説明

有機EL素子用基板の製造方法

【課題】第1隔壁部材と第2隔壁部材とから構成される隔壁を少ない工程数で形成することが可能な有機EL素子用基板の作製方法を提供する。
【解決手段】前記支持基板上に前記第1隔壁部材形成用の第1の薄膜を形成する工程と、前記第1の薄膜上に感光性樹脂からなる第2隔壁部材形成用の第2の薄膜を形成する工程と、第2の薄膜の所定の部位を露光した後に現像し、前記支持基板の厚み方向の一方から見て、前記第2の薄膜のうちで、第1隔壁部材が形成される部位を除く残余の部位を除去する工程と、第1の薄膜のうちの、第2の薄膜で覆われた部位を除く残余の部位を、エッチングを施すことによって除去し、第1隔壁部材を形成する工程と、前記第2の薄膜の表面部をエッチングによって除去し、第2隔壁部材を形成する工程とを備える有機EL素子用基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL素子用基板の製造方法および発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、その構成や原理が異なる様々な種類のものがある。そのひとつとして、有機EL(Electro Luminescence)素子を画素の光源として用いた表示装置が現在実用化されつつある。この表示装置は画素として機能する多数の有機EL素子を備える。多数の有機EL素子は基板上に整列して配置されている。通常、基板上には有機EL素子を区分けするための隔壁が配置されており、この隔壁で区分けされた領域に各有機EL素子がそれぞれ配置される。
【0003】
図1は多数の有機EL素子15が設けられた発光装置の一部を拡大して模式的に示す平面図である。また図2は隔壁によって区分けされた発光装置の1区分を拡大して模式的に示す断面図である。図1では、一例として格子状の隔壁12が設けられた発光装置を示しており、また隔壁12が設けられている部分にハッチングを施している。図1および図2に示すように有機EL素子15は隔壁12に囲まれる領域に設けられる。
【0004】
有機EL素子15は陽極および陰極からなる一対の電極16,18と、該電極16,18間に設けられる1または複数の有機EL層17とから構成される。有機EL層17は、たとえば塗布法によって形成することができる。塗布法では、有機EL層17となる材料を含むインキを隔壁12に囲まれた領域に供給し、さらにこれを固化することによって有機EL層17を形成している。
【0005】
隔壁として、親液性を示す部材を使用した場合、隔壁に囲まれた領域に供給されたインキが隔壁の表面を伝って外に溢れ出ることがある。そこで、隔壁に囲まれた領域内にインキを保持させるためには、隔壁にはある程度の撥液性を示すものを使用することが好ましい。その一方で、撥液性を示す隔壁を使用した場合、隔壁表面の性状が有機EL層の成形性に影響をおよぼすことがある。たとえば撥液性を示す隔壁に囲まれる領域にインキを供給した場合、インキは隔壁表面に弾かれつつ乾燥し、固化するため、有機EL層と隔壁との境界領域において、有機EL層の膜厚が中央部の膜厚と異なることがある。そのため均一な膜厚の有機EL層を得るためには、隔壁12にはある程度の親液性を示すものを使用することが好ましい。このように、インキの保持性の観点からはある程度の撥液性を示す隔壁が必要とされる一方で、有機EL層の成形性の観点からはある程度の親液性を示す隔壁が必要とされる。
【0006】
そこで、従来の技術では隔壁12に求められる相反する要求を同時に満たすために、図2に示すようにインキに対する濡れ性が互いに異なる第1隔壁部材13と、第2隔壁部材14とを積層した隔壁12が用いられている。すなわち隔壁12は、親液性を示す第1隔壁部材13と、撥液性を示す第2隔壁部材14とが積層されて構成される。なお平面視において第2隔壁部材14は、第1隔壁部材13に対してその外縁が第1隔壁部材13内に退避するように設けられている。これは有機EL素子が発光する領域において、撥液性を示す第2隔壁部材14の存在が有機EL層の成形性に与える影響を低減するためである(たとえば特許文献1参照)。
【0007】
以下では第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とを形成するための工程を説明する。図5は第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とを形成する工程を説明するための図である。
【0008】
