説明

有機電界発光素子及びその製造方法

【課題】寿命が長くかつ安定した発光特性を有し、定電流駆動における電圧増加が最小限に抑えられた有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】陽極と有機電界発光層との間に形成された界面劣化防止層を備え、界面劣化防止層は、芳香族アミン化合物と無機物との混合物からなり、無機物は、周期律表上の1A族、2A族、3A族及び4A族のハロゲン化合物または酸化物から選ばれ、芳香族アミン化合物は、下記の化学構造式:


を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関し、特に、デジタル駆動(digital driving)可能な有機電界発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機電界発光素子(Organic Electroluminescence device)は、電子注入電極(陰極)と正孔注入電極(陽極)との間に形成された有機膜に電荷が注入されるとき、電子と正孔とが結合し、その後消滅し、その結果光を出す素子である。このような有機電界発光素子は、低い電圧で駆動可能で消費電力が少ないという特徴を有する次世代ディスプレイ素子として評価されている。
【0003】
以下に、従来の有機電界発光素子の構造及びその製造方法を、添付の図面を参照して説明する。
図1は、従来の有機電界発光素子の構造を示す図である。
図1に示すように、従来の有機電界発光素子は、透明基板101上に形成された陽極102を有する。この陽極102の材料には、通常インジウム錫酸化物(ITO)が使用され、そして陽極102は、基板101がITOで被覆された後、O2プラズマやUVO(紫外線/オゾン)などで表面処理される。陽極102の表面の不純物が上記の表面処理により除去されるとき、陽極と正孔注入層との間の界面特性が向上し、その結果、正孔注入が容易になる。
【0004】
その後、陽極102上に正孔注入層(Hole Injection Layer:HIL)103が形成される。正孔注入層103としては、銅フタロシアニン(CuPC)が通常、陽極102上に約10nm〜30nmの厚さで被覆される。
【0005】
正孔注入層103の上に正孔輸送層(Hole Transport Layer:HTL)104が形成される。正孔輸送層104としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’ビフェニリル)−4,4’−ジアミン(TPD)または4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(NPD)が、正孔注入層103上に約30nm〜60nmの厚さで形成される。
【0006】
正孔輸送層104の上に有機発光層(Organic Emitting Layer)105が形成される。この時点で、必要に応じて、ドーパントが添加され得る。緑色発光素子の場合、典型的には、有機発光層105としてトリス(8−ヒドロキシ−キノレート)アルミニウム(Alq3)が約30nm〜60nmの厚さで蒸着され、そしてドーパントとしてクマイン(coumaine)誘導体(C545T)またはキナクリドン(Qd)が使用される。赤色発光素子の場合、有機発光層105としてAlq3が使用され、そしてドーパントとしてDCM、DCJT、DCJTBなどが使用される。青色発光素子の場合、有機発光層105として、いかなるドーパントも使用することなく、DPVBiが通常使用される。
【0007】
有機発光層105の上に、電子輸送層(Electron Transport Layer:ETL)106及び電子注入層(Electron Injecting Layer:EIL)107が順次形成される。緑色発光素子の場合、Alq3が良好な電子輸送能力を持つことから、電子輸送層106及び電子注入層107を形成する必要がない。
電子注入層107として、LiFまたはLi2Oが約5Åの厚さで薄く被覆されるか、あるいは、Li、Ca、Mg、Smなどのようなアルカリ金属またはアルカリ土金属が約200Åの厚さで被覆され、それにより、電子の注入が容易になる。
