説明

有機EL表示装置及びその製造方法

【課題】有機物層の成膜に蒸着法を利用するプロセスにおいて、有機EL素子で異物に起因した電界集中や電気的短絡が発生するのを十分に抑制する。
【解決手段】本発明の有機EL表示装置は、絶縁基板SUBと、基板SUB上に配置されると共に開口が設けられた隔壁絶縁層PIと、基板SUB上であって上記開口に対応した位置に配置された第1電極PEと第1電極PE上に配置された有機物層ORGと有機物層ORG上に配置された第2電極CEとを含んだ有機EL素子OLEDとを具備し、有機物層ORGは、第1電極PE上に配置された第1有機材料層OM1と、第1有機材料層OM1と第2電極CEとの間に配置された発光層EMTとを含み、第1有機材料層OM1は蒸着法による第1有機材料の堆積と堆積した第1有機材料をその融点よりも高い温度に加熱する融解処理とを順次行うことにより形成され、発光層EMTは蒸着法により形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、陽極と陰極とそれらの間に介在した有機物層とを含んでいる。低分子型有機EL素子の製造では、通常、有機物層が含む各層の成膜に蒸着法を利用している。
【0003】
ところで、有機EL素子の製造では、有機物層の成膜前に、塵などの異物が下部電極に付着することがある。これら異物は、洗浄によって完全に除去することは難しい。
【0004】
下部電極に異物が付着したまま蒸着法により有機物層を成膜すると、異物の近傍で有機物層が薄くなるか又は有機物層にピンホールが生じることがある。そのため、これにより得られる有機EL素子では、異物の近傍における電界集中に起因した劣化や陽極と陰極との短絡を生じる可能性がある。
【0005】
この問題に対し、特許文献1には、以下の方法で有機EL素子を製造することが記載されている。すなわち、まず、陽極としての透明電極上に、有機物層が含む第1層を蒸着法により成膜する。次いで、この第1層を、そのガラス転移点乃至融点の温度に加熱する。これにより、透明電極に付着している異物を第1層で埋め込む。その後、有機物層が含む第2層を蒸着法により成膜する。さらに、有機物層上に、陰極として金属電極を蒸着法により成膜する。
【0006】
この方法によると、異物に起因して電界集中や電気的短絡が生じるのを抑制できる可能性がある。しかしながら、本発明者らは、上記の方法では、先の効果を得ることは難しいことを見い出している。
【特許文献1】特開2000−91067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、有機物層の成膜に蒸着法を利用するプロセスにおいて、有機EL素子で異物に起因した電界集中や電気的短絡が発生するのを十分に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面によると、絶縁基板と、前記絶縁基板の一主面上に配置されると共に開口が設けられた隔壁絶縁層と、前記絶縁基板の前記主面上であって前記開口に対応した位置に配置された第1電極と、前記第1電極上に配置されると共に低分子有機化合物からなる有機物層と、前記有機物層上に配置された第2電極とを含んだ有機EL素子とを具備し、前記有機物層は、前記第1電極上に配置されると共に前記第1電極の中央上の部分が前記開口の側壁近傍に位置した部分と比較してより薄い第1有機材料層と、前記第1有機材料層と前記第2電極との間に配置された発光層とを含んだことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0009】
本発明の第2側面によると、絶縁基板と、前記絶縁基板の一主面上に配置されると共に開口が設けられた隔壁絶縁層と、前記絶縁基板の前記主面上であって前記開口に対応した位置に配置された第1電極と、前記第1電極上に配置された有機物層と、前記有機物層上に配置された第2電極とを含んだ有機EL素子とを具備し、前記有機物層は、前記第1電極上に配置された第1有機材料層と、前記第1有機材料層と前記第2電極との間に配置された発光層とを含み、前記第1有機材料層は蒸着法による第1有機材料の堆積と堆積した前記第1有機材料をその融点よりも高い温度に加熱する融解処理とを順次行うことにより形成され、前記発光層は蒸着法により形成されたことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0010】
本発明の第3側面によると、絶縁基板と、前記絶縁基板の一主面上に配置されると共に開口が設けられた隔壁絶縁層と、前記絶縁基板の前記主面上であって前記開口に対応した位置に配置された第1電極とを具備した構造を準備する工程と、前記第1電極上への蒸着法による第1有機材料の堆積と堆積した前記第1有機材料をその融点よりも高い温度に加熱する融解処理とを順次行うことにより第1有機材料層を形成する工程と、前記第1有機材料層上に蒸着法により発光層を形成する工程と、前記発光層上に第2電極を形成する工程とを含んだことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、有機物層の成膜に蒸着法を利用するプロセスにおいて、有機EL素子で異物に起因した電界集中や電気的短絡が発生するのを十分に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一態様に係る有機EL表示装置を概略的に示す一部断面図である。図2は、図1のEL表示装置で有機EL素子に採用可能な構造の一例を概略的に示す一部拡大断面図である。図3は、図1に示す有機EL表示装置の等価回路図である。なお、図1では、有機EL表示装置を、その表示面,すなわち前面又は光出射面,が下方を向き、背面が上方を向くように描いている。
