説明

有機発光ディスプレイ装置

【課題】厚さの増大なしにタッチパネル機能を具現でき、製造工程を簡単にしてコストダウンできる有機発光ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】基板10と、基板上に形成された第1タッチ感知電極層21と、第1タッチ感知電極層21を覆って、第1タッチ感知電極層上に形成された第1保護層22と、第1保護層22上に形成され、電気的に接地されたグラウンド層30と、グラウンド層30上に形成された絶縁層11と、絶縁層11上に形成された有機発光素子40と、を備える有機発光ディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置に係り、さらに詳細には、静電容量方式のタッチパネル機能が備えられた有機発光ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のディスプレイ装置は、携帯可能な薄型の平板表示装置により代替される勢いである。平板ディスプレイ装置のうち、電界発光ディスプレイ装置は自発光型ディスプレイ装置であって、視野角が広くてコントラストに優れているだけではなく、応答速度が速いという長所を持っているため、次世代ディスプレイ装置として注目されている。また、発光層の形成物質が有機物で構成される有機発光ディスプレイ装置は、無機発光ディスプレイ装置に比べて輝度、駆動電圧及び応答速度特性に優れており、多色化が可能であるという長所を持つ。
【0003】
最近、これらの有機発光ディスプレイ装置にタッチスクリーン機能を適用して、さらに便利なGUI(Graphical User Interface)を提供しようとする研究が進行中である。これらのタッチスクリーン機能を適用する方式には、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線感知方式、超音波方式、ピエゾ効果方式、エレクトロマグネチック方式、光センシング方式などがあるが、方式ごとにそれぞれ長所および短所を持っている。
【0004】
これらのうち、静電容量方式は、指、導電性物体、または高誘電率の物体がタッチ感知用電極に接近ないし接触するとき、指とタッチ感知用電極との間に発生する静電容量(キャパシタ)の変化により、静電容量の変化が発生した位置を検出することでタッチ感知システムが作動する方式である。
【0005】
このような静電容量方式のタッチスクリーンを有機発光ディスプレイ装置に具現するために、タッチスクリーンユニットを別途に製作して有機発光ディスプレイ装置に付け加える外装方式が一般的に使われている。しかし、このような外装方式はタッチスクリーンユニットを別途に製造するコストが追加される上、タッチスクリーンユニットを有機発光ディスプレイ装置と結合する工程が困難であり、結合されたディスプレイ装置の厚さが厚くなるという問題点がある。関連分野の先行技術文献としては、下記の特許文献1及び2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2004−0042485号明細書
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第2008−0096977号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の問題点を含む様々な問題点を解決するためのものであって、厚さの増大なしにタッチパネル機能を具現すると同時に、製造工程が簡単でかつコストダウンにつながる有機発光ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、基板と、前記基板上に形成された第1タッチ感知電極層と、前記第1タッチ感知電極層を覆って、前記基板上に形成された第1保護層と、前記第1保護層上に形成され、電気的に接地されたグラウンド層と、前記グラウンド層上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された有機発光素子と、を備える有機発光ディスプレイ装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、前記有機発光素子から放射された光は、前記基板方向に放射される。
【0010】
本発明によれば、前記第1タッチ感知電極層は、複数の分離されたパターンで形成される。
【0011】
本発明によれば、前記第1タッチ感知電極層は透光性物質である。
【0012】
本発明によれば、前記グラウンド層は透光性物質である。
【0013】
本発明によれば、前記第1保護層は、無機絶縁物で形成される。
【0014】
本発明によれば、前記第1保護層と前記グラウンド層との間に第2タッチ感知電極層がさらに備えられ、前記第2タッチ感知電極層と前記グラウンド層との間に第2保護層がさらに備えられる。
【0015】
