説明

有機電子デバイス

【課題】有機電子デバイスを提供すること。
【解決手段】このデバイスは、アノード、光活性層、およびカソードを有し、さらにこのアノードと光活性層との間には、
緩衝層、
第1の正孔輸送層、および
第2の正孔輸送層
が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、一般に有機電子デバイスに関し、特に、発光ダイオードデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料は、有機薄膜トランジスタ(OTFT)や有機発光ダイオード(OLED)、光起電力ダイオード、液晶ディスプレイなどの電子デバイスに広く使用されている。OLEDディスプレイを構成するOLEDなどの有機光活性電子デバイスは、典型的な場合、アノード、正孔輸送層、エミッタ層、電子輸送層、およびカソードからなる。正孔輸送層は、典型的な場合、アノードからエミッタ層のホストまでの注入を高めるのに使用される単一の材料である。エミッタ層は、通常、ドーパントおよびホストからなる。あるいはエミッタ層は、光を放出するホスト、即ち個別のドーパントを必要としないホストを使用して作製することができる。
【0003】
発光ダイオードの活性成分として、有機エレクトロルミネセンス化合物を使用することが周知である。単純な有機分子、複合ポリマー、および有機金属錯体が使用されてきた。
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0102577号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0127637号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0205860号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0184287号明細書
【特許文献5】国際公開第2005/052027号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5962631号明細書
【特許文献7】国際公開第00/53565号パンフレット
【特許文献8】米国特許第6670645号明細書
【特許文献9】国際公開第03/063555号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2004/16710号パンフレット
【特許文献11】国際公開第03/008424号パンフレット
【特許文献12】国際公開第03/091688号パンフレット
【特許文献13】国際公開第03/040257号パンフレット
【特許文献14】米国特許第6303238号明細書
【特許文献15】国際公開第00/70655号パンフレット
【特許文献16】国際公開第01/41512号パンフレット
【非特許文献1】CRC Handbook of Chemistry and Physics, 81st Edition (2000〜2001)
【非特許文献2】Y. Wang, Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Fourth Edition, Vol. 18, p. 837-860, 1996
【非特許文献3】Yamamoto, Progress in Polymer Science, Vol. 17, p. 1153 (1992)
【非特許文献4】Colon et al., Journal of Polymer Science, Part A, Polymer chemistry Edition, Vol. 28, p. 367 (1990)
【非特許文献5】"Flexible light-emitting diode made from soluble conducting polymer," Nature vol. 357, pp. 477-479 (11 June 1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
色、寿命、および動作電圧を含めた、OLEDデバイスの特性を改善する材料および構造の必要が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
アノード、光活性層、およびカソードを含み、このアノードと光活性層との間には、
緩衝層と、
第1の正孔輸送層と、
第2の正孔輸送層と
が配置されている、有機電子デバイスが提供される。
【0007】
また、緩衝層が導電性ポリマーおよびフッ素化酸ポリマーを含む、上述のデバイスも提供される。
【0008】
また、第1の正孔輸送層が高分子正孔輸送材料を含み、第2の正孔輸送層が、気相成長された小分子材料を含む、上述のデバイスも提供される。
【0009】
アノードと、
ビス(ジアリールアミノ)クリセン化合物を含む光活性層と、
カソードと
を含み、深青発光色を有する有機電子デバイスが提供される。
【0010】
アノードと、
緩衝層と、
第1の正孔輸送層と、
第2の正孔輸送層と、
アントラセン誘導体を含む光活性層と
を含み、深青発光色を有する有機電子デバイスが提供される。
【0011】
前述の概略的記述および下記の詳細な記述は、例示であり単なる説明を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲に記載されるような本発明を限定するものではない。
【0012】
本明細書に提示される概念の理解を高めるために、添付の図に実施形態を示す。
【0013】
当業者なら、図中の対象は単純化および明確化のために例示され、必ずしも適正な縮尺で描かれていないことが理解されよう。例えば、これらの図中の対象のいくつかの寸法は、実施形態の理解を高めるために、その他の対象よりも大きく描かれている可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
多くの態様および実施形態が本明細書に開示され、これらは例示であって、限定するものではない。本明細書を読んだ後、当業者なら、この開示および特許請求の範囲から逸脱することなく、その他の態様および実施形態が可能であることが理解されよう。
【0015】
実施形態のいずれか1つまたは複数のその他の特徴および利益は、下記の詳細な記述から、および特許請求の範囲から明らかにされよう。詳細な記述は、まず用語の定義および説明に言及し、その後、デバイス構造、緩衝層、第1の正孔輸送層、第2の正孔輸送層、光活性層、その他の層、最後に実施例について言及する。
【0016】
1.用語の定義および説明
以下に述べる実施形態の詳細に言及する前に、いくつかの用語について定義し、説明する。
【0017】
「緩衝層」という用語は、導電性または半導性の材料を含む層を意味するものとし、有機電子デバイスでは、下に存在する層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素や金属イオンなどの不純物のスカベンジング、および有機電子デバイスの性能を促進させまたは改善するその他の態様を含むがこれらに限定することのない1つまたは複数の機能を有してよい。「緩衝材料」という用語は、緩衝層中の機能性材料を指し、ポリマー、オリゴマー、または小分子でよい。
【0018】
「正孔輸送」という用語は、層、材料、部材、または構造を指す場合、そのような層、材料、部材、または構造が、そのような層、材料、部材、または構造の厚さ全体を通した正電荷の移行を比較的効率的にかつ電荷の損失が小さい状態で促進させることを意味するものとする。「HT」という略語は、正孔輸送を指すのに使用する。
【0019】
「光活性」という用語は、エレクトロルミネセンスまたは光感受性を示す任意の材料を意味するものとする。
【0020】
「深青」という用語は、C.I.E.のy座標が0.1未満の色を意味するものとする。CIE(Commission Internationale de I’Eclairage:国際照明委員会)系は、色度図上の点を特定する2つの色座標xおよびyによって、色を特徴付ける。1931標準が使用される。CIE座標は、例えば分光放射計を使用して決定することができる。
【0021】
「ポリマー」という用語は、少なくとも1つの反復モノマー単位を有する材料を意味するものとする。この用語には、モノマー単位を1種類だけ有するホモポリマー、および2種以上の異なるモノマー単位を有するコポリマーが含まれる。コポリマーは、ポリマーの部分集合である。いくつかの実施形態では、ポリマーは少なくとも5つの反復単位を有する。
【0022】
「小分子」という用語は、化合物を指す場合、反復モノマー単位を持たない化合物を意味するものとする。いくつかの実施形態では、小分子は、約2000g/モル以下の分子量を有する。
