説明

有機電界発光素子

【課題】陰極と陽極との間の電荷の移動度を素子構成によって改善し、低電圧駆動を可能にする有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】有機発光層を備えた積層膜が、下記一般式(1)に示す有機材料と金属材料との混合層を備えている。


1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、カルボニル基、カルボニルエステル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基、ニトリル基、ニトロ基、シアノ基、またはシリル基から選ばれる置換基。X1〜X6は、それぞれ独立に炭素もしくは窒素原子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーディスプレイなどに用いられる有機電界発光素子に関し、特には有機層を備えた自発光型の有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に、有機層を備えた自発光型の有機電界発光素子の一構成例を示す。この図に示す有機電界発光素子1は、例えばガラス等からなる透明な基板2上に設けられている。この有機電界発光素子1は、基板2上に設けられたITO(Indium Tin Oxide:透明電極)からなる陽極3、この陽極3上に設けられた有機層4、さらにこの上部に設けられた陰極5とで構成されている。有機層4は、陽極側から、例えば正孔注入層4a、正孔輸送層4bおよび電子輸送性の発光層4cを順次積層させた構成となっている。このように構成された有機電界発光素子1では、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが発光層4cにて再結合する際に生じる光が基板2側から取り出される。
【0003】
ここで一般的に、上記構成の有機電界発光素子1の寿命は、注入された電荷によって決まっており、この事は駆動における初期輝度を落すことで解決することはできる。しかしながら、初期輝度を落すことは、実用化におけるアプリケーションが制限され、有機電界発光素子の潜在的な可能性を自ら否定することになり、次世代テレビの実現は不可能になる。
【0004】
そこで、初期輝度を落さずに、また駆動電流を変えずに輝度を上げる、すなわち発光効率を改善するか、または駆動電流を下げても同様の輝度を得ることができる素子構成を実現する必要がある。
【0005】
そして、これを実現できる素子構成として、複数の発光素子を重ねて配置したタンデム素子が提案されている。その中の1つとして、図11に示すように、陽極3と陰極5との間に、少なくとも発光層4cを有する有機層からなる複数の発光ユニット4-1,4-2,…を、絶縁性の電荷発生層6を介して重ねて配置したタンデム型の有機電界発光素子(以下タンデム素子と記す)1’が提案されている。ここで、電荷発生層6は、電圧印加時において、電荷発生層6の陰極5側に配置された発光ユニット4-2に対して正孔を注入する一方、電荷発生層6の陽極3側に配置された発光ユニット4-1に対して電子を注入する役割を果たす。このような電荷発生層6は、例えば酸化バナジウム(V25)や7酸化レニウム(Re27)のような金属酸化物を用いて構成されている。
【0006】
また、このような電荷発生層6から陽極3側の発光ユニット4-1への電子注入効率を上げるために、「その場反応生成層」となる電子注入層7を電荷発生層6の陽極3側に設けることがある。このような「その場反応生成層」となる電子注入層7としては、例えばバソクプロイン(BCP)と金属セシウム(Cs)との混合層や、(8−キノリノラト)アルミニウム錯体とマグネシウムとの混合膜積層膜が用いられる。
【0007】
以上のような電荷発生層6を介して発光ユニット4-1,4-2,…を積層させたタンデム素子1’では、2つの発光ユニットを積層した場合には、理想的には発光効率[lm/W]は変ること無しに輝度[cd/A]を2倍に、3つの発光ユニットを積層した場合には、理想的には[lm/W]は変ること無しに[cd/A]を3倍にすることが可能であるとされている(以上、下記特許文献1,2参照)。
【0008】
また、以上のような図10および図11に示す有機電界発光素子1,1’において、その長寿命化を達成するためには、低電圧駆動を行うこと、すなわち有機電界発光素子1,1’における電流-電圧特性を低電圧化して電流を流れ易くすることにより発光効率の向上を図ることが重要である。
【0009】
そこで、例えば、有機層4を構成する有機材料における電子や正孔などの電荷の移動度μの向上を図ることにより、有機電界発光素子1,1’に流れる電流を大きくすることが考えられる。つまり、有機層4を構成している有機材料は、一般的には絶縁体に近い移動度を有しており、その導電電流がチャイルド則で記述できる下記式(1)の空間電荷制限電流(SCLC)によって決まるからである。
I=(9/8)×(ε×ε0×μ×V2)/(L3)…式(1)
ε:有機層の誘電率
ε0:真空の誘電率
μ:正孔または電子の移動度
V:電圧二乗
L:有機層の膜厚
【0010】
【特許文献1】特開2003−45676号公報
【特許文献2】特開2003−272860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上述したように、有機材料は一般的には絶縁体としてみなされる。このため、有機材料自体の骨格・構造を工夫したとしても、その有機材料における電界の移動度μの向上には限界がある。したがって、有機材料における電界の移動度μの向上による導電電流の増加と、これにともなう有機電界発光素子の駆動電圧の低下は、極めて困難であると言わざるを得ない。
【0012】
これは、タンデム素子であっても同様である。特に、タンデム素子においては、有機材料からなる発光ユニットを直列にn段重ねてn倍の効率を得ることを考えているので、1ユニットの駆動電圧を下げ、タンデム型全体の駆動電圧を低下させることは必要不可欠である。またさらに、タンデム素子においては、電荷発生層で電圧降下が起これば、発光効率は理想形にはならない。このため、陽極と陰極との間の、電荷発生層を含む全層において電荷の移動度μが高いことが望まれるのである。
【0013】
そこで本発明は、陰極と陽極との間の電荷の移動度を素子構成によって改善し、低電圧駆動を可能にする有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために本発明は、陰極と陽極との間に、少なくとも有機発光層を備えた積層膜を狭持してなる有機電界発光素子に関する。そして、この積層膜が、以下に説明する有機材料と、金属材料との混合層を備えていることを特徴としている。
【0015】
このうち、第1の有機電界発光素子においては、下記一般式(1)に示す有機材料を用いることを特徴としている。
【化7】

【0016】
ただし、一般式(1)中において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、ニトロ基、シアノ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。一般式(1)中におけるX1〜X6は、それぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。
【0017】
また、第2の有機電界発光素子においては、下記一般式(2)に示す有機材料を用いることを特徴としている。
【化8】

【0018】
ただし、一般式(2)中において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化合物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRt(t=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合しても良い。さらに、一般式(2)中におけるX1〜X6,Y1〜Y6は、それぞれ独立に、炭素もしくは窒素原子であって、m,n,およびpはそれぞれ0以上の整数を示しかつn+m+p≠0である。
【0019】
また、第3の有機電界発光素子においては、下記一般式(3)に示す有機材料を用いることを特徴としている。
【化9】

【0020】
ただし、一般式(3)中において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化合物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合しても良い。さらに一般式(3)中のX1〜X6は、それぞれ独立に、炭素もしくは窒素原子であり、Y1〜Y3の結合部位は、それぞれ独立に下記一般式(a)〜(d)の何れかである。
【0021】
【化10】

ただし、一般式(a)および一般式(b)中において、A1〜A3はそれぞれ独立に、水素、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる置換基である。
【0022】
また、第4の有機電界発光素子においては、下記一般式(4)に示す有機材料を用いることを特徴としている。
【化11】

【0023】
ただし、一般式(4)中において、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRm(m=1〜8)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。またX1〜X10は、それぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。
【0024】
また、第5の有機電界発光素子においては、下記一般式(5)に示す有機材料を用いることを特徴としている。
【化12】

【0025】
ただし、一般式(5)中において、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化合物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRm(m=1〜8)は環状構造を通じて互いに結合しても良くい。また、X1〜X8はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子であり少なくとも一つは窒素原子である。さらに、Y1〜Y4はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。そして、Mtは水素二原子、銅、亜鉛、鉄、コバルト、もしくはニッケルから選ばれる。
【0026】
以上説明した第1〜第5の有機電界発光素子では、陰極と陽極との間に狭持されている、少なくとも有機発光層を含む積層膜に、金属材料と上記一般式で示される特定の有機材料との混合層を備えた素子構成としている。発明者が鋭意検討したところ、上述した特定の有機材料は、金属材料と安定的な錯体を形成することが可能であり、このような特定の有機材料と金属材料とで混合層を構成することにより、当該混合層が安定で導電性の高い膜となることが明らかになった。このため、このような混合層を上記積層膜に設けたことにより、積層膜が低抵抗化されて、陰極−陽極間に電流が流れ易くなり、陰極−陽極間における電荷の移動度の向上が図られる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明の有機電界発光素子によれば、陰極と陽極との間の積層膜に、金属材料と特定の有機材料との混合層を備えた素子構成としたことにより、陰極−陽極間における電荷の移動度を確実に向上させることができる。したがって、有機電界発光素子の駆動電圧を低下させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の有機電界発光素子の各実施形態を詳細に説明する。尚、ここで説明する各実施形態の有機電界発光素子は、陰極と陽極との間に、少なくとも少なくとも有機発光層を備えた積層膜を狭持してなる。この積層膜の構成については、各実施形態において詳細に説明するが、本発明の有機発光素子においては、この積層膜が、上述した一般式(1)〜(5)を用いて説明した特定の有機材料と、金属材料との混合層を備えていることを特徴としている。
【0029】
そこで、以下においては、有機電界発光素子の各実施形態を説明するに先立ち、この積層膜に備えられた混合層を構成する<有機材料1〜5>と、これらの有機材料と共に混合層を構成する<金属材料>の具体例を説明する。
【0030】
<有機材料1>
先ず、有機材料1として、下記一般式(1)に示される有機材料の具体例を説明する。
【化13】

