説明

有機ELデバイス

【課題】気密封止するための構造が簡素化され、全体的に略均一な圧力をかけて形成することができる有機ELデバイスを提供する。
【解決手段】第1フィルム状基材1は絶縁性透明樹脂フィルム11の片面にガスバリア透明層12が形成されたもので、その絶縁性透明樹脂フィルム11が有機EL素子9の透明陽電極層91と当接し、第2フィルム状基材2は絶縁性樹脂フィルム21の片面にガスバリア層22が形成されたもので、その絶縁性樹脂フィルム21が有機EL素子9の陰電極層95と当接し、有機EL素子9の周囲では縁性透明樹脂フィルム11と絶縁性樹脂フィルム21とが接着し、それらの端面がガスバリア性フィルム3で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、モバイル機器や車載オーディオ等のディスプレイパネルとして、有機ELデバイスが用いられてきている。この有機ELデバイスは、図7に示すように、ガラス基板や樹脂フィルム等の透明基材101の表面に、有機EL素子9が形成されたものであり、この有機EL素子9は、通常、上記透明基材101側から順に、透明陽電極層91,有機発光層93および陰電極層95が積層されたものとなっている。なお、図7に示す有機EL素子9には、透明陽電極層91と有機発光層93との間に正孔輸送層92が形成されている。
【0003】
ところで、有機EL素子9は、酸素や水分に触れると、それが原因となって、発光しない部分(ダークスポット)が生じたり、輝度が低下したりするという問題が発生する。
【0004】
そこで、有機EL素子9が酸素や水分に触れないようにすることが、従来より提案されている。例えば下記の特許文献1では、有機EL素子9の周囲を、樹脂からなる枠体103で囲むとともに、その枠体103の上方開口部を保護フィルム102で覆い圧接することにより、有機EL素子9を気密封止している。上記保護フィルム102は、樹脂フィルム121の片面に金属層(ガスバリア層)122が形成されたフィルムとなっている。
【特許文献1】特開2005−183337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、酸素や水分が樹脂フィルム121の端面(周側面)から侵入し樹脂フィルム121の内部を透って有機EL素子9まで達するおそれがあるため、その樹脂フィルム121の片面に形成される金属層122は、内側(有機EL素子9側)に位置決めされる必要がある。そして、その金属層122は、導電性を有するため、有機EL素子9の発光に悪影響がないよう、上記金属層122と有機EL素子9との間に絶縁層104を形成する必要がある。このため、有機ELデバイスの構造が複雑になっている。
【0006】
また、上記枠体103は、剛性をもっており、保護フィルム102を圧接する際に、枠体103およびその近傍は、枠体103が障害となって有機EL素子9に圧力が充分に加わらず、全体的に均一に圧力を加えて均等に圧接することが困難となっている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、気密封止するための構造が簡素化され、全体的に略均一な圧力をかけて形成することができる有機ELデバイスの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の有機ELデバイスは、透明陽電極層,有機発光層および陰電極層がこの順で積層されてなる有機EL素子が、2枚のフィルム状基材で挟持されて封止されている有機ELデバイスであって、上記2枚のフィルム状基材のうち一方の第1フィルム状基材が、絶縁性透明樹脂フィルムと、この絶縁性透明樹脂フィルムの片面に形成されたガスバリア透明層とからなり、その絶縁性透明樹脂フィルムが上記有機EL素子の透明陽電極層と当接し、他方の第2フィルム状基材が、絶縁性樹脂フィルムと、この絶縁性樹脂フィルムの片面に形成されたガスバリア層とからなり、その絶縁性樹脂フィルムが上記有機EL素子の陰電極層と当接し、上記第1フィルム状基材および第2フィルム状基材が上記有機EL素子の周囲において延設され、その延設部同士が絶縁性透明樹脂フィルムと絶縁性樹脂フィルムとを対面させた状態で接着され、この接着された絶縁性透明樹脂フィルムおよび絶縁性樹脂フィルムの延設部の少なくとも端面を被覆した状態でガスバリア性フィルムが設けられているという構成をとる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機ELデバイスは、第1フィルム状基材の絶縁性透明樹脂フィルムの端面および第2フィルム状基材の絶縁性樹脂フィルムの端面がガスバリア性フィルムで被覆されているため、それら絶縁性透明樹脂フィルムおよび絶縁性樹脂フィルムの各端面から酸素や水分が侵入することを防止できる。