まず第1隔壁部材形成用の第1の薄膜23を支持基板11上に全面に形成する(図5(I)参照)。次に第1の薄膜23上に感光性樹脂膜31(図はポジ型感光性樹脂膜を使用した場合)を成膜し、さらにフォトマスク32を介して感光性樹脂膜31の所定の部位を露光する(図5(II)参照)。なお図5(II)および図5(V)において太矢印記号は光の進む向きを模式的に示している。その後、感光性樹脂膜31を現像、ポストベークすることによって第1の薄膜23上に感光性樹脂からなるマスク31を形成する(図5(III)参照)。そしてこのマスク31を介してエッチングを行うことにより、第1の薄膜23のうちで、その表面がマスク31から露出する部位が除去され、第1隔壁部材13が形成される(図5(IV)参照)。続いて、マスク31を除去し、第2隔壁部材14を形成する。まず感光性樹脂を全面に塗布成膜することによって第2隔壁部材形成用の第2の薄膜24を形成し、さらにフォトマスク33を介して第2の薄膜24の所定の部位を露光する(図5(V)参照)。なお本工程において使用するフォトマスク33は、図5(II)に示す工程において使用されるフォトマスク32よりもその開口の幅が広い。次に第2の薄膜24を現像、ポストベークすることによって、第2隔壁部材14を形成している(図5(VI)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第99/48339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とから構成される隔壁12を形成するためには、上述のように多数の工程が必要とされるため、その工程数を削減することが求められている。
【0011】
したがって本発明の目的は、第1隔壁部材と第2隔壁部材とから構成される隔壁を少ない工程数で形成することが可能な有機EL素子用基板の作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、支持基板と、
該支持基板上に設けられる複数の有機EL素子を、当該支持基板上において区分けするための隔壁とを備える有機EL素子用基板であり、
前記隔壁が、第1隔壁部材と、該第1隔壁部材上に設けられる第2隔壁部材とからなる有機EL素子用基板の製造方法であって、
前記支持基板上に前記第1隔壁部材形成用の第1の薄膜を形成する工程と、
前記第1の薄膜上に感光性樹脂からなる第2隔壁部材形成用の第2の薄膜を形成する工程と、
第2の薄膜の所定の部位を露光した後に現像し、前記支持基板の厚み方向の一方から見て、前記第2の薄膜のうちで、第1隔壁部材が形成される部位を除く残余の部位を除去する工程と、
第1の薄膜のうちの、第2の薄膜で覆われた部位を除く残余の部位を、エッチングを施すことによって除去し、第1隔壁部材を形成する工程と、
前記第2の薄膜の表面部をエッチングによって除去し、第2隔壁部材を形成する工程とを備える有機EL素子用基板の製造方法に関する。
【0013】
また本発明は、前記第2の薄膜の表面部をエッチングする方法が、アッシングである、有機EL素子用基板の製造方法に関する。
【0014】
また本発明は、前記第1隔壁部材が無機物からなり、
第2隔壁部材を形成する工程の後に、フッ化物を含有する雰囲気中でプラズマ処理を行うことにより、第2隔壁部材の表面に撥液性を付与する工程をさらに含む、有機EL素子用基板の製造方法に関する。
【0015】
また本発明は、前記有機EL素子用基板の製造方法によって有機EL素子用基板を作製する工程と、
有機EL素子用基板に有機EL素子を形成する工程とを含む、発光装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1隔壁部材と第2隔壁部材とから構成される隔壁を備える有機EL素子用基板を少ない工程数で作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】多数の有機EL素子15が設けられた発光装置の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図2】隔壁12によって区分けされた発光装置の1区分を拡大して模式的に示す断面図である。
【図3】第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とを形成する工程を説明するための図である。
【図4】有機EL素子15を形成する工程を説明するための図である。
【図5】第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とを形成する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の有機EL素子用基板の製造方法は、支持基板と、該支持基板上に設けられる複数の有機EL素子を、当該支持基板上において区分けするための隔壁とを備える有機EL素子用基板であり、前記隔壁が、第1隔壁部材と、該第1隔壁部材上に設けられる第2隔壁部材とからなる有機EL素子用基板の製造方法であって、前記支持基板上に前記第1隔壁部材形成用の第1の薄膜を形成する工程と、前記第1の薄膜上に感光性樹脂からなる第2隔壁部材形成用の第2の薄膜を形成し、第2の薄膜の所定の部位を露光した後に現像し、前記支持基板の厚み方向の一方から見て、前記第2の薄膜のうちで、第1隔壁部材が形成される部位を除く残余の部位を除去する工程と、第1の薄膜のうちの、第2の薄膜で覆われた部位を除く残余の部位を、エッチングを施すことによって除去し、第1隔壁部材を形成する工程と、前記第2の薄膜の表面部をエッチングによって除去し、第2隔壁部材を形成する工程とを備える。また本発明はさらに、有機EL素子用基板に有機EL素子を形成し、発光装置を作製する発光装置の製造方法に関する。
【0019】
本発明の発光装置はたとえば表示装置として利用される。表示装置は主にアクティブマトリクス駆動型の装置と、パッシブマトリクス駆動型の装置とがある。本発明は両方の型の表示装置に適用可能であるが、本実施形態では一例としてアクティブマトリクス駆動型の表示装置に適用される発光装置について説明する。