【0031】
この一般式(1)中において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、ニトロ基、シアノ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。一般式(1)中におけるX1〜X6は、それぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。
【0032】
上記一般式(1)の具体例としては、下記構造式(1)-1〜(1)-62が例示される。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【0033】
<有機材料2>
次に、有機材料2として、下記一般式(2)に示される有機材料の具体例を説明する。
【化14】

【0034】
ただし、一般式(2)中において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化合物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRt(t=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合しても良い。さらに、一般式(2)中におけるX1〜X6,Y1〜Y6は、それぞれ独立に、炭素もしくは窒素原子であって、m,n,およびpはそれぞれ0以上の整数を示しかつn+m+p≠0である。
【0035】
ここで一般式(2)に示されるトリフェニレン構造もしくはアザトリフェニレン構造の有機材料において、X1〜X6の少なくとも一つが窒素であることが好ましい。また、一般式(2)中のm,n,およびpは、それぞれ2以下の整数であることとする。さらに、一般式(2)中のR1〜R6うちの少なくとも一つが、電子吸引性の置換基であることとする。電子吸引性の置換基とは、アリール核から電子を引き抜く効果を示す置換基であり、その一例としてハロゲン化合物基、カルボニル基、カルボニルエステル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、もしくはアルコキシ基が挙げられる。中でも、シアノ基、フッ素化合物基(ハロゲン化合物基)、メトキシ基(アルコキシ基)が、好ましく用いられる。このうち、フッ素化合物基の具体例としては、フッ素の他に、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0036】
このように一般式(2)における有機材料において、トリフェニレン構造もしくはアザトリフェニレン構造に、上述したような電子吸引性の置換基を導入することによって、柱状配列を制御する分子間相互作用を調整することが可能となる。このため、さらにキャリア移動度を高めることが可能になる。またこの効果は、上記置換基としてシアノ基、フッ素化合物基、メトキシ基を用いることでさらに顕著になる。
【0037】
次に、上記一般式(2)で表される本発明の有機材料のさらに代表的な例示構造を示すが、本発明の有機材料はこれらの分子骨格に限定されるものではない。
【0038】
A)n=1,m=p=0の場合
上記一般式(1)においてn=1,m=p=0を満たす構造は以下の一般式(2-1)として表される化合物を示す。
【0039】
【化15】

この一般式(2-1)中において、R1〜R6,X1〜X2,Y1〜Y6は、それぞれ上記一般式(2)での定義したものと同じ意味を表す。
【0040】
下記構造式(2)-1〜(2)-48には、上記一般式(2-1)で表される代表的な構造例を示す。尚、構造式(2)-4に代表して示される置換基は非環状の炭化水素基の分岐構造を示す。
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【0041】
B)n=1,m=1,p=0の場合
上記一般式(1)においてn=1,m=1,p=0を満たす構造は以下の一般式(2-2)として表される化合物を示す。
【0042】
【化16】

この一般式(2-2)中において、R1〜R6、1〜X2,Y1〜Y6は、それぞれ上記一般式(2)での定義したものと同じ意味を表す。
【0043】
下記構造式(2)-49〜(2)-96には、上記一般式(2-2)で表される代表的な構造例を示す。
【表2−5】

【表2−6】

【表2−7】

【表2−8】

【0044】
C)n=1,m=1,p=1の場合
上記一般式(2)においてn=1,m=1,p=1を満たす構造は以下の一般式(2-3)として表される化合物を示す。
【0045】
【化17】

この一般式(2-3)中において、R1〜R6、1〜X2,Y1〜Y6は、それぞれ上記一般式(2)での定義したものと同じ意味を表す。
【0046】
下記構造式(2)-97〜(2)-144には、上記一般式(2-3)で表される代表的な構造例を示す。
【表2−9】

【表2−10】

【表2−11】

【表2−12】

【0047】
<有機材料3>
次に、有機材料3として、下記一般式(3)に示される有機材料の具体例を説明する。
【化18】

【0048】
ただし、一般式(3)中において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化合物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合しても良い。さらに一般式(3)中のX1〜X6は、それぞれ独立に、炭素もしくは窒素原子であり、Y1〜Y3の結合部位は、それぞれ独立に下記一般式(a)〜(d)の何れかである。
【0049】
【化19】

この一般式(a)および一般式(b)中において、A1〜A3はそれぞれ独立に、水素、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる置換基である。
【0050】
ここで、一般式(3)に示されるトルクセン類骨格を有する有機材料において、X1〜X6の少なくとも一つが窒素であることが好ましい。さらに、一般式(3)中のY1〜Y3は、一般式(a)または一般式(b)であることが好ましい。さらに、一般式(3)中のR1〜R6うちの、互いに結合する部位を除いた位置の少なくとも一つが、電子吸引性の置換基であることが好ましい。電子吸引性の置換基とは、アリール核から電子を引き抜く効果を示す置換基である。このような置換基としては、ハロゲン化合物基、カルボニル基、カルボニルエステル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、もしくはアルコキシ基が挙げられる。このような電子吸引性の置換基の中でも、シアノ基、フッ素化合物基(ハロゲン化合物基)、メトキシ基(アルコキシ基)が、さらに好ましく用いられる。このうち、フッ素化合物基の具体例としては、フッ素の他に,トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0051】
このように一般式(3)における有機材料において、トルクセン類似骨格に上述したような電子吸引性の置換基を導入することによって、柱状配列を制御する分子間相互作用を調整することが可能となる。このため、さらにキャリア移動度を高めることが可能になる。またこの効果は、上記置換基としてシアノ基、フッ素化合物基、メトキシ基を用いることでさらに顕著になる。
【0052】
次に、上記一般式(3)で表される本発明の有機材料のさらに代表的な例示構造を示すが、本発明の有機材料はこれらの分子骨格に限定されるものではない。
【0053】
A)一般式(3)において、Y1〜Y3の結合部位が一般式(a)である構造として下記一般式(3-1)が示される。
【化20】

この一般式(3-1)中において、R1〜R6、X1〜X2、A1,A2は、それぞれ上記一般式(3)および一般式(a)で定義したものと同じ意味を表す。
【0054】
このうち、下記構造式(3)-1〜(3)-24には、上記一般式(3-1)のうち、X1〜X6が炭素からなる代表的な構造例を示す。尚、構造式(3)-5に代表して示される置換基は非環状の炭化水素基の分岐構造を示す。
【表3−1】

【表3−2】

【0055】
下記構造式(3)-25〜(3)-48には、一般式(3-1)のうち、X1〜X6の少なくとも1つが窒素からなる代表的な構造例を示す。
【表3−3】

【表3−4】

【0056】
下記構造式(3)-49〜(3)-72には、一般式(3-1)のうち、X1〜X6の全てが窒素である代表的な構造例を示す。
【表3−5】

【表3−6】

【0057】
B)一般式(3)において、Y1〜Y3の結合部位が一般式(b)である構造として、下記一般式(3-2)が示される。
【化21】

この一般式(3-2)中において、R1〜R6、1〜X2,A3は、それぞれ上記一般式(3)および一般式(b)で定義したものと同じ意味を表す。
【0058】
このうち、下記構造式(3)-73〜構造式(3)-96には、一般式(3-2)のうち、X1〜X6が炭素からなる代表的な構造例を示す。
【表3−7】

【表3−8】

【0059】
下記構造式(3)-97〜(3)-120には、一般式(3-2)のうち、X1〜X6の少なくとも一つが窒素からなる代表的な構造例を示す。
【表3−9】

【表3−10】

【0060】
下記構造式(3)-121〜(3)-144には、一般式(3-2)のうち、X1〜X6の全てが窒素である代表的な構造例を示す。
【表3−11】

【表3−12】

【0061】
C)一般式(3)において、Y1〜Y3の結合部位が一般式(c)の酸素または一般式(d)の硫黄からなる構造を、下記構造式(3)-145〜(3)-165に示す。
【表3−13】