ここで、前記第2タッチ感知電極層は透光性物質である。
【0016】
ここで、前記透光性物質は、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含む。
【0017】
ここで、前記第2保護層は無機絶縁物で形成される。
【0018】
本発明によれば、前記基板は、透明なガラス材で形成される。
【0019】
本発明の他の側面は、前記絶縁層上に形成された複数の薄膜トランジスタと、前記絶縁層上に形成され、前記薄膜トランジスタに電気的に接続する第1電極、前記第1電極上に形成された第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に形成された有機発光層を備える複数の有機発光素子と、を備える有機発光ディスプレイ装置を提供する。
る。
【0020】
本発明によれば、前記第1タッチ感知電極層は透光性物質である。
【0021】
本発明によれば、前記グラウンド層は透光性物質である。
【0022】
本発明によれば、前記薄膜トランジスタは、チャンネル領域、ソース領域及びドレイン領域を備える活性層と、前記チャンネル領域に対応するゲート電極と、前記ソース及びドレイン領域に接続するソース及びドレイン電極と、を備え、前記有機発光素子の第1電極は、前記ゲート電極と同一物質で同一層に形成される。
【0023】
ここで、前記第1電極及び前記ゲート電極は、透光性物質を含む。
【0024】
本発明によれば、前記薄膜トランジスタは、チャンネル領域、ソース領域及びドレイン領域を備える活性層と、前記チャンネル領域に対応するゲート電極と、前記ソース及びドレイン領域に接続するソース及びドレイン電極と、を備え、前記有機発光素子の第1電極は、前記ソース及びドレイン電極と同一物質で同一層に形成される。
【0025】
ここで、前記第1電極及び前記ソース及びドレイン電極は、透光性物質を含む。
【0026】
ここで、前記透光性物質は、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明による有機発光ディスプレイ装置は、厚さの増大なしにタッチパネル機能を具現でき、製造工程を簡単にしてコストダウンできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【図6】本発明の第6実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【図7】本発明の第7実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【図8】本発明の第8実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面に示された本発明の望ましい実施形態を参照して、本発明について詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【0031】
図1を参照すれば、本発明の第1実施形態による有機発光ディスプレイ装置1は、透明な素材からなる基板10と、基板10上に順に形成された第1タッチ感知電極層21、保護層24、有機発光素子40及び封止部材50を備える。
【0032】
本実施形態による有機発光ディスプレイ装置は、基板10の方向に画像が具現される背面発光型であって、基板10は、SiOを主成分とする透明なガラス材の基板が使われる。図面には示されていないが、基板10の上面には、基板10の平滑性及び不純元素の浸透を遮断するために、バッファ層(図示せず)がさらに備えられうる。
【0033】
本実施形態では、有機発光素子40から放射された光は、基板方向に放射される。ここで、基板方向とは、有機発光素子40から基板10に向かう方向を意味する。すなわち、有機発光素子40で生成された光は、基板10を透過して有機発光ディスプレイ装置の外部に放射される。
【0034】
基板10の上面には第1タッチ感知電極層21が形成される。第1タッチ感知電極層21は、透光性物質であって、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含む。
【0035】
これらの透光性物質は、基板10上に蒸着またはスピンコーティングされた後、フォトリソグラフィ工程を行って互いに分離された複数の電極パターンにパターニングされるか、または、インクジェットなどの方法で基板10上に直接、複数の分離された電極パターンで形成されうる。したがって、本発明による第1タッチ感知電極層21は、平らな基板10上に形成されるので、一般的にエッチングされた凹部を備える封止基板にタッチ感知電極層をパターニングする前面発光型有機発光ディスプレイ装置に比べて、タッチ感知電極層のパターニングが容易である。
【0036】
