説明

有機EL表示装置の製造方法

【課題】マスクの開口幅を確保しつつマスクの寿命を長くさせると共に作業効率を良好にする有機EL表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板10と、二種類以上の副画素(11g、11r、11b)からなる複数の画素11と、から構成され、画素11が、基板10の表示領域上に並置して設けられ、該副画素のうち一種類の副画素が、所定の間隔を持って設けられる特定副画素である有機EL表示装置1の製造方法において、該特定副画素を、以下の工程(i)〜(ii)により形成することを特徴とする、有機EL表示装置1の製造方法。
(i)表示領域の側端から数えて2n−1(nは、1以上の整数を表す。)番目の特定副画素に対応する位置に開口を有するマスクを使用し、該側端から数えて2n−1番目の特定副画素を選択的に形成する工程
(ii)該側端から数えて2n(nは、1以上の整数を表す。)番目の特定副画素に対応する位置に開口を有するマスクを使用し、該側端から数えて2n番目の特定副画素を選択的に形成する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は、自発光素子である有機EL素子からなる表示装置(ディスプレイ)である。このため、液晶のようにバックライトが不要であるだけでなく、軽量薄型が実現できるため、優れた応答速度、視野角、色再現性を備えた次世代ディスプレイとして注目されている。
【0003】
しかし、このように優れた性能を有する表示装置であるにもかかわらず、有機EL表示装置が、なかなか市場に出回らなかったのは、発光性能を有する有機化合物層(発光層)の加工が難しかったためである。一般に、フルカラーの有機EL表示装置を製造する際には、有機EL表示装置を構成する有機EL素子を、発光色(R,G,B)ごとに塗り分ける必要がある。ここで有機EL素子の塗り分ける際に、特に、発光層の構成材料が低分子系の材料である場合は、マスクを用いた蒸着プロセスが常用されている。しかし、この蒸着プロセスで用いられるマスクは、高価である。またこのマスク精度が、有機EL表示装置の精度を決定するため、フォトリソ工程で精度が決定する液晶ディスプレイと比べて、特に、表示装置の高精細化という点ではまだ十分とはいえなかった。
【0004】
ところで有機EL表示装置を製造するのに使用されるシャドウマスクは、大別すると、メッキにより形成されるメッキマスクと、エッチングにより形成されるエッチングマスクがある。有機EL表示装置を構成し、発光色が赤、青、緑のいずれかである有機EL素子の発光層は、シャドウマスクを用いて各発光色毎に形成される。具体的には、所定の発光層を形成するために用いられるシャドウマスクを、蒸着源とTFT等が形成された基板との間に置き、蒸着源とシャドウマスクとの間に設けられた遮蔽板が開閉することにより、蒸着時間を制御して、所定の膜厚とパターンで形成される。
【0005】
このとき、蒸着によって各色発光層を塗り分ける方法として、具体的には、特許文献1及び2にて示される方法が開示されている。
【0006】
一方、近年、携帯機器等に求められるディスプレイ(有機EL表示装置)の高精細化は、急激な勢いで進展をみせている。例えば、3インチ相当のディスプレイにおいては、VGA(縦480画素X横640画素)仕様が、一般的になって来ている。
【0007】
しかしながら、VGA仕様で有機EL表示装置を構築する場合、有機EL表示装置を構成する有機EL素子を形成する際に使用されるシャドウマスクの開口部のピッチ間隔は95μmになる。また有機EL表示装置に並置される有機EL素子の所定箇所に発光層を設ける際には、マスクと発光層形成前の基板とのアライメント精度が問題となる。シャドウマスクの開口部のピッチ間隔から、アライメント精度を差し引いた分が、有機EL素子を構成する発光層の幅となるからである。VGA仕様の場合、発光層の開口幅は、40μm以下にする必要があるため、マスクの開口幅も40μm以下に設計する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−110345号公報
【特許文献2】特開平10−312884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、有機EL表示装置を高精細化する際には、マスクの開口幅に応じてマスクの膜厚を薄くする必要がある。これは、マスクを形成する時に、エッチングを用いることに起因する。つまり開口幅が狭いマスクを製作する場合、マスクの精度を確保するために、マスクの膜厚を薄くする必要がある。しかし膜厚が薄くすると、マスクの機械強度が低下してしまう。ここでマスクの機械強度が低下していると、例えば、マスクに付着した有機EL層の構成材料を除去してマスクを再生利用するために、マスクを定期的に液中で洗浄する際に、マスクが変形しやすくなってしまう。具体的には、洗浄液からマスクを取り出した際に、マスク開口部に付着した洗浄液の表面張力により、開口部同士が引きつけ合い、マスクにスリット変形が発生してしまう。このため、マスクの膜厚を薄くすると、マスクの寿命が短くなり、有機ELの製造コストが大幅に上昇する問題があった。
【0010】
上記のマスクの膜厚の問題を解消するための方法として、マスク表面にメッキを形成させる方法がある。こうすることにより開口幅の狭さを確保しながら、マスクの膜厚を稼ぐことができる。
【0011】
しかしこの方法では、コストが大きくなり得られるマスクが非常に高価なものになってしまう。またメッキ形成する場合に常用されるNiCoは、一般に使われるマスクのインバー材に対して熱膨張係数が高く、使用上の精度を出すには、マスクを枠材に貼る際のテンションを、インバー材より大きくする必要がある。このため得られるマスクは塑性変形しやすいものとなる。従って、マスク製造における歩止まりが低下して、マスク自体がさらに高価になるため、有機ELの製造コストが大幅に上昇する問題があった。
【0012】
また上記のメッキ法を採用して、開口幅を狭くした上でマスク膜厚を厚くした場合は、蒸着源からマスクに向かって進む蒸着物質がどの入射角でマスク開口部に入るかによって有機EL素子の膜厚にばらつきが生じてしまう。なぜなら蒸着源は、一般的には、マスクに対して十分小さい点又は線状の開口から蒸着物質を放出するためである。従って蒸着物質がマスク開口部に入るときの入射角にとっては、蒸着物質はマスク開口部の壁面によって跳ね返される「けられ」が発生する。この「けられ」によりパターン形成された薄膜には膜厚むらが発生する。また「けられ」は、マスクの膜厚と蒸着物質がマスク開口部に入るときの入射角に由来するもので、マスクの開口は幅によらないが、マスクの開口幅が狭くなるほど、その影響度は大きくなるため、有機ELパネルの色純度に大きな影響を与える問題があった。
【0013】
マスクの強度を上げる別の手法としては、マスクの開口部に、一定間隔でブリッジを形成する事が考えられる。しかしながら、ブリッジを形成すれば、マスクのアライメント精度は、従来からの横方向のアライメント精度だけでなく、縦方向のアライメント精度も問題になる。その結果、有機EL素子の有機発光層の開口は、横方向だけでなく縦方向にも、予め小さく作る必要が生じるため、有機EL素子の発光部分の画素あたりの開口率が、大幅に低下する問題がある。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、マスクの開口幅を確保しつつマスクの寿命を長くさせると共に作業効率を良好にする有機EL表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の有機EL表示装置の製造方法は、基板と、
二種類以上の副画素からなる複数の画素と、から構成され、
該画素が、該基板の表示領域上に並置して設けられ、
該副画素のうち一種類の副画素が、所定の間隔を持って設けられる特定副画素である有機EL表示装置の製造方法において、
該特定副画素を、以下の工程(i)〜(ii)により形成することを特徴とする。
(i)表示領域の側端から数えて2n−1(nは、1以上の整数を表す。)番目の特定副画素に対応する位置に開口を有するマスクを使用し、該側端から数えて2n−1番目の特定副画素を選択的に形成する工程