【表3−14】

【0062】
<有機材料4>
次に、有機材料4として、下記一般式(4)に示される有機材料の具体例を説明する。
【化22】

【0063】
ただし、一般式(4)中において、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRm(m=1〜8)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。またX1〜X10は、それぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。
【0064】
ここで、一般式(4)に示されるベンゾアントラセンもしくはベンゾフェナジン骨格を有する有機材料において、X1〜X8の少なくとも一つが窒素であることが好ましい。さらに、一般式(4)中のR1〜R8うちの少なくとも一つが、電子吸引性の置換基であることが好ましい。電子吸引性の置換基とは、アリール核から電子を引き抜く効果を示す置換基であり、ハロゲン、カルボニル基、カルボニルエステル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、もしくはアルコキシ基が挙げられる。このような電子吸引性の置換基の中でも、シアノ基、フッ素化合物基(ハロゲン)、メトキシ基(アルコキシ基)が、さらに好ましく用いられる。このうち、フッ素化合物基の具体例としては、フッ素の他に,トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0065】
このように一般式(4)における有機材料において、ベンゾアントラセンもしくはベンゾフェナジン骨格に上述したような電子吸引性の置換基を導入することによって、柱状配列を制御する分子間相互作用を調整することが可能となる。このため、さらにキャリア移動度を高めることが可能になる。またこの効果は、上記置換基としてシアノ基、フッ素化合物基、メトキシ基を用いることでさらに顕著になる。
【0066】
下記構造式(4)-1〜(4)-78に、上記一般式(4)で表される本発明の代表的な例示構造を示すが、本発明の有機材料はこれらの分子骨格に限定されるものではない。尚、構造式(4)-16に代表して示される置換基はメチル基であり、構造式(4)-20に代表して示される置換基はイソプロピル基でありm、構造式(4)-26に代表して示される置換基はエチル基である。
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【表4−4】

【表4−5】

【0067】
<有機材料5>
次に、有機材料5として、下記一般式(5)に示される有機材料の具体例を説明する。
【化23】

【0068】
一般式(5)中において、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化合物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基である。そして、隣接するRm(m=1〜8)は環状構造を通じて互いに結合しても良い。また、X1〜X8はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子であり少なくとも一つは窒素原子である。さらに、Y1〜Y4はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。そして、Mtは水素二原子、銅、亜鉛、鉄、コバルト、もしくはニッケルから選ばれる。
【0069】
ここで、一般式(5)に示されるフタロシアニン骨格を有する有機材料において、R1〜R8は、上述した置換基の中でも、互いに結合する部位を除いた位置が、電子吸引性の置換基であることが好ましい。ここで電子吸引性の置換基とは、アリール核から電子を引き抜く効果を示す置換基であり、例えばハロゲン化合物基、カルボニル基、カルボニルエステル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、もしくはアルコキシ基が挙げられる。このような電子吸引性の置換基の中でも、シアノ基、フッ素化合物基(ハロゲン化合物基)、メトキシ基(アルコキシ基)が、さらに好ましく用いられる。このうち、フッ素化合物基の具体例としては、フッ素の他に,トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0070】
このように一般式(5)における有機材料において、フタロシアニン骨格に上述したような電子吸引性の置換基を導入することによって、柱状配列を制御する分子間相互作用を調整することが可能となる。このため、さらにキャリア移動度を高めることが可能になる。またこの効果は、上記置換基としてシアノ基、フッ素化合物基、メトキシ基を用いることでさらに顕著になる。
【0071】
下記構造式(5)-1〜(5)-72には、上記一般式(5)で表される有機材料のさらに代表的な構造を示すが、本発明の有機材料はこれらの分子骨格に限定されるものではない。尚、構造式(5)-4に代表して示される置換基は非環状の炭化水素基の分岐構造を示す。
【0072】
【表5−1】