一方、図1には示されていないが、前記基板10上には、有機発光素子40に信号を伝達するデータライン(図示せず)と電気的に接続される第1タッチ感知電極層21の接続部(図示せず)とが備えられる。この第1タッチ感知電極層21の接続部は、第1タッチ感知電極層21の形成時に、基板10上に共に形成される。前面発光型有機発光ディスプレイ装置の場合、封止基板に形成されたタッチ感知電極層の接続部が、下部基板に形成されたデータラインと連結されねばならないため、タッチ感知電極層の接続部とデータラインとを連結するための導電性部材がさらに必要になるだけではなく、製造工程が分離されて進められる封止基板と下部基板とを連結する組み立て工程に困難性が生じる。しかし、本発明による第1タッチ感知電極層21の接続部は、データラインと同様に基板10上に形成されるので、連結のために別途の導電性部材が必要なく、連結のための工程が前面発光型に比べて容易である。
【0037】
このように第1タッチ感知電極層21が形成された有機発光ディスプレイ装置1の基板10の表面に、指、導電性物体、または高誘電率の物体などの指示物体が接近ないし接触すれば、このような接近または接触により、第1タッチ感知電極層21と指示物体との間の静電容量がタッチ感知回路に付加され、変化した容量が感知されてポインティング位置が検出される。
【0038】
一方、第1タッチ感知電極層21のパターンは、画像が具現される基板10のディスプレイ領域の一部または全体に形成されうる。また、第1タッチ感知電極層21のパターンのサイズ及び間隔は多様な変形が可能である。
【0039】
第1タッチ感知電極層21上には、前記第1タッチ感知電極層21を覆うように保護層24が形成される。保護層24は所定の無機絶縁物で構成される。
【0040】
保護層24上には、保護層上の全面にグラウンド層30が形成される。グラウンド層30は透光性物質であって、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含む。グラウンド層30は電気的に接地されることで、有機発光素子40の画像具現に関連した画像信号と、第1タッチ感知電極層21によるタッチ感知信号とが互いに干渉することを防止する。
【0041】
グラウンド層30上には第1絶縁層11が形成され、前記第1絶縁層11上に有機発光素子40が形成される。
【0042】
有機発光素子40は、互いに対向する第1電極層41と第2電極層43とを備え、この間に介在された有機発光層42を備える。
【0043】
前記第1電極層41は、ITO、IZO、In、及びZnOなどの透明素材の導電性物質で、フォトリソグラフィ法により所定パターンで形成される。
【0044】
前記第1電極層41のパターンは、受動駆動型(Passive Matrix type:PM)の場合には、互いに所定間隔離れたストライプ状のラインで形成でき、能動駆動型(Active Matrix type:AM)の場合には、画素に対応する形態で形成できる。能動駆動型の場合には、第1電極層41下部に少なくとも一つの薄膜トランジスタを備えた薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)層がさらに備えられ、第1電極層41はこのTFT層に電気的に連結される。このように透明電極を備えた第1電極層41は、外部端子(図示せず)に連結されてアノード電極として作用できる。
【0045】
第1電極層41の上部に第2電極層43が位置する。第2電極層43は、アルミニウム、銀、及び/またはカルシウムなどの反射型電極で形成され、外部第2電極端子(図示せず)に連結されて、カソード電極として作用できる。
【0046】
前記第2電極層43は、受動駆動型の場合には、第1電極層41のパターンに直交するストライプ状のラインで形成されうる。
【0047】
一方、前記のような第1電極層41と第2電極層43との極性は互いに入れ替わってもよい。
【0048】
第1電極層41と第2電極層43との間に有機発光層42が介在される。有機発光層42は、第1電極層41と第2電極層43との電気的駆動により発光する。有機発光層42は、低分子または高分子有機物が使われうる。
【0049】
有機発光層42が低分子有機物で形成される場合、有機発光層42を中心に第1電極層41の方向にホール輸送層(Hole Transport Layer:HTL)及びホール注入層(Hole Injection Layer:HIL)などが積層され、第2電極層43の方向に電子輸送層(Electron Transport Layer:ETL)及び電子注入層電子注入層(electron injection layer:EIL)などが積層される。もちろん、これらホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層以外にも多様な層が必要に応じて積層されて形成されうる。この時、使用可能な有機材料も、銅フタロシアニン(CuPc:copper phthalocyanine)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などをはじめとして多様に適用できる。
