説明

有機薄膜太陽電池

【課題】本発明は、有機薄膜を水分や酸素から保護し、かつ容易に外部回路に電力を取り出すことが可能な有機薄膜太陽電池を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、金属基材からなる第2電極層とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属電極を有する有機薄膜太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、2つの異種電極間に、電子供与性および電子受容性の機能を有する有機薄膜を配置してなる太陽電池であり、シリコンなどに代表される無機太陽電池に比べて製造工程が容易であり、かつ低コストで大面積化が可能であるという利点を持つ。
【0003】
有機薄膜太陽電池の構成は、陽極/有機薄膜/陰極の積層構造を基本としている。一般的に、一方の電極が透明電極、他方の電極が金属電極とされ、透明基板上に透明電極、有機薄膜および金属電極が順に積層される。
【0004】
金属電極の形成方法としては、通常、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法などのドライプロセス、および銀(Ag)等の金属コロイドを含有する金属ペーストなどを用いて塗布するウェットプロセスが用いられる。また、一般的に、金属電極の厚みは数nm〜数百nm程度で設定される。
【0005】
有機薄膜太陽電池では、有機薄膜を水分や酸素から保護するために、封止を行う場合がある。例えば、ガラス基板やガスバリアフィルムなどの封止基板を用い、ガラス基板やプラスチックフィルムなどの支持基板(透明基板)上に透明電極、有機薄膜、金属電極を順に積層し、支持基板と封止基板とをシール剤で貼り合わせ、素子を封止する構造が提案されている。
【0006】
このような封止構造では、電極から外部回路へ電力を取り出すために、別途、電力取り出し用の配線等が必要になる。例えば、支持基板とシール剤との間に配線が形成される。この場合、配線が形成されている部分の封止が難しく、気密性が損なわれる。特に、配線は金属材料、封止基板はガラスや有機材料で構成されているため、配線および封止基板が貼り合わされている部分では密着力が弱く密閉性が低下する。
この問題を解決する手法として、封止基板内に配線を埋設する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、構造が複雑になり製造工程が煩雑になる。
【0007】
また、フレキシブル太陽電池とする場合には、封止基板にガスバリアフィルムが用いられるが、このようなフィルムは高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−19285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、有機薄膜を水分や酸素から保護し、かつ容易に外部回路に電力を取り出すことが可能な有機薄膜太陽電池を提供することを主目的とする。さらには、安価なフレキシブル有機薄膜太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、金属基材からなる第2電極層とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供する。
【0011】
本発明によれば、第2電極層が金属箔や金属板などの金属基材からなるので、水分や酸素に対してバリア性を有し、光電変換層を水分や酸素から保護することができ、光電変換層の劣化を抑制することが可能である。また、第2電極層が金属基材からなり水分や酸素に対してバリア性を有するので、第2電極層の上から封止基板を用いて封止を行う必要がなく、第1電極層および第2電極層から容易に外部回路に電力を取り出すことが可能である。
【0012】
上記発明においては、上記第1電極層および上記第2電極層の間に、上記光電変換層の外周に沿って絶縁性を有する接着剤層が形成されていることが好ましい。第1電極層および第2電極層を接着剤層を介して直接貼り合わせることができ、密閉性良く光電変換層を封止することが可能である。それにより、光電変換層への水分や酸素の侵入を防ぐことができ、光電変換層の劣化を効果的に抑制することができる。なお、接着剤層が絶縁性を有するので、第1電極層および第2電極層間で短絡は生じない。
【0013】
また本発明においては、上記金属基材が金属箔であることが好ましい。金属基材が金属箔である場合には、安価にフレキシブル性を有する有機薄膜太陽電池を得ることができる。
【0014】
さらに本発明は、上述の有機薄膜太陽電池が複数個直列または並列に接続されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池モジュールを提供する。
【0015】
本発明によれば、上述したように第1電極層および第2電極層から容易に外部回路に電力を取り出すことができるとともに、第1電極層および第2電極層を利用して複数個の有機薄膜太陽電池を容易に接続することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、第2電極層が金属箔や金属板などの金属基材からなるので、光電変換層を水分や酸素から保護し、光電変換層の劣化を抑制することができるとともに、第2電極層の上から封止基板を用いて封止を行う必要がなく、第1電極層および第2電極層から容易に外部回路に電力を取り出すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図3】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図4】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の有機薄膜太陽電池および有機薄膜太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
【0019】
A.有機薄膜太陽電池
本発明の有機薄膜太陽電池は、透明基板と、上記透明基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成され、金属基材からなる第2電極層とを有することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の有機薄膜太陽電池について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。図1に示す例において、有機薄膜太陽電池1は、透明基板2と、透明基板2上に形成された第1電極層3と、第1電極層3上に形成された光電変換層4と、光電変換層4上に形成され、金属基材からなる第2電極層5とを有している。光電変換層4および第2電極層5は同面積となっている。
