説明

有機電界発光層の蒸着源

【課題】蒸着源の開口の温度が低下する部分で、蒸発した蒸着材料が堆積することを防止
する。
【解決手段】内部に蒸着材料が収納されているセル41と、セル上部に設けられ、蒸着材料の蒸気排出用開口が形成されたセルキャップ42と、セル外側に位置し、セル外側に設けられた加熱手段43Aを支持する側壁部材43と、側壁部材上端に固定された状態でセルキャップ上に密着されて配置され、蒸気排出用開口42Aと対応する位置に開口が形成された蓋45とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光層の蒸着のための蒸着源に関し、特に、外部への熱発散を抑制して、蒸着材料の蒸気が放出される開口の目詰まりを防止できる蒸着源に関するものである。
【0002】
熱的、物理的真空蒸着は、基板表面に蒸着材料(有機材料)を放射することによって発光層を形成する技術である。容器内に収納された蒸着材料は、気化温度まで加熱され、容器の外へ放出された後、基板上に被覆される。このような蒸着工程は、蒸着材料を収納する容器及び被覆される基板を備えた、10-7〜10-2トルの圧力が維持されるチャンバー内で行われる。
【0003】
一般に、蒸着材料を収納する容器である蒸着源は、電流が壁(部材)を流れる時、温度が上昇する電気抵抗材料で作られる。蒸着源に電流が印加されれば、その内部の蒸着材料は、蒸着源の壁からの放射熱及び壁との接触からの伝導熱によって加熱される。蒸着源の上部表面(セルキャップ)には、気化された材料蒸気が外部へ排出される蒸気排出開口(vapor efflux aperture)が形成されている。
【0004】
図1は、蒸着源を備えた従来の蒸着装置の内部構成を示した断面図であり、蒸着装置のチャンバー3内部に取り付けられた蒸着源1、及び蒸着源1の上部に取り付けられている基板2を示している。
【0005】
発光層が蒸着される基板2は、チャンバーの上部プレート3−1に取り付けられているが、この基板2は固定された状態で取り付けられることもできるが、その幅方向へ移動自在に取り付けられることもある。基板2を上部プレート3−1に対して水平運動(直線運動)自在に装着させる構成は一般的であるので、それらに対する説明は省略する。
【0006】
蒸着源1は、チャンバー3の底面3−2に固定された絶縁構造体4上に取り付けられており、電源を供給するためのケーブルが接続されている。一方、この蒸着源1は絶縁構造体4上に固定された状態で取り付けられることもできるが、基板2の幅方向に水平運動(直線運動)自在に装着できる。蒸着源1を絶縁構造体4に対して水平運動自在に装着させる構成は一般的であるので、それらに対する説明は省略する。
【0007】
図1には、蒸着源1の内部空間で気化された材料蒸気を基板2に向かって、外部へ放出させるための蒸気排出開口1A−1が、セルキャップに形成されていることを図示されている。一般に、前記説明の機能を遂行する蒸着源1は、全体形状及び蒸気排出開口1A−1(以下、便宜上、"開口"と称する)の形状によって、ポイント蒸着源(point deposition source)及び線形蒸着源(linear deposition source)に区分される。
【0008】
ポイント蒸着源の全体形状は円筒状であり、セルキャップに形成された開口は円状からなる。また、線形蒸着源は六面体の形状を有し、セルキャップには部材の長手方向に所定幅の開口が形成されている。
ポイント蒸着源と線形蒸着源は、蒸着工程の条件、基板の条件又は形成される蒸着膜の形態等を考慮して、その使用が決められる。以下では、便宜上ポイント蒸着源を例に挙げて説明する。
【0009】
図2は、一般的なポイント蒸着源の断面図であり、円筒状のセル1C、円板状の底部材1D及びセルキャップ1Aからなるポイント蒸着源1の構成を図示している。セルキャップ1A、セル1C及び底部材1Dによって形成される内部空間には、蒸着材料Mである有機物質が収納されている。
【0010】
セル1Cと側壁部材1Bとの間の空間には、セル1Cの内部空間に収納された蒸着材料Mを加熱するための手段1B−1(例えば、電源に接続された発熱コイル)が配置されている。この加熱手段1B−1は、セル1Cの全高に亘って取り付けられている。これにより、蒸着材料M全体に熱を供給することができる。
【0011】
