説明

有機EL表示装置

【課題】薄膜トランジスタの最小限の増加で画素欠陥を低減した有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】信号線DTLと走査線RSLで囲まれた画素領域に設けられた画素回路のそれぞれに電流を供給する複数の電源線PWL、画素回路毎に並列に接続された複数の分割有機EL素子OLED1乃至OLED4を有し、信号線DTLにゲート電極を接続し、複数の分割有機EL素子OLED1乃至OLED4のアノード電極にソース電極を並列に接続し、電源線PWLにドレインを接続して、信号線DTLから取り込んだ信号で、発光期間に複数の分割有機EL素子OLED1乃至OLED4に供給する総電流量を制御する第1薄膜トランジスタTFT1と、第1薄膜トランジスタTFT1と各分割有機EL素子OLED1乃至OLED4のそれぞれの間に設けて、それぞれの分割有機EL素子OLED1乃至OLED4へ第1薄膜トランジスタTFT1から供給される電流を制御する複数の第2薄膜トランジスタTFT21乃至TFT24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に係り、特に異物の混入等による有機EL層のリークパスで生じる画素欠陥等の発光効率の低い画素があった場合でも、良好な画像を得るのに好適な技術である。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル型の表示装置として液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)、電界放出型表示装置(FED)、有機EL表示装置(OLED)などが実用化ないしは実用化研究段階にある。中でも、有機EL表示装置は薄型・軽量の自発光型表示装置の典型としてこれからの表示装置として極めて有望な表示装置である。有機EL表示装置には、所謂ボトムエミッション型とトップエミッション型とがある。なお、ここでは、本発明をアクティブ・マトリクス方式の有機EL表示装置について説明するが、発光層構造に関しては単純マトリクス方式などの有機EL表示装置にも同様に適用できる。
【0003】
有機EL表示装置は、ガラス基板などの絶縁基板の内面に画素毎に形成した一方の電極(下部電極)の上に所定の色光で発光する有機EL発光層を積層し、その上に他方の電極(上部電極)を成膜する。下部電極と上部電極の間に電圧を加えることで、有機EL発光層にホールとキャリアを注入することで所定の周波数の発光が生じる。この画素を二次元に配置して画像表示を行う。このような表示装置を開示したものとしては、例えば特許文献1を挙げることができる。特許文献1には、画像の1フレーム当りの1画素の明るさを表示データで制御することで良好な動画表示特性を持たせた有機EL表示装置が開示されている。
【0004】
図5は、上記従来技術の有機EL表示装置の1画素の駆動回路を説明する図である。図5(a)は1画素の回路図、図5(b)は有機EL素子(OLED)の電極を説明する図である。図5(a)において、DTLは信号線、RSLはリセット線(走査線)、PWLは電源線、SWLは点灯制御信号線である。信号線DTLには、画素容量CAPを介して第1薄膜トランジスタTFT1のゲート電極が接続されている。第1薄膜トランジスタTFT1は駆動トランジスタとも呼ばれ、そのドレイン電極は電源線PWLに、ソース電極は第2薄膜トランジスタTFT2のドレインーソースを通して有機EL素子OLEDの第1の電極に接続されている。
【0005】
また、画素容量CAPと第1薄膜トランジスタTFT1の接続点と当該第1薄膜トランジスタTFT1のドレイン電極の間に第3薄膜トランジスタTFT3が接続され、1フレーム期間の終了時点で画素容量CAPの蓄積電荷を放電させて、次の信号に備える。
【0006】
図5(a)に示した有機EL素子の電極構成を図5(b)に示す。有機EL素子はダイオードであり、第1電極BELは、例えば陽極で下部電極(画素電極)とも呼ばれる、また、第2電極UELは例えば陰極で、上部電極(ベタ電極)とも呼ばれる。これら第1電極BELと第2電極UELの間に有機EL発光層が設けられる。
【0007】
図6は、図5に示した構成の有機EL表示装置において画素にリークが発生した場合の画素欠陥を説明する図である。図6(a)は図5に示した1画素の駆動回路、図6(b)は図6(a)の破線で囲んだ画素部PXCの拡大図である。画素は、その下部電極BELが第2薄膜トランジスタTFTで駆動される。図6(c)は下部電極と上部電極との間にリークパスが生じた時の画素全面が非発光(黒点欠陥)となった状態を示す。
【特許文献1】特開2003−122301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機EL表示装置では、有機EL発光層に異物が存在すると発光しなくなる。画素の電極間に異物が混入して電極間に電流のリークパスが形成され、画素全体が非発光となる現象である。薄膜トランジスタ基板(TFT基板)にマスクを用いて有機EL層を形成する場合には、異物の混入を完全に排除することはできない。実際にリークパスが生じている領域は画素の一部分であるため、1画素を複数の小画素に分割し、リークの無い残りの小画素を正常に発光させれば画素欠陥を低減させることが期待できる。しかし、画素サイズを小さくしただけでは、画素回路が分割した数だけ画素回路の形成領域や画素回路起因の不良が発生しやすくなる。
【0009】