【0050】
一方、高分子有機物で形成される場合には、有機発光層42を中心に第1電極層41の方向にホール輸送層(HTL)のみ含まれうる。ホール輸送層(HTL)は、ポリエチレンジヒドロキシチオフェン(PEDOT)や、ポリアニリン(PANI)などを使用して、インクジェットプリンティングやスピンコーティングの方法により第1電極層41の上部に形成できる。この時に使用可能な有機材料として、ポリフェニレンビニレン(PPV)系及びポリフルオレン系などの高分子有機物を使用でき、インクジェットプリンティングやスピンコーティングまたはレーザーを利用した熱転写方式などの通常の方法でカラーパターンを形成できる。
【0051】
有機発光素子40の上部には、外部の水分や酸素の浸透を防止するために、前記発光素子40を外部から密封させるガラス、メタルキャップなどの封止部材50がさらに備えられる。これらの封止部材50は、シーラント(図示せず)により合着される。シーラントとしては、シーリングガラスフリット、有機シーラント、無機シーラント、有機/無機複合シーラントなどを使用できる。
【0052】
前述したような本実施形態による有機発光ディスプレイ装置によれば、基板にタッチ感知電極を直接パターニングすることによって、厚さの増大なしにタッチパネル機能を具現でき、製造工程を単純化させることができ、これによりコストダウンができる。
【0053】
図2は、本発明の第2実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【0054】
図2を参照すれば、本発明の第2実施形態による有機発光ディスプレイ装置2は背面発光型であり、透明な素材からなる基板10と、基板10上に順に形成された第1タッチ感知電極層21、第1保護層22、第2タッチ感知電極層23、第2保護層24(図1では「保護層」)、有機発光素子40、及び封止部材50を備える。
【0055】
前述した第1実施形態と比較する時、本実施形態による有機発光ディスプレイ装置2は、第1保護層22とグラウンド層30との間に第2タッチ感知電極層23をさらに備え、第2タッチ感知電極層23とグラウンド層30との間に第2保護層24をさらに備える。
【0056】
第1タッチ感知電極層21と同様に、第2タッチ感知電極層23も透光性物質として、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含む。
【0057】
第1保護層22は、第1タッチ感知電極層21の各パターンを覆うように形成されて、第1タッチ感知電極層21と第2タッチ感知電極層23とを電気的に絶縁させる。また、第2保護層24は第2タッチ感知電極層23全体を覆うように形成され、第1及び第2タッチ電極感知層21,23とグラウンド層30を電気的に絶縁させる。これらの第1及び第2保護層22,24は所定の無機絶縁物で構成される。
【0058】
一方、第1タッチ感知電極層21が分離されたパターンを形成するのとは異なって、第2タッチ感知電極層23は共通層で形成される。前記第2タッチ感知電極層23には定電圧が印加されうる。したがって、第1タッチ感知電極層21と第2タッチ感知電極層23とは一つのキャパシタをなし、これら間の静電容量は一定に保持される。この状態で、有機発光ディスプレイ装置2の基板10の表面に指、導電性物体、または高誘電率の物体などの指示物体が接近ないし接触すれば、第1タッチ感知電極層21と指示物体とは第2キャパシタをなす。したがって、全体的に見た時、2つのキャパシタが直列に連結されている形態をなし、全体的な静電容量に変化が生じる。このような静電容量の変化が感知されてポインティング位置が検出される。
【0059】
第2保護層24上には、全面にグラウンド層30が形成される。グラウンド層30は透光性物質として、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含む。グラウンド層30は電気的に接地されることで、有機発光素子40の画像具現に関連した画像信号と、第1及び第2タッチ感知電極層21,23によるタッチ感知信号とが互いに干渉することを防止する。
【0060】
有機発光素子40及び封止部材50は、前述した第1実施形態による有機発光ディスプレイ装置1の有機発光素子40及び封止部材50と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0061】
一方、本実施形態による有機発光ディスプレイ装置2も、第1及び第2タッチ感知電極層21,23が封止基板ではなく平らな基板10上に形成されるので、前面発光型に比べてタッチ感知電極層のパターニングが容易である。
【0062】
