有機EL材料及びその製造方法
【課題】隔壁層を設けることなく簡便な方法により得られ、かつ、耐久性に優れ、高精細な有機EL材料、及びその製造方法の提供。
【解決手段】支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有する有機EL材料である。該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる態様、微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造である態様が好ましい。支持体上の陽極表面に空孔を有する微細空孔構造を作製する微細空孔構造作製工程と、得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させる収容工程とを含む有機EL材料の製造方法である。
【解決手段】支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有する有機EL材料である。該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる態様、微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造である態様が好ましい。支持体上の陽極表面に空孔を有する微細空孔構造を作製する微細空孔構造作製工程と、得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させる収容工程とを含む有機EL材料の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造を応用した有機EL材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子が盛んに研究されている。これは、正孔注入電極上にトリフェニルジアミン(TPD)などの正孔輸送材料を蒸着により薄膜とし、その上にアルミキノリノール錯体(Alq3)などの蛍光物質を発光層として積層し、さらにMg、Ag等の仕事関数の小さな金属電極(電子注入電極)を形成した基本構成をからなる素子で、10V前後の電圧で数百から数万cd/m2の極めて高い輝度が得られることで注目されている。
【0003】
このような高輝度、高効率の有機EL素子は、これまで、主に低分子有機材料を真空蒸着法により薄膜化することで得られてきた。ところが、ここ数年の間に、高分子有機材料をスピンコート法などにより薄膜化した高分子有機EL素子が飛躍的な進歩を遂げ、安価で作成が容易であること、フレキシブルデバイスの作成が可能であることなどから注目を集めている。
【0004】
一方、デバイス、特にフルカラーデバイスの作成には素子のパターニングが不可欠である。高分子有機EL素子のパターニング方法としても、これまでにいくつかの提案がなされている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、高分子有機EL材料に感光性を付与し、光学的にパターニングを行った方法が提案されている。下記特許文献2及び特許文献3には、感光性樹脂中に有機EL材料をドーピングし、パターニングを行った方法が提案されている。また、インクジェットを使った方法も提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、これらの方法を用いるには、事前に基板上にフォトリソグラフィ等を使って、隔壁層を設けなくてはならず、簡便な方法の開発が望まれていた。
また、フォトレジスト等の煩雑な工程を経るため、本来、発光のためには不要な成分が発光層に入り、この成分の存在によって耐久性が悪くなり、精細性も悪くなるという問題があった。
【0006】
他方で、近年、自己組織化現象を利用して、秩序構造を有する膜を作製する技術が研究されてきている。例えば、非特許文献1及び非特許文献2には、空気中から凝縮する液滴及びその溶媒界面に析出するポリマーが3相境界域に自己集積することにより、ハニカム状多孔質構造を作製できることが開示されている。これらの文献に記載の方法は、空気中から凝縮する液滴及びその溶媒界面に析出するポリマーを利用している形となっているため、複雑な製造装置を必要としないものである。
【0007】
しかしながら、これらの文献には作製されたハニカム多孔質構造の具体的用途や、その用途に応じた具体的な条件制御法については開示も示唆もされておらず、前記ハニカム多孔質構造を有機EL材料として活用するには、更なる研究、開発が必要であるのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開平6−13184号公報
【特許文献2】特開平10−69981号公報
【特許文献3】特開平10−289785号公報
【特許文献4】特開2001−76874号公報
【非特許文献1】Thin Solid Films,327−329(1998)、854〜856
【非特許文献2】Chaos,9−2(1999)、308〜314
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、隔壁層を設けることなく簡便な方法により得られ、かつ、耐久性に優れ、高精細な有機EL材料、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有してなることを特徴とする有機EL材料である。
<2> 微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造である前記<1>に記載の有機EL材料である。
<3> 微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機EL材料である。
<4> 微細空孔構造材料が、疎水性ポリマー及び両親媒性ポリマーから選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機EL材料である。
<5> 微細空孔構造材料が、黒色着色剤を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機EL材料である。
<6> 支持体が、ガラス転移温度(Tg)120℃以上のフィルムである前記<1>から<5>のいずれかに記載の有機EL材料である。
<7> フィルムの水蒸気透過性が、1×10−3g/m2・24h以上である前記<6>に記載の有機EL材料である。
<8> 支持体上の陽極表面に、有機溶媒と高分子化合物とを含む塗布液を塗布し、得られた膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒及び前記液滴を蒸発させて前記膜中に空孔を有する微細空孔構造を作製する微細空孔構造作製工程と、
得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させる収容工程とを含むことを特徴とする有機EL材料の製造方法である。
<9> 塗布液が、黒色着色剤を含む前記<8>に記載の有機EL材料の製造方法である。
【0011】
本発明の有機EL材料は、支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有してなる。これにより、フォトレジスト等の煩雑な工程を経ずに微細空孔構造を形成可能となるので、発光のために不要な成分が要らず、耐久性に優れ、高精細な有機EL材料が提供できる。前記有機EL材料は、微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造であることが好ましい。
また、前記ハニカム状多孔質構造が形成される機構について次のように推定される。疎水性有機溶媒が蒸発する際に潜熱を奪われ温度が下がった溶媒表面で水が凝結して微小液滴となり、ポリマー溶液表面に付着する。ポリマー溶液中の親水性部分の働きによって、水と疎水性有機溶媒の間の表面張力が減少し、水滴が凝集して1つの塊に融合するのを防止する。溶媒蒸発と周囲からの補填に基づく溶媒の流れにより液滴が移送・集積され、更に横毛管力により最密充填される。最後に水が蒸発してポリマーが規則正しくハニカム状に並んだ形として残る。
【0012】
本発明の有機EL材料の製造方法は、支持体上の陽極表面に、有機溶媒と高分子化合物とを含む塗布液を塗布し、得られた膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒及び前記液滴を蒸発させて前記膜中に空孔を有する微細空孔構造を作製する微細空孔構造作製工程と、
得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させる収容工程とを含む。その結果、フォトリソグラフィ等を使って隔壁層を設けることなく、簡便な方法により、有機EL材料を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、隔壁層を設けることなく簡便な方法により得られ、かつ、耐久性に優れ、高精細な有機EL材料、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(有機EL材料)
本発明の有機EL材料は、支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有し、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
該微細空孔構造は、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造であることが好ましい。
前記有機EL材料は、フルカラーデバイスを得る場合には、微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる。
なお、前記微細空孔構造は、少なくとも1つの空孔内に前記正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有していればよいが、可能な限り多くの空孔内にこれらを有していることが好ましく、全ての空孔内にこれらを有していることが最も好ましい。また、前記微細空孔構造は、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる場合には、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを含んでいればよいが、前記各色発光材料いずれをも含んでいることが好ましい。
【0015】
−支持体−
前記支持体としては、ある程度の強度を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム、ガラス、金属、シリコンウエハなどが挙げられるが、これらの中でも、軽量化及び脆性の観点から、フィルムが好ましい。
前記フィルムとしては、フィルムに成形した場合に、その上に積層体を保持できれば特に制限はなく、例えば、ガスバリア性を有する熱可塑性フィルムが好適に挙げられる。
前記ガスバリア性を有する熱可塑性フィルムとしては、例えば、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物等の熱可塑性樹脂からなるものが挙げられる。
また、米国特許2005−0112378号中、一般式(1)記載のポリマーを用いることもできる。
【0016】
前記フィルムのガラス転移温度(Tg)は、120℃以上であることが好ましく、120〜400℃であることがより好ましい。前記Tgが120℃未満であると、酸化インジウム錫(ITO)や薄膜トランジスタ(TFT)作製時に、発生する熱により基板が変形することがある。
前記Tgは、例えば、示差熱天秤(Rigaku社製)により測定することができる。
前記フィルムの水蒸気透過性は、素子(有機EL材料)の保存性の観点から、1×10−3g/m2・24h以上であることが好ましく、1×10−3〜1×10−6g/m2・24hであることがより好ましい。前記水蒸気透過性が1×10−3g/m2・24hより大きいと、通過する水分子により、素子が劣化することがある。
ここで、前記水蒸気透過性は、例えば、MOCON法により測定することができる。
【0017】
−−ガスバリア層−−
前記支持体において、フィルムを用いる場合には、ガスバリア層を、フィルムの少なくとも一方の側に設置することが好ましい。
前記ガスバリア層の材料としては、ガスバリアを行うことができれば特に制限はなく、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等から選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、窒化物、酸化窒化物などの無機物が挙げられる。
【0018】
特に、前記ガスバリア層としては、水蒸気バリア性と高透明性を両立させるために、珪素酸化物や珪素酸化窒化物からなる金属化合物薄膜を用いることがより好ましい。
前記珪素酸化物は、SiOxと表記され、例えば無機物層としてSiOxを用いる場合には、良好な水蒸気バリア性と高い光線透過率を両立させるために、1.6<x<1.9とすることが望ましい。珪素酸化窒化物はSiOxNyと表記されるが、このxとyとの比率は、密着性向上を重視する場合には、酸素リッチの膜とし、1<x<2、0<y<1とすることが好ましく、水蒸気バリア性向上を重視する場合には、窒素リッチの膜とし、0<x<0.8、0.8<y<1.3とすることが好ましい。
【0019】
前記ガスバリア層の形成方法としては、所望の薄膜を形成できれば特に制限はないが、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング、プラズマCVD法などが好適に挙げられる。
より具体的には、特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号の各公報に記載されている方法で成膜することが好ましい。
【0020】
前記ガスバリア層の厚みは、特に制限はないが、厚すぎると曲げ応力によるクラックの恐れがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる傾向がある。
このような観点から、前記ガスバリア層の厚みは、5〜1,000nmであることが好ましく、10〜1,000nmであることがより好ましく、10〜200nmであること特に好ましい。
【0021】
前記ガスバリア層が2層以上形成されている場合における各層は、各々が同じ組成からなる層であっても別の組成からなる層であってもよい。
【0022】
−−有機層−−
前記支持体は、前記ガスバリア層の脆性およびバリア性を向上させるために、これと隣接して有機層を有することが好ましい。
前記有機層としては、例えば、米国特許2005−0112378号記載の様に、(1)ゾルゲル法を用いて作製した無機酸化物層を利用する方法、(2)有機物を塗布または蒸着で積層した後、紫外線または電子線で硬化させる方法を用いて形成することができる。また、前記(1)および(2)の方法を組み合わせて使用してもよく、例えば、樹脂フィルム上に前記(1)の方法で第1の有機層を形成した後、ガスバリア層を作製し、さらにその上に前記(2)の方法で第2の有機層を形成してもよい。
【0023】
前記支持体の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の形状は、一般的には、板状であることが好ましい。
前記支持体の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0024】
前記支持体は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいが、発光材料から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0025】
前記支持体として、熱可塑性材料を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0026】
−陽極−
前記陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。なお、前記陽極は、通常、透明陽極として設けられるのが好ましい。
【0027】
前記陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、これらの混合物が好適に挙げられる。
より具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、これらとITOとの積層物などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からは、特にITOが好ましい。
【0028】
前記陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法にしたがって、前記基板上に形成することができる。例えば、前記陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0029】
前記陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0030】
前記陽極の形成位置としては特に制限はなく、用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記支持体上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、支持体における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0031】
前記陽極の厚みは、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、10nm〜50μm程度が好ましく、50nm〜20μmがより好ましい。
【0032】
前記陽極の抵抗値は、103Ω/ 以下が好ましく、102Ω/ 以下がより好ましい。前記陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。
透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0033】
なお、前記透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0034】
−陰極−
前記陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0035】
前記陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。
より具体例には、アルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0036】
前記陰極の材料としては、上述した例の中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金等)をいう。
【0037】
また、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0038】
前記陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、前記陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を、同時又は順次に、スパッタ法等に従って行うことができる。
【0039】
前記陰極を形成するに際してのパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0040】
前記陰極の形成位置としては、特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、前記陰極と微細空孔構造との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。