(ii)該側端から数えて2n(nは、1以上の整数を表す。)番目の特定副画素に対応する位置に開口を有するマスクを使用し、該側端から数えて2n番目の特定副画素を選択的に形成する工程
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、マスクの開口幅を確保しつつマスクの寿命を長くさせると共に作業効率を良好にする有機EL表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の製造方法によって製造される有機EL表示装置の第一の例を示す模式図であり、(a)は、有機EL表示装置の平面該略図であり、(b)は、有機EL表示装置の断面該略図である。
【図2】本発明の製造方法の第一の実施形態における有機EL層の形成工程を示す概略図である。
【図3】特定副画素に対応する有機EL層を形成する際に使用した3種類のマスクを洗浄した後で発生するスリット変形の数を表すグラフである。
【図4】本発明の製造方法によって製造される有機EL表示装置の第二の例を示す模式図であり、(a)は、有機EL表示装置の平面模式図であり、(b)は、有機EL表示装置の断面模式図である。
【図5】本発明の製造方法の第二の実施形態における有機EL層の形成工程を示す概略図である。
【図6】本発明の製造方法によって製造される有機EL表示装置の第三の例を示す模式図であり、(a)は、有機EL表示装置の平面模式図であり、(b)は、有機EL表示装置の断面模式図である。
【図7】本発明の製造方法の第三の実施形態における有機EL層の形成工程を示す概略図である。
【図8】バンクを形成する際に使用したマスクを示す概略図である。
【図9】実施例1で使用した有機EL層の形成装置を示す概略図である。
【図10】実施例1における有機EL層、上部電極の形成プロセスを示す断面模式図である。
【図11】実施例1のG発光層の形成工程で使用したマスクの概略図である。
【図12】実施例2で使用した有機EL層及び上部電極の形成装置を示す概略図である。
【図13】実施例2における有機EL層、上部電極の形成プロセスを示す断面模式図である。
【図14】実施例2のR発光層・B発光層の形成工程で使用したマスクの概略図であり、(a)は、R発光層の形成工程で使用したマスクの概略図であり、(b)は、B発光層の形成工程で使用したマスクの概略図である。
【図15】実施例3における有機EL層、上部電極の形成プロセスを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第一の実施形態〕
まず本発明の製造方法によって製造される有機EL表示装置について説明する。
【0019】
本発明の製造方法によって製造される有機EL表示装置とは、基板と、二種類以上の副画素からなる複数の画素と、から構成される。
【0020】
以下、図面を参照しながら、この有機EL表示装置について説明する。
【0021】
図1は、本発明の製造方法によって製造される有機EL表示装置の第一の例を示す模式図であり、(a)は、有機EL表示装置の平面該略図であり、(b)は、有機EL表示装置の断面該略図である。
【0022】
図1の有機EL表示装置1は、基板10上の所定の領域、具体的には基板10の表示領域上に、複数の画素11が並置して設けられている。ここで並置とは、具体的には、図1に示すように画素11をマトリックス状に配置することをいう。尚、以下の説明において、画素11が設けられている基板10上の領域を表示領域という場合がある。
【0023】
有機EL表示装置1を構成する画素11は、R副画素11rと、G副画素11gと、B副画素11bとからなる部材である。ここで、画素11を構成する三種類の副画素(11r、11g、11b)は、それぞれ矩形形状であって、赤色、緑色又は青色の光を発する有機EL素子である。これら有機EL素子は、それぞれ、基板10上に設けられ、下部電極12と、有機EL層13と、上部電極14と、がこの順に積層されてなる電子素子である。尚、以下の説明において、有機EL層13を、各副画素(11r、11g、11b)に対応して、13r、13g、13bと言う場合がある。
【0024】
図1の有機EL表示装置1において、各副画素(11r、11g、11b)に対応する有機EL素子には、画素単位で電気信号が送られる。そしてこの電気信号によって各副画素(11r、11g、11b)に対応する有機EL素子のいずれかが駆動することにより、図1の有機EL表示装置1は、フルカラーの表示が可能となる。
【0025】
図1の有機EL表示装置1において、画素11を構成する各副画素(11r、11g、11b)の面積はほぼ等しい。また各副画素(11r、11g、11b)は、一定の間隔を持って均等に配列されている。ここで副画素の配列シークエンスは、図1より、表示領域の左端からRGBRGB・・・であるが、これに限定されるものではない。
【0026】
図1の有機EL表示装置1は、例えば、対角が約3インチ、縦横比が3対4の表示領域を有し、各色のラインが水平方向で480行、垂直方向で640列あるものから構成される表示装置である。説明の都合上、図1ではその一部を示している。
【0027】
図1の有機EL表示装置1の駆動方式としては、パッシブマトリクス方式でもよいし、アクティブマトリックス方式でもよい。ここで、アクティブマトリクス方式を採用する場合は、図1に示されるように、基材101上にTFT回路102が設けられるものを基板として使用してもよい。尚、図1の有機EL表示装置1において、TFT回路102は、下部電極12と電気接続され、外部回路15からの電気信号を制御するために設けられる。
【0028】
次に、図1の有機EL表示装置の製造方法について説明する。
【0029】
[基板の準備工程]
まず有機EL表示装置の構成部材である基板10を準備する。
【0030】
基板10として、ガラス等の基材101をそのまま使用し、後述する工程でこの基材上に電極層や有機EL層を形成してもよい。尚、アクティブマトリックス型の有機EL表示装置として製造する場合は、本工程において、基材上に、TFT回路102、具体的には、各有機EL素子を動作させるための素子回路、及び素子回路を動作させるための駆動回路をそれぞれ設ける。このとき各回路を接続する配線及び外部と接続するための接続端子も同時に設ける。
【0031】
ここで素子回路は、後の工程で有機EL素子が形成される表示領域に形成される。一方、駆動回路は、表示領域外に形成される。また各回路は、薄膜トランジスタ技術を用いて形成される。
【0032】
上記の回路、配線及び接続端子をそれぞれ形成した後、各素子回路上にSiN等からなる保護膜やアクリル等からなる平坦化膜を設ける。保護膜・平坦化膜を形成した後、電気的な接続のためのコンタクトホールを、フォトリソグラフィ技術等を用いて形成する。
【0033】
尚、基板10は、有機EL表示装置1基よりも大きな基板を用意し、予め複数の有機EL表示装置の素子回路が基板に形成されているものも使用できる。
【0034】
[下部電極の形成工程]
次に、基板10上に下部電極11を形成する。下部電極12は、光反射性の電極層であってもよいし、光透過性の電極層であってもよい。ただし、下部電極12及び後述する上部電極14のいずれかが光透過性の電極層である。
【0035】
光透過性の電極層として形成する場合、具体的な電極層として、酸化インジウム亜鉛や酸化インジウムスズ等の透明酸化物導電体からなる層が採用される。また透明酸化物導電体からなる層の代わりに、光を透過する程度に膜厚が薄い金属層を使用してよい。さらに上記透明酸化物導電体からなる層と、上記薄い金属層とを組合せた積層構成も採用される。
【0036】
一方、光反射性の電極層として形成する場合、具体的な電極層として、金属単体又は合金からなる金属薄膜や、この金属薄膜と透明酸化物導電体からなる薄膜を組み合わせた積層体が挙げられる。また下部電極12の形成方法として、公知の方法を用いることができる。
【0037】