【0020】
<発光装置の構成>
まず発光装置の構成について説明する。本実施形態の製造方法によって作製される発光装置の構成は、図1および図2に示す従来の技術の発光装置の構成と同じなので、以下では図1および図2を援用して、本実施形態の発光装置の構成について説明する。図1は多数の有機EL素子15が設けられた発光装置の一部を拡大して模式的に示す平面図である。また図2は隔壁12によって区分けされた発光装置の1区分を拡大して模式的に示す断面図である。図1では、一例として格子状の隔壁12が設けられた発光装置を示しており、また隔壁12が設けられる部分にハッチングを施している。図1および図2に示すように有機EL素子15は隔壁12に囲まれる領域に設けられる。
【0021】
隔壁12は支持基板11上に設けられる。隔壁12は第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とが積層されて構成される。本実施形態では支持基板11、第1隔壁部材13、および第2隔壁部材14がこの順で積層されている。以下において第1隔壁部材13および第2隔壁部材14を特に区別せずに説明する場合、第1隔壁部材13および第2隔壁部材14を総称して隔壁12という。
【0022】
本実施形態における隔壁12は、支持基板11の厚み方向Zの一方から見て(以下、「平面視で」ということがある。)格子状に設けられる。すなわち隔壁12は、行方向Xに延在する複数本の部材と、列方向Yに延在する複数本の部材とから構成される。行方向Xに延在する複数本の部材は、列方向Yに所定の間隔をあけて配置され、列方向Yに延在する複数本の部材は、行方向Xに所定の間隔をあけて配置される。そして行方向Xに延在する複数本の部材と、列方向Yに延在する部材とは、互いに垂直に交差し、一体的に形成されている。換言すると隔壁12は、平板状の部材に、マトリクス状に配置される複数の開口部19が形成された形状である。すなわち隔壁には行方向Xに所定の間隔をあけるとともに、列方向Yに所定の間隔をあけて配置される複数の開口部19が形成されており、この開口部19が、隔壁に囲まれる領域に相当する。なお行方向Xと列方向Yとは、互いに垂直であって、かつそれぞれが支持基板の厚み方向Zに垂直な方向である。隔壁12を構成する上述の複数本の部材の幅は、発光装置の仕様や製造工程の簡易さなどによって決まるが、通常10μm〜100μm程度である。
【0023】
第1隔壁部材13および第2隔壁部材14は、平面視で、それぞれ上述のように格子状に設けられるが、平面視におけるその外縁が互いに異なる。第2隔壁部材14は、その外縁が、第1隔壁部材13の外縁から、第1隔壁部材13上の内側に退避して形成されている。換言すると、平面視で、第1隔壁部材13は、その外縁が、第2隔壁部材14の外縁からはみ出すように形成されている。
【0024】
第1隔壁部材13の厚みは、発光装置の仕様や製造工程の簡易さなどによって決まるが、通常30nm〜500nm程度である。また第2隔壁部材14の厚みは、発光装置の仕様や製造工程の簡易さなどによって決まるが、通常0.5μm〜5μm程度である。
【0025】
支持基板11上には複数の有機EL素子15が設けられる。各有機EL素子15は、それぞれ隔壁12に囲まれる領域に設けられる。すなわち隔壁12に形成された複数の開口部19に各有機EL素子15が設けられる。本実施形態では格子状の隔壁12が設けられるので、複数の有機EL素子15はそれぞれマトリクス状に配置される。すなわち複数の有機EL素子15は、それぞれ行方向Xに所定の間隔をあけるとともに、列方向Yに所定の間隔をあけて配置される。有機EL素子15または開口部19のサイズは、発光装置の仕様や製造工程の簡易さなどによって決まるが、たとえば表示装置では有機EL素子15または開口部19の行方向Xおよび列方向Yの幅はそれぞれ30μm〜300μm程度である。
【0026】
有機EL素子15は、陽極および陰極から構成される一対の電極と、該電極間に設けられる有機EL層17とから構成される。有機EL層17は、1層のみから構成されていてもよいが、複数の層が積層されて構成されていてもよい。なお有機EL素子15は有機EL層として少なくとも1層の発光層を備える。
【0027】
以下では陽極および陰極から構成される一対の電極のうちの、支持基板寄りに配置される一方の電極を第1電極16といい、この第1電極16よりも支持基板11から離間して配置される他方の電極を第2電極18という。
【0028】
本実施形態ではアクティブマトリクス駆動型の基板が用いられる。そのため支持基板11には有機EL素子15と同数の第1電極16が設けられる。複数の第1電極16は、複数の有機EL素子15と同様にマトリクス状に配置される。すなわち複数の第1電極16は、それぞれ行方向Xに所定の間隔をあけるとともに、列方向Yに所定の間隔をあけて配置される。第1電極16は、薄膜状に形成され、平面視で、たとえば略矩形状や略楕円形状などに形成される。第1電極16は、平面視で、主に第1隔壁部材13の設けられる領域を除く領域に形成されるが、本実施形態ではその周縁部が第1隔壁部材13に覆われている。換言すると本実施形態における第1隔壁部材13は、第1電極16の周縁部を覆うように形成されている。