【0023】
「導電性ポリマー」という用語は、カーボンブラックまたは導電性金属粒子を添加することなく、生来または元来導電性を有することが可能な任意のポリマーまたはオリゴマーを意味するものとする。導電性ポリマー組成物の導電率は、組成物から作製された被膜の横方向導電率(単位:S/cm)として測定される。
【0024】
「フッ素化酸ポリマー」という用語は、水素の少なくともいくつかがフッ素に置き換えられている、酸性基を有するポリマーを意味するものとする。「酸性基」という用語は、ブレンステッド塩基に水素が供与されるようイオン化することが可能な基を指す。
【0025】
「層」という用語は、「被膜」という用語と同義に使用され、所望の領域を覆うコーティングを指す。この用語は、サイズによって限定されない。この領域は、デバイス全体と同様に広くすることができ、または実際の視覚ディスプレイのような特定の機能領域と同様に狭くすることができ、または単一のサブ画素と同様に小さくすることができる。層および被膜は、気相成長、液相成長(連続および不連続技法)、および熱転写を含めた任意の従来の堆積技法によって、形成することができる。
【0026】
本明細書で使用される「含む(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(has、having)」、またはこれらの任意のその他の変形例は、非排他的な包含関係を包含するものとする。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されず、明確に列挙されておらずあるいはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有なその他の要素を含んでもよい。さらに、他に特に指示しない限り、「または(or)」は包含的なまたはを指し、排他的なまたはを指すものではない。例えば、条件AまたはBとは、下記の事項、即ち、Aは真であり(または存在し)Bは偽である(または存在しない)こと、Aは偽であり(または存在せず)Bは真である(または存在する)こと、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)ことのいずれか1つによって満たされる。
【0027】
「a」または「an」の使用も、本明細書に記述される要素および構成成分について述べるのに用いられる。これは、単なる便宜のため、および本発明の範囲の全体的な意味を与えるために行われる。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は、複数形を含まないことを意味することが明らかではない限り、複数形も含む。
【0028】
元素の周期律表の列に対応する族の番号は非特許文献1に見られる「新表記」を使用する。
【0029】
他に特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記述されるものと同様のまたは均等な方法および材料を、本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に示す。本明細書で言及されるすべての出版物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特定の文節が引用されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合は、定義を含めた本明細書を優先するものとする。さらに、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、限定しようとするものではない。
【0030】
特定の材料、処理動作、および回路に関するいくつかの詳細は、従来通りのものであり、教科書およびその他の出典に見出すことができ、またその他の方法によって、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体部材の分野の当業者に知られている。そのような詳細は、完全な開示を可能にする目的で必ずしも本明細書に示す必要はない。
【0031】
2.デバイス構造
本明細書で記述される有機電子デバイスは、アノード、光活性層、およびカソードを含み、さらにこのアノードと光活性層との間には、
緩衝層と、
第1の正孔輸送層と、
第2の正孔輸送層と
が位置決めされ、
第1の正孔輸送層の組成が第2の正孔輸送層の組成とは異なっている。デバイスは、「2層正孔輸送層」、「2層HTL」、または「HT2層」を有すると言うことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、2層HTLが、改善された被膜品質を光活性層にもたらす。いくつかの実施形態では、2層HTLによって、光活性層への正孔注入が改善され、その結果、電圧および寿命が改善される。
【0033】
デバイスの一例を、図1に示す。このデバイスはさらに、選択肢として、光活性層とカソードとの間に電子輸送層を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1の正孔輸送層がポリマーであり、液相成長によって堆積される。いくつかの実施形態では、第1の正孔輸送ポリマーは、緩衝層の表面を被覆可能になるように設計される。例えば、緩衝層が低表面エネルギーを有する層である場合、そのような表面が被覆されるように第1の正孔輸送層を最適化することができる。いくつかの実施形態では、第1の正孔輸送層は、下にある緩衝層またはアノードの凹凸に起因して生じる可能性のあるショートを減少させまたはなくすための平坦化層として作用する。
【0035】
いくつかの実施形態では、第2の正孔輸送層は、最適化されたエネルギー準位アライメント、高正孔移動度、低電子移動度、および電子ベースの伝導に対する良好な安定性を有することによって、光活性層への注入促進剤として作用する。
【0036】
いくつかの実施形態では、改善された電流注入および低下した動作電圧は、HTL2層によって可能になったより良好な準位アライメントを経て光活性層に注入されるように、正孔に対する注入障壁(ψb)を低下させることによって実現される。図2は、単一のHTLを有するデバイス(A)および2層HTLを有するデバイス(B)におけるエネルギー準位アライメントの概略を示す。2層HTLのエネルギー準位アライメントは、デバイスAにおける単一の大きい注入障壁ψbからデバイスBにおける2つのさらに小さい注入障壁ψb1およびψb2への変換をもたらす。
【0037】
3.緩衝層
緩衝層は、しばしばプロトン酸がドープされるポリアニリン(PANI)やポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの高分子材料で形成することができる。プロトン酸は、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などにすることができる。
【0038】
緩衝層は、電荷移動化合物、およびその他同様のもの、例えば銅フタロシアニン、およびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などを含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、緩衝層は、少なくとも1種の導電性ポリマーと少なくとも1種のフッ素化酸ポリマーとを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、導電性ポリマーは、少なくとも10-7S/cmの導電率を有する被膜を形成することになる。導電性ポリマーを形成するモノマーを、「前駆モノマー」と呼ぶ。コポリマーは、複数の前駆モノマーを有することになる。いくつかの実施形態では、導電性ポリマーは、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン、ピロール、アニリン、および多環式芳香族から選択された少なくとも1種の前駆モノマーから作製される。これらモノマーから作製されたポリマーを、本明細書では、それぞれポリチオフェン、ポリ(セレノフェン)、ポリ(テルロフェン)、ポリピロール、ポリアニリン、および多環式芳香族ポリマーと呼ぶ。「多環式芳香族」という用語は、複数の芳香環を有する化合物を指す。これらの環は、1つまたは複数の結合、または架橋基、または原子によって接合されていてもよく、あるいは、一緒に縮合していてもよい。「芳香環」という用語は、複素芳香環を含むものとする。「多環式複素芳香」化合物は、少なくとも1個の複素芳香環を有する。いくつかの実施形態では、多環式芳香族ポリマーがポリ(チエノチオフェン)である。
【0041】
