説明

有機電界発光素子およびその製造方法

【課題】カソード電極の上に透明伝導性酸化膜を形成せずに,光透過性,発光効率,寿命特性及び色座標に優れている前面発光構造の有機電界発光素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明により,基板10と,基板10の上に形成される第1電極12と,第1電極12の基板10との界面と対向する面に形成され,少なくとも有機発光層を含む有機膜層16と,有機膜層16の第1電極12との界面と対向する面に形成される第2電極18とを含み,第2電極18は,厚さ17nm以上20nm以下のMg−Ag膜で形成される有機電界発光素子が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,有機電界発光素子およびその製造方法に係り,より詳しくは,カソード電極としてマグネシウム(Mg)−銀(Ag)膜を使用する有機電界発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に,有機電界発光素子は,アノード電極,カソード電極,および両電極に挟まれた有機発光層を含む。アノード電極とカソード電極との間に電圧を印加すると,正孔はアノード電極から有機発光層内に注入され,電子はカソード電極から有機発光層内に注入される。有機発光層内に注入された正孔と電子とは,有機発光層内で再結合して励起子を生成するが,このような励起子は励起状態から基底状態へ戻る際に光を放出する。
【0003】
この際,カソード電極は,有機発光層への電子注入を容易にするために,低い仕事関数を持つことが要求される。これを満足する物質には,3.46eVの仕事関数を有するマグネシウム(Mg)がある。ところが,Mgは,外気の酸素または水分との反応性が高く,安定した有機電界発光素子を実現することができないという欠点がある。
【0004】
この欠点を解決するために,特許文献1では,改善されたカソード電極を有する有機電界発光素子(Electroluminescence device with improved cathode)を開示している。上記特許文献1では,マグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金を用いてカソード電極を形成することにより,周囲環境に対する安定性の高いカソード電極を実現することができる発明を開示している。その結果,寿命特性の良好な有機電界発光素子を得ることができる。ところが,上記特許文献1に開示された発明では,Mgの厚さを200nm程度とし,Agの厚さを約25nmとするため,カソード電極が非常に厚くなってしまう。そのため,光透過性が悪くなり,カソード電極側に発光が透過する前面発光素子には適用することができず,アノード電極側に発光が透過する背面発光素子にしか適用されないという制約があった。
【0005】
上述の問題を解決するために,特許文献2,特許文献3,特許文献4,特許文献5では,カソード電極として約5nm〜40nm程度の薄いMg−Ag膜を形成することで光透過性を向上させ,透明伝導性酸化膜のITO(Indium Tin Oxide),IZO(Indium Zinc Oxide)などを,上記のMg−Ag膜の上部にできる限り厚く形成して,カソード電極の抵抗を低める発明を開示している。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,885,211号明細書
【特許文献2】米国特許第6,030,700号明細書
【特許文献3】米国特許第6,075,316号明細書
【特許文献4】米国特許第6,548,956号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,上記の特許文献2,特許文献3,特許文献4,特許文献5に開示された発明において,Mg−Ag膜が薄すぎる場合には,カソード電極が島状に形成されてしまうという問題点があり,Mg−Ag膜が厚すぎる場合には,光透過性が悪くなって前面発光構造に使用することができないという問題点があった。また,上記の透明伝導性酸化膜を,カソード電極の上部にスパッタリング法により形成する必要があるが,図1に示したようなスパッタダメージ(sputter damage)によるダークスポット(dark spot)(図1中の1参照)の発生と,図2に示したような漏洩電流の発生(図2中の2参照)という問題点があった。
【0008】
そこで,本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,
最適の厚さのMg−Ag膜をカソード電極として用いることにより,透明伝導性酸化膜を使用しなくても色純度が高く,消費電極が低く,透過性および発光効率などに優れる,新規かつ改良された有機電界発光素子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,基板と,基板の上に形成される第1電極と,第1電極の上に積層され,少なくとも有機発光層を含む有機膜層と,有機膜層の上に積層される第2電極とを含み,この第2電極は,厚さ17nm以上20nm以下のMg−Ag膜で形成されることを特徴とする,有機電界発光素子が提供される。
【0010】
上記の第2電極の厚さは,例えば18nm以上20nm以下であっても良い。また,第2電極は,例えばMgとAgとの組成比が25:1であっても良いし,MgとAgとの組成比が10:1であっても良い。また,この第2電極は,カソード電極としても使用可能である。