【0014】
この有機EL表示装置は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した下面発光型の有機EL表示装置である。この有機EL表示装置は、例えば、ガラス基板などの絶縁基板SUBを含んでいる。
【0015】
基板SUB上には、図1に示すように、アンダーコート層UCとして、例えば、SiNx層とSiOx層とが順次積層されている。アンダーコート層UC上には、例えばチャネル及びソース・ドレインが形成されたポリシリコン層である半導体層SC、例えばTEOS(TetraEthyl OrthoSilicate)などを用いて形成され得るゲート絶縁膜GI、及び例えばMoWなどからなるゲート電極Gが順次積層されており、それらはトップゲート型のTFTを構成している。この例では、これらTFTは、pチャネルTFTであり、図3の画素PXが含む駆動制御素子DR及びスイッチSW1乃至SW3として利用している。
【0016】
ゲート絶縁膜GI上には、ゲート電極Gと同一の工程で形成可能な走査信号線SL1及びSL2がさらに配置されている。走査信号線SL1及びSL2は、図3に示すように、各々が画素PXの行方向(X方向)に延びており、画素PXの列方向(Y方向)に交互に配列している。これら走査信号線SL1及びSL2は、走査信号線ドライバYDRに接続されている。
【0017】
図1に示すように、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極G、走査信号線SL1及びSL2は、例えばプラズマCVD法などにより成膜されたSiOxなどからなる層間絶縁膜IIで被覆されている。層間絶縁膜II上にはソース電極SE及びドレイン電極DEが配置されており、それらは、例えばSiNxなどからなるパッシベーション膜PSで埋め込まれている。ソース電極SE及びドレイン電極DEは、例えば、Mo/Al/Moの三層構造を有しており、層間絶縁膜IIに設けられたコンタクトホールを介してTFTのソース及びドレインに電気的に接続されている。
【0018】
層間絶縁膜II上には、ソース電極SE及びドレイン電極DEと同一の工程で形成可能な映像信号線DLがさらに配置されている。映像信号線DLは、図3に示すように、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。これら映像信号線DLは、映像信号線ドライバXDRに接続されている。なお、典型的には、走査信号線SL1及びSL2が配置された層間か、又は、映像信号線DLが配置された層間に、図3の電源線PSLを敷設する。
【0019】
パッシベーション膜PS上には、図1に示すように、前面電極として、光透過性の第1電極PEが互いから離間して並置されている。各第1電極PEは、画素電極であり、パッシベーション膜PSに設けた貫通孔を介して、スイッチSW1のドレイン電極DEに接続されている。
【0020】
第1電極PEは、この例では陽極である。第1電極PEの材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明導電性酸化物を使用することができる。
【0021】
パッシベーション膜PS上には、さらに、隔壁絶縁層PIが配置されている。隔壁絶縁層PIには、第1電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられているか、或いは、第1電極PEが形成する列又は行に対応した位置にスリットが設けられている。ここでは、一例として、隔壁絶縁層PIには、第1電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられていることとする。
【0022】
隔壁絶縁層PIは、例えば、有機絶縁層である。隔壁絶縁層PIは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0023】
第1電極PE上には、発光層を含んだ有機物層ORGが配置されている。有機物層ORGは、図2に示すように、第1有機材料層OM1と第2有機材料層OM2と発光層EMTとを含んでいる。
【0024】
有機材料層OM1及びOM2並びに発光層EMTは、低分子有機化合物からなる。これらは、例えば、真空蒸着法などの蒸着法を利用して形成することができる。なお、用語「低分子有機化合物」は、蒸着による成膜において原料として使用可能な有機化合物を意味している。
【0025】
第1有機材料層OM1と第2有機材料層OM2と発光層EMTとは、この順で、第1電極上に積層されている。第1有機材料層OM1及び第2有機材料層OM2は、第1電極PEから発光層への電荷の注入を媒介する役割を果たす。第1有機材料層OM1と第2有機材料層OM2とは、材料が同一であってもよく、或いは、材料が異なっていてもよい。
【0026】