セルキャップ1Aの中央部には開口1A−1が形成され、側壁部材1Bに取り付けられた加熱手段1B−1より発生された熱によって加熱、気化された蒸着材料Mの蒸気は、この開口1A−1を介して外部、すなわち基板(図1の2)に向かって放出される。この開口1A−1の直径は、蒸着源1の直径に比べて極めて小さいため、流体を高速で分散させるノズルの機能を果たすことになる。即ち、断面積の広い内部空間で発生された蒸着材料Mの蒸気は、狭い面積の開口1A−1を通過する過程でその流速が速くなり、圧力が低くなる。これにより、効率的な材料蒸気の分散が行われ得る。
【0012】
このように、材料蒸気が排出される開口1A−1周辺の温度は、材料蒸気が生成される内部空間の温度より顕著に低くなる。即ち、セルキャップ1Aは、別途の加熱手段を備えておらず、また外部に露出された状態であるので、内部空間からセルキャップ1Aに伝えられた熱を外部へ発散させるしかなく、従って、内部空間の温度と比較して低い温度を示すしかない。
【0013】
開口1A−1周辺の低い温度によって、開口1A−1を介して排出される材料蒸気の一部が、開口1A−1周辺で凝固する現状が生じる。蒸着工程が進むにつれて、開口1A−1周辺での蒸着材料の蒸気が凝固して堆積し、蒸着材料の蒸気の円滑な排出が妨げられ、基板2表面での蒸着膜形成に大きな影響を及ぼすことになる。特に、ひどい場合には、蒸着材料の蒸気の凝固物によって開口1A−1の目詰まり現状を生じることがある。
【0014】
このような開口1A−1周辺での蒸着材料の蒸気の凝固現状を防止するために、開口周辺、すなわちセルキャップ1Aの温度を一定の水準以上に保持しなければならず、このために図2に示したように、側壁部材1Bの上端に金属性材質の円板状蓋1Eを設けた構造を利用している。
【0015】
側壁部材1Bの上端に固定された蓋1Eは、セルキャップ1A上に位置し、セルキャップ1Aとは一定の間隔を維持する。蓋1Eにはセルキャップ1Aに形成された開口1A−1と対応する位置に蒸着材料の蒸気排出用開口1E−1が形成されている。従って、内部空間からセルキャップ1Aに伝えられた熱が、この蓋1Eによって外部への発散が遮断され、セルキャップ1Aは、ある程度の温度を保持することができるものとして考慮されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、この蓋1Eは金属性の材料で構成されているため、セルキャップ1Aから伝えられた熱が外部へ発散されるしかなく、セルキャップ1Aから継続的に熱が伝えられる。結局、熱発散を遮断するための蓋1Eを設けたにもかかわらず、セルキャップ1Aは適切な温度を保持することができず、セルキャップ1Aの開口1A−1周辺に、材料蒸気が凝固する現状を完璧に防止することができない問題点がある。
【0017】
そこで、本発明は、セルキャップに形成された開口周辺に、材料蒸気が凝固されることを防止するためのもので、加熱手段から開口が形成されたセルキャップに伝えられた熱が外部へ発散されることを抑制し、セルキャップが適切な温度を保持することができる蒸着源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の他の態様に係る蒸着源は、内部に蒸着材料が収納されているセルと、セル上部に設けられ、材料蒸気排出用開口が形成されたセルキャップと、セル外側に位置し、セル外側に設けられた加熱手段を支持する側壁部材と、側壁部材上端に固定された状態で前記セルキャップ上に密着されて位置し、蒸気排出用開口と対応する位置に開口が形成された蓋と、を含む。
【0019】
これにより、蒸着材料の蒸気が外部へ排出され、基板表面に蒸着材料層が形成される間、セルキャップは、常に適切な温度が保持され、蒸気排出開口周辺に材料蒸気が凝固されることがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、蒸着材料の蒸気が外部へ排出され、基板表面に蒸着材料層が形成される間にセルキャップは常に適切な温度が保持され、蒸気排出開口周辺に材料蒸気が凝固されない。上部リフレクターと下部リフレクターは離隔された状態を維持し、上部リフレクターの底面には多数の突起が、下部リフレクターの上部には多数の凹部が形成され、対応する上部リフレクターの各突起を収容する。
【0021】
