、Cs、第IIa族のアルカリ土類金属、例えばカルシウム、バリウム又はマグネシウム、第IIb族の金属(旧IUPAC版)からなり、ランタノイド及びアクチノイド、例えばサマリウムを含む群から選択される。更に、アルミニウム又はインジウムのような金属も、並びに全ての上述の金属の組み合わせを使用することもできる。更に、リチウムを含有する有機金属化合物又はLiFを、有機層とカソードとの間に適用して、駆動電圧を低減させることができる。
【0145】
本発明によるOLEDは、付加的に、当業者に公知の他の層を有してよい。例えば、層(2)と発光層(3)との間に、正電荷の輸送を軽減させ、及び/又は層の互いのバンドギャップを整合させる層が施こされていてよい。選択的に、前記の他の層は保護層としても使用することができる。同様に、発光層(3)と層(4)との間に、負電荷の輸送を軽減させ、及び/又は層間の互いのバンドギャップを整合させるために付加的な層が存在していてよい。選択的に、前記の層は保護層としても使用することができる。
【0146】
有利な一実施態様においては、本発明によるOLEDは、層(1)〜(5)の他に、以下に挙げられる更なる層:
− アノード(1)と正孔輸送層(2)との間の正孔注入層;
− 正孔輸送層(2)と発光層(3)との間の電子についての障壁層;
− 発光層(3)と電子輸送層(4)との間の正孔についての障壁層;
− 電子輸送層(4)とカソード(5)との間の電子注入層
の少なくとも1つを有する。
【0147】
しかしながら、OLEDは、記載された層の全てを有しなくともよく、例えば層(1)(アノード)、(3)(発光層)及び(5)(カソード)を有するOLEDも同様に適しており、その際、層(2)(正孔輸送層)及び層(4)(電子輸送層)の機能は、隣接する層によって引き受けられる。層(1)、(2)、(3)及び(5)又は層(1)、(3)、(4)及び(5)を有するOLEDは、同様に適している。
【0148】
これらの層が(例えば電気化学的試験に基づいて)適当な材料から選択しなければならないことは当業者に公知である。個々の層に適当な材料は、当業者に公知であり、例えばWO00/70655号に開示されている。
【0149】
更に、本発明によるOLEDの前記の層の各々は、2つ又はそれ以上の層から構成されていてよい。更に、層(1)、(2)、(3)、(4)および(5)の幾つかまたは全ては、電荷担体輸送の効率を高めるために表面処理されていてよい。前記の層の各々についての材料の選択は、有利には、高い効率及び寿命を有するOLEDが得られるようになされる。
【0150】
本発明によるOLEDの製造は、当業者に公知の方法により行なうことができる。一般に、本発明によるOLEDは、個々の層を好適な基体上に連続的に蒸着させることによって製造される。好適な基体は、例えばガラス又はポリマー被膜である。蒸着のためには、通常の技術、例えば熱的蒸発、化学蒸着などを使用することができる。代替法では、好適な溶剤中の溶液又は分散液から有機層を被覆することができ、その際、当業者に公知の被覆技術が使用される。
【0151】
一般に、種々の層は、以下の厚さを有する:アノード(1)500〜5000Å、有利には1000〜2000Å;正孔輸送層(2)50〜1000Å、有利には200〜800Å;発光層(3)10〜1000Å、有利には100〜800Å;電子輸送層(4)50〜1000Å、有利には200〜800Å;カソード(5)200〜10000Å、有利には300〜5000Å。本発明によるOLED中の正孔と電子の再結合領域の位置及び従ってOLEDの発光スペクトルは、各層の相対厚によって影響されうる。つまり、電子輸送層の厚さは、有利には、電子/正孔再結合領域が発光層中にあるように選択されることが望ましい。OLED中の個々の層の層厚の比は、使用される材料に依存する。場合により使用される付加的な層の層厚は、当業者に公知である。
【0152】
本発明によるOLEDの発光層中でマトリクス材料として本発明により使用される式Iのフェノチアジン−S−オキシド誘導体又はフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体を使用することによって、高い効率を有するOLEDを得ることができる。本発明によるOLEDの効率は、更に、他の層の最適化によって改善することができる。例えば、高効率なカソード、例えばCa又はBaを、場合によりLiFからなる中間層と組み合わせて使用することができる。駆動電圧の低減又は量子効率の向上を引き起こす成形された基体及び新規の正孔輸送材料は、同様に本発明によるOLED中で使用することができる。更に、種々の層のエネルギー準位を調整するために、かつエレクトロルミネセンスを軽減するために、OLED中に付加的な層が存在してよい。
【0153】
本発明によるOLEDは、エレクトロルミネセンスが有用な全ての装置で使用することができる。適当な装置は、有利には、定置式ディスプレイ及び可搬式ディスプレイから選択される。定置式ディスプレイは、例えばコンピュータ、テレビのディスプレイ、プリンタのディスプレイ、調理機器のディスプレイ並びに宣伝用ボード、照明及び標識板である。可搬式ディスプレイは、例えば携帯機器、ラップトップ、デジタルカメラ、車両のディスプレイならびにバス及び電車の目的地表示板である。
【0154】
更に、本発明により使用される式Iのフェノチアジン−S−オキシド誘導体又はフェノチアジン−S,S−ジオキシド誘導体は、逆構造を有するOLEDにおいて使用することができる。有利には、本発明により使用される式Iの化合物は、この逆OLEDにおいても、再び発光層中のマトリクス材料として使用される。逆OLEDの構造及びそこで通常使用される材料は当業者に公知である。
【0155】
次の実施例は本発明を更に説明する。
【0156】
実施例
実施例1:
3−フェニル−フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化52】

【0157】
2.00g(7.2ミリモル)3−フェニルフェノチアジン(J.Cymerman−Craig,W.P.Rogers及びG.P.Warwick著のAust.J.Chem.1955,8,252−257に従って合成された)を45mlの塩化メチレン中に入れた懸濁液を、室温で還流下で少しずつ3.40g(13.8ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合した。室温で4時間撹拌した後に、沈殿物を濾別し、塩化メチレンで洗浄し、そして真空中で乾燥させた。粗生成物(0.95g)を、酢酸から2回再結晶化させた。淡灰色の固体を高真空中で100℃で乾燥させた後に、0.492g(理論値の22%)の分析的に純粋な物質(269〜272℃の融点を有する)が得られ、その溶液はテトラヒドロフラン中でλ=383nmで蛍光を示した。
【0158】
実施例2:
a)10−メチル−3,7−ジフェニルフェノチアジン
【化53】