【0011】
さらに,上記の第2電極の上に,例えば保護膜を積層することも可能である。この保護膜は,有機膜,無機膜,もしくはこれらの複層膜とすることもできる。また,上記無機膜は,例えば,シリコン酸化膜(SiO),シリコン窒化膜(SiN)およびシリコン酸化窒化膜(SiO)からなる群から選択されたいずれかの膜を用いることも可能である。
【0012】
一方,上記の有機膜は,例えば,NPB,TNATA,TCTA,TDAPB,TDATA,Alq3,BAlqおよびCBPからなる群から選択された少なくとも1つの物質を用いて製膜することもできる。また,この有機膜は,上記の第2電極と有機発光層との間に正孔阻止層,電子輸送層または,電子注入層の少なくとも1つを含み,この層は,第2電極と接するような配置に設けることも可能である。
【0013】
また,上記の第2電極と有機膜層との間に,LiF膜をさらに形成することも可能である。
【0014】
また,上記の有機層は,上記の第1電極と有機発光層との間に正孔注入層または正孔輸送層の少なくともいずれか一方をさらに含むことも可能である。
【0015】
有機電解発光素子が青色発光素子の場合には,色座標中のY座標が0.200以下とすることもできる。
【0016】
また,本発明の他の観点によれば,基板と,基板の上に形成される第1電極と,第1電極の上に積層され,少なくとも有機発光層を含む有機膜層と,有機膜層の上に積層される,光透過率20%以上35%以下のMg−Ag膜からなる第2電極とを含むことを特徴とする,有機電界発光素子が提供される。
【0017】
上記のMg−Ag膜の厚さは,17nm以上20nm以下であるように形成することも可能であり,18nm以上20nm以下で形成することも可能である。また,MgとAgとの組成比は25:1で形成することも可能であり,組成比を10:1で形成することも可能である。
【0018】
また,上記の第2電極は,カソード電極として使用することも可能である。さらに,この第2電極の上に,保護膜を積層することも可能である。この保護膜は,有機膜,無機膜,またはこれらの複層膜で形成することもできる。上記の無機層は,例えば,シリコン酸化膜(SiO),シリコン窒化膜(SiN)およびシリコン酸化窒化膜(SiO)からなる群から選択されたいずれかの膜を用いて形成することも可能である。
【0019】
一方,上記の有機膜は,例えば,NPB,TNATA,TCTA,TDAPB,TDATA,Alq3,BAlqおよびCBPからなる群から選択された少なくとも1つの物質を用いて製膜することもできる。また,この有機膜は,上記の第2電極と有機発光層との間に正孔阻止層,電子輸送層または,電子注入層の少なくとも1つを含み,この層は,第2電極と接するように配設することも可能である。
【0020】
また,上記の第2電極と有機膜層との間に,LiF膜をさらに形成することも可能である。
【0021】
また,上記の有機層は,上記の第1電極と有機発光層との間に正孔注入層もしくは正孔輸送層の少なくともいずれか一方をさらに含むことも可能である。
【0022】
有機電解発光素子が青色発光の場合には,色座標中のY座標が0.200以下とすることもできる。
【0023】
また,本発明の別の観点によれば,基板の上に第1電極を形成し,第1電極の上に少なくとも有機発光層を備える有機膜を積層し,有機膜の上に厚さ17nm以上20nm以下のMg−Ag膜からなる第2電極を積層することを特徴とする,有機電界発光素子の製造方法が提供される。
【0024】
上記の第2電極の厚さが18nm以上20nm以下となるような製造方法も可能である。また,上記の第2電極を形成する段階の後に,この第2電極の上に保護膜を積層する段階を更に含む製造方法も可能である。この保護膜は,有機膜,無機膜,またはこれらの複層膜となるような製造方法も可能である。上記の無機膜として,例えば,シリコン酸化膜(SiO),シリコン窒化膜(SiN)およびシリコン酸化窒化膜(SiO)からなる群より選択されたいずれかの膜を用いる作成方法もできる。上記の有機膜の例として,例えば,NPB,TNATA,TCTA,TDAPB,TDATA,Alq3,BAlq3およびCBPからなる群より選択された少なくとも1つの物質を含有する膜を作製する製造方法も可能である。
【0025】
また,上記の第2電極と有機膜層の間に,LiF膜を形成する段階を含む製造方法も可能である。
【0026】
一方,上述の第2電極は,例えばMgとAgとを共蒸着することで作製する製造方法も可能である。また,上述の保護膜を,例えば蒸着法,CVD法,スパッタリング法またはスピンコーティング法で形成することも可能である。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように,本発明によれば,所定の成分比を有するMg−Ag膜を所定の厚さの範囲内でカソード電極として使用することで,本発明とは異なる厚さ範囲のカソード電極を使用する場合に比べ,発光効率,光透過性,寿命特性および色純度に優れた有機電界発光素子およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
図3は本発明の第1実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【0030】
図3を参照すると,基板10上に第1電極12が位置する。第1電極12は,アノード電極またはカソード電極であり,パターニングされて形成される。
【0031】