【0021】
本発明によれば、第2電極層が金属箔や金属板などの金属基材からなるので、第2電極層側からの水分や酸素の透過を防ぐことができる。したがって、第2電極層によって光電変換層を水分や酸素から保護することができ、光電変換層の劣化を抑制することが可能である。
また本発明によれば、第2電極層が金属基材からなり水分や酸素に対してバリア性を有するので、第2電極層の上から封止基板を用いて封止を行う必要がない。したがって、第1電極層および第2電極層から容易に外部回路に電力を取り出すことが可能である。さらには、有機薄膜太陽電池の構造を単純化することができ、製造工程を簡素化することが可能である。
【0022】
図2(a)、(b)は、本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略平面図および断面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線断面図である。なお、図2(a)において、光電変換層4は一点鎖線、第2電極層5は破線で示されている。図2(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池1は、透明基板2と、透明基板2上に形成された第1電極層3と、第1電極層3上に形成された光電変換層4と、光電変換層4上に形成され、金属基材からなる第2電極層5と、第1電極層3および第2電極層5の間に光電変換層4の外周を囲むように形成された絶縁性を有する接着剤層6とを有している。接着剤層6は絶縁性を有するので、第1電極層3および第2電極層5間で短絡は生じない。
【0023】
上記有機薄膜太陽電池においては、第1電極層と第2電極層とを接着剤層を介して直接貼り合わせることができる。上述したように、第2電極層が金属基材からなり水分や酸素に対してバリア性を有するため、第2電極層の上から封止基板を用いて封止を行う必要がなく、第1電極層および第2電極層から外部回路に電力を取り出すことができるので、従来のように透明基板と接着剤層との間に電力取り出し用の配線を配置する必要がない。そのため、配線が配置されている部分で気密性が損なわれることもない。また、第1電極層および第2電極層の構成材料はいずれも金属や金属酸化物などの導電性材料であるので、接着剤層は第1電極層および第2電極層のいずれの電極とも接着性が良好である。したがって、接着剤層を形成することにより、密閉性良く光電変換層を封止することができる。よって、光電変換層への水分や酸素の侵入を防ぐことができ、光電変換層の劣化を効果的に抑制することができる。
また、金属基材が金属箔である場合、金属箔は厚みが薄くても水分や酸素に対してバリア性を有するので、フレキシブル性を有する有機薄膜太陽電池とすることができる。したがって、高価なガスバリアフィルムを要することなく、安価にフレキシブル有機薄膜太陽電池を得ることができる。
【0024】
以下、本発明の有機薄膜太陽電池における各構成について説明する。
【0025】
1.第2電極層
本発明における第2電極層は、光電変換層上に形成され、金属基材からなるものである。通常、第2電極層は、光電変換層で発生した電子を取り出すための電極(電子取出し電極)とされる。
【0026】
第2電極層は水分や酸素に対してバリア性を有するものである。第2電極層の水蒸気透過率としては、1×10-2g/(m2・day)以下であることが好ましく、中でも1×10-3g/(m2・day)以下、特に1×10-4g/(m2・day)以下であることが好ましい。なお、水蒸気透過率は小さければ小さいほど好ましいので、下限は特に限定されない。また、第2電極層の酸素透過度としては、1×10-4ml/(m2・day)以下であることが好ましい。なお、酸素透過度は小さければ小さいほど好ましいので、下限は特に限定されない。
ここで、水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製:PERMATRA)を用いて測定した値である。また、酸素透過度は、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製:OX−TRAN)を用いて測定した値である。
【0027】
金属基材の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば金属箔や金属板が挙げられる。中でも、金属箔が好ましく用いられる。金属基材が金属箔である場合には、安価にフレキシブル性を有する有機薄膜太陽電池を得ることができる。
なお、金属箔とは、フレキシブル性を有するものをいう。また、金属板とは、フレキシブル性を有さないものをいう。
ここで、金属基材がフレキシブル性を有するとは、JIS Z 2248の金属材料曲げ試験方法で、5KNの力をかけたときに曲がることを指す。
【0028】
金属基材を構成する金属材料は、電極として機能し、金属箔や金属板となり得るものであり、上述のバリア性を満たすものであれば特に限定されるものではない。中でも、第2電極層が電子取出し電極である場合は、仕事関数の低いものであることが好ましい。具体的には、アルミニウム、銅、チタン、クロム、タングステン、モリブデン、白金、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、亜鉛、銀、金、各種ステンレスおよびそれらの合金等が挙げられる。中でも、アルミニウム、銀が好ましい。
【0029】
金属基材の厚みとしては、電極として機能し、上述のバリア性を満たす金属基材が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、具体的には10μm以上であればよく、10μm〜3mm程度とすることができる。金属基材の厚みが厚いほど、導電性やバリア性に優れたものとなる。一方、金属基材の厚みが薄いほど、フレキシブル性に富んだものとなる。フレキシブル性を考慮すると、金属基材の厚みは、10μm〜300μmの範囲内であることが好ましく、30μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
【0030】
