説明

有機電界発光素子

【課題】水分および酸素に対する耐久性の強い有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】第1の基板上に電極、1層の発光層を含む有機化合物層、および背面電極を有する有機発光部上に無機膜層を有する有機電界発光素子であって、第二の基板を前記無機膜層面と重ね合わせ、第2の基板の前記無機膜層と対峙する面と前記無機幕層との間隙を樹脂によって充填して樹脂封止層を形成し、かつ前記第1の基板と前記第2の基板の周辺端部が乾燥剤を含有する封止接着剤で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関する。特に保存安定性が改良された有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を通じることによって励起され発光する薄膜材料を用いた有機電界発光素子が知られている。有機電界発光素子は、低電圧で高輝度の発光が得られるために、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い潜在用途を有し、それらの分野でデバイスの薄型化、軽量化、小型化、および省電力のなどの利点を有する。このため、将来の電子ディスプレイ市場の主役としての期待が大きい。しかしながら、実用的にこれらの分野で従来ディスプレイに代わって用いられるためには、発光輝度と色調、広い使用環境条件下での耐久性、安価で大量生産性など多くの技術改良が課題となっている。
【0003】
有機電界発光素子の重要な問題点の一つは、水分や酸素に極めて弱く、具体的には、金属電極と有機層との界面が水分の影響で変質したり、電極が剥離したり、金属電極が酸化して高抵抗化したり、有機材料自体が水分により変質したりというような現象が起こる。
これにより、駆動電圧の上昇、ダークスポット(非発光欠陥)の発生及び成長または発光輝度の減少等が発生し、十分な信頼性を保てない問題がある。
【0004】
有機電界発光素子においては、水分の浸入を防止しない限り十分な信頼性が保てない。
従来、水分の進入を防止するための有機電界発光素子の構造が種々提案されている。図2はその一例を示す概略断面図であって、一般的に知られている方法である。有機電界発光素子120は、水分を透さないガラス基板110上に担持され、それをガラス製もしくは金属製の封止缶130で覆い、該封止缶とガラス基板110との接点を接着剤で封止する(例えば、特許文献1参照。)。さらに内部の気相をアルゴンガスや窒素ガスで充填することも知られている。この構造は、内部に気相空間140を有することが特徴であって、この気相からの水分や酸素の浸透によって性能劣化が引き起こされる水分や酸素不透過性の封止缶は外部よりの水分や酸素の侵入を防止するが、既に存在する気相空間140の水分や酸素についてはなんら効果を有しない。有機電界発光素子のアセンブリーの際に、脱湿かつ脱気した環境下で操作して、この気相空間の水分や空気を削減することはある程度は可能であるが、完全に除くことはできない。
【0005】
一方、ガラス基板上に有機電界発光素子を担時して後、さらにその表面を無機材料層を蒸着して水分に対する封止層を形成する試みも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。無機材料として、窒化珪素、酸化窒化珪素、炭化珪素、およびアモルファスシリコンが開示されている。しかしながら、有機化合物層の上に形成される蒸着膜はピンホールやクラックなどの欠陥が多く発生する問題があった。これらの欠陥を除くには無機材料の蒸着厚みをかなり厚くするか、あるいは複数回蒸着を繰り返した重層膜にするなどの手段があるがコストと生産性の点で好ましくない。
【0006】
このように、水分の遮断性に優れ、かつ大量生産性も満足した封止方法が望まれていた。
【特許文献1】特開2004−265615号公報
【特許文献2】特許3170542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、保存安定性が改良された有機電界発光素子を提供するものであり、特に水分および酸素に対する耐久性の強い有機電界発光素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決された。
<1> 第1の基板上に電極、少なくとも1層の発光層を含む有機化合物層、および背面電極を有する有機発光部上に無機膜層を有する有機電界発光素子であって、第2の基板を前記無機膜層面と重ね合わせ、該第2の基板の前記無機膜層と対峙する面と前記無機膜層との間隙を樹脂によって充填して樹脂封止層を形成し、かつ前記第1の基板と前記第2の基板周辺端部が乾燥剤を含有する封止接着剤で被覆されていることを特徴とする有機電界発光素子。
<2> 前記乾燥剤が、酸化バリウム、酸化カルシウム、および酸化ストロンチウムより選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする<1>記載の有機電界発光素子。
<3> 前記封止接着剤が前記乾燥剤を前記封止接着剤に対して0.01質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする<1>または<2>に記載の有機電界発光素子。
<4> 前記無機膜層が、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素、および炭化珪素より選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<5> 前記第1の基板および前記第2の基板が、共にガラスであることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、水分および酸素に対する耐久性の強い有機電界発光素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の有機電界発光素子構造体は、二枚の基板の間に、発光素子を挟み込んだ一体の構造体であり、順に、第一の基板、電極、発光層を含む有機化合物層、および背面電極よりなる発光部、および第二の基板を積層をして有し、さらに背面電極の前記第二の基板と面する側に無機膜層を有し、該無機膜層と前記第二の基板との間隙を充填する樹脂封止層を有する。また、2枚の基板の周辺端部は、封止接着剤によって被覆されている。
