説明

有機発光装置およびこれを用いた時計

【課題】密封状態が破壊されることなく、他の部材を貫通させることができる有機発光装置およびこれを備えた時計を提供する。
【解決手段】基板31の下面にダイオード・マトリックス32を設け、かつ、その下方に、上面に吸湿部材34が取り付けられている蓋体33を設け、この蓋体33と基板31との間にダイオード・マトリックス32及び吸湿部材34を周りから囲んで密封するようにシール手段35を挟持している。シール手段35内のダイオード・マトリックス32と吸湿部材34の両者以外の部分に、中間部材36が蓋体33と基板31との間に密接に挟まれていると共に、基板31、中間部材36および蓋体33を上下方向に貫通している通孔37が形成されている有機発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光装置およびこれを用いた時計に関し、特に複数の有機発光ダイオードを基板上にマトリックス配列した有機発光装置およびこれを用いた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機発光装置1は、図4に示すように、ガラスや透明樹脂からなる基板11の下面に、複数の有機発光ダイオード(Organic Light−Emitting Diode)によりマトリックス配列したダイオード・マトリックス12が設けられているものである。各有機発光ダイオードは、それぞれ1つの画素として点灯されたり消灯されたりする(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、ダイオード・マトリックス12を保護すると共に、このダイオード・マトリックス12が湿気の侵入で壊れてしまうことを避けるために、基板11の下方に、その上面に吸湿部材14を取り付けた蓋体13が設けられ、また蓋体13と基板11との間に、ダイオード・マトリックス12及び吸湿部材14を周りから囲んで密封するように、シール手段15が挟まれている。蓋体13は、必要に応じて透明や非透明なものが使用される。
【0004】
有機発光装置1は、消費電力小、薄型軽量、低コストなどの利点を有するので、LCD(液晶表示板)の代わりに携帯電話、デジカメ、テレビなどの表示装置上に応用されている。
【特許文献1】特表2004−517363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機発光装置は密封された一体構造になっていて貫通加工ができないので、表示装置内の他の部材と組み合わせる場合、結合も配置も困難であり、例えば、それを時計の表示板にすると、指針、特にその軸芯を配置あるいは固定する場合、内部構造全体が複雑になるという問題点がある。
【0006】
上記従来技術の有する問題点に鑑みて、本発明の目的は、その密封状態が破壊されることなく、他の部材を貫通させることができる有機発光装置およびこれを備えた時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は請求項記載の各発明により達成される。すなわち、本発明に係る有機発光装置の特徴構成は、基板の下面にダイオード・マトリックスを設け、かつ、その下方に、上面に吸湿部材が取り付けられている蓋体を設け、この蓋体と前記基板との間に前記ダイオード・マトリックス及び前記吸湿部材を周りから囲んで密封するようにシール手段を挟持している有機発光装置において、前記シール手段内の前記ダイオード・マトリックスと吸湿部材の両者以外の部分に、中間部材が前記蓋体と基板との間に密接して挟まれていると共に、前記基板、前記中間部材および前記蓋体を上下方向に貫通している通孔が形成されていることにある。
【0008】
ここで、時計とは、腕時計や卓上時計などを指す。
【0009】
この構成による有機発光装置は、基板、中間部材および蓋体を上下方向に貫通している通孔を備えているので、他の部材(指針装置の軸芯など)を貫通させることができる。すなわち、この有機発光装置は、他の部材が通孔に挿入される方式で他の部材と互いに結合することができる。
【0010】
前記ダイオード・マトリックスは、その略中央箇所に開口が設けられていて、前記吸湿部材は、前記ダイオード・マトリックスの開口以外の部分と対面していると共に、前記中間部材は、前記ダイオード・マトリックスの開口を通過していることが好ましい。
【0011】
前記中間部材は、前記蓋体の上面から一体的に上方へ延伸する柱体と、この柱体と前記基板との間に挟まれている他のシール手段とからなると共に、前記通孔は、前記基板、前記他のシール手段、前記柱体および前記蓋体を上下方向に貫通していることが好ましい。
