説明

有機EL表示装置

【課題】 画素間の非発光領域に絶縁膜を有する有機EL表示装置において、逆バイアス電圧の印加時における上下電極の短絡を極力防止する。
【解決手段】 基板10上に、下部電極20、発光層33を含む有機膜30、上部電極40が積層されてなる複数個の画素50を有するとともに、基板10上にて各々の画素50の間に配置された絶縁膜60を有する有機EL表示装置S1において、絶縁膜60は、耐熱温度が約540℃であるシラン化合物、その加水分解物およびその加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有するものであり、かつ、電界強度が1.5MV/cm以上となるような逆バイアス電圧が、画素50に対して印加できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置に関し、特に、画素間の非発光領域に絶縁膜を有する有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な有機EL表示装置は、基板上に、下部電極、発光層を含む有機膜、上部電極が積層されてなる複数個の画素を有する。ここで、有機膜はダイオード特性を示し、画素において上下の電極間に順バイアスを加えることにより発光を行う。
【0003】
この有機EL表示装置は、数V〜十数Vの低電圧駆動が可能なため低消費電力であり、駆動回路を含めて軽量化が可能であることから、現在広く使われている液晶ディスプレイに代わる次世代の薄型ディスプレイや、平面照明、薄型バックライトなど様々な活用が期待されている。
【0004】
しかしながら、有機EL表示装置は、電極間の有機膜が極めて薄く(たとえばサブミクロンオーダ程度)、この電極の膜や有機膜に発生する欠陥部(膜欠陥部)が微小なものであっても容易に電流が集中し、非発光にいたるという問題がある。
【0005】
この微小な欠陥の原因としては、電極や有機膜といった膜を形成する際に発生するゴミやチリ等の異物の混入が挙げられるが、大きな面積でこれらの欠陥が無く均一な膜を形成することは大変困難である。
【0006】
そこで、素子の製造工程において、陽極と陰極との間に逆バイアス電圧を印加するエージング処理を行って膜欠陥部を予めオープン破壊させておくことが考えられる。オープン破壊とは、欠陥部を不導体化させることであり、エージングの際に生じるジュール熱によって当該膜欠陥部に対応する電極を破壊してオープン状態(絶縁状態)としたり、酸化して不導体化したりする等の現象により発生すると考えられる。
【0007】
このようなオープン破壊を行った膜欠陥部は局所的な非発光部となるが、問題となる膜欠陥部は、もともと視認できない程度の微小なものであり、表示品質には影響せず、問題はない。
【0008】
このようなエージングによるオープン破壊を行うものとして、欠陥部の破壊電圧と有機EL素子の破壊電圧とを予め求め、エージング処理は、これら両破壊電圧の間の電圧範囲にて行うことにより、正常部は破壊せずに、欠陥部のみをオープン破壊させる方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0009】
一方で、従来の有機EL表示装置においては、基板上にて各々の画素の間に配置された絶縁膜が備えられている。
【0010】
上述したように、有機膜はダイオード特性を示し、上下の電極間に順バイアス電圧が加わると発光する。パッシブマトリクス(単純マトリクス)のパネルでは発光画素と非発光画素とにより表示がなされるが、非発光の表示を得るには、画素間のクロストークを防止するために、駆動時においてもダイオードすなわち有機膜に逆バイアス電圧を印加する必要がある。従来では、この逆バイアス電圧は順バイアス電圧と同程度でよく、たとえば10V〜13V程度である。
【0011】
逆バイアス電圧を印加したときに流れる電流をリーク電流と呼ぶが、この電流値が大きいほど、素子の耐圧が小さくなり、長時間作動していると上下の電極が短絡するという問題がある。この電極の短絡はパネルにライン上の輝線もしくは暗線を発生させ、表示に不具合を生じさせる。
【0012】
これは、上述したように、有機EL表示装置における電極間の有機膜が極めて薄い(例えばサブミクロンオーダ程度)ために、有機膜の下部(下地)の表面に凹凸があると、有機膜がカバーしきれないことが原因である。つまり、有機膜の下地表面に凹凸があると、この凹凸に電界集中が起こり、有機膜の絶縁破壊が生じ、上下電極の短絡が発生するのである。
【0013】
特に、パッシブマトリクスの複数帯状電極パターンが交差するパネルでは下部電極のパターンエッジ先端部の表面の凹凸が大きいので、下部電極のエッジ部にて有機膜厚が局所的に薄くなり、短絡が顕著となる。
【0014】
そのため、パターンエッジを覆う平坦な絶縁膜が必要となっている。つまり、画素間における下部電極の間、すなわち非発光領域に絶縁膜を設ける必要性が生じてくる。
【0015】
ちなみに、たとえば、ストライプ状をなす下部電極と上部電極とが交差するものにおいては、絶縁膜は、各々の画素間における下部電極の間および下部電極のうち上部電極の間に位置する部位上に配置されて格子状をなすものとなる。ただし、絶縁膜の周辺部は、上下電極間に入り込み上下電極に挟まれた形となる。
【0016】
つまり、このような絶縁膜は、実際に発光する領域を開口部として発光しない領域(つまり非発光領域)に施される上下電極の間にある絶縁膜であり、この絶縁膜により、パターン加工された開口部のみに通電が可能となり、その部分のみにパターン精度のよい発光が得られる。なお、絶縁膜は、上下電極(陽極と陰極)の間に発光層が存在しない場合にも、上下電極間の短絡を防ぎ電気的に絶縁を保つ層でもある。
【0017】
このようなことから、従来では、有機EL表示装置において基板上にて各々の画素の間に絶縁膜が配置されたものが提案されている(たとえば、特許文献2および特許文献3参照)。また、このような絶縁膜としては、絶縁体である材料からなる膜であるならば特に制限はないが、たとえば、感放射線性組成物が採用されている(たとえば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2003−282253号公報
【特許文献2】特許第2734464号公報
【特許文献3】特許第2911552号公報
【特許文献4】特開2003−288991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、このような絶縁膜においても、異物の混入などにより微小な欠陥部が存在する。
【0019】
本発明者の検討によれば、このような欠陥部を有する絶縁膜に対して逆バイアス電圧を印加すると、この絶縁膜にも、逆バイアス電圧の印加時において、絶縁膜内部の欠陥部、あるいは絶縁膜エッジ近接の欠陥部に電流が流れ、絶縁膜が変形し、この変形部にて上下電極が短絡し、非発光にいたるという問題を新たに発見した。
【0020】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、画素間の非発光領域に絶縁膜を有する有機EL表示装置において、逆バイアス電圧の印加時における上下電極の短絡を極力防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、鋭意検討を行った。
【0022】