尚、下部電極12を形成した後、必要に応じてアクリル等からなるバンク(図示せず)を設けてもよい。バンクは素子回路の下部電極12の露出領域を規定し、後の工程で形成される有機EL層の発光領域を規定するものである。ここでバンクに、下部電極のパターンの段差を覆い短絡を防止する機能をさらに備えてもよい。また、後述する蒸着工程(有機EL層の形成工程)に使用するマスクが下部電極12等の発光部に接触しないようスペーサの機能を兼ねてもよい。
【0038】
次に、上記のように、バンクまで形成した基板を真空蒸着装置に投入し、加熱処理や表面処理を施す。加熱処理は、バンクや平坦化膜に付着又は吸着している水分を除くための加熱工程であり、ニクロム線等の熱線処理等が好ましい。表面処理は、下部電極の清浄化をするための工程であり、具体的には、減圧UV処理等を行う。
【0039】
[有機EL層の形成工程]
次に、下部電極12上に有機EL層13を形成する。図2は、有機EL層の形成工程を示す概略図である。本工程は、図2に示されるように、基板10を、成膜面が下に向くように設置し、下方にある蒸着源21から有機EL層の構成材料を順次蒸着し有機EL層を堆積する。
【0040】
本工程を行う前に、まず図1に示される副画素のうち一種類の副画素を特定副画素として特定し、この特定副画素に対応する有機EL層を形成する。この特定副画素は、他の副画素が一定のパターンでかつ一定の幅を持って設けられるために所定の間隔を持って設けられる副画素である。この特定副画素は、具体的には、図1に示されるR副画素11r、G副画素11g又はB副画素11bである。
【0041】
本発明においては、この特定副画素を、以下の工程(i)〜(ii)により形成する。
(i)表示領域の側端から数えて2n−1(nは、1以上の整数を表す。)番目の特定副画素に対応する位置に開口を有するマスクを使用し、該側端から数えて2n−1番目の特定副画素を選択的に形成する工程
(ii)該側端から数えて2n(nは、1以上の整数を表す。)番目の特定副画素に対応する位置に開口を有するマスクを使用し、該側端から数えて2n番目の特定副画素を選択的に形成する工程
【0042】
上記工程(i)及び(ii)において、表示領域の側端とは、有機EL表示装置を平面から見たときの、最も左側又は右側に設けられている画素の外周をいう。本発明において、表示領域の側端は、画素の右側外周でもよいし左側外周でもよい。また、工程(i)及び工程(ii)を行う際に、その順番については、特に限定されない。
【0043】
以下に、より具体的な方法について説明する。
【0044】
まず図2(a)に示すように、特定副画素として選定したG副画素11gのうち、表示領域の左端から数えて2n−1番目のG副画素11gに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n−1番目のG副画素11gに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図1(a)の「ア」に位置する副画素に対応する有機EL層13gが形成される。
【0045】
次に図2(b)に示すように、G副画素11gのうち、表示領域の左端から数えて2n番目のG副画素11gに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n番目のG副画素11gに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図1(a)の「イ」に位置する副画素に対応する有機EL層13gが形成される。
【0046】
次に、R副画素11rのうち、表示領域の左端から数えて2n−1番目のR副画素11rに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n−1番目のR副画素11rに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図1(a)の「ウ」に位置する副画素に対応する有機EL層13rが形成される。
【0047】
次に、R副画素11rのうち、表示領域の左端から数えて2n番目のR副画素11rに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n番目のR副画素11rに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図1(a)の「エ」に位置する副画素に対応する有機EL層13rが形成される。
【0048】
次に、B副画素11bのうち、表示領域の左端から数えて2n−1番目のB副画素11bに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n−1番目のB副画素11bに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図1(a)の「オ」に位置する副画素に対応する有機EL層13bが形成される。
【0049】
次に、B副画素11bのうち、表示領域の左端から数えて2n番目のB副画素11bに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n番目のB副画素11bに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図1(a)の「カ」に位置する副画素に対応する有機EL層13bが形成される。
【0050】
以上の工程を経ることにより、各副画素に対応する有機EL層がそれぞれ形成される。
【0051】
G副画素11gに対応する有機EL層13gを形成する工程において、有機EL層13gを形成する順番は、図1(a)の「ア」、「イ」の順番でもよいし、「イ」、「ア」の順番でもよい。同様に、R副画素11rに対応する有機EL層13rを形成する工程において、有機EL層13rを形成する順番は、図1(a)の「ウ」、「エ」の順番でもよいし、「エ」、「ウ」の順番でもよい。またB副画素11bに対応する有機EL層を形成する工程において、有機EL層13bを形成する順番は、図1(a)の「オ」、「カ」の順番でもよいし、「カ」、「オ」の順番でもよい。
【0052】
本工程で形成される有機EL層(13g、13r、13b)は、少なくとも発光層を含む一層又は複数の層が積層されている積層体からなる層である。本工程において、図1(a)の「ア」〜「カ」で示される副画素(11g、11r、11b)に対応する有機EL層(13g、13r、13b)を形成するときは、マスクの寿命を考慮して、別個のマスクを使用するのが望ましい。つまり、有機EL層を形成するときは、合計6枚のマスクを用意するのが望ましい。
【0053】
ただし、発光層以外の有機化合物層を各副画素に共通する層として形成する場合、発光層以外の層を作成する際にマスクを使用する必要がないので、同色の副画素を形成するときに同じマスクを使用してもよい。このとき製造スループットは低下するが、同じマスクを各色の発光層を蒸着形成する工程で兼用することができると共に、マスクの枚数を減らすこともできる。また各色の蒸着装置は、同色の製造工程では、兼用してもかまわない。兼用する事で、蒸着装置内に仕込む有機EL層の構成材料を同じにすることができると共に、蒸着装置内の、るつぼ内の材料の容量が非常に似通った状態で、有機EL層の構成材料を蒸着することができる。この結果、材料のLOT違いによる材料起因の色ずれや、るつぼ内の材料容量差に基づく蒸着レートの違いから発生する膜厚ずれに基づく輝度ズレ等の不都合を未然に防止することが可能になる。
【0054】
一方、各副画素に対応する有機EL層を蒸着形成する際に、マスクの開口幅を副画素ごとに変えてもよい。
【0055】
ここで各副画素に対応する有機EL層を形成する際に使用されるマスクは、好ましくは、その開口ピッチが95μ以上であり、かつ開口幅が40μm以下である。各副画素に対応する有機EL層を形成する際に、加工精度の観点から、マスクの厚みはマスクの開口幅の約1.2倍未満とする必要がある。しかし、マスクの開口幅が40μm以下とするとマスクの厚みが50μm未満となるので、マスク自体の機械強度が大幅に低下する。そこで、マスク開口ピッチ95μm以上とすることにより、マスクの洗浄時においてスリットが変形されにくくなる。尚、ここでいうピッチとは、隣接するマスクの開口間の間隔を示すものであり、具体的には、マスク開口の幅とマスク開口間の距離との和である。
【0056】