【0029】
有機EL層17は、有機EL素子15のうちで、第1電極16および第2電極18に挟持される全ての層を意味する。有機EL層17としては、前述したように少なくとも発光層が設けられるが、この他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層および電子注入層などが必要に応じて設けられる。有機EL層17は、第1電極16上であって、かつ隔壁12に囲まれた領域に設けられる。すなわち有機EL層17は、第1電極16上であって、開口部19に設けられる。
【0030】
第2電極18は、本実施形態では複数の有機EL素子15に共通の電極として設けられる。すなわち第2電極18は、有機EL層17上のみならず、隔壁12上にも設けられ、複数の有機EL素子15にまたがって、連続して形成されている。
【0031】
<有機EL素子用基板および発光装置の製造方法>
次に図3および図4を参照して、有機EL素子用基板および発光装置の製造方法について説明する。図3は、第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とを形成する工程を説明するための図であり、図4は、有機EL素子15を形成する工程を説明するための図である。
【0032】
(第1の薄膜を形成する工程)
本工程では支持基板11上に第1隔壁部材形成用の第1の薄膜23を形成する(図3(I)参照)。なお第1隔壁部材形成用の第1の薄膜23とは、本工程の後の工程でさらに加工されることによって、第1隔壁部材13となる薄膜を意味する。
【0033】
第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とは、インキに対する濡れ性が異なる部材によって構成される。なお同じ材料によって第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とを形成し、その後、一方の隔壁部材に親液性処理または撥液性処理を施すことによってインキに対する濡れ性を異ならせてもよいが、通常は異なる材料によって第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とを形成し、その濡れ性を異ならせている。本実施形態では工程の簡易さ、および濡れ性の差異の大きさなどを勘案して、第1隔壁部材13が無機物から構成され、第2隔壁部材14が有機物から構成されることが好ましい。そのため本工程では第1の薄膜23として、無機物からなる薄膜を形成する。
【0034】
なお本実施形態では上述した第1電極16が予めその上に形成された支持基板11上に第1の薄膜23を形成する。すなわち第1の薄膜23は、複数の第1電極16を覆って、支持基板11に一面に形成される。また本実施形態ではアクティブマトリクス型の表示装置を実現するために、複数の有機EL素子を個別に駆動するための回路が予め形成された基板を、支持基板11として使用することができる。たとえばTFT(Thin Film Transistor)などが予め形成された基板を支持基板11として使用することができる。
【0035】
第1の薄膜23は、たとえば無機酸化物や無機窒化物から構成される。たとえば第1の薄膜23は、SiO、SiNから構成される。
【0036】
第1の薄膜23は、たとえばプラズマCVD法によって形成される。
【0037】
(第2の薄膜を形成する工程)
本工程では第1の薄膜23上に感光性樹脂からなる第2隔壁部材形成用の第2の薄膜24を形成する。なお第2隔壁部材形成用の第2の薄膜24とは、本工程の後の工程でさらに加工されることによって、第2隔壁部材14となる薄膜を意味する。後述するように、この第2の薄膜24は、第1の薄膜23をエッチングする際にマスクとして利用される。
【0038】
第2の薄膜24はたとえばアクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂およびノボラック樹脂などから構成される。
【0039】
第2の薄膜24は所定の塗布法によって第1の薄膜23上に形成される(図3(II)参照)。塗布法としてはたとえばスピンコート法やスリットコート法などがあげられる。なお第2の薄膜24を露光する前に、通常は第2の薄膜24にプリベークを施す。プリベークでは、第2の薄膜24に含まれる溶媒を蒸発させる。
【0040】
(第2の薄膜を現像する工程)
本工程では、第2の薄膜24の所定の部位を露光した後に現像し、支持基板11の厚み方向の一方から見て、第2の薄膜24のうちで、第1隔壁部材13が形成される部位を除く残余の部位を除去する。
【0041】
本工程において第2の薄膜24を露光する部位は、第2薄膜24に用いられる感光性樹脂の種類によって異なる。すなわちポジ型の感光性樹脂を使用するか、ネガ型の感光性樹脂を使用するかによって露光する部位が異なる。本実施形態ではポジ型の感光性樹脂を使用して第2の薄膜24を形成する。そのため、本工程では第2の薄膜24の除去すべき部位を露光する。たとえばフォトマスク32を介して第2の薄膜24に光を照射することによって露光を行う(図3(III)参照)。なお図3(III)において矢印記号は光の進む向きを模式的に示している。本実施形態では、平面視で、第1隔壁部材13が形成される領域を除く残余の領域に光を照射する。露光する際の光源には、たとえばKrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを使用することができる。