フッ素化酸ポリマーは、フッ素化されておりかつ酸性プロトンと共に酸性基を有する任意のポリマーにすることができる。この用語には、部分的および完全にフッ素化された材料が含まれる。いくつかの実施形態では、フッ素化酸ポリマーは、高度にフッ素化されている。「高度にフッ素化された」という用語は、炭素に結合された利用可能な水素の少なくとも50%が、フッ素で置き換えられていることを意味する。酸性基は、イオン化可能なプロトンを供給する。いくつかの実施形態では、酸性プロトンは、3未満のpKaを有する。いくつかの実施形態では、酸性プロトンは、0未満のpKaを有する。いくつかの実施形態では、酸性プロトンは、−5未満のpKaを有する。酸性基は、ポリマー主鎖に直接付着することができ、またはポリマー主鎖の側鎖に付着することができる。酸性基の例には、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。酸性基は、すべて同じにすることができ、またはポリマーは、複数のタイプの酸性基を有してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、フッ素化酸ポリマーが水溶性である。いくつかの実施形態では、フッ素化酸ポリマーは、水中に分散可能である。いくつかの実施形態では、フッ素化酸ポリマーは、有機溶媒で湿潤可能である。
【0043】
いくつかの実施形態では、フッ素化酸ポリマーは、フッ素化されたポリマー主鎖を有する。適切な高分子主鎖の例には、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、およびこれらのコポリマーが含まれるが、これらに限定するものではない。いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖は高度にフッ素化されている。いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖は完全にフッ素化されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、酸性基がスルホン酸基またはスルホンイミド基である。スルホンイミド基は、下式を有する。
【0045】
−SO2−NH−SO2−R
(式中、Rはアルキル基である。)
いくつかの実施形態では、酸性基は、フッ素化された側鎖上にある。いくつかの実施形態では、フッ素化された側鎖は、アルキル基、アルコキシ基、アミド基、エーテル基、およびこれらの組合せから選択される。
【0046】
いくつかの実施形態では、フッ素化酸ポリマーは、側基であるフッ素化エーテルスルホネート、フッ素化エステルスルホネート、またはフッ素化エーテルスルホンイミド基を備えたフッ素化オレフィン主鎖を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーは、1,1−ジフルオロエチレンと2−(1,1−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)アリルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、エチレンと2−(2−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。これらのコポリマーは、相当するフッ化スルホニルポリマーとして作製することができ、次いでスルホン酸の形に変換することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、フッ素化酸ポリマーは、フッ素化され部分的にスルホン化されたポリ(アリーレンエーテルスルホン)の、ホモポリマーまたはコポリマーである。コポリマーはブロックコポリマーとすることができる。コモノマーの例には、ブタジエン、ブチレン、イソブチレン、スチレン、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0048】
いくつかの実施形態では、緩衝層が、導電性ポリマーおよびコロイド形成高分子酸の水性分散体から作製される。そのような材料は、例えば特許文献1、2、および3に記載されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、緩衝層は、溶液堆積法によって形成される。連続液相成長技法の例には、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが含まれるが、これらに限定するものではない。不連続液相成長技法の例には、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0050】
4.第1の正孔輸送層
第1の正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料の例は、例えば非特許文献2にまとめられている。正孔輸送小分子とポリマーとの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子には、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP);1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mCP);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPPまたはDEASP);1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および銅フタロシアニンなどのポルフィリン化合物が含まれるが、これらに限定するものではない。一般に使用される正孔輸送ポリマーには、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)、ポリアニリン、およびポリピロールが含まれるが、これらに限定するものではない。上述のような正孔輸送分子を、ポリスチレンやポリカーボネートなどのポリマーにドープすることにより、正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の正孔輸送層が正孔輸送ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、正孔輸送ポリマーがジスチリルアリール化合物である。いくつかの実施形態では、アリール基は、2個以上の縮合芳香環を有する。いくつかの実施形態では、アリール基がアセンである。本明細書で使用される「アセン」という用語は、直線状に配列されている2個以上のオルト縮合ベンゼン環を含有する、炭化水素の親成分を指す。
【0052】
いくつかの実施形態では、正孔輸送ポリマーがアリールアミンポリマーである。いくつかの実施形態では、フルオレンおよびアリールアミンモノマーのコポリマーである。
【0053】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、架橋性基を有する。いくつかの実施形態では、架橋は、熱処理および/またはUVまたは可視光への露光によって、実現することができる。架橋性基の例には、ビニル、アクリレート、ペルフルオロビニルエーテル、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン、シロキサン、およびメチルエステルが含まれるが、これらに限定するものではない。架橋性ポリマーは、溶液処理OLEDの製作において、利点を有することができる。堆積の後、不溶性被膜に変換することのできる層を形成するための、可溶性ポリマー材料の利用によって、層が溶解する問題のない、多層溶液処理OLEDデバイスの製作が可能になる。
【0054】
架橋性ポリマーの例は、例えば、特許文献4および5に見出すことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、第2の正孔輸送層は、9,9−ジアルキルフルオレンとトリフェニルアミンとのコポリマーであるポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンと4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニルとのコポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンとTPBとのコポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンとNPBとのコポリマーである。いくつかの実施形態では、コポリマーは、(ビニルフェニル)ジフェニルアミン、および9,9−ジスチリルフルオレン、または9,9−ジ(ビニルベンジル)フルオレンから選択された第3のコモノマーから作製される。
【0056】
いくつかの実施形態では、第2の正孔輸送層は、下記の式Iを有するポリマーを含む
【0057】
【化1】