以上のように、本工程においては、少なくとも特定副画素に対応する有機EL層を形成するにあたり、特定副画素1つおきに有機EL層が形成されるように開口が備わっているマスクを使用する。この結果、マスクの開口と開口との間の間隔を従来と比べて2倍以上の幅を取ることができるので、マスク自体の機械強度が増し、厚みの薄いマスクであってもマスク寿命が向上される。
【0057】
ところで、有機EL層を形成する際に使用したマスクは洗浄して再利用する。ここでマスクを洗浄する際に、マスクが有する開口の一部が変形することがある。この開口の変形はスリット変形と呼ばれており、マスクの寿命を決める要素となっている。尚、スリット変形は、マスクを洗浄した後の工程によって修正することができるが、スリット変形を修正する度にマスク自体に機械変形が発生し、修復不能なスリット変形が発生する可能性が高くなる。そして修復不能のスリット変形が一箇所でも発生した時点で、そのマスクは使用不能となる。このため、マスクの寿命は、1スリット変形あたりの修正不能発生確率の積で表され、スリット変形の数の差以上に効いていることがわかる。
【0058】
一方、少なくとも特定副画素に対応する有機EL層を2回に分けて形成する際に、マスクの使用方法としては、以下の2通りが考えられる。
(1)同じマスクを2回使う方法
(2)1回目、2回目にそれぞれ異なるマスクを使用する方法
【0059】
図3は、特定副画素に対応する有機EL層を形成する際に使用した3種類のマスクを洗浄した後で発生するスリット変形の数を表すグラフである。このグラフの縦軸はスリット変形の数を表しており、この数が小さければ、マスクの再生回数は自ずと多くなる。
【0060】
図3のグラフにおいて、サンプルA〜Cは、以下に説明するマスクである。尚、サンプルA〜Cの元となるマスクは、膜厚0.03mm、3インチVGA仕様の共通したマスクである。
サンプルA:上記(1)の方法で特定副画素を形成する際に使用したマスク
サンプルB:上記(2)の方法で特定副画素を形成する際に使用したマスクのうち1回目に使用したマスク
サンプルC:上記(2)の方法で特定副画素を形成する際に使用したマスクのうち2回目に使用したマスク
【0061】
ここで図3のグラフより、サンプルB及びサンプルCは、いずれもマスク1枚あたりのスリット変形数がサンプルAに対して半分未満になることが示されている。このため、特定副画素に対応する有機EL層を形成する際に使用するマスクを替えることにより、マスクの寿命を少なくとも2倍以上向上させることができる。
【0062】
本工程のうち、少なくとも工程(i)及び(ii)で使用されるマスクは、好ましくは、縦方向に連続した開口部を有するマスクを使用する。縦方向に連続した開口部を有するマスクを使用することにより、縦方向のアライメント精度を低減させることができる。その結果、高精細かつ高開口率なマスクとなるため、高精細かつ高寿命の有機EL表示装置を製造することができる。一方、縦方向に連続した開口部を有するマスクを使用することにより、マスク寿命も確保することができる。
【0063】
本工程のうち、少なくとも工程(i)及び(ii)において、好ましくは、同一の蒸着源を使用する。こうすることにより、同色の副画素に対応する有機EL層の塗り分け工程を2回に分けても、膜厚や材料組成の変化を最低限に抑えられる。これは、蒸着源から発生・蒸発する有機EL層の構成材料は、蒸発源に残る材料の残量や蒸着源の温度等により大きく影響を受けるため、塗り分けを行う際に蒸着源を別個に設けると、蒸着レート等を制御するのが非常に難しく大きくばらつくことがあるためである。そこで、塗り分けを行う際に、同一の蒸着源を使用することで、1回目の塗り分け工程と2回目の塗り分け工程のそれぞれにおいて、蒸発した有機EL材料がほぼ同時期に蒸発源から発生する環境下で、塗り分けをすることが可能になる。従って、膜厚や材料組成を均一にした状態で同色の副画素に対応する有機EL層を形成することが可能になる。
【0064】
[上部電極の形成工程]
有機EL層13を形成した後、有機EL層上に上部電極14を形成する。上述したように、上部電極14は、下部電極11と同様に、光透過性の電極層であってもよいし、光反射性の電極層であってもよい。また下部電極11又は上部電極14を陽極あるいは陰極する必要があるが、どちらにするかは任意である。一方、下部電極11を素子回路と接続し、上部電極14を共通配線と接続してもよい。他方、上部電極14を各副画素に対して個別に設けてもよい。個別に上部電極14を設ける具体的な方法としては、有機EL層13の一部にレーザアブレーションを施すことでコンタクトホールを形成し、マスクを用いて上部電極14を素子個別の電極として形成し、素子回路と接続する。
【0065】
[封止工程]
本発明の製造方法で製造される有機EL表示装置は、封止部材を用いて、大気中の水分や酸素から表示装置を構成する電極層や有機EL層を保護するのが望ましい。
【0066】
例えば、接続端子以外の部材をガラスキャップで覆って基板とガラスキャップとを接着剤で接着することにより、副画素を構成する有機EL素子を外気から遮断する。これにより有機EL表示装置が完成する。尚、ガラスキャップの代わりに、SiN等の保護膜を設けて有機EL素子を外気から遮断する方法も採用できる。
【0067】
完成した有機EL表示装は、外部回路から電源と画像信号と駆動信号を供給し、TFT回路をスイッチングすることで、表示領域に望みの画像を表示することができる。
【0068】
〔第二の実施形態〕
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。まず本実施形態によって製造される有機EL表示装置について説明する。
【0069】
図4は、本発明の製造方法によって製造される有機EL表示装置の第二の例を示す模式図であり、(a)は、有機EL表示装置の平面模式図であり、(b)は、有機EL表示装置の断面模式図である。尚、図1の有機EL表示装置1を同じ部材については同じ符号を付している。以下、第一の実施形態に示された第一の例との相違点を中心に説明する。
【0070】
図4の有機EL表示装置4は、副画素の配列パターンが、表示領域の左からRGBGRGBG・・・となっている。ただし、1つの画素に含まれる2つのG副画素は、それぞれ別個の信号で駆動することができる。このため、G副画素は、R副画素及びB副画素に対して2倍の精細度の信号で駆動することができる。本実施形態の場合、例えば、対角が約3インチの表示装置において、列方向のピッチ(繰り返し間隔)が96μmのG副画素が640本、列方向の幅が192μmのR副画素及びB副画素がそれぞれ320本という形態が可能である。
【0071】
次に、本実施形態について具体的に説明する。尚、以下の説明においては、第一の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0072】
本実施形態において、有機EL層の形成工程以外の工程については、第一の実施形態と同様に行うことができる。
【0073】
[有機EL層の形成工程]
本実施形態にて有機EL層を形成する場合は、例えば、G副画素を特定副画素として選択して、上述した工程(i)〜(ii)によりG副画素に対応する有機EL層を形成する。
【0074】
具体的には、まず図5(a)に示すように、G副画素11gのうち、表示領域の左端から数えて2n−1番目のG副画素11gに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n−1番目のG副画素11gに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図4(a)の「ア」に位置する副画素に対応する有機EL層13gが形成される。
【0075】
次に図5(b)に示すように、G副画素11gのうち、表示領域の左端から数えて2n番目のG副画素11gに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n番目のG副画素11gに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図4(a)の「イ」に位置する副画素に対応する有機EL層13gが形成される。
【0076】