金属基材の作製方法としては、金属基材単体を得る方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができ、金属材料の種類や金属基材の厚みなどに応じて適宜選択される。
【0031】
第2電極層の形成位置としては、第2電極層が、光電変換層を水分や酸素から保護することができるように光電変換層上に形成され、かつ第1電極層および第2電極層間で短絡が生じないように配置されていれば特に限定されるものではない。例えば、図1に示すように第2電極層5が光電変換層4と同面積となるように形成されていてもよい。この場合、第2電極層および光電変換層が同面積であることにより、第2電極層によって光電変換層を保護することができるとともに、第1電極層および第2電極層間で短絡が生じることもない。また、図2(a)、(b)に示すように第2電極層5が光電変換層4よりも大面積となるように形成され、第2電極層5および第1電極層3の間で光電変換層4が形成されていない部分には絶縁性を有する接着剤層6が形成されていてもよい。この場合、第2電極層が光電変換層よりも大面積であることにより、第2電極層によって光電変換層を保護することができるとともに、絶縁性を有する接着剤層が形成されていることにより、第1電極層および第2電極層間で短絡が生じることもない。
【0032】
第2電極層を光電変換層上に形成する方法としては、金属基材からなる第2電極層を光電変換層上に密着性良く配置することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、光電変換層上に金属基材を熱圧着する方法が挙げられる。光電変換層は導電性高分子材料などの有機材料を含有するものであるので、光電変換層上に金属基材を熱ラミネートすることで密着性良く金属基材を積層することができる。
【0033】
2.接着剤層
本発明においては、上記第1電極層および上記第2電極層の間に、上記光電変換層の外周に沿って、絶縁性を有する接着剤層が形成されていることが好ましい。第1電極層および第2電極層間での短絡を防ぐために、第1電極層および第2電極層の間で光電変換層が形成されていない部分には必ず接着剤層が形成されていることが好ましい。
【0034】
接着剤層の形成位置としては、接着剤層が第1電極層および第2電極層の間に光電変換層の外周に沿って形成され、かつ第1電極層および第2電極層間で短絡が生じないように配置されていれば特に限定されるものではない。例えば、図2(a)、(b)に示すように接着剤層6が第1電極層3および第2電極層5の間に光電変換層4の外周を囲むように形成されていてもよく、図3(a)〜(c)に示すように接着剤層6が第1電極層3および第2電極層5の間に光電変換層4の外周の一部に沿って形成されていてもよい。なお、図3(c)は図3(a)のB−B線断面図および図3(b)C−C線断面図であり、図3(a)、(b)において光電変換層4は一点鎖線、第2電極層5は破線で示されている。また、図示しないが、光電変換層が矩形である場合には、接着剤層が、光電変換層の四辺を囲むように形成されていてもよく、光電変換層の三辺に沿って形成されていてもよく、光電変換層の二辺に沿って形成されていてもよく、光電変換層の一辺に沿って形成されていてもよい。いずれの場合においても、上述したように、第1電極層および第2電極層間での短絡を防ぐために、第1電極層および第2電極層の間で光電変換層が形成されていない部分には必ず接着剤層が形成される。
【0035】
中でも、接着剤層が光電変換層の外周を囲むように形成されていることが好ましい。第1電極層および第2電極層の密着性を向上させることができるとともに、光電変換層への水分や酸素の侵入を防ぐことができるからである。
【0036】
接着剤層に用いられる接着剤としては、絶縁性を有し、第1電極層および第2電極層を貼り合わせることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂を用いることができる。中でも、熱硬化型樹脂が好ましく、特に熱硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
【0037】
接着剤層の形成方法としては、所望の位置に接着剤層を配置することができる方法であれば特に限定されるものではなく、通常、接着剤を塗布する方法が用いられる。接着剤の塗布方法としては、例えば、インクジェット法、ディスペンサー法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられる。中でも、インクジェット法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法が好ましく用いられる。
【0038】
接着剤は、第1電極層上に塗布してもよく、第2電極層上に塗布してもよいが、通常は第1電極層上に塗布する。
接着剤が熱硬化型樹脂である場合には、例えば、接着剤の塗布後、光電変換層上に金属基材(第2電極層)を熱圧着し、接着剤を熱硬化させることで、接着剤層を形成することができる。接着剤が熱可塑型樹脂である場合には、例えば、接着剤の塗布後、光電変換層上に金属基材(第2電極層)を熱圧着し、接着剤を加熱して冷却することで、接着剤層を形成することができる。また、接着剤が光硬化型樹脂である場合には、例えば、接着剤の塗布後、光電変換層上に金属基材(第2電極層)を熱圧着し、接着剤を光硬化させることで、接着剤層を形成することができる。接着剤が光硬化型樹脂である場合、接着剤を光硬化させた後に、さらに熱硬化させてもよい。
【0039】
3.光電変換層
本発明に用いられる光電変換層は、第1電極層と第2電極層との間に形成されるものである。なお、「光電変換層」とは、有機薄膜太陽電池の電荷分離に寄与し、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向かって輸送する機能を有する部材をいう。
【0040】
光電変換層は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であってもよく(第1態様)、また電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものであってもよい(第2態様)。以下、各態様について説明する。
【0041】
(1)第1態様
本発明における光電変換層の第1態様は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であり、電子供与性材料および電子受容性材料を含有するものである。この光電変換層では、光電変換層内で形成されるpn接合を利用して電荷分離が生じるため、単独で光電変換層として機能する。
