有機EL素子用マスククリーニング装置及びそれを用いた有機ELディスプレイの製造方法
【課題】マスクの温度ムラ及びエッチングムラを抑制できるとともに、マスクの温度上昇を抑制しつつエッチング効率の向上が図れる有機EL素子用マスククリーニング装置及びそれを用いた有機ELディスプレイの製造方法を提供する。
【解決手段】この有機EL素子用マスククリーニング装置1では、チャンバ11内のガス吐出部14に2つの分散板21,22が段階的に備えられている。分散板21がガス吐出部14を構成する管体23の吐出口23aを塞ぐようにして設けられ、分散板22が管体23内における分散板21のガス流の上流側に、分散板21に対向して配置されている。分散板21,22は、分散配置されたガスを通す複数の孔21a,22aが設けられている。そして、分散板21の孔21aと分散板22の孔22aとが互いに対向しないように、位置をずらして孔21a,22aが設けられている。
【解決手段】この有機EL素子用マスククリーニング装置1では、チャンバ11内のガス吐出部14に2つの分散板21,22が段階的に備えられている。分散板21がガス吐出部14を構成する管体23の吐出口23aを塞ぐようにして設けられ、分散板22が管体23内における分散板21のガス流の上流側に、分散板21に対向して配置されている。分散板21,22は、分散配置されたガスを通す複数の孔21a,22aが設けられている。そして、分散板21の孔21aと分散板22の孔22aとが互いに対向しないように、位置をずらして孔21a,22aが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子用マスククリーニング装置及びそれを用いた有機ELディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクリーニング装置としては、特許文献1に記載のものがある。このマスククリーニング装置では、O2ガスがチャンバ内に導入される直前でプラズマ化されて、上方からマスクに当てられるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−175112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように、プラズマ化されたプラズマガスを直ぐにチャンバ内に導入してマスクのクリーニングを行うと、マスクの全体的な温度上昇や温度ムラ、エッチング効率の全体的な低下やエッチングムラを招く場合があることが分かった。この点に関する原理説明等は、後の発明を実施するための最良の形態にて説明する。
【0005】
また、有機EL装置の有機層を形成する際にはマスクを介して下方からガス状の有機材料が基板面に当てられるため、有機材料はマスクの主に下面側に付着する。このため、上記特許文献1のように、クリーニングガスを上方からマスクに当てる方式では、有機EL装置の有機層形成用のマスクのクリーニングを効率よく行うことができない。
【0006】
そこで、本発明の解決すべき第1の課題は、マスクの温度ムラ及びエッチングムラを抑制できるとともに、マスクの温度上昇を抑制しつつエッチング効率の向上が図れる有機EL素子用マスククリーニング装置を提供することである。
【0007】
また、本発明の解決すべき第2の課題は、有機EL素子の有機層形成用のマスクのクリーニングを効率よく行える有機EL素子用マスククリーニング装置を提供することである。
【0008】
また、本発明の解決すべき第3の課題は、マスクのクリーニングを効率よく行うことにより、生産性の高い有機ELディスプレイの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、有機EL素子の有機層の形成に用いられるマスクをクリーニングする有機EL素子用マスククリーニング装置であって、プラズマガスを生成するプラズマガス生成部と、前記マスクを収容するチャンバと、前記プラズマガスを前記プラズマガス生成部から前記チャンバ内に輸送する輸送管と、前記チャンバ内に設けられ、前記輸送管によって導入されたガスの流れを分散又は方向転換させる複数のガス流変換手段とを備える。
【0010】
また、請求項2の発明では、有機EL素子の有機層の形成に用いられるマスクをクリーニングする有機EL素子用マスククリーニング装置であって、プラズマガスを生成するプラズマガス生成部と、前記マスクを収容するチャンバと、前記プラズマガスを前記プラズマガス生成部から前記チャンバ内に輸送する輸送管と、前記チャンバ内に設けられ、前記輸送管によって送られてきたガスを前記マスクに向けて吐出するガス吐出手段とを備え、ガス吐出手段は、前記ガス吐出手段のガス流路内に設けられ、前記ガスの流れを分散又は方向転換させる複数のガス流変換手段を備える。
【0011】
また、請求項3の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段は、ガスを通す複数の孔が設けられた少なくとも1つの分散板を備える。
【0012】
また、請求項4の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、前記各分散板の前記孔は、隣り合う前記分散板同士で対向しないように設けられている。
【0013】
また、請求項5の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、前記複数の分散板のうちの前記ガス流の最上流側の分散板に設けられる前記孔は、その孔を通過した前記ガスが斜め外方に向いて吹き出すように前記分散板に対して斜め外方に傾斜して設けられている。
【0014】
また、請求項6の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、前記複数の分散板は、中央部の前記孔の径が周辺部の前記孔の径よりも小さくされた少なくとも1つの分散板を備える。
【0015】
また、請求項7の発明では、請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記ガス吐出部は、前記輸送管から送られてきた前記ガスを受け入れる受入口と、その受入口から受け入れた前記ガスを前記チャンバ内に吐出する吐出口とを有する管体をさらに備え、前記複数のガス流変換手段は、前記管体内に互いに対向して配置された複数の分散板を備え、前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、前記複数の分散板のうちの前記ガス流の最上流側に配置される分散板は、前記受入口に対向し、前記孔が設けられていない部分を有する。
【0016】
また、請求項8の発明では、請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記ガス吐出部は、前記輸送管から送られてきた前記ガスを受け入れる受入口と、その受入口から受け入れた前記ガスを前記チャンバ内に吐出する吐出口とを有する管体をさらに備え、前記複数のガス流変換手段は、前記管体内において前記受入口に対向するように配置され、前記受入口から正面方向に送り出される前記ガスの流れを外方側に変換するガス流変換部材を備える。
【0017】
また、請求項9の発明では、請求項1ないし8のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段のうちの少なくとも1つのガス流変換手段は、少なくとも表面部がフッ素系樹脂により形成されている。
【0018】
また、請求項10の発明では、請求項1ないし8のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段のうちの少なくとも1つのガス流変換手段は、少なくとも表面部が導電性を有し、定電位に設定されている。
【0019】
また、請求項11の発明では、請求項1ないし請求項10のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記輸送管は、前記プラズマガスを下方から前記チャンバ内に導入する。
【0020】
また、請求項12の発明では、請求項1ないし請求項11のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記プラズマガスを排気するための排気管をさらに備え、前記排気管が前記プラズマガスを上方から前記チャンバ外に排気している。
【0021】
また、請求項13の発明では、請求項1ないし請求項12のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置を用いて使用済みのマスクを洗浄する工程と、前記洗浄したマスクを使用して基板上に複数の有機発光層を形成し、複数の有機EL素子を形成する工程とを備えた。