前記誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0041】
前記陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、10nm〜5μm程度が好ましく、50nm〜1μmがより好ましい。
また、前記陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0042】
−正孔輸送層−
正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
前記正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、などが挙げられる。
【0043】
前記正孔輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、などのいずれによっても好適に形成することができる。
前記正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下であることが好ましく、1〜500nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが更に好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
【0044】
前記正孔輸送層は、陽極側の面もしくは陽極とは反対側の面に、正孔注入層を有していてもよい。該正孔注入層は、正孔輸送層の陽極側の面に有することが好ましい。
前記正孔注入層の材料、及び形成方法については、上述した正孔輸送層におけるものと同一のものが好適に挙げられる。
前記正孔注入層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下であることが好ましく、0.1〜200nmであることがより好ましく、0.5〜100nmであることが更に好ましく、1〜100nmであることが特に好ましい。
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0045】
−発光層−
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔輸送材料から正孔を受け取り、陰極、電子輸送材料から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
【0046】
前記発光層を構成する材料としては、特に制限はなく、蛍光発光材料であってもよいし、燐光発光材料であってもよい。
前記蛍光発光材料としては、例えば、ローダミン又はその誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン又はその誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等の化合物、などが挙げられる。
【0047】
前記蛍光発光材料において、フルカラーデバイスを得るに際して好適な赤色発色材料としては、上記例示化合物の中でも、低分子で水溶液に可溶であり、均一で安定した発光層の形成が可能である観点から、ローダミン又はその誘導体が挙げられる。
前記ローダミン又はその誘導体としては、例えば、ローダミンB、ローダミンBベース、ローダミン6G、ローダミン101過塩素酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
緑色発光材料としては、前記赤色発光材料と同様の観点から、キナクリドン誘導体が好適に挙げられる。
前記青色発光材料としては、低分子で水溶液、又は水とアルコールとの混合溶液に可溶な観点から、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン又はその誘導体、ジスチルビフェニル誘導体が好適に挙げられる。
前記クマリン又はその誘導体としては、例えば、クマリン、クマリン−1、クマリン−6、クマリン−7、クマリン120、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン311、クマリン314、クマリン334、クマリン337、クマリン343などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記燐光発光材料としては、例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
前記遷移金属原子としては、特に制限はないが、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが好適に挙げられ、これらの中でも、レニウム、イリジウム、及び白金が好ましい。
前記ランタノイド原子としては、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムなどが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0049】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行、などに記載の配位子が挙げられる。
より具体的には、ハロゲン配位子(例えば塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子が好適に挙げられ、これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が好ましい。
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。更に、異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0050】
前記燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0051】
前記発光層の形成方法としては、特に制限はなく、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、などのいずれによっても好適に形成することができる。
【0052】
前記発光層は、上述した発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でもよい。また、前記発光層は、1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよいし、ドーパントも、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
一方、上述した各色発光材料は、微細空孔構造が含む空孔に、モザイク状に含んでいてもよいし、所定領域ごとに発光させる色を分けて、ストライプ状に含んでいてもよいし、所定領域内で各色着色剤の有する区画を定めて、これを規則的に繰り返すようにしてもよい。
【0053】
前記ホスト材料としては、電荷輸送材料であることが好ましい。
より具体的には、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの、アリールシラン骨格を有するものや、前記正孔輸送材料、後述する電子輸送材料の項で例示されている材料が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合には、例えば、電子輸送性のホスト材料と正孔輸送性のホスト材料とを混合した構成が挙げられる。
【0054】
前記発光層の厚さは、特に制限はないが、通常、1〜500nmであることが好ましく、5〜200nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
【0055】
−電子輸送層−
前記電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
前記電子輸送層を構成する材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、などが挙げられる。
【0056】
前記電子輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、などのいずれによっても好適に形成することができる。
前記電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下であることが好ましく、1〜500nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが更に好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
【0057】
前記電子輸送層は、陰極側の面もしくは陰極側とは反対の面に、電子注入層を有していてもよい。該電子注入層は、電子輸送層の陰極側の面に有することが好ましい。
前記電子注入層の材料、及び形成方法については、上述した電子輸送層におけるものと同一のものが好適に挙げられる。
また、電子注入層の厚さとしては、500nm以下であることが好ましく、0.1〜200nmであることがより好ましく、0.2〜100nmであることが更に好ましく、0.5〜50nmであるのが特に好ましい。
前記電子注入層及び電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0058】
−正孔ブロック層−
本発明においては、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を有していてもよい。
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。
前記正孔ブロック層を構成する有機化合物としては、例えば、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、などが挙げられる。
前記正孔ブロック層の厚さは、1〜500nmであることが好ましく、5〜200nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
前記正孔ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0059】
−保護層−
本発明の有機EL材料は、その全体が保護層によって保護されていてもよい。
前記保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであれば特に制限はない。
より具体的には、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxOy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、などが挙げられる。
【0060】
前記保護層の形成方法については、特に制限はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0061】
−封止−
さらに、本発明の有機EL材料は、封止容器を用いて材料全体を封止してもよい。
また、封止容器と前記有機EL材料との間の空間に、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0062】
本発明の有機EL材料は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光させることができる。
本発明の有機EL材料の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0063】
−微細空孔構造−
前記微細空孔構造における微細空孔構造材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、疎水性ポリマー及び両親媒性ポリマーから選択される少なくとも1種が好適である。
また、前記微細空孔構造は、ブラックマトリックスとしての機能を果たす観点から、微細空孔構造材料には黒色着色剤を含有することが好ましい。
【0064】
−ポリマー−
−−疎水性ポリマー−−
前記疎水性ポリマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸など)、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンなど)、ポリアミド又はポリイミド(例えば、ナイロンやポリアミド酸など)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、などが挙げられる。これらは、溶解性、光学的物性、電気的物性、膜強度、弾性等の観点から、必要に応じてホモポリマーとしてもよいし、コポリマーやポリマーブレンドの形態をとってもよい。なお、これらのポリマーは必要に応じて2種以上のポリマーの混合物として用いてもよい。
【0065】
−−両親媒性ポリマー−−
前記両親媒性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などが挙げられる。
前記疎水性側鎖は、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。該疎水性側鎖としては、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。
前記親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
【0066】
前記疎水性側鎖と前記親水性側鎖との比率は、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶媒の疎水性の強さなどに応じて異なり一概には規定できないが、ユニット比(疎水性側鎖/親水性側鎖)は3/1〜1/3が好ましい。また、コポリマーの場合、疎水性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶媒への溶解性に影響しない範囲で疎水性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成するブロックコポリマーであることが好ましい。
【0067】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。
【0068】
前記疎水性ポリマーだけでもハニカム構造フィルムを形成することができるが、両親媒性ポリマーと共に用いることが好ましい。
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性ポリマーとの組成比率(質量比率)は、99:1〜50:50が好ましく、90:10〜80:20がより好ましい。前記両親媒性ポリマーの比率が1質量%未満であると、均一なハニカム構造体が得られなくなることがある。一方、前記両親媒性ポリマーの比率が50質量%を超えると、膜の安定性、特に力学的な安定性が十分に得られなくなることがある。
【0069】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーであることも好ましい。また、前記疎水性ポリマー乃至前記両親媒性ポリマーとともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物によりハニカム膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことも好ましい。
【0070】
前記疎水性ポリマー乃至前記両親媒性ポリマーと併用される多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート又はこれらの変性物、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが使用できる。これらの多官能モノマーは耐擦傷性と柔軟性のバランスから、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーである場合には、前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの重合性基と反応しうる重合性の多官能モノマーを併用することも好ましい。
【0071】
前記エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
【0072】
前記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
前記アセトフェノン類としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンなどが挙げられる。
前記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
前記光ラジカル重合開始剤としては、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されている。
また、市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
前記光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対し、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。
なお、前記光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。外光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン、チオキサントンなどを挙げることができる。
【0073】
前記熱ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、有機ジアゾ化合物、などを用いることができる。
具体的には、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。前記ジアゾ化合物としては、例えば、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0074】
前記溶解する疎水性ポリマーと両親媒性ポリマーの両者を合わせたポリマー濃度は0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。前記ポリマー濃度が0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、細孔のサイズや配列が乱れてしまったりするなどの障害が生じることがあり、10質量%を超えると、十分なハニカム構造体が得られにくくなることがある。
【0075】
−黒色着色剤−
前記黒色着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、黒色顔料、黒色染料、などが好適に挙げられる。
前記黒色顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
前記黒色染料としては、例えば、C.I.リアクティブブラック3、C.I.リアクティブブラック4、C.I.リアクティブブラック7、C.I.リアクティブブラック11、C.I.リアクティブブラック12、C.I.リアクティブブラック17;C.I.ベーシックブラック2、C.I.ベーシックブラック8;C.I.ダイレクトブラック19、C.I.ダイレクトブラック22、C.I.ダイレクトブラック32、C.I.ダイレクトブラック38、C.I.ダイレクトブラック51、C.I.ダイレクトブラック56、C.I.ダイレクトブラック71、C.I.ダイレクトブラック74、C.I.ダイレクトブラック75、C.I.ダイレクトブラック77、C.I.ダイレクトブラック154、C.I.ダイレクトブラック168、C.I.ダイレクトブラック171;C.I.フードブラック1、C.I.フードブラック2などが挙げられる。
これら黒色着色剤の中でも、入手性及び耐久性の観点から、カーボンブラックが特に好ましい。
【0076】
