説明

有機ELパネルの製造方法及び有機ELパネル並びに電子機器

【課題】密閉された筐体中に収められた有機ELパネルを、筐体に配置された封止板を介してレーザリペアする方法では、カラーフィルタを配置することが極めて困難であり、カラー表示に対応可能な有機ELパネルを得る方法に制限が発生する。また、上部電極を形成した状態で、レーザリペアを行うとその飛沫は、上部電極上に堆積される。この飛沫の影響により、上部電極の構造が不均一となり、表示性能が低下する。
【解決手段】有機ELパネル上に配置される、欠陥部分105を含む有機EL素子17Aのレーザリペアを、封止層131を介して行う。封止層131の形成工程で生じる応力等に起因する欠陥(例えばウィスカー)を含めてリペアできるため、良品率を向上させることができる。また、レーザリペアに伴う飛沫104は、絶縁性を有する封止層131に付着するため、電気的な副次不良発生を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機ELパネルの製造方法及び有機ELパネル並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELパネルは、自発光性の有機EL素子を用いて形成される。自発光性を有することから液晶パネルと比べ広い視野角を有している。また、黒の表現力に優れており、次世代の表示パネルとして高く評価されている。
【0003】
表示パネルとして、特に大面積の有機ELパネルを形成する場合には、異物や応力起因のウィスカーの影響で有機ELパネルを構成する有機EL素子の電極がショートし、常時消灯してしまう欠陥が発生する場合がある。この場合、例えば特許文献1に記載されるように、密閉された筐体中に収められた有機ELパネルに対してレーザリペアを行い、ショートした部分を焼き切り、ショートを解消する方法が知られている。
【0004】
また、有機EL素子を駆動する電極間がショートすることで発生する欠陥が生じた場合に、上部電極を形成する工程後に欠陥と欠陥周囲とにレーザ照射を行い、電極間をショートさせている欠陥を電気的に高抵抗な状態に変質させ、表示機能を復元させる方法が特許文献2に記載されている。この場合には、欠陥に与えるレーザ光強度を抑えて照射するため、欠陥部分の有機EL素子を電気的に高抵抗な状態に変質させることで、常時消灯状態となる欠陥が修復される。
【0005】
【特許文献1】特開2000−208252号公報
【特許文献2】特開2004−227852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、レーザリペアを可能とするためにカラーフィルタを配置することが極めて困難であり、カラー表示に対応可能な有機ELパネルを得る方法に制限が発生する。特に、白色発光させ、カラーフィルタを用いてカラー表現を行う有機ELパネルを提供することは極めて困難となるという課題がある。さらに、筐体に収められた有機ELパネルを用いる場合、有機ELパネルに望まれる薄型化が困難となるという課題がある。
【0007】
また、特許文献2の技術では、電極を形成した状態でレーザリペアを行っている。この場合、レーザリペアにより発生した飛沫は、上部電極上に堆積される。この飛沫の影響により、上部電極の構造が不均一となり、電気特性に分布が発生する。そのため、表示性能が低下するという課題が発生する。また、欠陥部分にもレーザ光が照射されるため、欠陥を構成する汚染物質の飛沫が上部電極上に付着し、予期せぬ不良を発生させるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例にかかる有機ELパネルの製造方法は、有機EL素子を備える有機ELパネルの製造方法であって、基板上に前記有機EL素子を形成する工程と、前記有機EL素子を封止層で覆う工程と、前記封止層又は前記基板を通して前記有機EL素子にエネルギーを印加して、前記有機EL素子が有する欠陥に起因する電気的不良を修復する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
これによれば、有機ELパネルを構成する有機EL素子を、封止層で覆った後にエネルギーを印加して、有機EL素子の欠陥に起因する電気的影響を修復させている。そのため、封止層形成に伴う影響で発生するウィスカーに起因する欠陥についても対処することが可能となり、有機EL素子形成後に、欠陥に起因する電気的影響を修復する工程を用いる場合と比べ、より高い確実性をもって、欠陥に起因する電気的影響を修復することが可能となる。
【0011】
[適用例2]上記適用例にかかる有機ELパネルの製造方法であって、前記エネルギーとしてNd:YAGレーザの基本波、第2高調波、第3高調波の少なくとも一つを用いることを特徴とする。
【0012】
上記した適用例によれば、エネルギーにNd:YAGレーザの基本波、第2高調波、第3高調波の少なくとも一つを用いることで、狭い領域にエネルギーを集中させることが可能となる。そのため、欠陥に起因する電気的影響を変調する場合に、他の領域に与える影響を抑えることが可能となる。また、エネルギー量が空間的、時間的に安定したNd:YAGレーザを用いることで再現性高くエネルギーの印加が可能となる。