また,基板10は,第1電極12に接続される少なくとも1つの薄膜トランジスタ(図示せず)を備えることができる。また,第1電極のエッジの一部分上には,絶縁物質で画素定義膜14が形成される。
【0032】
第1電極12は透明電極または反射電極である。第1電極12が透明電極の場合には,アノード電極12として,ITO(Indium Tin Oxide)膜,IZO(Indium Zinc Oxide)膜,TO(Tin Oxide)膜またはZnO(Zinc Oxide)膜を用いることができる。また,第1電極12が反射電極の場合には,アノード電極12として,銀(Ag)膜,アルミニウム(Al)膜,ニッケル(Ni)膜,白金(Pt)膜,パラジウム(Pd)膜,またはこれらの合金膜,またはこれらの合金膜上にITO,IZO,TOまたはZnOの透明酸化膜が積層されたものを用いることができる。なお,本発明において,第1電極の材質が上記のものに限定されるわけではない。
【0033】
第1電極12は,スパッタリング(sputtering)法や蒸発(evaporation)法などの気相蒸着(vapor phase deposition)法,イオンビーム蒸着(ion beam deposition)法,電子ビーム蒸着(electron beam deposition)法またはレーザーアブレーション(laser ablation)法などで形成することができる。
【0034】
上記の第1電極12上には,少なくとも有機発光層を含む有機膜層16がパターニングされて形成される。有機膜層16は,有機発光層と第1電極との間に正孔注入層(Hole Injection Layer:HIL),正孔輸送層(Hole Transport Layer:HTL)をさらに含むことができる。正孔注入層としては,銅フタロシアニン(copper phtalocyanine:CuPC),TNATA,TCTA,TDAPB,TDATAなどの低分子材料,またはポリアニリン(polyaniline:PANI),PEDOT(poly(3,4)−ethylenedioxythiophene)などの高分子材料を用いて形成することができる。また,正孔輸送層としては,α−NPB(N,N’−Bis(naphthalene−1−yl)−N,N’−bis(phenyl)benzidine),TPD(N,N’−Bis−(3−methylphenyl)−N,N’−bis−(phenyl)−benzidine),s−TAD,MTDATA(4,4’,4”−Tris(N−3−methylphenyl−N−phenyl−amino)−triphenylamine)などの低分子材料,またはPVDなどの高分子材料を用いて形成することができる。上記の正孔注入層と正孔輸送層は,気相蒸着法,スピンコーティング法,インクジェットプリント法またはレーザー熱転写法などで形成することができる。なお,本発明において,正孔注入層,正孔輸送層の材質は,上記のものに限定されない。
【0035】
有機発光層は,蛍光発光物質またはリン光発光物質で形成することができる。有機発光層が蛍光発光物質で形成される場合,有機発光層として,ジスチリルアリーレン(distyrylarylene:DSA),ジスチリルアリーレン誘導体,ジスチリルベンゼン(distyrylbenzene:DSB),ジスチリルベンゼン誘導体,DPVBi(4,4’−bis(2,2'−diphenyl vinyl)−1,1’−biphenyl),DPVBi誘導体,スピロ−DPVBiおよびスピロ−6P(spiro−sexiphenyl)からなる群より選択される一つの物質を含むことができる。また,有機発光層は,スチリルアミン(styrylamine)系,ペリレン(perylene)系およびジスチリルビフェニル(distyrylbiphenyl:DSBP)系からなる群より選択される一つのドーパント物質をさらに含むことができる。なお,本発明において,有機発光層に使用できる蛍光発光物質ならびにドーパント物質が,上記のものに限定されるわけではない。
【0036】
一方,上記の有機発光層がリン光発光物質で形成される場合には,有機発光層は,ホスト物質として,アリールアミン系,カルバゾール系,およびスピロ系からなる群より選択される一つの物質を含むことができる。好ましくは,上記ホスト物質は,CBP(4,4−N,N−dicarbazole−biphenyl),CBP誘導体,mCP(N,N−dicarbazolyl−3,5−benzene),mCP誘導体およびスピロ系誘導体からなる群より選択される一つの物質である。また,上記有機発光層は,ドーパント物質として,イリジウム(Ir),白金(Pt),テルビウム(Tb)およびユウロピウム(Eu)からなる群より選択される一つの中心金属を有するリン光有機金属錯体を含むことができる。リン光有機金属錯体は,PQIr,PQIr(acac),PQIr(acac),PIQIr(acac)およびPtOEP(2,3,7,8,12,13,17,18−octaethyl−21H,23H−porphyrin platinum(II))よりなる群から選択される一つを使用することができる。なお,本発明において,有機発光層に使用できるリン光発光物質ならびにホスト物質が,上記のものに限定されるわけではない。
【0037】
上記の有機発光層は,例えば真空蒸着法,インクジェットプリント法またはレーザー熱転写法を用いて形成することができる。
【0038】
一方,有機膜層16は,有機発光層と第2電極18との間に正孔阻止層(Hole Blocking Layer:HBL),電子輸送層(Electron Transport Layer:ETL),電子注入層(Electron Injection Layer:EIL)の少なくとも1層をさらに含むことができる。