【0042】
露光した後に、第2の薄膜24を現像する(図3(IV)参照)。現像は浸漬法、パドル法、スプレー法などによって行われる。この現像液にはたとえばTMAH(Tetra-methyl-ammonium-hydroxyde)水溶液や水酸化カリウムなどを用いることができる。その後必要に応じてリンスを行い、支持基板11の厚み方向の一方から見て、第2の薄膜24のうちで、第1隔壁部材13が形成される部位を除く残余の部位を除去する。これによって、第1の薄膜23のうちで、第1隔壁部材13が形成される部位が第2の薄膜24で覆われ、第1隔壁部材13が形成される部位を除く残余の領域が第2の薄膜24から露出する。なお第2の薄膜24の形状は、後述する第1の薄膜23のエッチングの精度などを考慮して設定される。そのため、平面視で、第2の薄膜24の形状は、第1隔壁部材13が形成される部位と完全には一致していないこともある。すなわち第2の薄膜24は、平面視で、第1隔壁部材13が形成される部位と略一致する領域に形成されることもある。
【0043】
(第1隔壁部材を形成する工程)
本工程では第1の薄膜23のうちの、第2の薄膜24で覆われた部位を除く残余の部位を、エッチングを施すことによって除去し、第1隔壁部材13を形成する(図3(V)参照)。
【0044】
エッチングは、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンビームエッチング、反応性レーザービームエッチング、および反応性ガスエッチングなどのドライエッチング、またはウエットエッチングによって行われる。本実施形態ではたとえばCF、CHF、Cなどのエッチングガスを用いた反応性イオンエッチングによってエッチングを行う。このエッチングによって、第1の薄膜23に開口が形成され、結果として格子状の第1隔壁部材13が得られる。
【0045】
(第2隔壁部材を形成する工程)
本工程では第2の薄膜24の表面部をエッチングによって除去し、第2隔壁部材を形成する(図3(VI)参照)。本工程のエッチングを施す前には、第2隔壁部材14の外縁は第1隔壁部材13の外縁と一致しているが(図3(V)参照)、本工程のエッチングを施すことによって、平面視で、第2隔壁部材14の外縁が第1隔壁部材13内に退避し、結果として、上述したように、平面視で、第1隔壁部材13の内側に配置される第2隔壁部材14が形成される。
【0046】
本工程のエッチングは、第2の薄膜24の表面部を除去することができるエッチングであればよい。たとえばアッシングによって第2の薄膜24の表面部を除去することができる。
【0047】
アッシングは光励起アッシングとプラズマアッシングとに大別されるが、本実施形態では酸素ガスを用いたプラズマアッシングによって第2の薄膜24の表面部を除去することが好ましい。このように第2の薄膜24の表面部を除去することによって、第1隔壁部材13の外縁と第2隔壁部材14の外縁との間に、所定の間隔をあけることができる。なお第1隔壁部材13の外縁と第2隔壁部材14の外縁との間隔は通常0.1μm〜3μm程度である。そして除去すべき第2の薄膜24の表面部の厚さは、第1隔壁部材13の外縁と第2隔壁部材14の外縁との間に設けるべき間隔、および第2の薄膜24のテーパ形状によって決まるが、0.05μm〜1.5μm程度である。本工程において除去する第2の薄膜24の表面部の厚さは、たとえばアッシングを行う時間を調整することによって制御することができる。
【0048】
アッシングはドライエッチング装置によって行うことができる。たとえばドライエッチング装置によって上述した第1の薄膜23のエッチングを行う場合、第1の薄膜23をエッチングした後に、ドライエッチング装置外に支持基板を搬出することなく、引き続きドライエッチング装置によってアッシングを行い、第2隔壁部材14を形成することができる。すなわち第1隔壁部材13を形成した後に、ドライエッチング装置外に支持基板を搬出することなく第2隔壁部材14を形成することができる。
【0049】
(第2隔壁部材に撥液性を付与する工程)
本実施形態のように第1隔壁部材13が無機物からなり、第2隔壁部材14が有機物からなる場合、親液性処理と撥液性処理とを施すことによって、第1隔壁部材13に親液性を付与する一方で、第2隔壁部材14に撥液性を付与することができる。
【0050】
まず親液性処理を行うことで、無機物からなる第1隔壁部材13と有機物からなる第2隔壁部材14とに親液性を付与する。次に本実施形態では、フッ化物を含有する雰囲気中でプラズマ処理を行うことにより、第2隔壁部材14の表面に撥液性を付与する。本処理におけるフッ化物は気体状であり、フッ化物としては、CF、CHF、CH、C、C、Cなどを用いることができる。このようなプラズマ処理を行うことにより、フッ素原子が第2隔壁部材14の表面に結合し、第2隔壁部材14に撥液性が付与される。なお無機物の表面は有機物表面と比較してフッ素化されにくいので、無機物からなる第1隔壁部材13は、このようなプラズマ処理によっても親液性を維持するため、第1隔壁部材13および第2隔壁部材14の親液性と撥液性との差異を大きくするとともに、より撥液性を示す第2隔壁部材14を得ることができる。