【0013】
[適用例3]上記適用例にかかる有機ELパネルの製造方法であって、前記基板又は前記封止層が、前記Nd:YAGレーザの基本波、第2高調波、第3高調波の少なくともいずれか一つの波長に対して、80%以上の透過率を有することを特徴とする。
【0014】
上記した適用例によれば、Nd:YAGレーザを効率良く有機EL素子に照射させることが可能となり、処理時間の短縮を図ることが可能となる。また、標的となる有機EL素子以外の領域に吸収されるエネルギーを低減できるため、基板又は封止層でのエネルギー吸収による温度上昇を抑えることが可能となり、標的となる有機EL素子以外の素子に与える影響を抑制することが可能となる。
【0015】
[適用例4]上記適用例にかかる有機ELパネルの製造方法であって、前記Nd:YAGレーザを前記欠陥に照射し、前記欠陥の状態を変調することを特徴とする。
【0016】
上記した適用例によれば、Nd:YAGレーザを照射する領域を小さく抑えることが可能となり、欠陥に起因する有機ELパネルの画質低下を狭い領域に局在させて変調することが可能となる。
【0017】
[適用例5]上記適用例にかかる有機ELパネルの製造方法であって、前記欠陥の状態を変調する工程は、前記欠陥を焼失させる工程であることを特徴とする。
【0018】
上記した適用例によれば、焼失に伴い、Nd:YAGレーザ照射領域から発生する飛沫は、電気的に絶縁性を有する封止層上に付着するため、この飛沫に起因して有機ELパネルが受ける、電気的特性の変動を抑えて焼失させることが可能となる。
【0019】
[適用例6]上記適用例にかかる有機ELパネルの製造方法であって、前記Nd:YAGレーザを用いて前記欠陥を囲い、かつ前記欠陥を避けた領域に照射し、前記欠陥を電気的に隔離することを特徴とする。
【0020】
上記した適用例によれば、Nd:YAGレーザ照射に伴う挙動が不明な欠陥に対して、Nd:YAGレーザ照射を避けて電気的に隔離するため、新たな不良発生を抑制しうる状態で欠陥を隔離することができる。
【0021】
[適用例7]上記適用例にかかる有機ELパネルの製造方法であって、前記欠陥を電気的に隔離する工程は、前記欠陥を囲う領域を焼失させる工程であることを特徴とする。
【0022】
上記した適用例によれば、Nd:YAGレーザを、欠陥を避けて照射し焼失させることで、欠陥を構成する汚染物質の拡散を避けて欠陥を隔離することが可能となる。
【0023】
[適用例8]上記適用例にかかる有機ELパネルの製造方法であって、前記有機EL素子はITO(Indium Tin Oxide)層を含むことを特徴とする。
【0024】
上記した適用例によれば、ITOは近赤外光を吸収する性質がある。そのため、Nd:YAGレーザを用いる場合に、ITO層に効率良くエネルギーを伝達することが可能となる。
【0025】
[適用例9]上記適用例にかかる有機ELパネルの製造方法であって、前記封止層は窒化珪素、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂及びこれらの混合物又は化合物を単層、又は複数の材質を積層した層を用いることを特徴とする。
【0026】
上記した適用例によれば、これらの物質はNd:YAGレーザの波長に対して透明である。これらの物質を用いることで、Nd:YAGレーザのレーザ光の吸収に伴う発熱を抑制することが可能となり、熱伝導により隣接する素子に与える損傷が抑制される。
【0027】
[適用例10]上記適用例にかかる有機ELパネルの製造方法であって、前記Nd:YAGレーザがなすビーム形状は縦横比が異なる形状を有し、短辺側の法線と比べ長辺側の法線が前記欠陥に近い向きに配置することを特徴とする。
【0028】
上記した適用例によれば、一回の照射で欠陥を囲える範囲が広がり、短い時間で欠陥を囲む処理を行うことが可能となる。
【0029】
[適用例11]本適用例にかかる有機ELパネルは、基板側に下部電極を備え、前記下部電極と有機機能層を挟んで配置される上部電極を含む有機EL素子を備えた有機ELパネルであって、Nd:YAGレーザ照射により副次的に発生する飛沫に起因する付着物を前記有機EL素子の上部電極上に配置する構造に代えて、前記上部電極を覆い電気的に絶縁性を有する封止層上に配置することを特徴とする。
【0030】
これによれば、Nd:YAGレーザ照射により発生する飛沫起因の付着物は、電気的に敏感な上部電極に代えて電気的に絶縁性を有する封止層上に配置される。そのため、電気的特性の安定性に優れた有機ELパネルを提供することが可能となる。
【0031】
[適用例12]上記適用例にかかる有機ELパネルであって、前記飛沫を発生する領域が欠陥を囲んでいることを特徴とする。
【0032】
上記した適用例によれば、欠陥を構成する汚染物質を閉じ込めた状態で有機ELパネルを提供することが可能となる。
【0033】
[適用例13]本適用例にかかる電子機器であって、上記記載の構造を持つ有機ELパネルを含む、又は上記記載の有機ELパネルの製造方法で作られた有機ELパネルを含むことを特徴とする。
【0034】