【0012】
前記中間部材は、前記蓋体と基板との間に挟まれている他のシール手段であり、前記通孔は、前記基板、前記他のシール手段および前記蓋体を上下方向に貫通していることが好ましい。
【0013】
更に、本発明に係る時計の特徴構成は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光装置を用いると共に、軸芯が通孔を貫通して突出しており、指針が基板の上方に、この基板面と平行になるように設けられ、且つ、一端近くが前記軸芯の通孔からの突出端に軸支されている指針装置と、この指針装置および前記有機発光装置を収容しているハウジングとを更に備えていることにある。
【0014】
この構成による有機発光装置を用いた時計は、基板、中間部材および蓋体を上下方向に貫通している通孔を備えているので、他の部材(指針装置の軸芯など)を貫通させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の有機発光装置およびこれを用いた時計の好ましい実施形態を詳しく説明する。なお、以下の説明においては、そのサイズに拘わらず、略同一の機能および構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0016】
図1は、本発明の有機発光装置およびこれを用いた時計の好ましい実施形態を示す分解斜視図であり、図2は図1の組立後の状態を説明する断面図である。
【0017】
本発明の有機発光装置およびこれを用いた時計は、図1、図2に示すように、有機発光装置3と、指針装置4と、ハウジング2とを備えて構成されている。
【0018】
有機発光装置3は、図2に示すように、基板31の下面にダイオード・マトリックス32が設けられ、かつ、その下方には、上面に吸湿部材34が取り付けられている蓋体33が設けられている。蓋体33と基板31との間には、ダイオード・マトリックス32及び吸湿部材34を周りから囲んで密封可能にするシール手段35が挟持されている。
【0019】
蓋体33は、断面U字形のものであり、基板31と平行している底壁331と、この底壁331の周縁から上方へ延伸する周壁332とからなっている。シール手段35は、周壁332と基板31との間に挟まれている。
【0020】
シール手段35内のダイオード・マトリックス32と吸湿部材34との両者以外の部分には、中間部材36が蓋体33の底壁331と基板31との間に密接に挟まれている。また、基板31、中間部材36及び蓋体33の底壁331を上下方向に貫通する通孔37が、形成されている。
【0021】
より詳しく説明すると、ダイオード・マトリックス32は、略中央箇所に開口321が設けられているものであり、吸湿部材34は、ダイオード・マトリックス32の開口321以外の部分と対面しており、中間部材36は、ダイオード・マトリックス32の開口321を通過している。
【0022】
本実施形態において前記中間部材36は、蓋体33の上面(底壁331)から一体的に上方へ延伸する柱体361と、この柱体361と基板31との間に挟まれている他のシール手段362とからなる。すなわち、通孔37は、基板31、他のシール手段362、柱体361及び蓋体33の底壁331を上下方向に貫通している。
【0023】
基板31は、ガラスや透明樹脂などの透明材からなり、蓋体33は、金属やセラミックなどの非透明材からなっている。吸湿部材34は、固体状やゲル状などの、湿気を吸収できるものからなっている。シール手段35及び他のシール手段362は、ゴムやプラスチック材からなっている。
【0024】
そして、指針装置4は、その軸芯42が通孔37を貫通して突出しており、その指針43が基板31の上方に、この基板面と平行するように設けられ、且つ、その一端近くが軸芯42の通孔37からの突出端に軸支されている。
【0025】
ハウジング2は、上下2つの半体22,21からなり、上部半体22の略中央には、透明なガラス片221が設けられている。指針装置4を設けた有機発光装置3は、上下2つの半体22,21の間に挟まれるようにハウジング2内に収容されている。透明なガラス片221は、基板31と対応している。
【0026】
また、ハウジング2内には、有機発光装置3の発光および指針43の回転を制御する機構が更に設けられているが、この部分は本発明の特徴と関係がないので、詳しい説明を省略する。
【0027】
このように構成されていることにより、照明が不足する環境下でも、有機発光装置3が付設されているので、指針43の指示を、常時、明瞭に視認することができる。
〔別実施の形態〕
