説明

有機ELディスプレイの製造方法

【課題】有機EL素子の輝度バラツキを抑制可能な製造方法を提供する。
【解決手段】有機EL素子6に流れる電流量を閾値電圧Vth以上の電圧が印加されることで調整する駆動トランジスタTdとを備えた有機ELパネルを準備する工程と、駆動トランジスタTdに閾値電圧Vth以上の第1電圧を印加して、有機EL素子6を発光させる工程と、有機EL素子6を発光させた状態で、有機EL素子6の輝度を測定する工程と、有機EL素子6の輝度が予測輝度値以下のとき、駆動トランジスタTdに閾値電圧Vth以上前記第1電圧未満の電圧を印加して、有機EL素子6の輝度を小さくする工程と、有機EL素子6の輝度を小さくした状態で、有機EL素子6に対して有機EL素子6の使用温度以上の環境下で加熱して、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthを小さくする工程と、を備えたことを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイは、マトリックス状に配列された画素を備え、該画素内に位置する有機EL素子が発光することによって、画像を表示することができる。
【0003】
有機ELディスプレイの輝度の経時変化を小さくするために、予め有機ELディスプレイの出荷前に、有機ELディスプレイに対してエージングを行なう技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。また、有機ELパネルに対してエージングを行い、色度のバラつきを抑制する技術が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−93577号公報
【特許文献2】特開2005−276677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した特許文献1、2に記載のエージング技術であっては、有機EL素子の輝度バラツキを抑制することは困難であった。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであって、有機EL素子の輝度バラツキを抑制可能な有機ELディスプレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る有機ELディスプレイの製造方法は、流れる電流量に応じて輝度が変化する有機EL素子と、該有機EL素子に流れる電流量を閾値電圧以上の電圧が印加されることで調整する駆動トランジスタとを備えた有機ELパネルを準備する工程と、前記駆動トランジスタに閾値電圧以上の第1電圧を印加して、前記有機EL素子を発光させる工程と、前記有機EL素子を発光させた状態で、前記有機EL素子の輝度を測定する工程と、前記有機EL素子の輝度が予測輝度値以下のとき、前記駆動トランジスタに前記閾値電圧以上前記第1電圧未満の電圧を印加して、前記有機EL素子の輝度を小さくする工程と、前記有機EL素子の輝度を小さくした状態で、該有機EL素子に対して該有機EL素子の使用温度以上の環境下で加熱して、前記駆動トランジスタの閾値電圧を小さくする工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る有機ELディスプレイの製造方法は、前記駆動トランジスタに対して電圧を供給する電圧供給部をさらに備え、前記有機EL素子の予測輝度値が、前記電圧供給部から供給されうる電圧に基づいて取得されることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る有機ELディスプレイの製造方法は、前記予測輝度値が、前記駆動トランジスタに印加する前記第1電圧から予測される輝度値であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る有機ELディスプレイの製造方法は、前記有機EL素子の使用温度以上の環境下とは、70℃以上85℃以下の温度であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る有機ELディスプレイの製造方法は、前記有機EL素子は、マトリックス状に複数個設けられており、前記有機EL素子の輝度が、該有機EL素子の予測輝度値より大きい予測高輝度値以上であれば、該有機EL素子に対応する駆動トランジスタに前記第1電圧以上の電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、輝度ムラを抑制可能な有機ELディスプレイの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機ELディスプレイの平面図である。図2は、図1に示した有機ELディスプレイの複数の画素を示す平面図である。また、図3は、図2に示した一画素の断面図である。
【0012】
有機ELディスプレイ1は、図1に示すように、テレビ等の家電機器、携帯電話又はコンピュータ機器等の電子機器に用いるものであり、有機ELパネル2と、有機ELパネル2上に形成される駆動IC3と、を含んで構成されている。
【0013】
有機ELパネル2は、素子基板4と、素子基板4上に形成される複数の画素5とを備えている。また、有機ELパネル2上であって、有機ELパネル2の端部に沿って、各画素5を制御するための駆動IC3が形成されている。
【0014】
素子基板4は、例えば、ガラス又はプラスチックから成り、素子基板4の中央に位置する表示領域D1には、マトリックス状に配列された複数の画素5が形成されている。また、素子基板4の端部に位置する非表示領域D2には、駆動IC3が実装されている。
【0015】