これによれば、欠陥変調に起因する副次的欠陥の発生を抑え、欠陥数が少ない有機ELパネルを用いるため、表示特性に優れた電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(有機ELパネルの構成)
以下、本実施形態にかかる有機ELパネルについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の有機ELパネルの配線構造を示す模式図である。この有機ELパネル1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと称する。)を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線101と、各走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とからなる配線構成を有するとともに、走査線101及び信号線102の各交点付近には、画素(サブ画素40)が設けられている。
【0036】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0037】
サブ画素40の各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用のTFT122と、スイッチング用のTFT122を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量113と、を含んでいる。さらに、保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用のTFT123と、駆動用のTFT123を介して電源線103に電気的に接続した場合に当該電源線103から駆動電流が与えられる画素電極23と、画素電極23と対向する対向電極50との間に挟み込まれた有機EL素子17(R(赤),G(緑),B(青))とを含んでいる。
【0038】
次に、本実施形態の有機ELパネル1の具体的な態様を、図2を参照して説明する。ここで、図2は、有機ELパネル1の構成を模式的に示す平面図である。
【0039】
図2に示すように、基板20上の実表示領域44には、R,G,B各色に対応して設けられたサブ画素40がマトリクス状に規則的に配置されている。また、R,G,B各色のサブ画素40(R,G,B)は一つの基本単位となって表示単位画素41を構成している。また、サブ画素40(R,G,B)の各々は、TFT122,123(図1参照)の動作に伴って、赤色発光(R)、緑色発光(G)、及び青色発光(B)に対応する有機EL素子17(R,G,B)を備える構成を有している。
【0040】
本実施形態では有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)の光を、各有機EL素子17(R,G,B)に対応するカラーフィルタを透過させることで、各サブ画素40(R,G,B)からRGBの発光をそれぞれ得ることが可能となる。これによって表示単位画素41は、RGBの発光を混色させてフルカラー表示を行うようになっている。
【0041】
なお、本実施形態において画素部43(図中一点鎖線)は、中央部分の実表示領域44(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域44の周囲に配置されたダミー領域45(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。そして、実表示領域44の図2中両側には、走査線駆動回路80が配置されている。この走査線駆動回路80は、ダミー領域45の下層側に位置して設けられている。
【0042】
また、実表示領域44の図2中上方側には検査回路90が配置されており、この検査回路90はダミー領域45の下層側に配置されて設けられている。この検査回路90は、有機ELパネル1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における有機ELパネルの品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0043】
図1に示す有機ELパネル1を構成する有機EL素子17(R,G,B)の一つに欠陥が生じた場合(図中×で示し、当該素子を有機EL素子17Aとして説明する)、有機EL素子17Aは、例えば画素電極23と対向電極50とが短絡した状態となる。この場合、有機EL素子17Aを駆動するための電流が印加された場合でも、電流は短絡された領域を流れ、有機EL素子17Aは点灯せず、黒く表示されたままとなり、図2で示すサブ画素40(図中×で示す)が点灯しない欠陥が発生する。また、欠陥の抵抗値が低い場合、1ライン分の電圧降下が生じ線欠陥を発生する場合もある。そのため、有機EL素子17Aを点灯させるためには、この欠陥に起因する電気的特性の不良を修復する必要がある。以下、有機EL素子17についてその概要を説明した後、欠陥を含む領域を同定する手法について説明し、続けて有機EL素子17Aを含む有機ELパネル1を修復する手法について説明する。
【0044】
(有機EL素子の概要)
以下、有機ELパネル1の構成要素である有機EL素子について説明を行う。図3は、第1実施形態の有機EL素子17を示す概略断面図である。なお、便宜上、図面上方向を「上」として定義し、以下の説明を行う。