また、加熱手段より発生された熱が蓋を介してセルキャップに伝えられ、蒸着材料の蒸気が外部へ排出され、基板表面に蒸着材料層が形成される間にセルキャップは常に適切な温度が保持され、蒸気排出開口周辺に材料蒸気が凝固されない。
一方、蓋の上部表面には蓋の開口と対応する位置に開口が形成された熱遮断層が形成され、この熱遮断層によって蓋に伝えられた熱は外部へ放出されずセルキャップに伝えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
添付図面を参照して好ましい実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図3は本発明の第1の実施例に係るポイント蒸着源の断面図である。本実施例に係るポイント蒸着源10は、円筒状のセル11、蒸着材料の蒸気排出用開口12Aが形成されたセルキャップ12、円筒状の側壁部材13及び底部材14からなる。セル11と側壁部材13と間には、加熱手段13Aが配置されている。
【0024】
側壁部材13上端に固定された円板状の蓋15は、セルキャップ12上に位置し、セルキャップ12とは一定の間隔を維持する。セルキャップ12に形成された蒸気排出用開口12Aは、蓋15に形成された開口15Aと対応している。
【0025】
本実施例に係る蒸着源10の最大の特徴は、側壁部材13上端部の内周面に熱遮断板16を固定させた点である。熱遮断板16は蓋15とセルキャップ12と間に形成された空間に位置し、蓋15及びセルキャップ12とは水平状態を維持する。
【0026】
一方、図3では熱遮断板16の一端が側壁部材13に固定された蓋15の内周面に固定された状態を示すが、熱遮断板16表面と蓋15の底面に多数の支持ロッド(未図示)両端をそれぞれ固定することによって、蓋15とセルキャップ12と間に熱遮断板16を位置させることもできる。
【0027】
一方、熱遮断板16の中央部には、一定のサイズを有する開口が形成され、この開口は、蓋15及びセルキャップ12にそれぞれ形成された蒸気排出用開口15A,12Aにそれぞれ対応して配置されている。従って、セルキャップ12の開口12Aを介して排出された蒸着材料の蒸気は、熱遮断板16に形成された開口及び蓋15に形成された開口15Aを介して外部(基板)へ放出される。
このような形態で設けられた熱遮断板16の機能は、セルキャップ12の熱が外部へ発散されるのを防止するものである。
【0028】
前述したように、セルキャップ12の内部空間、すなわち蒸発材料の蒸気の気化作用が行われる空間からセルキャップ12に熱が伝えられ、セルキャップ12に伝えられた熱はその上に位置する金属性の蓋15に伝えられる。しかし、セルキャップ12上に位置している熱遮断板16は、セルキャップ12から蓋15に伝えられる熱を遮断する。したがって、熱遮断板16とセルキャップ12と間に形成された空間の温度は、熱遮断板16と蓋15と間に形成された空間内の温度よりは高く保持され得る。
【0029】
セルキャップ12から発散された熱は、熱遮断板16によって外部、すなわち蓋15に発散(伝達)できなくなり、結局、ほとんどの熱はセルキャップ12に再び伝えられる。したがって、セルキャップ12及びその中央部に形成された開口12A周辺部の温度が一定に保持されることで、開口12A周辺の温度低下によって開口周辺に材料蒸気が凝固する現状を防止することができる。
熱遮断板16は、その目的上、例えば、SUS系の材料又はタンタルのような熱伝達率の低い材料のものが好ましい。
【0030】
一方、本説明では、ポイント蒸着源を例に挙げて説明したが、セルキャップがヒーターとして作用しない線形蒸着源にも同様に適用することができることは勿論である。
以上のような本実施例に係る蒸着源は、蒸着源のセルキャップと金属性の蓋と間の空間に熱伝導率の低い材料からなる遮断板を配置することで、セルキャップから外部へ発散される熱を遮断し、セルキャップに熱を伝達させて開口周辺の温度を適切に保持することができる。したがって、開口を介して外部へ排出される蒸気が温度低下によって、開口周辺に凝固する現象を效果的に防止することができる。
【実施例2】
【0031】
図4は、本発明の第2の実施例に係るポイント蒸着源の断面図である。本実施例に係るポイント蒸着源20も、蒸着材料Mが収納された円筒状のセル21、その内側に加熱手段23A(例えば、発熱コイル)が取り付けられた円筒状の側壁部材23、円板状の底部材24及び蒸着材料の蒸気排出用開口22Aが形成されたセルキャップ22からなる。