【発明の効果】
【0022】
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、段階的に設けられた複数のガス流変換手段がガスの流れを分散又は方向転換させるため、マスクに当てられるガスの均一性を高めることができ、マスクの温度ムラ及びエッチングムラが抑制される。
【0023】
また、段階的に設けられた複数のガス流路変換手段にガスが衝突することにより、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギーが低下することによりマスクの温度上昇の抑制が図れる。さらに、エッチングに寄与する化学的に活性な粒子、すなわちマスク表面の有機物と化学反応しやすい活性な中性ラジカルが生成されるなどしてガスの化学的エネルギーが増大することによりエッチング効率の向上が図れる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、複数の孔が設けられた分散板を用いることにより、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化されるとともに、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギー低減及び化学反応性向上がより促進される。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、分散板の孔が、隣り合う分散板同士で対向しないように設けられているため、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化されるとともに、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギー低減及び化学反応性向上がより促進される。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、複数の分散板のうちのガス流の最上流側の分散板に設けられる孔が、その孔を通過したガスが斜め外方に向いて吹き出すように分散板に対して斜め外方に傾斜して設けられている。このため、ガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、その結果、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、複数の分散板が、中央部の孔の径が周辺部の孔の径よりも小さくされた少なくとも1つの分散板を備えるため、ガスの流れを効果的に外方側に分散させることができる。このため、ガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、その結果、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、ガス吐出部に設けられる複数の分散板のうちの最上流側に配置される分散板が、ガス吐出部の受入口に対向し、孔が設けられていない部分を有している。このため、受入口からガス吐出部内に導入されたガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、ガス吐出部内においてその受入口に対向するように配置されたガス流変換部材が、受入口から正面方向に送り出されるガスの流れを外方側に変換する。このため、受入口からガス吐出部内に導入されたガスの流れを効果的に外方側に分散させることができる。これによって、ガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、その結果、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、ガス流変換手段の少なくとも表面部をフッ素系樹脂により形成することにより、ガス流変換手段によりガスの流れを分散又は方向転換させる際のガスのエネルギー損失を低減できる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、ガス流変換手段の少なくとも表面部を導電性として定電位に設定するため、ガス中の不必要な荷電粒子がそのガス流変換手段に吸着するようになっている。このため、ガス中の荷電粒子によりマスクがダメージを受けたり、マスクの温度が上がのを防止できる。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、ガスが下方からチャンバ内に導入されるため、有機層形成時に付着したマスクの下面側の有機物を効率よく除去できる。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、排気管がガスを上方からチャンバ外に排気しているため、チャンバ内においてガスの下から上への流れを容易に形成することができ、マスク下面側に対するエッチング効率が向上する。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置を用いてマスクを洗浄し、そのマスクを使用して有機EL素子の有機層を形成して有機ELディスプレイを製造するため、マスク洗浄による変形等のダメージが小さく、マスクを良好な状態で再利用することができる。その結果、有機ELディスプレイの歩留まりを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
<基礎技術>
実施形態について説明する前に、後述する実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置の基礎となる有機EL素子用マスククリーニング装置100について、図1に基づいて説明する。
【0036】
図1に示されるように、この有機EL素子用マスククリーニング装置100は、チャンバ11と、プラズマガス生成部12と、輸送管13と、ガス吐出部14とを備えており、マスク15のクリーニングに用いられる。
【0037】
マスク15は、図2に示されるように、金属により形成された板状の部材であり、有機EL装置の有機層の形成に用いられるものであり、有機層形成時に付着した有機物を定期的に除去する必要がある。なお、有機層形成時にマスクを介して下方からガス状の有機材料が基板面に当てられるため、除去すべき有機物はマスクの主に下面側に付着している。また、マスク15は温度上昇や温度ムラにより変形するため、温度上昇や温度ムラを抑えつつクリーニングを行う必要がある。
【0038】
チャンバ11は、マスク15を収容した状態で内部が減圧状態(例えば、真空状態)に保持される。プラズマガス生成部12は、図示しないクリーニングガス供給源及びプラズマ生成装置を備えている。そして、クリーニングガス供給源が供給するクリーニングガスが、プラズマ生成装置によりプラズマ化されて、輸送管13内に送り出される。クリーニングガスとしては、例えばCF4とO2の混合ガスが用いられる。なお、クリーニングガスにN2等のキャリアガスを混合してもよい。
【0039】
輸送管13は、プラズマガス生成部12が生成したプラズマガスをチャンバ11内のガス吐出部14に輸送する。ガス吐出部14は、例えばシャワーヘッドにより構成され、チャンバ11内におけるマスク15の下方に設置され、プラズマガス生成部12で生成されたプラズマガスを下方からマスク15に向けて吐出する。なお、プラズマガス生成部12で生成されたプラズマガスは、プラズマ励起されたガスであり、電荷を有しているイオンと電荷を有さないラジカルを含み、一部のイオンは輸送管13及びガス吐出部14の通過途中でプラズマ状態からラジカル状態に変化する場合があるため、チャンバ11内に導入されるガスは電荷を有するイオンであるとは限らない。
【0040】
図3は、有機EL素子用マスククリーニング装置100を用いたときのマスク15の中央部15a及び周縁部15bにおけるエッチングレート及び温度上昇量と、クリーニングガスの流量との関係を示すグラフである。図3中のラインL1aはマスク15の中央部15aのエッチングレートとクリーニングガス流量との関係を示し、ラインL1bはマスク15の周縁部15bのエッチングレートとクリーニングガス流量との関係を示し、ラインL2aはマスク15の中央部15aの室温からの温度上昇量とクリーニングガス流量との関係を示し、ラインL2bはマスク15の周縁部15bの室温からの温度上昇量とクリーニングガス流量との関係を示している。なお、クリーニングガスは、チャンバー外で発生させたプラズマガスをチャンバー内に導入してマスクのクリーニングのために用いたガスのことである。
【0041】