一般に、絶縁膜の耐熱性を満足するためには、無機絶縁膜を用いればよい。ただし、無機絶縁膜の場合は、絶縁膜のエッジにおいて、そのエッジ形状が低テーパでなかったり、凹凸が大きいことに起因して、有機膜に薄膜の部分ができ、そこからリークが発生し、上下電極の短絡に至る。
【0023】
そこで、絶縁膜のエッジ部を低テーパ形状にするためのリフトオフプロセスなどや、凹凸を小さくするための研磨プロセスなどが必要となる。しかしながら、段差部の研磨は容易でなく、絶縁膜のエッジ部での凹凸を小さくし、有機膜のリークを抑制することは困難である。
【0024】
一方で、これら特殊なプロセスを必要としなくても、低テーパ形状や凹凸の小さな形状を実現できるのが有機材料には多い。そこで、絶縁膜として有機材料を用いることを考えた。
【0025】
しかしながら、有機材料は一般に耐熱性が低く、表示不良に至るものがほとんどである。そこで、有機材料の中から比較的耐熱性に優れたものを選択し、検討を行った。本発明はその検討結果に基づいて実験的に見出されたものである。
【0026】
すなわち、請求項1に記載の発明では、基板(10)上に、下部電極(20)、発光層(33)を含む有機膜(30)、上部電極(40)が積層されてなる複数個の画素(50)を有するとともに、基板(10)上にて各々の画素(50)の間に配置された絶縁膜(60)を有する有機EL表示装置において、次のような特徴点を有する。
【0027】
・絶縁膜(60)は、次の化学式(1)で表されるシラン化合物、その加水分解物およびその加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有するものであること。
【0028】
(化2)
(R1)pSi(X)4-p … (1)
ここで、上記化学式(1)中、R1は炭素数1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。
【0029】
・画素(50)は、順バイアス電圧を印加したときに発光状態となるものであり、さらに、電界Yaは、逆バイアス電圧をVr、有機膜(30)の厚さをDyとしたとき、次の数式(2)にて表されるものであり、この電界Yaが1.5MV/cm以上であるような逆バイアス電圧が、画素(50)に対して印加できるようになっていること。
【0030】
(数2)
Ya=Vr/Dy … (2)
本発明の有機EL表示装置は、これらの点を特徴としている。
【0031】
それによれば、絶縁膜が熱変形し上下電極の短絡に至るという問題に対して、絶縁膜(60)として、耐熱温度がおおよそ540℃であるシラン化合物を用いるならば、有機EL表示装置の実用時において、絶縁膜の熱変形を原因とする短絡を防止できることが実験的に確認できた。なお、このシラン化合物の耐熱温度は、一般的な上部電極の融点と同様である。
【0032】
しかし、さらに、絶縁膜の欠陥部においては、リークが発生し、それが上下電極の短絡につながる恐れがある。そこで、この欠陥部における電極のオープン化すなわち欠陥部直上の上部電極を破壊して飛ばすことが必要である。
【0033】
しかし、絶縁膜の耐熱性を大きくしているがゆえに、絶縁膜の上の部分の耐熱性も大きいものとなる。すると、従来の駆動時における逆バイアス電圧では、絶縁膜上の上部電極を飛ばすことが難しくなる。
【0034】
そこで、本発明では、上記したような従来の逆バイアス電圧よりも大きな1.5MV/cm以上である逆バイアス電圧を、画素(50)に対して印加できるようにしている(図6参照)。
【0035】
このことは、実験的に見出されたものであり、1.5MV/cm以上である逆バイアス電圧を、画素(50)に対して印加すれば、絶縁膜(60)の欠陥部において逆バイアス電圧のジュール熱によって上部電極(40)を飛ばし、上記オープン化を実現することができる。
【0036】
このように、本発明によれば、画素(50)間の非発光領域に絶縁膜(60)を有する有機EL表示装置において、逆バイアス電圧の印加時における上下電極(20、40)の短絡を極力防止することができる。
【0037】
請求項2に記載の発明では、基板(10)上に、下部電極(20)、発光層(33)を含む有機膜(30)、上部電極(40)が積層されてなる複数個の画素(50)を有するとともに、基板(10)上にて各々の画素(50)の間に配置された絶縁膜(60)を有する有機EL表示装置において、次のような特徴点を有している。
【0038】
・絶縁膜(60)は、540℃における重量変化が10%以内の有機高分子材料からなること。
【0039】
・画素(50)は、順バイアス電圧を印加したときに発光状態となるものであり、さらに、電界Yaは、逆バイアス電圧をVr、有機膜(30)の厚さをDyとしたとき、上記請求項1の発明に示した数式(2)にて表されるものであり、この電界Yaが1.5MV/cm以上であるような逆バイアス電圧が、画素(50)に対して印加できるようになっていること。本発明の有機EL表示装置は、これらの点を特徴としている。
【0040】
上述したように、絶縁膜材料を耐熱性材料とすることで、絶縁膜の熱変形を原因とする短絡を防止することができる。これはジュール熱により上部電極が融点近くの温度(500℃以上)に達したときに、絶縁膜が形状を保持するため、絶縁膜の熱変形に起因する上下電極の短絡を防止できることによる。
【0041】
特に耐熱性の定義として、有機高分子の場合、明確な融点は規定できないため、本発明者は、あらたな耐熱指標を導出した。それは、TGA(熱重量分析)において重量減少率が10%となる温度を耐熱温度とするものである。
【0042】
そして、絶縁膜においては、この重量減少率が10%となる温度が540℃以上であれば、絶縁膜(60)が形状を保持し、絶縁膜の熱変形に起因する上下電極の短絡を防止できることを実験的に見出した(図7参照)。なお、このことは、上部電極(40)がAlである場合に、特に有効である。
【0043】
また、本発明では、上記請求項1に記載の発明と同様に、従来の逆バイアス電圧よりも大きな1.5MV/cm以上である逆バイアス電圧を、画素(50)に対して印加できるようにしている。
【0044】
それによれば、上記請求項1に記載の発明と同様に、1.5MV/cm以上である逆バイアス電圧を、画素(50)に対して印加できることから、絶縁膜(60)の欠陥部において逆バイアス電圧のジュール熱により上部電極(40)を飛ばし、オープン化を実現することができる。
【0045】
このように、本発明によれば、画素(50)間の非発光領域に絶縁膜(60)を有する有機EL表示装置において、逆バイアス電圧の印加時における上下電極(20、40)の短絡を極力防止することができる。
【0046】
ここで、請求項3に記載の発明のように、請求項1または請求項2に記載の有機EL表示装置においては、複数個の画素(50)は、ストライプ状をなす下部電極(20)とこれに直交するストライプ状をなす上部電極(40)とにより形成された格子状に配置されたものであり、各々の画素(50)間における下部電極(20)の間および下部電極(20)のうち上部電極(40)の間に位置する部位上に、絶縁膜(60)が配置されているものにできる。
【0047】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の有機EL表示装置においては、絶縁膜(60)は、絶縁破壊時に、ポーラス状態ではなく凝集状態になる材料からなるものであることが好ましい。