尚、第一の実施形態と同様に、工程(i)及び工程(ii)を行う際に、その順番については、特に限定されない。
【0077】
工程(ii)を行った後、以下に示す工程(iii)〜(iv)により、R副画素と、B副画素とを順次形成する。
(iii)R副画素を形成する工程
(iv)B副画素を形成する工程
【0078】
ここで工程(iii)は、具体的には、図5(c)に示すように、R副画素11rに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせした後、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させる工程である。これにより、図4(a)の「ウ」に位置するR副画素11rに対応する有機EL層13rが形成される。
【0079】
また工程(iv)は、具体的には、図5(d)に示すように、B副画素11bに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせした後、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させ蒸着させる工程である。これにより、図4(a)の「エ」に位置するB副画素11bに対応する有機EL層13bが形成される。
【0080】
ところで本実施形態では、図5に示されるように、G副画素に対応する有機EL素子を形成するのに使用するマスクに比べて、R副画素及びB副画素にそれぞれ対応する有機EL素子を形成するのに使用するマスクの方がその開口幅が広い。つまり、本実施形態では、G副画素の幅を狭く設け、R副画素及びB副画素の幅を広く設けている。これにより、マスク寿命を確保しつつ表示の解像感を大きく落とすことなく、使用するマスクの数とマスクによる有機EL層の塗り分け工程を減らすことが可能とある。
【0081】
尚、G副画素11gの幅を狭くしているのは、人間の視感度は、緑色に対して、一番鋭敏であるためである。つまり、少なくともG副画素に対応する有機EL素子を、高精細なピッチ間隔で基板10上に並置すれば、解像感の低下をそれ程感じることなく、表示装置に表示される画像を見ることができるためである。
【0082】
また本実施形態において、R副画素及びB副画素に対応する有機EL素子を形成するのに使用されるマスクの開口部は、G副画素に対応する有機EL素子を形成するのに使用されるマスクの開口部と同様のピッチである。その結果、R副画素及びB副画素に対応する有機EL素子を形成するのに使用されるマスクは、G副画素に対応する有機EL素子を形成するのに使用されるマスクと同等以上のマスク強度を得ることができる。また、R副画素及びB副画素に対応する有機EL素子を形成するのに使用されるマスクは、それぞれ1回使用すれば十分できるため、本実施形態において有機EL層を形成する工程で使用されるマスクの回数は、合計4回で済むので製造コストの削減に繋がる。
【0083】
一方、本実施形態においては、工程(i)で使用されるマスクと、前記工程(ii)で使用されるマスクとが異なる方が好ましい。本実施形態では、各副画素の形成工程において、有機EL層の塗り分け工程数が異なる。このため、塗り分け回数の多いG副画素11gの塗り分けでは、塗り分け回数分のマスクを用意することにより、各塗り分け工程を、全て同時に実施することができる。従って、各工程で滞ることなく、一定の速度で生産プロセスを進めることができる。
【0084】
〔第三の実施形態〕
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。まず本実施形態によって製造される有機EL表示装置について説明する。
【0085】
図6は、本発明の製造方法によって製造される有機EL表示装置の第三の例を示す模式図であり、(a)は、有機EL表示装置の平面模式図であり、(b)は、有機EL表示装置の断面模式図である。尚、図1の有機EL表示装置1を同じ部材については同じ符号を付している。以下、第一の実施形態に示された第一の例との相違点を中心に説明する。
【0086】
図6の有機EL表示装置6は、副画素の配列パターンが、表示領域の左から(R)RGBBGRRGBBGR・・・となっている。
【0087】
次に、本実施形態について具体的に説明する。尚、以下の説明においては、第一の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0088】
本実施形態において、有機EL層の形成工程以外の工程については、第一の実施形態と同様に行うことができる。
【0089】
[有機EL層の形成工程]
本実施形態にて有機EL層を形成する場合は、例えば、G副画素を特定副画素として選択して、上述した工程(i)〜(ii)によりG副画素に対応する有機EL層を形成する。
【0090】
具体的には、まず図7(a)に示すように、G副画素11gのうち、表示領域の左端から数えて2n−1番目のG副画素11gに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n−1番目のG副画素11gに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図6(a)の「ア」に位置する副画素11gに対応する有機EL層13gが形成される。
【0091】
次に図7(b)に示すように、G副画素11gのうち、表示領域の左端から数えて2n番目のG副画素11gに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせする。そして、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させて、表示領域の左端から数えて2n番目のG副画素11gに対応する有機EL層を選択的に形成する。これにより、図7(a)の「イ」に位置する副画素11gに対応する有機EL層13gが形成される。
【0092】
尚、第一の実施形態と同様に、工程(i)及び工程(ii)を行う際に、その順番については、特に限定されない。一方、第二の実施形態と同様の理由で、本実施形態においても、工程(i)で使用されるマスクと、前記工程(ii)で使用されるマスクとが異なる方が好ましい。
【0093】
工程(ii)を行った後、以下に示す工程(v)〜(vi)により、R副画素と、B副画素とを順次形成する。
(v)R副画素を形成する工程
(vi)B副画素を形成する工程
【0094】
ここで工程(v)は、具体的には、図8(c)に示すように、R副画素11rに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせした後、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させる工程である。これにより、図6(a)の「ウ」及び「エ」に位置するR副画素11rに対応する有機EL層13rが同時に形成される。
【0095】
また工程(iv)は、具体的には、図7(d)に示すように、B副画素11bに開口22を有するマスク23を基板10の下方に位置合わせした後、蒸着源21から有機EL層13の構成材料を蒸着させる工程である。これにより、図6(a)の「オ」及び「カ」に位置するB副画素11bに対応する有機EL層が同時に形成される。
【0096】
本実施形態によれば、本実施形態の場合、例えば、対角が約3インチの表示装置において、列方向のピッチが96μmである副画素が各副画素ごとに640本設けられる形態が可能である。
【0097】
また本実施形態は、マスクの使用回数と蒸着回数は、上述した第二の実施形態と同じである。ただし1行あたりの各副画素の個数は同一であるため、第二の実施形態と比較して、解像感の向上ができるというメリットを有する。
【0098】
尚、本実施形態では、R副画素及びB副画素の発光面積は、通常、G副画素より大きくなる。これは、同一種の副画素間(BB間、RR間)においては、マスク精度及び画素間感覚を加味してレイアウトを行う必要がないためである。このため、本実施形態では、同一種の画素間の間隔を、異種の画素間(BG間、RG間)の間隔よりも狭くすることができる。従って、第一の実施形態で示される方法と比較して、同一種の画素間の間隔を狭く取れる分だけ、この間隔に対応する面積を、副画素に対応する有機EL素子の発光面積の増大に振り向けることができる。この結果、R副画素及びB副画素に対応する有機EL素子の発光面積は大きくなる。
