説明

有機EL表示装置

【課題】アレイ基板上の隔壁などの材料からの残存水分を均等に乾燥剤によって吸収することにより、輝度にムラが生じない有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】マトリクス状に配置され、第1電極26と、第1電極に対向配置される第2電極と、第1電極26及び第2電極36,37間に少なくとも発光層を備えた複数の画素20を備えてなるアレイ基板10と、前記画素20に対向する面に乾燥剤42を備え、アレイ基板10に間隙をもって封止される封止部材と、を備えた有機EL表示装置1であって、第2電極36,37は、格子状に形成され、複数の画素20に連続して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近は、有機EL(Electroluminescence,エレクトロルミネセンス)表示装置が実用化され、携帯電話の表示装置などに用いられている。
【0003】
この有機EL表示装置の構造は、アレイ基板と封止部材とが中空部を介して取り付けられ、アレイ基板にマトリクス状に複数の有機材料からなる発光層を有する画素が設けられている。しかし、この有機ELが湿度に弱いため、中空部に乾燥剤が設けられて、水分を吸収している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−317942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような封止部材に乾燥剤を有した有機EL表示装置において、製造後に目視確認を行うと表示ムラが発生している場合があった。この発生の原因を調査すると、下記の二つの原因が判明した。
【0005】
第1の原因は、アレイ基板と封止部材を貼り合わせるときに、乾燥剤でアレイ基板上の画素の陰極に傷が発生することである。
【0006】
すなわち、上記傷を通じて隣接する画素同士を区切る隔壁中の残存水分が蒸発し、この蒸発した水分を乾燥剤が吸収する。このときに、発生する傷は不均一であるため、この吸収された水分が起因となって画素毎に異なる輝度劣化が発生し、輝度にバラつきが発生するからである。したがって、目視確認をした場合に表示ムラが発生する。
【0007】
第2の原因は、各画素において、RGBの3色に発光層を塗り分ける場合にファインマスクを用いることであることが判明した。すなわち、このファインマスクの使用により隔壁に凹凸が発生し、その凹凸が隔壁の上層にある金属製の陰極上に傷を形成することがある。そしてこの傷を通じて前記隔壁中の残存水分が蒸発し、上記と同様に表示ムラが発生する。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、輝度にムラが生じがたい有機EL表示装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、マトリクス状に配置され、第1電極と、前記第1電極に対向配置される第2電極と、前記第1及び第2電極間に少なくとも発光層を備えた複数の画素を備えてなるアレイ基板と、前記画素に対向する面に乾燥剤を備え、前記アレイ基板に間隙をもって封止される封止部材と、を備えた有機EL表示装置であって、前記第2電極は、格子状に形成され、前記複数の画素に連続して設けられることを特徴とする有機EL表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明よれば、輝度ムラの低減された有機EL表示装置を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態の有機EL表示装置1について図1から図3に基づいて説明する。
【0012】
図3は、有機EL表示装置1の縦断面図である。有機EL表示装置1は、アレイ基板10と、封止部材11とを有し、アレイ基板10と封止部材11とは、中空部13を介して対向して貼り合わされている。
【0013】
図2は、有機EL表示装置の一部構造を概略的に示す縦断面図であり、ここでは特に一画素分を示している。
【0014】
アレイ基板10上には、走査線と、この走査線に直交するように配置された信号線と、信号線と走査線との交点付近に配置されたスイッチング素子である画素TFT(薄膜トランジスタ)と、画素TFTを介して信号線に接続する駆動トランジスタ14と、駆動トランジスタ14に接続された画素20を有している。すなわち、ガラス基板から構成された支持基板12上には画素TFT、駆動トランジスタ14、走査線、信号線等が形成されている。支持基板12は、その厚みが0.7mm〜1.0mmである。これら画素TFT及び駆動トランジスタ14は、支持基板12上に形成されたポリシリコン半導体層Pと、このポリシリコン半導体層Pと第1絶縁膜16を介して配置されたゲート電極Gと、第1絶縁膜16と第2絶縁膜18を貫通してポリシリコン半導体層Pのソース領域にコンタクトしたソース電極Sと、第1絶縁膜16及び第2絶縁膜18を貫通してポリシリコン半導体層Pのドレイン領域にコンタクトしたドレイン電極Dを備えている。また、画素TFTのソース電極Sと一体的に信号線が形成され、画素TFTのゲート電極Gには走査線が接続されている。
【0015】
画素20は、第2絶縁膜18の上に配置された第3絶縁膜22の上に配置されている。すなわち、画素20の第1電極26が第3絶縁膜22の上層に形成され、第3絶縁膜22に設けられているコンタクトホール28によって駆動トランジスタ14のドレイン電極Dと接続されている。第1電極26は、ここでは陽極として機能し、光透過性導電材料であるITO(Indium Tin Oxide)で形成されている。
【0016】
この第1電極26の上層にはアクリル樹脂よりなる隔壁24が形成されている。隔壁24は隣接する画素20を区画し、第1電極間を電気的に分離する。このアクリル樹脂で形成された隔壁24を形成するには、UV光でマスク露光する。
【0017】
隔壁24に囲まれた画素20の凹部の下面に位置する第1電極26の上に、少なくとも発光層を含む光活性層が積層される。この光活性層は、RGB各色共通に形成されるホール注入層、ホール輸送層、エレクトロン輸送層、エレクトロン注入層、及び各色毎に形成される有機発光層を積層して構成してもよく、または、機能的に複合された層構造で構成されている。図2では、光活性層としてホール輸送層30と有機発光層32の二層構造である例を例示している。ホール輸送層30は、例えば、芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体より形成され、有機発光層は赤(R)、緑(G)、青(B)に発光する有機化合物によって形成されている。この有機発光層32は、例えば高分子系材料を採用する場合には、PPV(ポリパラフェニデンビニデン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などを積層して構成されている。上記ホール輸送層30と有機発光層32とは、それぞれインクジェット方式によって塗布形成される。