画素5は、図2に示すように、発光領域R1とコンタクト領域R2とを含んで構成されており、発光領域R1に発光可能な有機EL素子6が設けられている。なお、各画素5は、隔壁7によって仕切られている。また、画素5は、有機EL素子6を構成する有機材料を選択することによって、発光する色を決定することができる。
【0016】
隔壁7は、断面が下部よりも上部が幅広の形状であって、後述する絶縁物8上に形成され、画素5を取り囲むように配置されている。隔壁7は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸化窒化ケイ素等の無機絶縁材料、あるいはフェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の有機絶縁材料から成る。
【0017】
また、画素5は、赤色、緑色又は青色のいずれかの色を発光することができる。このことは、有機EL素子6を構成する材料を選択することによって、発光する色を決定することができる。
【0018】
また、素子基板4上には、素子基板4に対して対向するように配置された封止基板9が形成されている。封止基板9は透明の基板から成り、例えばガラス又はプラスチックを用いることができる。なお、本実施形態においては、素子基板4側から封止基板9側に向けて光が発せられるトップエミッション型の有機ELディスプレイであるため、封止基板9は透明の部材が用いられる。
【0019】
素子基板4の表示領域D1には、表示領域D1を被覆するようにシール材10が形成されており、素子基板4と封止基板9とシール材10によって各画素5を密封している。このように、表示領域D1の全面にシール材10が形成されている。各画素5を密封することによって、各画素5に酸素又は水分が浸入するのを低減し、各画素5が劣化するのを抑制することができる。また、シール材10は、接着材としての機能を有し、硬化することによって素子基板4と封止基板9とを固着することができる。かかるシール材10は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂又はシリコン樹脂等の光硬化性樹脂、あるいは熱硬化性の樹脂を用いることができる。なお、本実施形態においては、紫外線の照射により硬化する光硬化性のエポキシ樹脂を用いる。
【0020】
次に、図3に示すように、素子基板4と封止基板10との間に形成される各種層について説明する。素子基板4上には、TFT又は電気配線が形成されている回路層11と、回路層11上に回路層11を外部と電気的に絶縁するための窒化珪素等から成る絶縁層12が形成されている。かかる回路層11の一部と、後述するコンタクト電極層13とが電気的に接続されている。
【0021】
図4は、回路層11に含まれる駆動トランジスタTの断面図である。図4に示すように、回路層11には、有機EL素子6に流れる電流量を調整する駆動トランジスタTが含まれている。駆動トランジスタTは、素子基板4上に形成されるゲート層14と、素子基板4及びゲート層14上に連続して形成されるゲート絶縁膜15と、ゲート絶縁膜15上に形成されるチャネル層16と、チャネル層16上に形成されるソース・ドレイン層17とを備えている。
【0022】
ゲート層14は、例えば、銅、モリブデン、ニッケル又はチタン等の導体材料、これらの合金等からなる。また、ゲート絶縁膜15は、チャネル層16とゲート層14との間を絶縁する材料から成り、例えば、窒化珪素又は酸化珪素等の絶縁材料からなる。また、チャネル層16は、半導体層であって、アモルファスシリコン(非晶質ケイ素)からなる。また、ソース・ドレイン層17は、例えば、銅、モリブデン、ニッケル又はチタン等の導体材料からなる。
【0023】
また、絶縁層12上には、回路層11や絶縁層12の凹凸を低減するための平坦化膜18が形成されている。回路層11は、パターニングされた構造物であるため、その表面が凹凸に形成され、回路層11上を平坦にしないと、回路層11上に有機EL素子6を平らに設けることが困難となる。その結果、有機EL素子6を構成する各層の厚みを制御することが難しく、有機EL素子6が所望の色の光を発することができなくなる。これは、有機EL素子6が発する光の色が、有機EL素子6を構成する各層の厚みに依存するためである。そのため、回路層11上に、平坦化膜18を形成することで、回路層11上に形成する有機EL素子6の厚みを制御しやすくしている。かかる平坦化膜18は、例えばノボラック樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はシリコン樹脂等の絶縁性を有する有機材料を用いることができる。なお、平坦化膜18の厚みは、例えば2μm以上5μm以下に設定されている。
【0024】
また、平坦化膜18には、平坦化膜18を貫通するコンタクトホールSが形成されている。かかるコンタクトホールSは、上部よりも下部が幅狭に形成されている。さらにコンタクトホールSの内周面から平坦化膜18の上面にかけて、例えば銅又はアルミニウム等の導電材料から成るコンタクト電極層13が形成されている。
【0025】
さらに、平坦化膜18上には、有機EL素子6が形成されている。有機EL素子6は、第1電極層19、有機EL層20と、第2電極層21とを含んで構成されている。
【0026】
有機EL素子6は、第1電極層19と第2電極層21との間に有機EL素子6の閾値電圧以上の電位差が生じることにより第1電極層19と第2電極層21との間に電流が流れ、発光する特性を有する素子である。そして、有機EL層20は、第1電極層19及び第2電極層21から注入された正孔と電子とが再結合することによって光を生じる機能を有する。
【0027】