【0045】
有機EL素子17は、基板20上に、光反射層9、層間絶縁層2を含む層構造を覆う領域に配置される。有機EL素子17は陽極3、正孔注入層4、発光層5、電子輸送層6、陰極8を順に備えている。そして、有機EL素子17を覆う領域には封止層131が配置されている。正孔注入層4、発光層5及び電子輸送層6は有機物材料によって形成されており、これら有機物層によって有機機能層7が形成されている。また、有機機能層7は陽極3と陰極8との間に挟持されており、これら陽極3、有機機能層7及び陰極8によって、有機EL素子17が形成されている。ここで、構造によってはいくつかの層を省略しても良い。また、封止層131に重ねて、有機ELパネル1の修復後、カラーフィルタ等を形成しても良い。
【0046】
陽極3と陰極8には、駆動電圧を印加するための配線が接続されている。そして、この配線を介して電極間に電源21を用いて駆動電圧を印加すると、陰極8より電子が、陽極3より正孔が発光層5に注入され、印加された電場により発光層5中を移動し、再結合する。この再結合の際に放出されたエネルギーにより、励起子が生成し、この励起子が基底状態に戻る際に蛍光や燐光という形でエネルギーを放出する。有機EL素子17から放出された光は、例えば窒化酸化珪素層/エポキシ樹脂層/窒化酸化珪素層の3層構造を有する封止層131から射出され、外部に取り出される。本実施形態にかかる有機EL素子17は、所謂トップエミッション方式のものである。
【0047】
基板20上には、ガラス基板等の透明基板上にTFT122やTFT123(図1参照)等が配置され、これら駆動素子上に配置される層間絶縁層2を介して陽極3が形成されている。なお、基板20に適用可能な材料としては、上記透明なガラス以外にも、石英、サファイア、あるいはポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の透明な合成樹脂等が挙げられる。また、トップエミッション方式を用いる場合、シリコン基板や金属、金属酸化物等、光学的に不透明な材質を用いても良い。
【0048】
光反射層9にはアルミニウムを用いており、基板20側に射出される光を封止層131側に折り返して光を射出させる。層間絶縁層2は、アルミニウムを用いた光反射層9と、後述する陽極3との接触による電蝕を防止する機能も兼ね備えている。なお、電蝕が抑えられる場合には、層間絶縁層2は省略可能である。
【0049】
正孔注入層4は、陽極3上に形成されている。正孔注入層4は、陽極3から注入した正孔を発光層5に注入する。正孔注入層4の形成材料としては、アリールアミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポリアニリン誘導体+有機酸、ポリチオフェン誘導体+ポリマー酸等を用いることができる。特に、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物(PEDOT/PSS)が好適である。低分子材料の構成では、正孔注入層4の上にさらに正孔輸送層4’(図示せず)が形成されることがある。正孔注入層4の形成材料としては、銅フタロシアニンやアリールアミン等の低分子材料が用いられる。正孔輸送層4’としては、ジフェニルアミンやトリフェニルアミン等のフェニルアミン系誘導体、芳香族アミン系材料、スチリルアリーレン誘導体等を用いることができる。
【0050】
発光層5は、正孔注入層4上に形成されており、陰極8から注入される電子と、正孔注入層4から注入される正孔が結合して所定の波長を有する光を発光する。この発光層5の材料としては、具体的には、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリメチルフェニルシラン誘導体等のポリシラン系等の高分子有機材料が好適に用いられる。低分子材料の構成で白色発光させる機能を有するものの場合、発光層5は、一例として、正孔注入層4側から順に、赤色発光層5R、青色発光層5B、及び緑色発光層5Gの構造を有する。これらの発光層は、それぞれホスト材料と発光ドーパントとを含む。ホスト材料は電子と正孔の両方を流すことのできる材料である。発光ドーパントとホスト材料とを併用した発光層では、ホスト材料からの発光はほとんど観察されず、発光ドーパントが主として発光する。ホスト材料と発光ドーパントとを併用した発光層において観察される発光スペクトルは、発光ドーパントの発光である。発光層の発光の波形は有機分子骨格によって決定される。
発光ドーパントは、一重項励起子から発光する蛍光発光性化合物、三重項励起子から発光する燐光発光性化合物のいずれであってもよく、たとえば、蛍光材料としては、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、ルブレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン誘導体等を挙げることができる。燐光材料としては、イリジウム金属錯体、白金金属錯体などを用いることができる。好ましくは、赤色発光材料としては、ジベンゾジインデノペリレン誘導体を、緑色発光材料としては、クマリン誘導体、ナフタセン誘導体を用いる。青色発光材料としては、スチリル誘導体、スチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体などを用いることができる。好ましくは、ジスチリルアミン誘導体を用いる。ホスト材料としては、アルミニウム錯体、ベリリウム錯体のほか、アントラセン(2量体を含む)誘導体、カルバゾール誘導体、スチリルアミン誘導体等の公知の材料が用いられる。