【0159】
2.50g(6.7ミリモル)の3,7−ジブロモ−10−メチルフェノチアジン(C.Bodea及びM.Terdic,Acad.Rep.Rom.1962,13,81−87に従って合成された)、1.85g(14.9ミリモル)の98%のフェニルボロン酸、0.11g(0.14ミリモル)のパラジウム−ビス(トリフェニルホスファン)ジクロリド及び1.03g(7.4ミリモル)の炭酸カリウムを、55mlのジメトキシエタン及び28mlの水中で、窒素下に還流下で沸点(75℃)まで5時間にわたり加熱した。該反応混合物を、室温に冷却し、そして一晩にわたり後撹拌した。沈殿物を吸引分離し、続けて125mlのエタノール及び熱水で洗浄し、そして70℃で真空中で乾燥させた。粗生成物(2.30g)を、2時間にわたりシクロヘキサン中で還流下に沸点まで加熱した。高温の懸濁液を濾過した後に、残留物を乾燥させ、40mlの塩化メチレン中に溶解させ、そしてシリカゲルで充填されたガラスフリットを介して濾過した。溶剤を除去した後に、1.05g(理論値の43%)の淡黄色の分析的に純粋な固体(239〜241℃の融点を有する)が得られ、その溶液はクロロホルム中でλ=464nmで蛍光を示した。
【0160】
b)10−メチル−3,7−ジフェニルフェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化54】

【0161】
1.95g(5.3ミリモル)の10−メチル−3,7−ジフェニルフェノチアジンを65mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、2.67g(10.7ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と少しずつ室温で混合し、そして20〜25℃で2時間にわたり撹拌した。該反応溶液を、連続してそれぞれ2回、10mlの10%の苛性カリ液、10mlの5%の塩酸、そして10mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液と一緒に振盪した。有機相を分離除去し、そしてカラムクロマトグラフィー(溶出剤:酢酸エステル)によって精製した。得られた粗生成物(1.80g)を、トルエンから再結晶化させ、そして引き続き高真空中で昇華させた。0.65g(理論値の31%)の淡色のベージュ色の分析的に純粋な固体(242〜245℃の融点を有する)が得られ、その溶液はクロロホルム中でλ=386nmで蛍光を示した。
【0162】
実施例3:
a)10−メチル−3,7−ビス(1−ナフチル)フェノチアジン
【化55】

【0163】
9.30g(25.1ミリモル)の3,7−ジブロモ−10−メチルフェノチアジン、9.50g(55.2ミリモル)の1−ナフチル−ボロン酸、0.407g(0.50ミリモル)のパラジウム−ビス(トリフェニルホスファン)ジクロリド及び3.80g(27.5ミリモル)の炭酸カリウムを、204mlのジメトキシエタン及び101mlの水中で窒素下で5時間にわたり還流下に沸点まで加熱した。該反応混合物を、室温に冷却し、そして一晩にわたり後撹拌し、次いで濾過した。残留物を、470mlのエタノール及び熱水で洗浄し、そして70℃で真空中で乾燥させた。該固体を、100mlの塩化メチレン中に溶解させ、そしてシリカゲルを介して濾過した。溶剤を真空中で除去した後に、粘着性の物質が得られ、それを200mlのメタノールを添加した後に撹拌しつつ一晩結晶化させた。その結晶を、吸引分離し、300mlのメタノールで洗浄し、そして40℃で真空中で乾燥させた。10.33gの淡黄色の微結晶(185〜190℃の融点を有する)が得られた。その粗生成物を、酢酸エステルから2回再結晶させた。5.71g(理論値の49%)の分析的に純粋なほぼ無色の微結晶(191〜194℃の融点を有する)が得られ、その溶液はクロロホルム中でλ=468nmで蛍光を示した。
【0164】
b)10−メチル−3,7−ビス(1−ナフチル)フェノチアジン−5−オキシド
【化56】

【0165】
2.50g(5.37ミリモル)の10−メチル−3,7−ビス(1−ナフチル)フェノチアジンを60mlの塩化メチレン中に入れて氷冷した懸濁液に、1.20g(5.35ミリモル)の77%のm−クロロ過安息香酸を20mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を30分以内で滴加した。反応溶液を、2時間にわたり0〜5℃で撹拌した。引き続き、更なる0.60g(2.70ミリモル)のm−クロロ過安息香酸を、10mlの塩化メチレン中に溶かして滴加した。該溶液を0〜5℃で2時間にわたり後撹拌し、次いで室温に加温した。該反応溶液をそれぞれ2回15mlの10%のKOH、15mlの5%のHCl、そして25mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液と一緒に振盪した後に、有機相をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶出剤:塩化メチレン)によって精製した。第一のフラクションは、スルホン(実施例3cを参照)を含有し、そこから0.38g(理論値の14%)の分析的に純粋な無色の固体(221〜225℃の融点を有する)が単離され、それはクロロホルム中に溶解してλ=385nmで蛍光を示した。スルホンの分離後に、溶出剤を酢酸エステルに置き換え、その上で第二のフラクションが得られた。溶剤を除去した後に、粘着性のペーストが得られ、それは水の添加後に結晶化させた。1.53g(理論値の59%)の淡褐色の分析的に純粋な固体(>150℃の分解点を有する)が得られ、その溶液はクロロホルム中でλ=388nmで蛍光を示した。
【0166】
c)10−メチル−3,7−ビス(1−ナフチル)フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化57】

【0167】
10−メチル−3,7−ビス(1−ナフチル)フェノチアジン−5−オキシドの合成における副生成物としての製造については、b)を参照のこと。スルホンの狙い通りの製造のためには、少なくとも2モル当量のm−クロロ過安息香酸の使用が推奨される。無色の微結晶(221〜225℃の融点を有する)が得られ、その溶液はクロロホルム中でλ=385nmで蛍光を示した。
【0168】
実施例4:
a)10−メチル−3,7−ビス(2−ナフチル)フェノチアジン
【化58】

【0169】
9.30g(25.1ミリモル)の3,7−ジブロモ−10−メチルフェノチアジン、9.50g(55.2ミリモル)の2−ナフチル−ボロン酸、0.407g(0.50ミリモル)のパラジウム−ビス(トリフェニルホスファン)ジクロリド及び3.80g(27.5ミリモル)の炭酸カリウムを、204mlのジメトキシエタン及び101mlの水中で窒素下で5時間にわたり還流下に沸点まで加熱した。該反応混合物を、室温に冷却し、そして一晩にわたり後撹拌し、次いで濾過した。残留物を、470mlのエタノール及び熱水で洗浄し、そして70℃で真空中で乾燥させた。該固体を、200mlの塩化メチレン中に溶解させ、そしてシリカゲルを介して濾過した。溶剤を真空中で除去した後に、9.6gの帯緑黄色の固体が得られ(融点276〜281℃)、それを500mlのトルエンから再結晶化させた。7.10g(理論値の61%)の分析的に純粋な光沢のある黄色の微結晶(285〜289℃の融点を有する)が得られ、その溶液はクロロホルム中でλ=402nmで蛍光を示した。
【0170】
b)10−メチル−3,7−ビス(2−ナフチル)フェノチアジン−5−オキシド
【化59】