また、図2には示されていないが、前記基板10上に、有機発光素子40に信号を伝達するデータライン(図示せず)と電気的に接続される第1及び/または第2タッチ感知電極層21,23の接続部(図示せず)が、第1及び/または第2タッチ感知電極層21,23の形成時に基板10上に共に形成される。したがって、前述した第1実施形態と同様に、タッチ感知電極層の接続部(図示せず)とデータライン(図示せず)との連結のための別途の導電性部材が必要なく、連結のための工程が前面発光型に比べて容易である。
【0063】
以下、図3ないし8を参照して本発明の他の実施形態を説明する。以下では、本発明の第1実施形態と第2実施形態との相異点を中心に、本発明の他の実施形態による有機発光ディスプレイ装置を説明する。
【0064】
図3は、本発明の第3実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【0065】
図3を参照すれば、本実施形態による有機発光ディスプレイ装置3は、透明な素材からなる基板10と、基板10上に順に形成された第1タッチ感知電極層21、保護層24、有機発光素子40、及び複数の薄膜が積層された封止部材60とを備える。
【0066】
本実施形態による有機発光ディスプレイ装置3は、第1実施形態による有機発光ディスプレイ装置1と比較して封止部材60の構造が異なる。第1実施形態の場合、封止部材50が有機発光素子40から離隔しており、シーラント(図示せず)により基板10に合着されるが、本実施形態による封止部材60は、複数の薄膜61,62,63,64が有機発光素子40の上面に離隔せずに直接的に積層されている。
【0067】
複数の薄膜61,62,63,64は、有機物と無機物とが交互に蒸着されて形成される。このように形成する理由は、有機膜のみで薄膜を形成すれば、有機膜の微細な孔隙を通じて外部から酸素や水分が浸透し、無機膜のみで薄膜を形成すれば、必要な所定厚さを形成できないためである。一方、図3には4層の薄膜が示されているが、例示に過ぎず、複数層の薄膜が交互に積層されたものであればよく、積層数及び積層順序は多様な変形が可能である。
【0068】
前面発光型ディスプレイ装置では、タッチ感知電極層が画像の具現される封止部材に形成される。この時、封止部材は、指などの指示物体とタッチ感知電極層とが静電容量を持つことができるように誘電体層の役割を担い、同時に指示物体からタッチ感知電極層を保護する支持層の役割を担うため、本実施形態のような薄膜が交互になった封止構造を持つことができない。ところが、本発明による有機発光ディスプレイ装置は背面発光型であって、基板にタッチ感知電極層が形成されるので、封止構造の設計が自在である。したがって、本実施形態のような薄膜型の封止構造を採用できて、ディスプレイ装置の全体の厚さを薄くすることができる。
【0069】
図4は、本発明の第4実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【0070】
図4を参照すれば、本発明の第4実施形態による有機発光ディスプレイ装置4は背面発光型であって、透明な素材からなる基板10と、基板10上に順に形成された第1タッチ感知電極層21、第1保護層22、第2タッチ感知電極層23、第2保護層24、有機発光素子40、及び複数の薄膜が積層された封止部材60を備える。
【0071】
本実施形態による有機発光ディスプレイ装置4は、前述した第2実施形態で説明したのと同様に、第1保護層22とグラウンド層30との間に第2タッチ感知電極層23をさらに備え、第2タッチ感知電極層23とグラウンド層30との間に第2保護層24をさらに備える。また、前述した第3実施形態で説明した通りに、有機膜と無機膜とが交互になった複数の薄膜61,62,63,64が有機発光素子40の上面に離隔せずに積層されている。
【0072】
図5は、本発明の第5実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【0073】
図5を参照すれば、本発明の第5実施形態による有機発光ディスプレイ装置5は、透明な素材からなる基板10と、基板10上に順に形成された第1タッチ感知電極層21、保護層24、複数のTFT、有機発光素子40、及び封止部材50を備える。
【0074】
本実施形態は背面発光型であって、能動駆動型の有機発光ディスプレイ装置5を例示したものであり、有機発光素子40の第1電極層41がTFTと電気的に連結されている。これを詳細に説明すれば次の通りである。
【0075】
前述した第1実施形態と同様に、透明材質の基板10上に、第1タッチ感知電極層21、保護層24、グラウンド層30、及び第1絶縁層11が形成される。
【0076】
第1絶縁層11上にチャンネル領域12a、ソース及びドレイン領域12b,12cを備えた活性層12が形成される。活性層12は、非晶質シリコンを結晶化した多結晶シリコンで構成できる。多結晶シリコンのソース及びドレイン領域12b,12cには、N+またはP+のような不純物がドーピングされる。
【0077】
