説明

有機電界発光素子用材料、並びにそれを用いた有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法

【課題】高い発光効率、高い偏光発光比、高い外部量子効率及び高い発光量子収率を両立することができる有機電界発光素子用材料、並びにそれを用いた有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法の提供。
【解決手段】本発明の有機電界発光素子用材料は、分子コア直径と分子コア厚みとのアスペクト比(分子コア直径/分子コア厚み)が少なくとも3である燐光発光性化合物と、ディスコティック液晶性ホスト化合物と、を少なくとも有し、前記燐光発光性化合物の分子半径と、前記ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径とのサイズ比(燐光発光性化合物の分子半径/ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径)が、0.8〜1.2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用材料、並びにそれを用いた有機電界発光素子(以下、「有機エレクトロルミネッセンス素子」、「有機EL素子」と称することもある)、及び有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、自発光型の表示装置であり、ディスプレイや照明の用途に用いられる。有機電界発光素子を用いたディスプレイは、従来のCRTやLCDと比較して視認性が高い、視野角依存性が少ないといった表示性能の利点を有する。また、ディスプレイを軽量化、薄層化できるといった利点もある。
有機電界発光素子は、軽量化、薄層化という利点に加え、フレキシブル基板を用いることで、これまで実現できなかった形状の照明を実現できる可能性を持っている。
【0003】
このように有機電界発光素子は、上記の事項をはじめとした優れた特徴を有するが、一般に、発光層を含め有機電界発光素子を構成する各層の屈折率は空気より高い。例えば、有機電界発光素子では、発光層などの有機層の屈折率は1.6〜2.1である。このため、発光した光は界面で全反射しやすく、その光取り出し効率は20%に満たず、大部分の光を損失してしまう。
例えば、一般的に知られる有機電界発光素子は、基板上に、一対の電極層の間に配される有機層を備えて構成されている。この有機層は、発光層を含み、有機電界発光素子は、この発光層から発光される光を光取り出し面側から出射させている。この場合、光取り出し面や電極層と有機層の界面において、臨界角以上の光である全反射成分を取出すことができないため、光取り出し効率が低いという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、液晶性のホスト材料を用いることで発光性化合物そのものの形状や発光性化合物の配向を制御することで光取り出し効率を向上させる方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この提案では、偏光発光比を上げるために棒状の蛍光材料を用いているため、一軸に配向させることでフェルスター型のエネルギー移動(蛍光共鳴エネルギー移動)及び発光再吸収により発光効率が低下するという問題があった。また、蛍光材料の電気的励起子生成効率が約25%と低いため、結果として外部量子効率を向上させることができないという問題もあった。
【0006】
このような問題を解決するために、例えば、フェルスター型のエネルギー移動による発光効率の低下が原理的にない燐光材料を燐光発光性化合物として用い、液晶性のホスト材料で配向させた発光素子が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0007】
しかしながら、これらの提案では、偏光発光比及び発光量子収率が低下するという問題があった。
【0008】
このように、高い発光効率、高い偏光発光比、高い外部量子効率及び高い発光量子収率を両立することができる有機電界発光素子の速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−321371号公報
【特許文献2】特開2002−43056号公報
【特許文献3】特開2011−046699号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Polymers For Advanced Technologies,9,443−460(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高い発光効率、高い偏光発光比、高い外部量子効率及び高い発光量子収率を両立することができる有機電界発光素子用材料、並びにそれを用いた有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 分子コア直径と分子コア厚みとのアスペクト比(分子コア直径/分子コア厚み)が少なくとも3である燐光発光性化合物と、ディスコティック液晶性ホスト化合物と、を少なくとも有し、前記燐光発光性化合物の分子半径と、前記ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径とのサイズ比(燐光発光性化合物の分子半径/ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径)が、0.8〜1.2であることを特徴とする有機電界発光素子用材料である。
<2> 燐光発光性化合物が、白金錯体である前記<1>に記載の有機電界発光素子用材料である。
<3> ディスコティック液晶性ホスト化合物が、下記一般式(1)で表される前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料である。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、Hは、液晶母核部を表し、Lは、2価の連結基を表し、R〜Rは、水素原子又は置換基を表す。nは、1〜12の整数を表し、mは、0〜3の整数を表す。
<4> ディスコティック液晶性ホスト化合物が、ディスコティックネマチック液晶相を発現する前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料である。
<5> 燐光発光性化合物が、下記構造式(1)から(5)のいずれかで表される燐光発光性化合物から選択される少なくとも1つである前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料である。
【化2】

ただし、前記構造式(1)中、X、Y、Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。Arは、置換又は無置換のアリール基を表す。
【化3】

ただし、前記構造式(2)中、X、Y、Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。r、s、t、uは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、r、s、t、uが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。WとWとは、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【化4】

ただし、前記構造式(3)中、A、Bは、環状構造を表し、Aが環を形成するとき、Bは環を形成していてもいなくてもよい。また、Aが環を形成しないとき、Bは環を形成する。Aは芳香環又は複素環を表し、Bはヘテロ環又はヘテロアリールを表す。R13〜R16は、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【化5】

ただし、前記構造式(4)中、R〜R、X、Y、Z、Ar、m、n、pは、前記構造式(1)と同義であり、M、Qは、炭素原子又は窒素原子であり、R30は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、gは0〜3の整数を表す。
【化6】

ただし、前記構造式(5)中、R〜R、Z、Ar、m、nは、前記構造式(1)と同義であり、M、Q、R30、gは、前記構造式(4)と同義である。
<6> 燐光発光性化合物が、下記構造式(6)で表される前記<1>から<5>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料である。
【化7】

ただし、前記構造式(6)中、Bは、芳香族及び非芳香族の6員環のいずれかを形成してもよい。R17〜R26は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R25とR26は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
<7> 陽極と陰極との間に、前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料を含有する発光層を少なくとも有する有機電界発光素子において、燐光発光性化合物の遷移双極子モーメントが、前記陽極に対して水平に配向されていることを特徴とする有機電界発光素子である。
<8> 発光層が、フッ素原子含有化合物を0.0001質量%〜10質量%含有する前記<7>に記載の有機電界発光素子である。
<9> フッ素原子含有化合物が、フッ素原子を4個以上含む側鎖置換基を3個以上有する前記<8>に記載の有機電界発光素子である。
<10> フッ素原子含有化合物が、以下の構造式(A)及び(B)のいずれかで表される前記<8>から<9>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
【化8】

ただし、前記構造式(A)中、R27、R28は、各々独立にフッ素原子を4個以上有する置換又は無置換のアルキル基を表す。
【化9】

ただし、構造式(B)中、R29は、フッ素原子を4個以上有する置換又は無置換のアルキル基、アシル基を表す。
<11> 発光層を、前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料を用いた溶液プロセスにて形成する工程を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、高い発光効率、高い偏光発光比、高い外部量子効率及び高い発光量子収率を両立することができる有機電界発光素子用材料、並びにそれを用いた有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(有機電界発光素子用材料)
本発明の有機電界発光素子用材料は、燐光発光性化合物と、ディスコティック液晶性ホスト化合物とを含み、更に、必要に応じて、その他の化合物を有してなる。
【0016】
<燐光発光性化合物>
前記燐光発光性化合物の分子コア直径と分子コア厚みとのアスペクト比(分子コア直径/分子コア厚み)としては、少なくとも3であり、3〜30がより好ましく、4〜20が特に好ましい。
前記アスペクト比が、3未満であると、分子揺らぎが大きくなり、配向性が低下することがあり、30を超えると、ディスコティック液晶性ホスト化合物への溶解性が極端に低下したり、配向性が低下することがある。
【0017】
前記分子コア直径とは、クロモフォア(共役系でつながった発色団、発光骨格)の最も長い分子長を意味する。
前記分子コア直径としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて、構造最適化計算を行う。構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、最も長い分子長のボール&スティック表示における長さを前記燐光発光性化合物の分子コア直径と定義する。
【0018】
前記分子コア厚みとは、前記クロモフォアを平面としたときの分子の厚みを意味する。
前記分子コア厚みについても、前記分子コア直径と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子コア厚みと定義する。
【0019】
前記燐光発光性化合物の分子半径としては、0.40nm〜3.0nmが好ましく、0.80nm〜2.5nmがより好ましく、1.20nm〜2.0nmが特に好ましい。
前記分子半径が、0.40nm未満であると、液晶中での配向性低下、発光強度の低下および可視域に発光波長を制御できないことがあり、3.0nmを超えると、成膜時の配向性低下や液晶への相溶性低下が生じることがある。
燐光発光性化合物の分子半径は、側鎖を含む分子全体を円盤としたときの半径と定義する。
【0020】
前記分子半径としては、前記分子コア直径と同様に、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて構造最適化計算を行う。前記構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、前記燐光発光性化合物の分子半径を求める。
【0021】
前記燐光発光性化合物としては、前記アスペクト比を満たすものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば遷移金属原子、ランタノイド原子を含む錯体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0022】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
前記配位子としては、例えば、ハロゲン配位子、芳香族炭素環配位子、含窒素ヘテロ環配位子、ジケトン配位子、カルボン酸配位子、アルコラト配位子、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
前記ハロゲン配位子としては、例えば、塩素配位子などが挙げられる。
前記芳香族炭素環配位子としては、例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオンなどが挙げられる。
前記含窒素ヘテロ環配位子としては、例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなどが挙げられる。
前記ジケトン配位子としては、例えば、アセチルアセトンなどが挙げられる。
前記カルボン酸配位子としては、例えば、酢酸配位子などが挙げられる。
前記アルコラト配位子としては、例えば、フェノラト配位子などが挙げられる。
【0023】
前記遷移金属原子としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらの中でも、白金が好ましく、前記燐光発光性化合物としては、白金錯体であることが好ましい。前記白金錯体としては、前記アスペクト比が3以上となる点で、平面状の配位構造である4座となる白金(白金錯体)が好ましく、更に配位子がほぼ平面となるサレン系、ポルフィリン系、6員環−5員環−炭素連結−5員環−6員環型、5員環−6員環−N連結−6員環−5員環型骨格の白金錯体がより好ましい。
【0024】
前記白金錯体としては、下記構造式(1)〜(5)で表される燐光発光性化合物から選択されることが好ましい。
【化10】