【0008】
電子注入層107の上に、陰極108としてAlを約1000Åの厚さで被覆し、そして紫外線硬化性結合剤を使用して陰極108上に吸湿剤を含有する被覆プレート(図示せず)を貼り合わせることによって、大気中の水分またはO2から有機電界発光素子を保護する。
【0009】
上記のようにして製造された有機電界発光素子は、使用される材料及び陽極に対する表面処理条件並びに前記有機電界発光素子の積層構造によって、寿命及び効率に大きな変化がもたらされ得る。
【0010】
通常、有機電界発光素子では、寿命を延ばし、そして安定した電流注入のために各層間の界面を安定化させることが重要である。
【0011】
しかしながら、有機電界発光素子において、無機物層と有機物層との間の界面は、素子の劣化を引き起こす。有機電界発光素子において、無機物層と有機物層との間の界面は、陽極と正孔注入層との間の界面、及び電子輸送層と電子注入層(または陰極)との間の界面を包含する。とりわけ、陽極と正孔注入層との間の界面が、素子の劣化に最も大きい影響を与える。
【0012】
従って、従来技術においては、前記問題を解決するため、陽極102の表面から不純物を除去するために、インジウム錫酸化物(ITO)から形成された陽極をO2プラズマまたはUVOで表面処理した後、該陽極の表面に正孔注入層が蒸着される。その結果、陽極は、正孔注入層との接着性が向上し、素子寿命の延長と安定した電流注入をある程度は達成できたが、しかし、このような方法では、長寿命化に限界があった。
【0013】
図2は、表面処理された陽極を有する従来の緑色発光素子に対する、定電流による劣化促進実験の結果を示すグラフであり、そして図3は、表面処理された陽極を有する従来の緑色発光素子に対する定電圧による劣化促進実験の結果を示すグラフである。
【0014】
図2に示すように、従来の緑色発光素子が定電流モードにおいて駆動されると、前記素子に印加される電圧が上昇する。その結果、前記素子は初期輝度に比較して50%の水準に輝度が低下する。前記緑色発光素子では、ほぼ2Vの電圧上昇が起る。
【0015】
更に、図3に示すように、従来の緑色発光素子が定電圧モードにおいて駆動されると、前記素子の劣化に伴い、素子に適用される電流が減少する。その結果、前記緑色発光素子の輝度は、定電流モードで駆動されるときよりも10倍以上早く減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このように、有機電界発光素子において、定電流駆動における電圧増加と定電圧駆動における電流減少は、有機物自体の劣化というよりはむしろ、有機物と無機物との間の界面における劣化に起因するものが大部分である。有機物と無機物との間の界面における劣化の中でも特に、無機物から形成された陽極と正孔注入層との間の界面が、前記素子の劣化に最も大きい影響を及ぼす。
【0017】
本発明は上記の問題点を解決するためのものであり、その目的は、陽極と有機電界発光層との間の界面において起る劣化を低減することによって、デジタル駆動を実現し、寿命が長くかつ安定した発光特性を有し、定電流駆動における電圧増加が最小限に抑えられた有機電界発光素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明に係る有機電界発光素子は、
基板と、
前記基板上に形成された陽極と、
前記陽極上に形成され、正孔注入層及び正孔輸送層を含む多層構造からなる有機電界発光層と、
前記有機電界発光層上に形成された陰極と、
前記陽極と前記有機界面発光層との間の界面において起る劣化を低減する、前記陽極と有機電界発光層との間に形成された界面劣化防止層と、
を備えてなる。
【0019】
前記界面劣化防止層は、陽極と正孔注入層との間に形成され得る。
また、前記界面劣化防止層は、有機物と無機物との混合物からなり、前記有機物は、正孔伝達特性を持つ芳香族アミン化合物である。
【0020】
前記芳香族アミン化合物は、下記の化学構造式を有し得る。
【0021】
【化1】