なお、この例では、第1電極PEは陽極である。したがって、第1有機材料層OM1と第2有機材料層OM2との積層体は正孔注入層又は正孔輸送層としての役割を果たす。
【0027】
発光層EMTは、例えば、発光色が赤色、緑色、又は青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。
【0028】
この有機物層ORGは、発光層EMT、正孔注入層、正孔輸送層以外の層をさらに含むことができる。例えば、有機物層ORGは、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層などもさらに含むことができる。
【0029】
隔壁絶縁層PI及び有機物層ORGは、背面電極である第2電極CEで被覆されている。第2電極CEは、画素PX間で互いに接続された共通電極であり、この例では光反射性の陰極である。第2電極CEは、例えば、パッシベーション膜PSと隔壁絶縁層PIとに設けられたコンタクトホールを介して、映像信号線DLと同一の層上に形成された電極配線(図示せず)に電気的に接続されている。各々の有機EL素子OLEDは、第1電極PE、有機物層ORG及び第2電極CEで構成されている。
【0030】
各画素PXは、有機EL素子OLEDと画素回路とを含んでいる。この例では、画素回路は、図3に示すように、駆動制御素子DRと、出力制御スイッチSW1と、映像信号供給制御スイッチSW2と、ダイオード接続スイッチSW3と、キャパシタCとを含んでいる。上記の通り、この例では、駆動制御素子DR及びスイッチSW1乃至SW3はpチャネルTFTである。
【0031】
駆動制御素子DRと出力制御スイッチSW1と有機EL素子OLEDとは、第1電源端子ND1と第2電源端子ND2との間で、この順に直列に接続されている。この例では、第1電源端子ND1は高電位電源端子であり、第2電源端子ND2は低電位電源端子である。
【0032】
出力制御スイッチSW1のゲートは、走査信号線SL1に接続されている。映像信号供給制御スイッチSW2は映像信号線DLと駆動制御素子DRのドレインとの間に接続されており、そのゲートは走査信号線SL2に接続されている。ダイオード接続スイッチSW3は駆動制御素子DRのドレインとゲートとの間に接続されており、そのゲートは走査信号線SL2に接続されている。キャパシタCは、駆動制御素子DRのゲートと定電位端子ND1’との間に接続されている。
【0033】
この有機EL表示装置では、例えば、走査信号線SL1及びSL2の各々を線順次駆動する。そして、或る画素PXに映像信号を書き込む書込期間では、まず、走査信号線ドライバYDRから、先の画素PXが接続された走査信号線SL1にスイッチSW1を開く(オフ)走査信号を電圧信号として出力し、続いて、先の画素PXが接続された走査信号線SL2にスイッチSW2及びSW3を閉じる(オン)走査信号を電圧信号として出力する。この状態で、映像信号線ドライバXDRから、先の画素PXが接続された映像信号線に映像信号を電流信号として出力し、駆動制御素子DRのゲート−ソース間電圧を、先の映像信号に対応した大きさに設定する。その後、走査信号線ドライバYDRから、先の画素PXが接続された走査信号線SL2にスイッチSW2及びSW3を開く(オフ)走査信号を電圧信号として出力し、続いて、先の画素PXが接続された走査信号線SL1にスイッチSW1を閉じる(オン)走査信号を電圧信号として出力する。
【0034】
スイッチSW1を閉じている有効表示期間では、有機EL素子OLEDには、駆動制御素子DRのゲート−ソース間電圧に対応した大きさの駆動電流が流れる。有機EL素子OLEDは、駆動電流の大きさに対応した輝度で発光する。
【0035】
この有機EL表示装置は、例えば、以下の方法により製造する。
図4乃至図9は、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法を概略的に示す断面図である。
【0036】
この方法では、まず、通常のアレイ基板の製造プロセスを実施して、図4の構造を得る。なお、図4の構造は、図2の有機EL表示装置から有機物層ORG及び第2電極CEを除いた構造である。このとき、一部の第1電極PEに異物FMが付着していることがある。
【0037】
次に、図5に示すように、第1電極PE上に、蒸着法により第1有機材料を堆積させ、第1有機材料層OM1を得る。第1有機材料層OM1は、例えば、後述する融解処理後において、第1電極PEの中央に対応した位置における厚さが約20nm以上となるように形成する。
【0038】
異物FMの下部及びその近傍では、第1有機材料の堆積は生じ難い。そのため、異物FMの近傍で第1有機材料層OM1が薄くなるか、又は、図5に示すように第1有機材料層OM1にピンホールが生じることがある。
【0039】
続いて、第1有機材料層OM1を、その融点よりも高い温度に加熱する融解処理を行う。例えば、第1有機材料の加熱温度と第1有機材料の融点との差が10℃乃至20℃の範囲内となるように加熱する。
【0040】
この融解処理を行うと、第1有機材料は十分に流動化する。その結果、異物FMは、図6に示すように、第1有機材料層OM1によって埋め込まれる。また、この融解処理を行うと、図6に示すように、第1有機材料層OM1のうち、第1電極PEの中央上の部分は、隔壁絶縁層PIに設けた開口の側壁近傍に位置した部分と比較してより薄くなる。通常、隔壁絶縁層PIに設けた貫通孔の側壁下端における第1有機材料層OM1の厚さD0に対する、第1有機材料層OM1のうち第1電極PEの中央上に位置した部分の厚さD1の比D1/D0は、約0.5乃至約0.8の範囲内にある。