【0058】

(式中、a、b、およびcは、ポリマー中のモノマーの相対的な比を表し、0以外の整数であり;nは、少なくとも2の、0以外の整数である)。いくつかの実施形態では、a、b、およびcは、1〜10の範囲内の値を有する。いくつかの実施形態では、比a:b:cは、範囲(1〜4):(1〜4):(1〜2)を有する。いくつかの実施形態では、nが2〜500である。
【0059】
いくつかの実施形態では、第2の正孔輸送層は、下記の式IIを有するポリマーを含む
【0060】
【化2】

【0061】
(式中、a、b、およびcは、ポリマー中のモノマーの相対的な比を表し、0以外の整数であり;nは、少なくとも2の、0以外の整数である)。いくつかの実施形態では、a、b、およびcは、1〜10の範囲内の値を有する。いくつかの実施形態では、比a:b:cは、範囲(2〜7):(2〜7):(1〜3)を有する。いくつかの実施形態では、nが2〜500である。
【0062】
第1の正孔輸送層のためのポリマー、特に、式Iまたは式IIを有するポリマーは、一般に、3つの知られている合成経路によって調製することができる。第1の合成方法では、非特許文献3に記載されているように、モノマー単位のジハロまたはジトリフレート誘導体を、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)などの化学量論量の0価のニッケル化合物と反応させる。第2の方法では、非特許文献4に記載されているように、2価のニッケルイオンを0価のニッケルに還元することが可能な化学量論量の材料の存在下、モノマー単位のジハロまたはジトリフレート誘導体を、触媒量のNi(II)化合物と反応させる。適切な材料には、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、およびリチウムが含まれる。第3の合成方法では、特許文献6および7に記載されているように、テトラキス(トリフェニルホスフィン)Pdなどの0価のパラジウム触媒の存在下、1つのモノマー単位のジハロまたはジトリフレート誘導体を、ボロン酸、ボロン酸エステル、およびボランから選択された2個の反応性基を有する別のモノマー単位の誘導体と反応させる。
【0063】
いくつかの実施形態では、第2の正孔輸送層は、下記のP1からP5までからなる群から選択されたポリマーを含む。
【0064】
【化3】