この図3のグラフより、マスク15の中央部15aは周縁部15bに比して、クリーニング時の温度上昇量が大きいことが分かる。しかも、中央部15aは温度上昇量が大きいのに(すなわち、当てられるクリーニングガスのエネルギーレベルは高いのに)、エッチングレートが周縁部15bよりも低くなっていることが分かる。このことから、必ずしもエッチング粒子のエネルギーが高ければエッチングレートが高いわけではないことがわかる。ガスのエネルギーとしては、主に、化学的エネルギーと運動エネルギーに分けられるが、主にエッチングに寄与すると思われる粒子は化学的エネルギーが高い粒子である。本クリーニング装置においてマスク表面の有機物は、主に酸素ラジカルが有機物と反応し、H2O、COxなどとして蒸発される。また、マスク表面の有機物に金属原子が含まれる場合には、フッ素ラジカルが金属原子と反応して金属フッ化物を生成して蒸発させることで、マスク表面の有機物が分解除去される。つまり、マスク表面の有機物と化学反応しやすく、かつ化学的エネルギーが高い粒子がエッチングに寄与する。これに対して、化学的エネルギーが低い粒子は運動エネルギーが高くてもクリーニングへの寄与は小さいと考えられる。マスク15の中央部15aでは、エッチングにあまり寄与しないと考えられる化学的エネルギーが低く、運動エネルギーが高い高エネルギー粒子の割合が高くなっているものと推測される。
【0042】
そこで、本願発明者らは、プラズマガスの上記特性に着目し、マスク15の温度ムラ及びエッチングムラを抑制できるとともに、マスク15の温度上昇を抑制しつつエッチング効率の向上が図れる有機EL素子用マスククリーニング装置を創出した。これについて以下に説明する。
【0043】
<実施形態>
図4は本発明の一実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置1の構成を模式的に示す図であり、図5(a)及び図5(b)は図4の有機EL素子用マスククリーニング装置1に備えられるガス吐出部14の正面図及び断面図である。なお、図4に示す有機EL素子用マスククリーニング装置1の各部の構成について、図1に示す有機EL素子用マスククリーニング装置100と共通する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置1では、図4、図5(a)及び図5(b)に示すように、ガス吐出部14にガス流変換手段である2つの分散板21,22が段階的に備えられている。分散板21がガス吐出部14を構成する管体23の吐出口23aを塞ぐようにして設けられ、分散板22が管体23内における分散板21のガス流の上流側に、分散板21に対向して配置されている。
【0045】
分散板21,22は、分散配置されたガスを通す複数の孔21a,22aが設けられている。そして、分散板21の孔21aと分散板22の孔22aとが互いに対向しないように、位置をずらして孔21a,22aが設けられている。
【0046】
このような構成により、輸送管13を介してガス吐出部14に導入されたガスが、2段構成で設けた分散板21,22により効果的に分散されてマスク15に当てられるようになっている。その結果、マスク15に当てられるガス中の高エネルギー粒子や化学反応性の高い粒子の偏りを軽減し、ガスの均一性を高めることができ、マスク15の温度ムラ及びエッチングムラが抑制される。
【0047】
また、段階的に設けられた2つの分散板21,22にガスが衝突することにより、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギーが低下するとともに、ガス粒子間の相互作用や分散板21,22との衝突によりエッチングに寄与する化学的に活性な粒子、つまり被エッチング物のマスク表面の有機物と化学反応しやすい活性な中性ラジカルが生成されるなどしてガスの化学的エネルギーが上昇し、これによって、マスク15の温度上昇の抑制及びエッチング効率の向上が図れる。
【0048】
また、分散板21,22の孔21a,22aが、分散板21,22同士で対向しないように設けられているため、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化されるとともに、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギー低減及び化学反応性向上がより促進される。
【0049】
また、プラズマ生成部12で発生されたプラズマガスは輸送管13によって下方からチャンバ11内に導入され、該チャンバ11内に導入されたガスがガス吐出部14によって下方からマスク15に向けて吐出されるため、有機層形成時に付着したマスク15の下面側の有機物を効率よく除去できる。
【0050】
分散板21,22のいずれか一方又は両方において、その表面部又は全体をフッ素系樹脂により形成するようにしてもよい。これによって、ガスの流れを分散させる際にエッチングに関わる中性ラジカルが活性を失う(失活する)ことを抑えることができる。なお、ガス吐出部14の管体23の内壁部ついても、フッ素系樹脂により形成してもよい。
【0051】
次に、上述の有機EL素子用マスククリーニング装置1を用いた有機ELディスプレイの製造方法を簡単に説明する。
【0052】
(1)まず、既に有機層等の蒸着に使用したマスク15を上述のマスククリーニング装置を用いてクリーニングする。
【0053】
(2)次に、クリーニングしたマスク15を再度使用するため、第1電極が被着された基板上に配置し、マスク15の開口を介して有機材料を第1電極上に被着させ、有機層を形成する。
【0054】
(3)そして、有機層上に第2電極層を被着させることにより、複数の有機EL素子を基板上に形成するとともに、必要に応じて保護膜や封止基板等を有機EL素子上に配置することにより、有機ELディスプレイが完成する。
【0055】
このとき、マスク15の洗浄に上述のマスククリーニング装置を用いているため、マスク洗浄による変形等のダメージが小さく、マスク15を良好な状態で再利用することができる。その結果、有機ELディスプレイの歩留まりを向上させることが可能となる。
【0056】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において種々の変更・改良が可能である。
【0057】
例えば、図6(a)及び図6(b)に示すガス吐出部14aでは、3つの分散板21,22,24が3段構成で設けられている。分散板24には、ガスと通す複数の孔24aが設けられている。また、隣り合う分散板21,22,24同士で互いに孔21a,22a,24aの位置がずらされている。
【0058】
図7(a)及び図7(b)に示すガス吐出部14bでは、上流側の分散板22のうちの管体23の受入口23bに対向する中央部22b以外の領域に孔22aが設けられ、中央部22bは孔22aがない構成となっている。これによって、輸送管13を介して受入口23bからガス吐出部14b内に導入されたガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0059】
図9(a)及び図9(b)に示すガス吐出部14dでは、分散板22の代わりにガス流変換部材26が分散板21の上流側に設けられている。ガス流変換部材26は、管体23の受入口23bに対向して配置される遮蔽板26aと、複数の案内板26bとを備えている。遮蔽板26aは、周辺部が片側に傾斜した略皿形形状を有し、その凹面側を受入口23b側に向けて配置されている。このため、受入口23bから矢印A1で示す正面方向A1に進むガスが遮蔽板26aに当たり、そのガスの流れが矢印A2で示す斜め外向き上流側に変換されるようになっている。複数の案内板26bは、その変換されたガスの流れを案内するように設けられている。このため、この変形例においても、輸送管13を介して受入口23bからガス吐出部14d内に導入されたガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0060】
図10(a)及び図10(b)に示すガス吐出部14eでは、上流側の分散板22に設けられる孔22aが、その孔22aを通過しガスが矢印A3で示す如く斜め外方に向いて吹き出すように、分散板22に対して斜め外方に傾斜して設けられている。これによって、ガスが分散板22を通過する際にガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0061】
図11(a)及び図11(b)に示すガス吐出部14fでは、上流側の分散板22において、より中央部に設けられる孔22aほど孔22aの径が小さくなるように設定されている。このため、ガスが分散板22を通過する際にガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0062】