【0048】
ここで、ポーラス状態とは、絶縁破壊時にボイドが多く発生し網目状になるものであり、変形しやすいものである。また、凝集状態とは、絶縁破壊時にバルク状態を保持した状態である。
【0049】
絶縁膜(60)の破壊形状がポーラスではなく、凝集状態になることで、絶縁膜(60)の熱変形に起因する上部電極(40)の巻き込みを防止することができ、上下電極の短絡を防止しやすくなる。
【0050】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4に記載の有機EL表示装置において、逆バイアス印加時において、画素(50)には、40mA以上の電流が供給されるようになっていることを特徴としている。
【0051】
上述したように、画素(50)には逆バイアス電圧として、電界Yaが1.5MV/cm以上であるような電圧を印加する。そして、この電界は、外部の駆動回路から印加される。
【0052】
しかし、画素(50)と当該駆動回路との間には、回路の配線抵抗やパネルの配線抵抗が存在する。これらの配線抵抗が大きいと、当該回路における出力が、1.5MV/cm以上であるにもかかわらず、画素(50)では、それよりも小さい電界となり、上記したようなオープン化が実現できない恐れがある。
【0053】
そこで、このような配線抵抗を加味した設定値として、逆バイアス電圧の印加時における画素(50)に供給される電流を用いることにした。そして、本発明者は、この電流がどの程度であるならば、上記のオープン化が可能であるかを調査した。
【0054】
その結果、本発明のように、逆バイアス印加時において、画素(50)に、40mA以上の電流が供給されるようになっていれば、絶縁膜(60)の欠陥部において逆バイアス電圧のジュール熱により上部電極(40)を飛ばすことができ、上記オープン化が適切になされることを見出した(図8参照)。
【0055】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0057】
図1は、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置S1の概略平面図である。この図1では、陽極20の外形および絶縁膜60のうち隔壁70の下に隠れている部分以外の外形は透過して示してあり、絶縁膜60には斜線ハッチングを施してある。
【0058】
また、図2は図1中のA−A線に沿った概略断面図であり、図3は図1中のB−B線に沿った概略断面図である。
【0059】
有機EL表示装置S1は、可視光に対して透明な基板10を備え、この基板10の上には、下部電極としての陽極20、有機EL材料からなる発光層33を含む有機膜30、電子注入層35、上部電極としての陰極40を順次積層してなる積層体としての画素50が複数個形成されている。
【0060】
基板10は、ガラスや樹脂などからなる透明な電気絶縁性を有する基板であり、本例では、ガラス基板を採用している。
【0061】
基板10の上に形成された陽極20は、インジウム−錫の酸化物(ITO)膜やインジウム−亜鉛の酸化物膜等の透明導電膜からなるものであり、その膜厚は、たとえば、100nm〜1μm程度であり、好ましくは150nm程度である。
【0062】
また、有機膜30は、真空蒸着法にて成膜されたもので、陽極20側から順に、正孔注入性有機材料からなる正孔注入層31、正孔輸送性有機材料からなる正孔輸送層32、正孔輸送性有機材料や電子輸送性有機材料に蛍光色素をドープした有機EL材料からなる発光層33、電子輸送性有機材料からなる電子輸送層34が積層されてなる。
【0063】
具体的に、陽極の上に形成された正孔注入層31は、通常有機ELパネルに採用可能な正孔注入性材料を採用できる。本例では、正孔注入層31は、厚さが15nmである銅フタロシアニン(CuPc)膜から形成されている。
【0064】
正孔注入層31の上に形成された正孔輸送層32は、通常有機ELパネルに採用可能な正孔輸送性材料を採用できる。本例では、正孔輸送層32は、α−ナフチル・フェニル・ベンゼン(NPD)膜から形成されている。
【0065】
その上の発光層33については、通常有機ELパネルに採用可能な発光層の材料、すなわちホスト材料と蛍光色素であるドーパント材料を採用できる。そして、主に、ドーパント材料を変更することにより、発光層33の発光色を規定することができる。
【0066】
本例では、発光層33は、ホストであるAlq3(アルミキノリノール)中にドーパントすなわち蛍光色素としてジメチルキナクリドンが1wt%添加された膜からなる。
【0067】
そして、発光層33の上に形成された電子輸送層34は、通常有機ELパネルに採用可能な電子輸送性材料を採用できる。本例では、電子輸送層34は、Alq3膜から形成されている。そして、本例では、有機膜30(上記各膜31〜34)の膜厚は133nm程度である。
【0068】
電子輸送層34の上に形成された電子注入層35、陰極40は、それぞれ通常有機ELパネルに採用可能な電子注入材料、陰極材料を採用できる。
【0069】
本例では、電子注入層35はフッ化リチウム(LiF)からなる厚さ0.5nmの膜であり、上部電極としての陰極40はアルミニウム(Al)からなる厚さ100nmの膜である。なお、電子注入層35が有機材料からなる場合は、電子注入層35は有機膜30の一部として構成されることになる。
【0070】
本実施形態における画素50の配置形態は、次のようである。陽極20および陰極40はそれぞれ複数本設けられ、複数本の陽極20と複数本の陰極40とは互いに直交する方向へ延びるストライプ状に配置されている。また、両電極20、40の間に挟まれた有機膜30は、陰極40と同一のストライプ形状にパターニングされている。
【0071】
そして、陽極20と陰極40とが交差して重なり合う積層体の部分が、発光部としての画素50を形成しており、本例では、図1に示されるように、複数個の画素50が格子状に配列された形となっている。
【0072】
ここで、図1〜図3に示されるように、陽極20のストライプの間と有機膜30および陰極40のストライプの間には、電気絶縁性の絶縁膜60が形成されている。つまり、絶縁膜60は、基板10上にて各々の画素50の間に配置されており、画素分離層として構成されている。
【0073】
言い換えれば、本例では、複数個の画素50は、ストライプ状をなす陽極20とこれに直交するストライプ状をなす陰極40とにより形成された格子状に配置されたものであり、絶縁膜60は、各々の画素50間における陽極20の間および陽極20のうち陰極40の間に位置する部位上に、配置されている。
【0074】
なお、図1や図3に示されるように、絶縁膜60の周辺部は、上下電極20、40間に入り込み上下電極20、40に挟まれた形となる。このことは、従来の有機EL表示装置も同様である。つまり、この絶縁膜60を挟んでいる部分の上下電極20、40が、絶縁膜60の欠陥部による短絡を生じやすい部位である。
【0075】
ここで、絶縁膜60は、シラン化合物、その加水分解物およびその加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有するものであり、この化合物は、耐熱温度すなわち熱変形が開始される温度がおおよそ540℃であるものである。
【0076】