このため、上記第1フィルム状基材のガスバリア透明層および第2フィルム状基材のガスバリア層をそれぞれ外側(有機EL素子とは反対側)に位置決めすることができる。その結果、上記絶縁性透明樹脂フィルムおよび絶縁性樹脂フィルムをそれぞれ内側(有機EL素子側)に位置決めすることができるようになるため、有機EL素子の各電極層と上記第1および第2フィルム状基材との間に、従来のような絶縁層を形成する必要がなく、構造を簡素化することができる。さらに、上記のように内側に位置決めされた絶縁性透明樹脂フィルムおよび絶縁性樹脂フィルムにより、それらの延設部同士を接着して封止することができる。これにより、従来のような枠体が不要となるため、構造を簡素化することができるとともに、全体的に略均一な圧力をかけて有機ELデバイスを形成することができる。
【0010】
特に、上記有機ELデバイスにおいて、その端部が、上記第1フィルム状基材を外側にして折り返されている場合には、上記絶縁性透明樹脂フィルムおよび絶縁性樹脂フィルムの各端面からの酸素や水分の侵入をより確実に防止することができるとともに、有機ELデバイスの発光有効部の面積比を大きくすることができる。
【0011】
また、上記第1フィルム状基材の絶縁性透明樹脂フィルムの端面および第2フィルム状基材の絶縁性樹脂フィルムの端面と、それら端面を被覆する上記ガスバリア性フィルムとの間の空間に、酸素および水分の少なくとも一方を吸収する吸収剤が設けられている場合には、上記絶縁性透明樹脂フィルムおよび絶縁性樹脂フィルムの各端面からの酸素や水分の侵入をより一層確実に防止することができる。
【0012】
さらに、上記第1フィルム状基材の絶縁性透明樹脂フィルムと第2フィルム状基材の絶縁性樹脂フィルムとの接着が、熱圧着になっている場合には、その接着界面の隙間がなく、その接着界面を通って酸素や水分が侵入することをより確実に防止できる。
【0013】
特に、上記第1フィルム状基材の絶縁性透明樹脂フィルムと第2フィルム状基材の絶縁性樹脂フィルムとが同一材料である場合には、両者の上記熱圧着が容易となるとともに、両者の接着性が優れ、その接着界面の隙間がなく、その接着界面を通る酸素や水分の侵入をより一層確実に防止することができる。
【0014】
そして、上記ガスバリア性フィルムと上記第1フィルム状基材のガスバリア透明層との間、および上記ガスバリア性フィルムと上記第2フィルム状基材のガスバリア層との間が、ガス透過性の少ない接着剤で接着されている場合には、その接着剤を透って侵入してくる酸素や水分の量を減少させることができ、上記絶縁性透明樹脂フィルムおよび絶縁性樹脂フィルムの各端面からの酸素や水分の侵入をより一層確実に防止することができる。ここで、「ガス透過性の少ない」とは、水蒸気透過率が1.0×10-4g/m2 ・day以下であることをいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。但し、本発明は、これに限定されるわけではない。
【0016】
図1は、本発明の有機ELデバイスの一実施の形態を示している。この実施の形態の有機ELデバイスは、有機EL素子9の下面に第1フィルム状基材1が当接し、その有機EL素子9の上面に第2フィルム状基材2が当接している。そして、これら第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2は、上記有機EL素子9の周囲において延設され、その延設部同士が全周にわたって接着されている。また、その接着された、上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の周縁部(端部)は、第1フィルム状基材1を外側にして折り返されている。そして、上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の周側面(延設部の端面)は、ガスバリア性フィルム3で全周にわたって被覆されている。さらに、その第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の周側面(延設部の端面)とガスバリア性フィルム3との間の空間には、酸素および水分を吸収する吸収剤5が設けられている。このように、上記有機EL素子9は、上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2ならびにガスバリア性フィルム3で封止されている。
【0017】
より詳しく説明すると、上記有機EL素子9は、最下層に(上記第1フィルム状基材1の表面に)、透明陽電極層91がパターン形成され、この透明陽電極層91の周囲および表面に、正孔輸送層92が形成されている。そして、この正孔輸送層92の表面に、有機発光層93がパターン形成され、この有機発光層93の周囲に、絶縁層94が形成されている。さらに、これら有機発光層93および絶縁層94の表面に(最上層に)、陰電極層95がパターン形成されている。
【0018】