以下に、1)基板、電極、発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子、2)無機膜層、3)樹脂封止層、および4)封止接着剤について、説明する。
【0011】
1.有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子は、発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、ブロック層、電子注入層、および正孔注入層などの従来知られている有機化合物層を有しても良い。
【0012】
以下、詳細に説明する。
1)層構成
<電極>
本発明の有機電界発光素子の一対の電極は、少なくとも一方は透明電極であり、もう一方は背面電極となる。背面電極は透明であっても、非透明であっても良い。
<有機化合物層の構成>
前記有機化合物層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機化合物層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機化合物層の形状、大きさ、および厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0013】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
【0014】
以下に各層について詳細に説明する。
2)正孔輸送層
本発明に用いられる正孔輸送層は正孔輸送材を含む。前記正孔輸送材としては正孔を輸送する機能、もしくは陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているもので有れば特に制限されることはなく用いることが出来る。本発明に用いられる正孔輸送材としては、低分子正孔輸送材、および高分子正孔輸送材のいずれも用いることができる。
本発明に用いられる正孔輸送材の具体例として、例えば以下の材料を挙げることができる。
【0015】
カルバゾ−ル誘導体、トリアゾ−ル誘導体、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、イミダゾ−ル誘導体、ポリアリ−ルアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリ−ルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
正孔輸送層の厚みとしては、10nm〜200nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。前記厚みが、200nmを越えると駆動電圧が上昇することがあり、10nm未満であると該発光素子が短絡することがあるので好ましくない。
【0017】
3)正孔注入層
本発明おいては、正孔輸送層と陽極の間に正孔注入層を設けることができる。
正孔注入層とは、陽極から正孔輸送層に正孔を注入しやすくする層であり、具体的には前記正孔輸送材の中でイオン化ポテンシャルの小さな材料が好適用いられる。例えばフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、スターバースト型トリアリールアミン化合物等を挙げることができ、好適に用いることができる。
正孔注入層の膜厚は、1nm〜30nmが好ましい。
【0018】
4)発光層
本発明に用いられる発光層は、少なくとも一種の発光材料を含み、必要に応じて正孔輸送材、電子輸送材、ホスト材を含んでもよい。
本発明に用いられる発光材料としては特に限定されることはなく、蛍光発光材料または燐光発光材料のいずれも用いることができる。発光効率の点から燐光発光材料が好ましい。
【0019】
蛍光発光材料としては、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
燐光発光材料としては特に限定されることはないが、オルトメタル化金属錯体、又はポルフィリン金属錯体が好ましい。
【0021】
上記オルトメタル化金属錯体とは、例えば山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」150頁〜232頁、裳華房社(1982年発行)やH.Yersin著「Photochemistry and Photophisics of Coodination Compounds」、71〜77頁、135〜146頁、Springer−Verlag社(1987年発行)等に記載されている化合物群の総称である。該オルトメタル化金属錯体を発光材料として発光層に用いることは、高輝度で発光効率に優れる点で有利である。
【0022】
上記オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては、種々のものがあり、上記文献にも記載されているが、その中でも好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有してもよい。また、上記オルトメタル化金属錯体は、上記配位子のほかに、他の配位子を有していてもよい。
【0023】
本発明で用いるオルトメタル化金属錯体は、Inorg Chem.,1991年,30号,1685頁、同1988年,27号,3464頁、同1994年,33号,545頁、Inorg.Chim.Acta,1991年,181号,245頁、J.Organomet.Chem.,1987年,335号,293頁、J.Am.Chem.Soc.1985年,107号,1431頁等、種々の公知の手法で合成することができる。
上記オルトメタル化錯体の中でも、三重項励起子から発光する化合物が本発明においては発光効率向上の観点から好適に使用することができる。
【0024】
また、ポルフィリン金属錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。
燐光発光材料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、蛍光発光材料と燐光発光材料を同時に用いてもよい。
【0025】
ホスト材とは、その励起状態から、蛍光発光材料または燐光発光材料へエネルギー移動を起こし、その結果、蛍光発光材料または燐光発光材料を発光させる機能を有する材料のことである。
【0026】