【0051】
電子輸送層6を形成する形成材料としては、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン等のポリシラン系等の高分子有機材料が好適に用いられる。
【0052】
電子輸送層6は、陰極8から注入された電子を発光層5へ効率的に輸送するために、電気的な還元電位が発光層5を形成する発光材料の電気的な還元電位よりも小さい材料を用いることが望ましい。また、正孔注入層4から発光層5に注入された正孔が発光層内で再結合せずにそのまま陰極8側に通過するのを阻止するために、電気的な酸化電位が発光層5を形成する発光材料の電気的な酸化電位よりも大きい材料を用いることが望ましく、この構成により発光効率の向上を図ることができる。電子輸送層6としては、8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体とその金属錯体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体等が用いられる。
【0053】
陽極3は、基板20上にパターニングにより形成され、かつTFT素子からなる駆動素子や各種配線等と接続されたものである。ここでは陽極3として、膜厚が50nmのインジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:以下、ITOと称す)を用いている。ITOは近赤外光を吸収する性質がある。そのため、Nd:YAGレーザを用いる場合に、ITO層(陽極3)に効率良くエネルギーを伝達することが可能となる。
【0054】
この陽極3を形成する方法としては、ITO部材をターゲットとし、例えばイオンビームスパッタ法を用いて形成することができる。そして、陰極8は例えば、LiF+MgAgを共蒸着したものを用いている。
【0055】
このような構造を持つ有機EL素子17を製造する工程で、異物の侵入や封止層131を形成する工程での応力等に起因する欠陥(ウィスカー等)が発生すると、陽極3と陰極8との短絡不良が発生する。短絡不良が発生した有機EL素子17A(図1参照)に電流を供給した場合、電流は短絡された流路を通り、有機EL素子17Aは発光しない。そのため、有機EL素子17Aが含む欠陥に起因する電気的特性の乱れを修復する必要が生じる。
【0056】
(欠陥位置の同定手法)
有機EL素子17A(図1参照)が含む欠陥に起因する電気的特性の乱れを修復するためには、欠陥を含む有機EL素子17Aの位置を同定する必要がある。有機EL素子17Aの欠陥は、基本的にはショートにより発生するため、通常の駆動電流と逆方向に低いバイアス電圧をかけて、発光している領域(ショートしている領域)の座標を検出し、この座標を元に、欠陥位置の同定を行うことが可能となる。
【0057】
より具体的には、有機ELパネル1に低い逆バイアス電圧を掛けた状態で、欠陥部から射出される低輝度の赤外線をエミッション顕微鏡を用いて検出し、異常発光箇所の同定を行う。そして異常発光箇所の座標を記憶させた後、修復工程を行う。
【0058】
図4は、異常発光箇所を検出する検査装置の概略図である。検査装置200は、制御用コンピュータ201、表示装置202、XYステージ210、撮像部205と、を含む。制御用コンピュータ201は表示装置202、XYステージ210及び撮像部205を制御する。リペア対象の有機ELパネル1は、XYステージ210にセットされる。そして、制御用コンピュータ201の制御によって定められた電圧が有機ELパネル1に印加される。
【0059】
撮像部205は顕微鏡208及びCCDカメラ206を含み、制御用コンピュータ201の指示により所定の条件で、有機ELパネル1を撮像し、撮像データを制御用コンピュータ201に送る。表示装置202は制御用コンピュータ201の指示により、撮像部205が撮像した像を画面に表示する。XYステージ210は、制御用コンピュータ201の制御によってX方向及びY方向に独立して移動する。
【0060】
制御用コンピュータ201は、XYステージ210の移動を制御するとともに、常にXYステージ210の位置を把握している。また、制御用コンピュータ201は表示装置202に表示されている像の1箇所がマウスでクリックされると、マウスでクリックされた有機ELパネル1上の位置データを、クリックされた時点でのXYステージ210の位置データに基づき計算し、前記クリック位置を把握して、記憶する。この操作により、有機ELパネル1を構成する有機EL素子17のうち、欠陥を有する有機EL素子17Aを抽出することが可能となる。ここで、クリック操作に代えて、画像処理を行うことで自動的に欠陥を探査させ、欠陥を有する有機EL素子17Aを検出させても良い。
【0061】
(有機ELパネルの修復手法−1)