【0051】
(有機EL素子を形成する工程)
本工程では有機EL素子を形成する。なお本実施形態では第1電極16が予め形成されているため、さらに有機EL層17、第2電極18を形成することによって有機EL素子15を作製する。
【0052】
前述したように有機EL層17は塗布法によって形成される。すなわちまず有機EL層17となる有機EL材料を含むインキを、隔壁12に囲まれる領域(開口部19)に選択的に供給する。次に供給されたインキを固化することによって、有機EL層を形成する(図4(VII)参照)。
【0053】
インキを選択的に供給する方法には、インクジェットプリント法、凸版印刷法、凹版印刷法およびノズルコート法などの印刷法があげられる。
【0054】
なお全ての有機EL素子に共通する層を形成する場合、有機EL材料を含むインキを、隔壁12に囲まれる領域に選択的に供給する必要がないこともある。全ての有機EL素子に共通する層は、上述の印刷法によって隔壁12に囲まれる領域に、インキを選択的に供給することによって形成してもよいが、たとえばスピンコート法、キャピラリーコート法、ディップコート法などによって、全面にインキを塗布し、これを固化することによって形成してもよい。
【0055】
また前述したように有機EL層17は複数の層から構成されることがあるが、たとえば蒸着法などの塗布法とは異なる方法によって、複数ある層のうちの1層または2層以上の層を形成してもよい。
【0056】
次に第2電極18を形成する。第2電極18は本実施形態では全面に形成する(図4(VIII)参照)。すなわち有機EL層17上および隔壁12上に、全面に導電性薄膜を形成する。これによって全ての有機EL素子15に連続して設けられる第2電極18が形成される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、第1の薄膜23をエッチングする際のマスクとして第2の薄膜24を利用するとともに、このようにマスクとして利用される第2の薄膜24の表面部をエッチングすることによって第2隔壁部材14を形成している。
【0058】
背景技術において説明したように、従来技術においても第1の薄膜23のエッチングに用いられるマスクを形成している。すなわちこのマスクは第1隔壁部材13を形成するために必要な部材であるが、従来技術ではこのマスクとなるフォトレジストを一旦除去し、さらに複数の工程からなるフォトリソグラフィ法によって第2隔壁部材14を形成している。これに対して本実施形態では、マスクとして利用される第2の薄膜24の表面部を除去する工程を追加することによって第2隔壁部材14を形成している。すなわち本実施形態では第1隔壁部材13を形成するために必要な工程に、第2の薄膜24の表面部を除去するという工程を追加するだけで、第1隔壁部材13と第2隔壁部材14とを形成している。このような方法で隔壁12を形成することで、従来技術に比べて隔壁12を形成するために必要とされる工程数を削減することができる。
【0059】
さらに従来の技術ではフォトリソグラフィ法によって第2隔壁部材14を形成するため、その工程上、第1隔壁部材13を形成した後に一旦ドライエッチング装置の外に支持基板を搬出し、フォトレジストを剥離洗浄し、さらにフォトリソグラフィ法で第2隔壁部材を形成した後、プラズマ処理による親液性処理および撥液性処理を行うためにドライエッチング装置に支持基板を搬入する必要があるが、本実施形態では第1隔壁部材13を形成した後に、第2の薄膜24の表面部を除去することによって第2隔壁部材14を形成するので、上述したように第1隔壁部材13をエッチングにより形成した後、引き続きドライエッチング装置内で第2の薄膜24の表面部を除去し、第2隔壁部材14を形成することができ、さらに表面処理も引き続き同じドライエッチング装置内で行うことができる。そのため第1隔壁部材13を形成した後に、ドライエッチング装置の外に一旦支持基板を搬出し、フォトレジストを剥離洗浄し、フォトリソグラフィ法で第2隔壁部材を形成し、さらに基板をドライエッチング装置に搬入するという作業が不要になり、従来技術に比べて作業および製造工程を簡便化することができる。
【0060】
<有機EL素子の構成>
前述したように有機EL素子は種々の層構成をとりうるが、以下では有機EL素子の層構造、各層の構成、および各層の形成方法についてさらに詳しく説明する。
【0061】
前述したように有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる1または複数の有機EL層とを含んで構成され、1または複数の有機EL層として少なくとも1層の発光層を有する。なお有機EL素子は、無機物と有機物とを含む層、および無機層などを含んでいてもよい。有機層を構成する有機物としては、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、また低分子化合物と高分子化合物との混合物でもよい。有機層は、高分子化合物を含むことが好ましく、ポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10である高分子化合物を含むことが好ましい。