【0022】
この化学構造式において、nは1〜4から選ばれた整数であり、Ar1、Ar2及びAr3はそれぞれ置換されているかまたは置換されていない芳香族基であり得る。
【0023】
前記Ar1、Ar2及びAr3はフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ビフェニリレルリル基(biphenylylelnyl)、フェナントレニル基、フルオリル基、ターフェニリル基及びアントラセニル基よりなる群から選ばれたものであり、置換された芳香族基が使用される場合、置換基はメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ジメチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれたものであり得る。
【0024】
また、前記無機物は、周期律表上の1A族、2A族、3A族及び4A族のハロゲン化合物または酸化物から選ばれたものであり、前記ハロゲン化合物は、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、FrF、MgF2、CaF2、NaCl、CaCl2、LiCl、KCl、RbCl、CsCl、FrCl及びMgCl2から選ばれたものであり得、前記酸化物は、Li2O、Na2O、K2O、BeO、MgO、CaO、B23、Al23及びSiO2から選ばれたものであり得る。
【0025】
本発明に係る有機電界発光素子の製造方法は、
基板上に陽極を形成する段階と、
前記陽極上に、前記陽極と有機界面発光層との間の界面において起る劣化を低減する、有機物と無機物との混合物からなる界面劣化防止層を形成する段階と、
前記界面劣化防止層上に、正孔注入層を含む有機電界発光層を形成する段階と、
前記有機電界発光層上に陰極を形成する段階と、
からなり、前記界面劣化防止材の前記有機物及び前記無機物は、上記した通りである。
【0026】
前記界面劣化防止層は、有機物層と無機物層とを、有機物層/無機物層または無機物層/有機物層の順序で反復的に積層することにより形成され得る。
このとき、有機物層及び無機物層のそれぞれの厚さは、0.1nm〜10nmであり得、界面劣化防止層の全体の厚さは100nm以下であり得る。
【0027】
また、前記界面劣化防止層は、有機物と無機物とが混合されるように、有機物と無機物とを同時に蒸着することにより形成されてもよく、あるいは、有機物層と無機物層とを、有機物層/無機物層または無機物層/有機物層の順序で反復的に積層することにより形成されてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の有機電界発光素子は、無機物であるインジウム錫酸化物(ITO)と有機物である正孔注入層(HIL)との界面に、無機物と有機物とを混合した界面劣化防止層を介在させることによって、素子の劣化及び熱ストレスを緩和させ、定電流駆動時に電圧増加が抑制され、かつ、定電圧駆動時の電流減少を最小限に抑制する効果が得られる。
【0029】
なお、界面劣化防止層の無機物の量と界面劣化防止層の厚さを調節することによって有機電界発光素子に注入される正孔の量を調節し、正孔と電子の電荷バランスを最適化することによって素子の発光効率を極大化する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来の有機電界発光素子の構造を示す図である。
【図2】従来の緑色発光素子の定電流による劣化促進実験の結果のグラフを示す図である。
【図3】従来の緑色発光素子の定電圧による劣化促進実験の結果のグラフを示す図である。
【図4】本発明の有機電界発光素子の構造を示す図である。
【図5】図4に示す本発明の有機電界発光素子の一例を示す図である。
【図6】本発明の有機電界発光素子の界面劣化防止層に使用される有機物の例を示す図である。
【図7】本発明の有機電界発光素子の定電流による劣化促進実験の結果のグラフを示す図である。
【図8】本発明の有機電界発光素子の定電圧による劣化促進実験の結果のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る有機電界発光素子及びその製造方法の好適な実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
本発明の有機電界発光素子は、無機物であるITO(陽極)と有機物であるHILとの界面の間に、無機物と有機物を混合してなる界面劣化防止層(interface degradation preventing layer:IDPL)を介在させるので、素子の劣化及び熱ストレス(thermal stress)を緩和させ、定電流駆動時に電圧増加を抑えることができ、定電圧駆動時に電流減少を最小限に抑えることができる。
【0033】
なお、本発明の有機電界発光素子において、界面劣化防止層に添加される無機物の量と界面劣化防止層の厚さを調節することによって、有機電界発光素子に注入される正孔の量を調節し、正孔と電子との電荷バランスを最適化し、素子の発光効率を極大化することができる。
【0034】
図4は、本発明の有機電界発光素子の構造を示す図であり、図5は、図4に示す有機電界発光素子の一例を示す図である。
図4及び図5に示すように、まず、透明基板201上に陽極202を形成する。陽極202には通常、インジウム錫酸化物(ITO)が使用される。次いで、陽極202が形成された透明基板201を、O2プラズマやUVOなどで表面処理することにより、陽極202表面の不純物を除去する。このように陽極202表面の不純物が除去されると、陽極202と正孔注入層との間の界面の特性が良くなり、正孔注入が容易になる。
【0035】
続いて、陽極202上に界面劣化防止層(IDPL)203を形成する。この界面劣化防止層203は2成分、即ち有機物と無機物とからなる。
【0036】
前記有機物は、下記の化学構造式で表される、正孔伝達特性を有する芳香族アミン化合物から選ばれ得る。
【0037】
【化2】