【0032】
本実施例に係る蒸着源20の最大の特徴は、セルキャップ22上に位置した蓋25の上部に、2つのリフレクター26及び27を配置したことである。これをさらに詳しく説明すれば次の通りである。
【0033】
側壁部材23上端に固定された円板状の蓋25は、セルキャップ22表面に密着された状態で取り付けられ、蓋25上には、下部及び上部リフレクター26,27が積層状態で配置される。下部リフレクター26は蓋25の表面に密着され、上部リフレクター27は下部リフレクター26と一定の間隔を維持するように配置される。
【0034】
図5は上部リフレクターの底面図、図6は図4の"A"部分の詳細図であり、全体的に同じ形状を有する上部リフレクター27と下部リフレクター26の構成、そして両リフレクター26,27の相互関係を示している。
【0035】
円板状の上部リフレクター27と下部リフレクター26の中央部には、セルキャップ22及び蓋25の中央部に形成された蒸気排出用開口22A(蓋25に形成された開口は図面符号が付されていない)と対応する開口27A(下部リフレクター26に形成された開口は図面符号が付されていない)がそれぞれ形成されている。これにより、上部リフレクター27と下部リフレクター26は蒸気排出の機能に影響を及ぼさない。
【0036】
図5に示したように、上部リフレクター27の底面には多数の垂直突起27Bが形成され、各垂直突起27Bの下端面は最小限の面積を有する形状からなる。また、図6で分かるように、下部リフレクター26の上部には、多数の凹部26Bが形成され、それぞれの凹部26Bは、上部リフレクター27の各垂直突起27Bと対応して形成される。
【0037】
蓋25の表面上に位置する下部リフレクター26上に上部リフレクター27を配置する場合、上部リフレクター27の各垂直突起27Bは、下部リフレクター26の各凹部26B内に収容され、各垂直突起27Bと各凹部26Bの底面は、図5及び図6に示すように点接触をなす。
【0038】
一方、下部リフレクター26上部に形成された各凹部26Bは、円周方向への長軸、半径方向への短軸を有する楕円形からなる。蒸着装置には、多数の蒸着源が円形に配置され、その中央点を中心に円形の経路に沿って移動しながら蒸着蒸気を放出する。このような条件下で、蓋25表面と共に円周方向に移動する下部リフレクター26に対する上部リフレクター27の相対運動を補償するために、すなわち凹部26B底面と点接触をなす垂直突起27Bが、下部プレート26の移動時、凹部26B内から離脱しないように各凹部26Bを楕円形に作られる。
【0039】
以上のような構成を有する蒸着源でのリフレクター26,27の機能を説明すれば、次の通りである。
蒸着源の内部空間からセルキャップ22及び蓋25に伝えられた熱は、下部リフレクター26によって外部への発散が遮断され、セルキャップ22は、ある程度の温度を保持するようになる。ここで、上部リフレクター27は、多数の垂直突起27Bによって下部リフレクター26と所定の間隔を維持しているため、下部リフレクター26に伝えられた熱は、上部リフレクター27には伝えられない。特に、上部リフレクター27底面の多数の垂直突起27Bと下部リフレクター26の各凹部26Bとは点接触をなすので、上部リフレクター27に伝えられる熱の量は極めて微量である。
【0040】
このような上部及び下部リフレクター27,26によって蒸着源外部への熱の放出が最小となり、結果的に上部リフレクター27と下部リフレクター26下部に位置する蓋25及びセルキャップ22は、常に一定の温度を保持し、セルキャップ22の開口周辺22Aに蒸着材料の蒸気が凝固する現状を、完璧に防止することができる。
【0041】
上述した上部リフレクター27底面の垂直突起27Aと、下部リフレクター26表面の凹部26Bの数は限定されないが、下部リフレクター26上で上部リフレクター27が安全な状態で保持されるために、その数は少なくても3つ以上有することが好ましい。
【0042】
以上のような本実施例に係る蒸着源は、セルキャップ上に下部リフレクター及び下部リフレクターと点接触をなす上部リフレクターを順次に位置させることで、蒸着源外部への熱放出を抑制してセルキャップの温度を保持することができるので、蒸着材料の蒸気の凝固現状を防止することができ、蒸着源の機能を維持することができる。
