説明

有機EL素子及びその製造方法

【課題】本発明は、コントラストを改善することが可能な有機EL素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】導電層14と、導電層14の中央領域の直上に形成される反射電極層15と、導電層14の中央領域を取り囲む周辺領域の直上に形成される光吸収絶縁膜16と、反射電極層15上に形成される有機EL層17と、有機EL層17上から光吸収絶縁膜16上にかけて形成される光透過性電極層18と、を備えたことを特徴とする有機EL素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(Electroluminescence)素子の開発が行われている。有機EL素子は、ガラス基板上に金属電極と、有機発光層を含む有機EL層と、透明電極とが積層されて構成されている。かかる有機EL素子は、有機発光層において発光した光を金属電極において反射させて外部に取り出すことによって、有機EL素子の輝度を向上させている。
【0003】
なお、有機EL層の形成後に、金属電極の一部を酸化させる技術が開示されている(下記、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−144879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、反射機能を有する金属電極においては、外光をも反射することになる。例えば、発光領域の周辺に位置する金属表面において外光が多く反射すると、有機EL素子の外部に、発光層が発光した光以外に反射した多くの外光が取り出されるので、コントラストが低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであって、コントラストを改善することが可能な有機EL素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の有機EL素子は、導電層と、前記導電層の中央領域の直上に形成される反射電極層と、前記導電層の中央領域を取り囲む周辺領域の直上に形成される光吸収絶縁膜と、前記反射電極層上に形成される有機EL層と、前記有機EL層上から前記光吸収絶縁膜上にかけて形成される光透過性電極層と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の有機EL素子は、前記導電層と間を空けて併設されるコンタクト電極層を備え、前記光吸収絶縁膜は、前記導電層の端部上から前記コンタクト電極層の端部上にかけて形成されることを特徴する。
【0008】
また、本発明の有機EL素子は、前記光吸収絶縁膜の直上に形成される前記光透過性電極層の高さ位置が、前記有機EL層の直上に形成される前記光透過性電極層の高さ位置よりも低いことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の有機EL素子は、前記光吸収絶縁膜が、前記反射電極層よりも光反射率の小さい材料からなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の有機EL素子は、前記光吸収絶縁膜は、酸化銀からなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の有機EL素子の製造方法は、導電層上に反射電極層が形成された基板を準備する工程と、前記反射電極層の上面の中央領域を取り囲む周辺領域に対して酸化処理を施し、前記反射電極層の一部に光吸収絶縁膜を形成する工程と、前記反射電極層の中央領域の直上に有機EL層を形成する工程と、前記有機EL層上から前記光吸収絶縁膜上にかけて光透過性電極層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の有機EL素子の製造方法は、前記反射電極層の中央領域を被覆し、且つ前記反射電極層の周辺領域を露出するように前記反射電極層上にフォトレジストを形成する工程と、を備え、前記反射電極層の周辺領域を露出した状態で、前記反射電極層の周辺領域を酸化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コントラストを改善することができる有機EL素子及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子を含む有機ELディスプレイについて、図面を参照しつつ説明する。図1は、有機ELディスプレイの平面図である。また、図2(A)は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の拡大断面図であって、図2(B)は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子を構成する光吸収絶縁膜の平面図である。
【0015】
有機ELディスプレイ1は、図1に示すように、テレビ等の家電機器、携帯電話又はコンピュータ機器等の電子機器に用いるものであり、有機ELパネル2と、有機ELパネル2に実装する駆動IC3とを含んだものである。かかる有機ELパネル2は、平板状の素子基板4と、素子基板4上に形成される複数の画素5とを含んだものである。