【0018】
上記のようにして発光層材料を塗布した後、乾燥させ発光層32を形成した後、図1に示すように、第2電極を形成する。ここで、第2電極は、陰極として機能し、例えばAl等の金属材料を用いて形成され、後述する第1導電層36及び第2導電層37からなる。具体的には、帯状の第1導電層36を所定の間隔(例えば、10μm)を開けて、ストライプ状に縦方向に蒸着を行う。この場合に、第1導電層36を形成する部分は、各画素20の上層になるようにする。
【0019】
上記のようにストライプ状の第1導電層36を蒸着した後、この第1導電層36の上層に、帯状の第2導電層37を所定の間隔(例えば、10μm)を開けてストライプ状に横方向に蒸着する。このとき、第1導電層36と第2導電層37とは、互いに直交するように十字状に形成する。そして、この第1導電層36と第2導電層37との重なり部分に対応して各画素20が存在するようにする。第1導電層36と第2導電層37により、第2電極は格子状に形成され、格子の間に空白部38が形成される。この空白部38は、例えば縦10μm、横10μmの網目となっている。この空白部38は、図1に示すように平面上から見た場合に網目状に、かつ、各画素20の間に配置されるようになっている。なお、第1導電層36の厚みは、例えば、750オングストローム程度とし、第2導電層37の厚みは例えば750オングストロームである。
【0020】
尚、第1導電層36及び第2導電層37は、同一幅の帯状に形成する場合には、同一のマスクを用いて形成してもよい。第1導電層36の蒸着に引き続き、マスクと基板の関係を相対的に90°回転させ、第2導電層37を蒸着することにより形成可能である。
【0021】
また、格子状に形成した第2電極は、帯状導電層端部を連結するよう周囲を枠状にしてもよい。このとき、第2導電層の成膜時点で、枠が完成される。
【0022】
一方、図3に示すように、封止部材11のアレイ基板の画素と対向する側(図の下面側)の面には、凹部40が設けられ、この凹部40にシート状の乾燥剤42が貼り付けられている。
【0023】
この封止部材11とアレイ基板10とは、額縁状のシール部材44によって接着されている。このシール部材44は、例えばUV硬化樹脂、または、融着ガラスよりなる。
【0024】
また、このシール部材44によって中空部13を封止する場合に、中空部13内部には不活性ガス(例えば、窒素ガス)が封入されている。さらに、中空部13内部の圧力は、大気圧より低い陰圧に保持する。
【0025】
上記構成の有機EL表示装置1であると、第2電極が第1導電層36と第2導電層37からなる格子状であり、この格子状の空白部38から、隔壁24に残存した水分が蒸発し、この蒸発した水分が乾燥剤42によって吸収される。そして、この残存水分が蒸発する空白部38は格子状に均等に配置されているため、各画素20における輝度劣化のバラつきがなく、従来のように輝度にムラが発生しない。
【0026】
また、ホール輸送層30と発光層32をインクジェット方式により形成すれば、従来のようにファインマスクを使用することがないため、発光層32に傷が発生せず、その上にある格子状の陰極36,37に凹凸が発生するのを抑制でき、、第2電極の傷の発生をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す有機EL表示装置におけるアレイ基板の一部平面図である。
【図2】アレイ基板の一部拡大縦断面図である。
【図3】有機EL表示装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 有機EL表示装置
10 アレイ基板
11 封止部材
16 中空部
20 画素
36 第1導電層
37 第2導電層
38 空白部
40 凹部
42 乾燥剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置され、第1電極と、前記第1電極に対向配置される第2電極と、前記第1及び第2電極間に少なくとも発光層を備えた複数の画素を備えてなるアレイ基板と、
前記画素に対向する面に乾燥剤を備え、前記アレイ基板に間隙をもって封止される封止部材と、を備えた有機EL表示装置であって、
前記第2電極は、格子状に形成され、前記複数の画素に連続して設けられることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第2電極は、
前記所定間隔を開けて設けられた複数本の帯状の第1導電層と、
前記第1導電層の上層であって、前記第1導電層と交叉するように、かつ、所定間隔を開けて設けられた複数本の帯状の第2導電層と、
を有する
ことを特徴とする請求項1記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記第1導電層が前記アレイ基板の縦方向に沿って設けられ、
前記第2導電層が前記アレイ基板の横方向に沿って設けられた
ことを特徴とする請求項2記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第1導電層と前記第2導電層との重なり部分に前記一つの画素がある
ことを特徴とする請求項2記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
マトリクス状に配置される複数の画素を備えた有機EL表示装置の製造方法において、
前記画素毎に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上層に発光層を形成する工程と、
前記発光層の上層に第2電極を格子状に形成する工程と、
を含むことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−48677(P2007−48677A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233788(P2005−233788)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】