前記黒色着色剤の前記微細空孔構造における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、微細空孔構造材料に対して0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、濃度不足となりコントラスト低下となることがあり、50質量%を超えると、コントラスト性能が飽和するだけでなく、膜質が劣化することがある。
【0077】
前記自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムにおけるハニカム構造とは、一定形状、一定サイズの空孔が連続かつ規則的に配列している構造を意味する。この規則配列は単層の場合には二次元的であり、複層の場合は三次元的にも規則性を有する。この規則性は二次元的には1つの空孔の周囲を複数(例えば、6つ)の空孔が取り囲むように配置され、三次元的には結晶構造の面心立方や6方晶のような構造を取って、最密充填されることが多いが、製造条件によってはこれら以外の規則性を示すこともある。
【0078】
前記ハニカム構造体を作製するに当たっては、ポリマー溶液上に微小な水滴粒子を形成させることが必須であることから、使用する溶媒としては非水溶性であることが好ましい。該非水溶性溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系有機溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルイソブチルケトン等の非水溶性ケトン類;ジエチルエーテル等のエーテル類;二硫化炭素、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒として使用しても構わない。
【0079】
前記微細空孔構造における空孔の直径は、100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、1μm以上20μm以下が特に好ましい。前記空孔の直径が100μmを超えると、各強度が低下し、延伸過程で破断しやすくなることがある。
ここで、前記微細空孔構造の孔径を小さくするためには、迅速乾燥を促すことが有効である。例えば、前記使用溶媒として低沸点溶媒を使用したり、支持体温度を上げたり、展開速度を早くして初期の展開液厚を薄くすることなどが有効である。
【0080】
前記微細空孔構造の厚みは、およそ孔径サイズ〜200μmであるが、展開するポリマー濃度を高めることにより、支持体側に空孔のない肉厚の層を設けることもできる。この場合、前記空孔のない肉厚の層の厚みは0〜500μmの範囲内で制御可能である。
【0081】
ここで、図1は、本発明の有機EL材料の一例の概略図を示し、支持体1上に設けられた陽極2及び陰極3の間に、黒色のハニカム状多孔質構造4が形成され、該ハニカム状多孔質構造の空孔5,5…内に、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8がこの順で積層されている。
【0082】
−用途−
本発明の有機EL材料は、発光のために不要な成分が要らず、耐久性に優れ、高精細であることから、例えば、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【0083】
(有機EL材料の製造方法)
本発明の有機EL材料の製造方法は、微細空孔構造作製工程を含んでなり、収容工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0084】
−微細空孔構造作製工程−
前記微細空孔構造作製工程は、有機溶媒と高分子化合物とを含み、好ましくは黒色着色剤を含む液を支持体上の陽極表面にキャストして膜を形成し、該膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒及び前記液滴を蒸発させて前記膜中に空孔を有するフィルムを作製する工程である。なお、前記支持体上に陽極を形成する方法としては、陽極の項で既に述べた通りである。
【0085】
前記キャスト法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スライド法、エクストリュージョン法、バー法、グラビア法、などが挙げられる。
【0086】
前記成膜を行う環境としては、相対湿度が50〜95%の範囲にあることが好ましい。前記相対湿度が50%未満であると、溶媒表面での水の凝結が不十分となることがあり、95%を超えると、環境のコントロールが難しく、均一な成膜を維持しにくくなることがある。
【0087】
また、前記成膜を行う環境として、相対湿度のほかに風量が一定の定常風を当てることが好ましい。膜との相対風速は0.1〜20m/sが好ましい。前記風速が0.1m/s未満であると、環境のコントロールが困難になることがあり、20m/sを超えると、溶媒表面の乱れを引き起こし、均一な膜が得にくくなることがある。
また、定常風を当てる方向は、支持体面に対して0〜90°のいずれの方向であっても製造可能だが、ハニカム構造体の均一性を高めるためには0〜60°が好ましい。
【0088】
前記成膜の際に送る湿度と流量を制御した気体としては、例えば、空気の他、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを用いることができるが、事前にフィルターを通過させるなどの除塵処置を施すことが好ましい。雰囲気中の塵は水蒸気の凝結核となって成膜に影響を及ぼすため、製造現場にも除塵設備等を設置することが好ましい。
【0089】
前記成膜を行う環境は、市販の定露点湿度発生装置等を用いるなどして厳密に管理することが好ましい。風量は送風装置等で一定に制御し、外気による影響を防ぐために閉鎖された空間を用いることが好ましい。また、室内は気体が層流にて置換されるよう気体の導入出路及び成膜環境を設定しておくことが好ましい。更に、成膜品質を管理するために温度、湿度、流量等の計測器によるモニターを行うことが好ましい。孔径及び膜厚を高精度で制御するためには、これらのパラメータ(特に湿度、流量)を厳密に管理することが必須である。
【0090】
ここで、前記微細空孔構造において、空孔が貫通していない場合には、陽極から正孔輸送層まへの正孔輸送ができなくなるため、該空孔を貫通させる必要がある。
この場合に、前記空孔を貫通させる方法としては、例えば、レーザ光を照射することにより、空孔底部と陽極との間に残存するフィルムを除去する方法などが挙げられる。
【0091】
−収容工程−
前記収容工程は、得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させ、必要に応じてその他の材料を収容させる工程である。
これらの材料を空孔内に収容させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように充填することが好ましく、例えば、溶融状態の正孔輸送層を構成する材料、発光層を構成する材料、及び電子輸送層を構成する材料を、この順で空孔内で層を形成するように充填する方法、ハニカム状多孔質構造を溶解しない溶媒で調製した溶液を空孔に充填する方法、空孔内にモノマーを充填した後、加熱又は光照射により重合させる方法、などが挙げられる。
ここで、前記正孔輸送層を構成する材料は、空孔内に導電性の層を蒸着した後に収容させてもよいし、該導電性の層を介さずに直接空孔内に収容させてもよい。
また、前記発光層を構成する材料は、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料を収容させる場合には、空孔内にモザイク状に収容させてもよいし、所定の領域毎に色分けしてストライプ状に充填してもよいし、所定領域内で各色着色剤の有する区画を定めて、これを規則的に繰り返すように収容させてもよい。
【0092】
−その他の工程−
前記その他の工程としては、例えば、前記ハニカム状多孔質構造上に陰極を形成する陰極形成工程、などが挙げられる。なお、陰極を形成する方法としても、陰極の項で既に述べた通りである。
【0093】
ここで、本発明に係る有機EL材料の製造工程図を図2に示す。好ましくは黒色着色剤を含む高分子溶液をキャスト工程10により支持体上の陽極表面にキャストし、膜(以下、「高分子膜」と称することがある)を形成する。その後に、結露乾燥工程11により、水を結露させ高分子膜中に液滴として含有させる。なお、結露乾燥工程11は、後に詳細に説明する。高分子溶液の溶媒及び液滴を蒸発させてハニカム構造フィルム12を得る。このハニカム構造フィルム12の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように充填する充填工程13を行い、有機EL材料14を得る。なお、高分子膜から有機EL材料14を得る間に照射工程15を行うこともできる。その場合に、照射光として紫外線や電子線を用いることができる。また、図示を省略しているが、空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように充填したフィルムを延伸する延伸工程を行うこともできる。
【0094】
ハニカム構造フィルム12の素材としては、上述したような非水溶性溶媒に溶解する高分子化合物(以下、「疎水性ポリマー化合物」と称することもある)を好ましく用いることができる。
また、前記疎水性ポリマーだけでもハニカム構造フィルム12を形成することができるが、両親媒性の素材を添加することが好ましい。両親媒性の素材としては、上述したものを適宜選択して用いることができる。
また、前記各高分子化合物を溶解させて高分子溶液を調製する溶媒としては、上述したものを適宜選択して用いることができる。
【0095】
次に、図3に、前記ハニカム構造フィルム12を製造するフィルム製造設備20の概略図を示す。前記高分子溶液21がタンク22に入れられている。タンク22には攪拌翼23が備えられ、攪拌翼23が回転することで、高分子溶液21を均一に混合している。高分子溶液21は、ポンプ24により流延ダイ25に送液される。流延ダイ25は、流延ベルト26上に備えられている。また、流延ベルト26は、回転ローラ27,28に掛け渡されている。回転ローラ27,28が図示しない駆動装置により回転することで、流延ベルト26は無端で走行する。また、回転ローラ27,28には温調機29が取り付けられている。回転ローラ27,28の温度を調整することで、流延ベルト26の温度調整を可能としている。また、流延ベルト26上の高分子膜40を剥ぎ取る際に、高分子膜40を支持する剥取ローラ30,高分子膜40をフィルムとして巻き取る巻取機31も備えられている。
【0096】
キャスト工程10では、流延ダイ25から流延ベルト26上に高分子溶液21がキャスト(流延)される。続いて、結露乾燥工程11が行われる。結露乾燥工程11は、図4A〜図4Dと合わせて説明する。図4Aに示すように流延ベルト26上に高分子膜40が形成される。なお、高分子膜40の表面温度(以下、「膜面温度」と称することがある)をTL(℃)とする。本発明において、膜面温度TLは0℃以上であることが好ましい。膜面温度TLが0℃未満であると、高分子膜40中の液滴が凝固して所望の孔が形成されないおそれが生じる。
【0097】
流延が行われる流延室内は、図3に示すように結露ゾーン32と乾燥ゾーン33とに区画されている。結露ゾーン32には送風機34が備えられている。送風機34から結露用に調整されている風35を流延ベルト26上の高分子膜40に送風する。送風機34は、図3に示されているように送風口34a,34c,34eと吸引口34b,34d,34fとからなる複数の送風ユニットから構成されていることが好ましい。これにより、高分子膜40の結露条件を調整することが容易となる。なお、図3では、3ユニットから構成されているものを示しているが、本発明においては図示されている形態に限定されるものではない。
【0098】
乾燥ゾーン33には、乾燥機36が設けられている。乾燥機36から高分子膜40に乾燥風37を送風する。乾燥機36も、図3に示されているように送風口36a,36c,36e,36gと吸引口36b,36d,36f,36hとからなる複数の送風ユニットから構成されていることが好ましい。これにより、高分子膜40の乾燥条件を調整することが容易となる。なお、図3では、4ユニットから構成されているものを示しているが、本発明においては図示されている形態に限定されるものではない。
【0099】
温調機29を用いて回転ローラ27,28を介して流延ベルト26の温度調整を行うことがより好ましい。温度調整の方法としては、回転ローラ27,28の内部に液流路を設け、その液流路に伝熱媒体を送液することで調整する方法などが挙げられる。温度の調整は、下限値を流延ベルト26の温度を0℃以上とすることが好ましい。また、上限値は高分子溶液21の溶媒沸点以下とすることが好ましく、より好ましくは(溶媒沸点−3℃)とすることである。これにより、結露した水分が凝固することも無く、また高分子溶液21の溶媒が急激に蒸発することが抑制されるため、形状に優れるハニカム構造フィルム12を得ることができる。更に、温度調整は、高分子膜40の幅方向にわたって、温度分布を±3℃以内とすることにより、膜面温度の分布も±3℃以内となる。高分子膜40の幅方向の温度分布を減少させることにより、ハニカム構造フィルム12の孔の形成に異方性が生じることが抑制されるので、商品価値が向上する。
【0100】
また、流延ベルト26の搬送方向を水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。搬送方向を調整することにより、図4A〜Dに示すよう液滴44の形態を調整することができる。液滴44の形態を調整することにより、孔の形態を調整することが可能となる。
【0101】
送風機34から風35が送風されている。風35の露点TD1(℃)は、結露ゾーン32を通過する高分子膜40の表面温度TL(℃)に対して0℃≦(TD1−TL)℃が好ましく、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃がより好ましく、5℃以上60℃以下が更に好ましく、10℃以上40℃以下が特に好ましい。前記(TD1−TL)℃が0℃未満であると、結露が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、結露と乾燥とが急峻となり、孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。また、風35の温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5℃以上100℃以下が好ましい。前記風の温度が5℃未満であると、液特に水の蒸発が生じ難く、形状が良好なハニカム構造フィルム12を得ることができないおそれがある。また、100℃を超えると、高分子膜40内に液滴44が生じる前に、水蒸気として揮発してしまうおそれがある。
【0102】
図4Aに示すように結露ゾーン32で風35中の水分(モデル的に図示している)43は、高分子膜40上で結露して液滴44となる。そして、図4Bに示すように液滴44を核として水分43が結露して液滴44を成長させる。図4Cに示すように乾燥ゾーン33で乾燥風37が高分子膜40に送風されると、有機溶媒42が高分子膜40より揮発する。なお、この際にも液滴44からも水分が揮発するが、有機溶媒42の揮発速度の方が速い。そのため、液滴44は、有機溶媒42の揮発に伴い表面張力により略均一の形態となる。更に、乾燥が進行すると図4Dに示すように高分子膜40の液滴44から水分が水蒸気48として揮発する。高分子膜40から液滴44が蒸発すると、液滴44を形成していた箇所が孔47となり、図5に示すようなハニカム構造フィルム12が得られる。本発明においてハニカム構造フィルム12の形態は特に限定されるものではないが、具体的には、隣接する孔47の距離L2は、それらの中心間距離で0.05μm以上100μm以下に制御することができる。
【0103】
風35の送風向きは、高分子膜40の移動方向と平行流(並流)とする。風を向流として送風すると、高分子膜40の膜面に乱れが生じて、液滴の成長が阻害されるおそれがある。また、風35の送風速度は、高分子膜40の移動速度との相対速度が0.1m/s以上20m/s以下が好ましく、0.5m/s以上15m/s以下がより好ましく、2m/s以上10m/s以下が更に好ましい。前記送風速度が0.1m/s未満であると、液滴44が高分子膜40中で充分に成長しないまま高分子膜40が乾燥ゾーン33に搬送されるおそれがある。また、20m/sを超えると、高分子膜40表面に乱れが生じたり、結露が充分に進行しなかったりするおそれがある。
【0104】
高分子膜40が結露ゾーン32を通過する時間は0.1秒以上100秒以下とすることが好ましい。前記通過時間が0.1秒未満であると、液滴44が充分成長しないまま形成されるため所望の孔を形成することが困難となることがあり、100秒を超えると、液滴44のサイズが大きくなり過ぎハニカム構造のフィルムを得られないおそれが生じる。
【0105】
乾燥ゾーン33で高分子膜40を乾燥する乾燥風37の送風速度は、0.1m/s以上20m/s以上が好ましく、0.5m/s以上15m/s以下がより好ましく、2m/s以上10m/s以下が更に好ましい。前記送風速度が0.1m/s未満であると、液滴44からの水分の蒸発が充分に進行しないおそれがあり、生産性にも劣ることがあり、20m/sを超えると、液滴44から水分の蒸発が急激に生じて、形成される孔37の形態が乱れるおそれがある。
【0106】
乾燥風37の露点をTD2(℃)とする場合に、膜面温度TL(℃)との関係を(TL−TD2)℃≧1℃とすることが好ましい。これにより、乾燥ゾーン33で高分子膜40の液滴44の成長を停止させて、液滴を構成する水分を水蒸気48として揮発させることが可能となる。
【0107】
送風機34,37からの風の送風は、2Dノズルで送風する方法以外に、減圧乾燥法により乾燥することも可能である。減圧乾燥を行うことで、有機溶媒42と液滴44の水分43との蒸発速度を調整することが可能となる。これを調整することで、高分子膜40中に液滴44を形成し、有機溶媒42を蒸発させつつ液滴44を蒸発させ、前記液滴が設けられている位置に孔47を形成する本発明における孔の大きさ、形状などを変更することができる。
【0108】
また、減圧乾燥法により乾燥する方法や、膜面から3〜20mm程度離れた位置に、膜面より冷却され表面に溝を有する凝縮器を設けて、凝縮器の表面で水蒸気(揮発有機溶媒も含む)を凝縮させて乾燥させる方法も適用することができる。前記いずれかの乾燥方法を適用することで、高分子膜40の膜面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
【0109】
また、送風機34、乾燥機36の送風ユニットを複数用いたり、複数のゾーンに区画したりすることにより、異なる露点条件を設定したり、異なる乾燥温度条件を設定したりすることができる。これら条件を選択することで、孔47の寸法制御性の向上や孔均一性の向上を図ることができる。なお、送風ユニットやゾーンの数は特に限定されるものではないが、フィルムの品質と設備のコストの点から最適な組み合わせを決定する。
【0110】
膜面温度TL(℃)と結露ゾーン又は乾燥ゾーンの露点温度TDn(℃)(nは、nゾーン番号を意味する)との関係を0℃≦|TDn−TL|℃≦80℃とすることが好ましい。差を80℃以下とすることにより、有機溶媒及び水分の少なくともいずれかの急激な揮発を抑制でき、所望の形態のハニカム構造フィルム12を得ることができる。また、高分子膜40に不純物が混入すると、ハニカム構造の形成を阻害する原因となる。そのため、送風口34a,34c,34e,36a,36c,36e,36gの塵埃度がクラス1000以下とすることが好ましい。そこで、送風機34,乾燥機36が設置されているハウジング38に空調設備39を取り付け、ハウジング38内の空調を行うことが好ましい。これにより、高分子膜40中に不純物が混入するおそれが減少し、良好なハニカム構造フィルム12を得ることができる。
【0111】