【0016】
素子基板4は、例えばガラス又はプラスチックから成り、素子基板4の中央に位置する表示領域D1には、マトリックス状に配列された複数の画素5が形成されている。また、素子基板4の端部であって、表示領域D1の一端に位置する非表示領域D2には、駆動IC3が実装されている。
【0017】
かかる画素5は、図2(A)、図2(B)に示すように、発光領域R1とコンタクト領域R2とを含んで構成されており、発光領域R1に発光可能な有機EL素子6が設けられている。なお、各画素5は、隔壁7によって仕切られている。また、画素5は、有機EL素子6を構成する有機材料を選択することによって、発光する色を決定することができる。
【0018】
また、素子基板4上には、素子基板4に対して対向するように配置された封止基板8が形成されている。封止基板8は透明の基板から成り、例えばガラス又はプラスチックを用いることができる。さらに、素子基板4の表示領域D1には、表示領域D1を被覆するようにシール材9が形成されており、素子基板4と隔壁7と封止基板8とシール材9によって複数の画素5を密封している。なお、シール材9は、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂又はシリコン樹脂等の光硬化性又は熱硬化性の樹脂を用いることができる。好ましくは、紫外線の照射により硬化する光硬化性のエポキシ樹脂を採用する。
【0019】
次に、図2(A)に示すように、素子基板4と封止基板8との間に形成される各種層について説明する。素子基板4上には、TFT又は電気配線が形成されている回路層10と、回路層10上に回路層10を外部と電気的に絶縁するための窒化珪素等から成る絶縁層11が形成されている。かかる回路層10の一部と、後述するコンタクト電極層12とが電気的に接続されている。また、絶縁層11上には、回路層10や絶縁層11の凹凸を低減するための平坦化膜13が形成されている。回路層10は、パターニングされた構造物であるため、その表面が凹凸に形成され、回路層10上を平坦にしないと、回路層10上に有機EL素子6を平らに設けることが困難となる。その結果、有機EL素子6を構成する各層の厚みを制御することが難しく、有機EL素子6が所望の色の光を発することができなくなる。これは、有機EL素子6が発する光の色が、有機EL素子6を構成する各層の厚みに依存するためである。そのため、回路層10上に、平坦化膜13を形成することで、回路層10上に形成する有機EL素子6の厚みを制御しやすくしている。かかる平坦化膜13は、例えばノボラック樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はシリコン樹脂等の絶縁性を有する有機材料を用いることができる。なお、平坦化膜13の厚みは、例えば2μm以上5μm以下に設定されている。
【0020】
また、平坦化膜13には、平坦化膜13を貫通するコンタクトホールSが形成されている。かかるコンタクトホールSは、上部よりも下部が幅狭に形成されている。さらにコンタクトホールSの内周面から平坦化膜13の上面にかけて、例えば銅又はアルミニウム等の導電材料から成るコンタクト電極層12が形成されている。
【0021】
さらに、平坦化膜13上には、有機EL素子6が形成されている。有機EL素子6は、導電層14と、反射電極層15と、光吸収絶縁膜16と、有機EL層17と、光透過性電極層18とを含んで構成されている。
【0022】
また、有機EL素子6を被覆するように、表示領域D1上には保護層19が形成されている。保護層19は、有機EL素子6を封止し、有機EL素子を水分又は外気から保護するものであって、光透過性の機能を有し、例えば窒化珪素、酸化珪素又は窒化炭化珪素等の無機材料から成る。なお、保護層19の厚みは、例えば100nm以上5μm以下に設定されている。
【0023】
次に、図3に示すように、有機EL素子6を構成する各層について説明する。導電層14は、平坦化膜13上に形成され、コンタクト電極層12と間を空けて併設されている。また、隣接する導電層14同士が直接接続されており、導電層14は、共通電極として機能する。かかる導電層14は、例えばアルミニウム、銀又は銅等の導電率の高い材料、或いはそれらを主成分とする合金等から成る。なお、導電層14の厚みは、例えば50nm以上500nm以下に設定されている。
【0024】
反射電極層15は、導電層14の中央領域の直上に形成される。ここで、中央領域とは、導電層14と光透過性電極層18に挟まれた有機EL層17が発光する領域である発光領域R1をさす。反射電極層15は、有機EL層17が発する光の多くを反射することができる材料から構成され、例えば銀、金又はクロム等の金属材料を用いて形成される。なお、反射電極層15は、酸化していない状態においては光反射率が高く、酸化した状態においては光反射率の低い材料からなる。
【0025】
光吸収絶縁膜16は、有機ELディスプレイ1内に入射する外光を反射しにくい機能を備えており、反射電極層15よりも光反射率の小さい材料からなる。
【0026】