上記第1フィルム状基材1は、絶縁性透明樹脂フィルム11と、この絶縁性透明樹脂フィルム11の片面に形成されたガスバリア透明層12とからなっており、その絶縁性透明樹脂フィルム11が上記有機EL素子9の透明陽電極層91と当接している。これにより、上記絶縁性透明樹脂フィルム11が有機ELデバイスの内側に位置決めされ、ガスバリア透明層12が有機ELデバイスの外側に位置決めされている。
【0019】
上記第2フィルム状基材2は、絶縁性樹脂フィルム21と、この絶縁性樹脂フィルム21の片面に形成されたガスバリア層22とからなっており、その絶縁性樹脂フィルム21が上記有機EL素子9の陰電極層95と当接している。これにより、上記絶縁性樹脂フィルム21が有機ELデバイスの内側に位置決めされ、ガスバリア層22が有機ELデバイスの外側に位置決めされている。
【0020】
そして、上記有機EL素子9の周囲における、第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の延設部同士の接着は、有機ELデバイスの内側に位置決めされている、上記第1フィルム状基材1の絶縁性透明樹脂フィルム11と第2フィルム状基材2の絶縁性樹脂フィルム21との接着により行われている。この接着方法としては、特に限定されないが、例えば、熱圧着,接着剤層を介した接着等があげられ、なかでも、接着界面の隙間がなく、酸素や水分の侵入を確実に防止できる観点から、熱圧着が好ましい。特に、熱圧着の場合は、熱圧着が容易になる観点から、上記第1フィルム状基材1の絶縁性透明樹脂フィルム11と第2フィルム状基材2の絶縁性樹脂フィルム21とが同一材料であることが好ましい。
【0021】
上記ガスバリア性フィルム3は、有機ELデバイスの周縁部の折り返し部分に形成される段部に沿うよう、断面が略クランク状になり、上記第1フィルム状基材1のガスバリア透明層12と第2フィルム状基材2のガスバリア層22とにそれぞれ接着剤4を介して接着されることにより、上記のように、第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の周側面(延設部の端面)を被覆している。
【0022】
上記有機EL素子9の透明陽電極層91の外部への取り出しは、図2(a)に示すように、上記延設部の所定部分に形成された陽電極取り出し線6aと、その陽電極取り出し線6aに接続した陽電極外部配線7aとを用いて行われている。すなわち、上記陽電極取り出し線6aは、導電性材料からなり、その一端部が透明陽電極層91の端部と接触し、他端部が上記延設部の端部(第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の周側部)から露出している。そして、その露出部分に陽電極外部配線7aの一端部が導電性接着剤8aにより接着され、その陽電極外部配線7aの他端部が上記第2フィルム状基材2のガスバリア層22とガスバリア性フィルム3との接着部分を経て外部に露出している。
【0023】
上記有機EL素子9の陰電極層95の外部への取り出しは、図2(b)に示すように、上記延設部の所定部分に形成された陰電極取り出し線6bと、その陰電極取り出し線6bに接続した陰電極外部配線7bとを用いて行われている。すなわち、上記陰電極取り出し線6bは、導電性材料からなり、その一端部が導電性接着剤8cを介して陰電極層95の端部と接触し、他端部が上記延設部の端部(第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の周側部)から露出している。そして、その露出部分に陰電極外部配線7bの一端部が導電性接着剤8bにより接着され、その陰電極外部配線7bの他端部が上記第2フィルム状基材2のガスバリア層22とガスバリア性フィルム3との接着部分を経て外部に露出している。
【0024】
つぎに、上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2ならびにガスバリア性フィルム3等の形成材料等について説明する。
【0025】
上記第1フィルム状基材1の絶縁性透明樹脂フィルム11の形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリイミド(PI),シクロオレフィンポリマー,ポリカーボネート(PC)等の透明なものがあげられる。そして、その絶縁性透明樹脂フィルム11の厚みは、特に限定されないが、剛性と柔軟性の両立の観点から、30〜200μmの範囲内に設定されることが好ましい。
【0026】
上記第1フィルム状基材1のガスバリア透明層12としては、SiN膜,SiO膜,SiON膜,これらの膜と有機薄膜との積層構造等の透明なものがあげられる。そして、そのガスバリア透明層12の厚みは、ガスバリア性を発揮する観点から、0.5μm以上に設定され、可撓性やフレキシブル性を有するようにする観点から、5μm以下に設定する。