【0062】
陰極と発光層との間に設けられる有機EL層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に近い層を電子注入層といい、発光層に近い層を電子輸送層という。陽極と発光層との間に設けられる有機EL層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に近い層を正孔注入層といい、発光層に近い層を正孔輸送層という。
【0063】
本実施の形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/発光層/電子注入層/陰極
o)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
本実施の形態の有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜p)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記q)に示す層構成を挙げることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
q)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記r)に示す層構成を挙げることができる。
r)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、(構造単位B)xは、構造単位Bがx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0064】
ここで、電荷発生層とは電界を印加することにより正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、たとえば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0065】
有機EL素子は、陽極および陰極から構成される一対の電極のうちの陽極を陰極よりも支持基板寄りに配置して、支持基板に設けてもよく、また陰極を陽極よりも支持基板寄りに配置して、支持基板に設けてもよい。たとえば上記a)〜r)において、右側から順に各層を支持基板上に積層して有機EL素子を構成してもよく、また左側から順に各層を支持基板上に積層して有機EL素子を構成してもよい。
【0066】
積層する層の順序、層数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜設定することができる。
【0067】
次に、有機EL素子を構成する各層の材料および形成方法についてより具体的に説明する。
【0068】
<陽極>
発光層から放たれる光が陽極を通って素子外に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。
【0069】
陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。
【0070】
陽極の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0071】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から放たれる光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光に対する反射率の高い材料が好ましい。陰極には、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられることもある。
【0072】
陰極の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0073】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【0074】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系化合物、スターバースト型アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0075】
正孔注入層の膜厚は、求められる特性および成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0076】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0077】