【0065】
【化4】

【0066】
いくつかの実施形態では、第1の正孔輸送層が、上記にて論じられた溶液堆積法によって形成される。
【0067】
5.第2の正孔輸送層
上記にて論じられた任意の正孔輸送材料は、第2の正孔輸送層に使用することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、第2の正孔輸送材料が小分子である。いくつかの実施形態では、小分子正孔輸送材料は、トリアリールアミン基、例えばNPB、TPD、CBP、MTDATA、およびmCPを有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、第2の正孔輸送材料が、下記の化合物から選択される。
【0070】
【化5】

【0071】
いくつかの実施形態では、第2の正孔輸送材料は、気相成長プロセスによって付着される。いくつかの実施形態では、材料は、真空蒸発によって付着される。
【0072】
6.光活性材料
いくつかの実施形態では、光活性材料がエレクトロルミネセンスであり、赤、緑、および青の発光色を有する材料から選択される。エレクトロルミネセンス材料には、小分子有機蛍光化合物、蛍光および燐光金属錯体、複合ポリマー、およびこれらの混合物が含まれる。蛍光化合物の例には、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、これらの誘導体、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定するものではない。金属錯体の例には、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq3)などの金属キレートオキシノイド化合物;Petrov他の特許文献8と、特許文献9および10に開示されているような、フェニルピリジン、フェニルキノリン、またはフェニルピリミジン配位子を有するイリジウムの錯体や、例えば特許文献11、12、および13に記載されているような有機金属錯体、およびこれらの混合物などの、シクロメタル化イリジウムおよび白金エレクトロルミネセンス化合物が含まれるが、これらに限定するものではない。電荷担持ホスト材料および金属錯体を含むエレクトロルミネセンス放出層が、Thompson他による特許文献14と、BurrowsおよびThompsonによる特許文献15および16に記載されている。複合ポリマーの例には、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、これらのコポリマー、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0073】
いくつかの実施形態では、EL材料が、ホスト材料と共に存在する。いくつかの実施形態では、ホストが電荷担持材料である。EL/ホスト系では、EL材料を、小分子またはポリマーにすることができ、ホストは独立に、小分子またはポリマーにすることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、EL材料が、イリジウムのシクロメタル化錯体である。いくつかの実施形態では、錯体は、フェニルピリジン、フェニルキノリン、およびフェニルイソキノリンから選択された2つの配位子を有し、第3の配位子は、β−ジエノレートである。配位子は、置換されていなくてもよく、あるいは、F、D、アルキル、CN、またはアリール基で置換されていてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、EL材料は、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、およびポリスピロビフルオレンからなる群から選択されたポリマーである。
【0076】
いくつかの実施形態では、EL材料は、非高分子スピロビフルオレン化合物およびフルオランテン化合物からなる群から選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、EL材料は、アリールアミン基を有する化合物である。いくつかの実施形態では、EL材料は、下記の式から選択される
【0078】
【化6】

【0079】
(式中、
Aは、それぞれの場合に、同じまたは異なっており、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Qは、単結合、または3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
nおよびmは、独立に、1〜6の整数である)。
【0080】
上記式のいくつかの実施形態では、各式におけるAおよびQの少なくとも一方が、少なくとも3個の縮合環を有する。いくつかの実施形態では、mおよびnは、1に等しい。いくつかの実施形態では、Qは、スチリルまたはスチリルフェニル基である。
【0081】
いくつかの実施形態では、EL材料は、下記の式を有する
【0082】
【化7】

【0083】
(式中、
Yは、それぞれの場合に、同じまたは異なっており、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Q’は、芳香族基、2価のトリフェニルアミン残基、または単結合である)。
【0084】
いくつかの実施形態では、EL材料はアリールアセンである。いくつかの実施形態では、EL材料は非対称アリールアセンである。
【0085】
いくつかの実施形態では、EL材料はクリセン誘導体である。「クリセン」という用語は、1,2−ベンゾフェナントレンを意味するものとする。いくつかの実施形態では、EL材料は、アリール置換基を有するクリセンである。いくつかの実施形態では、EL材料は、アリールアミノ置換基を有するクリセンである。いくつかの実施形態では、EL材料は、2個の異なるアリールアミノ置換基を有するクリセンである。いくつかの実施形態では、クリセン誘導体は、深青発光を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、EL材料は、下記の式、
【0087】
【化8】

【0088】
およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0089】
いくつかの実施形態では、ホストは、ビス縮合環状芳香族化合物である。
【0090】
いくつかの実施形態では、ホストは、アントラセン誘導体化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は、下記の式、
An−L−An
を有する
(式中、
Anは、アントラセン部分であり、
Lは、2価の連結基である)。
【0091】
この式のいくつかの実施形態では、Lは、単結合、−O−、−S−、−N(R)−、または芳香族基である。いくつかの実施形態では、Anは、モノまたはジフェニルアントリル部分である。
【0092】
いくつかの実施形態では、ホストは、下記の式、
A−An−A
を有する
(式中、
Anは、アントラセン部分であり、
Aは、芳香族基である)。
【0093】
いくつかの実施形態では、ホストは、下記の式を有するアントラセン誘導体である
【0094】
【化9】