【0039】
一方,有機電界発光素子では,第1電極から注入された正孔が有機発光層内で電子と出会って励起子を形成しなければならないものの,正孔の移動度が電子の移動度より速いため,正孔が有機発光層を通り過ぎて電子輸送層,電子注入層などに拡散する。正孔阻止層は,この現象を防止する役割をし,かつ,有機発光層内で生成された励起子が拡散することを抑える役割をする。正孔阻止層は,有機発光層が蛍光発光物質で形成された場合には,形成しなくてもよい。ところが,有機発光層がリン光発光物質で形成される場合には,正孔の移動度が蛍光発光物質に比べさらに速くなるため,リン光発光物質を使用するリン光素子では,正孔阻止層が必要となる。このような正孔阻止層は,BAlq,BCP(bathocuproine),CF−X,トリアゾール誘導体(TAZ)またはスピロ−TAZを用いて形成することができるが,本発明において,上記の物質に限定されるわけではない。
【0040】
電子輸送層は,例えば,PBD,TAZ,スピロ−PBDなどの高分子材料またはAlq3(tris(8−quinolinolato)aluminum),BAlq,SAlqなどの低分子材料を用いて形成することができる。電子注入層は,例えば,Alq3,LiF(Lithium Fluoride),ガリウム混合物(Ga complex),PBDを用いて形成することができる。なお,本発明において,電子輸送層や電子注入層が上記の物質に限定されるわけではない。電子輸送層と電子注入層は,例えば真空蒸着法,スピンコーティング法,インクジェットプリント法またはレーザー熱転写法を用いて形成することができる。
【0041】
有機膜層16の上層に第2電極18が位置する。第2電極18としては,アノード電極またはカソード電極を採用することができるが,本実施形態では,マグネシウム−銀(Mg−Ag)膜からなるカソード電極18を形成する。マグネシウム−銀膜からなるカソード電極18は,電子注入特性に優れるが,カソード電極と電子輸送層との間にアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物や酸化物などの電子注入層をさらに形成すると,カソード電極の電子注入能力を向上させることができる。
【0042】
一方,本実施形態では,発光効率を考慮に入れて,最適の共振条件を満足することが可能なカソード電極の厚さについて最適化を行った。すなわち,通常,カソード電極は,工程マージンのために厚く形成することが一般的であるが,カソード電極を厚く形成すると,光透過性が低下して高効率の前面発光構造の有機電界発光素子を製作することができないためである。
【0043】
本実施形態では,発光波長が550nmの場合,光透過率が20%以上35%以下になると,発光効率の面および消費電極の面双方から,素子としての特性が優れたものになる。このような光透過率を持たせるために,Mg−Ag膜の厚さを最適化した。
【0044】
本実施形態では,カソード電極であるMg−Ag膜の厚さは,17nm以上20nm以下であることが好ましい。Mg−Ag膜の厚さが17nm未満であれば,厚さが非常に薄くなるためにMg−Ag膜が島状に形成され,その結果電気的特性が悪くなる。また,色座標がずれてしまうことから,素子として使用できなくなる。また,Mg−Ag膜の厚さが20nm超であれば,Mg−Ag膜の厚さを厚くするほど発光効率,光透過率,消費電力および寿命が悪くなるので,好ましくない。
【0045】
Mg−Ag膜の厚さが18nm以上20nm以下の場合は,光透過率が20%以上35%以下であり,色座標のY座標が青色を基準として0.200以下であって色純度に優れ,消費電力も300mW以下と良好であり,発光効率,色座標および寿命特性も最も優れたものとなるため,さらに好ましい。
【0046】
本実施形態では,前面発光構造の有機電界発光ディスプレイ素子に適用する場合において,特に色座標および光透過率に対する消費電力特性が重要な要素となる。
【0047】
すなわち,色座標および光透過率に依存する関数によって,色座標特性と光透過率が分かれば,消費電力を計算することができるようになる。
【0048】
本実施形態では,上述したように,色座標,すなわち色純度に優れかつ消費電力が低いことが好ましく,また,所定の範囲の光透過率を維持できれば発光効率および消費電力に優れることとなるので,このような範囲の厚さでMg−Agをカソード電極として使用する。
【0049】
一方,カソード電極18は,面抵抗により発生する電圧降下(IR drop)を防止するために,所定の値以下の面抵抗を持たなければならない。このような条件を満足するためには,MgとAgの混合比が主要要素となる。本実施形態では,MgとAgの組成比が25:1以下となる場合,電圧降下を抑制することができる。好ましくは,MgとAgの組成比が10:1であることがよい。
【0050】
また,Mg−Ag膜は共蒸着法で形成することが可能である。
【0051】
本発明の第1実施形態では,カソード電極を形成した後,シーラントを含む封止基板22で素子を封止することにより,有機電界発光素子を完成することができ,シーラントは基板の全面にわたって形成することもできる。符号20は空の空間である。
【0052】
図4は本発明の第2実施形態に係る有機電界発光素子の断面図である。
【0053】
第2実施形態では,カソード電極18までの工程は第1実施形態と同一であるが,カソード電極18上に,外気からカソード電極18が損傷することを防止するために保護膜層20’をさらに形成することができる。