また、好ましくは、絶縁膜60は、540℃における重量変化が10%以内の有機高分子材料からなる。この重量変化は、TGA(熱重量分析)により求められる。絶縁膜60の詳細については後述する。
【0077】
また、絶縁膜60のうち有機膜30および陰極40のストライプの間に位置する部分の上には、複数本の隔壁70がストライプ状に形成されている。この隔壁70はネガ型の感光性樹脂レジスト材料などからなる。
【0078】
また、隔壁70の断面形状は、図2に示されるように、基板10側から上方に向かって広がる逆テーパ形状をなしている。隔壁70においてこのような逆テーパの断面形状とすることは、有機膜30および陰極40の成膜工程においてこれら有機膜30および陰極40を適切に画定するためである。
【0079】
その結果、本有機EL表示装置S1では、陰極40のストライプ方向に沿って形成された隔壁70により、各画素50が区画され分離されている。具体的には、この隔壁70によって、有機膜30および陰極40がストライプ状に画定されるとともに、隣接する陰極40の間が絶縁されている。
【0080】
そして、このような有機EL表示装置S1においては、両電極20、40間に電圧を印加することにより、画素50における発光層33が発光するようになっている。
【0081】
具体的には、下部電極20を陽極、上部電極40を陰極として上下電極20、40間に電圧を印加することにより、駆動する。このとき、画素50に対して発光時には順バイアス電圧が印加されて発光し、非発光時にはクロストーク等による発光を抑えるため逆バイアス電圧が印加される。
【0082】
具体的に、本例のドットマトリクスタイプの有機EL表示装置においては、一つの画素50に対して、所定のデューティ比やパルス幅を有する駆動波形のパルス電圧が印加される。順バイアス電圧(順方向パルス)の印加時には、発光層33が発光し、逆バイアス電圧(逆バイアスパルス)の印加時には、非発光状態となる。
【0083】
ここで、本実施形態では、電界をYa、逆バイアス電圧をVr、有機膜30の厚さをDyとしたとき、Ya=Vr/Dyの関係が設定されており、このような関係において、電界強度すなわち電界Yaが1.5MV/cm以上となるような逆バイアス電圧が、画素50に対して印加できるようになっている。なお、有機膜30の厚さDyは、本例では上記したように133nmであり、逆バイアス電圧としては20V以上となる。
【0084】
この電界Yaが1.5MV/cm以上となるような逆バイアス電圧は、画素50の耐圧よりは低いものの、従来の逆バイアス電圧よりも大きなものである。詳しくは、後述するが、これは、絶縁膜60の欠陥部において逆バイアス電圧のジュール熱により上部電極40を飛ばし、オープン化を実現するためである。
【0085】
本有機EL表示装置S1の製造方法について上記例の構成に基づいて述べる。まず、基板10の上に、スパッタ法によりITO膜を形成し、これをフォトリソグラフ技術を用いてパターニングすることにより、陽極20を形成する。
【0086】
次に、画素50の間となる部分において基板10の上および陽極20の上に、上記絶縁膜60を形成する。この絶縁膜60については、シラン化合物を含む感光性組成物、具体的には感放射線性組成物を原料として、ホトリソグラフィ法を用いて成膜することができるが、その成膜方法の詳細については後述する。
【0087】
さらに、絶縁膜60の上に、有機膜30および陰極40を分断するための隔壁70をホトリソグラフィ法で形成する。本例では、基板10の全面上に隔壁70となるネガ型の感光性樹脂レジストをスピンコートし、これを焼成した後、露光、現像することにより、隔壁70を形成する。
【0088】
その後、陽極20の上に有機膜30を真空蒸着法等にて成膜して積層し、有機膜30の上に陰極40を真空蒸着法等にて成膜して積層する。
【0089】
具体的には、陽極20の上に、蒸着法により、正孔注入層31としてCuPc膜を形成し、続いて、正孔輸送層31としてNPD膜を形成する。その上に、蒸着を行い、Alq3にジメチルキナクリドンを1%ドープしてなる発光層33を成膜する。
【0090】
こうして、発光層33を形成した後、蒸着法により、Alq3からなる電子輸送層34を形成する。その後、蒸着法により、電子注入層35としてのLiF膜、陰極40としてのAl膜を順次成膜する。
【0091】
これにより、基板10上において、隔壁70の間に位置する陽極20および基板10の上に、有機膜30および陰極40がストライプ状に積層される。こうして、上記した格子状の画素50を有するとともに、画素50間に配置された格子状の絶縁膜60を有する有機EL表示装置S1が形成される。
【0092】
なお、上記図2に示されるように、実際には、このような成膜方法により、隔壁70の上端面にも、有機膜30および陰極40と同様の膜が積層される。
【0093】
[絶縁膜の詳細]
次に、上記した絶縁膜60およびその成膜方法の詳細について、説明する。
【0094】
本実施形態の絶縁膜60は、次の化学式(1)で表されるシラン化合物、その加水分解物およびその加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有するものである。
【0095】
(化3)
(R1)pSi(X)4-p … (1)
ここで、上記化学式(1)中、R1は炭素数1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。
【0096】
このような絶縁膜60としては、有機物であるシラン化合物が挙げられる。絶縁膜60に用いられるシラン化合物の構造の一例を図4(a)、(b)に示す。この図4に示されるシラン化合物を母材とし、放射線の照射を受けて酸または塩基を発生する化合物を添加することで光硬化性を有する。図4(a)はランダムストラクチャー、図4(b)はラダーストラクチャーのものである。
【0097】
その他のシラン化合物の具体例としては、例えば、4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物として、テトラクロロシラン、テトラアミノシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジロキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。
【0098】
また、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基で置換されたシラン化合物として、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、d3−メチルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0099】
また、2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基で置換されたシラン化合物として、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジアミノシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0100】