ここで、光反射率について説明する。光反射率Rとは、ある面に垂直に入射する光束φと反射してきた光束φrの比であり、次式で定義する。
【0027】


【0028】
また、光反射率は、例えば一般的な分光光度計を用いて測定することができる。光反射率を測定する場合、測定領域に対し、ある波長範囲の光を垂直に入射させ、反射してきた光の強度を測定し、上式から波長範囲における反射率を求める。測定時には、反射率が既知であるサンプルを用いて補正するようにすれば、異なるサンプルの測定結果を比較することが可能となる。
【0029】
光吸収絶縁膜16は、導電層14の中央領域を取り囲む周辺領域の直上に形成される。周辺領域R3とは、図2(B)に示すように、平面視して有機EL層17を取り囲む領域のことをいう。すなわち、光吸収絶縁膜16は、発光領域R1とコンタクト領域R2を除いた領域に設けられる。そのため、光吸収絶縁膜16の一部は、導電層14とコンタクト電極層12との間に介在して設けられている。具体的には、断面視して導電層14の端部上からコンタクト電極層12の端部上にかけて形成されている。その結果、光吸収絶縁膜16は、光透過性電極層18が導電層14と短絡するのを防止している。
【0030】
また、光吸収絶縁膜16が周辺領域R3に形成されていることで、発光領域R1の周辺に位置する金属表面において外光が多く反射するのを抑制することができる。そのため、有機EL素子の外部に反射した外光を取り出されにくくすることができ、ひいては有機ELディスプレイのコントラストを向上させることができる。
【0031】
さらに、光吸収絶縁膜16は、電流が流れにくい性質を有し、且つ反射率が低い性質を有する絶縁材料であって、例えば酸化銀、酸化金、酸化銅又は酸化クロム等を用いて形成される。光吸収絶縁膜16の材料に、反射電極層15を酸化させた材料を用いることが出来る場合、光吸収絶縁膜16と反射電極層15とを一続きに連続して設けることができる。例えば、反射電極層15が銀から成る場合、光吸収絶縁膜16を酸化銀とすることができる。
【0032】
特に、光吸収絶縁膜16として、可視光線の反射率が金属の中でも優れている銀を酸化させた酸化銀を用いることが好ましい。光吸収絶縁膜16は、反射電極層15と一続きに連続して設けることができ、反射率の優れた銀を反射電極層15に用いることで、発光領域においては有機EL層17の発する光が、銀から成る反射電極層15にて反射し、外部量子効率を向上させることができる。
【0033】
仮に、光吸収絶縁膜16に代えて、導電層とコンタクト電極層との間に、例えば、酸化珪素等の無機材料、或いはエポキシ樹脂等の有機材料から成る絶縁構造物を設けた場合、絶縁構造物の端部とその下面との間に隙間が生じていることがある。このような隙間が存在すると、該隙間に起因して導通不良が発生し、画素に滅点不良が発生することがある。本実施形態によれば、光吸収絶縁膜16が反射電極層15と一続きに連続した層として形成されるため、別途絶縁構造物を設ける必要が無く、絶縁構造物の隙間に起因して、画素の滅点不良が発生することがない。
【0034】
有機EL層の上下に配置される下部電極層の端部と上部電極層の端部との間に、両層の短絡を防止する絶縁構造物を設け、両層の短絡を防止するものに比べて、本実施形態のように、光吸収絶縁膜16の厚みを薄くすることができ、ひいては有機ELパネルの厚みを薄くすることができる。
【0035】
有機EL層17は、反射電極層15上に形成される。有機EL層17は、図3に示すように、複数の層から成り、下層から正孔注入層17a、正孔輸送層17b、有機発光層17c、電子輸送層17d及び電子注入層17eを含んで構成されている。
【0036】
正孔注入層17aは、例えばα‐NPD、TPD、酸化ニッケル、酸化チタン、フッ化炭素又はCuPc等から成る。正孔注入層17aの厚みは、例えば5nm以上40nm以下に設定されている。
【0037】
また、正孔輸送層17bは、例えばN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等 の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、 ポリアリールアルカン、ブタジエン、および4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等のスターバースト芳香族又は芳香族アミン化合物を用いることができる。また、正孔輸送層17bは、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン又はそれにシアノ基などが結合した誘導体等の複素環化合物を用いることができる。正孔輸送層17bの厚みは、例えば10nm以上50nm以下に設定されている。
【0038】