また、発光領域R1を取り囲むように、第1電極層19上に絶縁物8が形成されている。そして、絶縁物8は、第1電極層19と後述する第2電極層21とが短絡するのを防止している。なお、絶縁物8は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の有機絶縁材料、あるいは窒化珪素、酸化珪素又は酸化窒化珪素等の無機絶縁材料から成る。
【0028】
また、有機EL素子6を被覆するように、表示領域D1上には保護層22が形成されている。保護層22は、有機EL素子6を封止し、有機EL素子を水分又は外気から保護するものであって、光透過性の機能を有し、例えば窒化珪素、酸化珪素又は窒化炭化珪素等の無機材料から成る。なお、保護層22の厚みは、例えば100nm以上5μm以下に設定されている。
【0029】
次に、有機EL素子6を構成する各層について説明する。第1電極層19は、平坦化膜18上に形成され、コンタクト電極層13と間を空けて併設されている。かかる第1電極層19は、例えばアルミニウム、銀、銅、金又はロジウム等の金属、又はこれらの合金等の光反射率の大きい材料から成る。このように、第1電極層19を光反射率の大きい材料から構成することにより、トップエミッション型の有機EL素子6においては光取り出し効率を向上させることができる。なお、第1電極層19の厚みは、例えば50nm以上500nm以下に設定されている。
【0030】
図5は、一画素に含まれる有機EL素子の断面図である。有機EL層20は、第1電極層19上に形成される。有機EL層20は、図5示すように、複数の層から成り、下層から正孔注入層20a、正孔輸送層20b、有機発光層20c、電子輸送層20d、電子注入層20eを含んで構成されている。
【0031】
正孔注入層20aは、例えばα‐NPD、TPD、酸化ニッケル、酸化チタン、フッ化炭素又はCuPc等から成る。なお、正孔注入層16aの厚みは、例えば5nm以上40nm以下に設定されている。
【0032】
また、正孔輸送層20bは、例えばN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等 の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、 ポリアリールアルカン、ブタジエン、および4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等のスターバースト芳香族又は芳香族アミン化合物を用いることができる。また、正孔輸送層20bは、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン又はそれにシアノ基などが結合した誘導体等の複素環化合物を用いることができる。なお、正孔輸送層20bの厚みは、例えば10nm以上50nm以下に設定されている。
【0033】
また、有機発光層20cは、赤色の光を発する場合、例えばCBP、Alq又はSDPVBi等のホスト材料、あるいはこれらのホスト材料にDCJTB、クマリン、キナクリドン、フェナンスレン基を有するペリノン誘導体、オリゴチオフェン誘導体又はペリレン誘導体等のドーパント材料を含有したものを用いることができる。また、緑色の光を発する場合、例えばCBP、Alq又はSDPVBi等のホスト材料、あるいはこれらのホスト材料にスチリルアミン、ペルリン、ベンゼン環を有するシロール誘導体、フェナンスレン基を有するペリノン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ペリレン誘導体又はアゾメチン亜鉛錯体等のドーパント材料を含有したものを用いることができる。また、青色の光を発する場合、例えばCBP又はSDPVBi等のホスト材料、あるいはこれらのホスト材料にスチリルアミン、ペルリン、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジェン、トリフェニルアミン構造とビニル基が結合した化合物、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体又はベンゼン環を有するシロール誘導体等のドーパント材料を含有したものを用いることができる。なお、有機発光層20cの厚みは、例えば20nm以上40nm以下に設定されている。
【0034】
また、電子輸送層20dは、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、又は4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等 の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、 ポリアリールアルカン、ブタジエン、又は4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等のスターバースト芳香族やアミン化合物を用いることができる。なお、電子輸送層20dの厚みは、例えば20nm以上60nm以下に設定されている。
【0035】
また、電子注入層20eは、例えばフッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化炭素等を用いることができる。なお、電子注入層20eの厚みは、例えば0.5nm以上2nm以下に設定されている。
【0036】
第2電極層21は、有機EL層20上から絶縁膜8上にかけて形成される。第2電極層21は、有機EL層20から放出される光が透過することができる材料から構成され、例えばインジウム錫酸化膜(ITO)又は錫酸化膜等の光透過性を有する導電材料を用いて形成される。また、第2電極層21は、例えばマグネシウム、銀、アルミニウム又はカルシウム等の材料、あるいはこれらの合金等を用いることができ、その厚みを30nm以下にすることによって、光透過性の電極とすることができる。その結果、有機EL層20から放出された光が、第2電極層21を透過して、有機EL素子6から外部に出射される。