【0171】
2.50g(5.37ミリモル)の10−メチル−3,7−ビス(2−ナフチル)フェノチアジンを60mlの塩化メチレン中に入れて氷冷した懸濁液に、1.20g(5.35ミリモル)の77%のm−クロロ過安息香酸を20mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を30分以内で滴加した。反応溶液を、2時間にわたり0〜5℃で撹拌した。引き続き、更なる0.60g(2.70ミリモル)のm−クロロ過安息香酸を、10mlの塩化メチレン中に溶かして滴加した。該溶液を0〜5℃で2時間にわたり後撹拌し、次いで室温に加温した。該反応溶液をそれぞれ2回15mlの10%のKOH、15mlの5%のHCl、そして25mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液と一緒に振盪した後に、有機相をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶出剤:塩化メチレン)によって精製した。第一のフラクションは、0.62gのスルホン(c)を参照)を含有し、それを36mlのo−ジクロロベンゼンから再結晶化させた。0.44g(理論値の16%)の帯黄色の固体(融点328〜332℃を有する)が得られた。スルホンを分離した後に、溶出剤を酢酸エステルに置き換えた。溶剤を除去した後に、1.30gの固体が得られ、それを134mlの酢酸から再結晶化させた。0.54g(理論値の21%)のベージュ色の分析的に純粋な固体(275〜280℃の融点を有する)が得られ、その溶液はクロロホルム中でλ=402nmで蛍光を示した。
【0172】
c)10−メチル−3,7−ビス(2−ナフチル)フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化60】

【0173】
10−メチル−3,7−ビス(2−ナフチル)フェノチアジン−5−オキシドの合成における副生成物としての製造については、b)を参照のこと。スルホンの狙い通りの製造のためには、少なくとも2モル当量のm−クロロ過安息香酸の使用が推奨される。帯黄色の微結晶(融点328〜332℃を有する)が得られた。
【0174】
実施例5:
a)1,3−フェニレン−10,10′−ビス(フェノチアジン)
【化61】

【0175】
その製造は、K.Okada他著のJ.Am.Chem.Soc.1996,118,3047−3048に従って実施した。
【0176】
18.5g(91.9ミリモル)のフェノチアジン、15.6g(46.3ミリモル)の98%の1,3−ジヨードベンゼン、19.4g(140ミリモル)の炭酸カリウム及び1.16g(18.3ミリモル)の活性化された銅粉末を、200℃に加熱し、この温度で24時間撹拌した。該反応混合物を、140℃に冷却し、そして次いで200mlの酢酸エチルエステルと混合した。該懸濁液を、還流下で1時間にわたり沸点にまで加熱し、引き続き高温濾過した。濾液を、300mlのメタノールで希釈すると、その際、沈殿物が沈殿する、それを吸引分離し、メタノールで洗浄し、そして80℃で真空中で乾燥させた。8.91gのローズ色の固体(186〜188℃の融点を有する)が得られた。
【0177】
b)1,3−フェニレン−10,10′−ビス(フェノチアジン)−5,5′−ジオキシド
【化62】

【0178】
6.28g(13.3ミリモル)の1,3−フェニレン−10,10′−ビス(フェノチアジン)を、220mlの塩化メチレン中に溶解させた。室温で15分間撹拌した後に、17.9g(79.9ミリモル)の77%のm−クロロ過安息香酸を少しずつ添加した。該反応溶液を、室温で24時間撹拌し、その間に沈殿物が沈殿した。該溶液を濾過し、そして残留物を塩化メチレンで洗浄し、そして吸引乾燥した。その固体を熱水中に懸濁させた。該水性懸濁液を、5%の苛性カリ液でpH11に調整し、引き続き高温濾過した。残留物を、熱水で洗浄し、そして80℃で真空中で乾燥させた。固体(5.07g)を、ジメチルホルムアミドから再結晶化させた。3.72gの無色の微結晶(412℃の融点を有する)が分析的に純粋に得られ、そのトルエン中の溶液は、λ=375nm(S)で蛍光を示した。
【0179】
実施例6:
a)1,4−フェニレン−10,10′−ビス(フェノチアジン)
【化63】

【0180】
その製造は、K.Okada他著のJ.Am.Chem.Soc.1996,118,3047−3048に従って実施した。
【0181】
19.9g(98.9ミリモル)のフェノチアジン、16.6g(49.8ミリモル)の99%の1,4−ジヨードベンゼン、20.9g(151ミリモル)の炭酸カリウム及び1.25g(19.7ミリモル)の活性化された銅粉末を、196℃に加熱し、この温度で17時間撹拌した。該反応混合物を室温に冷却した後に、200mlの熱水を添加した。該懸濁液を1時間撹拌し、引き続き濾過した。残留物を、熱水で洗浄し、そして80℃で真空中で乾燥させた。粗生成物(21.6g)を、200mlの塩化メチレン中で1時間にわたり還流下に沸点まで加熱した。該溶液を室温にまで冷却した後に、該溶液をシリカゲルを介して濾過した。3つのフラクションが得られ、そのうち最初の2つを合し(11.7g)、そして酢酸エチルエステルから再結晶化させた。第三のフラクションは、所望の有用生成物(5.0g)を含有していた。全体として、13.47gのベージュ色の固体(融点254〜263℃)が得られた。
【0182】
b)1,4−フェニレン−10,10′−ビス(フェノチアジン)−5,5′−ジオキシド
【化64】

【0183】
4.98g(10.5ミリモル)の1,4−フェニレン−10,10′−ビス(フェノチアジン)を、175mlの塩化メチレン中に溶解させた。室温で1時間撹拌した後に、10.41g(46.5ミリモル)の77%のm−クロロ過安息香酸を少しずつ添加した。該反応溶液を、室温で24時間撹拌し、その間に沈殿物が沈殿した。該溶液を濾過し、そして残留物を塩化メチレンで洗浄し、そして吸引乾燥した。その固体を200mlの熱水中に懸濁させた。該水性懸濁液を、5mlの10%の苛性カリ液でpH11.3に調整し、1時間撹拌し、引き続き高温濾過した。残留物を、熱水で洗浄し、そして80℃で真空中で乾燥させた。固体(5.37g)を、2回スルホランから再結晶化させた。2.87g(51%)のローズ色がかった微結晶(融点>360℃を有する)が分析的に純粋に得られ、その溶液は塩化メチレン中でλ=480nmで蛍光を示した。
【0184】
実施例7:
10−メチルフェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化65】

【0185】
その製造は、M.Tosa他著のHeterocyclic Commun.7(2001)277−282に従って実施した。
【0186】
10.0g(45.9ミリモル)の98%の10−メチルフェノチアジンを350mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で、22.65g(91.9ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして20〜25℃で5時間撹拌した。該溶液を濾過した後で、濾液を連続して2回、それぞれ100mlの10%の苛性カリ液、100mlの5%の塩酸、そして70mlの飽和炭酸水素ナトリウムと一緒に振盪した。有機相を、150℃にまで濃縮し、次いでシリカゲルを介して濾過した。第二のフラクションから、4.89g(理論値の43%)のベージュ色の微結晶(融点226〜235℃を有する;文献では225〜226℃)が分析的に純粋に単離された。酢酸中で再結晶化させることで、無色の結晶が得られ、それは226〜233℃で溶融した。該物質をクロロホルム中に溶かした溶液は、λ=351,376(S)nmで蛍光を示した。
【0187】
実施例8:
a)10−フェニルフェノチアジン
【化66】