また、有機発光層17cは、赤色の光を発する場合、例えばCBP、Alq又はSDPVBi等のホスト材料、あるいはこれらのホスト材料にDCJTB、クマリン、キナクリドン、フェナンスレン基を有するペリノン誘導体、オリゴチオフェン誘導体又はペリレン誘導体等のドーパント材料を含有したものを用いることができる。また、緑色の光を発する場合、例えばCBP、Alq又はSDPVBi等のホスト材料、あるいはこれらのホスト材料にスチリルアミン、ペルリン、ベンゼン環を有するシロール誘導体、フェナンスレン基を有するペリノン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ペリレン誘導体又はアゾメチン亜鉛錯体等のドーパント材料を含有したものを用いることができる。また、青色の光を発する場合、例えばCBP又はSDPVBi等のホスト材料、あるいはこれらのホスト材料にスチリルアミン、ペルリン、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジェン、トリフェニルアミン構造とビニル基が結合した化合物、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体又はベンゼン環を有するシロール誘導体等のドーパント材料を含有したものを用いることができる。なお、発光層17cの厚みは、例えば20nm以上40nm以下に設定されている。
【0039】
また、電子輸送層17dは、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、又は4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等 の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、 ポリアリールアルカン、ブタジエン、又は4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等のスターバースト芳香族やアミン化合物を用いることができる。電子輸送層17dの厚みは、例えば20nm以上60nm以下に設定されている。
【0040】
また、電子注入層17eは、例えばフッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化炭素等を用いることができる。電子注入層17eの厚みは、例えば0.5nm以上2nm以下に設定されている。
【0041】
光透過性電極層18は、有機EL層17上から光吸収絶縁膜16上にかけて形成される。光透過性電極層18は、有機EL層17から放出される光が透過することができる材料から構成され、例えばインジウム錫酸化膜(ITO)又は錫酸化膜や酸化亜鉛等の光透過性を有する導電材料を用いて形成される。また、光透過性電極層18は、例えばマグネシウム、銀、アルミニウム又はカルシウム等の材料を用いることができ、その厚みを30nm程度にすることによって、光透過性の電極とすることができる。その結果、有機EL層17から放出された光が、光透過性電極層を透過して、有機EL素子6から外部に出射される。
【0042】
また、光吸収絶縁膜16の直上に形成される光透過性電極層18の高さ位置は、有機EL層17の直上に形成される光透過性電極層18の高さ位置よりも低く設定されている。つまり、有機EL層17が形成されている発光領域R1は、有機EL層17の厚みが存在する。一方、有機EL層17が形成されていない発光領域R1の周囲の周辺領域R3は、有機EL層17の厚みが存在しない。そのため、光透過性電極層18の高さ位置が、発光領域R1上よりもと周辺領域R3上で低くなる。その結果、中央領域に比べて周辺領域において光透過性電極層18の高さ位置を低くし、周辺領域の有機EL素子6の近傍にて光を吸収するような構造物を配置しないことで、有機EL層17から上方に向けて発する光が構造物によって遮られず、有機EL素子6の外部に良好に出射される。
【0043】
また、光吸収絶縁膜16上には、画素5を取り囲むように隔壁7が形成されている。隔壁7は、隔壁7と光吸収絶縁膜16との間にその他の層を介在させることなく、光吸収絶縁膜16上に直接形成されることで、素子基板4と封止基板7との間の距離を短くすることができ、厚みの薄い有機ELパネル2にすることができる。また、隔壁7は、上部よりも下部が幅狭であって、例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の有機絶縁材料から成る。なお、隔壁7の厚みは、例えば2μm以上5μm以下に設定されている。
【0044】
上述したように本実施形態に係る有機EL素子6によれば、有機EL層17から発する光を反射電極層15にて上方に向けて反射させることで、効率よく輝度を向上させることができる。また、有機EL素子6の周囲に外光を多く吸収することができる光吸収絶縁膜16を設け、コントラストを向上させることができる。さらに、光透過性電極層18と導電層14との短絡を厚みが薄い光吸収絶縁膜16にて防止することができ、有機ELパネルの厚みを薄くすることができる。
【0045】
以下に、本発明の第1実施形態に係る有機ELディスプレイ1の製造方法について、図4から図7を用いて詳細に説明する。なお、図4から図7は、作製する有機ELディスプレイにおける一つの画素の断面図である。
【0046】
図4(A)に示すように、回路層10、絶縁層11及び平坦化膜13を上面に積層した素子基板4を準備する。なお、回路層10及び絶縁層11は、従来周知のCVD法、蒸着法又はスパッタリング法等の薄膜形成技術、エッチング法やフォトリソグラフィー法等の薄膜加工技術を用いて、所定パターンに形成される。また、平坦化膜13は、例えば従来周知のスピンコート法を用いて、絶縁層11上に形成する。