【表5−2】

【表5−3】

【表5−4】

【表5−5】

【表5−6】

【0073】
<金属材料>
次に、上述した<有機材料1〜5>と共に、有機電界発光素子の積層膜に備えられた混合層を形成する金属材料を説明する。
【0074】
ここで<有機材料1〜5>と共に用いられる金属材料は、高い導電性を持つことが重要である。そして、好ましくは、<有機材料1〜5>と共に混合層を構成した状態において0〜4価を示すの金属材料が好ましく、例えば、Li、Mg、Ti、V、Zr、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Zn、Al等が好ましく用いられる。これらの材料は単独でも、また数種からなる金属材料を用いて混合層を形成しても良い。このような金属材料は、<有機材料1〜5>と共に安定な状態で存在する共に、その状態で高い導電性を示す。
【0075】
発明者が鋭意検討したところ、上記一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料1〜5は、金属材料と安定的な錯体を形成することが可能であり、このような特定の有機材料と金属材料とで混合層を構成することにより、当該混合層が安定で導電性の高い膜となることが明らかになった。尚、上記一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料1〜5は、それぞれ単独で上記の金属材料と共に混合層を形成しても良いし、複数を組み合わせて上記の金属材料と共に混合層を形成しても良い。
【0076】
<第1実施形態>
図1は、上述した有機材料と金属材料とからなる混合層が設けられた第1実施形態の有機電界発光素子の構成を示す断面図である。
【0077】
図1に示す有機電界発光素子10は、発光ユニットを積層してなるタンデム型の有機電界発光素子10であり、基板12上に設けられた陽極13、この陽極13上に重ねて設けられた複数の発光ユニット14-1、14-2、…(ここでは2個)、これらの発光ユニット14-1,14-2間に設けられた電荷発生層15-0、そして最上層の発光ユニット14-2上に設けられた陰極16を備えている。
【0078】
以下の説明においては、陽極13から注入された正孔と電荷発生層15-0において発生した電子が発光ユニット14-1内で結合する際に生じた発光光と、同時に陰極16から注入された電子と電荷発生層15-0において発生した正孔が発光ユニット14-2内で結合する際に生じた発光とを、基板12と反対側の陰極16側から取り出す上面発光方式の有機電界発光素子の構成を説明する。
【0079】
先ず、有機電界発光素子10が設けられる基板12は、ガラスのような透明基板や、シリコン基板、さらにはフィルム状のフレキシブル基板等の中から適宜選択して用いられることとする。また、この有機電界発光素子10を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、基板12として、画素毎にTFTを設けてなるTFT基板が用いられる。この場合、この表示装置は、上面発光方式の有機電界発光素子10をTFTを用いて駆動する構造となる。
【0080】
そして、この基板12上に下部電極として設けられる陽極13は、効率良く正孔を注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えばクロム(Cr)、金(Au)、酸化スズ(SnO2)とアンチモン(Sb)との合金、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金、さらにはこれらの金属や合金の酸化物等を、単独または混在させた状態で用いることができる。
【0081】
有機電界発光素子10が上面発光方式の場合は、陽極13を高反射率材料で構成することで、干渉効果及び高反射率効果で外部への光取り出し効率を改善することが可能であり、この様な電極材料には、例えばAl、Ag等を主成分とする電極を用いることが好ましい。これらの高反射率材料層上に、例えばITOのような仕事関数が大きい透明電極材料層を設けることで電荷注入効率を高めることも可能である。
【0082】
尚、この有機電界発光素子10を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、陽極13は、TFTが設けられている画素毎にパターニングされていることとする。そして、陽極13の上層には、ここでの図示を省略した絶縁膜が設けられ、この絶縁膜の開口部から、各画素の陽極13表面を露出させていることとする。
【0083】
また、発光ユニット14-1,14-2は、陽極13側から順に、例えば正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c及び電子輸送層14dを積層してなる。
【0084】
そして、特に、本第1実施形態においては、陽極13と発光ユニット14-1との間の界面に、上述した一般式(1)〜(5)を用いて説明した有機材料と、金属材料との混合層17が設けられている。これらの有機材料は、主に正孔注入性あるいは正孔輸送性を有している。そこで、この混合層17は、例えば、図示したように正孔注入層14aを兼ねる層として用いられていても良い。
【0085】
これらの各層は、例えば真空蒸着法や、例えばスピンコート法などの他の方法によって形成された有機層からなる。各有機層を構成する材料に限定条件はなく、通常の有機電界発光素子の各有機層に用いられている材料を適宜用いることができる。例えば正孔輸送層14bであるならば、ベンジジン誘導体、スチリルアミン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの正孔輸送材料を用いることができる。
【0086】
尚、当然であるが、各層14a〜14dが他の要件を備えることは、これを妨げず、例えば発光層14cが電子輸送層14dを兼ねた電子輸送性発光層であることも可能であり、発光層14cは、正孔輸送性の発光層14cであっても良く、また、各層が積層構造になることも可能である。例えば発光層14cが、さらに青色発光部と緑色発光部と赤色発光部から形成される白色発光素子であっても良い。
【0087】
また、発光層14cは、ベリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素、トリフェニルアミン誘導体等の有機物質を微量含む有機薄膜であっても良く、この場合には発光層14cを構成する材料に対して微量分子の共蒸着を行うことで形成される。
【0088】
また、以上の各有機層、例えば正孔注入層14a、正孔輸送層14bは、それぞれが複数層からなる積層構造であっても良い。正孔注入層14aは、例えばアザトリフェニレン系材料のようなアリールアミン系でない有機材料によって構成されることが好ましく、これによって発光ユニット14-2への正孔の注入効率が高められる。
【0089】
さらに、以上の各発光ユニット14-1、14-2は、全く同一の構造でも良いが、他の構造にすることも可能である。例えば、発光ユニット14-1を橙色発光素子用の有機層構造、発光ユニット14-2を青緑色発光素子用の有機層構造として形成することにより、発光色は白色となる。
【0090】
そして、これらの発光ユニット14-1と発光ユニット14-2との間に設けられた電荷発生層15-0は、酸化物を用いて構成されている。酸化物としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む一般的な酸化物、金属酸化物、および複合酸化物が例示される。このうち、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む酸化物や、以下に例示する酸化物を用いて構成されていることが好ましい。尚、以下においては共通に、アルカリ金属としてLi,Na,K,Rb,Cs,Frが例示され、またアルカリ土類金属としてBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Raが例示される。
【0091】
すなわち、電荷発生層15-0を構成する酸化物の好ましい具体例としては、Li2CO3、Li2SiO3、Cs2CO3、Li2O、WO2、WO3、LiTaO3、およびLi2WO4が例示され、これらの酸化物のうちの少なくとも1つを用いていることが好ましい。中でも、主成分としてLi2CO3、またはLi2SiO3を用いることが好ましい。特に、この酸化物が、少なくとも、電荷発生層15-0における陽極13側の界面層を構成していることが好ましい。
【0092】
また、この電荷発生層15-0は、例えばLi2CO3からなる単層構造であって良い。
【0093】
また、電荷発生層15-0は、上述した酸化物(例えばLi2CO3)を主成分とし、正孔や電子(電荷)のホッピングサイトとして、例えば正孔輸送材料や電子輸送材料等の電荷輸送性有機材料を上記酸化物と共に共蒸着してなる混合層(酸化物混合層)であっても良い。またこの酸化物混合層を有する層であっても良い。
【0094】
さらに、電荷発生層15-0は、酸化物からなる層(酸化物層)と、上述した酸化物混合層との積層構造であっても良い。この場合、酸化物と電子輸送性有機材料との酸化物混合層、すなわち電子輸送性の酸化物混合層は、酸化物層の陽極13側の界面に積層される。また、酸化物と正孔輸送性有機材料との酸化物混合層、すなわち正孔輸送性の酸化物混合層は、酸化物層の陰極16側の界面に積層される。この場合、正孔輸送性材料としては、アザトリフェニレン系材料のようなアリールアミン系でない有機材料によって構成されることが好ましい。尚、このような積層構造は、酸化物層の陽極13側および陰極16側の少なくとも一方に、酸化物混合層を設けた構成として良い。
【0095】
またさらに、電荷発生層15-0は、Li2CO3からなる酸化物層と、他の酸化物または複合酸化物からなる酸化物層との積層構造であっても良い。この場合、酸化物または複合酸化物としては、メタ硼酸化物、テトラ硼酸化物、ゲルマン酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、珪酸化物、タンタル酸化物、チタン酸化物、バナジン酸化物、タングステン酸化物、ジルコン酸化物、炭酸化物、蓚酸化物、亜クロム酸化物、クロム酸化物、重クロム酸化物、フェライト、亜セレン酸化物、セレン酸化物、スズ酸化物、亜テルル酸化物、テルル酸化物、ビスマス酸化物、テトラホウ酸化物、メタホウ酸化物等の他の一般的な酸化物または複合酸化物が例示される。
【0096】
そして、以上のような構成の各電荷発生層15-0は、さらにフッ化物を積層させた構成であっても良い。
【0097】
この場合、電荷発生層15-0における、陽極13側の界面(すなわち酸化物を用いて構成されている側)に、中間的な陰極層(中間陰極層)としてアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方(少なくとも1種類の元素)を含むフッ化物を用いた層を設けても良い。またさらには、電荷発生層15-0における陰極16側の界面に、中間陽極層として、導電性材料層を介して、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むフッ化物を用いた層を設けても良い。
【0098】
そして、アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物としては、具体的にはフッ化リチウム(LiF)、CsF、CaF2等を例示することができる。また導電性材料層は、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、およびアルミニウム(Al)の少なくとも1つを含むこととする。具体的には、MgAgやAlからなる導電性材料層が例示される。