【0188】
その製造は、D.Li他著のDyes and Pigments 49(2001)181〜186に従って実施した。
【0189】
96.0g(482ミリモル)のフェノチアジン、298.5g(1434ミリモル)の98%のヨードベンゼン、80.0g(579ミリモル)の炭酸カリウム及び2.00(31.5ミリモル)の銅粉末を、190〜200℃に加熱し、そしてこの温度で6時間撹拌した。引き続き、過剰のヨードベンゼンを留去した。該反応混合物を480mlのエタノールで希釈し、そして還流下に1時間にわたり沸点まで加熱した。該溶液を高温濾過した。冷却した後に、沈殿物を吸引により分離し、エタノールで洗浄し、そして真空中で乾燥させた。77.7g(理論値の58.5%)の灰色の微結晶(融点95〜96℃を有する;文献では95〜97℃)が得られた。
【0190】
b)10−フェニルフェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化67】

【0191】
文献から公知の化合物(H.Gilman及びR.O.Ranck著のJ.Org.Chem.1958,23,1903−1906)の製造は、M.Tosa他著のHeterocyclic Commun.7(2001)277〜282の方法と同様に実施した。
【0192】
5.50g(20.0ミリモル)の10−フェニルフェノチアジンを220mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で、11.84g(48.0ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして20〜25℃で8時間撹拌した。該溶液を、濃縮乾涸させた。残留物を熱水中に懸濁させ、そして80〜85℃に加温した。前記温度で、pHを、32mlの10%の苛性カリ液で7〜8に調整した。該溶液を、30分間にわたり後撹拌し、引き続き濾過し、熱水で洗浄し、そして真空中で80℃で乾燥させた。粗生成物(5.77g)を、30mlの塩化メチレン中に溶解させ、そしてシリカゲルを介して濾過した。第二のフラクションから、2.92g(理論値の47%)のベージュ色の微結晶(融点212〜217℃を有する;文献では212〜213℃)が分析的に純粋に単離された。酢酸中で再結晶化させることで、無色の結晶が得られ、それは212〜217℃で溶融した。該物質をクロロホルム中に溶かした溶液は、λ=348,386(S),452(S)nmで蛍光を示した。
【0193】
実施例9:
a)10−(4−メトキシフェニル)−フェノチアジン
【化68】

【0194】
18.77g(94.2ミリモル)のフェノチアジン、66.5g(284ミリモル)の98%の4−ヨードアニソール、15.7g(114ミリモル)の炭酸カリウム及び0.392g(6.17ミリモル)の銅粉末を、190〜200℃に加熱し、そしてこの温度で48時間撹拌した。引き続き、過剰のヨードベンゼンを留去した。該反応混合物を、200mlの熱水と混合し、そして1時間にわたり90℃で加熱した。該溶液を高温濾過した。冷却した後に、沈殿物を吸引により分離し、エタノールで洗浄し、そして真空中で乾燥させた。粗生成物(29.0g)を、345mlの酢酸から再結晶化させた。22.54g(理論値の78.4%)のベージュ色の微結晶(融点173〜176℃を有する;文献では172〜174℃)が得られた。
【0195】
b)10−(4−メトキシフェニル)フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化69】

【0196】
5.00g(16.4ミリモル)の10−(メトキシフェニル)−フェノチアジンを175mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で9.76g(39.6ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして20〜25℃で4時間撹拌した。該溶液を、濃縮乾涸させた。残留物を200mlの熱水中にとり、そして80〜85℃に加温した。前記温度で、pHを、25mlの10%の苛性カリ液で7〜8に調整した。該溶液を、30分間にわたり後撹拌し、引き続き濾過し、熱水で洗浄し、そして真空中で80℃で乾燥させた。粗生成物(5.25g)を、70mlの塩化メチレン中に溶解させ、そしてシリカゲルを介して濾過した。溶剤を除去した後に、4.41g(理論値の80%)の無色の微結晶(融点265〜266℃を有する)が分析的に純粋に単離された。酢酸中で再結晶化させることで、無色の結晶が得られ、それは264〜270℃で溶融した。該物質をクロロホルム中に溶かした溶液は、λ=474nmで蛍光を示した。
【0197】
実施例10:
a)10−メシチルフェノチアジン
【化70】

【0198】
9.92g(49.8ミリモル)のフェノチアジン、25.0g(99.6ミリモル)の98%の2,4,6−トリメチルヨードベンゼン、8.30g(60.0ミリモル)の炭酸カリウム及び0.207g(3.26ミリモル)の銅粉末を、180℃に加熱し、この温度で24時間撹拌した。引き続き、過剰の2,4,6−トリメチルヨードベンゼンを留去した。該反応混合物を、300mlの水と混合し、そして一晩撹拌した。該懸濁液を濾過し、熱水で中性になるまで洗浄し、そして真空中で80℃で乾燥させた。粗生成物(16.6g)を、500mlのエタノール中に2時間にわたり撹拌下に沸点にまで加熱し、次いで200mlの水で希釈した。沈殿物を吸引分離し、真空中で80℃で乾燥させ(10.5g)、そして150mlのトルエン中に溶解させた。該溶液をシリカゲルを介して濾過した。濾液を濃縮した後に、7.22gの淡褐色の微結晶(融点192〜200℃を有する)が得られた。
【0199】
b)10−メシチルフェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化71】

【0200】
1.50g(4.73ミリモル)の10−メシチルフェノチアジンを55mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で、2.80g(11.4ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして20〜25℃で8時間撹拌した。該溶液を、連続して2回、それぞれ20mlの10%の苛性カリ液、20mlの5%の塩酸、そして15mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液と一緒に振盪した。該溶液をシリカゲルを介して濾過した。濾液を濃縮した後に、1.43g(理論値の86%)のベージュ色の微結晶(融点242〜246℃を有する)が分析的に純粋に単離された。酢酸中で再結晶化させることで、無色の結晶が得られ、それは240〜246℃で溶融した。該物質をクロロホルム中に溶かした溶液は、λ=349,370(S)nmで蛍光を示した。
【0201】
実施例11:
a)1,3,5−フェニレン−10,10′,10′′−トリス(フェノチアジン)
【化72】