また、3個の非加水分解性基と1個の加水分解性基で置換されたシラン化合物として、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリブチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリブチルエトキシシラン等をそれぞれ挙げることができる。
【0101】
これらのうち、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基で置換されたシラン化合物が好ましく使用でき、特にメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシランが好ましい。このようなシラン化合物は、一種単独で使用しても、または、2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0102】
また、本実施形態の絶縁膜60に使用されるシラン化合物は、上記のようなシラン化合物、その加水分解物およびその加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物であるが、シラン化合物の加水分解物またはその加水分解物の縮合物であることが好ましい。
【0103】
上記シラン化合物を加水分解または縮合させる条件は、特に制限されるものではないが、一例として、以下に示す工程によって実施することができる。
【0104】
上記シラン化合物と、所定量の水および適当な溶媒を、攪拌機付の容器内に収容し、空気雰囲気中、0℃〜溶媒またはシラン化合物の沸点以下の温度で1〜24時間程度攪拌する。なお、攪拌中、必要に応じて蒸留によって反応混合物を濃縮したり、あるいは溶媒を追加することも可能である。
【0105】
ここで使用することができる溶媒としては特に制限はなく、たとえばアルコールやエーテルなどの有機溶媒などを用いることができる。溶媒を使用する場合、その使用量としてはシラン化合物100重量部あたり通常1000重量部以下の量が使用される。
【0106】
また、上記シラン化合物を加水分解または縮合する際に、触媒を使用することもできる。このような触媒としては、金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基等を挙げることができる。触媒として用いられる金属キレート化合物としては、例えば、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
【0107】
これらの具体例としては、例えば、チタンキレート化合物としてトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタンなどがある。
【0108】
触媒として用いられる有機酸の具体例としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができる。
【0109】
触媒として用いられる無機酸の具体例としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができる。
【0110】
触媒として用いられる有機塩基の具体例としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等を挙げることができる。
【0111】
触媒として用いられる無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0112】
これらの中では、金属キレート化合物、有機酸または無機酸を触媒として用いることが好ましく、より好ましくはチタンキレート化合物または有機酸である。
【0113】
これらの化合物は1種単独であるいは2種以上組み合わせて触媒として用いることができる。触媒の使用量は、シラン化合物100重量部に対して、通常、10重量部以下であり、好ましくは0.001〜10重量部であり、さらに好ましくは0.01〜10重量部である。
【0114】
シラン化合物の加水分解物およびその加水分解物の縮合物の重量平均分子量は、15,000以下であることが好ましく、500〜15,000であることがさらに好ましく、1,000〜12,000であることがより好ましい。この範囲の重量平均分子量とすることにより、成膜性と感放射線性のバランスに優れた組成物を得ることができる。
【0115】
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記することがある。)を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量として測定されたものと理解すべきである。
【0116】
上述したように、本実施形態の絶縁膜60は、シラン化合物を含む感光性組成物、具体的には感放射線性組成物を原料として、ホトリソグラフィ法を用いて成膜することができる。そのため、上記原料を作るうえで、上記シラン化合物に対して添加するものとして、放射線の照射を受けて酸または塩基を発生する化合物や、シランカップリング剤、脱水剤などがある。
【0117】
まず、放射線の照射を受けて酸または塩基を発生する化合物としては、感放射線性酸発生剤または感放射線性塩基発生剤が挙げられる。
【0118】
感放射線性酸発生剤は、紫外線等の放射線を照射することによりシラン化合物成分を硬化(架橋)可能な酸性物質を放出することができる化合物であり、例えばトリクロロメチル−s−トリアジン類、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、第四アンモニウム塩類、スルホン酸エステル類等を用いることができる。これらのうち、ジアリールヨードニウム塩類およびトリアリールスルホニウム塩類が好ましい。
【0119】
上記トリクロロメチル−s−トリアジン類としては、例えば2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0120】
次に、シランカップリング剤は、本実施形態の感放射線性組成物から形成された絶縁膜60と基板10との密着性を改良するために使用することができる。
【0121】
このようなシランカップリング剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましく使用され、例えばカルボキシル基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基などの反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0122】
ここで、エポキシ基を有するシランカップリング剤が最も好ましく、中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジメトキシシランが特に好ましい。
【0123】
このような(C)シランカップリング剤の配合量は、(A)成分100重量部に対して、通常50重量部以下、好ましくは2〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。
【0124】
また、本実施形態の感放射線性組成物に添加することができる脱水剤は、水を化学反応により水以外の物質に変換することができるか、または物理吸着もしくは包接によりトラップすることができる物質である。
【0125】
本実施形態の感放射線性組成物に脱水剤を含有させることにより、環境から浸入する水分、または後述する絶縁膜60の形成工程において放射線の照射により、シラン化合物成分から発生する水分の影響を軽減することができ、そのために組成物の感放射線性の向上に資するものと推定される。