【0047】
次に、平坦化膜13上に露光マスクを用いて平坦化膜13を露光し、さらに現像、ベーキング処理を行い、図4(B)に示すように、回路層10の一部を露出させて、上部よりも下部が幅狭なコンタクトホールSを有する平坦化膜13を形成する。さらに、コンタクトホールSを形成した平坦化膜13上に、例えばアルミニウムから成る金属膜を形成する。そして、図4(C)に示すように、金属膜をパターニングして、導電層14及びコンタクト電極層12を形成する。
【0048】
次に、図5(A)に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、導電層14及びコンタクト電極層12を被覆するように銀から成る反射電極層15を形成する。そして、図5(B)に示すように、反射電極層15上にフォトレジストFを形成する。さらに、フォトレジストFに対して、フォトリソグラフィー法を用いて、周辺領域に対応する箇所を露出させる。そして、図5(C)に示すように露出した領域を酸化させ、光吸収絶縁膜16を形成する。酸化させる方法としては、例えば、大気中あるいは酸素雰囲気下において、低圧水銀ランプあるいはエキシマレーザーを用いて、紫外線を照射するという方法がある。例えば、露出した反射電極層15が膜厚100nmの銀からなる場合、波長が254nmの紫外線を出力1000J/cm以上3000J/cm以下程度照射することにより、波長550nmの光の反射率を99%から30%以下に低下させることができる。フォトリソグラフィー法を用いて紫外線を照射し光吸収絶縁膜16を形成する方法は、マスクを用いて紫外線を照射し光吸収絶縁膜16を形成する方法に比べて、より光吸収絶縁膜16を正確に形成することができる。
【0049】
まず、反射電極層15の表面上にマスクを対向配置すると、反射電極層15の表面とマスクとの間に大きな隙間が生じてしまい、マスクにて反射電極層15の表面を隙間無く被覆することができない。そして、その隙間に紫外線等が回り込むことによって、光吸収絶縁膜16を正確に形成することが出来ないため、フォトリソグラフィー法を用いて光吸収絶縁膜16を形成することが好ましい。
【0050】
そして、図6(A)に示すように、光吸収絶縁膜16を形成した後に、パターニングしたフォトレジストを削除する。このようにして、連続した一層から成る反射電極層15の一部を光吸収絶縁膜16とすることができ、別途光吸収絶縁膜16に対応する層を反射電極層15上に形成する必要が無く、製造工程を単純化することができ、有機ELパネルの厚みを薄くすることができる。また、有機EL層17を形成する前に、光吸収絶縁膜16を形成することができ、酸化処理の工程において有機EL層17が酸化されることがなく、ひいては有機EL素子の製品寿命を長くすることができる。
【0051】
次に、反射電極層15及び光吸収絶縁膜16上に、隔壁7となりうる有機絶縁材料を被着する。そして、かかる有機絶縁材料に対してフォトマスクを対向配置して、従来周知の薄膜形成技術及び薄膜加工技術を用いて、図6(B)に示すように、上部よりも下部が幅狭な隔壁7を形成する。かかる隔壁7は、各画素5を取り囲むように形成される。
【0052】
そして、図6(C)に示すように、発光領域R1上に、従来周知の蒸着マスクを用いる蒸着法を用いて有機EL層17を形成する。そして、従来周知の蒸着法を用いて、有機EL層17上からコンタクト電極層12の直上に位置する反射電極層15上にかけて、光透過性電極層18を形成する。そして、コンタクト電極層12と光透過性電極層18とを電気的に接続することができる。このようにして、有機EL素子6を形成することができる。
【0053】
さらに、図7(B)に示すように、有機EL素子6を被覆するように、従来周知の薄膜形成技術を用いて、保護層19を形成する。そして、有機EL素子が形成された素子基板4に対して、封止基板8を対向配置し、両基板をシール材9を介して接着する。なお、封止基板8をシール材9によって、素子基板4に固定する作業は、例えば窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス中や、高真空中で行うことによって、素子基板4と封止基板8との間に酸素や水分が含まれるのを抑制することができる。このようにして、有機ELパネル2を作製することができる。そして、有機ELパネル2の非表示領域D2上に駆動IC3を実装することで、有機ELディスプレイ1を作製することができる。
【0054】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0055】
以下に、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子を含む有機ELディスプレイについて、図面を参照しつつ説明する。図8(A)は、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の拡大断面図であって、図8(B)は、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子を構成する光吸収絶縁膜の平面図である。