【0099】
またさらに、電荷発生層15-0は、陰極16側の界面に、銅フタロシアニン(CuPc)のようなフタロシアニン骨格を持つ正孔注入性材料からなる層を中間的な陽極層(中間陽極層)として設けても良い。
【0100】
尚、以上の電荷発生層15-0やその界面に積層される各層は、必ずしも明確に分離されている構成に限定されることはなく、各層の界面においてそれぞれの構成材料が混ざり合っていても良い。
【0101】
また特に、電荷発生層15-0と、電荷発生層15-0の陰極16側に配置された発光ユニット14-2との界面に、電荷発生層15-0側から順に、一般式(1)〜(5)を用いて説明した有機材料からなる層(以下、有機層17’と記す)層と、この有機材料と金属材料との混合層17とを積層配置しても良い。この場合、上述したようにこれらの有機材料は、主に正孔注入性あるいは正孔輸送性を有している。そこで、この混合層17は、例えば、図示したように正孔注入層14aを兼ねる層として用いられていても良い。
【0102】
次に、陰極16は、陽極13側から順に第1層16a、第2層16b、場合によっては第3層16cを積層させた3層構造で構成されている。
【0103】
第1層16aは、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料として、例えばリチウム(Li)の酸化物であるLi2Oや炭酸化物であるLi2CO3、セシウム(Cs)の炭酸化物であるCs2CO3、珪酸化物であるLi2SiO3さらにはこれらの酸化物の混合物を用いることができる。また、第1層16aはこのような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム(Li),セシウム(Cs)等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)、等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属のフッ化物、酸化物等を、単体でまたはこれらの金属およびフッ化物、酸化物の混合物や銀(Ag)を加えて合金として膜質安定性を高めて使用しても良い。
【0104】
また、第2層16bは、MgAgやアルカリ土類金属を含む電極、或いはAl等の電極で構成される。上面発光素子の様に半透過性電極で陰極16を構成する場合には、薄膜のMgAg電極やCa電極を用いることで光を取り出すことが可能である。光透過性を有しかつ導電性が良好な材料で構成することで、この有機電界発光素子10が、特に陽極13と陰極16との間で発光光を共振させて取り出すキャビティ構造で構成される上面発光素子の場合には、例えばMg−Agのような半透過性反射材料を用いて第2層16bを構成する。これにより、この第2層16bの界面と、光反射性を有する陽極13の界面で発光を反射させてキャビティ効果を得る。
【0105】
さらに第3層16cは、電極の劣化抑制のために透明なランタノイド系酸化物を設けることで、発光を取り出すこともできる封止電極として形成することも可能である。
【0106】
尚、以上の第1層16a、第2層16b、および第3層16cは、真空蒸着法、スパッタリング法、さらにはプラズマCVD法などの手法によって形成される。また、この有機電界発光素子を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、陰極16は、ここでの図示を省略した陽極13の周縁を覆う絶縁膜および発光ユニット14-1〜発光ユニット14-2の積層膜によって、陽極13に対して絶縁された状態で基板12上にベタ膜状で形成され、各画素に共通電極として用いても良い。
【0107】
また、ここに示した陰極16の電極構造は3層構造である。しかしながら、陰極16は、陰極16を構成する各層の機能分離を行った際に必要な積層構造であれば、第2層16bのみで構成したり、第1層16aと第2層16bとの間にさらにITOなどの透明電極を形成したりすることも可能であり、作製されるデバイスの構造に最適な組み合わせ、積層構造を取れば良いことは言うまでもない。
【0108】
尚、本発明の有機電界発光素子は、上述した陽極13と陰極16との間の、発光ユニット14-1、電荷発生層15-0、および発光ユニット14-2の積層膜において、少なくともこの積層膜を構成する一層が、上記一般式(1)〜(5)によって示される少なくとも1種類の有機材料と金属材料との混合層からなれば良い。
【0109】
以上説明した構成の有機電界発光素子10では、上述したように、陽極13と陰極16との間の積層膜内に、上記一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料と金属材料とを用いることで導電性が高く安定な混合層17を設けている。これにより、陽極13−陰極16間の積層膜が低抵抗化されて、陰極16−陽極13間に電流が流れ易くなり、陰極16−陽極13間における電荷の移動度の向上が図られる。
【0110】
そして特に、下記実施例に示すように、陽極13と発光ユニット14-1との界面や、電荷発生層15-0と発光ユニット14-2との界面に設けたことにより、陰極16−陽極13間における電荷の移動度の向上を図る効果が顕著に得られる。
【0111】
したがって、有機電界発光素子10の駆動電圧を低下させることが可能となる。またこの結果、有機電界発光素子10の消費電力の低下を図ることが可能となる。
【0112】
尚、以上の効果については、陽極13と陰極16との間に発光ユニットを1つだけ狭持した単層構造(モノユニット)の有機電界発光素子にも適用可能である。この場合、図1の発光ユニット14-1上に、陰極16を直接積層させた構成とする。このような構成であっても、陽極13と陰極16との間の積層膜内に、上記一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料と金属材料とを用いることで導電性が高く安定な混合層17を設けている。したがって、上述と同様の効果を得ることが可能なのである。
【0113】
また、発光ユニット14-1,14-2間に、安定材料であるLi2CO3のような酸化物を主成分とした電荷発生層15-0を狭持したことにより、電荷発生層15-0から陽極13側の発光ユニット14-1への電子注入効率が向上する。したがって、電荷発生層15-0を介して発光ユニット14-1,14-2を積層してなるタンデム型の有機電界発光素子10の安定化が図られる。
【0114】
尚、特に、電荷発生層15-0における陽極13側の界面に、中間陰極層としてアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むフッ化物を用いた層を設ける場合には、MgAgのような導電性材料層と、この導電性材料層の陽極13側に配置されたアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むフッ化物からなる層とで中間陰極層を構成することにより、電荷発生層15-0の陽極13側に設けられた発光ユニット14-1に対しての電荷発生層15-0からの電子の注入効率を高める効果を高めることができる。
【0115】
また、電荷発生層15-0にフタロシアニン骨格を有する中間陽極層(図示省略)を設けることにより、電荷発生層15-0の陰極16側に設けられた発光ユニット14-2への、電荷発生層15-0からの正孔の注入効率を高めることができる。
【0116】
この結果、タンデム型の有機電界発光素子において、輝度の向上だけではなく、耐環境性の向上による寿命特性の向上、すなわち長期信頼性の向上を図ることが可能になる。また、安定的な材料を用いて、このような電荷の注入特性に優れた電荷発生層15-0が構成されるため、その作製においても化学量論比を考慮した成膜などを行う必要はなく、容易に作製可能となる。しかも、一般的なV25からなる電荷発生層を用いた場合と比較して、駆動電圧が抑えられる効果もあり、これによる長期信頼性の向上を得ることも可能である。
【0117】
<第2実施形態>
図2は、上述した有機材料と金属材料とからなる混合層が設けられた第2実施形態の有機電界発光素子の構成を示す断面図である。
【0118】
図2に示す有機電界発光素子11と、図1を用いて説明した有機電界発光素子10との異なるところは、電荷発生層15の構成にあり、その他の構成は同様であることとする。
【0119】
つまり、陽極13と発光ユニット14-1との間の界面に、上述した一般式(1)〜(5)を用いて説明した有機材料と金属材料との混合層17が設けられているところは、図1を用いて説明した有機電界発光素子10と同様である。また、上述したように、これらの有機材料は、主に正孔注入性あるいは正孔輸送性を有している。そこで、この混合層17は、例えば、図示したように正孔注入層14aを兼ねる層として用いられていても良いことも同様である。
【0120】
また、電荷発生層15と、電荷発生層15の陰極16側に配置された発光ユニット14-2との界面に、電荷発生層15側から順に、一般式(1)〜(5)を用いて説明した有機材料からなる層(以下、有機層17’と記す)層と、この有機材料と金属材料との混合層17とを積層配置しても良いことも、第1実施形態と同様である。この場合、上述したようにこれらの有機材料は、主に正孔注入性あるいは正孔輸送性を有している。そこで、この混合層17は、例えば、図示したように正孔注入層14aを兼ねる層として用いられていても良いことも同様である。
【0121】
以下、電荷発生層15を中心に、有機電界発光素子11の構成を詳細に説明する。
【0122】
すなわち、本第2実施形態の有機電界発光素子11は、発光ユニット14-1と発光ユニット14-2との間に設けられた電荷発生層15が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方(少なくとも1種類の元素)を含む酸化物を用いて構成されている。そして、この電荷発生層15は、陽極13側から順に、界面層15aと真性電荷発生層15bとを積層させた構造となっている。尚、この界面層15aは、陽極13に接して設けられた発光ユニット14-1に対して陰極として作用することになる。このため、以下においては、この界面層15aを中間陰極層15aと記す。そして、この中間陰極層15aが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む一般的な酸化物や、金属酸化物、および複合酸化物を用いて構成されていることとする。
【0123】
また、中間陰極層15aに接して設けられた真性電荷発生層15bは、特開2003−45676号公報及び特開2003−272860号公報に記載されている電荷発生層であるV25を用いて構成されているか、または以降に示す有機化合物を用いて構成されていることとする。
【0124】
ここで、この中間陰極層15aを構成する上記酸化物としては、先の第1実施形態で説明したと同様のものが用いられる。
【0125】
この中でも特に、中間陰極層15aは、Li2SiO3あるいはLi2CO3からなることが好ましい。
【0126】
また、真性電荷発生層15bを構成する材料は、V25等の他に、上述した一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料が用いられる。
【0127】
そして、以上の中間陰極層15aと真性電荷発生層15bとは、必ずしも明確に分離されている構成に限定されることはなく、中間陰極層15a内に真性電荷発生層15bを構成する材料が含有されていても、またこの逆であっても良い。
【0128】