乾燥が進行したハニカム構造フィルム12は、剥取ローラ30で支持しながら流延ベルト26から剥ぎ取られ、巻取機32により巻き取られる。なお、ハニカム構造フィルム12の搬送速度は、特に限定されるものではないが、0.1m/min以上60m/min以下であることが好ましい。前記搬送速度が0.1m/min未満であると、生産性に劣りコストの点から好ましくない。一方、60m/minを超えると、ハニカム構造フィルムを搬送する際に、過大な張力が付与され裂け、ハニカム構造乱れなどの不良の発生原因となる。以上の方法によりハニカム構造フィルム12を連続して製造することができる。
【0112】
図6に本発明に係る他の実施形態のフィルム製造設備60を示す。送出機61から支持体となるフィルム62が搬送される。フィルム62はバックアップローラ63に巻き掛けられながら搬送される。バックアップローラ63に対向してスライドコータ64が設けられている。また、スライドコータ64には減圧チャンバ65が設けられている。高分子溶液供給装置66から送液ポンプで送られてくる高分子溶液67が、スライドコータ64から押し出されて、支持体であるフィルム62上に塗布され、高分子膜68が形成される。
【0113】
スライドコータ64は、フィルム62の搬送方向の均一塗布性に優れており、かつ高速で高分子膜68の形成が可能であることから生産性においても高い塗布機であるといえる。また、支持体であるフィルム62の表面に凹凸がある場合でも、フィルム62がバックアップローラ63に巻き掛けられている際に平滑化されるので、均一な塗布性に優れている。更に、フィルム62に非接触で塗布を行うので、フィルム62の表面を傷つけることなく、均一塗布が可能である。
【0114】
フィルム62上に形成されている高分子膜68は、送風機69の風70により結露乾燥工程11が行われる。なお、結露乾燥工程11は前述した説明と同じ条件の箇所の説明は省略する。結露乾燥工程11を経た後にハニカム構造フィルム71は巻取ロール72に巻き取られる。また、フィルム62も巻取ロール73に巻き取られる。高分子膜68が形成されているフィルム62の搬送方向は、水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。また、フィルム62に高分子溶液66の有機溶媒を吸収しやすい性質の素材から形成されているものを用いることがより好ましい。それら素材は、有機溶媒を吸収するものであれば特に限定されるものではない。例えば、高分子溶液67の主溶媒に酢酸メチルを用いている際には、フィルムの素材にセルロースアシレートを用いることが好ましい。
【0115】
図7に、本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる他の実施形態のフィルム製造設備80を示す。なお、フィルム製造設備60と同じ箇所の説明は省略する。送出機81から支持体となるフィルム82が搬送される。フィルム82はバックアップローラ83に巻き掛けられながら搬送される。バックアップローラ83に対向して多層式スライドコータ84が設けられている。また、多層式スライドコータ84には減圧チャンバ85が設けられている。高分子溶液供給装置86から送液ポンプで送られてくる高分子溶液87が、多層式スライドコータ84から押し出されて、支持体であるフィルム82上に塗布され、高分子膜88が形成される。フィルム82上に形成されている高分子膜88は、送風機89の風90により結露乾燥工程11が行われる。結露乾燥工程11を経た後にハニカム構造フィルム91は巻取ロール92に巻き取られる。また、フィルム82も巻取ロール93に巻き取られる。
【0116】
多層からなる高分子溶液87をフィルム82上にキャスト(塗布)することにより、ハニカム構造フィルム91の厚み方向における形態、物性などを変更することが可能となる。
【0117】
図8に、本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる他の実施形態のフィルム製造設備100を示す。なお、フィルム製造設備60と同じ箇所の説明は省略する。送出機101から支持体となるフィルム102が搬送される。フィルム102はバックアップローラ103に巻き掛けられながら搬送される。バックアップローラ103に対向してエクストリュージョンコータ104が設けられている。また、エクストリュージョンコータ104には減圧チャンバ105が設けられている。高分子溶液供給装置106から送液ポンプで送られてくる高分子溶液107が、エクストリュージョンコータ104から押し出されて、支持体であるフィルム102上に塗布され、高分子膜108が形成される。フィルム102上に形成されている高分子膜108は、送風機109の風110により結露乾燥工程11が行われる。結露乾燥工程11を経た後にハニカム構造フィルム111は巻取ロール112に巻き取られる。また、フィルム102も巻取ロール113に巻き取られる。
【0118】
図9に、本発明に係るフィルムを製造するフィルム製造設備120を示して説明する。ワイヤーバー塗布機121を用いて高分子溶液122をフィルム123に塗布する。一定速度で移動するフィルム123の移動方向に回転するワイヤーバー124は、その回転により1次側高分子溶液槽125から液貯留部分126に高分子溶液122を引きあげる。この液貯留部分126の高分子溶液122が、フィルム123にワイヤーバー124を介し接触することにより均一な厚さの高分子膜127が形成される。この高分子膜127を送風機128の風129により結露乾燥工程11を行うことで、ハニカム構造フィルム130を得ることができる。ワイヤーバー124を用いたハニカム構造フィルム130の製造方法は、液貯留部分126が高分子溶液122とフィルム123との接触部に空気が混入しないようにするので、高分子膜127に気泡が混入しにくくなるという利点がある。
【0119】
支持体にフィルム62,82,102,123を用いた際には、ハニカム構造フィルム71,91,111,130とを一体のフィルムとして巻き取り、有機EL材料14のベースフィルムとして用いることもできる。
【0120】
図10に、本発明に係るフィルムを製造する製造設備140を示す。フィルム141が圧胴142に巻き掛けられながら搬送される。圧胴142に対向して版胴143が配置されている。版胴143の表面には所望のパターンが形成されている。高分子溶液槽144に入れられている高分子溶液145は版胴143が回転することにより、その凹部に溜まる。ドクターブレード146により過剰な高分子溶液145がかきとられる。その後に圧胴142に巻きかかって走行しているフィルム141上に高分子溶液145が塗布されて高分子膜147が形成される。
【0121】
送風機148により高分子膜147の結露乾燥工程11が行われる。送風機148から送風される風149は、フィルム141の搬送方向と同方向の平行流とする。高分子膜147は、結露乾燥工程11を経ることによりハニカム構造体150が形成される。フィルム141は、所望のパターンでハニカム構造体150が形成されているハニカム構造体形成フィルム151となる。
【0122】
本発明の有機EL材料の製造方法に従って得られた本発明の有機EL材料は、初めから所望の支持体上に製造することでそのまま使用してもよいし、エタノール等の適当な溶媒に浸してから製造時の支持体より剥離した後に所望の基体上に設置して使用してもよい。なお、剥離して使用する場合には、新たな基体との密着性を上げる目的で材料及び所望の基体の材質に合ったエポキシ樹脂、シランカップリング剤等の接着剤を使用してもよい。
【実施例】
【0123】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0124】
(実施例1)
支持体としてのPEN(ポリエチレンナフタレート)基板の上に、米国特許出願公開第2005/0112378号明細書に記載の方法で有機、無機それぞれ5層を積層したバリア層を設置し、その上にマスクを用いて100μm幅の酸化インジウム錫(ITO)パターニングを行うことにより、陽極を形成した。次いで、該基板上に、微細空孔構造材料としての、重量平均分子量45,000のポリスチレンと、重量平均分子量50,000の下記構造式で表される両親媒性ポリマーと、を質量比で10:1の割合で混合した塩化メチレン溶液(ポリマー濃度として0.1質量%)0.5mLに、黒色着色剤としてのカーボンブラック(三菱化学(株)製、三菱#2770B)を微細空孔構造材料に対して2質量%となるように添加し、塗布液を調製した。なお、前記PEN基板のガラス転移温度(Tg)は、示差熱天秤(Rigaku社製)により測定したところ、120℃であった。また、前記PEN基板の水蒸気透過性は、MOCON法により測定したところ、1.0×10−3g/m2・24hであった。
次いで、外気の影響を受けない閉鎖空間にて2℃に保温したHDD用ガラス基板上に全量展開し、相対湿度70%の恒湿空気を毎分2Lの定常流量で基板面に対して45°の方向から吹き付け、塩化メチレンを蒸発させることによって、均一ハニカム構造体を得た。なお、恒湿空気は、市販の除塵エアーフィルタ(ろ過度0.3μm)を設置した日立工機株式会社製のコンプレッサSC−820にヤマト科学株式会社製の湿度発生装置を接続して供給した。また、吹き付け部の空気の流速を実測したところ、0.3m/sであった。
【0125】
【化1】
【0126】
得られた膜の構造を、電解放出走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製)で観察したところ、孔径10μmの空孔がヘキサゴナル状に規則配列したハニカム構造体が確認できた。空孔は膜の表面から裏面へ単一層を形成しており、膜の上下は貫通している構造であった。空孔はキャストした周辺の一部を除き、ほぼ全面にわたって分布しており、きれいな球形をしていた。
【0127】
次に、得られた膜の空孔内に、インクジェット用ノズルから、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料を、この順で吐出させることにより充填して、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層された積層体を調製した後、ITOと垂直方向にマスクを用いて、陰極としてのフッ化リチウム(LiF)及びアルミニウム(Al)層を100μm幅で形成し、実施例1の有機EL材料を作製した。
ここで、前記正孔輸送層を構成する材料としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジンを、発光層を構成する材料としては、赤色発光材料として、オクタエチルポルフィイン錯体、緑色発光材料として、トリス(フェニルピリジン)Ir錯体、青色発光材料として、ビス[(4,6−フルオロフェニル)−ピリジネート−N,C2’]ピコリネート錯体を、電子輸送層を構成する材料としては、米国特許出願公開第2005/112378号明細書実施例2に記載の化合物をそれぞれ用いた。また、前記各色発光材料は、モザイク状に充填した。
前記有機EL材料を発光させたところ、フォトレジスト等の煩雑な工程を用いなくても極めて良好な発光が得られた。
【0128】
(実施例2)
正孔輸送材料として、トリフェニルジアミン(TPD)を、発光材料として、アルミキノリノール錯体(Alq3)を用い、真空チャンバで、蒸着法により積層体を調製し、かつ、陰極形成後、エポキシ材料を用いてガラス板で、全体を封止した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の有機EL材料を作製した。
前記有機EL材料を発光させたところ、実施例1と同様に、フォトレジスト等の煩雑な工程を用いなくても良好な発光が認められた。
【0129】
(実施例3)
実施例1において、発色層を構成する材料として、ポリビニルカルバゾール(分子量63,000、アルドリッチ製)及びトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体を40:1で用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の有機EL材料を作製した。
前記有機EL材料を発光させたところ、実施例1と同様に、フォトレジスト等の煩雑な工程を用いなくても良好な発光が認められた。
【0130】
(実施例4)
実施例1において、PEN基板の上に、有機、無機それぞれ2層を積層し、かつ、該PEN基板として水蒸気透過性5×10−2g/m2・24hの基板を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の有機EL材料を作製した。
【0131】
(実施例5)
実施例1において、支持体としてPEN基板の代わりにPET(ポリエチレンテレフタレート)基板を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の有機EL材料を作製した。なお、前記PET基板のガラス転移温度(Tg)は、示差熱天秤(Rigaku社製)により測定したところ、85℃であった。また、前記PET基板の水蒸気透過性は、MOCON法により測定したところ、5×10−1g/m2・24hであった。
【0132】
(実施例6)
実施例1において、重量平均分子量45,000のポリスチレンと、重量平均分子量50,000の下記構造式で表される両親媒性ポリマーとを質量比で95:5の割合で混合した塩化メチレン溶液(ポリマー濃度として0.2質量%)0.5mLに、黒色着色剤を添加し、塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の有機EL材料を作製した。
【0133】
【化2】
【0134】
(実施例7)
実施例1において、重量平均分子量45,000のポリスチレンのみを溶解した塩化メチレン溶液(ポリマー濃度として0.2質量%)0.5mLに、黒色着色剤を添加し、塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の有機EL材料を作製した。
【0135】
(実施例8)
実施例1において、下記構造式で表される両親媒性ポリマーのみを溶解した塩化メチレン溶液(ポリマー濃度として0.2質量%)0.5mLに、黒色着色剤を添加し、塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の有機EL材料を作製した。
【0136】
【化3】
【0137】
(比較例1)
特開2005−240011号公報実施例1に記載の方法に従って、比較例1の有機EL材料を作製した。
【0138】
(比較例2)
米国特許出願公開第2005/112378号明細書比較例2に記載の方法に従って、比較例2の有機EL材料を作製した。
【0139】
<評価>
得られた実施例1〜8及び比較例1、2の有機EL材料を用いて、以下の評価を行った。
【0140】
(1)耐久性の評価
得られた有機EL材料の、作製直後、及び60℃、90%RH下にて14日間放置後の非発光部の表面積を測定し、有機EL材料全体の面積から該非発光部の面積を減じた値を発光部の面積として算出した後、(60℃、90%RH下にて14日間放置後の発光部面積)/(作製直後の発光部面積)×100により求めた値(%)を耐久性の指標として評価した。この値は大きいほど耐久性が高いことを意味する。
なお、前記非発光部は、目視により、発光が全く見られない箇所を非発光部とすることにより測定した。結果を表1に示す。
【0141】
(2)精細性の評価
得られた有機EL材料を60℃、90%RH下にて14日間放置した後、電子顕微鏡((株)日立製作所製)を用い、精細性の評価を行ったところ、実施例1〜8の有機EL材料では、従来公知のリソグラフィーを用いた場合と同等の精細性が得られた。
【0142】
【表1】
表1の結果より、実施例1〜8の有機EL材料では、比較例の有機EL材料に比して、(60℃、90%RH下にて14日間放置後の発光部面積)/(作製直後の発光部面積)×100により求めた値(%)が大きく、耐久性が高いことが判った。特に、実施例1〜3の有機EL材料では、(60℃、90%RH下にて14日間放置後の発光部面積)/(作製直後の発光部面積)×100により求めた値(%)が90%であり、該耐久性が極めて高いことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の有機EL材料は、発光のために不要な成分が要らず、耐久性に優れ、高精細であることから、例えば、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
本発明の有機EL材料の製造方法は、フォトリソグラフィ等を使って隔壁層を設けることなく、簡便な方法により、有機EL材料を製造できることから、本発明の有機EL材料の製造に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】図1は、本発明の有機EL材料の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明に係る有機EL材料の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図3】図3は、本発明に係る有機EL材料の製造方法の一例に用いられるフィルム製造設備の概略図である。
【図4A】図4Aは、本発明の有機EL材料の形成方法の一例を示し、流延ベルト上に高分子膜が形成された状態を示す概略図である。
【図4B】図4Bは、本発明の有機EL材料の形成方法の一例を示し、液滴が結露して成長する状態を示す概略図である。
【図4C】図4Cは、本発明の有機EL材料の形成方法の一例を示し、乾燥により、有機溶媒が高分子膜から揮発する状態を示す概略図である。
【図4D】図4Dは、本発明の有機EL材料の形成方法の一例を示し、乾燥により、高分子膜の液滴から水分が揮発する状態を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明に係る有機EL材料の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図7】図7は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図8】図8は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図9】図9は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図10】図10は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【符号の説明】
【0145】
10 キャスト工程
11 結露乾燥工程
12 ハニカム構造フィルム
13 充填工程
14 有機EL材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造を応用した有機EL材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子が盛んに研究されている。これは、正孔注入電極上にトリフェニルジアミン(TPD)などの正孔輸送材料を蒸着により薄膜とし、その上にアルミキノリノール錯体(Alq3)などの蛍光物質を発光層として積層し、さらにMg、Ag等の仕事関数の小さな金属電極(電子注入電極)を形成した基本構成をからなる素子で、10V前後の電圧で数百から数万cd/m2の極めて高い輝度が得られることで注目されている。
【0003】
このような高輝度、高効率の有機EL素子は、これまで、主に低分子有機材料を真空蒸着法により薄膜化することで得られてきた。ところが、ここ数年の間に、高分子有機材料をスピンコート法などにより薄膜化した高分子有機EL素子が飛躍的な進歩を遂げ、安価で作成が容易であること、フレキシブルデバイスの作成が可能であることなどから注目を集めている。
【0004】