【0042】
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。
導電性高分子はいわゆるπ共役高分子であり、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系から成り立っており、半導体的性質を示すものである。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利である。また、導電性高分子の電子伝達機構は、主にπスタッキングによる分子間のホッピング伝導であるため、高分子の主鎖方向のみならず、光電変換層の膜厚方向への電荷輸送も有利である。さらに、導電性高分子材料は、導電性高分子材料を溶媒に溶解もしくは分散させた塗工液を用いることで湿式塗工法により容易に成膜可能であることから、大面積の有機薄膜太陽電池を高価な設備を必要とせず低コストで製造できるという利点がある。
【0043】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリシラン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポルフィリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、フタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等を挙げることができる。
【0044】
上記の中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、フェニレンエチニレン−フルオレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好ましく用いられる。これらは、多くの電子受容性材料に対して、エネルギー準位差が適当であるからである。
なお、例えばフェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体(Poly[1,4-phenyleneethynylene-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)-1,4-phenyleneethene-1,2-diyl-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)ethene-1,2-diyl])の合成方法については、Macromolecules, 35, 3825 (2002) や、Mcromol. Chem. Phys., 202, 2712 (2001) に詳しい。
【0045】
また、電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子受容性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。
【0046】
電子受容性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、カーボンナノチューブ、フラーレン誘導体、CN基またはCF基含有ポリマーおよびそれらの−CF置換ポリマー等を挙げることができる。ポリフェニレンビニレン誘導体の具体例としては、CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])、MEH−CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])等が挙げられる。
【0047】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性材料等を用いることもできる。中でも、電子供与性化合物もしくは電子受容性化合物がドープされた導電性高分子材料が好ましく用いられる。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利であり、また、電子供与性化合物や電子受容性化合物をドープすることによりπ共役主鎖中に電荷が発生し、電気伝導度を大きく増大させることが可能であるからである。
【0048】
電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述した電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。
また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl(III)、AlCl、AlBr、AsFやハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0049】
光電変換層の膜厚としては、一般的にバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.2nm〜3000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜600nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、光電変換層における体積抵抗が高くなる場合があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
【0050】
電子供与性材料および電子受容性材料の混合比は、使用する材料の種類により最適な混合比に適宜調整される。
【0051】
光電変換層を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法が好ましく用いられる。湿式塗工法であれば、大気中で光電変換層を形成することができ、コストの削減が図れるとともに、大面積化が容易だからである。
【0052】
光電変換層用塗工液の塗布方法としては、光電変換層用塗工液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。
中でも、光電変換層用塗工液の塗布方法は、主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法であることが好ましい。主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法としては、例えば、ダイコート法、ビードコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの印刷法を挙げることができる。印刷法は有機薄膜太陽電池の大面積化に好適である。