【0099】
一方で、上述した有機EL素子の発光面積の増大分を、異種の副画素に対応する有機EL発光素子の発光面積に振り向けることもできる。この場合は、特に、G副画素に対応する有機EL素子の発光面積に振り向けることが好ましい。このようにすれば、G副画素と他の副画素との間隔を確保しつつG副画素自体の発光面積を大きくさせることができる。G副画素自体の発光面積を広げることができれば、G副画素に対応するマスクの開口部は広くなると共に、蒸着に使用されるマスクの膜厚を厚くすることができる。ここでマスクの膜厚が厚くなれば、マスクの洗浄工程において、スリット変形がおきにくくなり、マスクの寿命を延ばす効果がある。
【0100】
また本実施形態は、消費電力的にも好ましい。これは、G副画素に対応する有機EL素子の発光面積を大きくすることで、単位発光面積あたりに流れる電流量が減るため、同じ量の電流を流した際の有機EL素子間にかかる電圧が低下するためである。またG副画素に対応する有機EL素子は、輝度信号に寄与する割合が高く、標準的な映像信号では,R副画素やB副画素に対応する有機EL発光素子に流す電流より格段に大きいため、消費電力低減の効果が最も大きいというメリットもある。
【0101】
尚、各色の発光層の作製順序は、特に限定されるものではない。
【実施例1】
【0102】
第一の実施形態の製造方法で図1に示される有機EL表示装置を作製した。以下、適宜図面を参照しながら具体的な製造方法について説明する。
【0103】
本実施例では、縦360mm、横460mmのガラス基板上に、4行5列の計20基の有機EL表示装置を同時に作製した。ここで、作製される有機EL表示装置は、対角が約3インチであり、縦方向に480画素、横方向に640画素を備えている。また各画素は、RGBという形式に配列した三種類のストライプ状の副画素で構成されている。また、各画素の形状は一辺(l11)96μmの正方形であり、1つの副画素に対応する有機EL素子は、縦96μm、横32μmの領域に設けた。
【0104】
[基板の準備工程]
ガラス基板(基材101)上にバリア層(不図示)を形成した。具体的には、プラズマCVD法により、SiH4、NH3及びH2を原料ガスとしてSiN層を膜厚200nmで形成した。
【0105】
次に、プラズマCVD法により、上記バリア層上に、非晶質シリコンからなる薄膜を膜厚50nmで形成した。ここで当該非晶質シリコンからなる薄膜はチャネル層として機能する。次に、レーザアニールにより非晶質シリコンを多結晶化した後、フォトリソグラフィ技術を用いたパターニングにより所定の形状に加工した。これにより、駆動用とスイッチング用と制御回路用のトランジスタのチャネル層をそれぞれ形成した。
【0106】
次に、CVD法により、チャネル層上に、SiO2を成膜しゲート絶縁膜を形成した。このときゲート絶縁膜の膜厚を100nmとした。次に、スパッタリング法等により、ゲート絶縁膜上に、Ta及びAlを順次成膜し、金属薄膜の積層体を形成した。このときTa薄膜の膜厚を50nmとし、Al薄膜の膜厚を200nmとした。次に、フォトリソグラフィ技術によるパターニングを行い、当該金属薄膜を所定の形状に加工してゲート電極を形成した。
【0107】
次に、チャネル層のN領域以外の領域についてレジストで保護した後、イオン打ち込み技術により、チャネル層のN領域にリンをドープした。次に、チャネル層のP領域以外の領域についてレジストで保護した後、イオン打ち込み技術により、チャネル層のP領域にボロンをドープした。次に、レーザー光をチャネル層に照射してドーパントの活性化を行った。
【0108】
次に、プラズマCVD法により、チャネル層及びゲート電極上に、SiNを成膜し保護膜を形成した。このとき保護層の膜厚を500nmとした。次に、フォトリソグラフィ技術を用いたパターニングにより、保護層の所定の場所に接続用のコンタクトホールを形成した。次に、スパッタリング法により、保護層上に、Ti及びTiAl合金を順次成膜し、2層構成の電極層を形成した。このときTi薄膜の膜厚を100nmとし、TiAl合金薄膜の膜厚を300nmとした。次に、フォトリソグラフィ技術によるパターニングより、この2層構成の電極層を所望の形状に加工した。尚、加工された2層構成の電極層は、設置場所によって、ソース電極、ドレイン電極、コンデンサ電極、接続端子のうちのいずれかの部材として機能する。
【0109】
次に、CVD法により、上記2層構成の電極層上に、SiNを成膜して第一層間絶縁層を形成した。このとき第一層間絶縁層の膜厚を300nmとした。次に、フォトリソグラフィ技術により、所望の位置を下部電極の接続のためにエッチングした。
【0110】
次に、第一層間絶縁層上に、第2の層間絶縁層を作製する。アクリル樹脂(JSR社製:PC415)を塗布し、回転数1200回転/分でスピンコートを行い、薄膜を形成した。次に、この薄膜をプリベークした後、薄膜トランジスタ回路と下部電極とを電気接続するための開口部のパターンを有するフォトマスクを使い、100mW/cm2の照度で露光した。次に、現像液(NMD−3、東京応化工業製)で現像し、200℃でポストベークすることにより、第一樹脂膜を形成した。このとき第一樹脂膜の膜厚は1.5μmであった。以上に示す方法により作製したものを基板10として、以下の工程で使用した。
【0111】
[下部電極の形成工程]
基板10上に、スパッタリング法等により、AlSiとITOとをこの順で成膜して電極積層薄膜を形成した。このときAlSi薄膜の膜厚を50nmとし、ITO薄膜の膜厚を100nmとした。次に、フォトリソグラフィ技術により、先程の電極積層薄膜を加工し下部電極12を形成した。尚、下部電極12は、薄膜トランジスタ回路との接続部を覆い、その寸法は、縦85μm、幅25μmであり後述する有機EL層が形成される領域よりも広い。
【0112】
次に、スピンコートにより、基板10及び下部電極12上に、アクリル樹脂(JSR社製:PC415)を塗布・成膜した。ここでスピンコートする際に、回転数を1200回転/分とした。次に、成膜したアクリル樹脂をプリベークした後、図8に示される各副画素に対応する有機EL素子が設けられる位置に開口81を有するフォトマスク82を使用して、照度100mW/cm2の光で露光した。次に、現像液(NMD−3、東京応化工業製)で現像した後、200℃でポストベークすることで、有機EL素子が設けられる領域以外の部分にバンクを形成した。ここでバンクの膜厚は1.5μmであった。またこのバンクは、その端部が下部電極12上に設けられており、約40°のテーパ形状となっている。また下部電極が露出する領域は、縦75μm、幅8μmの矩形状であり、隣り合う露出領域間の横方向の間隔は24μmであった。尚、下部電極のパターン等フォトリソグラフィ技術による位置合わせ精度を考慮すると、隣り合う露出領域間の横方向の間隔を±5μm以下とすることも可能である。一方で、本実施例において隣り合う露出領域間の横方向の間隔を24μmとしたのは、金属マスクの合わせ精度(±12μm程度)を考慮したためである。
【0113】
[有機EL層の形成工程]
次に、以下に示す方法により、有機EL層を形成した。図9は、有機EL層の形成装置を示す概略図である。また図10は、有機EL層、上部電極の形成プロセスを示す断面模式図である。
【0114】
まずバンク15まで形成された基板を、基板の処理面(下部電極12、バンク15等が設けられている面)が下方向に向くように設置した後、装置内を真空にした。次に、この基板10を加熱することにより、基板10の脱水処理を十分に行った。このとき基板10の断面構造は、図10(a)に示される構造である。
【0115】
次に、基板を第一成膜室91に搬送し、バンク15及び下部電極12上に、αNPDを成膜し正孔輸送層131を形成した(図10(b))。正孔輸送層131を成膜する際には、図8に示される表示領域に対応する位置に開口を有するマスク82を使用し、表示領域内で共通する層として成膜した。また正孔輸送層131を形成する際に、蒸着源はモリブデン製のルツボとし、シースヒータでらせん状に取り囲んで加熱することにより蒸着を行った。