図3は、本発明の有機発光装置およびこれを用いた時計の他の実施形態を示す。この実施形態において中間部材は、蓋体33と基板31との間に挟まれている他のシール手段38である。すなわち、通孔37は、基板31、他のシール手段38及び蓋体33の底壁331を上下方向に貫通している。
【0028】
この実施形態において、基板31が透明なものであって発光面とされるが、それに限らず、蓋体33が透明なものであって発光面とされることもできる。この時、指針装置4の指針43は蓋体33の上方に、この蓋体面と平行するように設けられることが好ましい。
【0029】
また、この実施形態において、中間部材36,38及び通孔37がそれぞれ1つだけあるが、これに限定されるものではなく、複数の中間部材36,38及び複数の通孔37を設置してもよい。
【0030】
以上に示したように、本発明の有機発光装置及びそれを用いた時計は、蓋体と基板との間に中間部材を設け、また基板、中間部材および蓋体を貫通している通孔を備えているので、有機発光装置内の密封状態を確保した状態下で、例えば指針の軸芯など、他の部材を貫通されることができる。
【0031】
以上説明した実施形態は、あくまでも本発明の技術的内容を明らかにする意図のものにおいてなされたものであり、本発明はそうした具体例に限定して狭義に解釈されるものではなく、本発明の精神と特許請求の範囲に述べられた範囲で、種々の形態に変更して実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の有機発光装置およびこれを用いた時計の好ましい実施形態を示す分解斜視図
【図2】図1の時計を組立た後の断面図
【図3】本発明の他の実施形態を示す要部断面図
【図4】従来の有機発光装置を示す要部断面図
【符号の説明】
【0033】
2 ハウジング
3 有機発光装置
4 指針装置
21,22 上下2つの半体
31 基板
32 ダイオード・マトリックス
33 蓋体
34 吸湿部材
35 シール手段
36 中間部材
37 通孔
38 他のシール手段
42 軸芯
43 指針
221 ガラス片
321 開口
331 底壁
332 周壁
361 柱体
362 他のシール手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の下面にダイオード・マトリックスを設け、かつ、その下方に、上面に吸湿部材が取り付けられている蓋体を設け、この蓋体と前記基板との間に前記ダイオード・マトリックス及び前記吸湿部材を周りから囲んで密封するようにシール手段を挟持している有機発光装置において、
前記シール手段内の前記ダイオード・マトリックスと吸湿部材の両者以外の部分に、中間部材が前記蓋体と基板との間に密接して挟まれていると共に、前記基板、前記中間部材および前記蓋体を上下方向に貫通している通孔が形成されていることを特徴とする有機発光装置。
【請求項2】
前記ダイオード・マトリックスは、その略中央箇所に開口が設けられていて、前記吸湿部材は、前記ダイオード・マトリックスの開口以外の部分と対面していると共に、前記中間部材は、前記ダイオード・マトリックスの開口を通過している請求項1に記載の有機発光装置。
【請求項3】
前記中間部材は、前記蓋体の上面から一体的に上方へ延伸する柱体と、この柱体と前記基板との間に挟まれている他のシール手段とからなると共に、前記通孔は、前記基板、前記他のシール手段、前記柱体および前記蓋体を上下方向に貫通している請求項1又は2に記載の有機発光装置。
【請求項4】
前記中間部材は、前記蓋体と基板との間に挟まれている他のシール手段であり、前記通孔は、前記基板、前記他のシール手段および前記蓋体を上下方向に貫通している請求項1又は2に記載の有機発光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光装置を用いると共に、軸芯が通孔を貫通して突出しており、指針が基板の上方に、この基板面と平行になるように設けられ、且つ、一端近くが前記軸芯の通孔からの突出端に軸支されている指針装置と、この指針装置および前記有機発光装置を収容しているハウジングとを更に備えている時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−59582(P2006−59582A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237934(P2004−237934)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(504253326)
【Fターム(参考)】