【実施例3】
【0043】
図7は本発明の第3の実施例に係るポイント蒸着源の断面図、図8は図7の"B"部分の詳細図である。本実施例に係るポイント蒸着源30も、円筒状のセル31、材料蒸気排出用開口32Aが形成されたセルキャップ32、円筒状の側壁部材33及び底部材34からなる。セル31と側壁部材33と間には加熱手段33Aが配置されている。
【0044】
本実施例に係る蒸着源30の最大の特徴は、セルキャップ32上に蓋を設けず、側壁部材33上端部の内周面に、単一のリフレクター35を固定させた点である。このリフレクター35は、セルキャップ32上に位置し、セルキャップ32とは水平状態を維持し、中央部には、セルキャップ32中央部に形成された開口32Aと対応する開口が形成されている。
【0045】
本実施例で用いられたリフレクター35は、セラミック又は熱伝逹率の低い金属からなる本体35B、この本体35Bの底面に形成された金属層35D、及びセルキャップ32との接触のための支持部材35Cから構成される。
【0046】
本実施例でのリフレクター35の最大の特徴は、リフレクターを構成する各部材の材質を異にして上部への熱伝逹率を低くし、かつ下部への熱放射率を高くして、セルキャップ32に伝達された熱が、外部へ発散するのを防止したことである。
【0047】
即ち、リフレクター35の本体35Bは、熱伝逹率の低いセラミック及び/または金属で製造してセルキャップ32からの熱の伝達を抑制する。また、リフレクター35の底面に熱放射率の低い金属層35Dを形成することによって、セルキャップ32から放射された熱を大部分反射させて、セルキャップ32の熱を保持することができる。
【0048】
セルキャップ32からの熱は、リフレクター35の支持部材35Cにも伝達する。このような支持部材35Cへの熱伝達を抑制又は防止するために支持部材35Cを熱伝逹率の低いセラミック及び/または金属で製造されている。
【0049】
このようなリフレクター35によって加熱手段33Aで発生され、セルキャップ32に伝えられた熱が外部へ発散されなくなり、セルキャップ32は適切な温度に保持することができる。したがって、セルキャップ32の開口32Aの温度も適切に保持され、開口32Aの目詰まりの現状を防ぐことができる。
【0050】
前記リフレクター35の支持部材35Cは本体35Bと一体形成できるが、セラミックの場合、本体35Bと支持部材35Cとを一体形成することが困難であるので、それぞれ別途製作し、ボルト形態又は強制挿入等の機械的な組立で製作することが好ましい。
【0051】
一方、支持部材35Cは、セルキャップ32と点接触形態で接触してリフレクター35を支持できる個数、例えば、4つ以上形成することができる。また、支持部材35Cは、セルキャップ32との接触を最小化するために、ピン形状とすることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0052】
前記リフレクター35の本体35B及び支持部材35Cは、ZrO2、Al23又はTiO2などのセラミック及び/またはMn又はTiなどの熱伝逹率の低い金属で形成することが好ましく、熱放射率の低い金属層35DはAu、Ag又はAlなどで製造することが好ましい。
【0053】
また、例えば、フレームスプレー方法、プラズマスプレー方法若しくはHVOF(high velocity oxygen-fuel)のような熱スプレー方法またはECM(electro chemical metalizing)若しくは電気鍍金(electroplating)方法を利用してセルキャップ32表面に金属層35Dを形成することができる。
【0054】
以上のように、本実施例は互いに異なる材料からなる部材を組合せて、リフレクターを構成することで外部への熱伝逹率を低くし、セルキャップへの熱放射率を高めることによって蒸着源のセルキャップの熱を效果的に確保し、開口周辺の温度を適切な値に維持することができる。これにより、開口を介して外部へ排出される蒸気が開口周辺に凝固する現状を效果的に防止することができる。
【実施例4】
【0055】
図9は、本発明の第4の実施例に係るポイント蒸着源の断面図である。本実施例に係るポイント蒸着源40は、円筒状のセル41、セル41の上端に取り付けられ、材料蒸気排出用開口42Aが形成されたセルキャップ42、円筒状の側壁部材43及び底部材44からなる。セル41と側壁部材43と間には加熱手段43Aが配置されている。