【0116】
次に、正孔輸送層131まで形成された基板を、第二成膜室92に移動し、真空蒸着法により、正孔輸送層131上にG発光層132gを形成した。図11は、G発光層132gを形成するときに使用されるマスクの概略図であり、(a)は、マスク全体の概略図であり、(b)は、(a)の部分拡大概略図である。尚、このマスク23の材質はインバーであり、マスクの開口22は、長さが46.2mmであり、幅(d11)が32μmであり、開口と開口との間隔(d12)が160μmであり、繰返しのピッチ(d13(=d11+d12))が192μmである。またこのマスク23は、幅及び膜厚が20mmのインバー製のフレーム24が設けられている。一方、開口22の周辺には、膜厚30μmの箔が設けられている。ここでこの箔は、エッチング法で形成したものであり、熱膨張の延びをキャンセルできる程度のテンションをかけてマスクに溶接している。
【0117】
実際にG発光層132gを設ける際には、まず上記のマスク23を、表示領域の左端から数えて2n−1番目にあるG副画素11gに対応する領域に、マスクの開口22の位置を合わせた。次に、蒸着源から発生するG発光層132gの構成材料を蒸着させることにより、正孔輸送層131上にG発光層132gを形成した(図10(c))。尚、G発光層132gは、ホストであるAlq3とゲスト(発光性化合物)であるクマリン6とを2つの蒸着源にそれぞれ仕込み、重量比が99:1となるように共蒸着することにより形成した。またG発光層132gを成膜する際には、水晶振動子方式の膜厚計で堆積速度と膜厚を測定し、蒸着源の温度制御にフィードバックして堆積速度を制御しつつ、蒸着源上のシャッタを開閉することにより、層の膜厚を制御した。
【0118】
次に、同じ成膜室でマスクの位置を変え、表示領域の左端から数えて2n番目にあるG副画素11gに対応する領域に、マスクの開口の位置を合わせた。次に、蒸着源から発生するG発光層の構成材料を蒸着させることにより、正孔輸送層上131にG発光層132gを形成した(図10(d))。
【0119】
次に、基板10を第四成膜室94に移動し、R発光層132rを形成するために使用するマスクを、表示領域の左端から数えて2n−1番目にあるR副画素11rに対応する領域に、マスクの開口の位置を合わせた。次に、蒸着源から発生するR発光層132rの構成材料を蒸着させることにより、正孔輸送層131上にR発光層132rを形成した(図10(e))。尚、R発光層132rは、ホストであるAlq3とゲストであるDCM[4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran]とを、重量比が99:1となるように共蒸着して形成した。
【0120】
次に、同じ成膜室でマスクの位置を変え、表示領域の左端から数えて2n番目にあるR副画素11rに対応する領域に、マスクの開口の位置を合わせた。次に、蒸着源から発生するR発光層の構成材料を蒸着させることにより、正孔輸送層131上にR発光層132rを形成した(図10(f))。
【0121】
次に、基板を第五成膜室95に移動し、B発光層132bを形成するために使用するマスクを、表示領域の左端から数えて2n−1番目にあるB副画素に対応する領域に、マスクの開口の位置を合わせた。次に、蒸着源から発生するB発光層の構成材料を蒸着させることにより、正孔輸送層上にB発光層を形成した(図10(g))。尚、B発光層は、ペリレン色素とトリス[8−ヒドロキシキノリナート]アルミニウム(Alq3)とを、体積比が1:99となるように共蒸着して形成した。
【0122】
次に、同じ成膜室でマスクの位置を変え、表示領域の左端から数えて2n番目にあるB副画素に対応する領域に、マスクの開口の位置を合わせた。次に、蒸着源から発生するG発光層の構成材料を蒸着させることにより、正孔輸送層131上にB発光層132bを形成した(図10(h))。
【0123】
次に、基板を第六成膜室96に搬送し、この第六成膜室96内で、表示領域に対応する領域に開口を有するマスクを使用し、フッ化リチウムとフェナントロリン化合物とを体積比で0.9:99.1となりように共蒸着した。これにより、各発光層(132g、132r、132b)上に電子輸送層133を形成した(図10(i))。
【0124】
[上部電極の形成工程]
次に、基板を第七成膜室97に搬送し、この第七成膜室97内で、スパッタリングにより、電子輸送層上にIZOを成膜し上部電極14を設けた(図10(j))このとき上部電極14の膜厚を100nmとした。
【0125】
次に、上部電極14まで形成された基板10を、大気に曝すことなく、外部からの酸素や水等を遮断するために封止ガラスで基板を覆い両者を接着剤で接着した。尚、封止ガラスには掘り込みが設けられており、その内側の空間の周囲にはゼオライト(不図示)からなる吸湿材が設けられている。次に、合計20基の有機EL表示装置が設けられている基材を、ダイヤモンドを固着した回転刃を用いスクライブして、有機EL表示装置を1基ずつ分離した。
【0126】
最後に、封止ガラスの表面に、市販のディスプレイ用偏光板を接着することにより、有機EL表示装置を得た。得られた有機EL表示装置について、接続端子(不図示)を外部回路15と接続し、動作させたところ、掘り込みを設けたガラス側(上部電極14側)へのフルカラーの表示が可能であった。
【実施例2】
【0127】
第二の実施形態の方法で図4に示される有機EL表示装置を作製した。尚、以下の説明においては、実施例1との相違点を中心に説明する。
【0128】
本実施例で製造される有機EL表示装置に含まれる画素は、RGBGという形式に配列した三種類のストライプ状の副画素で構成されている。尚、本実施例では、表示領域内にR副画素11r及びB副画素11bは、縦方向で480行、横方向で320列含まれている。一方、G副画素11gは、縦方向で480行、横方向で640列含まれている。このため表示領域内に含まれる画素は、縦方向で480行、横方向で320列となるが、視感度の高いG副画素11gが、縦方向で480行×横方向で640列存在するため、実施例1とほぼ同等の画質を得ることができる。また本実施例において、画素1つ分の寸法は、縦(l21)96μm、横(l22)192μmとした。
【0129】
[下部電極の形成工程]
実施例1と同様の方法で、基板上に、下部電極12及びバンク15を形成した。本実施例において、G副画素11gが設けられる下部電極12の幅は26μmであり、バンク15の開口幅は16μmであった。一方、R副画素11r及びB副画素11bが設けられる下部電極12の幅は42μmであり、バンク15の開口幅は32μmであった。
【0130】
[有機EL層の形成工程]
次に、図12に示されるインラインタイプの装置で有機EL層13及び上部電極14を形成した。また図13は、有機EL層13及び上部電極14の形成プロセスを示す断面模式図である。
【0131】
まずバンク15まで形成された基板10を、基板10の処理面(下部電極11、バンク15等が設けられている面)が下方向に向くように設置した後、装置内を真空にした。次に、この基板10を加熱することにより、基板10の脱水処理を十分に行った。このとき基板10の断面構造は、図13(a)に示される構造である。
【0132】
次に、基板を第一成膜室121に搬送し、バンク15及び下部電極12上に、αNPDを成膜し正孔輸送層131を形成した(図13(b))。正孔輸送層131を成膜する際には、図8に示されるように、表示領域に対応する位置に開口22を有するマスク23を使用し、表示領域内で共通する層として成膜した。また正孔輸送層131を形成する際に、蒸着源はモリブデン製の長方形の箱状ルツボとし、側面をシースヒータで加熱することにより蒸着を行った。
【0133】
次に、正孔輸送層131まで形成された基板を第二成膜室122に搬送し、G副画素11gが設けられる領域にG発光層132gを形成した。このとき実施例1と同様に、表示領域の左端から数えて2n−1番目にあるG副画素11gに対応するG発光層132gを選択的に形成した(図13(c))。次に、基板を第三成膜室123に搬送し、表示領域の左端から数えて2n番目にあるG副画素11gを選択的に形成した(図13(d))。尚、図12の装置でG発光層132gを形成すると、使用するマスクは適宜取り外してから併設するマスク搬送路120を通じて元の位置に戻すことができるので、1枚のマスクを複数回使用できる。