【0054】
保護膜層20’は,有機膜,無機膜またはこれらの多重層とすることができる。無機膜は,絶縁膜としてのシリコン酸化膜(SiO),シリコン窒化膜(SiN)またはシリコン酸化窒化膜(SiO)を用いることも可能である。また,無機膜はLiF膜であってもよい。一方,上記の有機膜として,NPB(N,N’−Bis(naphthalen−1−yl)−N,N’−bis(phenyl)benzidine),TNATA,TCTA,TDAPB,TDATA,Alq3,BAlqまたはCBPを含有する膜を用いることもできる。また,本発明において,保護膜層20’の材質が上記のものに限定されるわけではない。
【0055】
保護膜層20’は,例えば蒸発法,CVD法またはスパッタリング法を用いて形成することができる。このような保護膜層20’は,外気の水分または酸素から有機膜16を保護して素子の劣化を防止する役割も果たす。
【0056】
上記の保護膜20’は透明保護膜層であることが好ましい。また,保護膜層20’の屈折率は,カソード電極18に比べて高いことが好ましい。これは,有機発光層から放出される光がカソード電極18を通過して外部に取り出されるとき,カソード電極18と保護膜層20’間の膜界面における全反射を減少させて光透過率を増加させることができるからである。
【0057】
その後,保護膜層の上に,シーラントを含む封止基板22を形成することにより,有機電界発光素子を完成することができる。シーラントは,基板の全面にわたって形成してもよい。
【0058】
以下,本発明の実施形態の理解を助けるために,好適な実施例を提示する。これら実施例は,本発明の理解を助けるためのものに過ぎず,本発明を限定するものではない。
【0059】
<有機電界発光素子の製造>
【0060】
(実施例1)
基板上にITOを用いて面積2mmのアノード電極を形成した後,超音波洗浄およびUV−O処理を行った。UV−O処理済みのアノード電極上にTDATA(4,4’,4”−Tris(N,N−diphenyl−amino)−triphenylamine)を30nmの厚さに真空蒸着することにより,正孔注入層を形成した。続いて,正孔注入層上にα−NPB(N,N’−Bis(naphthalene−1−yl)−N,N’−bis(phenyl)benzidine)を10nmの厚さに真空蒸着することにより,正孔輸送層を形成した。正孔輸送層上にジスチリルアリーレン(distyryarylene:DSA)とスチリルアミン(styrylamine)系のドーパント物質を共蒸着することにより,厚さ20nmの有機発光層を形成した。有機発光層上にBAlqを5nmの厚さに積層し,その上にAlq3を25nmの厚さに真空蒸着することにより,電子輸送層を形成した。電子輸送層上にマグネシウムと銀を共蒸着して,マグネシウムと銀の組成比が10:1であり,厚さが17nmであるMg−Ag膜を形成することにより,カソード電極を形成した。その後,封止基板で密封して有機電界発光素子を完成した。
【0061】
(実施例2)
カソード電極の厚さを18nmにした以外は,実施例1と同一の構造で有機電界発光素子を製造した。
【0062】
(実施例3)
カソード電極の厚さを19nmにした以外は,実施例1と同一の構造で有機電界発光素子を製造した。
【0063】
(実施例4)
カソード電極の厚さを20nmにした以外は,実施例1と同一の構造で有機電界発光素子を製造した。
【0064】
(比較例1)
マグネシウムと銀を共蒸着して,厚さ10nmのマグネシウム−銀(Mg−Ag)膜でカソード電極を形成した以外は,実施例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0065】
(比較例2)
カソード電極の厚さを11nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0066】
(比較例3)
カソード電極の厚さを12nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0067】
(比較例4)
カソード電極の厚さを13nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0068】
(比較例5)
カソード電極の厚さを14nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0069】
(比較例6)
カソード電極の厚さを15nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0070】
(比較例7)
カソード電極の厚さを16nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0071】
(比較例8)
カソード電極の厚さを21nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0072】
(比較例9)
カソード電極の厚さを22nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0073】
(比較例10)
カソード電極の厚さを23nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0074】
(比較例11)
カソード電極の厚さを24nmにした以外は,比較例1と同一の方法で有機電界発光素子を製造した。
【0075】