【0037】
次に、有機EL素子6の発光動作について説明する。なお、図6は、本実施形態に係る有機ELディスプレイの一画素に対応する画素回路を示す図面である。
【0038】
画素回路は、図6に示すように、有機EL素子6、有機EL素子6を駆動するための駆動トランジスタT、駆動トランジスタTの閾値電圧を検出する際に用いる閾値電圧検出用トランジスタTth、駆動トランジスタTの閾値電圧を保持する第1容量素子Cs1、有機EL素子6の発光輝度に対応する信号である画像信号電圧を保持する第2容量素子Cs2、画像信号電圧の印加を制御するスイッチングトランジスタTと、を備えている。なお、有機ELディスプレイとしては、この画素回路がマトリックス状に複数配列して設けられている。また、回路層11に、駆動トランジスタT、閾値電圧検出トランジスタTth、第1容量素子Cs1、第2容量素子Cs2、スイッチングトランジスタTが設けられている。
【0039】
駆動トランジスタTは、ゲート・ソース間に与えられる電位差に応じて、有機EL素子6に流れる電流量を制御する。
【0040】
また、閾値電圧検出トランジスタTthは、閾値電圧検出トランジスタTthがオン状態となったとき、駆動トランジスタTのゲート電極と駆動トランジスタTのドレイン電極とを電気的に接続する。そして、駆動トランジスタTのゲート電極・ソース電極間の電位差が駆動トランジスタTの閾値電圧Vthとなるまで駆動トランジスタTのゲート電極から駆動トランジスタTのドレイン電極に電流を流すことにより、ひいては駆動トランジスタTの閾値電圧を検出することができる。なお、以下で参照される各図面においては、各薄膜トランジスタのチャネルについて、特にそのタイプ(n型またはp型)を明示していないが、n型またはp型のいずれかである。本実施形態においては、n型のトランジスタである。
【0041】
各画素5には、有機EL素子6に電位差を与える電源線23、閾値電圧検出トランジスタTthをオン又はオフに制御するための信号を供給するTth制御線24、スイッチングトランジスタTをオン又はオフに制御するための信号を供給する走査線25、第2容量素子Cs2に有機EL素子6の発光輝度に応じた信号となる画像信号データを供給する画像信号線26が接続されている。
【0042】
なお、図6では、有機EL素子6に所定の電圧を供給するための構成として、高電位の電源線23と低電位のグランドとして機能する接地線27との間に有機EL素子6を設けているが、低電位側を電源線に、高電位側を接地線として固定電位にしてもよい。また、接地線に変えて電源線を2ライン設ける構造としてもよい。
【0043】
つぎに、画素回路の動作について、図7から図12を参照して説明する。ここで、図7は、図6に示した画素回路の動作を説明するためのシーケンス図であり、図8から図12は、有機EL素子6の発光から次の発光までの一フレーム(T1からT5)の各動作を示している。図8は、有機EL素子6が発光するための準備期間(T1)の動作を説明するための図である。また、図9は、駆動トランジスタTの閾値電圧を検出するための閾値電圧検出期間(T2)の動作を説明するための図である。また、図10は、有機EL素子6に蓄積された電荷を放電するための初期化期間(T3)の動作を説明するための図である。また、図11は、第2容量素子Cs2に画像信号データを蓄積する書込み期間(T4)の動作を説明するための図である。また、図12は、有機EL素子6が発光する発光期間(T5)の動作を説明するための図である。なお、図9から図12は、有機EL素子6が固有する有機EL素子容量COLEDを加えたものを付加して示している。
【0044】
まず、準備期間(T1)の動作について、図7及び図8を用いて説明する。電源線23が低電位(−V)、Tth制御線24が低電位(VgL)、走査線25が高電位(VgH)、画像信号線26が高電位(VdH)とされる。この準備期間の制御により、図8に示すように、スイッチングトランジスタTがオン、閾値電圧検出トランジスタTthがオフ、駆動トランジスタTがオンとされる。その結果、接地線27→駆動トランジスタT→有機EL素子6→電源線23という経路で電流が流れ、有機EL素子6に電荷が蓄積される。なお、この準備期間(T1)において、有機EL素子6に電荷を蓄積する理由は、閾値電圧検出期間(T2)に、有機EL素子6のドレイン・ソース間に電流Idsが流れなくなる状態、すなわち、駆動トランジスタTの閾値電圧を検出する際に、有機EL素子6に蓄積された電荷を駆動トランジスタTのドレイン・ソース間に流す電流の供給源として用いるためである。
【0045】
次に、閾値電圧検出期間(T2)について、図7及び図9を用いて説明する。閾値電圧検出期間(T2)では、Tth制御線24が高電位(VgH)とされ、Tth制御線24が高電位となるタイミングに若干遅れて電源線23がゼロ電位とされる一方で、走査線25の高電位(VgH)が維持される。また、画像信号線26は、閾値電圧検出期間(T2)に移行する直前にゼロ電位とされ、ゼロ電位が維持される。この閾値電圧検出期間の制御により、閾値電圧検出トランジスタTthがオンとなり、駆動トランジスタTのゲート電極とドレイン電極とが接続される。その結果、駆動トランジスタTのソース電極に対するゲート電極の電位が駆動トランジスタTの閾値電圧Vthに達するまで有機EL素子容量COLED及び第1容量素子Cs1に蓄積された電荷が放電される。そして、放電された電荷に基づいて、駆動トランジスタT→接地線27という経路で電流が流れる。そして、駆動トランジスタTのゲート・ソース間の電位差が駆動トランジスタTの閾値電圧Vthに達すると、駆動トランジスタTがオフとなる。なお、この状態では、第1容量素子Cs1の両端には駆動トランジスタTの閾値電圧Vthの電圧が生じている。