【0053】
光電変換層用塗工液の塗布後は、形成された塗膜を乾燥する乾燥処理を施してもよい。光電変換層用塗工液に含まれる溶媒等を早期に除去することにより、生産性を向上させることができるからである。
乾燥処理の方法として、例えば、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥、赤外線加熱乾燥等、一般的な方法を用いることができる。
【0054】
(2)第2態様
本発明における光電変換層の第2態様は、電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものである。以下、電子受容性層および電子供与性層について説明する。
【0055】
(電子受容性層)
本態様に用いられる電子受容性層は、電子受容性の機能を有するものであり、電子受容性材料を含有するものである。
【0056】
電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子受容性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換層に用いられる電子受容性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
【0057】
電子受容性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子受容性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
【0058】
電子受容性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換層の形成方法と同様とすることができる。
【0059】
(電子供与性層)
本態様に用いられる電子供与性層は、電子供与性の機能を有するものであり、電子供与性材料を含有するものである。
【0060】
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換層に用いられる電子供与性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
【0061】
電子供与性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子供与性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
【0062】
電子供与性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換層の形成方法と同様とすることができる。
【0063】
4.第1電極層
本発明における第1電極層は、透明基板上に形成され、上記第2電極層と対向する電極である。第1電極層は、通常、光電変換層で発生した正孔を取り出すための電極(正孔取出し電極)とされる。本発明においては、第1電極層側が受光面となる。
【0064】
第1電極層は、受光面側の電極となるものであれば特に限定されるものではなく、透明電極であってもよく、また透明電極とパターン状の補助電極とが積層されたものであってもよい。
図4に例示するように第1電極層3がパターン状の補助電極3aと透明電極3bとが積層されたものである場合には、透明電極のシート抵抗が比較的高い場合であっても、補助電極のシート抵抗を十分に低くすることで、第1電極層全体としての抵抗を低減することができる。したがって、発生した電力を効率良く集電することができる。
以下、透明電極および補助電極について説明する。
【0065】
(1)透明電極
本発明に用いられる透明電極は、透明基板上に形成されるものである。
【0066】
透明電極の構成材料としては、導電性および透明性を有するものであれば特に限定されなく、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O等を挙げることができる。中でも、上記第2電極層の構成材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば第2電極層の構成材料を仕事関数の低い材料とした場合には、透明電極の構成材料は仕事関数の高い材料であることが好ましい。導電性および透明性を有し、かつ仕事関数の高い材料としては、ITOが好ましく用いられる。
【0067】
透明電極の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。透明電極の全光線透過率が上記範囲であることにより、透明電極にて光を十分に透過することができ、光電変換層にて光を効率的に吸収することができるからである。
なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
【0068】
透明電極のシート抵抗は、20Ω/□以下であることが好ましく、中でも10Ω/□以下、特に5Ω/□以下であることが好ましい。シート抵抗が上記範囲より大きいと、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があるからである。
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の抵抗率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
【0069】
透明電極は、単層であってもよく、また異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。
この透明電極の膜厚としては、単層である場合はその膜厚が、複数層からなる場合は総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄いと、透明電極のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚いと、全光線透過率が低下し、光電変換効率を低下させる可能性があるからである。
【0070】
透明電極の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができる。
【0071】
(2)補助電極
本発明に用いられる補助電極は、透明基板上にパターン状に形成されるものである。補助電極は、通常、透明電極よりも抵抗値が低い。
【0072】