一方、デバイス、特にフルカラーデバイスの作成には素子のパターニングが不可欠である。高分子有機EL素子のパターニング方法としても、これまでにいくつかの提案がなされている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、高分子有機EL材料に感光性を付与し、光学的にパターニングを行った方法が提案されている。下記特許文献2及び特許文献3には、感光性樹脂中に有機EL材料をドーピングし、パターニングを行った方法が提案されている。また、インクジェットを使った方法も提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、これらの方法を用いるには、事前に基板上にフォトリソグラフィ等を使って、隔壁層を設けなくてはならず、簡便な方法の開発が望まれていた。
また、フォトレジスト等の煩雑な工程を経るため、本来、発光のためには不要な成分が発光層に入り、この成分の存在によって耐久性が悪くなり、精細性も悪くなるという問題があった。
【0006】
他方で、近年、自己組織化現象を利用して、秩序構造を有する膜を作製する技術が研究されてきている。例えば、非特許文献1及び非特許文献2には、空気中から凝縮する液滴及びその溶媒界面に析出するポリマーが3相境界域に自己集積することにより、ハニカム状多孔質構造を作製できることが開示されている。これらの文献に記載の方法は、空気中から凝縮する液滴及びその溶媒界面に析出するポリマーを利用している形となっているため、複雑な製造装置を必要としないものである。
【0007】
しかしながら、これらの文献には作製されたハニカム多孔質構造の具体的用途や、その用途に応じた具体的な条件制御法については開示も示唆もされておらず、前記ハニカム多孔質構造を有機EL材料として活用するには、更なる研究、開発が必要であるのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開平6−13184号公報
【特許文献2】特開平10−69981号公報
【特許文献3】特開平10−289785号公報
【特許文献4】特開2001−76874号公報
【非特許文献1】Thin Solid Films,327−329(1998)、854〜856
【非特許文献2】Chaos,9−2(1999)、308〜314
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、隔壁層を設けることなく簡便な方法により得られ、かつ、耐久性に優れ、高精細な有機EL材料、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有してなることを特徴とする有機EL材料である。
<2> 微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造である前記<1>に記載の有機EL材料である。
<3> 微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機EL材料である。
<4> 微細空孔構造材料が、疎水性ポリマー及び両親媒性ポリマーから選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機EL材料である。
<5> 微細空孔構造材料が、黒色着色剤を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機EL材料である。
<6> 支持体が、ガラス転移温度(Tg)120℃以上のフィルムである前記<1>から<5>のいずれかに記載の有機EL材料である。
<7> フィルムの水蒸気透過性が、1×10−3g/m2・24h以上である前記<6>に記載の有機EL材料である。
<8> 支持体上の陽極表面に、有機溶媒と高分子化合物とを含む塗布液を塗布し、得られた膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒及び前記液滴を蒸発させて前記膜中に空孔を有する微細空孔構造を作製する微細空孔構造作製工程と、
得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させる収容工程とを含むことを特徴とする有機EL材料の製造方法である。
<9> 塗布液が、黒色着色剤を含む前記<8>に記載の有機EL材料の製造方法である。
【0011】
本発明の有機EL材料は、支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有してなる。これにより、フォトレジスト等の煩雑な工程を経ずに微細空孔構造を形成可能となるので、発光のために不要な成分が要らず、耐久性に優れ、高精細な有機EL材料が提供できる。前記有機EL材料は、微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造であることが好ましい。
また、前記ハニカム状多孔質構造が形成される機構について次のように推定される。疎水性有機溶媒が蒸発する際に潜熱を奪われ温度が下がった溶媒表面で水が凝結して微小液滴となり、ポリマー溶液表面に付着する。ポリマー溶液中の親水性部分の働きによって、水と疎水性有機溶媒の間の表面張力が減少し、水滴が凝集して1つの塊に融合するのを防止する。溶媒蒸発と周囲からの補填に基づく溶媒の流れにより液滴が移送・集積され、更に横毛管力により最密充填される。最後に水が蒸発してポリマーが規則正しくハニカム状に並んだ形として残る。
【0012】
本発明の有機EL材料の製造方法は、支持体上の陽極表面に、有機溶媒と高分子化合物とを含む塗布液を塗布し、得られた膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒及び前記液滴を蒸発させて前記膜中に空孔を有する微細空孔構造を作製する微細空孔構造作製工程と、
得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させる収容工程とを含む。その結果、フォトリソグラフィ等を使って隔壁層を設けることなく、簡便な方法により、有機EL材料を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、隔壁層を設けることなく簡便な方法により得られ、かつ、耐久性に優れ、高精細な有機EL材料、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(有機EL材料)
本発明の有機EL材料は、支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有し、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
該微細空孔構造は、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造であることが好ましい。
前記有機EL材料は、フルカラーデバイスを得る場合には、微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる。
なお、前記微細空孔構造は、少なくとも1つの空孔内に前記正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有していればよいが、可能な限り多くの空孔内にこれらを有していることが好ましく、全ての空孔内にこれらを有していることが最も好ましい。また、前記微細空孔構造は、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる場合には、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを含んでいればよいが、前記各色発光材料いずれをも含んでいることが好ましい。
【0015】
−支持体−
前記支持体としては、ある程度の強度を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム、ガラス、金属、シリコンウエハなどが挙げられるが、これらの中でも、軽量化及び脆性の観点から、フィルムが好ましい。
前記フィルムとしては、フィルムに成形した場合に、その上に積層体を保持できれば特に制限はなく、例えば、ガスバリア性を有する熱可塑性フィルムが好適に挙げられる。
前記ガスバリア性を有する熱可塑性フィルムとしては、例えば、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物等の熱可塑性樹脂からなるものが挙げられる。
また、米国特許2005−0112378号中、一般式(1)記載のポリマーを用いることもできる。
【0016】
前記フィルムのガラス転移温度(Tg)は、120℃以上であることが好ましく、120〜400℃であることがより好ましい。前記Tgが120℃未満であると、酸化インジウム錫(ITO)や薄膜トランジスタ(TFT)作製時に、発生する熱により基板が変形することがある。
前記Tgは、例えば、示差熱天秤(Rigaku社製)により測定することができる。
前記フィルムの水蒸気透過性は、素子(有機EL材料)の保存性の観点から、1×10−3g/m2・24h以上であることが好ましく、1×10−3〜1×10−6g/m2・24hであることがより好ましい。前記水蒸気透過性が1×10−3g/m2・24hより大きいと、通過する水分子により、素子が劣化することがある。
ここで、前記水蒸気透過性は、例えば、MOCON法により測定することができる。
【0017】
−−ガスバリア層−−
前記支持体において、フィルムを用いる場合には、ガスバリア層を、フィルムの少なくとも一方の側に設置することが好ましい。
前記ガスバリア層の材料としては、ガスバリアを行うことができれば特に制限はなく、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等から選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、窒化物、酸化窒化物などの無機物が挙げられる。
【0018】
特に、前記ガスバリア層としては、水蒸気バリア性と高透明性を両立させるために、珪素酸化物や珪素酸化窒化物からなる金属化合物薄膜を用いることがより好ましい。
前記珪素酸化物は、SiOxと表記され、例えば無機物層としてSiOxを用いる場合には、良好な水蒸気バリア性と高い光線透過率を両立させるために、1.6<x<1.9とすることが望ましい。珪素酸化窒化物はSiOxNyと表記されるが、このxとyとの比率は、密着性向上を重視する場合には、酸素リッチの膜とし、1<x<2、0<y<1とすることが好ましく、水蒸気バリア性向上を重視する場合には、窒素リッチの膜とし、0<x<0.8、0.8<y<1.3とすることが好ましい。
【0019】
前記ガスバリア層の形成方法としては、所望の薄膜を形成できれば特に制限はないが、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング、プラズマCVD法などが好適に挙げられる。
より具体的には、特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号の各公報に記載されている方法で成膜することが好ましい。
【0020】
前記ガスバリア層の厚みは、特に制限はないが、厚すぎると曲げ応力によるクラックの恐れがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる傾向がある。
このような観点から、前記ガスバリア層の厚みは、5〜1,000nmであることが好ましく、10〜1,000nmであることがより好ましく、10〜200nmであること特に好ましい。
【0021】
前記ガスバリア層が2層以上形成されている場合における各層は、各々が同じ組成からなる層であっても別の組成からなる層であってもよい。
【0022】
−−有機層−−
前記支持体は、前記ガスバリア層の脆性およびバリア性を向上させるために、これと隣接して有機層を有することが好ましい。
前記有機層としては、例えば、米国特許2005−0112378号記載の様に、(1)ゾルゲル法を用いて作製した無機酸化物層を利用する方法、(2)有機物を塗布または蒸着で積層した後、紫外線または電子線で硬化させる方法を用いて形成することができる。また、前記(1)および(2)の方法を組み合わせて使用してもよく、例えば、樹脂フィルム上に前記(1)の方法で第1の有機層を形成した後、ガスバリア層を作製し、さらにその上に前記(2)の方法で第2の有機層を形成してもよい。
【0023】
前記支持体の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の形状は、一般的には、板状であることが好ましい。
前記支持体の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0024】
前記支持体は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいが、発光材料から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0025】
前記支持体として、熱可塑性材料を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0026】
−陽極−
前記陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。なお、前記陽極は、通常、透明陽極として設けられるのが好ましい。
【0027】
前記陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、これらの混合物が好適に挙げられる。
より具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、これらとITOとの積層物などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からは、特にITOが好ましい。
【0028】
前記陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法にしたがって、前記基板上に形成することができる。例えば、前記陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0029】
前記陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0030】
前記陽極の形成位置としては特に制限はなく、用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記支持体上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、支持体における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0031】
前記陽極の厚みは、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、10nm〜50μm程度が好ましく、50nm〜20μmがより好ましい。
【0032】
前記陽極の抵抗値は、103Ω/ 以下が好ましく、102Ω/ 以下がより好ましい。前記陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。
透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0033】
なお、前記透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0034】
−陰極−
前記陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0035】
前記陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。
より具体例には、アルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0036】
前記陰極の材料としては、上述した例の中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金等)をいう。
【0037】
また、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0038】
前記陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、前記陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を、同時又は順次に、スパッタ法等に従って行うことができる。
【0039】
前記陰極を形成するに際してのパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0040】
前記陰極の形成位置としては、特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、前記陰極と微細空孔構造との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。
前記誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0041】
前記陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、10nm〜5μm程度が好ましく、50nm〜1μmがより好ましい。
また、前記陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0042】
−正孔輸送層−
正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
前記正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、などが挙げられる。
【0043】
前記正孔輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、などのいずれによっても好適に形成することができる。
前記正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下であることが好ましく、1〜500nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが更に好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
【0044】
前記正孔輸送層は、陽極側の面もしくは陽極とは反対側の面に、正孔注入層を有していてもよい。該正孔注入層は、正孔輸送層の陽極側の面に有することが好ましい。
前記正孔注入層の材料、及び形成方法については、上述した正孔輸送層におけるものと同一のものが好適に挙げられる。
前記正孔注入層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下であることが好ましく、0.1〜200nmであることがより好ましく、0.5〜100nmであることが更に好ましく、1〜100nmであることが特に好ましい。
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0045】
−発光層−
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔輸送材料から正孔を受け取り、陰極、電子輸送材料から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
【0046】
前記発光層を構成する材料としては、特に制限はなく、蛍光発光材料であってもよいし、燐光発光材料であってもよい。
前記蛍光発光材料としては、例えば、ローダミン又はその誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン又はその誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等の化合物、などが挙げられる。