<素子特性の測定>
【0076】
(1)発光効率の測定
【0077】
有機電界発光素子を駆動させるに当たり,アノード電極に正の電圧を印加し,カソード電極を接地させた後,有機電界発光素子の発光輝度をフォトメーターで測定した。有機電界発光素子は,駆動電圧が6Vのときの発光効率を,実施例1〜4と比較例1〜11で測定した。
【0078】
(2)色座標測定
【0079】
カラーアナライザを用いて,有機電界発光素子の青色の色座標を測定した。
【0080】
(3)光透過率および高温寿命特性の測定
【0081】
有機電界発光素子の発光波長380〜780nmに対する光透過率を測定し,初期輝度が3000cd/mとなるように駆動させた後,駆動時間による輝度の減少の度合いを測定した。デバイスの寿命は,相対輝度の減少が40%になるまでの駆動時間で測定した。
【0082】
上記のように測定された,実施例1〜4の有機電界発光素子と比較例1〜11の有機電界発光素子の特性を,表1および図5〜7に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
図5はカソード電極の厚さによる発光効率特性を示すグラフ図である。表1および図5を参照すると,カソード電極の厚さが18nmである実験例2の場合,色座標は(0.12,0.19),光透過率は25.646%であり,これによる消費電力は252.2mWであって,ディスプレイ素子として満足できる範囲内に存在する。また,発光効率は3.67Cd/Aであって,発光効率特性は,他の比較例1〜7よりは劣るが,通常のディスプレイ素子として作動することが可能な範囲内にある。
【0085】
また,Mg−Ag膜の厚さが20nmである実施例4の場合は,色座標が(0.12,0.176),青色のY座標が0.200以下であって色純度が優れており,消費電力も254.7mWであり,光透過率も22.46%である。つまり,実施例4の場合は,ディスプレイ素子として優れた特性を示していることがわかる。
【0086】
実施例3の場合について考察する。実施例2と実施例4を比較すると,Mg−Ag膜の厚さが増加するにつれて,色座標のY座標値が減少し,光透過率も減少することがわかる。このことから,実験例3の色座標および光透過率のデータは,実施例4と比較して優れていることが考察される。
【0087】
消費電力データに関しては,実施例2および4の場合で殆ど有意差を示さないことからみて,実施例3の場合にもこれと同等な結果値が出るだろうと予想される。
【0088】
実施例1の場合は,発光効率が4.12Cd/Aであって,実施例2〜4よりは優れた結果であることが分かる。
【0089】
一方,Mg−Ag膜の厚さが10nmである比較例1の場合,色座標が(0.16,0.29)であって,青色を基準として色純度が0.200以上と満足すべき青色が発現せず,かつ,光透過率も54.896%,消費電力が341.4mWと非常に高いことが分かる。カソード電極の厚さが16nmである比較例7までは,色座標中のY座標が0.29〜0.31と好ましくなく,かつ,消費電力も353.0mW〜370.3mWと非常に高く,光透過率も39.027%〜54.896%と非常に高いことが分かる。光透過率が高いというのは,言い換えれば,消費電力が高いことを意味し,表1に示すように,光透過率が高い場合には消費電力が高いことが分かる。
【0090】
また,カソード電極の厚さ21nmの比較例8からカソード電極の厚さ24nmの比較例11までは,色座標は青色素子に適用できる範囲であり,消費電力も300mW以下と満足すべき水準であるが,光透過率が20%未満であって,発光層で発光した光の透過率が非常に低いので,前面発光構造の有機電界発光素子の発光効率が3.05Cd/A〜2.40Cd/Aと非常に低くなって好ましくない。
【0091】
以上のように,消費電力の面では,厚さ18nmのときに発光効率対比色座標がよいから,最も優れるので,実施例2の場合が,本実施形態において最適のカソード電極の厚さとなる。このことから,発光効率対比色座標を満足すれば,消費電力の面で素子としての機能が可能である。
【0092】
図6はカソード電極の厚さによる光透過率を示すグラフ図である。波長550nmの光の透過率が25%以上35%以下であれば,前面発光構造の有機電界発光素子として適することになる。表1および図6を参照すると,光透過率の面からしても,比較例1,3,5および7は光透過率が35%を越し,色座標のY座標値が青色の色座標には不適であることが分かる。また,カソード電極の厚さが22nm以上である比較例9〜11の場合は,光透過率が約26%以下であって,消費電力の面から前面発光構造には適用し難いことが分かる。この他に,光透過率は,カソード電極の厚さにほぼ比例して減少することが分かるので,測定データはないが,比較例2,4および6の場合にも光透過率が約45%以上であり,色座標の面でも青色の前面発光構造を満足しないことが分かる。
【0093】
図7はカソード電極の厚さの違いによる寿命特性の違いを示すグラフ図である。表1および図7を参照すると,比較例1,5および7の場合は,160時間経過後の輝度が初期輝度の70%以上となっており,実施例の場合も全て160時間経過後の輝度が初期輝度の68%〜70%になることが分かる。このことから,160時間経過後の輝度減少特性,すなわち寿命特性は,実施例2および4と比較例1〜7の場合が優れることが分かる。その一方で,比較例9および11は寿命特性が61%以下と悪いことが分かる。
【0094】