ホスト材としては、励起子エネルギーを発光材料にエネルギー移動させることのできる化合物ならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、具体的にはカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ホスト材の発光層における含有量としては0質量%〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは0質量%〜99.0質量%である。
【0027】
5)ブロック層
本発明においては、発光層と電子輸送層との間にブロック層を設けることができる。ブロック層とは発光層で生成した励起子の拡散抑制する層であり、また正孔が陰極側に突き抜けることを抑制する層である。
【0028】
ブロック層に用いられる材料は、電子輸送層より電子を受け取り、発光層にわたす事のできる材料で有れば特に限定されることはなく、一般的な電子輸送材を用いることができる。例えば以下の材料を挙げることができる。トリアゾ−ル誘導体、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
6)電子輸送層
本発明においては電子輸送材を含む電子輸送層を設けることができる。
電子輸送材としては電子を輸送する機能、もしくは陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているもので有れば制限されることはなく、前記ブロック層の説明時に挙げた電子輸送材を好適に用いることができる。
前記電子輸送層の厚みとしては、10nm〜200nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。
【0030】
前記厚みが、200nmを越えると駆動電圧が上昇することがあり、10nm未満であると該発光素子が短絡することがあり好ましくない。
【0031】
7)電子注入層
本発明おいては、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を設けることができる。
電子注入層とは、陰極から電子輸送層に電子を注入しやすくする層であり、具体的にはフッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム等のリチウム塩、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属塩、酸化リチウム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム等の絶縁性金属酸化物等を好適に用いることができる。
電子注入層の膜厚は0.1〜5nmが好ましい。
【0032】
8)有機化合物層の形成方法
前記有機化合物層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、ディッピング、スピンコ−ト法、ディップコ−ト法、キャスト法、ダイコ−ト法、ロ−ルコ−ト法、バ−コ−ト法、グラビアコ−ト法等の湿式製膜法いずれによっても好適に製膜することができる。
中でも発光効率、耐久性の点から乾式法が好ましい。
【0033】
次に、本発明の有機電界発光素子に用いられる基板と電極について説明する。
9)基板
本発明に用いられる基板の材料としては、第一の基板および第二の基板ともに水分を透過させない材料又は水分透過率の極めて低い材料が好ましく、また、前記有機化合物層から発せられる光を散乱乃至減衰等のさせることのない材料が好ましい。具体的例として、例えばYSZ(ジルコニア安定化イットリウム)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、アリルジグリコ−ルカ−ボネ−ト、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、およびポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の合成樹脂等の有機材料、などが挙げられる。
前記有機材料の場合、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性、低吸湿性等に優れていることが好ましい。これらの中でも、前記透明電極の材料が該透明電極の材料として好適に使用される酸化錫インジウム(ITO)である場合には、該酸化錫インジウム(ITO)との格子定数の差が小さい材料が好ましい。これらの材料は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、前記形状としては、板状である。前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0035】
基板は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいが、前記発光層から発せられる光を散乱あるいは減衰等させることがない点で、無色透明であるのが好ましい。
【0036】
基板には、その表面又は裏面(前記透明電極側)に透湿防止層(ガスバリア層)を設けるのが好ましい。前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。該透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
基板には、さらに必要に応じて、ハ−ドコ−ト層、およびアンダ−コ−ト層などを設けてもよい。
【0037】
10)陽極
本発明に用いられる陽極としては、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0038】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。具体例としては、アンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0039】
陽極は例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、該陽極の形成は、直流あるいは高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。また陽極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式製膜法に従って行うことができる。