活性層12上には、ゲート絶縁膜である第2絶縁層13が形成され、第2絶縁層13上にゲート電極14及び第1電極層41が同時に形成される。すなわち、第1絶縁層13上には透光性物質として、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含む第1導電層14a,41a、及びAg、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、Mo、Ti、W、MoW、Al/Cuのうちから選択された一つ以上の物質を含む第2導電層14b,41bが順に蒸着された後、ゲート電極14及び第1電極層41に同時にパターニングされる。
【0078】
ゲート電極14及び第1電極層41上には、所定の厚さを持つ層間絶縁膜として、有機物または有機/無機物が交互に形成された第3絶縁層15が形成される。第3絶縁層15が形成された後、ハーフトーンマスクを利用してソース及びドレイン領域12b,12c、及び第1電極層41の上部が開口されるようにコンタクトホール16a,16b,16cを形成する。
【0079】
コンタクトホール16a,16b,16cの形成後、第3絶縁層15上にソース及びドレイン領域12b,12c、及び第1電極層41の上部41bに接続する導電層を蒸着した後でパターニングして、ソース及びドレイン電極17,18を形成する。この時、ソース及びドレイン電極17,18の一電極がコンタクトホール16aを通じて第1電極層41の上部41bに接続する。
【0080】
ソース及びドレイン電極17,18の形成後、第3絶縁層15上に第4絶縁層を塗布した後、第1電極層41の透明電極41aを開口させた画素定義膜(Pixel Define Layer:PDL)19を形成する。
【0081】
次いで、第1電極層41上に有機発光層42、及び共通電極として第2電極層43を形成する。この時、第2電極層43は反射電極として形成する。
【0082】
有機発光素子40の上部に、外部の水分や酸素の浸透を防止するために、前記発光素子40を外部から密封させるガラス、メタルキャップなどの封止部材50がさらに備えられる。
【0083】
本実施形態によれば、前記有機発光素子40の第1電極層41がゲート電極14と同一物質で形成され、第1電極層41の透明層である下部電極41aが開口され、第2絶縁層13上にゲート電極14と同一層に形成されることによって、薄膜トランジスタの製造にかかるマスク数を低減させることができ、開口率を高めて背面発光に有利な有機発光ディスプレイ装置を製造できる。
【0084】
なお、第1電極層がゲート電極と同一物質で形成され、第1電極層が透明物質を含み、ゲート電極と同一層に形成される構造であれば、薄膜トランジスタ及び第1電極層の形状は、図5に示された形状に限定されるものではない。
【0085】
図6は、本発明の第6実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【0086】
図6を参照すれば、本発明の第6実施形態による有機発光ディスプレイ装置6は背面発光型であって、透明な素材からなる基板10と、基板10上に順に形成された第1タッチ感知電極層21、第1保護層22、第2タッチ感知電極層23、第2保護層24、複数のTFT、有機発光素子40、及び封止部材50を備える。
【0087】
本実施形態による有機発光ディスプレイ装置6は、前述した第2実施形態で説明したのと同様に、第1保護層22とグラウンド層30との間に第2タッチ感知電極層23をさらに備え、第2タッチ感知電極層23とグラウンド層30との間に第2保護層24をさらに備える。また、前述した第5実施形態で説明したのと同様に、前記有機発光素子40の第1電極層41がゲート電極14と同一物質で形成され、第1電極層41の透明層である下部電極41aが開口され、第2絶縁層13上にゲート電極41と同一層に形成される。
【0088】
図7は、本発明の第7実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【0089】
図7を参照すれば、本発明の第7実施形態による有機発光ディスプレイ装置7は、透明な素材からなる基板10と、基板10上に順に形成された第1タッチ感知電極層21、保護層24、複数のTFT、有機発光素子40、及び封止部材50を含む。
【0090】
前述した第5実施形態と同様に、透明材質の基板10上に、第1タッチ感知電極層21、保護層24、グラウンド層30、第1絶縁層11、及び活性層12が形成される。
【0091】
活性層12は、非晶質シリコンを結晶化した多結晶シリコンで構成できる。多結晶シリコンのソース及びドレイン領域12b,12cには、N+またはP+などの不純物がドーピングされる。
【0092】
活性層12上にはゲート絶縁膜である第2絶縁層13が形成され、第2絶縁層13上にゲート電極14が形成される。
【0093】