【0027】
上記第2フィルム状基材2の絶縁性樹脂フィルム21の形成材料としては、PET,ポリカーボネート,ポリイミド,ポリエーテルスルホン,ポリエーテルイミド,ポリフェニレンサルファイド,ポリスルホン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリアミド,ポリメタクリル酸メチル,ポリエチレンナフタレート,ポリアリレート,シクロオレフィンポリマー等があげられる。そして、その絶縁性樹脂フィルム21の厚みは、特に限定されないが、剛性と柔軟性の両立の観点から、30〜200μmの範囲内に設定される。
【0028】
上記第2フィルム状基材2のガスバリア層22の形成材料としては、アルミニウム,パラジウム,白金,金,銀,銅,チタン等があげられる。そして、そのガスバリア層22の厚みは、ガスバリア性を発揮する観点から、3μm以上に設定され、可撓性やフレキシブル性を有するようにする観点から、50μm以下に設定する。
【0029】
上記ガスバリア性フィルム3の形成材料としては、アルミニウム,銅,ステンレス,チタン等があげられる。そして、そのガスバリア層22の厚みは、ガスバリア性を発揮する観点から、10μm以上に設定され、可撓性やフレキシブル性を有するようにする観点から、100μm以下に設定する。
【0030】
上記ガスバリア性フィルム3を接着する接着剤4としては、ガス透過性の少ないものが好ましく、代表的に、無機フィラー80〜90重量%含有エポキシがあげられる。
【0031】
上記酸素および水分を吸収する吸収剤5としては、酸化カルシウム(CaO),酸化バリウム,塩化カルシウム,これらと鉄(Fe)粉末の混合粉末等があげられる。
【0032】
つぎに、この実施の形態の有機ELデバイスを製造する製法の一例について説明する。
【0033】
まず、図3に示すように、絶縁性透明樹脂フィルム11(例えばPETフィルム、厚み100μm)を準備し、その片面にCVD法によりガスバリア透明層12(例えばSiN膜、厚み3μm)を形成することにより、上記第1フィルム状基材1を作製する。
【0034】
ついで、その第1フィルム状基材1の絶縁性透明樹脂フィルム11のもう一方の片面に、スパッタ法により透明薄膜〔例えば酸化インジウム錫(ITO)膜、厚み150nm〕を製膜した後、エッチングによりパターニングすることにより、上記有機EL素子9(図1参照)の透明陽電極層91を形成するとともに、陽電極取り出し線6a〔図2(a)参照〕および陰電極取り出し線6b〔図2(b)参照〕を形成する。このとき、上記透明陽電極層91は、絶縁性透明樹脂フィルム11の表面の周縁部に所定幅をあけた中央部に形成される。そして、それを純水で洗浄した後、イソプロパノール(IPA)で再度洗浄し、その後乾燥させる。つぎに、上記透明陽電極層91の周囲および表面に、スピンコート法,グラビア印刷,インクジェット印刷またはフレキソ印刷等によりPEDOT−PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルフォン酸)をコーティングした後、乾燥(例えば150℃×30分間)させることにより、正孔輸送層92(例えば厚み80nm)を形成する。その後、ディスペンサを用いて導電性接着剤8c(例えば、銀粒子をポリエステル樹脂に分散させたもの)を、上記陰電極取り出し線6b〔図2(b)参照〕の根元端部に滴下する。
【0035】
つぎに、窒素雰囲気において、上記正孔輸送層92の表面に、インクジェット印刷により、MEH−PPV〔ポリ2−メトキシ,5−(2’−エチル−ヘキシルオキシ−1,4−フェニレンビニレン〕をパターニングするとともに、PMMA(ポリメチルメタクリレート)をパターニングした後、乾燥(例えば120℃×30分間)させることにより、上記MEH−PPVからなる有機発光層93(例えば厚み60nm)と、PMMAからなる絶縁層94(例えば厚み60nm)とを形成する。これにより、陽電極側フィルムAが作製される。
【0036】
一方、図4に示すように、絶縁性樹脂フィルム21(例えばPETフィルム、厚み50μm)と、ガスバリア層22となる金属フィルム(例えばアルミニウムフィルム、厚み15μm)とを準備し、それらを貼り合わせることにより、上記第2フィルム状基材2を作製する。ついで、それを純水で洗浄した後、イソプロパノール(IPA)で再度洗浄し、その後乾燥させる。つぎに、その第2フィルム状基材2の絶縁性樹脂フィルム21の表面に、マスクを用いた真空スパッタ法によりマグネシウムと銀の合金(例えばMg90mol%、Ag10mol%)からなる膜をパターン形成することにより、上記有機EL素子9の陰電極層95(例えば厚み100nm)を形成する。このとき、上記陰電極層95は、絶縁性樹脂フィルム21の表面の周縁部に所定幅をあけた中央部に形成される。さらに、上記陽電極側フィルムA(図3参照)における陽電極取り出し線6a〔図2(a)参照〕および陰電極取り出し線6b〔図2(b)参照〕の各他端部が上記第2フィルム状基材2から露出するよう、その各他端部に対応する上記第2フィルム状基材2の部分にそれぞれ貫通孔を形成する。これにより、陰電極側フィルムBが作製される。