尚、電荷発生層15は、陽極13側から順に、中間陰極層15aと真性電荷発生層15bと共に、中間陽極層(図示省略)を積層させた構成であっても良い。この中間陽極層は、フタロシアニン骨格を有する有機材料を用いて構成され、具体的には銅フタロシアニン(CuPc)からなる中間陽極層が例示される。
【0129】
また、電荷発生層15のうちの真性電荷発生層15bが上記一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ示された有機材料を用いて構成されている場合、この真性電荷発生層15bが正孔注入層14aを兼ねても良い。この場合、電荷発生層15よりも陰極16側に設けられた発光ユニット14-2には、正孔注入層14a(混合層17および有機層17’)を必ずしも設ける必要はない。
【0130】
以上説明した第2実施形態の有機電界発光素子11であっても、陽極13と陰極16との間の積層膜内に、上記一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料と金属材料との混合層17を設けているため、図1を用いて説明した第1実施形態の有機電界発光素子10と同様に、駆動電圧を低下させることが可能となる。またこの結果、有機電界発光素子11の消費電力の低下を図ることが可能となる。
【0131】
また、このような構成の有機電界発光素子11では、電荷発生層15が、その中間陰極層15aを構成する材料として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む酸化物を用いたことにより、電荷発生層15から陽極13側の発光ユニット14-1への電子の注入効率が向上する。そして特に、電荷発生層15における中間陰極層15aを構成する上記の酸化物は、成膜段階から安定的な材料として供給される。このため、これを用いた中間陰極層15a、すなわち電荷発生層15の安定化が図られる。
【0132】
また、電荷発生層15の陰極16側の界面にフタロシアニン骨格を有する有機材料からなる中間陽極層(図示省略)を設けることにより、電荷発生層15の陰極16側に配置された発光ユニット14-2への電荷発生層15からの正孔の注入効率を高めることができる。
【0133】
以上の結果、タンデム型の有機電界発光素子11において、輝度の向上だけではなく、必要電流低下による寿命特性の向上、すなわち長期信頼性の向上を図ることが可能になる。また、安定的な材料を用いて、このような電荷の注入特性に優れた電荷発生層15が構成されるため、その作製においても化学量論比を考慮した成膜などを行う必要はなく、このような長期信頼性に優れたタンデム型の有機電界発光素子11の作製を容易にすることが可能である。
【0134】
さらに、電荷発生層15における真性電荷発生層15bとして、上述した一般式(1)に示す有機化合物を用いた場合であっても、従来のV25を用いた場合と同程度の電荷注入効率を得ることが可能である。この場合には、真性電荷発生層15bが正孔注入層を兼ねるものとすることができるため、電荷発生層15よりも陰極16側に配置された発光ユニット14-2に特別に正孔注入層14aを必ずしも設けなくても良く、層構造の簡略化を図ることが可能になる。
【0135】
<第3実施形態>
図3は、上述した有機材料と金属材料とからなる混合層が設けられた第3実施形態の有機電界発光素子の構成を示す断面図である。
【0136】
図3に示す有機電界発光素子11’と、図1を用いて説明した有機電界発光素子10との異なるところは、電荷発生層15’の構成にあり、その他の構成は同様であることとする。
【0137】
つまり、陽極13と発光ユニット14-1との間の界面に、上述した一般式(1)〜(5)を用いて説明した有機材料と、金属材料との混合層17が設けられているところは、図1を用いて説明した有機電界発光素子10と同様である。また、上述したように、これらの有機材料は、主に正孔注入性あるいは正孔輸送性を有している。そこで、この混合層17は、例えば、図示したように正孔注入層14aを兼ねる層として用いられていても良いことも同様である。
【0138】
また、電荷発生層15’と、電荷発生層15’の陰極16側に配置された発光ユニット14-2との界面に、電荷発生層15’側から順に、一般式(1)〜(5)を用いて説明した有機材料からなる層(以下、有機層17’と記す)層と、この有機材料と金属材料との混合層17とを積層配置しても良いことも、第1実施形態と同様である。この場合、上述したようにこれらの有機材料は、主に正孔注入性あるいは正孔輸送性を有している。そこで、この混合層17は、例えば、図示したように正孔注入層14aを兼ねる層として用いられていても良いことも同様である。
【0139】
以下、電荷発生層15’を中心に、有機電界発光素子11’の構成を詳細に説明する。
【0140】
すなわち、本第3実施形態の有機電界発光素子11’における電荷発生層15’は、陽極13側から順に、界面層15a’、真性電荷発生層15bを順に積層した構成となっている。そして、この界面層15a’が、陽極13に接して設けられた発光ユニット14-1に対して陰極として作用することは第2実施形態と同様であるため、以下においては、この界面層15a’を中間陰極層15a’と記す。
【0141】
このような構成の電荷発生層15’において、中間陰極層15a’がアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方(少なくとも1種類の元素)を含む一般的なフッ化物、金属フッ化物、および複合フッ化物の少なくとも1つを用いていることを特徴としている。また特に、中間陰極層15a’は、陽極13側から順に配置された、このようなフッ化物からなるフッ化物層15a-1と、導電性材料層15a-2または絶縁性材料層(15a-2')との積層構成とすることが好ましい。
【0142】
ここで、フッ化物層15a-1を構成する、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むフッ化物としては、具体的にはフッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)を例示することができる。
【0143】
また導電性材料層15a-2を構成する材料としては、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、およびアルミニウム(Al)の少なくとも1つを含むこととする。具体的には、MgAgやAlからなる導電性材料層15a-2が例示される。
【0144】
さらに絶縁性材料層(15a-2')としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方(少なくとも1種類の元素)を含む酸化物からなる層を好適に用いることができる。このようなアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む酸化物としては、先の第1実施形態で説明したと同様のものが用いられる。
【0145】
また、中間陰極層15a’に接して設けられた真性電荷発生層15bは、特開2003−45676号公報及び特開2003−272860号公報に記載されている電荷発生層であるV25を用いて構成されているか、上述した一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料が用いられる。そして、電荷発生層15’のうちの真性電荷発生層15bが上述した一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料を用いて構成されている場合、この真性電荷発生層15bが正孔注入層14aを兼ねても良い。この場合、電荷発生層15’よりも陰極16側に設けられた発光ユニット14-2には、正孔注入層14a(混合層17および有機層17’)を設ける必要はない。さらに、電荷発生層15’は、真性電荷発生層15bよりも陰極16側に、ここでの図示を省略した銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン骨格を有する有機材料からなる中間陽極層を積層させた構成であっても良い。以上については、第2実施形態と同様である。
【0146】
このような第3実施形態の有機電界発光素子11’であっても、陽極13と陰極16との間の積層膜内に、上記一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料と金属材料との混合層17を設けているため、図1を用いて説明した第1実施形態の有機電界発光素子10と同様に、駆動電圧を低下させることが可能となる。またこの結果、有機電界発光素子11’の消費電力の低下を図ることが可能となる。
【0147】
また、電荷発生層15’が、その中間陰極層15a’を構成する材料としてアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む酸化物を含んでいることにより、電荷発生層15’から陽極13側の発光ユニット14-1への電子の注入効率が向上する。そして特に、電荷発生層15’における中間陰極層15a’を構成するアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む酸化物といった材料は、成膜段階から安定的な材料として供給される。このため、これを用いた中間陰極層15a’、すなわち電荷発生層15’の安定化が図られる。
【0148】
尚、この中間陰極層15a’が、陽極13側から順に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むフッ化物からなるフッ化物層15a-1と、MgAgのような導電性材料層15a-2とを積層してなる場合には、この中間導電層15a’よりも陽極13側に配置された発光ユニット14-1に対しての電子の注入効率を、さらに高める効果が得られる。
【0149】
また、電荷発生層15’が、真性電荷発生層15bよりも陰極16側に、フタロシアニン骨格を有する有機材料からなる中間陽極層(図示省略)を設けることにより、電荷発生層15よりも陰極16側に配置された発光ユニット14-2への電荷発生層15’からの正孔の注入効率を高めることができる。
【0150】
以上の結果、本第3実施形態の有機電界発光素子11’によれば、図1を用いて説明した第1実施形態の有機電界発光素子と同様に、有機層からなる発光ユニット14-1,14-2を積層させたタンデム型の有機電界発光素子11’において、長期信頼性の向上を図ることが可能になり、また、このような長期信頼性に優れたタンデム型の有機電界発光素子11’の作製を容易にすることが可能である。
【0151】
さらに、電荷発生層15’における真性電荷発生層15bとして、上述した一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料を用いた場合であっても、従来のV25を用いた場合と同程度の電荷注入効率を得ることが可能であり、これにより層構造の簡略化を図ることが可能になることは、図2を用いて説明した第2実施形態と同様である。
【0152】
<第4実施形態>
図4は、上述した有機材料と金属材料とからなる混合層が設けられた第4実施形態の有機電界発光素子の構成を示す断面図である。
【0153】
図4に示す有機電界発光素子11”と、図1を用いて説明した有機電界発光素子10との異なるところは、電荷発生層15”の構成にあり、その他の構成は同様であることとする。つまり、陽極13と発光ユニット14-1との間の界面に、上述した一般式(1)〜(5)を用いて説明した有機材料と、金属材料との混合層17が設けられているところは、図1を用いて説明した有機電界発光素子10と同様である。また、上述したように、これらの有機材料は、主に正孔注入性あるいは正孔輸送性を有している。そこで、この混合層17は、例えば、図示したように正孔注入層14aを兼ねる層として用いられていても良いことも同様である。