以下、有機ELパネル1を修復する手法としての、修復手法−1について図面を用いて説明する。図5(a)は、図1に示す有機ELパネル1を構成する、欠陥部分105を含む有機EL素子17Aの模式断面図、(b)は、修復後における有機EL素子17Aの模式断面図である。
【0062】
図3との相違は、欠陥部分105が陽極3と陰極8を短絡させている点である。他の点においては図3と同じ構成を有しており、基板20上に、光反射層9、層間絶縁層2、陽極3、正孔注入層4、発光層5、電子輸送層6、陰極8、及び封止層131が配置されている。有機EL素子17Aには、異物や封止層131を形成する際の応力等に起因するウィスカー等より生じる欠陥部分105に起因する短絡不良が発生している。
【0063】
この状態では有機EL素子17Aは点灯しない。この場合、封止層131を通してエネルギーを印加して、欠陥部分105に起因する短絡不良を起している領域の電気的特性を変調させることが有効な解決策となる。より具体的には、Nd:YAGレーザの基本波、第2高調波、第3高調波のいずれか一つ(以下レーザ光と記す)を集光して照射し、欠陥部分105を含む領域を焼き切ることが有効となる。なお、レーザ光で焼き切るのは、陰極8だけでよい。陰極8を焼き切ることによって欠陥部分105は電気的に孤立するので、当該欠陥部分105に起因する電気的不良を解決することができる。また、陰極8を焼き切るだけなので、その他の電子輸送層6や発光層5などの層を余計に焼ききる必要がないので、飛沫104の発生を抑制することができる。
【0064】
封止層131を通して上記レーザ光を照射することで、封止層131の形成工程で生じる応力等に起因する欠陥(例えばウィスカー)に対しても対応することが可能となり、より高い修復精度をもって欠陥の修復が行え、欠陥数の少ない有機ELパネル1を提供するための製造方法を提供することが可能となる。
【0065】
また、図5(b)に示すように、封止層131を介して上記レーザ光を照射することで、短絡不良を起している領域を焼き切る場合に発生する飛沫104は封止層131上に配置される。この場合、陰極8上には飛沫104は付着しない。
【0066】
このように、飛沫104を陰極8上に代えて封止層131上に配置することで、電気的に敏感な陰極8上への飛沫104の付着が防止される。従って、飛沫104の付着による初期不良や、飛沫104と陰極8との間で生じる電蝕による信頼性の低下を抑制することができる。即ち、飛沫104を陰極8上に代えて封止層131上に有する有機ELパネル1は、優れた初期特性と、高い信頼性を有している。
【0067】
また、上記レーザ光の照射は、封止層131を介して行うことに限定されず、特にボトムエミッション型の有機ELパネル1を形成する場合には、基板20側から短絡不良を起している領域に照射しても良い。この場合にも前述した効果を得ることができる。なお、ボトムエミッション型に対応させるためには、光反射層9を基板側に設ける構造に代えて、陰極8よりも上層に形成することで実現することができる。この場合、基板20にレーザ光に対する光透過率が80%以上となるガラス等を用いることが好ましい。
【0068】
封止層131を介して上記レーザ光を照射する場合には、封止層131のレーザ光に対する光透過率が80%以上であることが好ましい。例えば、無機物として、窒化珪素、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム等を用いることができる。又、例えば、有機物として、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等を用いることができる。また、上記した材質の化合物、混合物を用いても良い。そして上記した素材を用いて単層、又は複数の材質を積層した層を用いることも好適である。
【0069】
これらの材料を用いた場合、層厚は5μm程度の厚みを持たせることが好適である。光透過率が80%以上である場合、レーザ光が効率良く有機EL素子17Aに照射されることで、処理時間の短縮を図ることが可能となる。上記した条件を満たすことで、標的となる有機EL素子17A以外の,例えば封止層131や基板20に吸収されるエネルギーを低減できるため、封止層131又は基板20でのエネルギー吸収による温度上昇を抑えることができる。従って、標的となる有機EL素子17A以外の領域に与える影響を抑制することが可能となる。
【0070】
また、短絡不良を起している領域を焼き切った後、封止層131を覆うように保護層を形成しても良い。この場合、焼き切った領域に形成される空孔は保護層により覆われる。そのため、大気から空孔を介しての酸素や水分の侵入が抑えられる。従って、より信頼性高く修復処理を行うことが可能となる。
【0071】
また、短絡不良を起している領域を焼き切る工程を真空、又は不活性ガス雰囲気で行い、大気に晒す事無く保護層を形成することも好適であり、大気から空孔を介して侵入する酸素や水分の影響をより確実に抑えることが可能となる。
【0072】
(有機ELパネルの修復手法−2)