【0037】
そして、図5に示すように、上記陽電極側フィルムAを作製した窒素雰囲気において、その陽電極側フィルムAに上記陰電極側フィルムBを重ね合わせる。このとき、陽電極側フィルムAの有機発光層93および絶縁層94と、陰電極側フィルムBの陰電極層95とが当接するように重ね合わせるとともに、上記第2フィルム状基材2に形成した各貫通孔から陽電極取り出し線6a〔図2(a)参照〕および陰電極取り出し線6b〔図2(b)参照〕の各他端部をそれぞれ露出させる。ついで、それを加熱(例えば150℃)したラミネートロールの間に通し、ラミネートする。これにより、上記有機EL素子9が、上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2で挟持された状態となる。つぎに、上記有機EL素子9の周囲に対応する上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の部分(上記延設部に相当する部分)をヒータ(例えば幅5mm)で挟み、その状態で加熱(例えば200℃)することにより、熱圧着する。このとき、上記陰電極取り出し線6b〔図2(b)参照〕の根元端部に滴下した導電性接着剤8cが軟化し、上記陰電極取り出し線6bの根元端部と陰電極層95端部とが接着される。
【0038】
つぎに、目的とする有機ELデバイスの形状にするために、上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の余分な周縁部を切除する。そして、上記第2フィルム状基材2の貫通孔から露出した陽電極取り出し線6aの他端部に前記陽電極外部配線7aの一端部を導電性接着剤8a(例えば、銀粒子をポリエステル樹脂に分散させたもの)で接着し〔図2(a)参照〕、また、同様に露出した陰電極取り出し線6bの他端部に前記陰電極外部配線7bの一端部を導電性接着剤8b(例えば銀粒子をポリエステル樹脂に分散させたもの)で接着する〔図2(b)参照〕。
【0039】
ついで、図1に示すように、上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の周縁部を折り返す。このとき、上記第1フィルム状基材1を外側にして第2フィルム状基材2側に折り返す。そして、その折り返し部分の端面に、酸素および水分を吸収する吸収剤5(例えばCaOとFeとの混合粉末を樹脂と混合しペースト状にしたもの)を塗布する等して設ける。つぎに、上記折り返し部分の第1フィルム状基材1の表面(ガスバリア透明層12の表面)と、上記折り返し部の近辺の第2フィルム状基材2の表面(ガスバリア層22の表面)とに、ガス透過性の少ない接着剤4(例えば無機フィラー80〜90重量%含有エポキシ)を塗布し、上記折り返し部分の端面および吸収剤5を被覆するよう、ガスバリア性フィルム3(例えばアルミニウムフィルム、厚み30μm)を上記接着剤4を介して接着する。このとき、図2(a),(b)に示すように、上記陽電極外部配線7aおよび陰電極外部配線7bの他端側は、第2フィルム状基材2のガスバリア層22とガスバリア性フィルム3との間から外側に出るようにする。このようにして図1に示す上記有機ELデバイスが製造される。
【0040】
このように、上記有機ELデバイスは、有機EL素子9の透明陽電極層91が第1フィルム状基材1の絶縁性透明樹脂フィルム11と当接し、有機EL素子9の陰電極層95が第2フィルム状基材2の絶縁性樹脂フィルム21と当接しているため、有機EL素子9の各電極層と上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2との間に、新たな絶縁層104(図7参照)を形成する必要がなく、構造を簡素化することができる。さらに、従来のような気密封止用の枠体103(図7参照)が不要であるため、構造を簡素化および薄型化することができるとともに、有機ELデバイスを製造する際には上記第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2にかける圧力を全体的に略均一にすることができる。
【0041】
図6は、本発明の有機ELデバイスの他の実施の形態を示している。この実施の形態の有機ELデバイスは、上記実施の形態において、周縁部が折り返されていず、上記ガスバリア性フィルム3が断面が略コ字状に形成されることにより、第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の周側面(延設部の端面)を被覆している。それ以外は上記実施の形態(図1参照)と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。そして、この実施の形態の有機ELデバイスでも、上記実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0042】