図12(a)及び図12(b)に示すガス吐出部14gでは、ガス輸送用溝27が、上流側の分散板22の上流面側(下面側)に略櫛歯状に配設されている。そして、分散板22の孔22aは、そのガス輸送用溝27に沿って配設されている。このような構成により、ガス吐出部14g内の上流側の分散板22の上流側におけるガスの輸送経路を制限して、ガス粒子の壁との衝突や粒子間の衝突を均一かつ確実に生じさせながらガスの輸送距離を確保することができる。そして、ガスが下流側の分散板22を通過した後は、分散板21,22間の広い空間内にて、ガスを均一に拡散させ、ガスの均一性が向上される。
【0063】
図13に示す有機EL素子用マスククリーニング装置1aでは、ガス吐出部14の管体23が省略されて、分散板21,22がチャンバ11内を仕切るようにして設けられている。
【0064】
図14に示す有機EL素子用マスククリーニング装置1bでは、ガスを排気するための排気管28が、チャンバ11の上部に設けられている。そして、その排気管28が、ガスを上方からチャンバ11外に排気(例えば、真空排気)するようになっている。これによって、チャンバ12内においてガスの下から上への流れを容易に形成することができ、マスク15下面側に対するエッチング効率が向上する。
【0065】
また、上述の実施形態に係るガス吐出部14において、分散板21,22の少なくともいずれか一方(例えば、上流側の分散板22)の少なくとも表面部を金属等の導電材料により形成し、その表面部を定電位に設定するようにしてもよい。これによって、ガス中の不必要な荷電粒子がその分散板21,22の表面に吸着するようになっている。このため、ガス中の荷電粒子によりマスク15がダメージを受けたり、マスク15の温度が上がるのを防止できる。なお、定電位に設定する分散板21,22の電位は、ガス中の荷電粒子の特性等によりプラス、マイナス又はゼロの電位レベルに設定される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置の基礎となる有機EL素子用マスククリーニング装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】クリーニング対象のマスクの平面図である。
【図3】図1の有機EL素子用マスククリーニング装置を用いたときのマスクの中央部及び周縁部におけるエッチングレート及び温度上昇量とクリーニングガスの流量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置の構成を模式的に示す図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は図4の有機EL素子用マスククリーニング装置に備えられるガス吐出部の正面図及び断面図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図10】図10(a)及び図10(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図12】図12(a)及び図12(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図13】図4に示す構成の変形例を示す図である。
【図14】図4に示す構成の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1,1a,100 有機EL素子用マスククリーニング装置、11 チャンバ、12 プラズマガス生成部、13 輸送管、14,14a〜14f ガス吐出部、15 マスク、21,22 分散板、21a,22a 孔、23 管体、23a 吐出口、23b 受入口、24 分散板、24a 孔、25,26 ガス流変換部材、27 ガス輸送用溝、28 排気管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子用マスククリーニング装置及びそれを用いた有機ELディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクリーニング装置としては、特許文献1に記載のものがある。このマスククリーニング装置では、O2ガスがチャンバ内に導入される直前でプラズマ化されて、上方からマスクに当てられるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−175112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように、プラズマ化されたプラズマガスを直ぐにチャンバ内に導入してマスクのクリーニングを行うと、マスクの全体的な温度上昇や温度ムラ、エッチング効率の全体的な低下やエッチングムラを招く場合があることが分かった。この点に関する原理説明等は、後の発明を実施するための最良の形態にて説明する。
【0005】
また、有機EL装置の有機層を形成する際にはマスクを介して下方からガス状の有機材料が基板面に当てられるため、有機材料はマスクの主に下面側に付着する。このため、上記特許文献1のように、クリーニングガスを上方からマスクに当てる方式では、有機EL装置の有機層形成用のマスクのクリーニングを効率よく行うことができない。
【0006】
そこで、本発明の解決すべき第1の課題は、マスクの温度ムラ及びエッチングムラを抑制できるとともに、マスクの温度上昇を抑制しつつエッチング効率の向上が図れる有機EL素子用マスククリーニング装置を提供することである。
【0007】
また、本発明の解決すべき第2の課題は、有機EL素子の有機層形成用のマスクのクリーニングを効率よく行える有機EL素子用マスククリーニング装置を提供することである。
【0008】
また、本発明の解決すべき第3の課題は、マスクのクリーニングを効率よく行うことにより、生産性の高い有機ELディスプレイの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、有機EL素子の有機層の形成に用いられるマスクをクリーニングする有機EL素子用マスククリーニング装置であって、プラズマガスを生成するプラズマガス生成部と、前記マスクを収容するチャンバと、前記プラズマガスを前記プラズマガス生成部から前記チャンバ内に輸送する輸送管と、前記チャンバ内に設けられ、前記輸送管によって導入されたガスの流れを分散又は方向転換させる複数のガス流変換手段とを備える。
【0010】
また、請求項2の発明では、有機EL素子の有機層の形成に用いられるマスクをクリーニングする有機EL素子用マスククリーニング装置であって、プラズマガスを生成するプラズマガス生成部と、前記マスクを収容するチャンバと、前記プラズマガスを前記プラズマガス生成部から前記チャンバ内に輸送する輸送管と、前記チャンバ内に設けられ、前記輸送管によって送られてきたガスを前記マスクに向けて吐出するガス吐出手段とを備え、ガス吐出手段は、前記ガス吐出手段のガス流路内に設けられ、前記ガスの流れを分散又は方向転換させる複数のガス流変換手段を備える。
【0011】
また、請求項3の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段は、ガスを通す複数の孔が設けられた少なくとも1つの分散板を備える。
【0012】
また、請求項4の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、前記各分散板の前記孔は、隣り合う前記分散板同士で対向しないように設けられている。
【0013】
また、請求項5の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、前記複数の分散板のうちの前記ガス流の最上流側の分散板に設けられる前記孔は、その孔を通過した前記ガスが斜め外方に向いて吹き出すように前記分散板に対して斜め外方に傾斜して設けられている。
【0014】
また、請求項6の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、前記複数の分散板は、中央部の前記孔の径が周辺部の前記孔の径よりも小さくされた少なくとも1つの分散板を備える。
【0015】
また、請求項7の発明では、請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記ガス吐出部は、前記輸送管から送られてきた前記ガスを受け入れる受入口と、その受入口から受け入れた前記ガスを前記チャンバ内に吐出する吐出口とを有する管体をさらに備え、前記複数のガス流変換手段は、前記管体内に互いに対向して配置された複数の分散板を備え、前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、前記複数の分散板のうちの前記ガス流の最上流側に配置される分散板は、前記受入口に対向し、前記孔が設けられていない部分を有する。