前記構造式(1)中、X、Y、Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。
m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、mは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
nは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。pは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。qは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
〜Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、好ましくは、R〜Rは、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基、シリル基を表し、R〜Rは、アルキル基、アリール基を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基及びアルキル基を置換基として有する前記置換基が好ましい。
m、n、p、qが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。
Arは、置換又は無置換のアリール基を表し、アリール基としては、例えばフェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0025】
【化11】

前記構造式(2)中、X、Y、Zは、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。
r、s、t、uは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、rは、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。sは、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。tは、0又は1が好ましく、uは、0又は1が好ましい。
〜Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、R〜Rは、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基、シリル基が好ましく、R〜Rは、アルキル基、アリール基が好ましい。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基及び直鎖状アルキル基を置換基として有する前記置換基が好ましい。
r、s、t、uが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。
とWとは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシル環状構造などが挙げられる。これらの中でも、高アスペクト比の観点でメチル基、シクロヘキシル環状構造が好ましい。
【0026】
【化12】

前記構造式(3)中、A、Bは環状構造を表し、Aが環を形成するとき、Bは環を形成していてもいなくてもよい。また、Aが環を形成しないとき、Bは環を形成する。Aは芳香環、複素環を表し、Bはヘテロ環、ヘテロアリールを表す。前記Aと前記Bとの組み合わせとしては、Aがベンゼン環かつBが非環、Aがベンゼン環かつBがピリジン環、Aが非環かつBがピリジン環が好ましい。R13〜R16は、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、ヘテロ環基を表し、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
前記環状構造としては、例えば、R13とR16、R14とR15がそれぞれ結合した芳香環を表す。
これらの中でも、アスペクト比及び分子サイズの観点でR13とR16、R14とR15がそれぞれ結合した芳香環が好ましい。
【0027】
前記構造式(3)のより好ましい態様としては、下記構造式(6)が挙げられる。
【化13】

前記構造式(6)中、Bは、芳香族及び非芳香族の6員環のいずれかを形成してもよい。
17〜R26は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R25とR26は互いに結合して環状構造を形成してもよい。
17、R20、R21、R24は、水素原子、アルキル基が好ましく、R18、R19、R22、R23は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基を表し、R25〜R26は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、R25とR26が結合した芳香環を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、具体的には、例えば、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基及び直鎖状アルキル基を置換基として有する前記置換基が好ましい。
【0028】
【化14】

ただし、前記構造式(4)中、R〜R、X、Y、Z、Ar、m、n、pは、前記構造式(1)と同義である。
M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子であり、R30は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表す。
gは、0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、具体的には、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基は、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基及び直鎖状アルキル基を置換基として有する前記置換基が好ましい。
【0029】
【化15】

ただし、前記構造式(5)中、R〜R、Z、Ar、m、nは、前記構造式(1)と同義であり、M、Q、R30、gは、前記構造式(4)と同義である。
【0030】
これらの中でも、燐光発光性化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化16】

【化17】

【化18】

【0031】
前記燐光発光性化合物の含有量としては、前記有機電界発光素子用材料の質量における含有量が、0.1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜25質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。
前記含有量が、0.1質量%未満であると、十分な発光輝度が得られないことがあり、30質量%を超えると、ディスコティック液晶性ホスト化合物への相溶性の低下、会合や濃度消光による発光効率の低下が生じることがある。
【0032】
<ディスコティック液晶性ホスト化合物>
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物は、平面性の高い円盤状の分子からなる液晶相であり、屈折率が、負の光学一軸性である。前記ディスコティック液晶性ホスト化合物としては、後述する本発明の有機電界発光素子の発光層に含まれるホスト材料として機能する。
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物が発現する液晶相としては、カラムナー液晶相、ディスコティックネマチック液晶相(ND液晶相)などが挙げられる。これらの中でも、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック液晶相が好ましい。
【0033】
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物としては、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【化19】

ただし、一般式(1)中、Hは、液晶母核部を表し、Lは、2価の連結基を表し、R〜Rは、水素原子又は置換基を表す。nは、1〜12、mは、0〜3を表す。
前記Lとしては、2価の連結基であり、例えば、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、環状脂肪族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基(−COO−及び−OCO−)、カルボニル基、アゾ基(−CH=N−及び−N=CH−)、アゾキシ基などが挙げられる。これらの中でも、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、エーテル基、エステル基、チオエーテル基、又はカルボニル基がより好ましい。
前記R〜Rとしては、水素原子又は置換基であり、水素原子、フッ素原子、アルコキシ基、又はアルキル基が好ましい。
【0034】
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告(J.C.S.,Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0035】
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
前記母核としては、下記一般式(H−1)〜(H−3)のいずれかで表される構造のものが好ましい。

ただし、前記一般式(H−1)〜(H−3)中、Z100〜Z107は各々独立に置換若しくは無置換の5員又は6員環からなる芳香環を表し、これらは更に芳香環で縮環されてもよい。Z103〜Z105のいずれか一つ及びZ106〜Z107のいずれかは環を形成しなくてもよい。A〜Aは炭素原子又は窒素原子を表す。
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物から形成される本発明の有機電界発光素子用材料としては、最終的に有機電界発光素子用材料に含まれる化合物がディスコティック液晶性ホスト化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合又は架橋し、高分子化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性ホスト化合物の好ましい例としては、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性ホスト化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0036】
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物としては、例えば下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化20】

【化21】

【化22】

【0037】
上記化合物(D1)〜(D17)において、(D1)、(D4)、(D6)、(D13)、及び(D15)〜(D17)が好ましく、(D4)、(D16)及び(D17)がより好ましい。
上記化合物(D1)〜(D17)において、L、L’、L’’、L’’’は、炭素数4〜18のアルキル基、炭素数4〜18のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数5〜19のアシルオキシ基、炭素数4〜19のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基、それらの組み合わせからなる群より選ばれる置換基が好ましい。これらは互いに結合して環を形成してもよい。前記環としては、芳香環、脂肪族環、複素環、及び複素芳香環のいずれであってもよい。
前記アルキル基としては、例えば、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基などが挙げられる。
前記アリーレン基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アシルオキシ基としては、例えば、オクタノイルオキシ基、デカノイルオキシ基、ウンデカノイルオキシ基、2−オクテノイルオキシ基、2−デセノイルオキシ基、2−ウンデセノイルオキシ基、2−ドデセノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、4−ヘキシルベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル基、4−ペンチルフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
これらの中でも、アルコキシ基、アシルオキシ基が好ましい。
【0038】
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物の含有量としては、前記有機電界発光素子用材料の質量における含有量が、70質量%〜99.9質量%が好ましく、75質量%〜99質量%がより好ましく、80質量%〜95質量%が特に好ましい。
前記含有量が、70質量%未満であると、液晶性が消失し、燐光発光性化合物の配向性が低下することがあり、99.9質量%を超えると、燐光発光性化合物の濃度が0.1質量%以下となるため、十分な発光輝度が得られないことがある。
【0039】
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径としては、0.5nm〜3nmが好ましく、1.0nm〜2.5nmがより好ましく、1.5nm〜2.0nmが特に好ましい。
前記分子半径が、0.5nm未満であると、液晶性が発現しないことがあり、3nmを超えると、有機電界発光素子用ホスト材料としての性能が低下することがある。
ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径は、側鎖を含む分子全体を円盤としたときの半径と定義する。
【0040】
前記分子半径としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて構造最適化計算を行う。前記構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、前記ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径を求める。
【0041】
前記燐光発光性化合物の分子半径と前記ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径とのサイズ比(燐光発光性化合物の分子半径/ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径)としては、0.8〜1.2であり、0.85〜1.15がより好ましく、0.9〜1.1が特に好ましい。
前記サイズ比が、0.8未満、又は1.2を超えると、有機電界発光素子の正面方向の輝度が減少する。これは、燐光発光性化合物を混合することにより、ディスコティック液晶性ホスト化合物の秩序度(オーダーパラメーター)が低下するため、成膜後、モノドメインかつ分子全体の平均が水平配向となっていても、個々の分子の配向方向にばらつきがでるためであると推測している。ここで、有機電界発光素子の正面方向とは、有機電界発光素子を立てて配置し、基板側から前記発光層へ垂線を引き、この方向から見た方向のことをいう。
なお、前記オーダーパラメーターとしては、有機電界発光素子の輝度の点で、0.60以上が好ましく、0.65以上がより好ましく、0.68以上が特に好ましい。
前記前記オーダーパラメーターSは、例えば、ラビング方向と平行な偏光及び垂直な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A‖及びA⊥)を日本分光社製の紫外可視分光光度計(V−670)にて測定し、極大吸収波長におけるA‖及びA⊥から、下記数式(1)及び(2)に従い求めることができる。
R=(2A‖−A⊥)/A⊥ ・・・数式(1)
S=(R−1)/(R+2) ・・・数式(2)
【0042】
<その他の化合物>
前記その他の化合物としては、フッ素原子含有化合物、添加剤などが挙げられる。前記フッ素原子含有化合物及び前記添加剤については後述する。
【0043】
(有機電界発光素子、有機電界発光素子の製造方法)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と、陰極と、発光層とを有してなり、更に、必要に応じて、その他の層を有してなる。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、本発明の有機電界発光素子用材料を用いた溶液プロセスにて形成する工程を含み、更に、必要に応じて、その他の工程を有してなる。
本発明の有機電界発光素子は、本発明の有機電界発光素子の製造方法により好適に製造される。以下、本発明の有機電界発光素子の説明を通じて、本発明の有機電界発光素子の製造方法の詳細についても明らかにする。
【0044】
<発光層>
前記発光層は、本発明の有機電界発光素子用材料を含み、更に、必要に応じてその他の材料を含む。なお、前記有機電界発光素子用材料の詳細については、上述した通りである。
【0045】
前記有機電界発光素子用材料に含まれる燐光発光性化合物の遷移双極子モーメントとしては、前記陽極に対して水平に配向されていることが好ましい。水平に配向されることで、陽極に対して垂直方向への発光成分が増加する点で有利である。
【0046】
遷移双極子モーメントの方向としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて行う。計算に使用する分子構造は、構造最適化計算を行って生成エネルギーが最小となる構造を用い、遷移双極子モーメントの方向を求める。
【0047】
−その他の材料−
前記その他の材料としては、フッ素原子含有化合物、添加剤などが挙げられる。
【0048】
−−フッ素原子含有化合物−−
前記フッ素原子含有化合物は、前記発光層中の空気界面側に偏在する性質を有し、前記フッ素原子含有化合物を前記発光層に含有させることで、前記有機電界発光素子用材料を前記陽極に対して効果的に水平方向に配向させることができる。
【0049】
前記フッ素原子含有化合物としては、フッ素原子を4個以上含む側鎖置換基を3個以上有することが好ましく、3個〜18個含んでいることがより好ましく、4個〜12個含んでいることが特に好ましい。
前記側鎖置換基の数が、3個未満であると、液晶性を発現しない、空気界面側にフッ素原子含有化合物が偏在しないことがあり、18個を超えると、溶剤溶解性や成膜性が低下することがある。
また、前記側鎖置換基1個あたり、フッ素原子を4個以上含むことが好ましく、6個〜30個含むことがより好ましく、8個〜25個含むことが特に好ましい。
前記フッ素原子が、4個未満であると、空気界面側にフッ素原子含有化合物が偏在しないことがあり、30個を超えると、溶剤溶解性や成膜性が低下することがある。前記フッ素原子の数は、元素分析、MASS、H−NMR、19F−NMRで測定することができる。
【0050】
これらの中でも、フッ素原子含有化合物としては、例えば以下の構造式(A)及び(B)で表される化合物が好ましい。
【化23】