以下、有機ELパネルの修復手法−2について図面を用いて説明する。図6(a)は、図1に示す有機ELパネル1を構成する、欠陥を含む有機EL素子17Aを修復した状態での模式平面図、(b)は(a)のA−A’線模式断面図である。有機ELパネルの修復方法−1と異なる点は、図6(a),(b)に示すように、有機EL素子17Aの欠陥部分105を囲うように焼き切っている点である。この場合には、欠陥部分105を避けるように焼き切っているため、欠陥部分105にはレーザ光は照射されていない。
【0073】
欠陥部分105には、有機ELパネル1を汚染する物質が混入しているおそれがあるため、ここに直接レーザ光を照射した場合、汚染物質が飛散し、有機ELパネル1の特性の低下、及び周辺への汚染物質の拡散が生じるおそれがある。このように、欠陥部分105を避け、かつ欠陥部分105を囲うようにレーザ光を照射することで、欠陥そのものを封じ込めた状態で有機ELパネル1の修復を行うことができる。なお、レーザ光で焼き切るのは、陰極8だけでよい。陰極8を焼き切ることによって欠陥部分105は電気的に孤立するので、当該欠陥部分105に起因する電気的不良を解決することができる。また、陰極8を焼き切るだけなので、その他の電子輸送層6や発光層5などの層を余計に焼ききる必要がないので、飛沫104の発生を抑制することができる。
【0074】
即ち、陰極8上に代えて、欠陥部分105を囲うように、飛沫104が封止層131上に有する有機ELパネル1は、優れた初期特性と、高い信頼性を有している。また、汚染物質の飛散が抑えられているため、想定外の悪影響の発生が抑えられ、さらに高い信頼性を有することを可能としている。
【0075】
ここで、レーザ光のビーム形状を変えることで、より効率的に欠陥部分を囲うことが可能となる。具体的には、レーザ光のビーム形状を楕円形や長方形等、縦横比が異なる形状とし、短辺側の法線と比べ長辺側の法線が欠陥部分に近づくよう配置することで、欠陥部分105を囲う空孔領域を細い領域に抑えることができる。そのため、修復に必要とする面積を小さくでき、有機EL素子17Aの特性劣化を抑えて修復することができる。
【0076】
また、空孔領域の面積を小さくできることから、修復処理に要する時間を短縮することができる。加えて、欠陥修復に要するレーザ光のエネルギーを低減することができる。従って、修復を行う領域外に与えるレーザ光起因のダメージを低減することが可能となる。この場合、レーザ光を連続的に走査して欠陥を囲う方法に代えて、空孔領域の平面形状を内側が埋められた多角形状にすべくステップ状にレーザ光を照射しても良い。また、レーザ光のビーム形状を中空の円形形状等に加工し、一回の照射で欠陥を囲うよう加工しても良い。
【0077】
(電子機器への搭載例)
以下、図7を参照して、上述した有機ELパネル1を含む電子機器について説明する。図7(a)に、有機ELパネル1を備えたモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す。パーソナルコンピュータ2000は、有機ELパネル1と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。
【0078】
図7(b)に、有機ELパネル1を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての有機ELパネル1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機ELパネル1に表示される画面がスクロールされる。
【0079】
図7(c)に、有機ELパネル1を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての有機ELパネル1を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機ELパネル1に表示される。
【0080】
なお、有機ELパネル1が搭載される電子機器としては、図7に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した有機ELパネル1が適用可能である。
【0081】
また、有機ELパネル1の視野角の広さ、画質の高さ、画像の動きに対する追従性の高さを活用して車載用のカーナビゲーションシステムやインパネにも適用できる。また、光電変換効率の高さを活かして、ページプリンタ等の露光光源、照明等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】有機ELパネルの配線構造を示す模式図。
【図2】有機ELパネルの構成を模式的に示す平面図。
【図3】有機EL素子の概略構成図。
【図4】異常発光箇所を検出する検査装置の概略図。
【図5】(a)は、有機ELパネルを構成する、欠陥部分を含む有機EL素子の模式断面図、(b)は、修復後における有機EL素子の模式断面図。
【図6】(a)は、有機ELパネルを構成する、欠陥を含む有機EL素子を修復した状態での模式平面図、(b)は(a)のA−A’線模式断面図。
【図7】(a),(b),(c)は有機ELパネルを含む電子機器の模式図。
【符号の説明】
【0083】