【0040】
陽極の前記発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、該陽極は、前記基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0041】
なお、前記陽極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィ−などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0042】
陽極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μmであり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。
陽極は、無色透明であっても、有色透明であってもよく、該陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。この透過率は、分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0043】
陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シ−エムシ−刊(1999)に詳述があり、これらを本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜した陽極が好ましい。
【0044】
11)陰極
本発明に用いることの出来る陰極としては、通常、前記有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0045】
陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0046】
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ度類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、又はアルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金若しくは混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0047】
陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されていて、これらを本発明に適用することができる。
【0048】
陰極の形成法は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、前記陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0049】
陰極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィ−などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0050】
陰極の有機電界発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、有機化合物層上に形成されるのが好ましい。この場合、該陰極は、前記有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と有機化合物層との間に前記アルカリ金属又は前記アルカリ土類金属のフッ化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。
なお、該誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等により形成することができる。
【0051】
陰極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μmであり、50nm〜1μmが好ましい。
陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、前記陰極の材料を1〜10nmの厚みに薄く製膜し、更に前記ITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0052】
2.無機膜層
本発明に用いられる無機膜層は、背面電極の上に設けられる絶縁層であって、かつ発光素子が水分や酸素等のガスの侵入によって劣化するのを防止する層である。
本発明に用いられる無機膜層の素材としては、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素、および炭化珪素が好ましく用いられる。
本発明に用いられる無機膜層は、CVD法、イオンンプレーティング法、スパッタリング法もしくは蒸着法により形成することが出来る。
本発明に用いられる無機膜層の厚みは、0.01μm〜10μmが好ましい。0.01μmより薄いと絶縁機能および水分やガス防止機能が不十分となるため好ましくない。また、10μmより厚いと製膜に時間がかかり、工程上好ましくない。また膜応力が大きくなる場合があり、膜剥がれ等が生じ好ましくない。さらに厚い膜を得るには製膜を複数回繰り返すことにより可能である。
【0053】
3.樹脂封止層
本発明に用いられる樹脂封止層は、前記無機膜層と第二の基板との間の気相空間を充填する層である。従って、発明においては前記無機膜層と第二の基板との間の間隙は全て樹脂によって充填され、気相空間を有しないことを大きな特徴とする。
<素材>
樹脂封止層の樹脂素材としては、特に限定されることはなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、エステル系樹脂等を用いることができるが、中でも水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、または光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
<作製方法>
樹脂封止層の作製方法は特に限定されることはなく、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着または熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法が挙げられる。