【0038】
前記式中、nは1〜4から選ばれた整数であり、Ar1、Ar2及びAr3はそれぞれ置換されているかまたは置換されていない芳香族基を表す。
【0039】
前記Ar1、Ar2及びAr3の例は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ビフェニリレルリル基(biphenylylelnyl)、フェナントレニル基、フルオリル基、ターフェニリル基及びアントラセニル基よりなる群から選ばれたものであり、置換された芳香族基が使用される場合、置換基はメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ジメチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれたものである。
【0040】
本発明においては、上記の化学構造式を有する有機物として、特に、図6に示すような化学構造を有する有機物を使用し得る。
【0041】
界面劣化防止層203の無機物としては、周期律表上の1A族、2A族、3A族及び4A族のハロゲン化合物または酸化物から選ばれたものが用いられる。前記ハロゲン化合物にはLiF、NaF、KF、RbF、CsF、FrF、MgF2、CaF2、NaCl、CaCl2、LiCl、KCl、RbCl、CsCl、FrCl、MgCl2などがあり、前記無機酸化物にはLi2O、Na2O、K2O、BeO、MgO、CaO、B23、Al23、SiO2などがある。
【0042】
上に例示した有機物と無機物とを適宜選択して混合することによって、界面劣化防止層203を構成する。
【0043】
界面劣化防止層203の形成に当たり、有機物及び無機物の混合方法には次の3通りの方法がある。
(1)第一の方法は、まず、陽極202上に有機物を、約0.5nmの厚さに真空蒸着法で蒸着し、その上に無機物を、約0.1nmの厚さに積層方式で蒸着する方法である。この方法において、有機物及び無機物のそれぞれの厚さは約0.1nm〜10nmの範囲で適宜選択してもよく、また、有機物と無機物との積層順序を変えてもよい。ここで、界面劣化防止層203の全体の厚さは100nm以下とし得る。
【0044】
(2)第二の方法は、有機物と無機物とを共蒸着して両者を混合する方法である。ここで、両者の割合は、次の通りにし得る。
有機物:無機物=X:Y(X=1〜100、Y=1、あるいはX=1、Y=1〜100)
この式によって有機物と無機物との混合比率を選択し、また、界面劣化防止層203の全体の厚さは100nm以下とし得る。
【0045】
(3)第三の方法は、有機物と無機物とを混合するとき、素子中での両者の位置によって、有機物と無機物との混合比率を変化させる(濃度勾配を与える)方法である。
すなわち、式X’=無機物/(有機物+無機物)及び式Y’=有機物/(有機物+無機物)のとき、陽極202と界面劣化防止層203との接触界面ではX’=1、Y’=0であり、界面劣化防止層203と正孔注入層204または正孔輸送層205との接触界面ではX’=0、Y’=1であり、両接触界面の間ではX’値及びY’値が直線的に変化するようにし得る。この方法において、界面劣化防止層203の全体の厚さは100nm以下とし得る。
このように、界面劣化防止層203を、有機物と無機物とを適当な割合で混合して構成すると、陽極202と界面劣化防止層203との間の熱ストレスが緩和され、また、正孔の移動性が低減するため、正孔と電子との間の電荷バランスが最適化され、その結果、有機電界発光素子の発光効率が向上する。
【0046】
その後、界面劣化防止層203上に有機電界発光層が形成される。
有機電界発光層は、正孔注入層204、正孔輸送層205、発光層206、電子輸送層(ETL)207及び電子注入層(EIL)208が順次積層された多層構造からなり、場合によっては、他の層を追加し得、または一部の層を排除し得る。
【0047】
最後に、有機電界発光層上に陰極209を形成することにより、有機電界発光素子が完成する。
【実施例】
【0048】
図5に、図4に示す本発明の有機電界発光素子の一例を示す。図5に示すように、透明基板201にはガラス基板を使用し、陽極202にはインジウム錫酸化物(ITO)を使用し、また界面劣化防止層203においては、有機物に4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(NPD)を、無機物にMgF2を使用した。
【0049】
有機物と無機物との混合方法としては前述した方法(2)を使用し、NPD:MgF2=5:1の質量比率で混合し、界面劣化防止層203の全体の厚さは約10nmとした。
【0050】
正孔注入及び正孔伝達の役割をする正孔注入層/正孔輸送層(HIL/HTL)205は、NPDを約50nmの厚さに蒸着することにより形成した。
【0051】
次いで、正孔注入層/正孔輸送層(HIL/HTL)上に発光層206を形成した。緑色発光層は、Alq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)にクマイン誘導体(C545T)を約1%ドーピングすることにより、約25nmの厚さに形成した。
【0052】
電子輸送層(ETL)207は、Alq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)を蒸着することにより、約35nmの厚さに形成し、電子注入層(EIL)208は、LiFを蒸着することにより、約0.5nmの厚さに形成し、陰極209は、Alを蒸着することにより、約200nmの厚さに形成した。
【0053】
次に、このような方法で製造された素子の特性について述べる。
まず、比較例として、界面劣化防止層(IDPL)を有せず、HIL(またはHTL)にはNPDを使用したこと以外は図5に示す実施形態と同様の、有機電界発光素子を製造した。
【0054】
図7は、本発明の有機電界発光素子の定電流による劣化促進実験の結果を示すグラフであり、図8は、本発明の有機電界発光素子の定電圧による劣化促進実験の結果を示すグラフである。
【0055】
図7に示すように、比較例の素子及び界面劣化防止層(IDPL)を有する本発明の素子について、同じ電流密度50mA/cm2で定電流による劣化促進実験を行った。
図7から、IDPLを有する本発明の素子は作動時間の間の電圧の変化が著しく抑制され、前記IDPLによって界面劣化が抑制されるので、本発明の素子の寿命は比較例の素子の寿命の約2倍であることがわかる。
【0056】
更に、図8に示すように、IDPLを有する本発明の素子を定電圧で駆動した場合にも、本発明の素子の寿命は比較例の素子の寿命の約10倍であることがわかる。
【0057】
下記の表1に、本発明の実施例の素子と比較例の素子に対する、定電流による劣化促進実験による発光効率、寿命及び電圧変化を示す。
【0058】
【表1】