正孔輸送層の膜厚は、求められる特性および成膜工程の簡易さなどを考慮して設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0078】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、たとえば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお発光層を構成する有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、塗布法によって発光層を形成する場合には、発光層は高分子化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量はたとえば10〜10程度である。発光層を構成する発光材料としては、たとえば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0079】
(色素系材料)
色素系材料としては、たとえば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
【0080】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、たとえばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、たとえばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0081】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
【0082】
発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0083】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0084】
電子輸送層の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0085】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、たとえばLiF/Caなどを挙げることができる。
【0086】
電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0087】
上述の各有機EL層は、上述した塗布法、真空蒸着法、およびラミネート法などによって形成することができる。
【0088】
なお塗布法では、各有機EL層となる有機EL材料を含むインキを塗布成膜することによって有機EL層を形成するが、その際に使用されるインキの溶媒には、たとえばクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水などが用いられる。
【符号の説明】
【0089】
11 支持基板
12 隔壁
13 第1隔壁部材
14 第2隔壁部材
15 有機EL素子
16 第1電極
17 有機EL層
18 第2電極
19 開口部
23 第1の薄膜
24 第2の薄膜
31 感光性樹脂膜(マスク)
32,33 フォトマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
該支持基板上に設けられる複数の有機EL素子を、当該支持基板上において区分けするための隔壁とを備える有機EL素子用基板であり、
前記隔壁が、第1隔壁部材と、該第1隔壁部材上に設けられる第2隔壁部材とからなる有機EL素子用基板の製造方法であって、
前記支持基板上に前記第1隔壁部材形成用の第1の薄膜を形成する工程と、
前記第1の薄膜上に感光性樹脂からなる第2隔壁部材形成用の第2の薄膜を形成する工程と、
第2の薄膜の所定の部位を露光した後に現像し、前記支持基板の厚み方向の一方から見て、前記第2の薄膜のうちで、第1隔壁部材が形成される部位を除く残余の部位を除去する工程と、
第1の薄膜のうちの、第2の薄膜で覆われた部位を除く残余の部位を、エッチングを施すことによって除去し、第1隔壁部材を形成する工程と、
前記第2の薄膜の表面部をエッチングによって除去し、第2隔壁部材を形成する工程とを備える有機EL素子用基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2の薄膜の表面部をエッチングする方法が、アッシングである、請求項1記載の有機EL素子用基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1隔壁部材が無機物からなり、
第2隔壁部材を形成する工程の後に、フッ化物を含有する雰囲気中でプラズマ処理を行うことにより、第2隔壁部材の表面に撥液性を付与する工程をさらに含む、請求項1または2記載の有機EL素子用基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL素子用基板の製造方法によって有機EL素子用基板を作製する工程と、
有機EL素子用基板に有機EL素子を形成する工程とを含む、発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−216250(P2011−216250A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81667(P2010−81667)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】