【0095】
(式中、
1およびA2は、それぞれの場合に、同じまたは異なっており、H、芳香族基、およびアルケニル基からなる群から選択され、あるいはAは、1個または複数の縮合芳香環を表してもよく、
pおよびqは、同じまたは異なっており、1〜3の整数である)。
【0096】
いくつかの実施形態では、アントラセン誘導体は非対称である。いくつかの実施形態では、p=2およびq=1である。いくつかの実施形態では、A1およびA2の少なくとも一方がナフチル基である。
【0097】
場合によっては、ホスト材料は発光性であり、光活性層のエミッタとして単独で使用することができる。いくつかの実施形態では、ホストは、光活性層のエミッタとしての別のホストと組み合わせて使用することができる。
【0098】
7.その他の層
デバイス中のその他の層は、そのような層で有用であることが知られている任意の材料で作製することができる。アノードは、正電荷キャリアを注入するのに特に効率的な電極である。このアノードは、例えば、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合金属酸化物を含有する材料で作製することができ、あるいは、導電性ポリマー、およびこれらの混合物にすることができる。適切な金属には、第11族の金属、第4、5、および6族の金属と、第8、10族の遷移金属が含まれる。アノードが光透過するものである場合は、一般に、酸化インジウムスズなどの第12、13、および14族の金属の混合金属酸化物が使用される。アノードは、非特許文献5に記載されているようなポリアニリンなどの有機材料を含んでもよい。少なくともアノードおよびカソードの一方は、発生した光を観察することができるように、少なくとも部分的に透明であるべきである。
【0099】
電子輸送層140で使用することができる電子輸送材料の例には、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq3)やテトラキス−(8−ヒドロキシキノラート)ジルコニウム(Zrq4)などの金属キレートオキシノイド化合物;および2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)や3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)や2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナトロリン;およびこれらの混合物が含まれる。
【0100】
カソードは、電子または負電荷キャリアを注入するのに特に効率的な電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有する任意の金属または非金属にすることができる。カソード用の材料は、第1族のアルカリ金属(例えば、Li、Cs)第2族(アルカリ土類)の金属、第12族の金属、希土類元素およびランタニド、およびアクチニドを含めた金属から選択することができる。アルミニウムやインジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム、およびマグネシウムなどの材料、ならびにこれらの組合せを使用することができる。Li含有有機金属化合物、LiF、およびLi2Oも、動作電圧を低下させるために、有機層とカソード層との間に堆積することができる。この層を、電子注入層と呼んでもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、種々の層が下記の範囲の厚さ(単位:Å)を有する:アノード、500〜5000Å、いくつかの実施形態では1000〜2000Å;第1の正孔輸送層、50〜2000Å、いくつかの実施形態では100〜1000Å;第2の正孔輸送層、10〜2000Å、いくつかの実施形態では50〜200Å;光活性層、10〜2000Å、いくつかの実施形態では100〜1000Å;任意選択の電子輸送層、50〜2000Å、いくつかの実施形態では100〜1000Å;カソード、200〜10000Å、いくつか実施形態では300〜5000Å。デバイスにおける電子−正孔再結合ゾーンの位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対的な厚さに影響される可能性がある。したがって電子輸送層の厚さは、電子−正孔再結合ゾーンが発光層内にあるように選択すべきである。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の性質そのものに左右されることになる。
【0102】
いくつかの実施形態では、デバイスは、下記の構造、即ちアノード、緩衝層、第1の正孔輸送層、第2の正孔輸送層、光活性層、電子輸送層、電子注入層、カソードを、この順序で有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、デバイスは、緩衝層、第1の正孔輸送層、および光活性層の液相成長によって、かつ第2の正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、およびカソードの気相成長によって製作される。
【0104】
いくつかの実施形態では、デバイスは、緩衝層および第1の正孔輸送層の液相成長によって、かつ第2の正孔輸送層、光活性層、電子輸送層、電子注入層、およびカソードの気相成長によって製作される。
【0105】
(実施例)
本明細書で記述される概念について、特許請求の範囲に記載される対象の範囲を限定することのない下記の実施例で、さらに記述する。
【実施例1】
【0106】
実施例1は、ポリマーP2の調製を示す。
【0107】
【化10】