【0126】
このような脱水剤としては、カルボン酸エステル、アセタール類(ケタール類を含む。)、およびカルボン酸無水物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物が好ましく使用できる。
【0127】
さらに、絶縁膜60の原料となる感放射線性組成物への添加物としては、酸拡散制御剤や増感剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0128】
酸拡散制御剤は、上記感放射線性酸発生剤を用いるときに使用することができ、感放射線性酸発生剤に放射線を照射することにより生じた酸性物質の組成物塗膜中における拡散を制御し、非露光領域での硬化反応を抑制する作用を有する。このような酸拡散制御剤を添加することにより、パターン制度に優れた感放射線性組成物とすることができる。
【0129】
また、増感剤は、本実施形態の感放射線組成物の放射線に対する感度を向上させる目的で配合することができる。
【0130】
そして、この絶縁膜60を形成するための感放射線性組成物は、上記の通り、シラン化合物およびその他の添加剤を含有するものであるが、通常、溶媒に溶解または分散させた状態に調製され、使用される。
【0131】
この感放射線性組成物の調製に用いることができる溶媒としては、感放射線性組成物の各成分を均一に溶解または分散し、各成分と反応しないものが好適に用いられ、たとえばアルコールやエーテルなどの有機溶媒などを用いることができる。
【0132】
次に、シラン化合物を含む感放射線性組成物を原料として、ホトリソグラフィ法を用いた絶縁膜60の成膜方法の詳細について述べる。
【0133】
本成膜方法は、大きくは、たとえば上記図4に示されるような感光性を有するシラン化合物を含む感放射線性組成物を原料として、パターニングされた陽極20としてのITO上にホトリソグラフィ法を用いて形成される。
【0134】
すなわち、感光性を有するシラン化合物を含む感放射線性樹脂組成物を所定膜厚で塗布し、フォトマスクをとおして光を照射し、絶縁膜60を残す部分を光硬化させ、現像することで不要な部分を溶解除去し、その後焼成することで、所定の位置に絶縁膜が形成できる。
【0135】
より具体的には、上記感放射線性樹脂組成物を原料に用いて、例えば次のようにして有機EL表示装置S1の絶縁膜60を形成することができる。図5は、その形成方法を示す工程図である。
【0136】
まず、図5(a)に示されるように、陽極20としてのITOがパターニングされた基板10を用意する。
【0137】
その上に、図5(b)に示されるように、絶縁膜60の原料である感放射線性樹脂組成物を、基板10の表面に塗布し、プレベークにより溶媒を除去することによって塗膜61とする(塗布工程)。この塗布方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法などの適宜の方法を採用することができる。
【0138】
また、プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、通常30〜200℃、より好ましくは40〜150℃であり、ホットプレートやオーブン、赤外線などを使用して加熱することができる。プレベーク後の膜厚は感放射線性組成物61の固形分濃度や塗布条件により所望の値とすることができるが、例えば0.5〜7μm程度とすることができる。
【0139】
次に、図5(c)に示されるように、形成された塗膜61に所定のパターンのフォトマスクK1を介して放射線UVを照射する(露光工程)。
【0140】
ここで用いられる放射線としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)等の紫外線、KrFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線が挙げられる。これらのうち、g線およびi線が好ましい。露光量としては、通常50〜10,000J/m2、好ましくは100〜5,000J/m2である。
【0141】
また、露光後に加熱処理(露光後ベーク(PEB))を行うのが好ましい。その加熱には、上記プレベークと同様な装置が使用でき、その条件は任意に設定することができる。好ましい加熱温度は30〜150℃であり、より好ましくは30〜130℃である。
【0142】
放射線を照射した後、図5(d)に示されるように、現像液を用いて現像処理して放射線の照射部分の塗膜61を除去することにより所望のパターンを有する塗膜61を得る(現像工程)。
【0143】
ここで用いられる現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン等のアルコ−ルアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩またはピロ−ル、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−(5.4.0)−7− ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−(4.3.0)−5−ノナン等の環状アミン類を水に溶解したアルカリ水溶液が好ましく使用される。
【0144】
また該現像液には、水溶性有機溶媒、例えばメタノ−ル、エタノ−ル等のアルコ−ル類や界面活性剤を適量添加して使用することもできる。さらには、感放射線性組成物を溶解する各種有機溶媒も現像液として使用することができる。
【0145】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法等の適宜の方法を利用することができる。現像処理後に、パターニングされた塗膜61に対し、例えば流水洗浄によるリンス処理を行ってもよい。
【0146】
その後、図5(e)に示されるように、この塗膜61をホットプレート・オーブン等の加熱装置を用いて加熱処理を行うことにより目的とする絶縁膜60を形成することができる(焼成工程)。
【0147】
この加熱処理における加熱温度は、例えば150〜400℃とすることができ、加熱時間は、ホットプレート上で加熱を行う場合には5〜30分間、オーブン中で加熱を行う場合には30〜90分間とすることができる。上記絶縁膜60の膜厚は、組成物の組成や目的とする有機EL表示装置の構造等に基づき適宜の値とすることができるが、例えば0.5〜7μmとすることができる。
【0148】
なお、従来知られている絶縁膜の材料は、有機系合成高分子を主成分とするものであり、その耐熱性に限界があった。そのため、上記焼成工程における加熱温度を十分に高めることができず、例えば250℃以下の温度における加熱処理を余儀なくされており、材料中に存在する水分を上記焼成工程において十分に除去することができなかった。
【0149】
そのため、そのような材料を有機EL表示装置の絶縁膜60に用いた場合、絶縁膜60中に残存する水分が徐々に有機膜30中に浸入し、有機EL表示装置の発光特性を阻害する一因となっていた。
【0150】