【0046】
次に、初期化期間(T3)の動作について、図7及び図10を用いて説明する。初期化期間(T3)では、電源線26のゼロ電位、走査線25の高電位(VgH)が維持される一方で、Tth制御線24が低電位(VgL)とされる。また、画像信号線26には、例えば画像信号の最大電位(VdH)が供給される。このとき、駆動トランジスタTがオンとなり、有機EL素子6→駆動トランジスタT→接地線27といいう経路で電流が流れ、有機EL素子容量COLEDに残存する電荷が放電される。なお、有機EL素子容量COLEDに残存する電荷が放電されることで、発光期間において、残存する電荷に起因して有機EL素子6に流れる電流量が所望する電流量と異なり、有機EL素子6の発光輝度が所望する輝度にならなくなるのを抑制することができる。
【0047】
また、初期化期間(T3)では、画像信号線26は最大電位(VdH)からゼロ電位とされ、走査線25は、画像信号線26がゼロ電位とされた後、所定時間の経過後に高電位(VgH)から低電位(VgL)とされる。この初期化期間(T3)の制御は、上述したように、有機EL素子6に蓄積された電荷を放電させるためであり、第1容量素子Cs1に対して、有機EL素子6の残存する電荷の影響を低減することができる。
【0048】
次に、書込み期間(T4)の動作について、図7及び図11を用いて説明する。書込み期間(T4)では、電源線23のゼロ電位及びTth制御線24の低電位(VgL)が維持されるとともに、走査線25による走査信号と画像信号線26による画像信号データが供給される。本実施形態の書込み期間(T4)では、全画素一括ではなく走査線25ごとに順次走査が行なわれる。この書込み期間(T4)の制御により、スイッチングトランジスタTがオンとなり、スイッチングトランジスタT→第2容量素子Cs2→接地線27という経路で電流が流れ、第2容量素子Cs2には画像信号データに応じた電圧が保持される。
【0049】
次に、発光期間(T5)の動作について、図7及び図12を用いて説明する。発光期間(T5)では、電源線23が電源電位(VDD)、画像信号線26がゼロ電位とされ、Tth制御線24の低電位(VgL)、走査線25の低電位(VgL)が維持される。この発光期間(T5)の制御により、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthを保持する第1容量素子Cs1と画像信号データに応じた電圧を保持する第2容量素子Cs2が直列に接続され、両者の電圧の和が駆動トランジスタTのゲート・ソース間に印加される。そして、図12に示すように、駆動トランジスタTがオンになり、有機EL素子6→駆動トランジスタT→接地線27という経路で電流が流れ、有機EL素子6が発光する。
【0050】
以下に、本発明の第1実施形態に係る有機ELディスプレイ1の製造方法について、図13から図16を用いて詳細に説明する。なお、図13から図16は、作製する有機ELディスプレイにおける一つの画素の断面図である。
【0051】
図13(A)に示すように、回路層11、絶縁層12及び平坦化膜18を上面に積層した素子基板4を準備する。なお、回路層11及び絶縁層12は、従来周知のCVD法、蒸着法又はスパッタリング法等の薄膜形成技術、エッチング法やフォトリソグラフィー法等の薄膜加工技術を用いて、所定パターンに形成される。また、平坦化膜18は、例えば従来周知のスピンコート法を用いて、絶縁層12上に形成する。
【0052】
次に、平坦化膜18上に露光マスクを用いて平坦化膜18を露光し、さらに現像、ベーキング処理を行い、図13(B)に示すように、回路層11の一部を露出させて、上部よりも下部が幅狭なコンタクトホールSを有する平坦化膜18を形成する。さらに、コンタクトホールSを形成した平坦化膜18上に、例えばアルミニウムから成る金属膜を形成する。そして、図14(A)に示すように、金属膜をパターニングして、第1電極層19及びコンタクト電極層13を形成する。
【0053】
次に、第1電極層19及びコンタクト電極層13上に、例えばスピンコート法を用いて、例えばアクリル樹脂から成る有機絶縁材料層を形成する。そして、図14(B)に示すように、有機絶縁材料層に対してフォトリソグラフィー法を用いて、有機絶縁材料層をパターニングして絶縁物8を形成する。
【0054】
さらに、図15(A)に示すように、絶縁物8上に、従来周知の薄膜形成技術及び薄膜加工技術を用いて、上部よりも下部が幅狭な隔壁7を形成する。かかる隔壁7は、各画素5を取り囲むように形成される。そして、図15(B)に示すように、第1電極層19上に、例えば蒸着法を用いて、有機EL層20を形成する。有機EL層20を形成する際は、蒸着マスクを隔壁7上に載置して、各画素5に、赤色、緑色又は青色と発光する色に応じた有機材料を塗り分けることができる。
【0055】
そして、図16(A)に示すように、従来周知の蒸着法を用いて、有機EL層20上からコンタクト電極層13上にかけて、第2電極層21を形成する。そして、コンタクト電極層13と第2電極層21とを電気的に接続することができる。このようにして、有機EL素子6を形成することができる。
【0056】
さらに、図16(B)に示すように、有機EL素子6を被覆するように、従来周知の薄膜形成技術を用いて、保護層22を形成する。そして、有機EL素子6が形成された素子基板4に対して、封止基板9を対向配置し、両基板をシール材10を介して接着する。なお、封止基板9をシール材10によって、素子基板4に固定する作業は、例えば窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス中や、高真空中で行うことによって、素子基板4と封止基板9との間に酸素や水分が含まれるのを抑制することができる。このようにして、有機ELパネル2を作製することができる。