【0202】
6.00g(150ミリモル)の水素化ナトリウム(パラフィン油中60%の分散液)を150mlの無水ジメチルホルムアミド中に入れた懸濁液に、撹拌しつつ窒素下で30.19g(150ミリモル)のフェノチアジンを室温で添加し、その際、反応温度が40℃に高まった。水素発生が完了した後に(約20分)、6.20g(46.0ミリモル)の98%の1,3,5−トリフルオロベンゼンを10mlのジメチルホルムアミド中に溶かした溶液を、15分以内で反応溶液に滴加した。引き続き、反応溶液をまず2時間80℃で加熱し、次いで100℃で16時間加熱した。室温に冷却した後に、反応溶液を500mlの氷水中で沈殿させた。沈殿物を吸引分離し、熱水で中性になるまで洗浄し、次いで500mlのメタノール中に分散させた。該懸濁液を、1時間にわたって還流下に沸点にまで加熱した。室温に冷却した後に、固体を吸引分離し、メタノールで洗浄し、そして50℃で真空中で乾燥させた。24.80gの固体が得られ、それは酢酸エステル中で1時間にわたり還流下で沸点にまで加熱した。室温に冷却した後に、固体を吸引分離し、酢酸エステルで洗浄し、もう一度酢酸エステル中で1時間にわたり還流下で沸点にまで加熱した。室温に冷却した後に、固体を吸引分離し、酢酸エステルで洗浄し、そして80℃で真空中で乾燥させた。23.34g(理論値の76%)の淡灰色の固体(融点264〜268℃を有する)が得られた。
【0203】
b)1,3,5−フェニレン−10,10′,10′′−トリス(フェノチアジン−5,5−ジオキシド)
【化73】

【0204】
6.70g(10.0ミリモル)の1,3,5−フェニレン−10,10′,10′′−トリス(フェノチアジン)を180mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で少しずつ22.19g(90.0ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして20〜25℃で24時間撹拌した。該反応混合物を、濃縮乾涸し、次いで150mlの熱水及び46mlの10%の苛性カリ液と混合した。固体を吸引分離し、熱水で中性になるまで洗浄し、そして80℃で真空中で乾燥させた。7.63gのベージュ色の微結晶(融点>360℃を有する)が得られた。
【0205】
実施例12:安息香酸−4−(5,5−ジオキソ−フェノチアジン−10−イル)フェニルエステル
a)10−(2−ヒドロキシフェニル)−フェノチアジン
【化74】

【0206】
35.9g(180ミリモル)のフェノチアジン、44.5g(198ミリモル)の98%の4−ヨードフェノール(2−ヨードフェノールも同様に使用することができる)、29.9g(216ミリモル)の炭酸カリウム及び0.75g(12ミリモル)の銅粉末を、198℃に加熱し、そしてこの温度で3.5時間撹拌した。反応溶融物を、140℃に冷却し、そして次いで150mlの水と3分以内に混合し、その際、反応混合物は凝固した。ドライアイスを用いて冷却した後に、固体を単離し、乳鉢中で粉砕し、そして150mlの水と混合した。該懸濁液を、水蒸気蒸留に供して、過剰のヨードフェノールを除去した。引き続き固体を吸引分離し、そして水で洗浄した。水湿した固体を、400mlのエタノール中に懸濁し、室温で一晩撹拌し、次いで吸引分離し、エタノールで洗浄し、そして真空中で80℃で乾燥させた。粗生成物(16.6g)を、500mlのエタノール中に2時間にわたり撹拌下に沸点にまで加熱し、次いで200mlの水で希釈した。沈殿物を吸引分離し、真空中で80℃で乾燥させ(10.5g)、そして150mlのトルエン中に溶解させた。該溶液をシリカゲルを介して濾過した。濾液を濃縮した後に、7.22gの淡褐色の微結晶(融点192〜200℃を有する)が得られた。
【0207】
b)安息香酸−2−(フェノチアジン−10−イル)フェニルエステル
【化75】

【0208】
4.00g(13.7ミリモル)の10−(2−ヒドロキシフェニル)フェノチアジンを24mlのピリジン中に溶かした溶液に、0〜5℃で30分以内で、16.0g(114ミリモル)の塩化ベンゾイルを撹拌しつつ滴加した。室温で2時間撹拌した後に、反応溶液を60〜65℃に加温し、そしてこの温度で15分間撹拌した。室温に冷却した後に、該懸濁液を更に一晩撹拌した。300mlの氷水を添加した後に、該懸濁液を、ゆっくりと19mlの濃塩酸と混合し(pH0.9)、そして1時間にわたり撹拌した。該懸濁液を、ガラスフリットを介して濾過した。残留物を、2lの水で中性になるまで洗浄し、そして60℃で真空中で乾燥させた。2.87g(理論値の53%)の無色の微結晶(融点144〜148℃を有する)が得られた。
【0209】
c)安息香酸−2−(5,5−ジオキソ−フェノチアジン−10−イル)フェニルエステル
【化76】

【0210】
1.32g(3.33ミリモル)の安息香酸−2−(フェノチアジン−10−イル)フェニルエステルを50mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で1.81g(7.33ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして20℃で24時間撹拌した。該溶液を、真空中で濃縮乾涸させた。残留物を50mlの水中にとった。該懸濁液を、80℃に加温し、そして4.5mlの10%の苛性カリ液を添加した後に20分間撹拌した。ベージュ色の固体を、高温で吸引分離し、熱水で洗浄し、そして70℃で乾燥させた(1.285g)。固体が22mlの塩化メチレン中に溶けた溶液を、シリカゲルMN60を介して濾過し、その際、100部の塩化メチレン及び1部のメタノールからなる混合物で後洗浄した。濾液を濃縮した後に、残留物を酢酸から再結晶化させた。0.93g(理論値の65%)の無色の微結晶が得られ、それは228〜232℃で溶融した。
【0211】
実施例13:10−(2−ヒドロキシフェニル)−フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化77】

【0212】
1.50g(5.14ミリモル)の10−(2−ヒドロキシフェニル)フェノチアジンを50mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で2.79g(11.31ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして5.5時間室温で撹拌した。該溶液を、真空中で濃縮乾涸させた。残留物を100mlの水中にとった。該懸濁液を、80℃に加温し、そして7.5mlの10%の苛性カリ液を添加した後に20分間撹拌した。固体を、高温で吸引分離し、熱水で洗浄し、そして70℃で乾燥させた(1.45g)。ベージュ色の固体を、2回、それぞれ42mlの酢酸から再結晶化させた。0.92g(理論値の55%)の無色の微結晶が得られ、それは282〜287℃で溶融した。
【0213】
実施例14:安息香酸−4−(5,5−ジオキソ−フェノチアジン−10−イル)フェニルエステル
a)(4−ヨードフェニル)ベンジルエーテル
【化78】

【0214】
21.40g(95.3ミリモル)の98%の4−ヨードフェノール、12.19g(95.3ミリモル)の99%の塩化ベンジル、20.73g(150ミリモル)の炭酸カリウム及び250mlのアセトンからなる反応混合物を、還流温度に加温し、そして30時間にわたり沸点まで加熱した。室温に冷却した後に、該反応混合物を濾過した。濾液を濃縮し、そして引き続き氷浴中で冷却し、その際、沈殿物が沈殿した。この沈殿物を青帯フィルタ(Blaubandfilter)を介して分離除去し、そして次いで乾燥させた。粗生成物(23.22g)を、70mlのエタノールから再結晶化させた。17.20g(理論値の58%)の無色の微結晶(融点61〜62℃を有する;文献では62℃)が得られた。
【0215】
b)10−(4−ベンジルオキシフェニル)−フェノチアジン
【化79】