本実施形態の感放射線性組成物は、耐熱性の高いシラン化合物を主成分としているため、上記加熱工程において250℃を超える温度、たとえば300℃〜400℃の高温を採用することができる。それゆえ、絶縁膜60中に残存する水分を実質上ゼロにすることができ、そのことにより有機EL表示装置の長寿命に資するものと考えられる。
【0151】
こうして、絶縁膜60を形成した後、図5(f)に示されるように、隔壁70をホトリソグラフィ法にて形成し、有機膜30の蒸着、陰極40の形成を行い、たとえば缶や保護膜で封止することによって有機EL表示装置S1は完成する。
【0152】
[効果等]
ところで、本実施形態によれば、基板10上に、下部電極20、発光層33を含む有機膜30、上部電極40が積層されてなる複数個の画素50を有するとともに、基板10上にて各々の画素50の間に配置された絶縁膜60を有する有機EL表示装置S1において、次のような特徴点を有する有機EL表示装置S1が提供される。
【0153】
・絶縁膜60は、上記化学式(1)で表されるシラン化合物、その加水分解物およびその加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有するものであること。
【0154】
・画素50は、順バイアス電圧を印加したときに発光状態となるものであり、さらに、電界Yaは、逆バイアス電圧をVr、有機膜30の厚さをDyとしたとき、次の数式(2)にて表される電界強度であり、この電界Yaが1.5MV/cm以上であるような逆バイアス電圧が、画素50に対して印加できるようになっていること。
【0155】
(数3)
Ya=Vr/Dy … (2)
これらの点を特徴とする本実施形態の有機EL表示装置S1によれば、絶縁膜が熱変形し上下電極の短絡に至るという問題に対して、絶縁膜60として、耐熱温度がおおよそ540℃であるシラン化合物を用いるならば、有機EL表示装置の実用時において、絶縁膜の熱変形を原因とする短絡を防止できる。なお、このシラン化合物の耐熱温度は、一般的なAlなどからなる上部電極40の融点と同様である。
【0156】
また、本実施形態では、従来の逆バイアス電圧よりも大きな1.5MV/cm以上である逆バイアス電圧を、画素50に対して印加できるようにしている。このことは、実験的に見出されたものである。
【0157】
具体的な実験結果を図6に示す。図6は、上下電極20、40の短絡に起因するパネル不良率(単位:%)と逆バイアス電圧印加時に絶縁膜60に加わる電界Ya(=Vr/Dy、単位:MV/cm)との関係を調査した結果を示す図である。
【0158】
ここで、パネル不良率の定義は次の通りである。256×64個の画素を有するドットマトリクスパネルを用いて、駆動させ、パネル内に1箇所でも上下電極の短絡に起因するライン欠陥が発生したら、不良とする。そして、耐久時間500時間でパネルの駆動を行い、この500時間以内に発生した不良数を調査する。そして、パネル不良率=パネル不良数/耐久試験パネル数、と定義される。
【0159】
図6からわかるように、1.5MV/cm以上である逆バイアス電圧を、画素50に対して印加すれば、絶縁膜60の欠陥部の直上において逆バイアス電圧のジュール熱によって上部電極である陰極40を飛ばし、電極のオープン化を実現することができる。そのため、絶縁膜60の欠陥部を介した上下電極20、40の短絡が発生しない。
【0160】
このように、本実施形態によれば、画素50間の非発光領域に絶縁膜60を有する有機EL表示装置において、逆バイアス電圧の印加時における上下電極20、40の短絡を極力防止することができる。
【0161】
また、本実施形態においては、絶縁膜60は、540℃における重量変化が10%以内の有機高分子材料からなるものであり、かつ、画素50は、順バイアス電圧を印加したときに発光状態となるものであり、さらに、上記電界(電界強度)Yaが1.5MV/cm以上であるような逆バイアス電圧が、画素50に対して印加できるようになっていることを特徴とする有機EL表示装置S1が提供される。
【0162】
上述したように、絶縁膜材料を耐熱性材料とすることで、絶縁膜の熱変形を原因とする短絡を防止することができる。これはジュール熱により上部電極が融点近くの温度(500℃以上)に達したときに、絶縁膜が形状を保持するため、絶縁膜の熱変形に起因する上下電極の短絡を防止できることによる。
【0163】
特に耐熱性の定義として、有機高分子の場合、明確な融点は規定できないため、本発明者は、あらたな耐熱指標を導出した。それは、TGA(熱重量分析)において重量減少率が10%となる温度を耐熱温度とするものである。
【0164】
そして、絶縁膜60においては、この重量減少率が10%となる温度が540℃以上であれば、絶縁膜60が形状を保持し、絶縁膜の熱変形に起因する上下電極20、40の短絡を防止できることを実験的に見出した。
【0165】
具体的な実験結果を図7に示す。図7は、上記パネル不良率と絶縁膜60の耐熱温度(単位:℃)との関係を調査した結果を示す図である。図7では、逆バイアス電圧印加時に絶縁膜60に加わる電界Ya(=Vr/Dy)を1.5MV/cmとして調査した。
【0166】
また、上記耐熱温度、すなわちTGA(熱重量分析)において重量減少率が10%となる温度は、フェノール樹脂で300℃程度、感光性ポリイミドで380℃程度、本実施形態のシラン化合物では、540℃である。図7では、調査する絶縁膜60として、これらの材料を用いた。
【0167】
図7からわかるように、絶縁膜60においては、この重量減少率が10%となる温度が540℃以上であれば、絶縁膜60が形状を保持し、絶縁膜の熱変形に起因する上下電極20、40の短絡を防止できることがわかる。なお、このことは、上部電極40がAlである場合に、特に有効である。
【0168】
また、このような重量減少率が10%となる温度が540℃以上である絶縁膜60を用いた場合にも、1.5MV/cm以上である逆バイアス電圧を、画素50に対して印加すれば、絶縁膜60の欠陥部において逆バイアス電圧のジュール熱により上部電極40を飛ばし、オープン化を実現することができる。
【0169】
このように、重量減少率が10%となる温度が540℃以上である絶縁膜60を用いた場合であっても、画素50間の非発光領域に絶縁膜60を有する有機EL表示装置において、逆バイアス電圧の印加時における上下電極20、40の短絡を極力防止することができる。
【0170】
また、本実施形態の有機EL表示装置S1においては、絶縁膜60は、絶縁破壊時に、ポーラス状態ではなく凝集状態になる材料からなるものであることが好ましい。
【0171】
ここで、ポーラス状態とは、絶縁破壊時にボイドが多く発生し網目状になるものであり、変形しやすいものである。また、凝集状態とは、絶縁破壊時にバルク状態を保持した状態である。
【0172】
絶縁膜60の破壊形状がポーラスではなく、凝集状態になることで、絶縁膜60の熱変形に起因する上部電極40の巻き込みを防止することができ、上下電極20、40の短絡を防止しやすくなる。
【0173】
また、上述したように、本実施形態では、画素の耐圧以下ではあるものの、電界Yaが1.5MV/cm以上の非常に高い逆バイアス電圧を画素50に印加することにより、有機膜30に加え絶縁膜60を含めて、欠陥部の上部電極40を飛散させ、電極のオープン化を実現している。
【0174】
このように上部電極40を飛散させるためには、高電界を必要とするが、これを言い換えれば、上部電極40を飛散させるためには、高電流が必要であることを意味している。上部電極40の飛散がジュール熱による有機膜30によるためである。