本発明の目的は、薄膜トランジスタの最小限の増加で画素欠陥を低減した有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有機EL表示装置は、絶縁基板の主面に単位画素毎に形成した複数の第1電極と、第1電極のそれぞれの上に積層されて互いに異なる色光を発する複数の有機EL層と、前記複数の有機EL層を共通に覆って成膜した第2電極とを有する。
【0011】
そして、上記目的を達成するため、本発明は、互いに交差して配置された複数の信号線と複数の走査線、前記信号線と前記走査線で囲まれた画素領域に設けられた画素回路のそれぞれに電流を供給する複数の電源線、前記画素回路毎に並列に接続された複数の分割有機EL素子を有し、
前記信号線にゲート電極を接続し、前記複数の分割有機EL素子の第1の電極にソース電極を並列に接続し、前記電源線にドレインを接続して、前記信号線から取り込んだ信号で、発光期間に前記複数の分割有機EL素子に供給する総電流量を制御する第1薄膜トランジスタと、
前記第1薄膜トランジスタと前記各分割有機EL素子のそれぞれの間に設けて、前記それぞれの分割有機EL素子へ前記第1薄膜トランジスタから供給される電流を制御する複数の第2薄膜トランジスタを備える。
【0012】
本発明は、赤(R)、緑(G)、青(B)の画素からなるR-G-B方式、さらにこれらに白(W)画素を加えたR-G-B−W方式、白(W)画素のみ、その他の方式の有機EL表示装置に適用できる。
【発明の効果】
【0013】
1つの画素を複数に分割することにより、分割有機EL素子何れかにリークパスが生じても他の分割有機EL素子が発光(点灯)を維持するため、リークパスが生じた分割有機EL素子の面積分輝度は減少するが、黒点欠陥とはならない。その結果、良品の歩留まりが向上し、コストも低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の有機EL表示装置の実施例1を説明する1画素の駆動回路を説明する図である。図1において、DTLは信号線、RSLはリセット線(走査線)、PWLは電源線、SWLは点灯制御信号線である。信号線DTLには、画素容量CAPを介して第1薄膜トランジスタTFT1のゲート電極が接続されている。1つの画素の第1の電極(下部電極、アノード電極)は4分割され、各分割有機EL素子OLED1、OLED2、OLED3、OLED4は第1薄膜トランジスタTFT1に並列に接続される。なお、有機EL発光層と第2の電極(上部電極、カソード電極)は分割しない。
【0016】
第1薄膜トランジスタTFT1は駆動トランジスタであり、そのドレイン電極は電源線PWLに、ソース電極は第2薄膜トランジスタTFT2のドレインーソースを通して各分割有機EL素子OLED1、OLED2、OLED3、OLED4の第1の電極に接続されている。
【0017】
また、画素容量CAPと第1薄膜トランジスタTFT1の接続点と当該第1薄膜トランジスタTFT1のドレイン電極の間に第3薄膜トランジスタTFT3が接続され、1フレーム期間の終了時点で画素容量CAPの蓄積電荷を放電させて、次の信号に備える。
【0018】
本実施例では、第1薄膜トランジスタTFT1と各分割有機EL素子OLED1、OLED2、OLED3、OLED4との間にそれぞれ第2薄膜トランジスタTFT21、22、23,24を介在させる。第2薄膜トランジスタTFT21、22、23、24のゲート電極は点灯制御信号線SWLに共通に接続されている。増加する薄膜トランジスタはアノードの分割数と同じである。
【0019】
図2は、図1に示した有機EL表示装置でリークパスが発生した場合の画素欠陥を説明する図である。図2(a)は図1に示した1画素の駆動回路、図2(b)は図2(a)の破線で囲んだ画素部PXCの拡大図である。画素は、その4分割された下部電極BEL1、BEL2、BEL3、BEL4が第2薄膜トランジスタTFT2で駆動される。図2(c)は下部電極BEL1、BEL2、BEL3、BEL4と上部電極との間にリークパスが生じた時の画素の表示状態を示す。
【0020】
1画素を構成する4つの分割有機EL素子の下部電極BEL1、BEL2、BEL3、BEL4のうち、BEL3の領域にリークパスが発生した場合を仮定する。この場合、下部電極3の領域で構成される分割有機EL素子は非発光となる。しかし、他の分割有機EL素子の領域は正常に発光するので、この画素は75%の明るさ(輝度)が確保される。なお、第3薄膜トランジスタTFT21、22、23、24のオン抵抗は有機EL発光層の抵抗より十分に大きいため、リークパスが生じた分割有機EL素子に電流が集中することはなく、残りの正常な分割有機EL素子に分配される。
【0021】
実施例1により、薄膜トランジスタの最小限の増加で画素欠陥を低減した有機EL表示装置を提供することができる。なお、画素の分割は上記の実施例で説明した4分割に限るものではなく、2以上であれば殆どの画素欠陥(黒点欠陥)を救済できる。
【0022】
図3は、本発明を適用したボトムエミッション型の有機EL表示装置の構成例を説明する図である。図3(a)は概略全体構成を説明する断面図、図3(b)は単位画素の構造例を説明する断面図である。ボトムエミッション型の有機EL表示装置は、ガラス基板を好適とする絶縁基板SUBの主面上に、薄膜トランジスタTFTを有し、絶縁膜INSに形成したコンタクトホールを通して第1の電極または一方の電極(以下、下部電極、あるいは画素電極としての透明電極(ITO等))BELが形成されている。下部電極BELは各単位画素毎に分割され、独立の分割有機EL素子を構成する。