【0216】
5.56g(27.9ミリモル)のフェノチアジン、8.65g(27.9ミリモル)の(4−ヨードフェニル)ベンジルエーテル、4.64g(33.5ミリモル)の炭酸カリウム及び0.116g(1.82ミリモル)の銅粉末を、190℃に加熱し、そしてこの温度で24時間撹拌した。該反応溶融物を、110℃に冷却し、次いで200mlのトルエンで希釈し、そして1時間にわたり112℃で撹拌した。該溶液を高温濾過した。室温に冷却された濾液を、シリカゲル上でトルエン中で精製した。ベージュ色の粗生成物(6.52g)を、125mlのエタノールから再結晶化させた。4.79g(理論値の45%)のベージュ色の微結晶(融点144〜146℃を有する)が得られた。
【0217】
c)10−(4−ベンジルオキシフェニル)フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化80】

【0218】
4.60g(12.1ミリモル)の10−(4−ベンジルオキシフェニル)フェノチアジンを130mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で6.53g(26.5ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして3時間室温で撹拌した。該溶液を、真空中で濃縮乾涸させた。残留物を150mlの水中にとった。該懸濁液を、80℃に加温し、そして14mlの10%の苛性カリ液を添加した後に20分間撹拌した。固体を、高温で吸引分離し、熱水で洗浄し、そして100℃で乾燥させた。4.78g(理論値の96%)のベージュ色の固体(融点203〜208℃を有する)が得られた。塩化メチレン残分を除去するために、0.96gの固体を高真空中で200℃で昇華させた。0.78gの分析的に純粋な無色の微結晶が得られ、それは204〜208℃で溶融した。
【0219】
d)10−(4−ヒドロキシフェニル)フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化81】

【0220】
3.10g(7.50ミリモル)の10−(4−ベンジルオキシフェニル)フェノチアジン−5,5−ジオキシド、2.30g(35.7ミリモル)の98%のギ酸アンモニウム及び7.5gの10%の活性炭上パラジウムを、225mlのアセトン中で、1時間にわたり還流下に沸点にまで加熱した。室温に冷却した後に、該溶液を濾過した。その濾液を濃縮し、そして10mlのメタノールを添加した後に一晩撹拌した。固体を吸引分離し、メタノールで洗浄し、そして110℃で真空乾燥棚中で乾燥させた。1.47g(理論値の61%)の分析的に純粋な淡灰色の微結晶(融点308〜311℃を有する)が得られた。
【0221】
e)安息香酸−4−(5,5−ジオキソ−フェノチアジン−10−イル)フェニルエステル
【化82】

【0222】
0.72g(2.22ミリモル)の10−(4−ヒドロキシフェニル)フェノチアジン−5,5−ジオキシドを120mlのアセトニトリル中に溶かした溶液に、0.68g(6.68ミリモル)のトリエチルアミン及び0.34g(2.44ミリモル)の塩化ベンゾイルを添加した。室温で45分間撹拌した後に、溶剤を留去した。残留物を、100mlの熱水中にとり、そして75℃で30分間撹拌した。固体を、高温で吸引分離し、熱水で洗浄し、そして120℃で循環空気乾燥棚中で乾燥させた。0.87g(理論値の92%)の無色の微結晶(融点233〜235℃を有する)が得られた。
【0223】
実施例15:10−(3,5−ジフルオロフェニル)−フェノチアジン−5,5−ジオキシド
a)10−(3,5−ジフルオロフェニル)−フェノチアジン
【化83】

【0224】
2.00g(50.0ミリモル)の水素化ナトリウム(パラフィン油中60%の分散液)を100mlの無水ジメチルホルムアミド中に入れた懸濁液に、撹拌しつつ窒素下で10.07g(50.0ミリモル)のフェノチアジンを室温で10分以内で添加し、その際、反応温度が32℃に高まった。水素発生が完了した後に(約20分)、7.41g(55.0ミリモル)の98%の1,3,5−トリフルオロベンゼンを50mlのジメチルホルムアミド中に溶かした溶液を、15分以内で、85℃に加熱された反応溶液に滴加した。引き続き、反応溶液を24時間にわたり前記温度で撹拌した。室温に冷却した後に、反応溶液を500mlの氷水中でゆっくりと沈殿させた。該水性懸濁液を、18gの塩化ナトリウムを添加した後に2時間撹拌し、そして引き続き濾過した。残留物を水で洗浄し、そして乾燥させた。固体を200mlのヘキサン中に懸濁させ、そして1時間還流下で加熱した。室温に冷却した後に、該懸濁液を濾過した。濾液を、真空中で濃縮乾涸させた。残留物(7.00g)を、40部のヘキサン及び1部の酢酸エステルからなる混合物230ml中で撹拌し、そして濾過した。濾液を、シリカゲル上で40部のヘキサン及び1部の酢酸エステルからなる溶出剤を用いてクロマトグラフィーに供した。溶剤を除去した後に、残留物を80℃及び1.8×10-5ミリバールで乾燥させ、その際、該物質の一部が昇華した。装入物中に残留した固体を、40mlのエタノールから再結晶化させた。1.18g(理論値の7.6%)の分析的に純粋な無色の微結晶(融点111〜115℃を有する)が得られた。
【0225】
b)10−(3,5−ジフルオロフェニル)フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化84】

【0226】
1.40g(4.50ミリモル)の10−(3,5−ジフルオロフェニル)フェノチアジンを40mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で2.46g(10.0ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして2時間室温で撹拌した。該溶液を、真空中で濃縮乾涸させた。残留物を、100mlの50℃の温水中で30分間撹拌した。該懸濁液を、7.5mlの10%の苛性カリ液と混合し、30分間撹拌し、そして次いで濾過した。固体を、高温で吸引分離し、熱水で洗浄し、そして80℃で乾燥させた。ベージュ色の固体(1.54g)を、2回酢酸から再結晶化させた。130℃で高真空中で乾燥させた後に、0.73g(理論値の47%)の分析的に純粋な無色の微結晶が得られ、それは255〜258℃で溶融した。
【0227】
実施例16:10−(2−ピリジル)−フェノチアジン−5,5−ジオキシド
a)10−(2−ピリジル)−フェノチアジン
【化85】

【0228】
4.46g(22.4ミリモル)のフェノチアジン、9.36g(47.6ミリモル)の98%の2−ヨードピリジン、3.72g(26.9ミリモル)の炭酸カリウム及び0.093g(1.5ミリモル)の銅粉末を、192℃に加熱し、この温度で24時間撹拌した。該反応溶融物を、100℃に冷却し、次いでゆっくりと200mlのエタノールで希釈し、そして1時間にわたり還流下で沸点にまで加熱した。室温に冷却した後に、反応混合物を濾過し、その際、粘着性のペーストが残留し、それを100mlの塩化メチレン中に溶解させた。該塩化メチレン溶液を、シリカゲル上で精製し、その際、2つのフラクションが得られた。第二のフラクションを、濃縮乾涸させた。2.55g(理論値の41%)のベージュ色の微結晶(融点107〜109℃を有する;文献では109〜110℃)が得られた。
【0229】
b)10−(2−ピリジル)−フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化86】