【0059】
以上説明した内容に基づいて、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の技術的範囲は、以上の実施形態における記載によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0060】
201 透明基板、202 陽極、203 界面劣化防止層、204 正孔注入層、205 正孔輸送層、206 発光層、207 電子輸送層、208 電子注入層、209 陰極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された陽極と、
前記陽極上に形成され、正孔注入層及び正孔輸送層を含む多層構造からなる有機電界発光層と、
前記有機電界発光層上に形成された陰極と、
前記陽極と前記有機界面発光層との間の界面において起る劣化を低減する、前記陽極と有機電界発光層との間に形成された界面劣化防止層と、
を備え、
前記界面劣化防止層は、有機物と無機物との混合物からなり、前記有機物は、正孔伝達特性を持つ芳香族アミン化合物であり、前記無機物は、周期律表上の1A族、2A族、3A族及び4A族のハロゲン化合物または酸化物から選ばれ、前記芳香族アミン化合物は、下記の化学構造式:
【化1】

(ここで、Ar1及びAr2はそれぞれ置換されているかまたは置換されていない芳香族基である)を有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記界面劣化防止層が、陽極と正孔注入層との間に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記化学構造式において、Ar1及びAr2はフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ビフェニリレルリル基(biphenylylelnyl)、フェナントレニル基、フルオリル基、ターフェニリル基及びアントラセニル基よりなる群から選ばれたものであり、置換された芳香族基が使用される場合、置換基はメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ジメチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれたものであることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記芳香族アミン化合物が、下記の化学式:
【化2】

を有する化合物から選ばれたものであることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記ハロゲン化合物が、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、FrF、MgF2、CaF2、NaCl、CaCl2、LiCl、KCl、RbCl、CsCl、FrCl及びMgCl2から選ばれたものであることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記酸化物が、Li2O、Na2O、K2O、BeO、MgO、CaO、B23、Al23及びSiO2から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記界面劣化防止層の厚さが100nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記界面劣化防止層は、
有機物層と無機物層とが、有機物層/無機物層または無機物層/有機物層の順序で反復的に積層されることにより形成された構造、及び
有機物と無機物とが予め決定された混合比率で混合された構造
から選ばれた構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
基板上に陽極を形成する段階と、
前記陽極上に、前記陽極と有機界面発光層との間の界面において起る劣化を低減する、有機物と無機物との混合物からなる界面劣化防止層を形成する段階と、
前記界面劣化防止層上に、正孔注入層を含む有機電界発光層を形成する段階と、
前記有機電界発光層上に陰極を形成する段階と、
からなり、
前記界面劣化防止層の前記有機物は、正孔伝達特性を持つ芳香族アミン化合物であり、前記界面劣化防止層の前記無機物は、周期律表上の1A族、2A族、3A族及び4A族のハロゲン化合物または酸化物から選ばれ、前記芳香族アミン化合物は、下記の化学構造式:
【化3】

(ここで、Ar1及びAr2はそれぞれ置換されているかまたは置換されていない芳香族基である)を有することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記界面劣化防止層が、有機物層と無機物層とを、有機物層/無機物層または無機物層/有機物層の順序で反復的に積層することにより形成されることを特徴とする、請求項9に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記有機物層及び前記無機物層のそれぞれの厚さが0.1nm〜10nmであり、前記界面劣化防止層の全体の厚さが100nm以下であることを特徴とする、請求項10に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記界面劣化防止層が、有機物と無機物とが混合されるように、有機物と無機物とを同時に蒸着することにより形成されることを特徴とする、請求項9に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記有機物と前記無機物との混合比率が、有機物:無機物=X:Yのとき、X=1〜100、Y=1またはX=1、Y=1〜100であることを特徴とする、請求項12に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記界面劣化防止層は、有機物層と無機物層とを有機物層/無機物層または無機物層/有機物層の順序で積層することにより形成されることを特徴とする、請求項9に記載の有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−238859(P2012−238859A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139380(P2012−139380)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2005−164825(P2005−164825)の分割
【原出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】