以上説明したように,本発明の実施形態によれば,カソード電極上に伝導性光透過性酸化膜を形成する必要がなくなったために,スパッタダメージによる膜の損傷が生じなくなる。このため,素子特性が向上し,前面発光構造の有機電界発光素子を実現することが可能となる。
【0095】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は,有機電界発光素子およびその製造方法に適用可能であり,より詳しくは,カソード電極として所定の厚さのMg−Ag膜を使用する有機電界発光素子およびその製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】従来のスパッタダメージに起因するカソード電極の損傷によるダークスポットを示す写真である。
【図2】スパッタダメージによる漏洩電流の発生を示すグラフ図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る有機電界発光素子の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る有機電界発光素子の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る実施例および比較例の発光効率特性を示すグラフ図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る実施例および比較例の光透過率特性を示すグラフ図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る実施例および比較例の寿命特性を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0098】
1 ダークスポット
2 漏洩電流
10 基板
12 第1電極
14 画素定義膜
16 有機膜層
18 第2電極
20 空の空間
20’ 保護膜層
22 封止基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
前記基板の上に形成される第1電極と;
前記第1電極の上に積層され,少なくとも有機発光層を含む有機膜層と;
前記有機膜層の上に積層される第2電極と;
を含み,
前記第2電極は,厚さ17nm以上20nm以下のMg−Ag膜で形成される
ことを特徴とする,有機電界発光素子。
【請求項2】
前記第2電極の厚さが,18nm以上20nm以下であることを特徴とする,請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記第2電極は,MgとAgとを25:1の組成比で含有することを特徴とする,請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記第2電極は,MgとAgとを10:1の組成比で含有することを特徴とする,請求項3記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記第2電極は,カソード電極であることを特徴とする,請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記第2電極の上に,保護膜がさらに積層されることを特徴とする,請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記保護膜は,有機膜,無機膜またはこれらの複層膜であることを特徴とする,請求項6記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記無機膜は,シリコン酸化膜(SiO),シリコン窒化膜(SiN)およびシリコン酸化窒化膜(SiO)からなる群より選択されたいずれかの膜であることを特徴とする,請求項7記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記有機膜は,NPB(N,N’−Bis(naphthalen−1−yl)−N,N’−bis(phenyl)benzidine),TNATA,TCTA,TDAPB,TDATA(4,4’,4”−Tris(N,N−diphenyl−amino)−triphenylamine),Alq3(tris(8−quinolinolato)aluminum),BAlqおよびCBP(4,4−N,N−dicarbazole−biphenyl)からなる群より選択された少なくとも一つの物質を含有する膜であることを特徴とする,請求項7記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記第2電極と前記有機膜層との間に,LiF膜をさらに含むことを特徴とする,請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記有機膜は,前記第2電極と前記有機発光層との間に正孔阻止層,電子輸送層または電子注入層の少なくとも1層をさらに含み,前記正孔阻止層,前記電子輸送層または前記電子注入層の少なくとも1層は,前記第2電極と接することを特徴とする,請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記有機膜は,前記第1電極と前記有機発光層との間に正孔注入層または正孔輸送層の少なくともいずれか一方をさらに含むことを特徴とする,請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