【0230】
2.20g(7.96ミリモル)の10−(2−ピリジル)フェノチアジンを80mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で冷却しつつ4.32g(17.5ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして2時間にわたり室温で撹拌した。該溶液を、真空中で濃縮乾涸させた。残留物を、200mlの70℃の熱水中にとり、そして10mlの10%のKOHと混合した。30分間撹拌した後に、該懸濁液を濾過した。残留物を、熱水で洗浄し、そして50℃で真空中で乾燥させた。無色の固体(1.87g)を、99部の塩化メチレン及び1部のメタノールからなる混合物20ml中に溶解させ、そしてシリカゲル上で精製した。精製した溶液を、濃縮乾涸させた。残留物を70℃で真空中で乾燥させた後に、それを10mlの酢酸から再結晶化させた。1.09g(理論値の44%)の分析的に純粋な無色の微結晶が得られ、それは186〜190℃で溶融した。酢酸性の濾液を更に長く室温に置いた後に、更に0.32gの無色の結晶(融点184〜188℃を有する)が沈殿した(全収率:57%)。
【0231】
実施例17:10−[4−(N−フェニル−2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]フェノチアジン−5,5−ジオキシド
a)N−フェニル−2−(4−ヨードフェニル)ベンゾイミダゾール
【化87】

【0232】
37.47g(136ミリモル)の97%の4−ヨードベンゾイルクロリド及び12.82g(68.2ミリモル)の98%のo−アミノジフェニルアミンを、100℃に加熱し、その際、85〜90℃以降で撹拌可能な溶融物が生じた。ガス発生が完了した後に(5分)、該溶融物が凝固した。反応物質を、更に3時間にわたり100℃で保持した。冷却した後に、該反応物質を100mlのエタノールと撹拌しつつ混合した。沈殿物を吸引分離し、エタノールで洗浄し、そして新たに400mlのエタノール中で撹拌した。該懸濁液を75℃に加温し、その際、溶液が生じ、それを29mlの25%のアンモニアでpH8に調整した。5〜10℃に冷却した後に、沈殿物を吸引分離し、冷エタノールで洗浄し、そして75℃で真空乾燥棚中で乾燥させた。18.37g(理論値の68%)の淡灰色の微結晶(融点178〜181℃を有する)が得られた。
【0233】
b)10−[4−(N−フェニル−2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]フェノチアジン
【化88】

【0234】
7.77g(39.0ミリモル)のフェノチアジン、17.00g(42.9ミリモル)のN−フェニル−2−(4−ヨードフェニル)ベンゾイミダゾール、6.47g(46.8ミリモル)の炭酸カリウム及び0.162g(2.54ミリモル)の銅粉末を、195〜200℃に加熱し、そしてこの温度で19時間撹拌した。反応溶融物を、130℃に冷却し、そして次いで100mlのエタノールで希釈した。30分間にわたり還流下で加熱した後に、溶液を高温濾過した。該懸濁液を濃縮乾涸させ、そして次いで150mlの塩化メチレンと混合した。濾過した後に、濾液をシリカゲルをとおして濾過した。11.03gのベージュ色の微結晶が得られた。
【0235】
c)10−[4−(N−フェニル−2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]フェノチアジン−5,5−ジオキシド
【化89】

【0236】
6.14gの10−[4−(N−フェニル−2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]フェノチアジンを180mlの塩化メチレン中に溶かした溶液を、室温で冷却しつつ7.17g(28.9ミリモル)の70%のm−クロロ過安息香酸と混合し、そして室温で1時間撹拌した。該溶液を、60mlの10%のKOHと混合した。塩化メチレンを除去した後に、該懸濁液を100mlの熱水で希釈した。沈殿物を吸引分離し、熱水で洗浄し、そして80℃で真空中で乾燥させた。粗生成物(4.82g)を、48mlの酢酸から再結晶化させた。3.02g(理論値の46%)のベージュ色の微結晶(融点286〜288℃を有する)が得られた。
【0237】
実施例18:10−(2−チオフェニル)−フェノチアジン−5,5′−ジオキシド
a)10−(2−チオフェニル)−フェノチアジン
【化90】

【0238】
8.4g(42ミリモル)のフェノチアジン、9.1g(42ミリモル)の98%の2−ヨードチオフェン、7.0g(51ミリモル)の炭酸カリウム及び0.18g(2.8ミリモル)の銅粉末を、140℃に加熱し、この温度で7時間撹拌した。該反応溶融物を冷却し、200mlのエタノールと混合し、還流下に加熱し、そして高温濾過した。残留物を、2回、エタノールで洗浄した。エタノール溶液を濃縮し、そしてカラムクロマトグラフィー(溶出剤 酢酸エステル/シクロヘキサン 2:5)後に、3.13gの有用生成物が得られ、それは以下の反応工程b)のためにすぐに使用された。
【0239】
b)10−(2−チオフェニル)−フェノチアジン−5,5′−ジオキシド
【化91】

【0240】
反応工程a)からの3.13g(11.1ミリモル)の10−(2−チオフェニル)−フェノチアジンを100mlの塩化メチレン中に溶解させた。0〜5℃において、5.52g(22.4ミリモル)の77%のm−クロロ過安息香酸を少しずつ添加した。該反応溶液を室温で2時間撹拌した。該反応混合物を濃縮し、そして残留物を250mlの塩化メチレン中に溶解させた。有機相を、3回、それぞれ20mlの10%の苛性カリ液で洗浄し、そして5回、それぞれ50mlの完全脱塩水で洗浄した。カラムクロマトグラフィー(溶出剤 塩化メチレン)後に、有用生成物が得られ、それを酢酸からの結晶化と、引き続いての昇華によって更に精製した。0.34g(理論値の10%)の無色の微結晶(融点230〜234℃を有する)が得られた。
【0241】
実施例19:2,5−(1,4−ジメトキシフェニレン)−10,10′−ビス(フェノチアジン)−5,5′−ジオキシド
a)2,5−(1,4−ジメトキシフェニレン)−10,10′−ビス(フェノチアジン)
【化92】

【0242】
その製造は、K.Okada他著のJ.Am.Chem.Soc.1996,118,3047−3048に従って実施した。
【0243】
0.8g(4.0ミリモル)のフェノチアジン、0.88g(2.2ミリモル)の97%の1,4−ジヨード−2,5−ジメトキシベンゼン、0.66g(4.8ミリモル)の炭酸カリウム及び0.016g(0.25ミリモル)の活性化された銅粉末を、DMSO(10ml)中で140℃に加熱し、そしてこの温度で15時間撹拌した。該反応混合物を室温に冷却した後に、30mlの塩化メチレンを添加し、そして該懸濁液を濾過した。塩化メチレン溶液を、3回、それぞれ25mlの0.1モラーの塩酸で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。0.99gの目的化合物が無色の固体として得られた。
【0244】
b)2,5−(1,4−ジメトキシフェニレン)−10,10′−ビス(フェノチアジン)−5,5′−ジオキシド
【化93】