ただし、構造式(A)中、R27、R28は、各々独立にフッ素原子を4個以上有する置換又は無置換のアルキル基を表し、−CH(CFH、−CH(CFH、−CH(CFH、−(CH、−CHCHOCHCH13などが好ましい。
【化24】

ただし、構造式(B)中、R29は、フッ素原子を4個以上有する置換又は無置換のアルキル基、アシル基を表し、−CH(CFH、−CH(CFH、−CH(CFH、−(CH、−CHCHOCHCH13などが好ましい。
【0051】
前記フッ素原子含有化合物の含有量としては、前記発光層における含有量が0.0001質量%〜10質量%が好ましく、0.001質量%〜5質量%がより好ましく、0.01質量%〜2質量%が特に好ましい。
前記含有量が、0.0001質量%未満であると、ディスコティック液晶性ホスト化合物に対する十分な水平配向性が得られないことがあり、10質量%を超えると、溶剤溶解性や成膜性の低下、液晶性の低下がおこることがある。前記含有量は、塗布液調製時の含有比で決まり、更に作製した膜の元素分析で測定することができる。
【0052】
また、ディスコティック液晶性ホスト化合物のディスコティックネマティック液晶相−等方相転移温度は、50℃〜300℃が好ましく、70℃〜300℃がより好ましく、100℃〜300℃が特に好ましい。
【0053】
配向させたディスコティック液晶性ホスト化合物としては、分子の配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、重合反応により実施する方法や、液晶相−ガラス転移を利用して行うことが好ましい。重合反応としては、重合開始剤を用いた熱重合反応や光重合反応などを用いることができるが、素子性能の観点からは重合開始剤を用いない方法が好ましく、スチリル基による熱重合反応やシランカップリング剤によるゾルゲル硬膜法が挙げられる。
【0054】
前記重合開始剤としては、例えば、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各公報記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号公報記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号公報記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各公報記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号公報記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号、米国特許4239850号の各公報記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号公報記載)が含まれる。
前記重合開始剤の使用量としては、塗布液の固形分の0.001質量%〜5質量%が好ましく、0.001質量%〜1質量%がより好ましい。
【0055】
<<発光層の形成方法>>
前記発光層の形成方法(製造方法)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、転写プロセス或いは溶液プロセスにて形成することが好ましい。
【0056】
前記転写プロセスとしては、例えば、圧力転写、熱転写、レーザー熱転写、熱圧転写などが挙げられる。
なお、転写に用いる転写基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、剥離性の観点から、フッ素系材料でコーティングされたもの又は接触角が大きいものが好ましい。
【0057】
前記溶液プロセスとしては、例えば、コート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法などが挙げられる。
前記コート法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などが挙げられる。
これらの中でも、パターン形成や多色の塗分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法が好ましい。
【0058】
なお、必要に応じて、前記有機電界発光素子用材料を有機溶媒などに溶解又は分散させて塗布液とし、溶液プロセスにて発光層を形成するようにしてもよい。
前記有機溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒などが挙げられる。
前記炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,2−ジクロロベンゼンなどが挙げられる。
前記ケトン系溶媒しては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどが挙げられる。
前記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどが挙げられる。
前記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどが挙げられる。
【0059】
前記発光層の厚みとしては、10nm〜100nmが好ましく、15nm〜50nmがより好ましく、20nm〜40nmが特に好ましい。
前記厚みが、10nm未満であると、正孔と電子の再結合が発光層で起こりにくくなるため、発光効率が低下することがあり、100nmを超えると、駆動電圧が高くなることがある。前記厚みは、例えば、水晶振動子(QCM)や触針式膜厚計を用いて測定することができる。
【0060】
前記発光層の形成方法としては、必要に応じて、溶液プロセスによって成膜された発光層用膜に光を照射することでディスコティック液晶性ホスト化合物の少なくとも一部を一軸配向させて、発光層を形成させるようにしてもよい。前記照射する光としては、一方向に直線偏光した紫外線、又は電子線などが挙げられる。これらの中でも、紫外線が好適に用いられる。
【0061】
前記光照射の照射エネルギーとしては、20mJ/cm〜50J/cmが好ましく、20mJ/cm〜5,000mJ/cmがより好ましく、100mJ/cm〜800mJ/cmが特に好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0062】
<陽極>
前記陽極としては、前記発光層に正孔を供給する電極としての機能を有していれば特に制限されない。本発明の有機電界発光素子の性質上、前記陽極及び前記陰極のうち少なくとも一方は透明であることが好ましい。
前記陽極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記陽極を構成する材料としては、例えば、導電性金属酸化物、金属、これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、無機導電性物質、有機導電性材料、これらとITOとの積層物などが挙げられる。
前記導電性金属酸化物としては、例えば、アンチモン、フッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などが挙げられる。
前記金属としては、例えば、金、銀、クロム、ニッケルなどが挙げられる。
前記無機導電性物質としては、例えば、ヨウ化銅、硫化銅などが挙げられる。
前記有機導電性材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどが挙げられる。
【0063】
前記陽極の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、湿式方式、化学的方式、物理的方式などが挙げられる。
前記湿式方式としては、例えば、印刷方式、コーティング方式などが挙げられる。
前記化学的方式としては、例えば、CVD、プラズマCVD法などが挙げられる。
前記物理的方式としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
【0064】
なお、前記陽極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0065】
前記陽極の厚みとしては、特に制限はなく、材料により適宜選択可能であるが、10nm〜10μmが好ましく、50nm〜5μmがより好ましい。前記厚みは、例えば、水晶振動子(QCM)や触針式膜厚計を用いて測定することができる。
【0066】
前記陽極の抵抗値としては、発光層などに確実に正孔を供給するために、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。
【0067】
<陰極>
前記陰極としては、前記発光層に電子を注入する電極としての機能を有していれば特に制限されない。
前記陰極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、その他の金属、これらの金属の合金などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することが好ましい。
前記アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウムなどが挙げられる。
前記アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。
前記その他の材料としては、例えば、金、銀、鉛、アルミニウムなどが挙げられる。
前記希土類金属としては、例えば、インジウム、イッテルビウムなどが挙げられる。
前記合金としては、例えば、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金などが挙げられる。
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを含有する材料が特に好ましい。前記アルミニウムを含有する材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)を意味する。
【0068】
前記陰極の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、湿式方式、化学的方式、物理的方式などが挙げられる。
前記湿式方式としては、例えば、印刷方式、コーティング方式などが挙げられる。
前記化学的方式としては、例えば、CVD、プラズマCVD法などが挙げられる。
前記物理的方式としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
【0069】
なお、前記陰極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタなどをして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0070】
前記陰極の厚みとしては、10nm〜1,000nmが好ましく、20nm〜500nmがより好ましく、50nm〜100nmが特に好ましい。
前記厚みが、50nm未満であると、酸化して劣化することがあり、1,000nmを超えると、成膜時に放射熱を得ることで劣化することがある。前記厚みは、触針式段差計で測定することができる。
【0071】
<その他の層>
前記その他の層としては、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、基板などが挙げられる。
【0072】
−正孔注入層、正孔輸送層−
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。該正孔注入層及び正孔輸送層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
これらの層に用いられる正孔注入材料又は正孔輸送材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、また、無機化合物であってもよい。
前記正孔注入材料及び正孔輸送材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、イリジウム錯体、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、三酸化モリブデンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、アリルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、イリジウム錯体、三酸化モリブデンが好ましい。
【0073】
前記正孔注入層及び正孔輸送層としては、電子受容性ドーパントを含有させることができる。
前記電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属、金属酸化物などが挙げられる。
前記ハロゲン化金属としては、例えば、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどが挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えば、五酸化バナジウム、三酸化モリブデンなどが挙げられる。
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどが挙げられる。
これらの電子受容性ドーパントは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記電子受容性ドーパントの使用量としては、材料の種類によって異なるが、正孔輸送材料又は正孔注入材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜50質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が特に好ましい。
【0075】
前記正孔注入層及び正孔輸送層の平均厚みとしては、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
【0076】
−電子輸送層−
前記電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層であり、上述したように、前記電子輸送層の三重項エネルギーは、陰極側隣接層の三重項エネルギーよりも大きいことが好ましい。
【0077】
前記電子輸送層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ベンゾニトリル系化合物、イミダゾピリジン誘導体などが挙げられる。
前記キノリン誘導体としては、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン;BCP)、BCPにLiをドープしたもの、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)などの8−キノリノール又はその誘導体を配位子とする有機金属錯体、BAlq(ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニル−フェノラト)−アルミニウム(III))などが挙げられる。これらの中でも、BCPにLiをドープしたもの、BAlqが特に好ましい。
【0078】
前記電子輸送層の形成方法としては、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法などの上述した方法により好適に形成することができる。
【0079】
前記電子輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1nm〜500nmが好ましく、10nm〜50nmがより好ましい。
前記電子輸送層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0080】
−電子注入層−
前記電子注入層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
前記電子注入層は、1種又は2種以上の材料からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子注入層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1nm〜200nmが好ましく、0.2nm〜100nmがより好ましく、0.5nm〜50nmが特に好ましい。
【0081】
−基板−
本発明の有機電界発光素子としては、前記基板上に設けられていることが好ましく、陽極と基板とが直接接する形で設けられていてもよいし、中間層を介在する形で設けられていてもよい。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、無アルカリガラス、ソーダライムガラスなどが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0082】
前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。
前記基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。前記基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
【0083】
前記基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、例えば、窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0084】
−電子ブロック層−
前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記電子ブロック層を構成する化合物としては、例えば前述の正孔輸送性ホスト材料として挙げたものが利用できる。また、前記電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子ブロック層の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布法、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記電子ブロック層の厚みとしては、1nm〜200nmが好ましく、1nm〜50nmがより好ましく、3nm〜10nmが特に好ましい。
【0085】
−保護層−
本発明の有機電界発光素子は、保護層によって全体が保護されていてもよい。
前記保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO、SiNx、SiNxOy、MgF、LiF、AlF、CaF、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質などが挙げられる。
【0086】
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが挙げられる。
【0087】
−封止容器−
本発明の有機電界発光素子としては、封止容器を用いて全体が封止されていてもよい。更に、前記封止容器と有機電界発光素子の間の空間には、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばパラフィン類、流動パラフィン類、フッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類などが挙げられる。
【0088】
−樹脂封止層−
本発明の有機電界発光素子としては、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により封止することで抑制するようにしてもよい。
前記樹脂封止層の樹脂素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、エステル系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、水分防止機能の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。前記エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
【0089】
前記樹脂封止層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法などが挙げられる。
【0090】
(有機電界発光素子の層構成)
図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。有機電界発光素子10としては、基板1上に形成された陽極2と、正孔注入層3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6と、電子注入層7と、陰極8とをこの順に積層してなる。なお、陽極2と陰極8とは電源を介して互いに接続されている。
【0091】
(用途)
本発明の有機電界発光素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に利用できる。
前記有機ELディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機電界発光素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機電界発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機電界発光素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法などが知られている。
【0092】
また、本発明の有機電界発光素子としては、前記燐光発光性化合物などにより得られる異なる発光色を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色を得ることができる。例えば、青色、緑色及び赤色用の有機電界発光素子とする場合、所望の波長付近に発光ピークを有する燐光発光性化合物を有機電界発光素子用材料又は発光層に含有させればよい。
また、例えば、白色用の有機電界発光素子とする場合、燐光発光性化合物として、420nm〜500nmに発光ピークを有する青色燐光発光性化合物、500nm〜570nmに発光ピークを有する緑色燐光発光性化合物、及び570nm〜650nmに発光ピークを有する赤色燐光発光性化合物を含有させるようにしてもよい。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0094】
(合成例1)
<燐光発光性化合物1の合成>
【化25】