【0056】
側壁部材43上端に固定された蓋45は、セルキャップ42への熱伝逹が円滑に行われるように、セルキャップ42上に密着設置される。セルキャップ42に形成された蒸気排出用開口42Aと蓋45に形成された開口45Aは互い対応した状態である。
【0057】
蒸着源の加熱手段43Aより発生された熱は、金属性の蓋45に伝えられる。蓋45に伝えられた熱は、再び密着しているセルキャップ42に伝えられ、セルキャップ42の中心部に形成された蒸気排出用開口42Aは、伝えられた熱によって温度低下が生じない。
【0058】
また、図9に示すように、蓋45の開口45Aは、セルキャップ42の蒸気排出用開口42Aと同サイズのものが好ましい。加熱手段43Aによって発生した熱がセルキャップ42だけでなく、蓋45を介しても伝達され、效果的に蒸気排出用開口42Aの温度を一定に保持させる。
【0059】
図10は、図9のC部分の詳細図である。図10に示すように、蓋45の開口45Aとセルキャップ42の蒸気排出用開口42Aとが同サイズの場合、蒸着材料の蒸気が外部へ排出される過程で蓋45に付着されることを防止するために、開口45Aに向かって蓋45の厚さが順次減少されるようにすることが好ましい。これにより、開口45Aの縁は鋭いエッジを形成することになる。
【0060】
図11は本実施例に係るポイント蒸着源の他の構造を示す断面図である。本蒸着源の最大の特徴は、側壁部材43に固定された蓋45の上部表面に熱伝導率の低い材料からなる熱遮断層46を形成することである。この熱遮断層46も、蓋45に形成された開口45Aと対応する位置に、蒸着材料の蒸気が排出できる開口46Aが形成されている。
【0061】
蒸着源の加熱手段43Aより発生された熱は、金属性の蓋45に伝えられる。蓋45に伝えられた熱は、密着状態のセルキャップ42に伝えられ、蓋45上部面に形成された熱遮断層46は、蓋45に伝えられた熱が外部への放出を遮断する。
【0062】
蓋45に伝えられた熱は、熱遮断層46によって外部へ放出されなく、大部分の熱はセルキャップ42に伝えられる。これにより、蓋45から熱の伝達を受けたセルキャップ42は適切な温度を保持でき、蒸気排出用開口42A周辺の温度をも一定値に保持することで、蒸気排出用開口42Aの周辺に材料蒸気が凝固する現状を防止することができる。
【0063】
熱遮断層46は、熱伝導率の低い物質、例えば、Al23、TiO2、SiC、ZrO2等のようなセラミック系の材料又はMn、Ti等のような金属が用いられ、電気鍍金方法を利用して金属蓋45表面にコーティングされる。
【0064】
図12は、図11のD部分の詳細図である。各部材42、45、46に形成された各開口42A、45A、46Aの相互関係が示されている。
熱遮断層46に形成された開口46Aのサイズを、蓋45に形成された開口45Aサイズより小さく形成する場合、蒸気排出用開口42Aを介して外部へ排出される有機物蒸気が熱遮断層46の開口46Aに接触することで、熱遮断層46の開口46A周辺に蒸発した有機物質が堆積することになる。
【0065】
従って、本実施例に係る蒸着源40では、熱遮断層46の開口46Aの径を蓋45の開口の径より大きくすることで、排出される有機物蒸気と熱遮断層46の開口46Aと間の接触を防止するようにした。
また、熱遮断層46に形成された開口46Aサイズが、蓋45に形成された開口45Aサイズと同サイズで構成された場合、蒸着材料の蒸気が外部へ排出される過程で、蒸着材料の蒸気が熱遮断層46に付着することを防止するため、熱遮断層46の厚さをその開口46Aに向かって順次減少させることが好ましい。これにより、開口46Aの縁は鋭いエッジを形成することになる。
【0066】
上述した例示的な各実施例は制限的なものではない。本発明のあらゆる観点内で説明的ものとなるように意図されたものである。従って、本発明は本技術分野の熟練者によって本明細書内に含まれた説明から得られる多くの変形と詳細な実行が可能である。本発明の特許請求の範囲によって限定されるように、かかる変形と変更は本発明の範囲及び技術的思想の範囲内にあるものと考慮しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上、説明したように、本発明に係る蒸着源はセルキャップ上に蓋を密着するように位置させることによって、加熱手段から発生された熱が蓋を介しても蒸気排出用開口に伝えられるようにし、一定の温度を保持することになる。これにより、開口周辺に蒸発した有機物質が堆積することを防止する効果を有する。