【0175】
ここにおいて、上述したように、画素50への電圧印加は、外部の駆動回路から印加される。しかし、画素50と当該駆動回路との間には、回路の配線抵抗やパネルの配線抵抗が存在する。これらの配線抵抗が大きいと、当該回路における出力において、電界Yaが1.5MV/cm以上であるにもかかわらず、画素50では、それよりも小さい電界となり、上記したようなオープン化が実現できない恐れがある。
【0176】
そこで、このような配線抵抗を加味した設定値として、逆バイアス電圧の印加時における画素50に供給される電流、すなわち駆動回路の逆バイアス電流供給能力(最大供給電流値)を用いることにした。
【0177】
この駆動回路の逆バイアス電流供給能力とは、逆バイアス電圧印加時の有機EL表示装置S1を含む電流パスにおいて、上記駆動回路の出力電圧を(回路の配線抵抗+パネルの配線抵抗)で除した値のことであり、上下電極20、40の短絡により流れる電流を表すものである。
【0178】
そして、本発明者は、この駆動回路の逆バイアス電流供給能力がどの程度であるならば、上記のオープン化が可能であるかを調査した。その結果が図8に示される。図8は、上記パネル不良率と逆バイアス電流供給能力(単位:mA)との関係を調査した結果を示す図である。
【0179】
図8からわかるように、逆バイアス電流供給能力が40mA以上、すなわち逆バイアス印加時において画素50に40mA以上の電流が供給されるようになっていれば、絶縁膜60の欠陥部において逆バイアス電圧のジュール熱により上部電極40を飛ばすことができ、上記オープン化が適切になされる。そのため、絶縁膜60の欠陥部を介した上下電極20、40の短絡が発生しない。
【0180】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、絶縁膜60を上記のように規定し、上記電界Yaが1.5MV/cm以上であるような逆バイアス電圧を画素50に対して印加することで、駆動時に短絡による表示不良が発生しないようにしたが、このような逆バイアス電圧の印加を、出荷前に行ってもよい。
【0181】
つまり、同様の逆バイアス電圧の印加を、製造方法の一環としての検査工程などにおいて行ってもよい。それにより、高い信頼性を有する有機EL表示装置を出荷することができる。ここで、好ましくは高温、たとえば、90℃程度の高温でスクリーニングする。また、実駆動よりも高い逆バイアス電圧とすることが好ましい。
【0182】
また、逆バイアス印加時において画素50に40mA以上の電流を供給することは、上記駆動回路における配線抵抗の調整により、容易に実現できる。たとえば、上記駆動回路の構成として、逆バイアス印加用ドライバのオン抵抗の調整により、供給電流を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明の実施形態に係る有機EL表示装置の概略平面図である。
【図2】図1中のA−A線に沿った概略断面図である。
【図3】図1中のB−B線に沿った概略断面図である。
【図4】絶縁膜に用いられるシラン化合物の構造の一例を示す図である。
【図5】感放射線性樹脂組成物を原料に用いた絶縁膜の形成方法を示す工程図である。
【図6】上下電極の短絡率と逆バイアス電圧印加時に絶縁膜に加わる電界Ya(=Vr/Dy)との関係を調査した結果を示す図である。
【図7】上下電極の短絡率と絶縁膜の耐熱温度との関係を調査した結果を示す図である。
【図8】上下電極の短絡率と最大供給電流値との関係を調査した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0184】
10…基板、20…下部電極としての陽極、30…有機膜、33…発光層、40…上部電極としての陰極、50…画素、60…絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)上に、下部電極(20)、発光層(33)を含む有機膜(30)、上部電極(40)が積層されてなる複数個の画素(50)を有するとともに、前記基板(10)上にて各々の前記画素(50)の間に配置された絶縁膜(60)を有する有機EL表示装置において、
前記絶縁膜(60)は、次の化学式(1)で表されるシラン化合物、その加水分解物およびその加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有するものであり、
(化1)
(R1)pSi(X)4-p … (1)
上記化学式(1)中、R1は炭素数1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数であり、
前記画素(50)は、順バイアス電圧を印加したときに発光状態となるものであり、
さらに、電界Yaは、逆バイアス電圧をVr、前記有機膜(30)の厚さをDyとしたとき、次の数式(2)、
(数1)
Ya=Vr/Dy … (2)
にて表されるものであり、
前記電界Yaが1.5MV/cm以上である逆バイアス電圧が、前記画素(50)に対して印加できるようになっていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
基板(10)上に、下部電極(20)、発光層(33)を含む有機膜(30)、上部電極(40)が積層されてなる複数個の画素(50)を有するとともに、前記基板(10)上にて各々の前記画素(50)の間に配置された絶縁膜(60)を有する有機EL表示装置において、
前記絶縁膜(60)は、540℃における重量変化が10%以内の有機高分子材料からなり、
前記画素(50)は、順バイアス電圧を印加したときに発光状態となるものであり、
さらに、電界Yaは、逆バイアス電圧をVr、前記有機膜(30)の厚さをDyとしたとき、次の数式(2)、
(数2)
Ya=Vr/Dy … (2)
にて表されるものであり、
前記電界Yaが1.5MV/cm以上である逆バイアス電圧が、前記画素(50)に対して印加できるようになっていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
前記複数個の画素(50)は、ストライプ状をなす前記下部電極(20)とこれに直交するストライプ状をなす上部電極(40)とにより形成された格子状に配置されたものであり、
各々の前記画素(50)間における前記下部電極(20)の間および下部電極(20)のうち前記上部電極(40)の間に位置する部位上に、前記絶縁膜(60)が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記絶縁膜(60)は、絶縁破壊時に、ポーラス状態ではなく凝集状態になる材料からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
逆バイアス印加時において、前記画素(50)には、40mA以上の電流が供給されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−24459(P2006−24459A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201816(P2004−201816)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】