<膜厚み>
樹脂封止層の厚みは1μm以上、1mm以下が好ましい。更に好ましくは5μm以上、100μm以下であり、最も好ましくは10μm以上50μm以下である。これよりも薄いと、第2の基板を装着時に上記無機膜を損傷する恐れがある。またこれよりも厚いと電界発光素子自体の厚みが厚くなり、有機電界発光素子の特徴である薄膜性を損なうことになる。
【0054】
4.封止接着剤
本発明における有機電界発光素子は二枚の基板でサンドイッチされ、該基板の周辺端部は、乾燥剤を含有する封止接着剤で封止される。
本発明における封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
本発明における有機電界発光素子は、水分およびガス不透過性の二枚の基板で挟まれ、かつ挟まれた内部に全く気相空間を有しないため、外部よりの水分および酸素等のガスの侵入は極めて低く抑えられているが、さらに端部を乾燥剤を含有する封止接着剤で封止することにより、より完璧にすることが出来る。
【0055】
<素材>
前記封止接着剤のの材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、中でも熱硬化型エポキシ系接着剤、光硬化型エポキシ系接着剤が好ましい。
【0056】
また、上記材料にフィラーを添加することも好ましい。
封止剤に添加されているフィラーとしては、SiO2、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)またはSiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。フィラーの添加により、封止剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、および耐湿性が向上する。
【0057】
<乾燥剤>
・種類
本発明に用いられる乾燥剤は、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムが好ましい。
・添加量
封止接着剤に対する乾燥剤の添加量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05質量%以上15質量%以下である。これよりも少ないと、乾燥剤の添加効果が薄れることになる。またこれよりも多い場合には封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になり好ましくない。
<封止接着剤の処方>
・ポリマー組成、濃度、
封止接着剤としては特に限定されることはなく、前記のものを用いることができる。例えば光硬化型エポキシ系接着剤としては長瀬ケムテック(株)製のXNR5516を挙げることができる。そこに直接前記乾燥剤を添加し、分散せしめれば良い。
・厚み
封止接着剤の塗布厚みは1μm以上1mm以下であることが好ましい。これよりも薄いと封止接着剤を均一に塗れなくなり好ましくない。またこれよりも厚いと、水分が侵入する道筋が広くなり好ましくない。
<封止方法>
本発明においては、上記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後題2基板を重ねて、乾燥、硬化させることにより本発明の電界発光素子を得ることができる。
【0058】
5.有機発光素子構造体の実施の形態
次に、有機発光素子構造体の実施の形態を具体的に説明する。
図1は、本発明による有機発光素子構造体の概略断面図である。有機発光素子構造体10は、第一の基板11の上に電極および有機発光層を含む有機化合物層を有する。具体的には、電極(陽極)、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、ブロック層、電子輸送層、電子注入層、および背面電極(陰極)などの積層構造を有する。背面電極の上には、無機膜層30を有する。さらに、無機膜層30と第二の基板12との間の間隙を樹脂で埋めて封止層40を形成する。その後、二枚の基板の周辺端部の断面に封止接着剤50a,50bを充填する。次に第2の基板を重ね合わせ、光硬化および/または熱硬化せしめることにより本発明の電界発光素子を得ることができる。
【0059】
従って、得られた構造体10において、発光層を含む有機発光素子20は無機層30による水分や酸素などのガスの浸入のブロック、樹脂封止層40によって内部の空気層を完全に除きかれるため、有機発光素子の平面からの水分や酸素などのガスの浸入は高度に抑制される。さらに、端部の乾燥剤を含有する封止接着剤50a,50bによって、端部からの水分および酸素等のガスの侵入が防止されるので、総合的に水分および酸素等のガスの侵入に対して高度に防御される。
【実施例】
【0060】
以下に実施例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に記載する実施例によって制限されるものではない。
【0061】
始めに本発明の実施例に用いた有機電界発光素子を記載する。
<有機電界素子の作製>
基板として厚みが0.5mmで2.5cm角のガラス板を用い、この基板を真空チャンバー内に導入し、SnO2含有率が10質量%であるITOターゲット(インジウム:錫=95:5(モル比))を用いて、DCマグネトロンスパッタ(条件:基材温度250℃、酸素圧1×10-3Pa)により、透明電極としてITO薄膜(厚み0.2μm)を基板上に形成した。ITO薄膜の表面抵抗は10Ω/□であった。
次に、透明電極を形成した基板を洗浄容器に入れ、IPA洗浄した後、これにUV−オゾン処理を30分行った。
この透明電極上に正孔注入層として銅フタロシアニンを真空蒸着法にて1nm/秒の速度で蒸着して0.01μm設けた。
【0062】
次にこの上に正孔輸送層を設けた。正孔輸送材としてはN,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニルベンジジン(NPD)を真空蒸着法にて蒸着して0.3μmの正孔輸送層を設けた。
【0063】
この上に燐光発光材料であるトリス(2−フェニルピリジル)イリジウム錯体(Ir(ppy)3)、およびホスト化合物として、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニル(CBP)を蒸着比5/100で真空蒸着法で共蒸着し0.03μmの発光層を設けた。