【0016】
また、請求項8の発明では、請求項2の発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記ガス吐出部は、前記輸送管から送られてきた前記ガスを受け入れる受入口と、その受入口から受け入れた前記ガスを前記チャンバ内に吐出する吐出口とを有する管体をさらに備え、前記複数のガス流変換手段は、前記管体内において前記受入口に対向するように配置され、前記受入口から正面方向に送り出される前記ガスの流れを外方側に変換するガス流変換部材を備える。
【0017】
また、請求項9の発明では、請求項1ないし8のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段のうちの少なくとも1つのガス流変換手段は、少なくとも表面部がフッ素系樹脂により形成されている。
【0018】
また、請求項10の発明では、請求項1ないし8のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記複数のガス流変換手段のうちの少なくとも1つのガス流変換手段は、少なくとも表面部が導電性を有し、定電位に設定されている。
【0019】
また、請求項11の発明では、請求項1ないし請求項10のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記輸送管は、前記プラズマガスを下方から前記チャンバ内に導入する。
【0020】
また、請求項12の発明では、請求項1ないし請求項11のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置において、前記プラズマガスを排気するための排気管をさらに備え、前記排気管が前記プラズマガスを上方から前記チャンバ外に排気している。
【0021】
また、請求項13の発明では、請求項1ないし請求項12のいずれかの発明に係る有機EL素子用マスククリーニング装置を用いて使用済みのマスクを洗浄する工程と、前記洗浄したマスクを使用して基板上に複数の有機発光層を形成し、複数の有機EL素子を形成する工程とを備えた。
【発明の効果】
【0022】
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、段階的に設けられた複数のガス流変換手段がガスの流れを分散又は方向転換させるため、マスクに当てられるガスの均一性を高めることができ、マスクの温度ムラ及びエッチングムラが抑制される。
【0023】
また、段階的に設けられた複数のガス流路変換手段にガスが衝突することにより、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギーが低下することによりマスクの温度上昇の抑制が図れる。さらに、エッチングに寄与する化学的に活性な粒子、すなわちマスク表面の有機物と化学反応しやすい活性な中性ラジカルが生成されるなどしてガスの化学的エネルギーが増大することによりエッチング効率の向上が図れる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、複数の孔が設けられた分散板を用いることにより、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化されるとともに、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギー低減及び化学反応性向上がより促進される。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、分散板の孔が、隣り合う分散板同士で対向しないように設けられているため、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化されるとともに、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギー低減及び化学反応性向上がより促進される。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、複数の分散板のうちのガス流の最上流側の分散板に設けられる孔が、その孔を通過したガスが斜め外方に向いて吹き出すように分散板に対して斜め外方に傾斜して設けられている。このため、ガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、その結果、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、複数の分散板が、中央部の孔の径が周辺部の孔の径よりも小さくされた少なくとも1つの分散板を備えるため、ガスの流れを効果的に外方側に分散させることができる。このため、ガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、その結果、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、ガス吐出部に設けられる複数の分散板のうちの最上流側に配置される分散板が、ガス吐出部の受入口に対向し、孔が設けられていない部分を有している。このため、受入口からガス吐出部内に導入されたガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、ガス吐出部内においてその受入口に対向するように配置されたガス流変換部材が、受入口から正面方向に送り出されるガスの流れを外方側に変換する。このため、受入口からガス吐出部内に導入されたガスの流れを効果的に外方側に分散させることができる。これによって、ガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、その結果、マスクに当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、ガス流変換手段の少なくとも表面部をフッ素系樹脂により形成することにより、ガス流変換手段によりガスの流れを分散又は方向転換させる際のガスのエネルギー損失を低減できる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、ガス流変換手段の少なくとも表面部を導電性として定電位に設定するため、ガス中の不必要な荷電粒子がそのガス流変換手段に吸着するようになっている。このため、ガス中の荷電粒子によりマスクがダメージを受けたり、マスクの温度が上がのを防止できる。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、ガスが下方からチャンバ内に導入されるため、有機層形成時に付着したマスクの下面側の有機物を効率よく除去できる。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、排気管がガスを上方からチャンバ外に排気しているため、チャンバ内においてガスの下から上への流れを容易に形成することができ、マスク下面側に対するエッチング効率が向上する。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置を用いてマスクを洗浄し、そのマスクを使用して有機EL素子の有機層を形成して有機ELディスプレイを製造するため、マスク洗浄による変形等のダメージが小さく、マスクを良好な状態で再利用することができる。その結果、有機ELディスプレイの歩留まりを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
<基礎技術>
実施形態について説明する前に、後述する実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置の基礎となる有機EL素子用マスククリーニング装置100について、図1に基づいて説明する。
【0036】
図1に示されるように、この有機EL素子用マスククリーニング装置100は、チャンバ11と、プラズマガス生成部12と、輸送管13と、ガス吐出部14とを備えており、マスク15のクリーニングに用いられる。
【0037】
マスク15は、図2に示されるように、金属により形成された板状の部材であり、有機EL装置の有機層の形成に用いられるものであり、有機層形成時に付着した有機物を定期的に除去する必要がある。なお、有機層形成時にマスクを介して下方からガス状の有機材料が基板面に当てられるため、除去すべき有機物はマスクの主に下面側に付着している。また、マスク15は温度上昇や温度ムラにより変形するため、温度上昇や温度ムラを抑えつつクリーニングを行う必要がある。