【0154】
また、電荷発生層15”と、電荷発生層15”の陰極16側に配置された発光ユニット14-2との界面に、電荷発生層15”側から順に、一般式(1)〜(5)を用いて説明した有機材料からなる層(以下、有機層17’と記す)層と、この有機材料と金属材料との混合層17とを積層配置しても良いことも、第1実施形態と同様である。この場合、上述したようにこれらの有機材料は、主に正孔注入性あるいは正孔輸送性を有している。そこで、この混合層17は、例えば、図示したように正孔注入層14aを兼ねる層として用いられていても良いことも同様である。
【0155】
以下、電荷発生層15”を中心に、有機電界発光素子11”の構成を詳細に説明する。
【0156】
すなわち、本第4実施形態の有機電界発光素子11”における電荷発生層15”は、陽極13側から順に、混合層15a”と真性電荷発生層15bとを積層した構造となっている。そして、この混合層15a”は、陽極13に接して設けられた発光ユニット14-1に対して陰極として作用するため、以下においては、この混合層15a”を中間陰極層15a”と記す。
【0157】
このような構成の電界発生層15”において、中間陰極層(混合層)15a”は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む一般的な酸化物、金属酸化物、および複合酸化物の少なくとも一つと、有機材料とを混合した材料で構成されている。アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、具体的にはリチウム(Li)、セシウム(Cs)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)を例示することができる。そして、この中間陰極層(混合層)15a”を構成する酸化物としては、例えば先の第1実施形態で説明したと同様のものが用いられる。また、中間陰極層(混合層)15a”を構成する有機材料としては、例えばAlq3やADNのような電子輸送性を備えた有機材料を用いることが好ましい。
【0158】
そして、真性電荷発生層15bは、この中間陰極層(混合層)15a”に接して設けられると共に、上記一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料を用いて構成されている。
【0159】
尚、ここでの図示は省略したが、中間陰極層15a”は、陽極13側から順に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方(少なくとも1種類の元素)を含むフッ化物で構成されているフッ化物層と、上述した混合層とを積層した構造であっても良い。ここで上述した混合層とは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む一般的な酸化物、金属酸化物、および複合酸化物の少なくとも一つと、有機材料との混合層である。
【0160】
また、本第4実施形態においては、真性電荷発生層15bが上記一般式(1)〜(5)でそれぞれ示された有機材料を用いて構成されているため、この真性電荷発生層15bが正孔注入層14aを兼ねても良い。したがって、電荷発生層15”よりも陰極16側に設けられた発光ユニット14-2には、正孔注入層14a(混合層17および有機層17’)を設ける必要はない。さらに、電荷発生層15”は、真性電荷発生層15bよりも陰極16側に、ここでの図示を省略した銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン骨格を有する有機材料からなる中間陽極層を積層させた構成であっても良い。以上については、第2実施形態と同様である。
【0161】
このような構成の第4実施形態の有機電界発光素子11”であっても、陽極13と陰極16との間の積層膜内に、上記一般式(1)〜(5)を用いてそれぞれ説明した有機材料と金属材料との混合層17を設けているため、図1を用いて説明した第1実施形態の有機電界発光素子10と同様に、駆動電圧を低下させることが可能となる。またこの結果、有機電界発光素子11”の長寿命化および消費電力の低下を図ることが可能となる。
【0162】
また、中間陰極層(混合層)15a”は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む一般的な酸化物、金属酸化物、および複合酸化物の少なくとも一つと、有機材料との混合層15a”と、上記一般式(1)〜(5)でそれぞれ示された有機材料からなる真性電荷発生層15bとを互いに接する状態で陽極13側から順に積層させた電荷発生層15”を、発光ユニット14a-1,14a-2間に狭持させた構成としたことにより、発光ユニットを積層させてなるタンデム型の有機電界発光素子において、十分な発光効率での発光が得られることが確認された。しかも、電荷発生層15”を構成する上記材料がともに安定な材料であるため、これを用いた電荷発生層の安定化が図られる。
【0163】
以上の結果、本第4実施形態によれば、第2実施形態および第3実施形態の有機電界発光素子と同様に、有機層からなる発光ユニット14-1,14-2を積層させたタンデム型の有機電界発光素子11”における長期信頼性の向上を図ることが可能になり、また、このような長期信頼性に優れたタンデム型の有機電界発光素子11”の作製を容易にすることが可能である。また、真性電荷発生層15bとして、上述した一般式(1)〜(5)にそれぞれ示した有機化合物を用いることにより、層構造の簡略化を図ることが可能になる。
【0164】
尚、以上説明した第1〜第4実施形態の有機電界発光素子は、TFT基板を用いたアクティブマトリックス方式の表示装置に用いる有機電界発光素子に限定されることはなく、パッシブ方式の表示装置に用いる有機電界発光素子としても適用可能であり、同様の効果(長期信頼性の向上)を得ることができる。
【0165】
また、以上説明した第1〜第4実施形態においては、基板12と反対側に設けた陰極16側から発光を取り出す「上面発光型」の場合を説明した。しかし本発明は、基板12を透明材料で構成することで、発光を基板12側から取り出す「透過型」の有機電界発光素子にも適用される。この場合、図2〜図4を用いて説明した積層構造において、透明材料からなる基板12上の陽極13を、例えばITOのような仕事関数が大きい透明電極材料を用いて構成する。これにより、基板12側および基板12と反対側の両方から発光光が取り出される。また、このような構成において、陰極16を反射材料で構成することにより、基板12側からのみ発光光が取り出される。この場合、陰極16の最上層にAuGeやAu、Pt等の封止電極を付けても良い。
【0166】
さらに、図1〜図4を用いて説明した積層構造を、透明材料からなる基板12側から逆に積み上げて陽極13を上部電極とした構成であっても、基板12側から発光光を取り出す「透過型」の有機電界発光素子を構成することができる。この場合においても、上部電極となる陽極13を透明電極に変更することで、基板12側および基板12と反対側の両方から発光光が取り出される。
【0167】
<他の実施形態>
以上説明した第1〜第4実施形態の有機電界発光素子は、色変換膜と組み合わせることもできる。以下、第1実施形態で説明した図1の有機電界発光素子を例に取り、色変換膜を用いた有機電界発光素子の構成を説明するが、第2〜第4実施形態の有機電界発光素子についても同様に適用可能である。
【0168】
先ず、図5には、第1実施形態で説明した有機電界発光素子(10)が、基板12と反対側から発光光を取り出す「上面発光型」である場合の有機電界発光素子10aを示す。この場合、発光光を取り出す側となる陰極16の上部に色変換層18を設けた有機電界発光素子10aが構成される。ここで、この有機電界発光素子10aにおける発光層14cが青色波長の励起光源である場合、色変換層18には、各画素部分に対応させて、青色波長の励起光源を赤色波長へ変換する色変換膜18aと、青色波長の励起光源を緑色へと変換する色変換膜18bとを配置する。また、色変換膜18aと色変換膜18b以外の色変換層18部分には、青色波長の励起光源を波長変換させずに通過させる材料膜を設ける。このような構成の有機電界発光素子10aでは、フルカラー表示を行うことが可能である。
【0169】
尚、またこのような構成の色変換膜18a、18bを備えた色変換層18は、公知の技術であるフォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0170】
図6には、第1実施形態で説明した有機電界発光素子(10)が「上面発光型」である場合の他の有機電界発光素子10bを示す。この図に示すように、発光光を取り出す側となる陰極16の上部に、色変換層18,19を積層して設けても良い。この場合、各画素部分に対応させて、青色波長の励起光源を赤色波長へ変換する色変換膜18a,19aが積層配置され、青色波長の励起光源を緑色へと変換する色変換膜18b,19bが積層配置される。これらの積層配置される色変換膜18a,19a、および色変換膜18b,19bは、積層させて用いることで、両方を通過した光が所望の波長に変換される組み合わせであることとする。また、青色波長の励起光源をさらに色度の良好な青色に変換させる19cを設けても良い。そして、色変換膜19a〜19c以外の色変換層19部分には、青色波長の励起光源を波長変換させずに通過させる材料膜を設ける。このような構成の有機電界発光素子10bであっても、フルカラー表示を行うことが可能である。
【0171】
図7には、第1実施形態で説明した有機電界発光素子(10)が、基板12側から発光光を取り出す「透過光型」である場合の有機電界発光素子10cを示す。この場合、発光光を取り出す側となる陽極13と基板12との間に、色変換層18を設けた有機電界発光素子10cが構成される。色変換層18の構成は、上述と同様である。このような構成の有機電界発光素子10cであっても、フルカラー表示を行うことが可能である。
【0172】
図8には、第1実施形態で説明した有機電界発光素子(10)が「透過型」である場合の他の有機電界発光素子10dを示す。この図に示すように、発光光を取り出す側となる陽極13と基板12との間に、色変換層18,19を積層して設けても良い。色変換層18,19の構成は、上述と同様である。このような構成の有機電界発光素子10dであっても、フルカラー表示を行うことが可能である。
【0173】
以上の図5〜図8を用いて説明した有機電界発光素子10a〜10dの構成において、電荷発生層15-0を、上述した第2〜第3実施形態で説明した構成の電荷発生層15,15’,15”に変更することにより、それぞれの実施形態に対応した有機電界発光素子11a,11a’,11a”,…が構成されることになる。
【実施例】
【0174】
次に、本発明の具体的な実施例、およびこれらの実施例に対する比較例の有機電界発光素子の製造手順と、これらの評価結果を説明する。
【0175】
<実施例1〜5>
各実施例1〜5では、図1を用いて説明した第1実施形態の有機電界発光素子10の構成において、陽極13上の発光ユニット14-1上に、陰極16を直接設けたモノユニット型の各有機電界発光素子を作製した。この際、下記表6に示すように、陽極13上における発光ユニット14-1の混合層17として、それぞれの材料を用いた。以下に先ず、実施例1〜5の有機電界発光素子の製造手順を説明する。
【0176】
【表6】