(上記式中、Meは、メチル基を表す)
−化合物1aの合成−
2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(20g)、n−デシルブロミド(32g)及び炭酸カリウム(20g)を200mLのジメチルアセトアミド(DMAc)中に混合させ、60℃で4時間反応させた。反応液を濾過し、得られた濾液を酢酸エチル/飽和食塩水に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)することにより、化合物1a(20.3g)を得た。
−化合物1bの合成−
化合物1a(3g)、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン(0.73g)のエタノール溶液(30mL)に酢酸5滴を1mL駒込ピペットで滴下し、80℃で6時間反応させた。析出した固体を濾取し、エタノールで再結晶することにより、化合物1b(2.7g)を得た。
−燐光発光性化合物1の合成−
化合物1b(1.5g)、酢酸ナトリウム(0.19g)のアセトニトリル溶液(30mL)に、PtCl(0.61g)のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液(15mL)を80℃にて滴下し、7時間反応させた。反応液を減圧にて濃縮し、得られた固体をエタノールで洗浄し、シリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=8/1)し、酢酸エチルで再結晶することにより、燐光発光性化合物1(0.72g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は黄色固体であった。
燐光発光性化合物1の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、12.3であり、分子半径は、1.91nmであった。
【0095】
(合成例2)
<燐光発光性化合物3の合成>
【化26】

−化合物3bの合成−
合成例1で合成した化合物1a(4.37g)、o−フェニレンジアミン(0.85g)のエタノール溶液(45mL)に酢酸2滴を1mL駒込ピペットで滴下し、80℃で3時間反応させた。析出した固体を濾取し、エタノールで再結晶することにより、化合物3b(3.7g)を得た。
−燐光発光性化合物3の合成−
化合物3b(3g)、酢酸ナトリウム(0.39g)のアセトニトリル溶液(60mL)に、PtCl(1.27g)のDMSO溶液(30mL)を80℃にて滴下し、7時間反応させた。反応液を減圧にて濃縮し、得られた固体をエタノールで洗浄し、シリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=6/1)し、酢酸エチルで再結晶することにより、燐光発光性化合物3(1.8g)を得た。なお、化合物の同定は、元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は黄色固体であった。
燐光発光性化合物3の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、12.3であり、分子半径は、1.91nmであった。
【0096】
(合成例3)
<燐光発光性化合物4の合成>
【化27】

(上記式中、Etは、エチル基を表す)
−化合物4aの合成−
1,2−ジニトロベンゼン(4.6g)、硫酸銀(17g)の硫酸溶液(46mL)に、臭素(5mL)を滴下し、100℃で30分反応後、120℃で30分反応させ、更に180℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液を氷水に注加し、析出した固体を濾過した。得られた濾液に酢酸エチルを加え、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/5)し、ヘキサン/酢酸エチル=6/1で再結晶することにより、化合物4a(1.6g)を得た。
−化合物4bの合成−
化合物4a(0.6g)、ヨウ化銅(35mg)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(106mg)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(24mL)に、トリエチルアミン(1.27mL)を滴下した後、1−デシン(0.77mL)を滴下し、窒素雰囲気下室温で12時間反応させた。反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/40、展開後1/20)することにより、化合物4b(0.34g)を得た。
−化合物4cの合成−
10%Pd/C(63mg)に、化合物4b(0.33g)のエタノール溶液(10mL)を滴下した後、飽水ヒドラジン(4.93g)を滴下し、85℃で5時間反応させた。反応液をセライト濾過後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)することにより、化合物4c(0.27g)を得た。
−化合物4dの合成−
化合物4c(0.19g)、化合物1a(0.15g)のエタノール溶液(3mL)に、70℃にて酢酸1滴を1mL駒込ピペットで滴下し、6時間反応させた。減圧にて濃縮後、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/6)することにより、化合物4d(0.28g)を得た。
−燐光発光性化合物4の合成−
化合物4d(0.2g)、酢酸ナトリウム(37mg)のアセトニトリル溶液(7mL)に、PtCl(62mg)のDMSO溶液(3.5mL)を80℃にて滴下し、5時間反応させた。反応液を減圧にて濃縮し、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=1/1)することにより、燐光発光性化合物4(0.22g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は黄色アモルファス固体であった。
燐光発光性化合物4の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、12.3であり、分子半径は、1.91nmであった。
【0097】
(合成例4)
<燐光発光性化合物5の合成>
【化28】