【0038】
チャンバ11は、マスク15を収容した状態で内部が減圧状態(例えば、真空状態)に保持される。プラズマガス生成部12は、図示しないクリーニングガス供給源及びプラズマ生成装置を備えている。そして、クリーニングガス供給源が供給するクリーニングガスが、プラズマ生成装置によりプラズマ化されて、輸送管13内に送り出される。クリーニングガスとしては、例えばCF4とO2の混合ガスが用いられる。なお、クリーニングガスにN2等のキャリアガスを混合してもよい。
【0039】
輸送管13は、プラズマガス生成部12が生成したプラズマガスをチャンバ11内のガス吐出部14に輸送する。ガス吐出部14は、例えばシャワーヘッドにより構成され、チャンバ11内におけるマスク15の下方に設置され、プラズマガス生成部12で生成されたプラズマガスを下方からマスク15に向けて吐出する。なお、プラズマガス生成部12で生成されたプラズマガスは、プラズマ励起されたガスであり、電荷を有しているイオンと電荷を有さないラジカルを含み、一部のイオンは輸送管13及びガス吐出部14の通過途中でプラズマ状態からラジカル状態に変化する場合があるため、チャンバ11内に導入されるガスは電荷を有するイオンであるとは限らない。
【0040】
図3は、有機EL素子用マスククリーニング装置100を用いたときのマスク15の中央部15a及び周縁部15bにおけるエッチングレート及び温度上昇量と、クリーニングガスの流量との関係を示すグラフである。図3中のラインL1aはマスク15の中央部15aのエッチングレートとクリーニングガス流量との関係を示し、ラインL1bはマスク15の周縁部15bのエッチングレートとクリーニングガス流量との関係を示し、ラインL2aはマスク15の中央部15aの室温からの温度上昇量とクリーニングガス流量との関係を示し、ラインL2bはマスク15の周縁部15bの室温からの温度上昇量とクリーニングガス流量との関係を示している。なお、クリーニングガスは、チャンバー外で発生させたプラズマガスをチャンバー内に導入してマスクのクリーニングのために用いたガスのことである。
【0041】
この図3のグラフより、マスク15の中央部15aは周縁部15bに比して、クリーニング時の温度上昇量が大きいことが分かる。しかも、中央部15aは温度上昇量が大きいのに(すなわち、当てられるクリーニングガスのエネルギーレベルは高いのに)、エッチングレートが周縁部15bよりも低くなっていることが分かる。このことから、必ずしもエッチング粒子のエネルギーが高ければエッチングレートが高いわけではないことがわかる。ガスのエネルギーとしては、主に、化学的エネルギーと運動エネルギーに分けられるが、主にエッチングに寄与すると思われる粒子は化学的エネルギーが高い粒子である。本クリーニング装置においてマスク表面の有機物は、主に酸素ラジカルが有機物と反応し、H2O、COxなどとして蒸発される。また、マスク表面の有機物に金属原子が含まれる場合には、フッ素ラジカルが金属原子と反応して金属フッ化物を生成して蒸発させることで、マスク表面の有機物が分解除去される。つまり、マスク表面の有機物と化学反応しやすく、かつ化学的エネルギーが高い粒子がエッチングに寄与する。これに対して、化学的エネルギーが低い粒子は運動エネルギーが高くてもクリーニングへの寄与は小さいと考えられる。マスク15の中央部15aでは、エッチングにあまり寄与しないと考えられる化学的エネルギーが低く、運動エネルギーが高い高エネルギー粒子の割合が高くなっているものと推測される。
【0042】
そこで、本願発明者らは、プラズマガスの上記特性に着目し、マスク15の温度ムラ及びエッチングムラを抑制できるとともに、マスク15の温度上昇を抑制しつつエッチング効率の向上が図れる有機EL素子用マスククリーニング装置を創出した。これについて以下に説明する。
【0043】
<実施形態>
図4は本発明の一実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置1の構成を模式的に示す図であり、図5(a)及び図5(b)は図4の有機EL素子用マスククリーニング装置1に備えられるガス吐出部14の正面図及び断面図である。なお、図4に示す有機EL素子用マスククリーニング装置1の各部の構成について、図1に示す有機EL素子用マスククリーニング装置100と共通する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置1では、図4、図5(a)及び図5(b)に示すように、ガス吐出部14にガス流変換手段である2つの分散板21,22が段階的に備えられている。分散板21がガス吐出部14を構成する管体23の吐出口23aを塞ぐようにして設けられ、分散板22が管体23内における分散板21のガス流の上流側に、分散板21に対向して配置されている。
【0045】
分散板21,22は、分散配置されたガスを通す複数の孔21a,22aが設けられている。そして、分散板21の孔21aと分散板22の孔22aとが互いに対向しないように、位置をずらして孔21a,22aが設けられている。
【0046】
このような構成により、輸送管13を介してガス吐出部14に導入されたガスが、2段構成で設けた分散板21,22により効果的に分散されてマスク15に当てられるようになっている。その結果、マスク15に当てられるガス中の高エネルギー粒子や化学反応性の高い粒子の偏りを軽減し、ガスの均一性を高めることができ、マスク15の温度ムラ及びエッチングムラが抑制される。
【0047】
また、段階的に設けられた2つの分散板21,22にガスが衝突することにより、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギーが低下するとともに、ガス粒子間の相互作用や分散板21,22との衝突によりエッチングに寄与する化学的に活性な粒子、つまり被エッチング物のマスク表面の有機物と化学反応しやすい活性な中性ラジカルが生成されるなどしてガスの化学的エネルギーが上昇し、これによって、マスク15の温度上昇の抑制及びエッチング効率の向上が図れる。
【0048】
また、分散板21,22の孔21a,22aが、分散板21,22同士で対向しないように設けられているため、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化されるとともに、ガス中の高エネルギー粒子の運動エネルギー低減及び化学反応性向上がより促進される。
【0049】
また、プラズマ生成部12で発生されたプラズマガスは輸送管13によって下方からチャンバ11内に導入され、該チャンバ11内に導入されたガスがガス吐出部14によって下方からマスク15に向けて吐出されるため、有機層形成時に付着したマスク15の下面側の有機物を効率よく除去できる。
【0050】
分散板21,22のいずれか一方又は両方において、その表面部又は全体をフッ素系樹脂により形成するようにしてもよい。これによって、ガスの流れを分散させる際にエッチングに関わる中性ラジカルが活性を失う(失活する)ことを抑えることができる。なお、ガス吐出部14の管体23の内壁部ついても、フッ素系樹脂により形成してもよい。
【0051】
次に、上述の有機EL素子用マスククリーニング装置1を用いた有機ELディスプレイの製造方法を簡単に説明する。
【0052】
(1)まず、既に有機層等の蒸着に使用したマスク15を上述のマスククリーニング装置を用いてクリーニングする。
【0053】
(2)次に、クリーニングしたマスク15を再度使用するため、第1電極が被着された基板上に配置し、マスク15の開口を介して有機材料を第1電極上に被着させ、有機層を形成する。
【0054】
(3)そして、有機層上に第2電極層を被着させることにより、複数の有機EL素子を基板上に形成するとともに、必要に応じて保護膜や封止基板等を有機EL素子上に配置することにより、有機ELディスプレイが完成する。
【0055】
このとき、マスク15の洗浄に上述のマスククリーニング装置を用いているため、マスク洗浄による変形等のダメージが小さく、マスク15を良好な状態で再利用することができる。その結果、有機ELディスプレイの歩留まりを向上させることが可能となる。
【0056】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において種々の変更・改良が可能である。
【0057】
例えば、図6(a)及び図6(b)に示すガス吐出部14aでは、3つの分散板21,22,24が3段構成で設けられている。分散板24には、ガスと通す複数の孔24aが設けられている。また、隣り合う分散板21,22,24同士で互いに孔21a,22a,24aの位置がずらされている。
【0058】