【0108】
ビス(1,5−シクロオクタジエン)−ニッケル−(0)(1.667g、6.06mmol)を、2,2’−ビピリジル(0.946g、6.06mmol)および1,5−シクロオクタジエン(0.656g、6.06mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(無水物、6mL)溶液に添加した。得られた混合物を、30分間60℃に加熱した。次いで、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(0.658g、1.20mmol)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(0.776g、1.20mmol)、N,N’−ビス(4−クロロフェニル)−3−ビニルアニリン(0.204g、0.60mmol)のトルエン(無水物、25mL)溶液を、攪拌中の触媒混合物に素早く添加した。混合物を、60℃で10時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却した後、この混合物を激しく攪拌しながら、500mLのメタノール中にゆっくりと注ぎ、一晩攪拌した。さらに濃HClを20mL添加し、1時間攪拌した。沈殿物を濾過し、次いでトルエン125mLに添加し、濃HClを25mL含有している1:1のメタノール:アセトン溶液1Lにゆっくり注いだ。得られた黄色の沈殿物を30分間攪拌し、次いで濾過によって分離した。固体を、クロマトグラフィー(シリカ、トルエン)によってさらに精製し、酢酸エチルから精製した。得られた材料を真空中で乾燥した後、薄黄色のポリマーが80%の収率(0.97g)で単離された。GPC(THF、室温):Mn=60616;Mw=365589;Mw/Mn=5.98。
【0109】
ポリマーP3およびP4は、ビス(4−クロロフェニル)−3−ビニルアニリンの代わりの2,7−ジブロモ−9,9’−(p−ビニルベンジル)−フルオレンと、反応物質の適切な比とを使用して、同様の手法で作製した。
【実施例2】
【0110】
実施例2は、2層HTLを使用した有機発光ダイオード(「OLED」)の形成を示す。
【0111】
OLEDデバイスを、溶液処理および熱蒸発技法の組合せによって製作した。50nmの酸化インジウムスズを有するガラス基板をアノードとして使用した。この基板をパターニングし、uv−オゾン中で清浄化した。
【0112】
デバイス製作の直前に、清浄化されパターニングされたITO基板を、UV−オゾンで10分間処理した。冷却直後に、緩衝剤1の水性分散液をITO表面にスピンコートし、加熱して溶媒を除去した。次いで基板をベークし、ドライボックスに移し、その内部でその他すべての操作を実施した。第1の正孔輸送層を形成するために、冷却後、基板に正孔輸送ポリマーP3の0.4%w/vトルエン溶液をスピンコートし、次いで加熱して溶媒を除去し、架橋を行って、20nmの厚さを層を得た。次いで基板をマスクし、真空チャンバ内に置いた。次いで第2の正孔輸送層を、NPB層を蒸発させることによって形成し、それによって6nmの層を形成した。光活性層を形成するために、エミッタ2:エミッタ1が13:1w/wの混合物を同時蒸発させて、39nmの厚さにした。この層では、エミッタ2がホストとして作用した。
【0113】
20nmのAIQ層を熱蒸発によって堆積し、それによって電子輸送層を形成した。この後、1nmのフッ化リチウム層を形成した。100nmのAlオーバコートを気相成長させて、カソードを形成した。このデバイスを、ガラスの蓋、ゲッターパック、およびUV硬化性エポキシを使用して封入した。
【0114】
OLEDサンプルは、その(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネセンスの輝度対電圧、および(3)エレクトロルミネセンスのスペクトル対電圧を測定することによって特徴付けた。3種の測定すべては、同じ時間で行い、コンピュータにより制御した。ある電圧でのデバイスの電流効率は、LEDのエレクトロルミネセンス輝度を、デバイス作動に必要とされる電流密度で割ることによって決定した。単位はcd/Aである。電力効率は、電流効率を動作電圧で割った値である。単位はlm/Wである。
【0115】
デバイスの製作で使用された材料を、以下に列挙し、その結果を表1に示す。
【0116】
緩衝液1:
ポリピロールと、高分子フッ素化スルホン酸との水性分散液。この材料は、特許文献3の実施例1に記載されているものと同様の手順を使用して調製した。
【0117】
NPB:
N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン
【0118】
【化11】

【実施例3】
【0119】
実施例3は、2層HTLを使用した有機発光ダイオード(「OLED」)の形成を示す。
【0120】
OLEDは、下記の材料を使用して、実施例2で述べた手順に従って調製した:
緩衝層=緩衝液1
第1の正孔輸送層=正孔輸送ポリマーP4
第2の正孔輸送層=NPB
光活性層=ホスト1:ドーパント1が13:1
電子輸送層=AIQ
電子注入層=LiF
カソード=Al。
【0121】
ホスト1およびドーパント1は、青色のホストおよびドーパントとして出光興産(株)(日本、千葉)から提供される。
【0122】
デバイス特徴付けのデータを、表1にまとめる。
【0123】
比較例A
この比較例は、単一の高分子正孔輸送層で作製されたOLED示す。
【0124】
デバイスは、第2の正孔輸送層を省略したこと以外、実施例3の手順および材料を使用して作製した。単一の正孔輸送層は、ポリマーP4であった。
【0125】
デバイス特徴付けのデータを、表1にまとめる。
【0126】
比較例B
この比較例は、単一の小分子正孔輸送層で作製されたOLEDを示す。
【0127】
デバイスは、第1の正孔輸送層を省略したこと以外、実施例3の手順および材料を使用して作製した。単一の正孔輸送層は、気相成長させたNPBであった。
【0128】
デバイス特徴付けのデータを、表1にまとめる。
【0129】
【表1】