【0023】
薄膜トランジスタTFTの形成領域の上方には絶縁材で形成された堤すなわちバンクBNKを有し、隣接する単位画素間を区画して電界の印加で発光する有機発光層ILLの収容部を構成する。有機発光層ILLを覆って第2の電極(共通電極)または他方の電極としての反射性の金属電極すなわち上部電極UELが積層されている。こうして構成された有機EL素子を主面に有する絶縁基板SUBは封止缶CAVで外部雰囲気とは隔離され、接着材等の封止材で封止される。なお、封止缶CAVで封止された内部には乾燥剤あるいは吸湿剤DSCが内蔵される。
【0024】
そして、例えば下部電極BELを陽極(アノード)とし、上部電極UELを陰極(カソード)として両者の間に電界を印加することで有機多層膜で構成した有機EL素子にキャリア(電子と正孔)が注入され、該有機多層膜が発光する。有機EL素子の発光Lは絶縁基板SUBを通して表示光として出射される。この有機EL素子の単位画素を赤(R)、緑(G)、青(B)をカラー画素とし、このカラー画素をマトリクス状に複数配列することで、フルカラーの画像表示が得られる。
【0025】
図4は、本発明を適用したトップエミッション型の有機EL表示装置の構成例を説明する図である。図4(a)は概略全体構成を説明する断面図、図4(b)は単位画素の構造例を説明する断面図である。トップエミッション型の有機EL表示装置は、上記したボトムエミッション型の一方の電極に対応する下部電極BELを反射性を有する金属電極とし、他方の電極である上部電極UELをITO等の透明電極とし、両者の間に電界を印加することで有機多層膜が発光し、この発光Lを上部電極UEL側から出射する構成となっている。下部電極BELは各単位画素毎に分割され、独立の分割有機EL素子を構成する。トップエミッション型では、ボトムエミッション型における封止缶として、ガラス板を好適とする透明板が使用され、乾燥剤あるいは吸湿剤DSCは透明材料とするか、表示光を遮光しない部分に配置される。他の構成は図3とほぼ同様である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の有機EL表示装置の実施例1を説明する1画素の駆動回路を説明する図である。
【図2】図1に示した有機EL表示装置でリークパスが発生した場合の画素欠陥を説明する図である。
【図3】ボトムエミッション型の有機EL表示装置の構成例を説明する図である。
【図4】トップエミッション型の有機EL表示装置の構成例を説明する図である。
【図5】従来技術の有機EL表示装置の1画素の駆動回路を説明する図である。
【図6】図5に示した構成の有機EL表示装置において画素にリークが発生した場合の画素欠陥を説明する図である。
【符号の説明】
【0027】
TFT1・・・第1薄膜トランジスタ、TFT1乃至TFT4・・・第2薄膜トランジスタ、TFT3・・・第3薄膜トランジスタ、OLED1乃至OLED4・・・分割有機EL素子、BEL1乃至BEL4・・・分割された下部電極、UEL・・・上部電極。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子を複数備えた有機EL表示装置において、
信号線と第1走査線との交点に対応して形成され、該薄膜トランジスタがオンした状態で映像信号を取り込む第1薄膜トランジスタを備え、
該第1薄膜トランジスタによって取り込まれた映像信号に対応した電流を複数の有機EL素子に供給しうる回路を画素毎に備えていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
有機EL素子で構成された画素を複数備えた有機EL表示装置において、
信号線と第1走査線との交点に対応して形成され、該薄膜トランジスタがオンした状態で映像信号を取り込む第1薄膜トランジスタを備え、
該第1薄膜トランジスタによって取り込まれた映像信号に対応した電流を複数の画素に供給する回路を備えていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記有機EL素子に電流を供給する電源線と、
前記有機EL素子と電源線との間に流れる電流を制御する第2薄膜トランジスタと、
該第2薄膜トランジスタのゲートに接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他方に接続された第1薄膜トランジスタのソース電極と、を有し、
前記回路は、前記第2薄膜トランジスタと前記複数の有機EL素子との間のそれぞれに第3薄膜トランジスタを有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記回路は、
前記第3薄膜トランジスタのゲートに接続された第2走査線を有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記電流を供給しない有機EL素子は、前記電流を供給する有機EL素子よりも発光効率が低い有機EL素子であることを特徴とする有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−286081(P2007−286081A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109594(P2006−109594)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】