図7(a)及び図7(b)に示すガス吐出部14bでは、上流側の分散板22のうちの管体23の受入口23bに対向する中央部22b以外の領域に孔22aが設けられ、中央部22bは孔22aがない構成となっている。これによって、輸送管13を介して受入口23bからガス吐出部14b内に導入されたガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0059】
図9(a)及び図9(b)に示すガス吐出部14dでは、分散板22の代わりにガス流変換部材26が分散板21の上流側に設けられている。ガス流変換部材26は、管体23の受入口23bに対向して配置される遮蔽板26aと、複数の案内板26bとを備えている。遮蔽板26aは、周辺部が片側に傾斜した略皿形形状を有し、その凹面側を受入口23b側に向けて配置されている。このため、受入口23bから矢印A1で示す正面方向A1に進むガスが遮蔽板26aに当たり、そのガスの流れが矢印A2で示す斜め外向き上流側に変換されるようになっている。複数の案内板26bは、その変換されたガスの流れを案内するように設けられている。このため、この変形例においても、輸送管13を介して受入口23bからガス吐出部14d内に導入されたガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0060】
図10(a)及び図10(b)に示すガス吐出部14eでは、上流側の分散板22に設けられる孔22aが、その孔22aを通過しガスが矢印A3で示す如く斜め外方に向いて吹き出すように、分散板22に対して斜め外方に傾斜して設けられている。これによって、ガスが分散板22を通過する際にガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0061】
図11(a)及び図11(b)に示すガス吐出部14fでは、上流側の分散板22において、より中央部に設けられる孔22aほど孔22aの径が小さくなるように設定されている。このため、ガスが分散板22を通過する際にガスの流れを効果的に外方側に分散させることができ、マスク15に当てられるガスがより効果的に均一化される。
【0062】
図12(a)及び図12(b)に示すガス吐出部14gでは、ガス輸送用溝27が、上流側の分散板22の上流面側(下面側)に略櫛歯状に配設されている。そして、分散板22の孔22aは、そのガス輸送用溝27に沿って配設されている。このような構成により、ガス吐出部14g内の上流側の分散板22の上流側におけるガスの輸送経路を制限して、ガス粒子の壁との衝突や粒子間の衝突を均一かつ確実に生じさせながらガスの輸送距離を確保することができる。そして、ガスが下流側の分散板22を通過した後は、分散板21,22間の広い空間内にて、ガスを均一に拡散させ、ガスの均一性が向上される。
【0063】
図13に示す有機EL素子用マスククリーニング装置1aでは、ガス吐出部14の管体23が省略されて、分散板21,22がチャンバ11内を仕切るようにして設けられている。
【0064】
図14に示す有機EL素子用マスククリーニング装置1bでは、ガスを排気するための排気管28が、チャンバ11の上部に設けられている。そして、その排気管28が、ガスを上方からチャンバ11外に排気(例えば、真空排気)するようになっている。これによって、チャンバ12内においてガスの下から上への流れを容易に形成することができ、マスク15下面側に対するエッチング効率が向上する。
【0065】
また、上述の実施形態に係るガス吐出部14において、分散板21,22の少なくともいずれか一方(例えば、上流側の分散板22)の少なくとも表面部を金属等の導電材料により形成し、その表面部を定電位に設定するようにしてもよい。これによって、ガス中の不必要な荷電粒子がその分散板21,22の表面に吸着するようになっている。このため、ガス中の荷電粒子によりマスク15がダメージを受けたり、マスク15の温度が上がるのを防止できる。なお、定電位に設定する分散板21,22の電位は、ガス中の荷電粒子の特性等によりプラス、マイナス又はゼロの電位レベルに設定される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置の基礎となる有機EL素子用マスククリーニング装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】クリーニング対象のマスクの平面図である。
【図3】図1の有機EL素子用マスククリーニング装置を用いたときのマスクの中央部及び周縁部におけるエッチングレート及び温度上昇量とクリーニングガスの流量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る有機EL素子用マスククリーニング装置の構成を模式的に示す図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は図4の有機EL素子用マスククリーニング装置に備えられるガス吐出部の正面図及び断面図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図10】図10(a)及び図10(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図12】図12(a)及び図12(b)は図5(a)及び図5(b)に示す構成の変形例を示す図である。
【図13】図4に示す構成の変形例を示す図である。
【図14】図4に示す構成の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1,1a,100 有機EL素子用マスククリーニング装置、11 チャンバ、12 プラズマガス生成部、13 輸送管、14,14a〜14f ガス吐出部、15 マスク、21,22 分散板、21a,22a 孔、23 管体、23a 吐出口、23b 受入口、24 分散板、24a 孔、25,26 ガス流変換部材、27 ガス輸送用溝、28 排気管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子の有機層の形成に用いられるマスクをクリーニングする有機EL素子用マスククリーニング装置であって、
プラズマガスを生成するプラズマガス生成部と、
前記マスクを収容するチャンバと、
前記プラズマガスを前記プラズマガス生成部から前記チャンバ内に輸送する輸送管と、
前記チャンバ内に設けられ、前記輸送管によって導入されたガスの流れを分散又は方向転換させる複数のガス流変換手段と、
を備えることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項2】
有機EL素子の有機層の形成に用いられるマスクをクリーニングする有機EL素子用マスククリーニング装置であって、
プラズマガスを生成するプラズマガス生成部と、
前記マスクを収容するチャンバと、
前記プラズマガスを前記プラズマガス生成部から前記チャンバ内に輸送する輸送管と、
前記チャンバ内に設けられ、前記輸送管によって送られてきたガスを前記マスクに向けて吐出するガス吐出手段と、
を備え、
ガス吐出手段は、
前記ガス吐出手段のガス流路内に設けられ、前記ガスの流れを分散又は方向転換させる複数のガス流変換手段を備えることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段は、ガスを通す複数の孔が設けられた少なくとも1つの分散板を備えることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、
前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、
前記各分散板の前記孔は、隣り合う前記分散板同士で対向しないように設けられていることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、
前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、
前記複数の分散板のうちの前記ガス流の最上流側の分散板に設けられる前記孔は、その孔を通過した前記ガスが斜め外方に向いて吹き出すように前記分散板に対して斜め外方に傾斜して設けられていることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、
前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、
前記複数の分散板は、中央部の前記孔の径が周辺部の前記孔の径よりも小さくされた少なくとも1つの分散板を備えることを特徴する有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項7】