【0134】
次に、基板10を第四成膜室124に搬送し、R発光層132rを形成するために使用するマスクを、所定の位置に位置合わせした。図14(a)は、実施例2のR発光層132rの形成工程で使用したマスクの概略図である。使用するマスクは、開口の長さが46.2mmであり、幅(d21)が56μmであり、開口と開口との間隔(d22)が136μm、繰り返しのピッチ(d23(=d21+d22))が192μmである。またR発光層132rを形成する際に、実施例1で使用したホストとゲストとが、個別に入っている箱型ルツボをそれぞれ用意し、共蒸着を行った。
【0135】
次に、基板10を第五成膜室125に搬送し、B発光層132bを形成するために使用するマスクを、所定の位置に位置合わせした。図14(b)は、実施例2のB発光層132bの形成工程で使用したマスクの概略図である。使用するマスクは、開口の長さ、幅、開口と開口の間隔、及び繰り返しのピッチの各寸法がR発光層132rを形成する際に使用されるマスクと同様である。
【0136】
次に、基板10を第六成膜室126に搬送した。次に、この第六成膜室126内で、図8に示されるように、表示領域に対応する領域に開口22を有するマスク23を使用し、フッ化リチウムとフェナントロリン化合物とを体積比で0.9:99.1となりように共蒸着した。これにより、各発光層(132g、132r、132b)上に電子輸送層133を形成した(図13(i))。
【0137】
[上部電極の形成工程]
次に、基板10を第七成膜室127に搬送し、この第七成膜室127内で、スパッタリングにより、電子輸送層133上にIZOを成膜し上部電極14を設けた(図13(j))このとき上部電極14の膜厚を100nmとした。
【0138】
次に、上部電極14まで形成された基板10を、大気に曝すことなく、外部からの酸素や水等を遮断するために封止ガラスで基板を覆い両者を接着剤で接着した。尚、封止ガラスには掘り込みが設けられており、その内側の空間の周囲にはゼオライト(不図示)からなる吸湿材が設けられている。次に、合計20基の有機EL表示装置が設けられている基材を、ダイヤモンドを固着した回転刃を用いスクライブして、有機EL表示装置を1基ずつ分離した。
【0139】
最後に、封止ガラスの表面に、市販のディスプレイ用偏光板を接着することにより、有機EL表示装置を得た。得られた有機EL表示装置について、接続端子(不図示)を外部回路15と接続し、動作させたところ、掘り込みを設けたガラス側(上部電極14側)へのフルカラーの表示が可能であった。
【実施例3】
【0140】
第三の実施形態の方法で図6に示される有機EL表示装置を作製した。尚、以下の説明においては、実施例1及び2との相違点を中心に説明する。
【0141】
本実施例で製造される有機EL表示装置に含まれる画素は、RGB又はBGRという形式に配列した三種類のストライプ状の副画素で構成されている。尚、本実施例では、表示領域内に各副画素は、縦方向で480行、横方向で640列含まれている。また本実施例において、各画素の形状は一辺(l31)96μmの正方形であり、1つの副画素に対応する有機EL素子は、縦96μm、横32μmの領域に設けた。
【0142】
[下部電極の形成工程]
実施例1と同様の方法で、基板10上に、下部電極11及びバンク15を形成した(図15(a))。本実施例において、G副画素11g及びB副画素11bが設けられる下部電極の幅は21μmであり、バンクの開口幅は11μmであった。一方、R副画素11rが設けられる下部電極の幅は20μmであり、バンクの開口幅は10μmであった。
【0143】
[有機EL層の形成工程]
実施例2と同様の方法により、各副画素に対応する発光層が含まれる有機EL層を形成した(図15(b)〜(g))。尚、本実施例では、図6(a)に示されるように、表示領域の左端の副画素配列パターンがRRGBBGR・・・となっており、端部がRR2列となっている。これは、R発光層を形成する際に使用するマスクの開口が、副画素2個分の幅があるためである。ここで、左端のR副画素はダミー副画素になる。ただし、使用するマスクが、表示領域の左端部に限って開口幅が狭いものであれば、表示領域左端部のR副画素の幅を副画素1個分にすることもできる。
【0144】
[上部電極の形成工程]
実施例2と同様の方法により、有機EL層13上に、上部電極14を形成した(図15(h))。
【0145】
次に、実施例2と同様に、有機EL素子の封止、及び基板の加工を行うことにより、有機EL表示装置を得た。
【0146】
最後に、封止ガラスの表面に、市販のディスプレイ用偏光板を接着することにより、有機EL表示装置を得た。得られた有機EL表示装置について、接続端子(不図示)を外部回路15と接続し、動作させたところ、掘り込みを設けたガラス側(上部電極14側)へのフルカラーの表示が可能であった。
【符号の説明】
【0147】
1,4,6:有機EL表示装置、10:基板、11:画素、11g:G副画素、11r:R副画素、11b:B副画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
二種類以上の副画素からなる複数の画素と、から構成され、
該画素が、該基板の表示領域上に並置して設けられ、
該副画素のうち一種類の副画素が、所定の間隔を持って設けられる特定副画素である有機EL表示装置の製造方法において、
該特定副画素を、以下の工程(i)〜(ii)により形成することを特徴とする、有機EL表示装置の製造方法。
(i)表示領域の側端から数えて2n−1(nは、1以上の整数を表す。)番目の特定副画素に対応する位置に開口を有するマスクを使用し、該側端から数えて2n−1番目の特定副画素を選択的に形成する工程
(ii)該側端から数えて2n(nは、1以上の整数を表す。)番目の特定副画素に対応する位置に開口を有するマスクを使用し、該側端から数えて2n番目の特定副画素を選択的に形成する工程
【請求項2】
前記工程(i)及び(ii)を行うにあたり、縦方向に連続した開口部を有するマスクを使用することを特徴とする、請求項1に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(i)及び(ii)を行うにあたり、同一の蒸着源を使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記特定副画素がG副画素であり、
前記副画素の横方向の配列が、RGBGRGBG・・・であり、
前記工程(ii)の後、以下に示す工程(iii)〜(iv)により、R副画素と、B副画素とを順次形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL表示装置の製造方法。
(iii)R副画素を形成する工程
(iv)B副画素を形成する工程
【請求項5】
前記特定副画素がG副画素であり、
前記副画素の横方向の配列が、RGBBGRRGBBGR・・・であり、
前記工程(ii)の後、以下に示す工程(v)〜(vi)により、R副画素と、B副画素とを順次形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL表示装置の製造方法。
(v)R副画素を形成する工程
(vi)B副画素を形成する工程
【請求項6】
前記工程(i)で使用されるマスクと、前記工程(ii)で使用されるマスクとが異なることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記マスクの開口ピッチが95μmであり、かつ開口幅が40μm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−272300(P2010−272300A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122128(P2009−122128)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】