【0056】
上述した本発明の第1実施形態に係る有機EL素子を含む有機ELディスプレイは、隔壁7を設け、導電層14を隣接する画素同士で共通電極として構成であって、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子を含む有機ELディスプレイには、隔壁7を無くして、光透過性電極層18を隣接する画素同士で共通電極とした構成である。
【0057】
第2実施形態に係る有機EL素子を含む有機ELディスプレイは、隔壁7を無くすことで、隔壁7が有る場合に比べて、発光領域R1を広くすることができる。その結果、有機ELディスプレイの輝度を向上させることができる。また、隔壁7を無くすことで、製造工程を単純化することができる。さらには、隔壁7を無くしたことで、有機ELパネルの厚みを更に薄くすることができ、有機ELディスプレイの薄型化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイの平面図である。
【図2】図2(A)は、本発明の第1実施形態に係る画素の断面図であって、図2(B)は、本発明の第1実施形態に係る画素の光吸収絶縁膜の平面図である。
【図3】有機EL素子を簡略化した断面図である。
【図4】図4(A),図4(B),図4(C)は、本発明の第1実施形態に係る有機ディスプレイの製造工程を説明する画素の断面図である。
【図5】図5(A),図5(B),図5(C)は、本発明の第1実施形態に係る有機ディスプレイの製造工程を説明する画素の断面図である。
【図6】図6(A),図6(B),図6(C)は、本発明の第1実施形態に係る有機ディスプレイの製造工程を説明する画素の断面図である。
【図7】図7(A),図7(B)は、本発明の第1実施形態に係る有機ディスプレイの製造工程を説明する画素の断面図である。
【図8】図8(A)は、本発明の第2実施形態に係る画素の断面図であって、図8(B)は、本発明の第2実施形態に係る画素の光吸収絶縁膜の平面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 有機ELディスプレイ
2 有機ELパネル
3 駆動IC
4 素子基板
5 画素
6 有機EL素子
7 隔壁
8 封止基板
9 シール材
10 回路層
11 絶縁層
12 コンタクト電極層
13 平坦化膜
14 導電層
15 反射電極層
16 光吸収絶縁膜
17 有機EL層
18 光透過性電極層
19 保護層
D1 表示領域
D2 非表示領域
R1 発光領域
R2 コンタクト領域
S コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層と、
前記導電層の中央領域の直上に形成される反射電極層と、
前記導電層の中央領域を取り囲む周辺領域の直上に形成される光吸収絶縁膜と、
前記反射電極層上に形成される有機EL層と、
前記有機EL層上から前記光吸収絶縁膜上にかけて形成される光透過性電極層と、
を備えたことを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL素子において、
前記導電層と間を空けて併設されるコンタクト電極層を備え、
前記光吸収絶縁膜は、前記導電層の端部上から前記コンタクト電極層の端部上にかけて形成されることを特徴する有機EL素子。
【請求項3】
請求項1に記載の有機EL素子において、
前記光吸収絶縁膜の直上に形成される前記光透過性電極層の高さ位置は、前記有機EL層の直上に形成される前記光透過性電極層の高さ位置よりも低いことを特徴とする有機EL素子。
【請求項4】
請求項1に記載の有機EL素子において、
前記光吸収絶縁膜は、前記反射電極層よりも光反射率の小さい材料からなることを特徴とする有機EL素子。
【請求項5】
請求項4に記載の有機EL素子において、
前記光吸収絶縁膜は、酸化銀からなることを特徴とする有機EL素子。
【請求項6】
導電層上に反射電極層が形成された基板を準備する工程と、
前記反射電極層の上面の中央領域を取り囲む周辺領域に対して酸化処理を施し、前記反射電極層の一部に光吸収絶縁膜を形成する工程と、
前記反射電極層の中央領域の直上に有機EL層を形成する工程と、
前記有機EL層上から前記光吸収絶縁膜上にかけて光透過性電極層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の有機EL素子の製造方法において、
前記反射電極層の中央領域を被覆し、且つ前記反射電極層の周辺領域を露出するように前記反射電極層上にフォトレジストを形成する工程と、を備え、
前記反射電極層の周辺領域を露出した状態で、前記反射電極層の周辺領域を酸化することを特徴とする有機EL素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−266591(P2009−266591A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114370(P2008−114370)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】