−化合物5aの合成−
LAH(水素化アルミニウムリチウム)の1MのTHF溶液(130mL)をTHF100mLと混合し、氷冷下で、トランス−4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸(23.5g)のTHF溶液(80mL)を1.5時間かけて滴下した。滴下後、室温にて1.5時間反応させ、その後、80℃にて2時間反応させた。反応液を1N塩酸氷水に注加し、酢酸エチルにて抽出を行った。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/40、展開後酢酸エチル/ヘキサン=1/5)することにより、化合物5a(21.9g)を得た。
−化合物5bの合成−
化合物5a(21.9g)のアセトニトリル溶液(360mL)に室温にて、三臭化リン(16.8mL)を滴下し、45℃で3時間撹拌させた。室温まで冷却後、臭化カリウム(50g)を15分かけて添加した。更にピリジン(30mL)を滴下後、80℃にて3時間反応させた。反応液を酢酸エチル/氷水(混合比:酢酸エチル/氷水=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:ヘキサン)することにより、化合物5b(25.1g)を得た。
−化合物5cの合成−
化合物5b(24.1g)と2,6−ジメチル−4−ニトロフェノール(17.9g)のNMP溶液(240mL)に炭酸カリウム(20.2g)を加え、90℃で3.5時間反応後、100℃にて2.5時間反応させた。更に、130℃にて2時間反応させた後、1N塩酸水/酢酸エチル(混合比:1N塩酸水/酢酸エチル=1/1)に注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:ヘキサン、展開後酢酸エチル/ヘキサン=1/10)し、得られた粗体をメタノール洗浄することで、化合物5c(23.7g)を得た。
−化合物5dの合成−
還元鉄(27.8g)、塩化アンモニウム(2.7g)、イソプロピルアルコール(290mL)及び水(29mL)を三ツ口フラスコにいれ、95℃にてメカニカルスターラーで撹拌(300rpm)した。濃塩酸を少量滴下し、活性化させた後、化合物5c(23.7g)を少しずつ添加した。加熱還流下で3時間撹拌後、反応液をセライト濾過した。濾液を酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液(混合比:酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/10、展開後1/5)することで、化合物5d(21.3g)を得た。
−化合物5eの合成−
4−メチルピラゾール(5.0g)、1−クロロ−3−ヨードベンゼン(9.68g)、CuO(0.29g)炭酸セシウム(26.46g)及びサリチルアルデヒドオキシム(関東化学製)(1.11g)のDMAc溶液(100mL)を窒素雰囲気下にて140℃にて5時間反応した。反応液に酢酸エチルを加え、セライト濾過した。濾液を飽和食塩水に注加し、分液後、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/7)することで、化合物5e(6.35g)を得た。
−化合物5fの合成−
化合物5e(1.0g)、化合物5d(0.72g)、t−ブトキシカリウム(1.13g)、Pd(dba)(27mg)及び2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル(和光純薬製)(56.4mg)のトルエン溶液(10mL)を窒素雰囲気下にて110℃で6時間反応した。反応液に酢酸エチル及び水を加え、分液後、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/9)することで、化合物5f(0.65g)を得た。
−燐光発光性化合物5の合成−
化合物5f(0.4g)及びPtCl(0.17g)のベンゾニトリル溶液(3mL)を窒素雰囲気下にて190℃で24時間反応させた。反応後、ベンゾニトリルを減圧留去し、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=7/1)した。得られた固体をエタノールで洗浄後、酢酸エチルで洗浄することで、燐光発光性化合物5(0.3g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。
燐光発光性化合物5の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、3.1であり、分子半径は、1.93nmであった。
【0098】
(合成例5)
<燐光発光性化合物6の合成>
【化29】

−化合物6aの合成−
p−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)ブロモベンゼン(東京化成製)(4g)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(関東化学製)(0.135g)、Pd(dba)(0.15g)、塩化リチウム(0.33g)及び亜鉛ビス[ビス(トリメチルシリル)アミド](ALDRICH製)(3g)のTHF溶液(40mL)を窒素雰囲気下にて50℃で6時間反応させた。反応液に酢酸エチルを加え、1N塩酸水に注加した。炭酸カリウムで中和後、分液した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3.5)することで、化合物6a(3.1g)を得た。
−化合物6bの合成−
化合物5e(1.0g)、化合物6a(0.58g)、t−ブトキシカリウム(1.13g)、Pd(dba)(27mg)及び2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル(和光純薬製)(56.4mg)のトルエン溶液(10mL)を窒素雰囲気下にて110℃で6時間反応した。反応液に酢酸エチル及び水を加え、分液後、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/9)することで、化合物6b(0.57g)を得た。
−燐光発光性化合物6の合成−
化合物6b(0.3g)及びPtCl(0.14g)のベンゾニトリル溶液(3mL)を窒素雰囲気下にて190℃で24時間反応させた。反応後、ベンゾニトリルを減圧留去し、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=7/1)した。得られた固体をエタノールで洗浄後、酢酸エチルで洗浄することで、燐光発光性化合物6(0.27g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。
燐光発光性化合物6の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、3.1であり、分子半径は、1.74nmであった。
【0099】
(合成例6)
<燐光発光性化合物30の合成>
【化30】

−燐光発光性化合物30の合成−
合成例1の化合物1aの合成において、n−デシルブロミドをn−ペンチルブロミドに代えた以外は、合成例1の化合物1aの合成と同様にして、燐光発光性化合物30を合成した。なお、得られた化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。
燐光発光性化合物30の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、12.3であり、分子半径は、1.28nmであった。
【0100】
(合成例7)
<燐光発光性化合物16の合成>
【化31】

−化合物16aの合成−
Helvetica Chimica Acta, 1992, vol.75, No.5, p.1578−1592に記載の方法に従い、化合物16aを合成した。
−化合物16bの合成−
Dalton Transactions, 2003, No.1, p.153−159に記載の方法に従い、化合物16aから化合物16bを合成した。
−化合物16cの合成−
化合物16b(3.2g)のジエチルエーテル溶液(200mL)に、−50℃でLDA/THF溶液(18mL)を滴下し攪拌後、−10℃でメチル−4−ヘキシルベンゾエイト(7.8g)を添加し、6時間攪拌した。氷水に注加し、クロロホルム、1N塩酸水を加え、分液をおこなった。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製することで、化合物16c(6.7g)を得た。
−燐光発光性化合物16の合成−
化合物16c(3g)及びPtCl(1g)のベンゾニトリル溶液(30mL)を窒素雰囲気下にて190℃で24時間反応させた。反応後、ベンゾニトリルを減圧留去し、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製した。得られた固体をエタノールで洗浄後、酢酸エチルで洗浄することで、燐光発光性化合物16(2.7g)を得た。なお、得られた化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。
燐光発光性化合物16の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、5.5であり、分子半径は、1.39nmであった。
【0101】
(合成例8)
<燐光発光性化合物23の合成>
【化32】

−化合物23aの合成−
Helvetica Chimica Acta, 1991, vol.74, No.1, p.27−46、Journal of Medicinal Chemistry, 1998, vol.41,No.19,p.3582−3595、及び国際公開第2006/37982号に記載の方法に従い、合成した。
−化合物23cの合成−
化合物23a(22.4g)、化合物23b(和光純薬製)(3.6g)、CuO(0.29g)炭酸セシウム(26.46g)及びサリチルアルデヒドオキシム(関東化学製)(1.11g)のDMAc溶液(100mL)を窒素雰囲気下にて140℃にて5時間反応した。反応液に酢酸エチルを加え、セライト濾過した。濾液を飽和食塩水に注加し、分液後、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/7)することで、化合物23c(7.4g)を得た。
−燐光発光性化合物23の合成−
化合物23c(2.4g)及びPtCl(1g)のベンゾニトリル溶液(30mL)を窒素雰囲気下にて190℃で24時間反応させた。反応後、ベンゾニトリルを減圧留去し、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製した。得られた固体をエタノールで洗浄後、酢酸エチルで洗浄することで、燐光発光性化合物23(1.1g)を得た。
なお、得られた化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。
燐光発光性化合物23の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、5.4であり、分子半径は、1.37nmであった。
【0102】
(合成例9)
<ディスコティック液晶性ホスト化合物1の合成>
【化33】

(上記式中、Etは、エチル基を表す)
−ホスト1a(host−1a)の合成−
エチルジエチルホスホノアセテート(和光純薬製)(20mL)の1,2−ジメトキシエタン(DME)溶液(200mL)に、氷冷下でNaH(4.0g)を添加し、室温にて10分攪拌後、再び氷冷下でデカナール(和光純薬製)(18.9mL)のDME溶液(60mL)を滴下した。80℃で3時間反応後、反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/30)することにより、ホスト1a(18.9g)を得た。
−ホスト1b(host−1b)の合成−
ホスト1a(10.6g)のDME溶液(100mL)に、水酸化リチウム1水和物(4.3g)水溶液(40mL)を滴下し、80℃にて5時間反応させた。反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)し、ノルマルヘキサンにて再結晶することにより、ホスト1b(7.0g)を得た。
−ディスコティック液晶性ホスト化合物1の合成−
ホスト1b(8.6g)、ジイソプロピルエチルアミン(7.9mL)のTHF溶液(80mL)に、−15℃下でメシルクロリド(3.2mL)を滴下した。1時間攪拌後、反応液にジイソプロピルエチルアミン(7.9mL)を加え、続いて2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン水和物(2g)のTHF溶液(80mL)を滴下し、触媒量のジメチルアミノピリジンを加え、室温にて6時間攪拌した。反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/8)し、エタノール/ノルマルヘキサン=95/5にて再結晶することにより、ディスコティック液晶性ホスト化合物1(5.0g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は白色固体であった。ディスコティック液晶性ホスト化合物1の分子半径をGaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、分子半径は、1.80nmであった。
偏光顕微鏡を用いた液晶相の観察をおこなったところ、下記温度域にて液晶相を示した。
Col 48 Nd 79 Iso
(Col:カラムナー相、Nd:ディスコティックネマチック相、Iso:等方相)
【0103】
(合成例10)
<ディスコティック液晶性ホスト化合物4の合成>
以下の手順により、下記構造式で表されるディスコティック液晶性ホスト化合物4を合成した。
【化34】