請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記ガス吐出部は、
前記輸送管から送られてきた前記ガスを受け入れる受入口と、その受入口から受け入れた前記ガスを前記チャンバ内に吐出する吐出口とを有する管体をさらに備え、
前記複数のガス流変換手段は、前記管体内に互いに対向して配置された複数の分散板を備え、
前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、
前記複数の分散板のうちの前記ガス流の最上流側に配置される分散板は、
前記受入口に対向し、前記孔が設けられていない部分を有することを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項8】
請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記ガス吐出部は、
前記輸送管から送られてきた前記ガスを受け入れる受入口と、その受入口から受け入れた前記ガスを前記チャンバ内に吐出する吐出口とを有する管体をさらに備え、
前記複数のガス流変換手段は、
前記管体内において前記受入口に対向するように配置され、前記受入口から正面方向に送り出される前記ガスの流れを外方側に変換するガス流変換部材を備えることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段のうちの少なくとも1つのガス流変換手段は、少なくとも表面部がフッ素系樹脂により形成されていることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段のうちの少なくとも1つのガス流変換手段は、少なくとも表面部が導電性を有し、定電位に設定されていることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記輸送管は、前記プラズマガスを下方から前記チャンバ内に導入することを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記プラズマガスを排気するための排気管をさらに備え、
前記排気管が前記プラズマガスを上方から前記チャンバ外に排気していることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置を用いて使用済みのマスクを洗浄する工程と、
前記洗浄したマスクを使用して基板上に複数の有機発光層を形成し、複数の有機EL素子を形成する工程と、を備えたことを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項1】
有機EL素子の有機層の形成に用いられるマスクをクリーニングする有機EL素子用マスククリーニング装置であって、
プラズマガスを生成するプラズマガス生成部と、
前記マスクを収容するチャンバと、
前記プラズマガスを前記プラズマガス生成部から前記チャンバ内に輸送する輸送管と、
前記チャンバ内に設けられ、前記輸送管によって導入されたガスの流れを分散又は方向転換させる複数のガス流変換手段と、
を備えることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項2】
有機EL素子の有機層の形成に用いられるマスクをクリーニングする有機EL素子用マスククリーニング装置であって、
プラズマガスを生成するプラズマガス生成部と、
前記マスクを収容するチャンバと、
前記プラズマガスを前記プラズマガス生成部から前記チャンバ内に輸送する輸送管と、
前記チャンバ内に設けられ、前記輸送管によって送られてきたガスを前記マスクに向けて吐出するガス吐出手段と、
を備え、
ガス吐出手段は、
前記ガス吐出手段のガス流路内に設けられ、前記ガスの流れを分散又は方向転換させる複数のガス流変換手段を備えることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段は、ガスを通す複数の孔が設けられた少なくとも1つの分散板を備えることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、
前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、
前記各分散板の前記孔は、隣り合う前記分散板同士で対向しないように設けられていることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、
前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、
前記複数の分散板のうちの前記ガス流の最上流側の分散板に設けられる前記孔は、その孔を通過した前記ガスが斜め外方に向いて吹き出すように前記分散板に対して斜め外方に傾斜して設けられていることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段は、互いに対向して配置された複数の分散板を備え、
前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、
前記複数の分散板は、中央部の前記孔の径が周辺部の前記孔の径よりも小さくされた少なくとも1つの分散板を備えることを特徴する有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項7】
請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記ガス吐出部は、
前記輸送管から送られてきた前記ガスを受け入れる受入口と、その受入口から受け入れた前記ガスを前記チャンバ内に吐出する吐出口とを有する管体をさらに備え、
前記複数のガス流変換手段は、前記管体内に互いに対向して配置された複数の分散板を備え、
前記各分散板はガスを通す複数の孔を有し、
前記複数の分散板のうちの前記ガス流の最上流側に配置される分散板は、
前記受入口に対向し、前記孔が設けられていない部分を有することを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項8】
請求項2に記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記ガス吐出部は、
前記輸送管から送られてきた前記ガスを受け入れる受入口と、その受入口から受け入れた前記ガスを前記チャンバ内に吐出する吐出口とを有する管体をさらに備え、
前記複数のガス流変換手段は、
前記管体内において前記受入口に対向するように配置され、前記受入口から正面方向に送り出される前記ガスの流れを外方側に変換するガス流変換部材を備えることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段のうちの少なくとも1つのガス流変換手段は、少なくとも表面部がフッ素系樹脂により形成されていることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記複数のガス流変換手段のうちの少なくとも1つのガス流変換手段は、少なくとも表面部が導電性を有し、定電位に設定されていることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記輸送管は、前記プラズマガスを下方から前記チャンバ内に導入することを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置において、
前記プラズマガスを排気するための排気管をさらに備え、
前記排気管が前記プラズマガスを上方から前記チャンバ外に排気していることを特徴とする有機EL素子用マスククリーニング装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の有機EL素子用マスククリーニング装置を用いて使用済みのマスクを洗浄する工程と、
前記洗浄したマスクを使用して基板上に複数の有機発光層を形成し、複数の有機EL素子を形成する工程と、を備えたことを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−179829(P2007−179829A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375890(P2005−375890)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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