ゲート電極14が形成された後、第2絶縁層上に所定厚さを持つ層間絶縁膜として、有機物または有機/無機物が交互に形成された第3絶縁層15が形成される。第3絶縁層15が形成された後、マスクを利用してソース及びドレイン領域12b,12cが開口されるようにコンタクトホール16b,16cを形成する。
【0094】
コンタクトホール16b,16cの形成後、ソース/ドレイン電極17,18及び第1電極層41が同時に形成される。すなわち、第3絶縁層15上には透光性物質として、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含む第1導電層17a,18a,41、及びAg、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、Mo、Ti、W、MoW、Al/Cuから選択された一つ以上の物質を含む第2導電層17b,17bが順に蒸着された後、ハーフトーンマスクを利用してソース/ドレイン電極17,18及び第1電極層41に同時にパターニングされる。この時、第1電極層41は透明電極である第1導電層のみ残る。
【0095】
ソース及びドレイン電極17,18の形成後、第3絶縁層15上に第4絶縁層を塗布した後、第1電極層41を開口させた画素定義膜(PDL)19を形成し、有機発光層42、第2電極層43、及び封止部材50を形成する。
【0096】
本実施形態によれば、前記有機発光素子40の第1電極層41がソース及びドレイン電極17,18の一部層17a,18aと同一物質で透明層として形成され、第2絶縁層13上にソース及びドレイン電極17,18と同一層に形成されることによって、薄膜トランジスタの製造にかかるマスク数を低減させることができ、開口率を高めて背面発光に有利な有機発光ディスプレイ装置を製造できる。
【0097】
なお、第1電極層がソース及びドレイン電極と同一物質で形成され、第1電極層が透明物質を含み、ソース及びドレイン電極と同一層に形成される構造であれば、薄膜トランジスタと第1電極層の形状は、図7に示される形状に限定されるものではない。
【0098】
図8は、本発明の第8実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した断面図である。
【0099】
図8を参照すれば、本発明の第8実施形態による有機発光ディスプレイ装置8は背面発光型であって、透明な素材からなる基板10と、基板10上に順に形成された第1タッチ感知電極層21、第1保護層22、第2タッチ感知電極層23、第2保護層24、複数のTFT、有機発光素子40、及び封止部材50を備える。
【0100】
本実施形態による有機発光ディスプレイ装置8は、前述した第2実施形態で説明したのと同様に、第1保護層22とグラウンド層30との間に第2タッチ感知電極層23をさらに備え、第2タッチ感知電極層23とグラウンド層30との間に第2保護層24をさらに備える。また、前述した第7実施形態で説明したのと同様に、前記有機発光素子40の第1電極層41が、ソース及びドレイン電極17,18と同一物質で透明層として形成され、第2絶縁層13上にソース及びドレイン電極17,18と同一層に形成される。
【0101】
一方、図8には示されていないが、前述した第5ないし第8実施形態の封止部材は、有機物と無機物とが交互に積層された複数の薄膜であって、有機発光素子の上面に離隔せずに直接的に積層された構造を持つことができるということはいうまでもない。
【0102】
前述したような本発明の第5ないし第8実施形態は、厚さの増大なしにタッチパネル機能を具現すると同時に、製造工程を簡単にしてコストダウンできるだけではなく、薄膜トランジスタの製造にかかるマスク数を低減させ、開口率を高めて背面発光に有利な有機発光ディスプレイ装置を提供できる。
【0103】
一方、図1〜図8に示された構成要素は、説明の便宜上拡大または縮少されて表示されうるので、図面に示された構成要素のサイズや形状に本発明が限定されるものではなく、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0105】
10 基板、
12 活性層、
14 ゲート電極、
17,18 ソース/ドレイン電極、
21 第1タッチ感知電極層、
23 第2タッチ感知電極層、
22,24 保護層、
30 グラウンド層、
40 有機発光素子、
41 第1電極層、
42 発光層、
43 第2電極層、
50,60 封止部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1タッチ感知電極層と、
前記第1タッチ感知電極層を覆って、前記基板上に形成された第1保護層と、
前記第1保護層上に形成され、電気的に接地されたグラウンド層と、