その上にブロック層を設けた。ブロック層に用いる電子輸送材としてはアルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナート)4−フェニルフェノレート(Balq2)を用い、真空蒸着法にて1nm/秒の速度で蒸着して0.01μmのブロック層を設けた。
さらにその上に、電子輸送材としてトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)を用い、真空蒸着法にて1nm/秒の速度で蒸着して0.04μmの電子輸送層を設けた。
【0064】
さらにこの上に電子注入層としてLiFを1nm/秒の速度で蒸着して0.002μmの電子注入層を設けた。
さらにこの電子注入層上にパターニングしたマスク(発光面積が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、蒸着装置内でアルミニウムを0.25μm蒸着し、背面電極を形成した。
上記透明電極(陽極として機能する)及び上記背面電極より、それぞれアルミニウムのリード線を結線し、発光積層体を形成した。
【0065】
実施例1
1)無機膜層
上記発光積層体の背面電極の上に、下記の無機膜層を設けた。
アルバック(株)製CVD製膜装置を用い、製膜速度200nm/分でSiN(1μm)/SiON(3μm)/SiN(1μm)の無機膜5μmを製膜した。
【0066】
2)樹脂封止層
スリーボンド(株)製熱硬化型エポキシ樹脂TB3124を上記封止層の上にディスペンサーにて塗布し、100℃で1時間加熱し、仮硬化せしめた。
3)封止接着層
封止接着剤は以下のようにして調製した。ナガセケムテック(株)製XNR5516HV(接着剤A)100gに酸化カルシウム粉末1gを入れ、ボールミルにて8時間混練し、酸化カルシウム1質量%の乾燥剤入り封止接着剤を得た。
前記発光積層体が設けられていない第1基板の周辺端部に該乾燥剤入り封止接着剤をディスペンサーにて塗布した。この上に第2基板であるガラスを重ね、真空ラミネーターにて接着した。接着後封止接着層に水銀ランプを照射して光硬化させた。その後、真空オーブン内で100℃、3時間加熱し、樹脂封止層と封止接着層を完全に硬化させて、本発明の電界発光素子を得た。
【0067】
実施例2〜4
実施例1の封止接着層の乾燥剤を表1に示すように変更して、作製した。
【0068】
比較試料Aの作製
実施例1の封止接着層の乾燥剤を除いた試料を作製した。
【0069】
比較試料Bの作製
実施例1の封止接着層を除いた試料を作製した。
【0070】
比較試料Cの作製
<図2の形態の試料の作製>
実施例1と同じ方法で、ガラス基板上に発光積層体を設けた。ここで得られた発光積層体を、酸素ガス濃度80ppm、露点−80℃の窒素ガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止キャップを用いて、図2の150の位置に封止接着剤として実施例1で作製した乾燥剤入り封止接着剤を用いて封止した
【0071】
【表1】

【0072】
<性能評価>
作製した有機電界発光素子について、以下の方法で評価した。
東洋テクニカ製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、直流電圧を電界発光素子に印加し発光させて、初期の発光性能を測定した。2000Cd/m2時の発光効率、およびその時の電圧(V)を表2に示した。また発光時のダークスポットおよび発光面積縮退はニコン(株)製光学顕微鏡ME600を用いて観察した。
さらに該電界発光素子を60℃、90%RHの恒温恒湿オーブンに入れ、500時間経過後の2000Cd/m2時の発光効率、およびその時の電圧(V)、ダークスポット、発光面積の縮退を観察し、表2に示した。
【0073】
この結果から、本発明の電界発光素子は、高温多湿化の保存化でもダークスポットの発生無く、発光面積の縮退も小さくて、保存特性に優れていることがわかる。
【0074】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機電界発光素子構造体の概略断面図である。
【図2】比較の実施の形態に係る有機電界発光素子構造体の概略断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10、100:有機電界発光素子構造体
11,110:第一の基板
20,120:有機電界発光素子積層体
30:無機層
40:樹脂封止層
12:第二の基板
50a,50b,150a,150b:封止接着層
130:封止缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に電極、少なくとも1層の発光層を含む有機化合物層、および背面電極を有する有機発光部上に無機膜層を有する有機電界発光素子であって、第2の基板を前記無機膜層面と重ね合わせ、該第2の基板の前記無機膜層と対峙する面と前記無機膜層との間隙を樹脂によって充填して樹脂封止層を形成し、かつ前記第1の基板と前記第2の基板の周辺端部が乾燥剤を含有する封止接着剤で被覆されていることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記乾燥剤が、酸化バリウム、酸化カルシウム、および酸化ストロンチウムより選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記封止接着剤が前記乾燥剤を前記封止接着剤に対して0.01質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記無機膜層が、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素、および炭化珪素より選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記第1の基板および前記第2の基板が、共にガラスであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−103093(P2007−103093A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289211(P2005−289211)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】