さらに、蓋の上部面に熱遮断層を形成することで蓋から外部へ放出される熱を遮断し、セルキャップの開口周辺の温度が一定に保持される効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】蒸着源が取り付けられた従来の蒸着装置の内部構成を示した断面図である。
【図2】一般的なポイント蒸着源の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るポイント蒸着源の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係るポイント蒸着源の断面図である。
【図5】上部リフレクターの底面図である。
【図6】図4の"A"部分の詳細図である。
【図7】本発明の第3の実施例に係るポイント蒸着源の断面図である。
【図8】図7の"B"部分の詳細図である。
【図9】本発明の第4の実施例に係るポイント蒸着源の断面図である。
【図10】図9の"C"部分の詳細図である。
【図11】第4の実施例に係るポイント蒸着源の他の構造を示した断面図である。
【図12】図11の"D"部分の詳細図である。
【符号の説明】
【0069】
10,20,30,40 蒸着源
11,21,31,41 セル
12,22,32,42 セルキャップ
12A,22A,32A,42A 蒸着材料の蒸気排出用開口
13,23,33,43 側壁部材
13A,23A,33A,43A 加熱手段
14 底部材
15,25,45 蓋
16 熱遮断板
26 下部リフレクター
26b 凹部
27 上部リフレクター
27b 垂直突起
35 リフレクター
46 熱遮断層
M 蒸着材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加された電源によって加熱され、その内部に収納された蒸着材料を加熱し、発生した蒸着材料の蒸気を外部へ放出させて基板表面に蒸着層を形成する蒸着源において、
内部に蒸着材料が収納されているセルと、
セル上部に設けられ、蒸着材料の蒸気排出用開口が形成されたセルキャップと、
セル外側に位置し、セル外側に設けられた加熱手段を支持する側壁部材と、
前記側壁部材上端に固定された状態で前記セルキャップ上に密着されて配置され、前記蒸気排出用開口と対応する位置に開口が形成された蓋と、を含む蒸着源。
【請求項2】
前記蓋は、前記セルキャップの蒸気排出用開口と同サイズの開口を有する請求項1に記載の蒸着源。
【請求項3】
前記蓋は、開口に向かって厚さが減少されている請求項2に記載の蒸着源。
【請求項4】
前記蓋の上部表面に形成され、前記蓋の開口と対応する位置に開口が形成された熱遮断層を、さらに含む請求項1に記載の蒸着源。
【請求項5】
前記熱遮断層は、前記蓋に形成された開口サイズより大きく形成された開口を有する請求項4に記載の蒸着源。
【請求項6】
前記熱遮断層は、前記蓋の開口と同サイズの開口を有する請求項4に記載の蒸着源。
【請求項7】
前記熱遮断層は、開口に向かって厚さが減少されている請求項6に記載の蒸着源。
【請求項8】
前記熱遮断層は、電気鍍金方法で形成される請求項6に記載の蒸着源。
【請求項9】
前記熱遮断層は、熱伝導率の低い物質からなる請求項6に記載の蒸着源。
【請求項10】
前記熱遮断層は、Al23、TiO2、SiC若しくはZrO2のようなセラミック系列の材料又はMn若しくはTiのような金属材料からなる請求項4に記載の蒸着源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−261056(P2008−261056A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139740(P2008−139740)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【分割の表示】特願2004−228309(P2004−228309)の分割
【原出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】