【0057】
そして、有機ELパネル2の非表示領域D2上に、画像信号線26に画像信号データを送るタイミングと、送る画像信号データの大きさを制御する駆動IC3の一つである電圧供給部としてのXドライバ3aを実装する。また、有機ELパネル2の非表示領域D2上に、走査線25に走査信号を供給する駆動IC3の一つであるYドライバ3bを実装する。
【0058】
次に、各画素の電源線23にフレキシブルプリント基板(FPC)を介して電源を供給する電源部と接続する。
【0059】
そして、全画素に同じ色の光を発光するように、有機EL素子6を発光させる。このとき、各画素に設けられる駆動トランジスタTは、チャネル層16におけるアモルファスシリコンの結晶状態が製品毎に異なるため、各画素の駆動トランジスタTの閾値電圧Vthは、それぞれ異なった値となる。これに対して、各画素では駆動トランジスタTの閾値電圧Vthを補償する第1容量素子Cs1に駆動トランジスタTの閾値電圧Vthに対応する電圧を保持させることによって、各画素の輝度を略均一に制御している。しかしながら、駆動トランジスタTの中には、閾値電圧VthがVth補償可能な許容範囲を超えるものが存在することがある。かかる場合、Vth補償したとしても、有機ELパネル2の輝度ムラが発生してしまう。つまり、有機ELパネル2において、全画素を所定の大きさの輝度で光らそうとしても、各画素の閾値電圧Vthの大きさの違いによって、明るく発光する領域と暗く発光する領域との違いにより輝度ムラが起きることがある。
【0060】
輝度ムラが発生する有機ELパネルに対して、後述するようにエージング処理を行い、輝度ムラを改善することができる。具体的には、有機ELパネル2の全画素に対して、画素中の駆動トランジスタTに第1容量素子Cs1及び第2容量素子Cs2を介して閾値電圧Vth以上の第1電圧を印加する。そして、有機EL素子6を発光させた状態で、有機EL素子6の輝度を測定する。有機EL素子6の輝度の測定は、輝度計による実測輝度値を測定することができる。なお輝度計によって得られた実測輝度値は、ROM又はRAM等の記憶装置内に保存される。
【0061】
そして、実測輝度値が予測輝度値以下のとき、つまり、有機EL素子6が画像信号データに基づく発光輝度が予測していた輝度よりも小さい場合、かかる画素中の駆動トランジスタTに対して、該駆動トランジスタTの閾値電圧Vth以上第1電圧未満の電圧を印加して、有機EL素子6の発光輝度を更に小さくする。ここで、予測輝度値とは、予め特定の階調値に対する画像信号データに対応する所望の発光輝度よりも少し小さい値である。例えば、所望の発光輝度よりも5%小さい値とする。
【0062】
また、有機EL素子6の予測輝度値は、Xドライバ3aから供給されうる電圧に基づいて取得される。つまり、Xドライバ3aから各画素に画像信号データを供給する前に、供給されうる画像信号データに基づいて、有機EL素子6の発光輝度を推測している。推測される予測輝度値は、各画素に供給する前に画像信号データに対応する予測輝度値が保存されているデータテーブルから求められる。具体的には、各画素に供給する前の画像信号データに基づいた電流値に応じてデータテーブルから予測輝度値を取得することができる。
【0063】
ここで、各画素に供給される前の画像信号データについて説明する。ディスプレイの場合、表面の明るさは入力画像データに正比例せずに、指数関数的に変化する。ここで、入力画像データとは、後述するγ変換する前の画像信号データのことである。そして、入力画像データが小さいときは、入力画像データの変化に対する明るさの変化は緩やかで、入力画像データが大きくなると、入力画像データの変化に対する明るさが急に大きくなる。この関係が、例えば2.2乗のカーブを描くときは、γは2.2であるという。このγは、画質の硬調・軟調を決める指数であり、γが比較的大きい場合には画質が硬調となり、γが比較的小さい場合には画質が軟調となる。そして、有機ELパネルには、γ=2.2が用いられる。そして、入力画像信号の階調値を2.2乗することで、各発光素子の発光輝度に対応する画像信号データの階調値が求まる。なお、画像信号データの階調値は、各画素で消費される電流に略比例する。そして、本実施形態では、各画素に供給する前の画像信号データとは、γ変換される前の入力画像データのことである。入力画像データをγ変換する前に、その電流値を測定し、その電流値に応じた予測輝度値をデータテーブルから取得する。
【0064】
次に、有機EL素子6を発光させている状態で、チャンバー内にて有機EL素子6に対して有機EL素子6の使用温度以上の環境下で加熱する。ここで、加熱とは、使用温度以上での環境下でのエージング処理のことであって、有機EL素子6の使用温度以上の環境下とは、70℃以上85℃以下の温度である。ここで、有機EL素子6に加える温度は、70℃以上に設定することで、後述するように、チャネル層にてトラップされた電子に対し、欠陥部から抜け出せる大きさの熱エネルギーを付与することができる。また、有機EL素子6に加える温度は、85℃以下にすることで、有機EL素子6を構成する有機EL層20が劣化するのを抑制することができる。なお、有機EL素子6を加熱する時間は、例えば、1時間以上4時間以下である。また、有機EL素子6を加熱するときの環境下の大気圧は、例えば、1000hPa以上1050hPa以下である。大気圧は、チャンバー内の温度が変化しても、所定の範囲内に収まるように調整される。
【0065】