【0047】
前記蛍光発光材料において、フルカラーデバイスを得るに際して好適な赤色発色材料としては、上記例示化合物の中でも、低分子で水溶液に可溶であり、均一で安定した発光層の形成が可能である観点から、ローダミン又はその誘導体が挙げられる。
前記ローダミン又はその誘導体としては、例えば、ローダミンB、ローダミンBベース、ローダミン6G、ローダミン101過塩素酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
緑色発光材料としては、前記赤色発光材料と同様の観点から、キナクリドン誘導体が好適に挙げられる。
前記青色発光材料としては、低分子で水溶液、又は水とアルコールとの混合溶液に可溶な観点から、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン又はその誘導体、ジスチルビフェニル誘導体が好適に挙げられる。
前記クマリン又はその誘導体としては、例えば、クマリン、クマリン−1、クマリン−6、クマリン−7、クマリン120、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン311、クマリン314、クマリン334、クマリン337、クマリン343などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記燐光発光材料としては、例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
前記遷移金属原子としては、特に制限はないが、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが好適に挙げられ、これらの中でも、レニウム、イリジウム、及び白金が好ましい。
前記ランタノイド原子としては、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムなどが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0049】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行、などに記載の配位子が挙げられる。
より具体的には、ハロゲン配位子(例えば塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子が好適に挙げられ、これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が好ましい。
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。更に、異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0050】
前記燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0051】
前記発光層の形成方法としては、特に制限はなく、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、などのいずれによっても好適に形成することができる。
【0052】
前記発光層は、上述した発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でもよい。また、前記発光層は、1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよいし、ドーパントも、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
一方、上述した各色発光材料は、微細空孔構造が含む空孔に、モザイク状に含んでいてもよいし、所定領域ごとに発光させる色を分けて、ストライプ状に含んでいてもよいし、所定領域内で各色着色剤の有する区画を定めて、これを規則的に繰り返すようにしてもよい。
【0053】
前記ホスト材料としては、電荷輸送材料であることが好ましい。
より具体的には、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの、アリールシラン骨格を有するものや、前記正孔輸送材料、後述する電子輸送材料の項で例示されている材料が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合には、例えば、電子輸送性のホスト材料と正孔輸送性のホスト材料とを混合した構成が挙げられる。
【0054】
前記発光層の厚さは、特に制限はないが、通常、1〜500nmであることが好ましく、5〜200nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
【0055】
−電子輸送層−
前記電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
前記電子輸送層を構成する材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、などが挙げられる。
【0056】
前記電子輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、などのいずれによっても好適に形成することができる。
前記電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下であることが好ましく、1〜500nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが更に好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
【0057】
前記電子輸送層は、陰極側の面もしくは陰極側とは反対の面に、電子注入層を有していてもよい。該電子注入層は、電子輸送層の陰極側の面に有することが好ましい。
前記電子注入層の材料、及び形成方法については、上述した電子輸送層におけるものと同一のものが好適に挙げられる。
また、電子注入層の厚さとしては、500nm以下であることが好ましく、0.1〜200nmであることがより好ましく、0.2〜100nmであることが更に好ましく、0.5〜50nmであるのが特に好ましい。
前記電子注入層及び電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0058】
−正孔ブロック層−
本発明においては、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を有していてもよい。
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。
前記正孔ブロック層を構成する有機化合物としては、例えば、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、などが挙げられる。
前記正孔ブロック層の厚さは、1〜500nmであることが好ましく、5〜200nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
前記正孔ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0059】
−保護層−
本発明の有機EL材料は、その全体が保護層によって保護されていてもよい。
前記保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであれば特に制限はない。
より具体的には、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxOy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、などが挙げられる。
【0060】
前記保護層の形成方法については、特に制限はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0061】
−封止−
さらに、本発明の有機EL材料は、封止容器を用いて材料全体を封止してもよい。
また、封止容器と前記有機EL材料との間の空間に、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0062】
本発明の有機EL材料は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光させることができる。
本発明の有機EL材料の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0063】
−微細空孔構造−
前記微細空孔構造における微細空孔構造材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、疎水性ポリマー及び両親媒性ポリマーから選択される少なくとも1種が好適である。
また、前記微細空孔構造は、ブラックマトリックスとしての機能を果たす観点から、微細空孔構造材料には黒色着色剤を含有することが好ましい。
【0064】
−ポリマー−
−−疎水性ポリマー−−
前記疎水性ポリマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸など)、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンなど)、ポリアミド又はポリイミド(例えば、ナイロンやポリアミド酸など)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、などが挙げられる。これらは、溶解性、光学的物性、電気的物性、膜強度、弾性等の観点から、必要に応じてホモポリマーとしてもよいし、コポリマーやポリマーブレンドの形態をとってもよい。なお、これらのポリマーは必要に応じて2種以上のポリマーの混合物として用いてもよい。
【0065】
−−両親媒性ポリマー−−
前記両親媒性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などが挙げられる。
前記疎水性側鎖は、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。該疎水性側鎖としては、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。
前記親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
【0066】
前記疎水性側鎖と前記親水性側鎖との比率は、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶媒の疎水性の強さなどに応じて異なり一概には規定できないが、ユニット比(疎水性側鎖/親水性側鎖)は3/1〜1/3が好ましい。また、コポリマーの場合、疎水性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶媒への溶解性に影響しない範囲で疎水性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成するブロックコポリマーであることが好ましい。
【0067】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。
【0068】
前記疎水性ポリマーだけでもハニカム構造フィルムを形成することができるが、両親媒性ポリマーと共に用いることが好ましい。
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性ポリマーとの組成比率(質量比率)は、99:1〜50:50が好ましく、90:10〜80:20がより好ましい。前記両親媒性ポリマーの比率が1質量%未満であると、均一なハニカム構造体が得られなくなることがある。一方、前記両親媒性ポリマーの比率が50質量%を超えると、膜の安定性、特に力学的な安定性が十分に得られなくなることがある。
【0069】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーであることも好ましい。また、前記疎水性ポリマー乃至前記両親媒性ポリマーとともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物によりハニカム膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことも好ましい。
【0070】
前記疎水性ポリマー乃至前記両親媒性ポリマーと併用される多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート又はこれらの変性物、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが使用できる。これらの多官能モノマーは耐擦傷性と柔軟性のバランスから、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーである場合には、前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの重合性基と反応しうる重合性の多官能モノマーを併用することも好ましい。
【0071】
前記エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
【0072】
前記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
前記アセトフェノン類としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンなどが挙げられる。
前記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
前記光ラジカル重合開始剤としては、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されている。
また、市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
前記光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対し、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。
なお、前記光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。外光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン、チオキサントンなどを挙げることができる。
【0073】
前記熱ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、有機ジアゾ化合物、などを用いることができる。
具体的には、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。前記ジアゾ化合物としては、例えば、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0074】
前記溶解する疎水性ポリマーと両親媒性ポリマーの両者を合わせたポリマー濃度は0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。前記ポリマー濃度が0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、細孔のサイズや配列が乱れてしまったりするなどの障害が生じることがあり、10質量%を超えると、十分なハニカム構造体が得られにくくなることがある。
【0075】
−黒色着色剤−
前記黒色着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、黒色顔料、黒色染料、などが好適に挙げられる。
前記黒色顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
前記黒色染料としては、例えば、C.I.リアクティブブラック3、C.I.リアクティブブラック4、C.I.リアクティブブラック7、C.I.リアクティブブラック11、C.I.リアクティブブラック12、C.I.リアクティブブラック17;C.I.ベーシックブラック2、C.I.ベーシックブラック8;C.I.ダイレクトブラック19、C.I.ダイレクトブラック22、C.I.ダイレクトブラック32、C.I.ダイレクトブラック38、C.I.ダイレクトブラック51、C.I.ダイレクトブラック56、C.I.ダイレクトブラック71、C.I.ダイレクトブラック74、C.I.ダイレクトブラック75、C.I.ダイレクトブラック77、C.I.ダイレクトブラック154、C.I.ダイレクトブラック168、C.I.ダイレクトブラック171;C.I.フードブラック1、C.I.フードブラック2などが挙げられる。
これら黒色着色剤の中でも、入手性及び耐久性の観点から、カーボンブラックが特に好ましい。
【0076】
前記黒色着色剤の前記微細空孔構造における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、微細空孔構造材料に対して0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、濃度不足となりコントラスト低下となることがあり、50質量%を超えると、コントラスト性能が飽和するだけでなく、膜質が劣化することがある。
【0077】
前記自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムにおけるハニカム構造とは、一定形状、一定サイズの空孔が連続かつ規則的に配列している構造を意味する。この規則配列は単層の場合には二次元的であり、複層の場合は三次元的にも規則性を有する。この規則性は二次元的には1つの空孔の周囲を複数(例えば、6つ)の空孔が取り囲むように配置され、三次元的には結晶構造の面心立方や6方晶のような構造を取って、最密充填されることが多いが、製造条件によってはこれら以外の規則性を示すこともある。
【0078】
前記ハニカム構造体を作製するに当たっては、ポリマー溶液上に微小な水滴粒子を形成させることが必須であることから、使用する溶媒としては非水溶性であることが好ましい。該非水溶性溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系有機溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルイソブチルケトン等の非水溶性ケトン類;ジエチルエーテル等のエーテル類;二硫化炭素、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒として使用しても構わない。
【0079】
前記微細空孔構造における空孔の直径は、100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、1μm以上20μm以下が特に好ましい。前記空孔の直径が100μmを超えると、各強度が低下し、延伸過程で破断しやすくなることがある。
ここで、前記微細空孔構造の孔径を小さくするためには、迅速乾燥を促すことが有効である。例えば、前記使用溶媒として低沸点溶媒を使用したり、支持体温度を上げたり、展開速度を早くして初期の展開液厚を薄くすることなどが有効である。
【0080】
前記微細空孔構造の厚みは、およそ孔径サイズ〜200μmであるが、展開するポリマー濃度を高めることにより、支持体側に空孔のない肉厚の層を設けることもできる。この場合、前記空孔のない肉厚の層の厚みは0〜500μmの範囲内で制御可能である。
【0081】
ここで、図1は、本発明の有機EL材料の一例の概略図を示し、支持体1上に設けられた陽極2及び陰極3の間に、黒色のハニカム状多孔質構造4が形成され、該ハニカム状多孔質構造の空孔5,5…内に、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8がこの順で積層されている。