【0041】
次に、第1有機材料層OM1上に、蒸着法により第2有機材料を堆積させる。これにより、図7に示す第2有機材料層OM2を得る。
【0042】
その後、図8及び図9に示すように、第2有機材料層OM2上に、蒸着法により発光層EMT及び第2電極CEを順次形成する。
【0043】
この方法では、融解処理における加熱温度を、第1有機材料の融点よりも高くする。そのため、第1有機材料を十分に流動化させることができる。したがって、異物FMの近傍で第1有機材料層OM1にピンホールが生じることや、第1有機材料層OM1のうち異物FMの近傍に位置した部分の厚さがその周囲の部分の厚さと比較して著しく小さくなるのを防止することができる。すなわち、異物FMの近傍における電界集中に起因した劣化や第1電極PEと第2電極CEとの短絡を防止することができる。
【0044】
なお、融解処理を行う代わりに、第1有機材料層OM1を第1有機材料のガラス転移点乃至融点の温度に加熱した場合、第1有機材料を非晶質から結晶質へと相変化させることは可能である。しかしながら、第1有機材料を十分に流動化させることはできない。そのため、この場合、上記の効果を得ることは難しい。
【0045】
また、この方法では、融解処理に伴い、第1有機材料層OM1のうち、第1電極PEの中央上の部分が、隔壁絶縁層PIに設けた開口の側壁近傍に位置した部分と比較してより薄くなる。第1有機材料層OM1の電気抵抗は、その厚さと比例する。そのため、第1有機材料層OM1と発光層EMTとの間に第2有機材料層OM2を配置しない場合、第1電極PEと第2電極CEとの間に通電したときに、発光層EMTの中央部では周縁部と比較して電流密度がより大きくなる。この電流密度のばらつきは、画素PX内の輝度ムラとして視認される可能性がある。
【0046】
第1有機材料層OM1と発光層EMTとの間に第2有機材料層OM2を配置すると、第1有機材料層OM1のばらつきが電流密度の均一性に与える影響を小さくすることができる。すなわち、画素PX内に輝度ムラが生じるのを抑制することができる。
【0047】
第2有機材料層OM2が画素PX内の輝度ムラを抑制する効果の大きさは、第1有機材料層OM1及び第2有機材料層OM2の厚さに依存する。これについて、図10を参照しながら説明する。
【0048】
図10は、第1及び第2有機材料層の厚さが輝度ムラに与える影響の例を示すグラフである。図中、横軸は、第1電極PEの中央に対応した位置における、第1有機材料層OM1の厚さD1と第2有機材料層OM2の厚さD2との和D1+D2に対する厚さD1の比D1/(D1+D2)を示している。また、縦軸は、第1電極PEの中央に対応した位置における有機EL素子OLEDの輝度Lcに対する、輝度Lcと隔壁絶縁層PIに設けた貫通孔の側壁近傍における有機EL素子OLEDの輝度Lpとの差Lc−Lpの比(Lc−Lp)/Lcを百分率で示している。
【0049】
なお、図10のデータは、以下の条件のもとで得られたものである。すなわち、第1有機材料層OM1及び第2有機材料層OM2の材料としては、融点が約150℃であるN,N’−ビス(4−ジフェニルアミノ−4’−ビフェニル)−N,N’−ジフェニル{1,1’−ビフェニル}−4,4’−ジアミンを使用した。また、和D1+D2は一定とし、融解処理における加熱温度は160℃及び170℃とした。図10では、加熱温度を160℃とした場合に得られたデータを曲線C1で示しており、加熱温度を170℃とした場合に得られたデータを曲線C2で示している。
【0050】
図10に示すように、比D1/(D1+D2)を小さい場合には、比(Lc−Lp)/Lcは十分に小さい。すなわち、画素PX内における輝度ムラは十分に抑制されている。例えば、曲線C1を参照すると、比D1/(D1+D2)が約0.6以下の場合には、比(Lc−Lp)/Lcは約10%以下である。また、曲線C2を参照すると、比D1/(D1+D2)が約0.4以下の場合には、比(Lc−Lp)/Lcは約10%以下である。画素PX内の輝度ムラは、比D1/(D1+D2)を適宜設定することにより、十分に抑制することができる。
【0051】
以上、下面発光型の有機EL表示装置について説明したが、上述した技術は、上面発光型の有機EL表示装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一態様に係る有機EL表示装置を概略的に示す平面図。
【図2】図1のEL表示装置で有機EL素子に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図3】図1に示す有機EL表示装置の等価回路図。
【図4】本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図5】本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図6】本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図7】本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図8】本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図9】本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図10】第1及び第2有機材料層の厚さが輝度ムラに与える影響の例を示すグラフ。