そして、有機EL素子6を加熱することによって、該有機EL素子6を駆動する駆動トランジスタTの閾値電圧Vthを小さくすることができる。ここで、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthが小さくなる理由について説明する。駆動トランジスタTには、チャネル層16の成膜状態によってはチャネル層16に欠陥部が存在する場合がある。かかる欠陥部が存在する場合、駆動トランジスタTのソース・ドレイン間に電流が流れるときに、チャネル層16の欠陥部に電子がトラップされやすくなる。そして、欠陥部に電子がトラップされることで、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthが大きくなり、駆動トランジスタTのソース・ドレイン間に電流が流れにくくなる。本実施形態によれば、閾値電圧が大きくなった駆動トランジスタTを加熱することで、トラップされた電子に対して熱エネルギーを付与し、トラップされた電子を高エネルギーの状態とし、欠陥部から抜けやすくすることができる。このように、トラップされた電子を取り除くために、有機EL素子6を加熱して、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthを小さくする。
【0066】
また、有機EL素子6の輝度を小さくした状態で、有機EL素子6を加熱する理由について説明する。つまり、有機EL素子6を発光させた状態で、エージング処理を行なう理由について説明する。有機EL素子6の輝度は、駆動トランジスタTのゲート・ソース間に流れる電流量に応じて変化する。そのため、有機EL素子6を高輝度にする場合、駆動トランジスタTのゲート電位を大きくすればよいが、駆動トランジスタTに流れる電流量が大きくなり、チャネル層16に電子がトラップされやすくなる。その結果、駆動トランジスタTの経時劣化に起因して、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthが大きくなり、有機EL素子6に流れる電流量が小さくなって、有機EL素子の輝度が小さくなる傾向にある。従って、有機EL素子6に流す電流を小さくすることで、駆動トランジスタTの経時劣化に起因して、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthが大きくなるのを抑制することができる。
【0067】
そして、有機EL素子6の輝度を小さくした状態で、有機EL素子6を加熱することで、駆動トランジスタTのチャネル層16にトラップされている電子を効率良く取り除くことができ、駆動トランジスタTの閾値電圧を大きく下げることができる。
【0068】
また、有機EL素子6の実測輝度値が予測輝度値を超える場合、有機EL素子6の発光輝度は変えないようにする。全画素中に、有機EL素子6の実測輝度値が予測輝度値以下のものと、有機EL素子6の実測輝度値が予測輝度値を超えるものとが存在した場合、画素ごとに発光輝度を意図的に輝度差が出るように異ならせる。そして、輝度差が出るように全画素を発光させた状態で、有機ELパネル2を加熱する。その結果、各画素の駆動トランジスタTの閾値電圧Vthの下げ量を調整し、ひいては全画素の輝度ムラを抑制することができる。つまり、有機EL素子6の実測輝度値が予測輝度値以下の画素については、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthの下げ幅を大きくし、有機EL素子6の実測輝度値が予測輝度値を超える画素については、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthの下げ幅を小さくする。このように、閾値電圧Vthの下げ幅を調整することで、有機ELパネル2の輝度ムラを低減することができる。なお、有機EL素子6を発光させた状態でエージング処理を行なうことで、輝度ムラが低減されているかどうかについて目視して確認することもできる。
【0069】
このようにして、有機EL素子の輝度バラツキを低減し、輝度ムラを抑制した有機ELディスプレイ1を作製することができる。
【0070】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。上述した実施形態においては、駆動トランジスタTについて、n型のトランジスタとして説明したが、p型のトランジスタであってもよい。なお、駆動トランジスタTがp型のトランジスタの場合、駆動トランジスタTをオンにしようとした場合、駆動トランジスタTのゲート電位は閾値電圧Vth以下の電位にする。そのため、有機EL素子6の輝度を小さくしようとすると、上述した実施形態とは異なり、駆動トランジスタTに与える電位は、該駆動トランジスタTの閾値電圧Vthより大きく下げて、加熱処理を行い、ひいては輝度ムラを抑制することができる。
【0071】
上述した実施形態では、有機EL素子6の実測輝度値が予測輝度値を超える場合、有機EL素子6の発光輝度は変えないようにしたが、これに代えて、有機EL素子6の実測輝度値が予測輝度値を超える場合、有機EL素子6の発光輝度を大きくするようにしてもよい。有機EL素子6の発光輝度を大きくし、画素ごとの発光輝度を意図的に輝度差が大きく異なるようにする。そして、輝度差が大きくでるように全画素を発光させた状態で、有機ELパネル2を加熱する。そうした場合、有機EL素子6の実測輝度値が予測輝度値以下の画素については、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthの下げ幅を大きくし、有機EL素子6の実測輝度値が予測輝度値を超える画素については、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthの下げ幅を十分に小さくすることができる。