前記有機電界発光素子が青色発光素子の場合,色座標中のY座標が0.200以下であることを特徴とする,請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
基板と;
前記基板の上に形成される第1電極と;
前記第1電極の上に積層され,少なくとも有機発光層を含む有機膜層と;
前記有機膜層の上に積層される光透過率25%以上35%以下のMg−Ag膜からなる第2電極と;
を含むことを特徴とする,有機電界発光素子。
【請求項15】
前記Mg−Ag膜の厚さが,17nm以上20nm以下であることを特徴とする,請求項14記載の有機電界発光素子。
【請求項16】
前記Mg−Ag膜の厚さが,18nm以上20nm以下であることを特徴とする,請求項15記載の有機電界発光素子。
【請求項17】
前記Mg−Ag膜は,MgとAgとを25:1の組成比で含有することを特徴とする,請求項14記載の有機電界発光素子。
【請求項18】
前記Mg−Ag膜は,MgとAgとを10:1の組成比で含有することを特徴とする,請求項17記載の有機電界発光素子。
【請求項19】
前記第2電極は,カソード電極であることを特徴とする,請求項14記載の有機電界発光素子。
【請求項20】
前記第2電極の上に,保護膜がさらに積層されることを特徴とする,請求項14記載の有機電界発光素子。
【請求項21】
前記保護膜は,有機膜,無機膜またはこれらの複層膜であることを特徴とする,請求項20記載の有機電界発光素子。
【請求項22】
前記無機膜は,シリコン酸化膜(SiO),シリコン窒化膜(SiN)およびシリコン酸化窒化膜(SiO)からなる群より選択されたいずれかの膜であることを特徴とする,請求項21記載の有機電界発光素子。
【請求項23】
前記有機膜は,NPB,TNATA,TCTA,TDAPB,TDATA,Alq3,BAlqおよびCBPからなる群より選択された少なくとも一つの物質を含有する膜であることを特徴とする,請求項21記載の有機電界発光素子。
【請求項24】
前記第2電極と前記有機膜層との間にLiF膜をさらに含むことを特徴とする,請求項14記載の有機電界発光素子。
【請求項25】
前記有機膜は,前記第2電極と前記有機発光層との間に正孔阻止層,電子輸送層または電子注入層の少なくとも1層をさらに含み,前記正孔阻止層,前記電子輸送層または前記電子注入層の少なくとも1層は,前記第2電極と接することを特徴とする,請求項14記載の有機電界発光素子。
【請求項26】
前記有機膜は,前記第1電極と前記有機発光層との間に正孔注入層または正孔輸送層の少なくともいずれか一方をさらに含むことを特徴とする,請求項14記載の有機電界発光素子。
【請求項27】
前記有機電界発光素子が青色発光素子の場合,色座標中のY座標が0.200以下であることを特徴とする,請求項14記載の有機電界発光素子。
【請求項28】
基板の上に第1電極を形成する段階と;
前記第1電極の上に少なくとも有機発光層を備える有機膜を積層する段階と;
前記有機膜の上に厚さ17nm以上20nm以下のMg−Ag膜からなる第2電極を積層する段階と;
を含むことを特徴とする,有機電界発光素子の製造方法。
【請求項29】
前記第2電極の厚さが,18nm以上20nm以下であることを特徴とする,請求項28記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項30】
前記第2電極を形成する段階後,前記第2電極の上に保護膜を積層する段階をさらに含むことを特徴とする,請求項28記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項31】
前記保護膜は,有機膜,無機膜またはこれらの複層膜であることを特徴とする,請求項30記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項32】
前記無機膜は,シリコン酸化膜(SiO),シリコン窒化膜(SiN)およびシリコン酸化窒化膜(SiO)よりなる群から選択されるいずれかの膜であることを特徴とする,請求項31記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項33】
前記有機膜は,NPB,TNATA,TCTA,TDAPB,TDATA,Alq3,BAlqおよびCBPからなる群より選択された少なくとも一つの物質を含有する膜であることを特徴とする,請求項31記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項34】
前記第2電極と前記有機膜層との間にLiF膜を形成する段階をさらに含むことを特徴とする,請求項28記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項35】
前記第2電極は,MgとAgを共蒸着して形成されることを特徴とする,請求項28記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項36】
前記保護膜は,蒸着法,CVD法,スパッタリング法またはスピンコーティング法で形成されることを特徴とする,請求項30記載の有機電界発光素子の製造方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−253113(P2006−253113A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362124(P2005−362124)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】