【0177】
30mm×30mmのガラス板からなる基板12上に、陽極13としてITO(膜厚約120nm)を形成し、さらにSiO2蒸着により2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)でマスクした有機電界発光素子用のセルを作製した。
【0178】
次に、発光ユニット14-1の第1層目である混合層17(正孔注入層14a)を、真空蒸着法により、15nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。この際、各実施例においては、表6に示したように、各有機材料と金属材料とを用い、それぞれぞれの相対膜厚比(金属材料体積%)で共蒸着した。
【0179】
次いで、正孔輸送層14bとして、下記構造式(6)に示すα−NPD(Bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl]bendizine)を、真空蒸着法により15nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。
【化24】

【0180】
さらに、発光層14cとして、下記構造式(7)に示すADN[9,10-di-(2-naphthyl)-anthracene]をホストにし、ドーパントとしてBD−052x(出光興産株式会社:商品名)を用い、真空蒸着法により膜厚比で5%になるように、これらの材料を32nmの合計膜厚で成膜した。
【化25】

【0181】
最後に、電子輸送層14dとして、下記構造式(8)に示すAlq3[Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)]を、真空蒸着法により18nmの膜厚で蒸着成膜した。
【化26】

【0182】
次に、陰極16の第1層16aとして、LiFを真空蒸着法により約0.3nmの膜厚で形成し(蒸着速度0.01nm/sec以下)、次いで、第2層16bとしてMgAgを真空蒸着法により10nmの膜厚で形成し、最後に第3層16cとしてAlを300nmの膜厚で形成した。
【0183】
<比較例1>
実施例1〜5の手順において、発光ユニット14-1の第1層目である正孔注入層14aを、上記表6に示す有機材料のみで形成したこと以外は、同様の手順で有機電界発光素子を作製した。
【0184】
≪評価結果−1≫
上記表6には、上述のようにして作製した実施例1〜5および比較例1の有機電界発光素子の駆動電圧(20mA/cm2駆動時)を合わせて示した。この結果が示すように、一般式(1)〜一般式(5)を用いてそれぞれ説明した各有機材料と金属材料との混合層17を、陽極13と陰極16との間に設けた実施例1〜5の全ての有機電界発光素子において、このような混合層17を設けていない比較例1の有機電界発光素子と比較して駆動電圧の低下を達成できることが確認できた。
【0185】
また、図9には、実施例1〜5を代表して実施例1の有機電界発光素子における電流−電圧特性のグラフを示す。尚、実施例2〜4は、実施例1とほぼ同様の結果であった。このグラフからも、一般式(1)〜一般式(5)を用いてそれぞれ説明した各有機材料と金属材料との混合層17を、陽極13と陰極16との間に設けた有機電界発光素子(実施例1〜5)が、このような混合層17を設けていない比較例1の有機電界発光素子に対して低電圧化が可能なことは明白である。
【0186】
<実施例6〜10>
各実施例6〜10では、図1を用いて説明したタンデム型の有機電界発光素子10を、下記表7に示すそれぞれの材料構成で作製した。以下に先ず、実施例6〜10の有機電界発光素子の製造手順を説明する。
【0187】
【表7】

【0188】
先ず、上述した実施例1〜5と同様の構成に、陽極13上に発光ユニット14-1を形成した。ここで、実施例6は実施例1と同様、実施例7は実施例2と同様、…の構成である。
【0189】
次に、電荷発生層15-0を、1.5nmの膜厚で蒸着した。ここで、実施例6においては、Li2CO3からなる電荷発生層15-0を形成した。また、実施例7〜10においては、表7に示す材料を混合した電荷発生層15-0を形成した。
【0190】
以上の後、発光ユニット14-2の第1層目として、上記表7に示す有機材料からなる有機層17’を10nmの膜厚で形成した。
【0191】
次に、発光ユニット14-2における混合層17(正孔注入層14a)を、真空蒸着法により、5nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。この際、各実施例6〜10においては、表7に示したように、各有機層17’に用いた有機材料と金属材料とを用い、それぞれぞれの相対膜厚比で共蒸着した。
【0192】
以上の後には、実施例1〜5と同様に、正孔輸送層14b、発光層14c、電子輸送層14d、および3層構造の陰極16を形成した。
【0193】
これにより、発光ユニットを積層したタンデム型で、かつ基板12側から光を取り出す透過型の有機電界発光素子10を得た。
【0194】
<比較例2>
実施例6〜10の手順において、発光ユニット14-1の第1層目である正孔注入層14aを上記表7に示す有機材料のみで形成したこと、さらに発光ユニット14-2に混合層17を設けなかったこと以外は、同様の手順で有機電界発光素子を作製した。
【0195】
≪評価結果−2≫
上記表7には、上述のようにして作製した実施例6〜10および比較例2の有機電界発光素子の駆動電圧を合わせて示した。この結果が示すように、一般式(1)〜一般式(5)を用いてそれぞれ説明した各有機材料と金属材料との混合層17を、陽極13と陰極16との間に設けた実施例6〜10の全ての有機電界発光素子において、このような混合層17を設けていない比較例1の有機電界発光素子と比較して駆動電圧の低下を達成できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】第1実施形態の有機電界発光素子の一構成例を示す断面図である。
【図2】第2実施形態の有機電界発光素子の一構成例を示す断面図である。
【図3】第3実施形態の有機電界発光素子の一構成例を示す断面図である。
【図4】第4実施形態の有機電界発光素子の一構成例を示す断面図である。
【図5】実施形態の有機電界発光素子と色変換膜とを組み合わせた第1例を示す断面図である。
【図6】実施形態の有機電界発光素子と色変換膜とを組み合わせた第2例を示す断面図である。
【図7】実施形態の有機電界発光素子と色変換膜とを組み合わせた第3例を示す断面図である。
【図8】実施形態の有機電界発光素子と色変換膜とを組み合わせた第4例を示す断面図である。
【図9】実施例1および比較例1における有機電界発光素子の発光効率を示すグラフである。
【図10】従来の有機電界発光素子の構成を示す断面図である。
【図11】従来の有機電界発光素子の他の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0197】
11…有機電界発光素子、13…陽極、14-1、14-2…発光ユニット、14c…発光層(有機発光層)、15,15’,15”…電荷発生層、15a,15a’…中間陰極層(界面層)、15a”…中間陰極層(混合層)、15b…真性電荷発生層、16…陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と陽極との間に、少なくとも有機発光層を備えた積層膜を狭持してなる有機電界発光素子において、
前記積層膜が、下記一般式(1)に示す有機材料と金属材料との混合層を備えている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】

[ただし、一般式(1)中において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、ニトロ基、シアノ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。またX1〜X6は、それぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。]
【請求項2】
陰極と陽極との間に、少なくとも有機発光層を備えた積層膜を狭持してなる有機電界発光素子において、
前記積層膜が、下記一般式(2)に示す有機材料と金属材料との混合層を備えている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化2】

[ただし、一般式(2)中において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化合物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRt(t=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合しても良い。またX1〜X6,Y1〜Y6は、それぞれ独立に、炭素もしくは窒素原子であって、m,n,およびpはそれぞれ0以上の整数を示しかつn+m+p≠0である。]
【請求項3】
陰極と陽極との間に、少なくとも有機発光層を備えた積層膜を狭持してなる有機電界発光素子において、
前記積層膜が、下記一般式(3)に示す有機材料と金属材料との混合層を備えている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化3】

[ただし、一般式(3)中において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化合物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合しても良い。X1〜X6はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子であり、Y1〜Y3の結合部位は、それぞれ独立に下記一般式(a)〜(d)の何れかである。]
【化4】

[ただし、一般式(a)および一般式(b)中において、A1〜A3はそれぞれ独立に、水素、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる置換基である。]
【請求項4】
陰極と陽極との間に、少なくとも有機発光層を備えた積層膜を狭持してなる有機電界発光素子において、
前記積層膜が、下記一般式(4)に示す有機材料と金属材料との混合層を備えている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化5】

[ただし、一般式(4)中において、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜8)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。またX1〜X10はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。]
【請求項5】
陰極と陽極との間に、少なくとも有機発光層を備えた積層膜を狭持してなる有機電界発光素子において、
前記積層膜が、下記一般式(5)に示す有機材料と金属材料との混合層を備えている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化6】

[ただし、一般式(5)中において、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン化合物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜8)は環状構造を通じて互いに結合しても良く、X1〜X8はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子であり少なくとも一つは窒素原子である。Y1〜Y4はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。Mtは水素二原子、銅、亜鉛、鉄、コバルト、もしくはニッケルから選ばれる。]
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の有機電界発光素子において、
前記金属材料は、0価〜4価の金属元素のうちの少なくとも1つである
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載の有機電界発光素子において、
前記混合層は、前記陽極との界面に設けられている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか1項に記載の有機電界発光素子において、
前記積層膜は、少なくとも有機発光層を備えた有機材料層からなる発光ユニットが複数個積層され、当該各発光ユニット間に電荷発生層が挟持されてなり、
前記混合層は、前記発光ユニットおよび前記電荷発生層の少なくとも一方に設けられている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項9】
請求項8記載の有機電界発光素子において、
前記電荷発生層と、当該電荷発生層の陰極側に配置された前記発光ユニットとの界面には、当該電荷発生層側から順に、前記混合層を構成する有機材料からなる層と、当該混合層とが積層配置されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項10】
請求項8記載の有機電界発光素子において、
前記電荷発生層は、酸化物を用いて構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項11】
請求項10記載の有機電界発光素子において、
前記酸化物は、Li2CO3、Li2SiO3、Cs2CO3、Li2O、WO2、WO3、LiTaO3、およびLi2WO4のうちの少なくとも1つである
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項12】
請求項10記載の有機電界発光素子において、
前記電荷発生層は、前記酸化物と電荷輸送材料との混合層によって構成されている層を含む
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項13】
請求項10記載の有機電界発光素子において、
前記電荷発生層は、前記酸化物からなる層と、前記酸化物と電荷輸送材料との混合層との積層構造となっている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項14】
請求項10記載の有機電界発光素子において、
前記酸化物は、前記電荷発生層における前記陽極側の界面層を構成している
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項15】
請求項8記載の有機電界発光素子において、
前記電荷発生層における前記陰極側の界面層は、フタロシアニン骨格を有する有機材料を用いて構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項16】
請求項8記載の有機電界発光素子において、
前記電荷発生層における前記陽極側の界面には、アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物の少なくとも一方を用いた界面層が設けられている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項17】
請求項16記載の有機電界発光素子において、
前記界面層は、導電性材料層と、当該導電性材料層における前記陽極側に配置されたアルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物の少なくとも一方からなる層とで構成されたことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項18】
請求項17記載の有機電界発光素子において、
前記導電性材料層がマグネシウム、銀、およびアルミニウムの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−294895(P2006−294895A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114271(P2005−114271)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】