1…有機ELパネル、2…層間絶縁層、3…陽極、4…正孔注入層、5…発光層、6…電子輸送層、7…有機機能層、8…陰極、9…光反射層、17…有機EL素子、17A…有機EL素子、20…基板、21…電源、23…画素電極、40…サブ画素、41…表示単位画素、43…画素部、44…実表示領域、45…ダミー領域、50…対向電極、80…走査線駆動回路、90…検査回路、100…データ線駆動回路、101…走査線、102…信号線、103…電源線、104…飛沫、105…欠陥部分、113…保持容量、122…TFT、123…TFT、131…封止層、200…検査装置、201…制御用コンピュータ、202…表示装置、205…撮像部、206…CCDカメラ、208…顕微鏡、210…XYステージ、2000…パーソナルコンピュータ、2001…電源スイッチ、2002…キーボード、2010…本体部、3000…携帯電話機、3001…操作ボタン、3002…スクロールボタン、4000…情報携帯端末、4001…操作ボタン、4002…電源スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子を備える有機ELパネルの製造方法であって、
基板上に前記有機EL素子を形成する工程と、
前記有機EL素子を封止層で覆う工程と、
前記封止層又は前記基板を通して前記有機EL素子にエネルギーを印加して、前記有機EL素子が有する欠陥に起因する電気的不良を修復する工程と、を含むことを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機ELパネルの製造方法であって、前記エネルギーとしてNd:YAGレーザの基本波、第2高調波、第3高調波の少なくとも一つを用いることを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機ELパネルの製造方法であって、前記基板又は前記封止層が、前記Nd:YAGレーザの基本波、第2高調波、第3高調波の少なくともいずれか一つの波長に対して、80%以上の透過率を有することを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機ELパネルの製造方法であって、前記Nd:YAGレーザを前記欠陥に照射し、前記欠陥の状態を変調することを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の有機ELパネルの製造方法であって、前記欠陥の状態を変調する工程は、前記欠陥を焼失させる工程であることを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機ELパネルの製造方法であって、前記Nd:YAGレーザを用いて前記欠陥を囲い、かつ前記欠陥を避けた領域に照射し、前記欠陥を電気的に隔離することを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の有機ELパネルの製造方法であって、前記欠陥を電気的に隔離する工程は、前記欠陥を囲う領域を焼失させる工程であることを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の有機ELパネルの製造方法であって、前記有機EL素子はITO(Indium Tin Oxide)層を含むことを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の有機ELパネルの製造方法であって、前記封止層は窒化珪素、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂及びこれらの混合物又は化合物を単層、又は複数の材質を積層した層を用いることを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の有機ELパネルの製造方法であって、前記Nd:YAGレーザがなすビーム形状は縦横比が異なる形状を有し、短辺側の法線と比べ長辺側の法線を前記欠陥に近い向きに配置することを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項11】
基板側に下部電極を備え、前記下部電極と有機機能層を挟んで配置される上部電極を含む有機EL素子を備えた有機ELパネルであって、Nd:YAGレーザ照射により副次的に発生する飛沫に起因する付着物を前記有機EL素子の上部電極に配置する構造に代えて、前記上部電極を覆い電気的に絶縁性を有する封止層上に配置することを特徴とする有機ELパネル。
【請求項12】
請求項11に記載の有機ELパネルであって、前記飛沫を発生する領域が欠陥を囲んでいることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の構造を持つ有機ELパネルを含む、又は請求項1から10のいずれか一項に記載の有機ELパネルの製造方法で作られた有機ELパネルを含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−158433(P2009−158433A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338590(P2007−338590)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】