【0245】
反応工程a)からの0.43g(0.81ミリモル)の2,5−(1,4−ジメトキシフェニレン)−10,10′−ビス(フェノチアジン)を、15mlの塩化メチレン中に溶解させた。室温で1時間撹拌した後に、0.56g(3.2ミリモル)の77%のm−クロロ過安息香酸を少しずつ添加した。該反応溶液を、室温で24時間撹拌し、その際、沈殿物が沈殿した。該懸濁液を濃縮し、そして残留物を完全脱塩水中で10mlの10%の苛性ソーダ液でpH12に調整し、70℃で1時間撹拌し、引き続き濾過した。残留物を、熱水で洗浄し、そして80℃で真空中で乾燥させた。0.20g(41%)の有用生成物が得られた。
【0246】
実施例20:OLEDの製造
アノードとして使用されるITO基板を、まずLCD生産用の産業上の清浄剤(Deconex(登録商標)20NS及び中和剤25ORGAN−ACID(登録商標))を用いて、引き続きアセトン/イソプロパノール混合物中で超音波浴において浄化する。考えられる有機残滓の除去のために、該基板をオゾン炉中で更に25分間、連続的なオゾン流にさらす。前記の処理は、ITOの正孔注入をも改善する。
【0247】
次いで、以下に挙げる有機材料を、約2nm/分の速度で、約10-7ミリバールで浄化された基板上に蒸着させる。正孔伝導体として、まず1−TNATA(4,4′,4′′−トリス(N−(ナフチ−1−イル)−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン)を、17.5nmの層厚で基板上に施与する。引き続き、9.5nm厚の化合物
【化94】

(製造については、出願PCT/EP/04/09269号におけるIr錯体(7)を参照のこと)からなる励起子障壁層を堆積させる。
【0248】
引き続き、化合物
【化95】

34質量%と化合物
【化96】

(実施例5b)を参照)66質量%からなる混合物を20nmの厚さで蒸着させるが、その際、第一の化合物は発光体として機能し、後者はマトリクス材料として機能する。次いで、47.5nmの厚さのBCP−正孔障壁層及び電子伝導体層、0.75nmの厚さのフッ化リチウム層、引き続き110nmの厚さのAl電極を蒸着させる。
【0249】
OLEDの特性決定のために、エレクトロルミネセンス−スペクトルを種々の電流もしくは電圧で記録する。更に、電流−電圧特性曲線を、放射された光量を組み合わせて測定する。光量は、輝度計を用いて較正することによって光度量に換算することができる。
【0250】
上記のOLEDについては、以下の電気光学的データが得られる:
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
Xは、基SO又はSO2を意味し、
1は、水素、アルキル、環式のアルキル、複素環式のアルキル、アリール、ヘテロアリール、式II
【化2】

の基、式III
【化3】

の基又は式IV
【化4】

の基を意味し、
1、X2、X3は、互いに無関係に、かつXとは無関係に、基SO又はSO2を意味し、
2、R3、R4、R5、R7、R8、R11、R12は、互いに無関係に、アルキル、アリール又はヘテロアリールを意味し、
m、n、q、r、t、u、x、yは、互いに無関係に、0、1、2又は3を意味し、
6、R9、R10は、互いに無関係に、アルキル、アリール、アルコキシ又はアリールオキシを意味し、
s、v、wは、互いに無関係に、0、1又は2を意味し、
Bは、アルキレン架橋−CH2−Ck2k−を意味し、その際、単位−Ck2k−の1つ以上の隣接していないCH2基は酸素又はNRによって交換されていてよく、
Rは、水素又はアルキルを意味し、
kは、0、1、2、3、4、5、6、7又は8を意味し、
jは、0又は1を意味し、かつ
zは、1又は2を意味する]で示される化合物を、有機発光ダイオードにおけるマトリクス材料として用いる使用。
【請求項2】
請求項1記載の使用であって、式Iで示され、その式中の変数は以下の意味を有する:
Xは、基SO又はSO2を意味し、
1は、水素、メチル、エチル、シクロヘキシル、ピロリジン−2−イル、ピロリジン−3−イル、ピペリジン−2−イル、ピペリジン−3−イル、ピペリジン−4−イル、フェニル、4−アルキルフェニル、4−アルコキシ−フェニル、2,4,6−トリアルキルフェニル、2,4,6−トリアルコキシフェニル、フラン−2−イル、フラン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、ピリミジン−2−イル、ピリミジン−4−イル、ピリミジン−5−イル、sym−トリアジニル、フェニル、4−アルコキシフェニル、式II
【化5】

の基、式III
【化6】

の基又は式IV
【化7】

の基を意味し、
1、X2、X3は、互いに無関係に、かつXとは無関係に、基SO又はSO2を意味し、
2、R3、R4、R5、R7、R8、R11、R12は、互いに無関係に、アリールを意味し、
m、n、q、r、t、u、x、yは、互いに無関係に、0又は1を意味し、
6、R9、R10は、互いに無関係に、アルキル又はアルコキシを意味し、
s、v、wは、互いに無関係に、0又は1を意味し、
Bは、アルキレン架橋−CH2−Ck2k−を意味し、
kは、0、1、2、3、4、5、6、7又は8を意味し、
jは、0又は1を意味し、かつ
zは、1又は2を意味する化合物を使用することを特徴とする使用。
【請求項3】
請求項1又は2記載の使用であって、請求項1又は2による式Iの化合物を、有機発光ダイオードの発光層におけるマトリクス材料として使用することを特徴とする使用。
【請求項4】
発光層を含む有機発光ダイオードであって、該発光層が、マトリクス材料としての請求項1又は2による少なくとも1種の式Iの化合物と、その中に分散された少なくとも1種の他の物質を発光体として含有することを特徴とする有機発光ダイオード。
【請求項5】
マトリクス材料としての請求項1又は2による少なくとも1種の式Iの化合物と、その中に分散された少なくとも1種の他の物質を発光体として含有する発光層。
【請求項6】
マトリクス材料としての請求項1又は2による1種以上の式Iの化合物と、その中に分散された発光体としての少なくとも1種の他の物質からなる発光層。
【請求項7】
請求項5又は6記載の発光層を有する有機発光ダイオード。
【請求項8】
請求項4又は7記載の有機発光ダイオードを含む、定置式ディスプレイ、例えばコンピュータ、テレビのディスプレイ、プリンターのディスプレイ、調理機器のディスプレイ並びに宣伝用ボード、照明、標識板及び可動式ディスプレイ、例えば携帯機器、ラップトップ、デジタルカメラ、車両のディスプレイ並びにバス及び電車の行き先表示板からなる群から選択される装置。

【公表番号】特表2008−522389(P2008−522389A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541830(P2007−541830)
【出願日】平成17年11月23日(2005.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012527
【国際公開番号】WO2006/056416
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】