(上記式中、Meは、メチル基を表し、Etは、エチル基を表し、Phは、フェニル基を表す。)
各々の工程は、良好な収率(60%〜80%)で反応をおこなうことができ、ディスコティック液晶性ホスト化合物4を5.7g得た。
なお、前記化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。前記化合物の外観は、白色固体であった。ディスコティック液晶性ホスト化合物4の分子半径をGaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、分子半径は、1.89nmであった。
偏光顕微鏡を用いた液晶相の観察をおこなったところ、下記温度域にて液晶相を示した。
Cr 48 Nd 116 Iso
(Cr:結晶相、Nd:ディスコティックネマチック相、Iso:等方相)
【0104】
(合成例11)
<ディスコティック液晶性ホスト化合物5の合成>
以下の手順により、下記構造式で表されるディスコティック液晶性ホスト化合物5を合成した。
【化35】

上記工程は、良好な収率(60%〜80%)で反応をおこなうことができ、ディスコティック液晶性ホスト化合物5を3.2g得た。
なお、前記化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。前記化合物の外観は、白色固体であった。ディスコティック液晶性ホスト化合物5の分子半径をGaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、分子半径は、1.87nmであった。
偏光顕微鏡を用いた液晶相の観察をおこなったところ、下記温度域にて液晶相を示した。
Cr 108 Col 166 Iso
(Cr:結晶相、Col:カラムナー相、Iso:等方相)
【0105】
(合成例12)
<ディスコティック液晶性ホスト化合物6の合成>
国際公開第2005/123737号記載の方法に従い、下記構造式で表されるディスコティック液晶性ホスト化合物6を合成した。
【化36】

なお、前記化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。前記化合物の外観は、淡黄色固体であった。ディスコティック液晶性ホスト化合物6の分子半径をGaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、分子半径は、1.46nmであった。
偏光顕微鏡を用いた液晶相の観察をおこなったところ、下記温度域にて液晶相を示した。
Cr 195 Nd 177 Iso
(Cr:結晶相、Nd:ディスコティックネマチック相、Iso:等方相)
【0106】
(実施例1)
−有機電界発光素子用材料1の作製−
ディスコティック液晶性ホスト化合物1(95mg)及び燐光発光性化合物1(5mg)を混合し、THFで溶解後、窒素雰囲気下90℃で20分加熱乾燥した後、真空検体乾燥機にて120℃で1時間減圧乾燥させて、有機電界発光素子用材料1を作製した。燐光発光性化合物1とディスコティック液晶性ホスト化合物1とのサイズ比(燐光発光性化合物1の分子半径/ディスコティック液晶性ホスト化合物1の分子半径)を算出したところ、1.06であった。
【0107】
(実施例2〜12)
−有機電界発光素子用材料2〜12の作製−
下記表1に示されるディスコティック液晶性ホスト化合物(95mg)及び燐光発光性化合物(5mg)を用いて、有機電界発光素子用材料1同様の方法で有機電界発光素子用材料2〜12を作製した。各有機電界発光素子用材料における燐光発光性化合物とディスコティック液晶性ホスト化合物とのサイズ比を表1に示す。
【0108】
なお、実施例6で用いられたディスコティック液晶性ホスト化合物2は、特開平10−321371号公報に記載されている、以下の構造式で表される化合物である。
【化37】

【0109】
(比較例1)
−比較有機電界発光素子用材料1の作製−
実施例1において、ディスコティック液晶性ホスト化合物1を特開平10−321371号公報に記載されているディスコティック液晶性ホスト化合物2に代えた以外は実施例1と同様にして、比較有機電界発光素子用材料1を作製した。燐光発光性化合物1とディスコティック液晶性ホスト化合物2とのサイズ比を算出したところ、1.55であった。
【化38】

【0110】
(比較例2)
−比較有機電界発光素子用材料2の作製−
実施例1において、燐光発光性化合物1を特開平10−321371号公報に記載の比較燐光発光性化合物1に代えた以外は、実施例1と同様にして比較有機電界発光素子用材料2を作製した。比較燐光発光性化合物1とディスコティック液晶性ホスト化合物1とのサイズ比を算出したところ、0.34であった。
【化39】

【0111】
(比較例3)
−比較有機電界発光素子用材料3の作製−
実施例1において、燐光発光性化合物1を特開2002−43056号公報に記載の比較燐光発光性化合物2に代えた以外は、実施例1と同様にして比較有機電界発光素子用材料3を作製した。比較燐光発光性化合物2とディスコティック液晶性ホスト化合物1とのサイズ比を算出したところ、0.43であった。
【化40】

【0112】
(比較例4)
−比較有機電界発光素子用材料4の作製−
比較例2において、ディスコティック液晶性ホスト化合物1を上記構造式で表されるディスコティック液晶性ホスト化合物2に代えた以外は、比較例2と同様にして比較有機電界発光素子用材料4を作製した。比較燐光発光性化合物1とディスコティック液晶性ホスト化合物2とのサイズ比を算出したところ、0.56であった。
【0113】
(比較例5)
−比較有機電界発光素子用材料5の作製−
比較例3において、ディスコティック液晶性ホスト化合物1を特開2002−43056号公報に記載のディスコティック液晶性ホスト化合物3に代えた以外は、比較例3と同様にして比較有機電界発光素子用材料5を作製した。比較燐光発光性化合物2とディスコティック液晶性ホスト化合物3とのサイズ比を算出したところ、0.57であった。
【化41】

【0114】
(比較例6)
−比較有機電界発光素子用材料6の作製−
実施例1において、燐光発光性化合物1を下記構造式で表される比較燐光発光性化合物3に代えた以外は、実施例1と同様にして比較有機電界発光素子用材料6を作製した。比較燐光発光性化合物3とディスコティック液晶性ホスト化合物1とのサイズ比を算出したところ、0.86であった。
【化42】

【0115】
(比較例7)
−比較有機電界発光素子用材料7の作製−
実施例1において、ディスコティック液晶性ホスト化合物1を下記構造式で表される非液晶性ホスト化合物1(NPD)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較有機電界発光素子用材料7を作製した。燐光発光性化合物1と非液晶性ホスト化合物1とのサイズ比を算出したところ、1.05であった。
【化43】

【0116】
(比較例8)
−比較有機電界発光素子用材料8の作製−
実施例1において、燐光発光性化合物1を下記構造式で表される比較燐光発光性化合物4に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較有機電界発光素子用材料8を作製した。比較燐光発光性化合物4とディスコティック液晶性ホスト化合物1とのサイズ比を算出したところ、0.77であった。
【化44】

【0117】
(比較例9)
−比較有機電界発光素子用材料9の作製−
比較例1において、燐光発光性化合物1を下記構造式で表される比較燐光発光性化合物5に代えた以外は、比較例1と同様にして、比較有機電界発光素子用材料9を作製した。比較燐光発光性化合物5とディスコティック液晶性ホスト化合物2とのサイズ比を算出したところ、1.23であった。
【化45】

【0118】
(有機電界発光素子用材料1〜12及び比較有機電界発光素子用材料1〜9の評価)
−評価セルの作製−
作製した有機電界発光素子用材料1を、グローブボックス内でサントレーディング社製の液晶セルに120℃で注入し、エポキシ樹脂で封止をおこなった。100℃でアニール後、徐冷することで評価セル1を作製した。なお、サントレーディング社製の液晶セルは、ITO透明電極付きのガラス板1.1mmに、ラビング処理をおこなった垂直配向性ポリイミド配向膜JALS−682(JSR社製)を付設し、セルギャップ8μmで、エポキシ樹脂シール付きの液晶セルである。有機電界発光素子用材料2〜12についても同様に評価セル2〜12を作製した。
【0119】
−比較評価セルの作製−
有機電界発光素子用材料1を比較有機電界発光素子用材料1〜9に代えた以外は同様にして比較評価セル1〜9を作製した。
【0120】
<オーダーパラメーターの測定>
作製した評価セル1に、ラビング方向と平行な偏光及び垂直な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A‖及びA⊥)を日本分光社製の紫外可視分光光度計(V−670)にて測定した。極大吸収波長におけるA‖及びA⊥から、オーダーパラメーターSを下記数式(1)及び(2)に従い求めた。結果を表1に示す。評価セル2〜12及び比較評価セル1〜9についても同様に行った。
R=(2A‖−A⊥)/A⊥ ・・・数式(1)
S=(R−1)/(R+2) ・・・数式(2)
【0121】
<偏光発光比測定>
作製した液晶セル1に対し、45°の角度から励起光(浜松ホトニクス製・紫外可視(UV−VIS)ファイバ光源L10290)を入射し、90°の角度(基板法線方向)に設置された偏光子を配した蛍光光度計(オーシャンオプティクス社製小型光ファイバー蛍光検出器USB4000−FL)にて、偏光発光測定をおこなった。結果を表1に示す。評価セル2〜12及び比較評価セル1〜9についても同様に行った。
【0122】
【表1】