【0082】
−用途−
本発明の有機EL材料は、発光のために不要な成分が要らず、耐久性に優れ、高精細であることから、例えば、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【0083】
(有機EL材料の製造方法)
本発明の有機EL材料の製造方法は、微細空孔構造作製工程を含んでなり、収容工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0084】
−微細空孔構造作製工程−
前記微細空孔構造作製工程は、有機溶媒と高分子化合物とを含み、好ましくは黒色着色剤を含む液を支持体上の陽極表面にキャストして膜を形成し、該膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒及び前記液滴を蒸発させて前記膜中に空孔を有するフィルムを作製する工程である。なお、前記支持体上に陽極を形成する方法としては、陽極の項で既に述べた通りである。
【0085】
前記キャスト法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スライド法、エクストリュージョン法、バー法、グラビア法、などが挙げられる。
【0086】
前記成膜を行う環境としては、相対湿度が50〜95%の範囲にあることが好ましい。前記相対湿度が50%未満であると、溶媒表面での水の凝結が不十分となることがあり、95%を超えると、環境のコントロールが難しく、均一な成膜を維持しにくくなることがある。
【0087】
また、前記成膜を行う環境として、相対湿度のほかに風量が一定の定常風を当てることが好ましい。膜との相対風速は0.1〜20m/sが好ましい。前記風速が0.1m/s未満であると、環境のコントロールが困難になることがあり、20m/sを超えると、溶媒表面の乱れを引き起こし、均一な膜が得にくくなることがある。
また、定常風を当てる方向は、支持体面に対して0〜90°のいずれの方向であっても製造可能だが、ハニカム構造体の均一性を高めるためには0〜60°が好ましい。
【0088】
前記成膜の際に送る湿度と流量を制御した気体としては、例えば、空気の他、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを用いることができるが、事前にフィルターを通過させるなどの除塵処置を施すことが好ましい。雰囲気中の塵は水蒸気の凝結核となって成膜に影響を及ぼすため、製造現場にも除塵設備等を設置することが好ましい。
【0089】
前記成膜を行う環境は、市販の定露点湿度発生装置等を用いるなどして厳密に管理することが好ましい。風量は送風装置等で一定に制御し、外気による影響を防ぐために閉鎖された空間を用いることが好ましい。また、室内は気体が層流にて置換されるよう気体の導入出路及び成膜環境を設定しておくことが好ましい。更に、成膜品質を管理するために温度、湿度、流量等の計測器によるモニターを行うことが好ましい。孔径及び膜厚を高精度で制御するためには、これらのパラメータ(特に湿度、流量)を厳密に管理することが必須である。
【0090】
ここで、前記微細空孔構造において、空孔が貫通していない場合には、陽極から正孔輸送層まへの正孔輸送ができなくなるため、該空孔を貫通させる必要がある。
この場合に、前記空孔を貫通させる方法としては、例えば、レーザ光を照射することにより、空孔底部と陽極との間に残存するフィルムを除去する方法などが挙げられる。
【0091】
−収容工程−
前記収容工程は、得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させ、必要に応じてその他の材料を収容させる工程である。
これらの材料を空孔内に収容させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように充填することが好ましく、例えば、溶融状態の正孔輸送層を構成する材料、発光層を構成する材料、及び電子輸送層を構成する材料を、この順で空孔内で層を形成するように充填する方法、ハニカム状多孔質構造を溶解しない溶媒で調製した溶液を空孔に充填する方法、空孔内にモノマーを充填した後、加熱又は光照射により重合させる方法、などが挙げられる。
ここで、前記正孔輸送層を構成する材料は、空孔内に導電性の層を蒸着した後に収容させてもよいし、該導電性の層を介さずに直接空孔内に収容させてもよい。
また、前記発光層を構成する材料は、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料を収容させる場合には、空孔内にモザイク状に収容させてもよいし、所定の領域毎に色分けしてストライプ状に充填してもよいし、所定領域内で各色着色剤の有する区画を定めて、これを規則的に繰り返すように収容させてもよい。
【0092】
−その他の工程−
前記その他の工程としては、例えば、前記ハニカム状多孔質構造上に陰極を形成する陰極形成工程、などが挙げられる。なお、陰極を形成する方法としても、陰極の項で既に述べた通りである。
【0093】
ここで、本発明に係る有機EL材料の製造工程図を図2に示す。好ましくは黒色着色剤を含む高分子溶液をキャスト工程10により支持体上の陽極表面にキャストし、膜(以下、「高分子膜」と称することがある)を形成する。その後に、結露乾燥工程11により、水を結露させ高分子膜中に液滴として含有させる。なお、結露乾燥工程11は、後に詳細に説明する。高分子溶液の溶媒及び液滴を蒸発させてハニカム構造フィルム12を得る。このハニカム構造フィルム12の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように充填する充填工程13を行い、有機EL材料14を得る。なお、高分子膜から有機EL材料14を得る間に照射工程15を行うこともできる。その場合に、照射光として紫外線や電子線を用いることができる。また、図示を省略しているが、空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように充填したフィルムを延伸する延伸工程を行うこともできる。
【0094】
ハニカム構造フィルム12の素材としては、上述したような非水溶性溶媒に溶解する高分子化合物(以下、「疎水性ポリマー化合物」と称することもある)を好ましく用いることができる。
また、前記疎水性ポリマーだけでもハニカム構造フィルム12を形成することができるが、両親媒性の素材を添加することが好ましい。両親媒性の素材としては、上述したものを適宜選択して用いることができる。
また、前記各高分子化合物を溶解させて高分子溶液を調製する溶媒としては、上述したものを適宜選択して用いることができる。
【0095】
次に、図3に、前記ハニカム構造フィルム12を製造するフィルム製造設備20の概略図を示す。前記高分子溶液21がタンク22に入れられている。タンク22には攪拌翼23が備えられ、攪拌翼23が回転することで、高分子溶液21を均一に混合している。高分子溶液21は、ポンプ24により流延ダイ25に送液される。流延ダイ25は、流延ベルト26上に備えられている。また、流延ベルト26は、回転ローラ27,28に掛け渡されている。回転ローラ27,28が図示しない駆動装置により回転することで、流延ベルト26は無端で走行する。また、回転ローラ27,28には温調機29が取り付けられている。回転ローラ27,28の温度を調整することで、流延ベルト26の温度調整を可能としている。また、流延ベルト26上の高分子膜40を剥ぎ取る際に、高分子膜40を支持する剥取ローラ30,高分子膜40をフィルムとして巻き取る巻取機31も備えられている。
【0096】
キャスト工程10では、流延ダイ25から流延ベルト26上に高分子溶液21がキャスト(流延)される。続いて、結露乾燥工程11が行われる。結露乾燥工程11は、図4A〜図4Dと合わせて説明する。図4Aに示すように流延ベルト26上に高分子膜40が形成される。なお、高分子膜40の表面温度(以下、「膜面温度」と称することがある)をTL(℃)とする。本発明において、膜面温度TLは0℃以上であることが好ましい。膜面温度TLが0℃未満であると、高分子膜40中の液滴が凝固して所望の孔が形成されないおそれが生じる。
【0097】
流延が行われる流延室内は、図3に示すように結露ゾーン32と乾燥ゾーン33とに区画されている。結露ゾーン32には送風機34が備えられている。送風機34から結露用に調整されている風35を流延ベルト26上の高分子膜40に送風する。送風機34は、図3に示されているように送風口34a,34c,34eと吸引口34b,34d,34fとからなる複数の送風ユニットから構成されていることが好ましい。これにより、高分子膜40の結露条件を調整することが容易となる。なお、図3では、3ユニットから構成されているものを示しているが、本発明においては図示されている形態に限定されるものではない。
【0098】
乾燥ゾーン33には、乾燥機36が設けられている。乾燥機36から高分子膜40に乾燥風37を送風する。乾燥機36も、図3に示されているように送風口36a,36c,36e,36gと吸引口36b,36d,36f,36hとからなる複数の送風ユニットから構成されていることが好ましい。これにより、高分子膜40の乾燥条件を調整することが容易となる。なお、図3では、4ユニットから構成されているものを示しているが、本発明においては図示されている形態に限定されるものではない。
【0099】
温調機29を用いて回転ローラ27,28を介して流延ベルト26の温度調整を行うことがより好ましい。温度調整の方法としては、回転ローラ27,28の内部に液流路を設け、その液流路に伝熱媒体を送液することで調整する方法などが挙げられる。温度の調整は、下限値を流延ベルト26の温度を0℃以上とすることが好ましい。また、上限値は高分子溶液21の溶媒沸点以下とすることが好ましく、より好ましくは(溶媒沸点−3℃)とすることである。これにより、結露した水分が凝固することも無く、また高分子溶液21の溶媒が急激に蒸発することが抑制されるため、形状に優れるハニカム構造フィルム12を得ることができる。更に、温度調整は、高分子膜40の幅方向にわたって、温度分布を±3℃以内とすることにより、膜面温度の分布も±3℃以内となる。高分子膜40の幅方向の温度分布を減少させることにより、ハニカム構造フィルム12の孔の形成に異方性が生じることが抑制されるので、商品価値が向上する。
【0100】
また、流延ベルト26の搬送方向を水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。搬送方向を調整することにより、図4A〜Dに示すよう液滴44の形態を調整することができる。液滴44の形態を調整することにより、孔の形態を調整することが可能となる。
【0101】
送風機34から風35が送風されている。風35の露点TD1(℃)は、結露ゾーン32を通過する高分子膜40の表面温度TL(℃)に対して0℃≦(TD1−TL)℃が好ましく、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃がより好ましく、5℃以上60℃以下が更に好ましく、10℃以上40℃以下が特に好ましい。前記(TD1−TL)℃が0℃未満であると、結露が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、結露と乾燥とが急峻となり、孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。また、風35の温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5℃以上100℃以下が好ましい。前記風の温度が5℃未満であると、液特に水の蒸発が生じ難く、形状が良好なハニカム構造フィルム12を得ることができないおそれがある。また、100℃を超えると、高分子膜40内に液滴44が生じる前に、水蒸気として揮発してしまうおそれがある。
【0102】
図4Aに示すように結露ゾーン32で風35中の水分(モデル的に図示している)43は、高分子膜40上で結露して液滴44となる。そして、図4Bに示すように液滴44を核として水分43が結露して液滴44を成長させる。図4Cに示すように乾燥ゾーン33で乾燥風37が高分子膜40に送風されると、有機溶媒42が高分子膜40より揮発する。なお、この際にも液滴44からも水分が揮発するが、有機溶媒42の揮発速度の方が速い。そのため、液滴44は、有機溶媒42の揮発に伴い表面張力により略均一の形態となる。更に、乾燥が進行すると図4Dに示すように高分子膜40の液滴44から水分が水蒸気48として揮発する。高分子膜40から液滴44が蒸発すると、液滴44を形成していた箇所が孔47となり、図5に示すようなハニカム構造フィルム12が得られる。本発明においてハニカム構造フィルム12の形態は特に限定されるものではないが、具体的には、隣接する孔47の距離L2は、それらの中心間距離で0.05μm以上100μm以下に制御することができる。
【0103】
風35の送風向きは、高分子膜40の移動方向と平行流(並流)とする。風を向流として送風すると、高分子膜40の膜面に乱れが生じて、液滴の成長が阻害されるおそれがある。また、風35の送風速度は、高分子膜40の移動速度との相対速度が0.1m/s以上20m/s以下が好ましく、0.5m/s以上15m/s以下がより好ましく、2m/s以上10m/s以下が更に好ましい。前記送風速度が0.1m/s未満であると、液滴44が高分子膜40中で充分に成長しないまま高分子膜40が乾燥ゾーン33に搬送されるおそれがある。また、20m/sを超えると、高分子膜40表面に乱れが生じたり、結露が充分に進行しなかったりするおそれがある。
【0104】
高分子膜40が結露ゾーン32を通過する時間は0.1秒以上100秒以下とすることが好ましい。前記通過時間が0.1秒未満であると、液滴44が充分成長しないまま形成されるため所望の孔を形成することが困難となることがあり、100秒を超えると、液滴44のサイズが大きくなり過ぎハニカム構造のフィルムを得られないおそれが生じる。
【0105】
乾燥ゾーン33で高分子膜40を乾燥する乾燥風37の送風速度は、0.1m/s以上20m/s以上が好ましく、0.5m/s以上15m/s以下がより好ましく、2m/s以上10m/s以下が更に好ましい。前記送風速度が0.1m/s未満であると、液滴44からの水分の蒸発が充分に進行しないおそれがあり、生産性にも劣ることがあり、20m/sを超えると、液滴44から水分の蒸発が急激に生じて、形成される孔37の形態が乱れるおそれがある。
【0106】
乾燥風37の露点をTD2(℃)とする場合に、膜面温度TL(℃)との関係を(TL−TD2)℃≧1℃とすることが好ましい。これにより、乾燥ゾーン33で高分子膜40の液滴44の成長を停止させて、液滴を構成する水分を水蒸気48として揮発させることが可能となる。
【0107】
送風機34,37からの風の送風は、2Dノズルで送風する方法以外に、減圧乾燥法により乾燥することも可能である。減圧乾燥を行うことで、有機溶媒42と液滴44の水分43との蒸発速度を調整することが可能となる。これを調整することで、高分子膜40中に液滴44を形成し、有機溶媒42を蒸発させつつ液滴44を蒸発させ、前記液滴が設けられている位置に孔47を形成する本発明における孔の大きさ、形状などを変更することができる。
【0108】
また、減圧乾燥法により乾燥する方法や、膜面から3〜20mm程度離れた位置に、膜面より冷却され表面に溝を有する凝縮器を設けて、凝縮器の表面で水蒸気(揮発有機溶媒も含む)を凝縮させて乾燥させる方法も適用することができる。前記いずれかの乾燥方法を適用することで、高分子膜40の膜面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
【0109】
また、送風機34、乾燥機36の送風ユニットを複数用いたり、複数のゾーンに区画したりすることにより、異なる露点条件を設定したり、異なる乾燥温度条件を設定したりすることができる。これら条件を選択することで、孔47の寸法制御性の向上や孔均一性の向上を図ることができる。なお、送風ユニットやゾーンの数は特に限定されるものではないが、フィルムの品質と設備のコストの点から最適な組み合わせを決定する。
【0110】
膜面温度TL(℃)と結露ゾーン又は乾燥ゾーンの露点温度TDn(℃)(nは、nゾーン番号を意味する)との関係を0℃≦|TDn−TL|℃≦80℃とすることが好ましい。差を80℃以下とすることにより、有機溶媒及び水分の少なくともいずれかの急激な揮発を抑制でき、所望の形態のハニカム構造フィルム12を得ることができる。また、高分子膜40に不純物が混入すると、ハニカム構造の形成を阻害する原因となる。そのため、送風口34a,34c,34e,36a,36c,36e,36gの塵埃度がクラス1000以下とすることが好ましい。そこで、送風機34,乾燥機36が設置されているハウジング38に空調設備39を取り付け、ハウジング38内の空調を行うことが好ましい。これにより、高分子膜40中に不純物が混入するおそれが減少し、良好なハニカム構造フィルム12を得ることができる。
【0111】
乾燥が進行したハニカム構造フィルム12は、剥取ローラ30で支持しながら流延ベルト26から剥ぎ取られ、巻取機32により巻き取られる。なお、ハニカム構造フィルム12の搬送速度は、特に限定されるものではないが、0.1m/min以上60m/min以下であることが好ましい。前記搬送速度が0.1m/min未満であると、生産性に劣りコストの点から好ましくない。一方、60m/minを超えると、ハニカム構造フィルムを搬送する際に、過大な張力が付与され裂け、ハニカム構造乱れなどの不良の発生原因となる。以上の方法によりハニカム構造フィルム12を連続して製造することができる。
【0112】
図6に本発明に係る他の実施形態のフィルム製造設備60を示す。送出機61から支持体となるフィルム62が搬送される。フィルム62はバックアップローラ63に巻き掛けられながら搬送される。バックアップローラ63に対向してスライドコータ64が設けられている。また、スライドコータ64には減圧チャンバ65が設けられている。高分子溶液供給装置66から送液ポンプで送られてくる高分子溶液67が、スライドコータ64から押し出されて、支持体であるフィルム62上に塗布され、高分子膜68が形成される。
【0113】
スライドコータ64は、フィルム62の搬送方向の均一塗布性に優れており、かつ高速で高分子膜68の形成が可能であることから生産性においても高い塗布機であるといえる。また、支持体であるフィルム62の表面に凹凸がある場合でも、フィルム62がバックアップローラ63に巻き掛けられている際に平滑化されるので、均一な塗布性に優れている。更に、フィルム62に非接触で塗布を行うので、フィルム62の表面を傷つけることなく、均一塗布が可能である。
【0114】
フィルム62上に形成されている高分子膜68は、送風機69の風70により結露乾燥工程11が行われる。なお、結露乾燥工程11は前述した説明と同じ条件の箇所の説明は省略する。結露乾燥工程11を経た後にハニカム構造フィルム71は巻取ロール72に巻き取られる。また、フィルム62も巻取ロール73に巻き取られる。高分子膜68が形成されているフィルム62の搬送方向は、水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。また、フィルム62に高分子溶液66の有機溶媒を吸収しやすい性質の素材から形成されているものを用いることがより好ましい。それら素材は、有機溶媒を吸収するものであれば特に限定されるものではない。例えば、高分子溶液67の主溶媒に酢酸メチルを用いている際には、フィルムの素材にセルロースアシレートを用いることが好ましい。
【0115】