【実施例4】
【0130】
この実施例は、深青発光を有するOLEDについて示す。
【0131】
OLEDは、光活性層が、厚さ34nmのエミッタ2層だけであること以外、実施例2の手順および材料を使用して製作した。
【0132】
このデバイスは、700ニットで1.6cd/Aの効率を有し、寿命(予測)は700ニットで3500時間であった。色座標は、x=0.152およびy=0.076であった。
【0133】
概略的な記述または実施例において既に述べた作用の必ずしもすべてを必要とするものではなく、特定の作用の一部しか必要としなくてもよく、1つまたは複数の別の作用を、記述された内容の他にも発揮できることに留意されたい。さらに、作用が列挙される順序は、必ずしもこれらの作用が発揮される順序である必要はない。
【0134】
前述の明細書では、その概念について、特定の実施形態を参照しながら述べてきた。しかし当業者なら、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができることが理解されよう。したがって、明細書および図は、制限することを意味するのではなく例示を意味すると見なされ、そのような修正のすべては、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0135】
利益、その他の利点、および問題の解決策については、特定の実施形態に関して既に述べてきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決策と、任意の利益、利点、または解決策をもたらしあるいはより顕著なものにすることができる任意の特徴とは、いずれかまたはすべての特許請求の範囲の極めて重要な、必要とされる、または不可欠な特徴であると解釈すべきではない。
【0136】
明確にするために、本明細書の別々の実施形態の文脈に記述されているある特徴は、これらを組み合わせた状態で単一の実施形態に示すこともできると理解すべきである。逆に言えば、簡略化するために、単一の実施形態の文脈に記述されている様々な特徴は、別々にまたは任意の部分組合せの状態で示すこともできる。さらに、ある範囲ごとに示された値に言及する場合は、その範囲内のそれぞれの値およびすべての値が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】有機電子デバイスの1つのタイプの例示を含む図である。
【図2】(A)単一の正孔輸送層を有するデバイスと、(B)第1および第2の正孔輸送層を有するデバイスに関する、概略的なエネルギー準位図を含んだ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、光活性層、およびカソードを含み、前記アノードと前記光活性層との間には、
緩衝層と、
第1の正孔輸送層と、
第2の正孔輸送層と
が配置されていることを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記緩衝層は、導電性ポリマーおよびフッ素化酸ポリマーを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記第1の正孔輸送層は、高分子正孔輸送材料を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、
前記高分子正孔輸送材料は、ジスチリルアリール化合物を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスであって、
前記ジスチリルアリール化合物のアリール基は、アセンであることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項3に記載のデバイスであって、
前記高分子正孔輸送材料は、(i)アリールアミンと、(ii)フルオレンおよびアリールアミンモノマーを含むコポリマーとからなる群から選択された材料を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項3に記載のデバイスであって、
前記高分子正孔輸送材料は、架橋性基を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記第2の正孔輸送層は、気相成長された小分子材料を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記第2の正孔輸送層は、下式から選択された小分子材料を含むことを特徴とするデバイス。
【化1】

【請求項10】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記第2の正孔輸送層は、ポリマーを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のデバイスであって、
前記ポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンモノマーと、トリフェニルアミン、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニル、TPB、およびNPBから選択されたモノマーとのコポリマーであることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のデバイスであって、
前記ポリマーは、(ビニルフェニル)ジフェニルアミン、および9,9−ジスチリルフルオレン、または9,9−ジ(ビニルベンジル)フルオレンから選択されたコモノマーを含む第3のモノマーを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項10に記載のデバイスであって、
前記第2の正孔輸送層は、下記の式Iを有するポリマーを含むことを特徴とするデバイス。
【化2】


[式中、a、b、およびcは、ポリマー中のモノマーの相対的な比率を表し、かつ0以外の整数であり;nは、少なくとも2である0以外の整数である。]
【請求項14】
請求項13に記載のデバイスであって、
a、b、およびcは、1〜10の範囲内の値を有することを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項13に記載のデバイスであって、
比a:b:cは、(1〜4):(1〜4):(1〜2)の範囲を有し、nは、2〜500の範囲内の値を有することを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項13に記載のデバイスであって、
比a:b:cは、(2〜7):(2〜7):(1〜3)の範囲を有し、nは、2〜500の範囲内の値を有することを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項10に記載のデバイスであって、
前記第2の正孔輸送層は、下記の式P1からP5までを有する材料を含むことを特徴とするデバイス。
【化3】


【化4】

【請求項18】
アノードと、
光活性層と、
カソードと
を含み、前記光活性層がアントラセン誘導体を含むことを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載のデバイスであって、
前記アントラセン誘導体は、下式を有することを特徴とするデバイス。
【化5】


[式中、A1およびA2は、それぞれの場合に、同じまたは異なっており、H、芳香族基、およびアルケニル基からなる群から選択され、あるいはAは、1個または複数の縮合芳香環を表していてもよく;
pおよびqは、同じまたは異なっており、1〜3の整数である。]
【請求項20】
請求項19に記載のデバイスであって、
前記デバイスは、深青発光色を有することを特徴とするデバイス。
【請求項21】
アノードと、
緩衝層と、
第1の正孔輸送層と、
第2の正孔輸送層と、
光活性層と
を含み、前記光活性層がビス(ジアリールアミノ)クリセン誘導体を含むことを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項22】
請求項21に記載のデバイスであって、
前記ビス(ジアリールアミノ)クリセンは、下式を有することを特徴とするデバイス。
【化6】

【請求項23】
請求項21に記載のデバイスであって、
深青発光色を有することを特徴とするデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−98615(P2008−98615A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−218775(P2007−218775)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】