補助電極の形成材料としては、通常、金属が用いられる。補助電極に用いられる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ステンレス系金属、アルミニウム合金、銅合金、チタン合金、鉄−ニッケル合金およびニッケル−クロム合金(Ni−Cr)等の導電性金属を挙げることができる。上述の導電性金属の中でも、電気抵抗値が比較的低いものが好ましい。このような導電性金属としては、Al、Au、Ag、Cu等が挙げられる。
【0073】
また、補助電極は、上述のような導電性金属からなる単層であってもよく、また基板や透明電極との密着性向上のために、導電性金属層とコンタクト層とを適宜積層したものであってもよい。コンタクト層の形成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(Ni−Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)等が挙げられる。コンタクト層は所望の補助電極と基板や透明電極との密着性を得るために導電性金属層に積層されるものであり、導電性金属層の片側にのみ積層してもよく、導電性金属層の両側に積層してもよい。
【0074】
また、第2電極層の形成材料の仕事関数等に応じて、好ましい金属を選択してもよい。例えば、第2電極層の形成材料の仕事関数等を考慮する場合には、第1電極層は正孔取出し電極であるので、補助電極に用いられる金属は仕事関数の高いものであることが好ましい。具体的には、Alが好ましく用いられる。
【0075】
補助電極の形状としては、パターン状であれば特に限定されるものではなく、所望の導電性、透過性、強度等により適宜選択される。例えば、補助電極は、メッシュ状のメッシュ部と、このメッシュ部の周囲に配置されたフレーム部とを有するものであってもよく、メッシュ状のメッシュ部からなるものであってもよい。
【0076】
補助電極がメッシュ部とフレーム部とを有する場合、メッシュ部およびフレーム部の配置としては、例えば補助電極が矩形である場合、フレーム部が、メッシュ部の四方を囲むように配置されていてもよく、メッシュ部の三方を囲むように配置されていてもよく、メッシュ部の二方を囲むように配置されていてもよく、メッシュ部の一方に配置されていてもよい。中でも、フレーム部は、メッシュ部の四方または三方を囲むように配置されていることが好ましい。効率良く集電することができるからである。
【0077】
メッシュ部の形状としては、メッシュ状であれば特に限定されるものではなく、所望の導電性、透過性、強度等により適宜選択される。例えば、三角形、四角形、六角形等の多角形や円形の格子状等が挙げられる。なお、多角形や円形の「格子状」とは、多角形や円形が周期的に配列されている形状をいう。多角形や円形の格子状としては、例えば多角形の開口部がストレートに配列されていてもよく、ジグザグに配列されていてもよい。
【0078】
中でも、メッシュ部の形状は、六角形の格子状または平行四辺形の格子状であることが好ましい。メッシュ部を流れる電流が局所的に集中するのを防止することができるからである。六角形の格子状の場合、特に、六角形の開口部がジグザグに(いわゆるハニカム状に)配列されていることが好ましい。一方、平行四辺形の格子状の場合、平行四辺形の鋭角が40°〜80°の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50°〜70°の範囲内、さらに好ましくは55°〜65°の範囲内である。
【0079】
補助電極自体は基本的に光を透過しないので、補助電極のメッシュ部の開口部から光電変換層に光が入射する。そのため、補助電極のメッシュ部の開口部は比較的大きいことが好ましい。具体的には、補助電極のメッシュ部の開口部の比率は、50%〜98%程度であることが好ましく、より好ましくは70%〜98%の範囲内、さらに好ましくは80%〜98%の範囲内である。
【0080】
補助電極のメッシュ部の開口部のピッチおよびメッシュ部の線幅は、補助電極全体の面積等に応じて適宜選択される。
また、フレーム部の線幅は、補助電極全体の面積等に応じて適宜選択される。
【0081】
補助電極の厚みは、第1電極層と第2電極層との間で短絡が生じない厚みであれば限定されるものではなく、光電変換層、正孔取出し層、電子取出し層等の厚みに応じて適宜選択される。具体的には、第1電極層と第2電極層との間に形成される層(光電変換層、正孔取出し層、電子取出し層)の総膜厚を1とすると、補助電極の厚みは、5以下であることが好ましく、中でも3以下、さらには2以下、特に1.5以下であることが好ましく、1以下であることが最も好ましい。補助電極の厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。より具体的には、補助電極の厚みは、100nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、中でも200nm〜800nmの範囲内、さらには200nm〜500nmの範囲内、特に200nm〜400nmの範囲内であることが好ましい。補助電極の厚みが上記範囲より薄いと、補助電極のシート抵抗が大きくなる場合があるからである。また、補助電極の厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。
【0082】
中でも、第1電極層上に、主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法により光電変換層を形成する場合、補助電極の厚みは200nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。第1電極層上に、主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法により光電変換層を形成する場合、補助電極の厚みが上記範囲よりも厚いと、補助電極のメッシュ部やフレーム部のエッジを覆うことが困難となり、電極間で短絡が生じやすくなる。また、補助電極の厚みが上記範囲よりも厚いと、表面張力によって所望の厚みよりも厚く光電変換層が形成されてしまうおそれがある。光電変換層の厚みが厚すぎると、電子拡散長および正孔拡散長を超えてしまい変換効率が低下する。表面張力によって所望の厚みよりも厚く光電変換層が形成されないように、補助電極の厚みを調整することが好ましい。特に、光電変換層内を正孔および電子が移動できる距離は100nm程度であることが知られていることからも、表面張力によって所望の厚みよりも厚く光電変換層が形成されないように、補助電極の厚みを調整することが好ましいのである。