(有機電界発光素子材料の欄中、「比較」とは、比較有機電界発光素子材料を表す。燐光発光性化合物の欄中、「比較」とは、比較燐光発光性化合物を表す。ディスコティック液晶性ホスト化合物の欄中、「非液晶」とは、非液晶性ホスト化合物を表す。)
【0123】
表1からわかるように、燐光発光性化合物のアスペクト比が3より大きく、燐光発光性化合物の分子コア直径とディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径とのサイズ比が0.8〜1.2となる有機電界発光素子用材料は、オーダーパラメーター並びに偏光発光比が高いことが確認された。
【0124】
(実施例13)
<評価基板1の作製>
<<水平配向発光の確認>>
25mm×25mm×0.7mmの石英ガラス基板を洗浄し、UVオゾン処理した後、配向膜(日産化学製水平配向膜SE−130)をスピンコート塗布し、100℃で10分、その後180℃で1時間加熱することで下地基板を得た。
ディスコティック液晶性ホスト化合物1(92mg)、燐光発光性化合物1(7mg)及び下記構造式で表されるフッ素原子含有化合物1(1mg)の固形分含有率2%のTHF溶液を調製し、窒素雰囲気下で作製した下地基板上にスピンコート(500rpm、5秒間、その後2,000rpm、20秒間)させた。50℃にて真空乾燥し、評価基板1を作製した。評価基板1を偏光顕微鏡クロスニコルで観察したところ、暗視野であり水平配向していることを確認した。なお、一般にディスコティック液晶は、分子平面内の屈折率に異方性を持たないため、前記条件下では水平配向している場合に、暗視野となり、水平配向していない場合には、明視野となる。
【化46】

【0125】
(実施例14〜18)
<評価基板2〜6の作製>
<<水平配向発光の確認>>
下記表2に示されるディスコティック液晶性ホスト化合物(92mg)、燐光発光性化合物(7mg)を用いた以外は、評価基板1の作製方法と同様の方法で評価基板2〜6を作製した。評価基板2〜6を偏光顕微鏡クロスニコルで観察したところ、暗視野であり水平配向していることを確認した。
【0126】
(比較例10)
<比較評価基板1の作製>
実施例13において、ディスコティック液晶性ホスト化合物1を特開平10−321371号公報に記載されているディスコティック液晶性ホスト化合物2に代えた以外は実施例13と同様にして、比較評価基板1を作製した。
【0127】
(比較例11)
<比較評価基板2の作製>
実施例13において、燐光発光性化合物1を特開平10−321371号公報に記載の比較燐光発光性化合物1に代えた以外は、実施例13と同様にして比較評価基板2を作製した。
【0128】
(比較例12)
<比較評価基板3の作製>
実施例13において、燐光発光性化合物1を特開2002−43056号公報に記載の比較燐光発光性化合物2に代えた以外は、実施例13と同様にして比較評価基板3を作製した。
【0129】
(比較例13)
<比較評価基板4の作製>
比較例12において、ディスコティック液晶性ホスト化合物1を上記構造式で表されるディスコティック液晶性ホスト化合物2に代えた以外は、比較例2と同様にして比較評価基板4を作製した。
【0130】
(比較例14)
<比較評価基板5の作製>
比較例12において、ディスコティック液晶性ホスト化合物1を特開2002−43056号公報に記載のディスコティック液晶性ホスト化合物3に代えた以外は、比較例12と同様にして比較評価基板5を作製した。
【0131】
(比較例15)
<比較評価基板6の作製>
実施例13において、燐光発光性化合物1を上記構造式で表される比較燐光発光性化合物3に代えた以外は、実施例13と同様にして比較評価基板6を作製した。
【0132】
(比較例16)
<比較評価基板7の作製>
実施例13において、ディスコティック液晶性ホスト化合物1を上記構造式で表される非液晶性ホスト化合物1(NPD)に代えた以外は、実施例13と同様にして、比較評価基板7を作製した。
【0133】
(比較例17)
<比較評価基板8の作製>
実施例13において、燐光発光性化合物1を上記構造式で表される比較燐光発光性化合物4に代えた以外は、実施例13と同様にして、比較評価基板8を作製した。
【0134】
(比較例18)
<比較評価基板9の作製>
比較例10において、燐光発光性化合物1を上記構造式で表される比較燐光発光性化合物5に代えた以外は、比較例10と同様にして、比較評価基板9を作製した。
【0135】
(評価基板1〜6及び比較評価基板1〜9の評価)
<PL発光分布評価>
作製した評価基板1に対し、PL発光分布測定(変角測定)を行った(駿河精機製自動θステージ使用)。各角度において得られた輝度の総和で規格化し、その90°方向(基板法線方向)における評価基板と非液晶性ホスト化合物1を用いた等方的発光する比較評価基板7に対する発光強度比を算出し、発光分布とした。結果を表2に示す。評価基板2〜6及び比較評価基板1〜9についても同様に行った。
【0136】
【表2】

(表2中、「比較基板」とは、比較評価基板を表す。燐光発光性化合物の欄中、「比較」とは、比較燐光発光性化合物を表す。ディスコティック液晶性ホスト化合物の欄中、「非液晶」とは、非液晶性ホスト化合物を表す。)
【0137】
表2から、燐光発光性化合物のアスペクト比が3より大きく、燐光発光性化合物の分子コア直径とディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径とのサイズ比が0.8〜1.2となる有機電界発光素子用材料は、発光分布が高いことから正面方向の輝度が増加することがわかる。
【0138】
(実施例19)
<有機電界発光素子Aの作製>
−塗布液1の調製−
上記構造式で表される燐光発光性化合物1(0.1質量%)、上記構造式で表されるディスコティック液晶性ホスト化合物1(0.9質量%)に、MEK(メチルエチルケトン)(99.0質量%)を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液1)を得た。
【0139】
−有機電界発光素子Aの作製−
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚みで蒸着し製膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板をエッチング及び洗浄した。
このITOガラス基板上に、下記構造式で表されるPTPDES−2(ケミプロ化成製、Tg=205℃)2質量部を電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解し、厚みが約40nmとなるようにスピンコート(2,000rpm、20秒間、)した後、120℃で30分間乾燥と160℃で10分間アニール処理することで、正孔注入層を成膜した。
【0140】
【化47】

【0141】
この正孔注入層上に前記塗布液1をグローブボックス(露点−68度、酸素濃度10ppm)内で厚みが約40nmとなるようにスピンコート(1,300rpm、30秒間、)し、発光層とした。
次いで、発光層上に、電子輸送層として、下記構造式で表されるBAlq(ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニル−フェノラト)−アルミニウム(III))を、厚みが40nmとなるように真空蒸着法にて形成した。
【0142】
【化48】

【0143】
電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法にて形成した。更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、有機電界発光素子Aを作製した。
【0144】
(実施例20〜24)
<有機電界発光素子B〜Fの作製>
実施例19において、塗布液1に含まれる燐光発光性化合物1及びディスコティック液晶性ホスト化合物1をそれぞれ、下記表3に示す組み合わせの燐光発光性化合物及びディスコティック液晶性ホスト化合物に変更した以外は、実施例19と同様にして、有機電界発光素子B〜Fを作製した。
【0145】
(比較例19及び20)
<有機電界発光素子a及びbの作製>
実施例19において、塗布液1に含まれる燐光発光性化合物1及びディスコティック液晶性ホスト化合物1をそれぞれ、表3に示す組み合わせの燐光発光性化合物及びディスコティック液晶性ホスト化合物変更した以外は、実施例19と同様にして、有機電界発光素子a及びbを作製した。
【0146】
(有機電界発光素子の評価)
<外部量子効率>
KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に輝度が1,000cd/m付近の外部量子効率を輝度換算法により算出した。なお、比較発光材料1を用いた比較例19の外部量子効率を1としたときの相対値を算出した。
【0147】
<素子耐久性評価>
初期の発光輝度500cd/mで、室温において、有機電界発光素子A〜F、並びにa及びbに定電流を印加して連続的に駆動を行い、発光輝度が1/2に低下するまでの時間を測定した。測定した値を基に、有機電界発光素子aを1としたときの、実施例における有機電界発光素子A〜F及びbの輝度半減期を相対的に評価した。結果を表3に示す。
【0148】
【表3】

【0149】
表3からわかるように、比較例である有機電界発光素子a及びbと比較して、本発明の有機電界発光素子A〜Fの方が、外部量子効率及び素子耐久性(輝度半減期)に優れる結果となった。有機電界発光素子A〜F、並びに有機電界発光素子a及びbの材料の電子親和力及びイオン化ポテンシャルはほとんど同じであることから、素子耐久性の差は、燐光発光性化合物の遷移双極子モーメントが、陽極に対して水平に配向されていることによる光取り出し効率の向上に起因すると推測される。
【0150】
(実施例25〜30、並びに比較例21及び22)
−有機電界発光素子G〜L、並びに有機電界発光素子c及びdの作製−
0.7mmの厚み、25mm角のガラス基板上に陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み150nmにスパッタ蒸着したのち、エッチング及び洗浄した。ITOを成膜した基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。このガラス基板上に以下の各層を形成した。
次に、陽極(ITO)上に、下記構造式で表される化合物A(米国特許出願公開2008/0220265号明細書に記載のCompound1)5質量部を、電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)99.5質量部に溶解乃至分散させた正孔注入層塗布液をスピンコートした後、200℃で30分間乾燥して、厚み5nmの正孔注入層を形成した。なお、前記スピンコート及び乾燥は、グローブボックス(露点−60℃、酸素濃度1ppm)内で行った。
【化49】