そうすることで、閾値電圧Vthの下げ幅の調整をより大きくすることができ、有機ELパネル2の輝度ムラを効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイの平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るマトリックス状に配列された画素の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る一画素の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る駆動トランジスタの拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る有機EL素子の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画素回路の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る画素回路の動作を示すシーケンス図である。
【図8】本発明の実施形態に係る画素回路の準備期間の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態に係る画素回路の閾値電圧検出期間の動作を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態に係る画素回路の初期化期間の動作を説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態に係る画素回路の書込み期間の動作を説明するための図である。
【図12】本発明の実施形態に係る画素回路の発光期間の動作を説明するための図である。
【図13】本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイの製造工程に係る一画素の断面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイの製造工程に係る一画素の断面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイの製造工程に係る一画素の断面図である。
【図16】本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイの製造工程に係る一画素の断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 有機ELディスプレイ
2 有機ELパネル
3 駆動IC
4 素子基板
5 画素
6 有機EL素子
7 隔壁
8 絶縁物
9 封止基板
10 シール材
11 回路層
12 絶縁層
13 コンタクト電極層
14 ゲート層
15 ゲート絶縁膜
16 チャネル層
17 ソース・ドレイン層
18 平坦化膜
19 第1電極層
20 有機EL層
21 第2電極層
22 保護層
23 電源線
24 Tth制御線
25 走査線
26 画像信号線
27 接地線
D1 表示領域
D2 非表示領域
R1 発光領域
R2 コンタクト領域
S コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れる電流量に応じて輝度が変化する有機EL素子と、該有機EL素子に流れる電流量を閾値電圧以上の電圧が印加されることで調整する駆動トランジスタとを備えた有機ELパネルを準備する工程と、
前記駆動トランジスタに閾値電圧以上の第1電圧を印加して、前記有機EL素子を発光させる工程と、
前記有機EL素子を発光させた状態で、前記有機EL素子の輝度を測定する工程と、
前記有機EL素子の輝度が予測輝度値以下のとき、前記駆動トランジスタに前記閾値電圧以上前記第1電圧未満の電圧を印加して、前記有機EL素子の輝度を小さくする工程と、
前記有機EL素子の輝度を小さくした状態で、該有機EL素子に対して該有機EL素子の使用温度以上の環境下で加熱して、前記駆動トランジスタの閾値電圧を小さくする工程と、
を備えたことを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法において、
前記駆動トランジスタに対して電圧を供給する電圧供給部を備え、
前記有機EL素子の予測輝度値は、前記電圧供給部から供給されうる電圧に基づいて取得されることを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法において、
前記予測輝度値は、前記駆動トランジスタに印加する前記第1電圧から予測される輝度値であることを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法において、
前記有機EL素子の使用温度以上の環境下は、70℃以上85℃以下の温度であることを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法において、
前記有機EL素子は、マトリックス状に複数個設けられており、
前記有機EL素子の輝度が、該有機EL素子の予測輝度値より大きい予測高輝度値以上であれば、該有機EL素子に対応する駆動トランジスタに前記第1電圧以上の電圧を印加することを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−153126(P2010−153126A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328134(P2008−328134)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】