【符号の説明】
【0053】
C…キャパシタ、C1…曲線、C2…曲線、CE…第2電極、DE…ドレイン電極、DL…映像信号線、DR…駆動制御素子、EMT…発光層、FM…異物、G…ゲート電極、GI…ゲート絶縁膜、II…層間絶縁膜、ND1…第1電源端子、ND1’…定電位端子、ND2…第2電源端子、OLED…有機EL素子、OM1…第1有機材料層、OM2…第2有機材料層、ORG…有機物層、PE…第1電極、PI…隔壁絶縁層、PS…パッシベーション膜、PSL…電源線、PX…画素、SC…半導体層、SE…ソース電極、SL1…走査信号線、SL2…走査信号線、SUB…絶縁基板、SW1…出力制御スイッチ、SW2…映像信号供給制御スイッチ、SW3…ダイオード接続スイッチ、UC…アンダーコート層、XDR…映像信号線ドライバ、YDR…走査信号線ドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の一主面上に配置されると共に開口が設けられた隔壁絶縁層と、
前記絶縁基板の前記主面上であって前記開口に対応した位置に配置された第1電極と、前記第1電極上に配置されると共に低分子有機化合物からなる有機物層と、前記有機物層上に配置された第2電極とを含んだ有機EL素子とを具備し、
前記有機物層は、前記第1電極上に配置されると共に前記第1電極の中央上の部分が前記開口の側壁近傍に位置した部分と比較してより薄い第1有機材料層と、前記第1有機材料層と前記第2電極との間に配置された発光層とを含んだことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の一主面上に配置されると共に開口が設けられた隔壁絶縁層と、
前記絶縁基板の前記主面上であって前記開口に対応した位置に配置された第1電極と、前記第1電極上に配置された有機物層と、前記有機物層上に配置された第2電極とを含んだ有機EL素子とを具備し、
前記有機物層は、前記第1電極上に配置された第1有機材料層と、前記第1有機材料層と前記第2電極との間に配置された発光層とを含み、
前記第1有機材料層は蒸着法による第1有機材料の堆積と堆積した前記第1有機材料をその融点よりも高い温度に加熱する融解処理とを順次行うことにより形成され、前記発光層は蒸着法により形成されたことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
前記有機物層は、前記第1有機材料層と前記発光層との間に配置された第2有機材料層をさらに含んだことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第1有機材料層と前記第2有機材料層とは同一の材料からなることを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第1電極の中央に対応した位置において、前記第1有機材料層の厚さD1と前記第2有機材料層の厚さD2との和D1+D2に対する前記厚さD1の比D1/(D1+D2)は0.6以下であることを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
絶縁基板と、前記絶縁基板の一主面上に配置されると共に開口が設けられた隔壁絶縁層と、前記絶縁基板の前記主面上であって前記開口に対応した位置に配置された第1電極とを具備した構造を準備する工程と、
前記第1電極上への蒸着法による第1有機材料の堆積と堆積した前記第1有機材料をその融点よりも高い温度に加熱する融解処理とを順次行うことにより第1有機材料層を形成する工程と、
前記第1有機材料層上に蒸着法により発光層を形成する工程と、
前記発光層上に第2電極を形成する工程とを含んだことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1有機材料層を形成する工程と前記発光層を形成する工程との間に、前記第1有機材料層上への蒸着法による第2有機材料の堆積を行うことにより第2有機材料層を形成する工程をさらに含んだことを特徴とする請求項6に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1有機材料と前記第2有機材料とは同一であることを特徴とする請求項7に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記融解処理における前記第1有機材料の加熱温度と前記第1有機材料の融点との差は10℃乃至20℃の範囲内にあることを特徴とする請求項6に記載の有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−245305(P2006−245305A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59216(P2005−59216)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】