【0151】
次に、下記構造式で表される化合物B(米国特許出願公開2008/0220265号明細書に記載のHTL−1)10質量部を、トルエン(脱水)(和光純薬製)99.0質量部に溶解させて、正孔輸送層塗布液を調製した。この正孔輸送層塗布液を正孔注入層上にスピンコートし、200℃で30分間乾燥することで厚み18nmの正孔輸送層を形成した。
【化50】

【0152】
次に、正孔輸送層上に、ホスト材料としての下記表4で表される化合物9質量部と、発光材料としての下記表4で表される化合物1質量部とを、THF99.0質量部に溶解乃至分散し、モレキュラーシーブ(商品名:モレキュラーシーブ3A 1/16、和光純薬株式会社製)を添加し、グローブボックス中で孔径0.22μmのシリンジフィルターを用いて濾過して調製した発光層塗布液を、グローブボックス中でスピンコートし、100℃で30分間乾燥して、厚み30nmの発光層を形成した。
次に、前記発光層上に、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium−(III))を真空蒸着法にて蒸着して、厚み40nmの電子輸送層を形成した。
次に、前記電子輸送層上にフッ化リチウム(LiF)を蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
次に、前記電子注入層上に金属アルミニウムを蒸着し、厚み70nmの陰極を形成した。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
【0153】
以上のようにして得られた有機電界発光素子G〜L、並びにc及びdについて、実施例19と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0154】
【表4】

【0155】
表4からわかるように、比較例である有機電界発光素子c及びdと比較して、本発明の有機電界発光素子G〜Lの方が、外部量子効率及び素子耐久性(輝度半減期)に優れる結果となった。
【0156】
(実施例31〜36、並びに比較例23及び24)
−正孔注入層(PEDOT/ナフィオン)用塗布液の合成−
ナフィオン(登録商標)(DE521)水性コロイド状分散液(5.0%)の60g、脱イオン水240g、及び過硫酸ナトリウム1.0gを500mLのセパラブルフラスコへ量り入れ、Nフローしながら1時間撹拌した。次に、硫酸鉄(III)n水和物(和光純薬製、091−02832)を350μg添加した。さらに、3,4−エチレンジオキシチオフェン1.5gを添加し、4時間撹拌した。
イオン交換樹脂「レバチット」(登録商標)S100(ランクセス社製)の10g、及び、イオン交換樹脂「レバチット」(登録商標)MP62WS(ランクセス社製)の10gを加え、1時間撹拌することによって反応を停止させた。なお、2つのイオン交換樹脂は、使用前に水に何の色もなくなるまで別々に脱イオン水で洗浄した。
このようにして得られた分散液をろ過により、イオン交換樹脂を分離し、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/ナフィオンの水分散液を得た。
得られた水分散液に1Nの塩酸を添加し、遠心分離処理後、固形分を回収し、脱イオン水を添加し、再度遠心分離処理を施すことによって、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)と酸ポリマーとを含有するスラリーを回収した。
このスラリー99.85質量部と、硬化剤としてフェネチルトリメトキシシラン0.15と、あらかじめモレキュラーシーブス 3A 1/8(和光純薬製)を用いて脱水処理をした非水系溶剤(イソプロパノールとエチレングリコールとの9:1混合溶剤)400質量部とを混合することにより、固形分20質量%の正孔注入層用塗布液を調製した。
【0157】
−有機電界発光素子M〜R、並びに有機電界発光素子e及びfの作製−
0.7mmの厚み、25mm角のガラス基板上に陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み150nmにスパッタ蒸着したのち、エッチング及び洗浄した。ITOを成膜した基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。このガラス基板上に以下の各層を形成した。
次に、陽極(ITO)上に、前期正孔注入層塗布液をスピンコートした後、100℃で10分間乾燥し、150℃で30分間アニール処理することで、膜厚40nmの正孔注入層を形成した。なお、前記スピンコート及び乾燥は、グローブボックス(露点−60℃、酸素濃度1ppm)内で行った。
次に、上記構造式で表される化合物B(米国特許出願公開2008/0220265号明細書に記載のHTL−1)4質量部を、電子工業用2−ブタノン(関東化学製)996質量部に溶解させて、正孔輸送層塗布液を調製した。この正孔輸送層塗布液を前記正孔注入層上にスピンコートし、150℃で30分間乾燥することで厚み10nmの正孔輸送層を形成した。
【0158】
次に、前記正孔輸送層上に、ホスト材料としての下記表5で表される化合物9質量部と、燐光発光材料としての下記表5で表される化合物1質量部とを、THF(溶媒)990質量部に溶解乃至分散し、モレキュラーシーブ(商品名:モレキュラーシーブ3A 1/16、和光純薬株式会社製)を添加し、グローブボックス中で孔径0.22μmのシリンジフィルターを用いて濾過して調製した発光層塗布液を、グローブボックス中でスピンコートし、100℃で30分間乾燥して、厚み30nmの発光層を形成した。
次に、前記発光層上に、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium−(III))を真空蒸着法にて蒸着して、厚み40nmの電子輸送層を形成した。
次に、前記電子輸送層上にフッ化リチウム(LiF)を蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
次に、前記電子注入層上に金属アルミニウムを蒸着し、厚み70nmの陰極を形成した。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
【0159】
以上のようにして得られた有機電界発光素子M〜R、並びに有機電界発光素子e及びfについて、実施例19と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0160】
【表5】

【0161】
表5からわかるように、比較例である有機電界発光素子e及びfと比較して、本発明の有機電界発光素子M〜Rの方が、外部量子効率及び素子耐久性(輝度半減期)に優れる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の有機電界発光素子用材料は、高い光取り出し効率、高い発光効率、高い偏光発光比、及び高い発光量子収率を両立することができるので、発光層の材料として使用することで、例えば、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
本発明の有機電界発光素子は、前記有機電界発光素子用材料を発光層に含むので、高い光取り出し効率、高い発光効率、高い偏光発光比、及び高い発光量子収率を両立することができ、例えば、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0163】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
10 有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子コア直径と分子コア厚みとのアスペクト比(分子コア直径/分子コア厚み)が少なくとも3である燐光発光性化合物と、
ディスコティック液晶性ホスト化合物と、を少なくとも有し、
前記燐光発光性化合物の分子半径と、前記ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径とのサイズ比(燐光発光性化合物の分子半径/ディスコティック液晶性ホスト化合物の分子半径)が、0.8〜1.2であることを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【請求項2】
燐光発光性化合物が、白金錯体である請求項1に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項3】
ディスコティック液晶性ホスト化合物が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、Hは、液晶母核部を表し、Lは、2価の連結基を表し、R〜Rは、水素原子又は置換基を表す。nは、1〜12の整数を表し、mは、0〜3の整数を表す。
【請求項4】
ディスコティック液晶性ホスト化合物が、ディスコティックネマチック液晶相を発現する請求項1から3のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項5】
燐光発光性化合物が、下記構造式(1)から(5)のいずれかで表される燐光発光性化合物から選択される少なくとも1つである請求項1から4のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料。
【化2】

ただし、前記構造式(1)中、X、Y、Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。Arは、置換又は無置換のアリール基を表す。
【化3】

ただし、前記構造式(2)中、X、Y、Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。r、s、t、uは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、r、s、t、uが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。WとWとは、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【化4】

ただし、前記構造式(3)中、A、Bは、環状構造を表し、Aが環を形成するとき、Bは環を形成していてもいなくてもよい。また、Aが環を形成しないとき、Bは環を形成する。Aは芳香環又は複素環を表し、Bはヘテロ環又はヘテロアリールを表す。R13〜R16は、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【化5】

ただし、前記構造式(4)中、R〜R、X、Y、Z、Ar、m、n、pは、前記構造式(1)と同義であり、M、Qは、炭素原子又は窒素原子であり、R30は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、gは、0〜3の整数を表す。
【化6】

ただし、前記構造式(5)中、R〜R、Z、Ar、m、nは、前記構造式(1)と同義であり、M、Q、R30、gは、前記構造式(4)と同義である。
【請求項6】
燐光発光性化合物が、下記構造式(6)で表される請求項1から5のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料。
【化7】

ただし、前記構造式(6)中、Bは、芳香族及び非芳香族の6員環のいずれかを形成してもよい。R17〜R26は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R25とR26は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【請求項7】
陽極と陰極との間に、請求項1から6のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料を含有する発光層を少なくとも有する有機電界発光素子において、
燐光発光性化合物の遷移双極子モーメントが、前記陽極に対して水平に配向されていることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項8】
発光層が、フッ素原子含有化合物を0.0001質量%〜10質量%含有する請求項7に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
フッ素原子含有化合物が、フッ素原子を4個以上含む側鎖置換基を3個以上有する請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
フッ素原子含有化合物が、以下の構造式(A)及び(B)のいずれかで表される請求項8から9のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【化8】

ただし、前記構造式(A)中、R27、R28は、各々独立にフッ素原子を4個以上有する置換又は無置換のアルキル基を表す。
【化9】

ただし、前記構造式(B)中、R29は、フッ素原子を4個以上有する置換又は無置換のアルキル基、アシル基を表す。
【請求項11】
発光層を、請求項1から6のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料を用いた溶液プロセスにて形成する工程を少なくとも含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−228686(P2011−228686A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75917(P2011−75917)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】