なお、上記各実施の形態では、第1フィルム状基材1および第2フィルム状基材2の周側面(延設部の端面)に、酸素および水分を吸収する吸収剤5を設けたが、特に必要としない場合は、上記吸収剤5を設けなくてもよい。
【0043】
また、上記各実施の形態では、陽電極取り出し線6aおよび陰電極取り出し線6bを第1フィルム状基材1(陽電極側フィルムA)側に形成したが、これに限定されるものではなく、いずれも第2フィルム状基材2(陰電極側フィルムB)側に形成してもよいし、陽電極取り出し線6aを第1フィルム状基材1(陽電極側フィルムA)側、陰電極取り出し線6bを第2フィルム状基材2(陰電極側フィルムB)側に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の有機ELデバイスの一実施の形態の周縁部を示す断面図である。
【図2】(a)は上記有機ELデバイスの陽電極取り出し部分を示す断面図であり、(b)はその陰電極取り出し部分を示す断面図である。
【図3】上記有機ELデバイスの製法を示す説明図である。
【図4】上記有機ELデバイスの製法を示す説明図である。
【図5】上記有機ELデバイスの製法を示す説明図である。
【図6】本発明の有機ELデバイスの他の実施の形態の周縁部を示す断面図である。
【図7】従来の有機ELデバイスを示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 第1フィルム状基材
2 第2フィルム状基材
3 ガスバリア性フィルム
9 有機EL素子
11 絶縁性透明樹脂フィルム
12 ガスバリア透明層
21 絶縁性樹脂フィルム
22 ガスバリア層
91 透明陽電極層
95 陰電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明陽電極層,有機発光層および陰電極層がこの順で積層されてなる有機EL素子が、2枚のフィルム状基材で挟持されて封止されている有機ELデバイスであって、上記2枚のフィルム状基材のうち一方の第1フィルム状基材が、絶縁性透明樹脂フィルムと、この絶縁性透明樹脂フィルムの片面に形成されたガスバリア透明層とからなり、その絶縁性透明樹脂フィルムが上記有機EL素子の透明陽電極層と当接し、他方の第2フィルム状基材が、絶縁性樹脂フィルムと、この絶縁性樹脂フィルムの片面に形成されたガスバリア層とからなり、その絶縁性樹脂フィルムが上記有機EL素子の陰電極層と当接し、上記第1フィルム状基材および第2フィルム状基材が上記有機EL素子の周囲において延設され、その延設部同士が絶縁性透明樹脂フィルムと絶縁性樹脂フィルムとを対面させた状態で接着され、この接着された絶縁性透明樹脂フィルムおよび絶縁性樹脂フィルムの延設部の少なくとも端面を被覆した状態でガスバリア性フィルムが設けられていることを特徴とする有機ELデバイス。
【請求項2】
請求項1記載の有機ELデバイスにおいて、その端部が、上記第1フィルム状基材を外側にして折り返されている有機ELデバイス。
【請求項3】
上記第1フィルム状基材の絶縁性透明樹脂フィルムの端面および第2フィルム状基材の絶縁性樹脂フィルムの端面と、それら端面を被覆する上記ガスバリア性フィルムとの間の空間に、酸素および水分の少なくとも一方を吸収する吸収剤が設けられている請求項1または2記載の有機ELデバイス。
【請求項4】
上記第1フィルム状基材の絶縁性透明樹脂フィルムと第2フィルム状基材の絶縁性樹脂フィルムとの接着が、熱圧着になっている請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機ELデバイス。
【請求項5】
上記第1フィルム状基材の絶縁性透明樹脂フィルムと第2フィルム状基材の絶縁性樹脂フィルムとが同一材料である請求項4記載の有機ELデバイス。
【請求項6】
上記ガスバリア性フィルムと上記第1フィルム状基材のガスバリア透明層との間、および上記ガスバリア性フィルムと上記第2フィルム状基材のガスバリア層との間が、ガス透過性の少ない接着剤で接着されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機ELデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−103254(P2008−103254A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286323(P2006−286323)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】