一方、例えばスピンコート法により光電変換層を形成する場合、遠心力により均質な膜とするので、補助電極の厚みが比較的厚くても、補助電極のエッジを覆うことができる。また、スピンコート法の場合、回転数によって厚みを調整することができるので、補助電極の厚みが比較的厚くても、均質な膜を得ることができる。
よって、主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法により光電変換層を形成する場合には、上記範囲が特に好ましいのである。
【0083】
補助電極のシート抵抗としては、透明電極のシート抵抗よりも低ければよい。具体的に、補助電極のシート抵抗は、5Ω/□以下であることが好ましく、中でも3Ω/□以下、さらには1Ω/□以下、特に0.5Ω/□以下であることが好ましく、0.1Ω/□以下であることが最も好ましい。補助電極のシート抵抗が上記範囲より大きいと、所望の発電効率が得られない場合があるからである。
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の抵抗率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
【0084】
透明電極および補助電極の積層順としては、透明基板上に補助電極および透明電極の順に積層されていてもよく、透明基板上に透明電極および補助電極の順に積層されていてもよい。中でも、透明基板上に補助電極および透明電極の順に積層されていることが好ましい。透明電極と光電変換層や正孔取出し層等との接触面積が大きい方が、界面の接合性が良く、正孔の移動効率を高くすることができるからである。
【0085】
補助電極の形成位置としては、接着剤層が形成されている場合には、補助電極は接着剤層と接するように配置されていることが好ましい。金属からなる補助電極と金属基材からなる第2電極層とに接して接着剤層が形成されていることにより、接着力を向上させることができるからである。
透明基板上に透明電極および補助電極の順に積層されている場合には、補助電極を接着剤層と接するように配置することができる。また、例えば図4に示すように、透明基板上に補助電極3aおよび透明電極3bの順に積層されている場合には、補助電極3a上に透明電極3bが積層されていない領域を設けることにより、補助電極3aを接着剤層6と接するように配置することができる。
【0086】
補助電極の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属薄膜を全面に成膜した後に網目状にパターニングする方法、網目状の導電体を直接形成する方法等が挙げられる。これらの方法は、補助電極の形成材料や構成等に応じて適宜選択される。
【0087】
金属薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜法であることが好ましい。すなわち、補助電極は真空成膜法にて形成された金属薄膜であることが好ましい。真空成膜法により成膜した金属種は、めっき膜に比べ介在物が少なく比抵抗を小さくでき、またAgペースト等を用いて成膜したものと比較しても比抵抗を小さくできる。また、厚み1μm以下、好ましくは500nm以下の金属薄膜を、膜厚を精密に制御し、均一な厚みに成膜する方法としても、真空成膜法が好適である。
金属薄膜のパターニング方法としては、所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばフォトエッチング法等を挙げることができる。
【0088】
5.透明基板
本発明に用いられる透明基板としては、特に限定されるものではなく、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を挙げることができる。
中でも、透明基板が透明樹脂フィルム等のフレキシブル材であることが好ましい。透明樹脂フィルムは、加工性に優れており、製造コスト低減や軽量化、割れにくい有機薄膜太陽電池の実現において有用であり、曲面への適用等、種々のアプリケーションへの適用可能性が広がるからである。
【0089】
6.正孔取出し層
本発明においては、図5に例示するように、光電変換層4と第1電極層3との間に正孔取出し層7が形成されていてもよい。正孔取出し層は、光電変換層から正孔取出し電極への正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から正孔取出し電極への正孔取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
【0090】
正孔取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から正孔取出し電極への正孔の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されるものではない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、Au、In、Ag、Pd等の金属等の薄膜も使用することができる。さらに、金属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、特にポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、トリフェニルジアミン(TPD)が好ましく用いられる。
【0091】
正孔取出し層の膜厚としては、上記有機材料を用いた場合は、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、上記金属薄膜である場合は、0.1nm〜5nmの範囲内であることが好ましい。
【0092】
7.電子取出し層
本発明においては、図5に例示するように、光電変換層4と第2電極層5との間に電子取出し層8が形成されていてもよい。電子取出し層は、光電変換層から電子取出し電極への電子の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から電子取出し電極への電子取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
【0093】
電子取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から電子取出し電極への電子の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属との金属ドープ層が挙げられる。好適な材料としては、バソキュプロイン(BCP)または、バソフェナントロン(Bphen)と、Li、Cs、Ba、Srなどの金属ドープ層が挙げられる。