前記グラウンド層上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に形成された有機発光素子と、を備えることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記有機発光素子から放射された光は、前記基板方向に放射されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第1タッチ感知電極層は、複数の分離されたパターンで形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記第1タッチ感知電極層は、透光性物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記グラウンド層は、透光性物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項6】
前記第1保護層は、無機絶縁物で形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項7】
前記第1保護層と前記グラウンド層との間に第2タッチ感知電極層がさらに備えられ、前記第2タッチ感知電極層と前記グラウンド層との間に第2保護層がさらに備えられたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項8】
前記第2タッチ感知電極層は、透光性物質であることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記透光性物質は、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含むことを特徴とする請求項4、5、8のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項10】
前記第2保護層は、無機絶縁物で形成されたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項11】
前記基板は、透明なガラス材で形成されたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項12】
前記絶縁層上に形成された複数の薄膜トランジスタと、前記絶縁層上に形成された複数の有機発光素子がさらに備えられ,
前記有機発光素子は、前記薄膜トランジスタに電気的に接続する第1電極、前記第1電極上に形成された第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に形成された有機発光層を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項13】
前記第1タッチ感知電極層は、透光性物質であることを特徴とする請求項12に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項14】
前記グラウンド層は、透光性物質であることを特徴とする請求項12または13に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項15】
前記薄膜トランジスタは、
チャンネル領域、ソース領域及びドレイン領域を備える活性層と、
前記チャンネル領域に対応するゲート電極と、
前記ソース及びドレイン領域に接続するソース及びドレイン電極と、を備え、
前記有機発光素子の第1電極は、前記ゲート電極と同一物質で同一層に形成されることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項16】
前記第1電極及び前記ゲート電極は、透光性物質を含むことを特徴とする請求項15に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項17】
前記薄膜トランジスタは、
チャンネル領域、ソース領域及びドレイン領域を備える活性層と、
前記チャンネル領域に対応するゲート電極と、
前記ソース及びドレイン領域に接続するソース及びドレイン電極と、を備え、
前記有機発光素子の第1電極は、前記ソース及びドレイン電極と同一物質で同一層に形成されることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項18】
前記第1電極及び前記ソース及びドレイン電極は、透光性物質を含むことを特徴とする請求項17に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項19】
前記透光性物質は、ITO、IZO、ZnO、及びInから選択された一つ以上の物質を含むことを特徴とする請求項13、14、16、18のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−54962(P2011−54962A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186529(P2010−186529)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】