図7に、本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる他の実施形態のフィルム製造設備80を示す。なお、フィルム製造設備60と同じ箇所の説明は省略する。送出機81から支持体となるフィルム82が搬送される。フィルム82はバックアップローラ83に巻き掛けられながら搬送される。バックアップローラ83に対向して多層式スライドコータ84が設けられている。また、多層式スライドコータ84には減圧チャンバ85が設けられている。高分子溶液供給装置86から送液ポンプで送られてくる高分子溶液87が、多層式スライドコータ84から押し出されて、支持体であるフィルム82上に塗布され、高分子膜88が形成される。フィルム82上に形成されている高分子膜88は、送風機89の風90により結露乾燥工程11が行われる。結露乾燥工程11を経た後にハニカム構造フィルム91は巻取ロール92に巻き取られる。また、フィルム82も巻取ロール93に巻き取られる。
【0116】
多層からなる高分子溶液87をフィルム82上にキャスト(塗布)することにより、ハニカム構造フィルム91の厚み方向における形態、物性などを変更することが可能となる。
【0117】
図8に、本発明に係るフィルムの製造方法に用いられる他の実施形態のフィルム製造設備100を示す。なお、フィルム製造設備60と同じ箇所の説明は省略する。送出機101から支持体となるフィルム102が搬送される。フィルム102はバックアップローラ103に巻き掛けられながら搬送される。バックアップローラ103に対向してエクストリュージョンコータ104が設けられている。また、エクストリュージョンコータ104には減圧チャンバ105が設けられている。高分子溶液供給装置106から送液ポンプで送られてくる高分子溶液107が、エクストリュージョンコータ104から押し出されて、支持体であるフィルム102上に塗布され、高分子膜108が形成される。フィルム102上に形成されている高分子膜108は、送風機109の風110により結露乾燥工程11が行われる。結露乾燥工程11を経た後にハニカム構造フィルム111は巻取ロール112に巻き取られる。また、フィルム102も巻取ロール113に巻き取られる。
【0118】
図9に、本発明に係るフィルムを製造するフィルム製造設備120を示して説明する。ワイヤーバー塗布機121を用いて高分子溶液122をフィルム123に塗布する。一定速度で移動するフィルム123の移動方向に回転するワイヤーバー124は、その回転により1次側高分子溶液槽125から液貯留部分126に高分子溶液122を引きあげる。この液貯留部分126の高分子溶液122が、フィルム123にワイヤーバー124を介し接触することにより均一な厚さの高分子膜127が形成される。この高分子膜127を送風機128の風129により結露乾燥工程11を行うことで、ハニカム構造フィルム130を得ることができる。ワイヤーバー124を用いたハニカム構造フィルム130の製造方法は、液貯留部分126が高分子溶液122とフィルム123との接触部に空気が混入しないようにするので、高分子膜127に気泡が混入しにくくなるという利点がある。
【0119】
支持体にフィルム62,82,102,123を用いた際には、ハニカム構造フィルム71,91,111,130とを一体のフィルムとして巻き取り、有機EL材料14のベースフィルムとして用いることもできる。
【0120】
図10に、本発明に係るフィルムを製造する製造設備140を示す。フィルム141が圧胴142に巻き掛けられながら搬送される。圧胴142に対向して版胴143が配置されている。版胴143の表面には所望のパターンが形成されている。高分子溶液槽144に入れられている高分子溶液145は版胴143が回転することにより、その凹部に溜まる。ドクターブレード146により過剰な高分子溶液145がかきとられる。その後に圧胴142に巻きかかって走行しているフィルム141上に高分子溶液145が塗布されて高分子膜147が形成される。
【0121】
送風機148により高分子膜147の結露乾燥工程11が行われる。送風機148から送風される風149は、フィルム141の搬送方向と同方向の平行流とする。高分子膜147は、結露乾燥工程11を経ることによりハニカム構造体150が形成される。フィルム141は、所望のパターンでハニカム構造体150が形成されているハニカム構造体形成フィルム151となる。
【0122】
本発明の有機EL材料の製造方法に従って得られた本発明の有機EL材料は、初めから所望の支持体上に製造することでそのまま使用してもよいし、エタノール等の適当な溶媒に浸してから製造時の支持体より剥離した後に所望の基体上に設置して使用してもよい。なお、剥離して使用する場合には、新たな基体との密着性を上げる目的で材料及び所望の基体の材質に合ったエポキシ樹脂、シランカップリング剤等の接着剤を使用してもよい。
【実施例】
【0123】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0124】
(実施例1)
支持体としてのPEN(ポリエチレンナフタレート)基板の上に、米国特許出願公開第2005/0112378号明細書に記載の方法で有機、無機それぞれ5層を積層したバリア層を設置し、その上にマスクを用いて100μm幅の酸化インジウム錫(ITO)パターニングを行うことにより、陽極を形成した。次いで、該基板上に、微細空孔構造材料としての、重量平均分子量45,000のポリスチレンと、重量平均分子量50,000の下記構造式で表される両親媒性ポリマーと、を質量比で10:1の割合で混合した塩化メチレン溶液(ポリマー濃度として0.1質量%)0.5mLに、黒色着色剤としてのカーボンブラック(三菱化学(株)製、三菱#2770B)を微細空孔構造材料に対して2質量%となるように添加し、塗布液を調製した。なお、前記PEN基板のガラス転移温度(Tg)は、示差熱天秤(Rigaku社製)により測定したところ、120℃であった。また、前記PEN基板の水蒸気透過性は、MOCON法により測定したところ、1.0×10−3g/m2・24hであった。
次いで、外気の影響を受けない閉鎖空間にて2℃に保温したHDD用ガラス基板上に全量展開し、相対湿度70%の恒湿空気を毎分2Lの定常流量で基板面に対して45°の方向から吹き付け、塩化メチレンを蒸発させることによって、均一ハニカム構造体を得た。なお、恒湿空気は、市販の除塵エアーフィルタ(ろ過度0.3μm)を設置した日立工機株式会社製のコンプレッサSC−820にヤマト科学株式会社製の湿度発生装置を接続して供給した。また、吹き付け部の空気の流速を実測したところ、0.3m/sであった。
【0125】
【化1】
【0126】
得られた膜の構造を、電解放出走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製)で観察したところ、孔径10μmの空孔がヘキサゴナル状に規則配列したハニカム構造体が確認できた。空孔は膜の表面から裏面へ単一層を形成しており、膜の上下は貫通している構造であった。空孔はキャストした周辺の一部を除き、ほぼ全面にわたって分布しており、きれいな球形をしていた。
【0127】
次に、得られた膜の空孔内に、インクジェット用ノズルから、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料を、この順で吐出させることにより充填して、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層された積層体を調製した後、ITOと垂直方向にマスクを用いて、陰極としてのフッ化リチウム(LiF)及びアルミニウム(Al)層を100μm幅で形成し、実施例1の有機EL材料を作製した。
ここで、前記正孔輸送層を構成する材料としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジンを、発光層を構成する材料としては、赤色発光材料として、オクタエチルポルフィイン錯体、緑色発光材料として、トリス(フェニルピリジン)Ir錯体、青色発光材料として、ビス[(4,6−フルオロフェニル)−ピリジネート−N,C2’]ピコリネート錯体を、電子輸送層を構成する材料としては、米国特許出願公開第2005/112378号明細書実施例2に記載の化合物をそれぞれ用いた。また、前記各色発光材料は、モザイク状に充填した。
前記有機EL材料を発光させたところ、フォトレジスト等の煩雑な工程を用いなくても極めて良好な発光が得られた。
【0128】
(実施例2)
正孔輸送材料として、トリフェニルジアミン(TPD)を、発光材料として、アルミキノリノール錯体(Alq3)を用い、真空チャンバで、蒸着法により積層体を調製し、かつ、陰極形成後、エポキシ材料を用いてガラス板で、全体を封止した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の有機EL材料を作製した。
前記有機EL材料を発光させたところ、実施例1と同様に、フォトレジスト等の煩雑な工程を用いなくても良好な発光が認められた。
【0129】
(実施例3)
実施例1において、発色層を構成する材料として、ポリビニルカルバゾール(分子量63,000、アルドリッチ製)及びトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体を40:1で用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の有機EL材料を作製した。
前記有機EL材料を発光させたところ、実施例1と同様に、フォトレジスト等の煩雑な工程を用いなくても良好な発光が認められた。
【0130】
(実施例4)
実施例1において、PEN基板の上に、有機、無機それぞれ2層を積層し、かつ、該PEN基板として水蒸気透過性5×10−2g/m2・24hの基板を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の有機EL材料を作製した。
【0131】
(実施例5)
実施例1において、支持体としてPEN基板の代わりにPET(ポリエチレンテレフタレート)基板を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の有機EL材料を作製した。なお、前記PET基板のガラス転移温度(Tg)は、示差熱天秤(Rigaku社製)により測定したところ、85℃であった。また、前記PET基板の水蒸気透過性は、MOCON法により測定したところ、5×10−1g/m2・24hであった。
【0132】
(実施例6)
実施例1において、重量平均分子量45,000のポリスチレンと、重量平均分子量50,000の下記構造式で表される両親媒性ポリマーとを質量比で95:5の割合で混合した塩化メチレン溶液(ポリマー濃度として0.2質量%)0.5mLに、黒色着色剤を添加し、塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の有機EL材料を作製した。
【0133】
【化2】
【0134】
(実施例7)
実施例1において、重量平均分子量45,000のポリスチレンのみを溶解した塩化メチレン溶液(ポリマー濃度として0.2質量%)0.5mLに、黒色着色剤を添加し、塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の有機EL材料を作製した。
【0135】
(実施例8)
実施例1において、下記構造式で表される両親媒性ポリマーのみを溶解した塩化メチレン溶液(ポリマー濃度として0.2質量%)0.5mLに、黒色着色剤を添加し、塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の有機EL材料を作製した。
【0136】
【化3】
【0137】
(比較例1)
特開2005−240011号公報実施例1に記載の方法に従って、比較例1の有機EL材料を作製した。
【0138】
(比較例2)
米国特許出願公開第2005/112378号明細書比較例2に記載の方法に従って、比較例2の有機EL材料を作製した。
【0139】
<評価>
得られた実施例1〜8及び比較例1、2の有機EL材料を用いて、以下の評価を行った。
【0140】
(1)耐久性の評価
得られた有機EL材料の、作製直後、及び60℃、90%RH下にて14日間放置後の非発光部の表面積を測定し、有機EL材料全体の面積から該非発光部の面積を減じた値を発光部の面積として算出した後、(60℃、90%RH下にて14日間放置後の発光部面積)/(作製直後の発光部面積)×100により求めた値(%)を耐久性の指標として評価した。この値は大きいほど耐久性が高いことを意味する。
なお、前記非発光部は、目視により、発光が全く見られない箇所を非発光部とすることにより測定した。結果を表1に示す。
【0141】
(2)精細性の評価
得られた有機EL材料を60℃、90%RH下にて14日間放置した後、電子顕微鏡((株)日立製作所製)を用い、精細性の評価を行ったところ、実施例1〜8の有機EL材料では、従来公知のリソグラフィーを用いた場合と同等の精細性が得られた。
【0142】
【表1】
表1の結果より、実施例1〜8の有機EL材料では、比較例の有機EL材料に比して、(60℃、90%RH下にて14日間放置後の発光部面積)/(作製直後の発光部面積)×100により求めた値(%)が大きく、耐久性が高いことが判った。特に、実施例1〜3の有機EL材料では、(60℃、90%RH下にて14日間放置後の発光部面積)/(作製直後の発光部面積)×100により求めた値(%)が90%であり、該耐久性が極めて高いことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の有機EL材料は、発光のために不要な成分が要らず、耐久性に優れ、高精細であることから、例えば、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
本発明の有機EL材料の製造方法は、フォトリソグラフィ等を使って隔壁層を設けることなく、簡便な方法により、有機EL材料を製造できることから、本発明の有機EL材料の製造に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】図1は、本発明の有機EL材料の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明に係る有機EL材料の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図3】図3は、本発明に係る有機EL材料の製造方法の一例に用いられるフィルム製造設備の概略図である。
【図4A】図4Aは、本発明の有機EL材料の形成方法の一例を示し、流延ベルト上に高分子膜が形成された状態を示す概略図である。
【図4B】図4Bは、本発明の有機EL材料の形成方法の一例を示し、液滴が結露して成長する状態を示す概略図である。
【図4C】図4Cは、本発明の有機EL材料の形成方法の一例を示し、乾燥により、有機溶媒が高分子膜から揮発する状態を示す概略図である。
【図4D】図4Dは、本発明の有機EL材料の形成方法の一例を示し、乾燥により、高分子膜の液滴から水分が揮発する状態を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明に係る有機EL材料の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図7】図7は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図8】図8は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図9】図9は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【図10】図10は、本発明に係る有機EL材料の製造方法に用いられる更に他の一例を示すフィルム製造設備の概略図である。
【符号の説明】
【0145】
10 キャスト工程
11 結露乾燥工程
12 ハニカム構造フィルム
13 充填工程
14 有機EL材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有してなることを特徴とする有機EL材料。
【請求項2】
微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造である請求項1に記載の有機EL材料。
【請求項3】
微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる請求項1から2のいずれかに記載の有機EL材料。
【請求項4】
微細空孔構造材料が、疎水性ポリマー及び両親媒性ポリマーから選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載の有機EL材料。
【請求項5】
微細空孔構造材料が、黒色着色剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載の有機EL材料。
【請求項6】
支持体が、ガラス転移温度(Tg)120℃以上のフィルムである請求項1から5のいずれかに記載の有機EL材料。
【請求項7】
フィルムの水蒸気透過性が、1×10−3g/m2・24h以上である請求項6に記載の有機EL材料。
【請求項8】
支持体上の陽極表面に、有機溶媒と高分子化合物とを含む塗布液を塗布し、得られた膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒及び前記液滴を蒸発させて前記膜中に空孔を有する微細空孔構造を作製する微細空孔構造作製工程と、
得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させる収容工程とを含むことを特徴とする有機EL材料の製造方法。
【請求項9】
塗布液が、黒色着色剤を含む請求項8に記載の有機EL材料の製造方法。
【請求項1】
支持体上の陽極及び陰極の間に、微細空孔構造を有し、該微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に有してなることを特徴とする有機EL材料。
【請求項2】
微細空孔構造が、自己組織化により作製したハニカム状多孔質構造である請求項1に記載の有機EL材料。
【請求項3】
微細空孔構造における少なくとも1つの空孔内に、赤色発光材料、緑色発光材料、及び青色発光材料のいずれかを有してなる請求項1から2のいずれかに記載の有機EL材料。
【請求項4】
微細空孔構造材料が、疎水性ポリマー及び両親媒性ポリマーから選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載の有機EL材料。
【請求項5】
微細空孔構造材料が、黒色着色剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載の有機EL材料。
【請求項6】
支持体が、ガラス転移温度(Tg)120℃以上のフィルムである請求項1から5のいずれかに記載の有機EL材料。
【請求項7】
フィルムの水蒸気透過性が、1×10−3g/m2・24h以上である請求項6に記載の有機EL材料。
【請求項8】
支持体上の陽極表面に、有機溶媒と高分子化合物とを含む塗布液を塗布し、得られた膜中に液滴を形成し、前記有機溶媒及び前記液滴を蒸発させて前記膜中に空孔を有する微細空孔構造を作製する微細空孔構造作製工程と、
得られた微細空孔構造の空孔内に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を、この順に積層するように収容させる収容工程とを含むことを特徴とする有機EL材料の製造方法。
【請求項9】
塗布液が、黒色着色剤を含む請求項8に記載の有機EL材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−109524(P2007−109524A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299541(P2005−299541)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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