【0094】
8.その他の構成
本発明の有機薄膜太陽電池は、上述した構成部材の他にも、必要に応じて後述する構成部材を有していてもよい。例えば、本発明の有機薄膜太陽電池は、保護シート、充填材層、バリア層、保護ハードコート層、強度支持層、防汚層、高光反射層、光封じ込め層、封止材層等の機能層を有していてもよい。また、層構成に応じて、各機能層間に接着層が形成されていてもよい。
なお、これらの機能層については、特開2007−73717号公報等に記載のものと同様とすることができる。
【0095】
本発明においては、上述したように第1電極層および第2電極層から容易に外部回路に電力を取り出すことが可能である。例えば、第1電極層および第2電極層の表面にそれぞれ金属製の正極および負極の各端子を接触させることにより、外部回路に電力を取り出すことができる。
【0096】
B.有機薄膜太陽電池モジュール
本発明の有機薄膜太陽電池モジュールは、上述の有機薄膜太陽電池が複数個直列または並列に接続されていることを特徴とするものである。
【0097】
図6は、本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。図6に示す有機薄膜太陽電池モジュール10においては、3個のセル(有機薄膜太陽電池1)が直列に接続されている。各セル(有機薄膜太陽電池1)は、透明基板2と、透明基板2上に形成された第1電極層3と、第1電極層3上に形成された光電変換層4と、光電変換層4上に形成され、金属基材からなる第2電極層5と、第1電極層3および第2電極層5の間に光電変換層4の外周を囲むように形成された絶縁性を有する接着剤層6とを有している。
【0098】
上記有機薄膜太陽電池モジュールにおいては、絶縁性を有する接着剤層が形成されていることにより、セル内にて第1電極層および第2電極層間で短絡は生じない。また、絶縁性を有する接着剤層が形成されていることにより、隣接するセル間にて第1電極層同士および第2電極層同士での短絡はない。
【0099】
本発明によれば、上述の有機薄膜太陽電池を有するので、第2電極層の上から封止基板を用いて封止を行う必要がなく、第1電極層および第2電極層から容易に外部回路に電力を取り出すことができるだけでなく、第1電極層および第2電極層を利用して複数個の有機薄膜太陽電池を容易に接続することができる。
【0100】
複数個の有機薄膜太陽電池の接続としては、所望の起電力を得ることができればよく、直列のみであってもよく、並列のみであってもよく、直列および並列を組み合わせてもよい。また、同一の透明基板上に複数個の有機薄膜太陽電池が形成され接続されていてもよく、それぞれ別個独立に作製された有機薄膜太陽電池が配線等によって接続されていてもよい。
【0101】
なお、有機薄膜太陽電池については、「A.有機薄膜太陽電池」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0102】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
厚み125μmのPETフィルム基板の上にPVD法によりSiO2の薄膜を形成し、その上面に圧力勾配型プラズマガンを用いた反応性イオンプレーティング法(パワー:3.7kW、酸素分圧:73%、製膜圧力:0.3Pa、製膜レート:150nm/min、基板温度:20℃)により透明電極であるITO膜(膜厚:150nm、シート抵抗:20Ω/□)を成膜した。
【0104】
次に、上記ITO膜が形成された基板をアセトン、基板洗浄液、IPAを用いて洗浄した。次に、このITO膜上に、ITO膜の面積よりも大きい面積となるように、かつ、ITO膜の一部が露出するように、導電性高分子ペースト(ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)分散品)を製膜し、100℃で10分間乾燥させ、バッファー層を形成した。
【0105】
次に、ポリチオフェン(P3HT:poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl))とC60PCBM([6,6]-phenyl-C61-butyric acid mettric ester:Nano-C社製)をブロモベンゼンに溶解させ、固形分濃度1.4wt%の光電変換層用塗工液を準備した。次に、同溶液を上記バッファー層上にバッファー層と同じ面積となるようにバーコート法にて塗布し、100℃で10分間乾燥させて、光電変換層を形成した。
【0106】
次に、上記ITO膜のバッファー層および光電変換層が形成されていない部分に、熱硬化型エポキシ樹脂を含む絶縁性接着剤を塗布した。
次に、上記光電変換層上に厚み10μmのアルミニウム板を熱ラミネート法にて積層して、金属電極とした。その後、絶縁性接着剤を熱硬化させた。これにより、ITO膜とアルミニウム板の接触部分は絶縁性接着剤を用いて接着された。
得られた有機薄膜太陽電池では、ITO膜に正極用の金属クリップ、アルミニウム板に負極用の金属クリップを接触させることにより、外部回路に電力を取り出した。
【符号の説明】
【0107】
1 … 有機薄膜太陽電池
2 … 透明基板
3 … 第1電極層
3a … 補助電極
3b … 透明電極
4 … 光電変換層
5 … 第2電極層
6 … 接着剤層
7 … 正孔取出し層
8 … 電子取出し層
10 … 有機薄膜太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板上に形成された第1電極層と、
前記第1電極層上に形成された光電変換層と、
前記光電変換層上に形成され、金属基材からなる第2電極層と
を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項2】
前記第1電極層および前記第2電極層の間に、前記光電変換層の外周に沿って絶縁性を有する接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項3】
前記金属基材が金属箔であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の有機薄膜太陽電池が複数個直列または並列に接続されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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