説明

有機EL表示装置

【課題】積層型有機EL表示素子において、積層された各画素の発光面積を、アライメント精度を確保しつつ向上させる
【解決手段】第2電極33a、33bと第3の電極35a、35bの基板面への投影形状の面積の大小関係が、隣接するサブピクセルP1、P2で逆転している有機EL表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下「EL」と言う)を利用した有機EL素子は低電圧駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
【0003】
有機EL素子の製造方法において、フルカラー化するためにR(赤)G(緑)B(青)各発光性有機材料を微細なパターンとして電極上へ選択的に形成する必要がある。
【0004】
このような発光素子の製造において、複数の画素を二次元に配置する手法以外に、特許文献1には複数の画素を積層した方式が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特表平10−503878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す様な積層型表示装置において、発光領域は二つの電極間の重なる範囲で規定される。そのため、アライメント精度を含め、発光領域の面積の精度を高めるためには、基板上方から見た一方の電極の形状はもう一方の電極に対して、いずれの辺をとっても、内側あるいは外側にあることが必要である。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、隣接するサブピクセル間において、積層方向で大きさを変えているために、片方の電極において発光領域が限定され、効率が悪いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、積層型有機EL表示素子において、積層された各画素の発光面積を、アライメント精度を確保しつつ向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の有機EL表示装置は、複数のサブピクセルで構成される画素を、少なくとも一つ基板上に有し、
該サブピクセルは、少なくとも、第1の電極、第1の有機層、第2の電極、第2の有機層、第3の電極を含み、かつ前記有機層が2つの前記電極で挟持されてなる発光素子を積層して構成される有機EL表示装置において、
前記サブピクセル内の一の有機層を挟持する一方の電極の基板面への投影形状と他方の電極の基板面への投影形状は、一方が他方を包含し、
かつ、前記一方の電極と他方の電極の基板面への投影形状の面積の大小関係が、隣接するサブピクセルで逆転していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、積層型有機EL表示素子において、画素を構成する各サブピクセルの発光面積を、アライメント精度を確保しつつ向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の表示装置について図面を参照して説明する。
【0012】
なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。また、以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。また、画素パターンがR(赤)G(緑)B(青)の3種の領域で構成される場合を例とするが、これに限らずR(赤)G(緑)B(青)W(白)等でもよく、これに限定されない。
【0013】
図1は本発明の有機EL表示装置の1画素の一例を示す概略断面図、図2は本発明の有機EL表示装置の一例を示す概略斜視図である。図2に示す様に、表示領域1は、基板上の複数の画素2により構成されており、図1に示すように、1画素は複数のサブピクセル、即ち第1サブピクセルP1と第2サブピクセルP2とで構成されている。
【0014】
図1に示した有機EL表示装置は、トップエミッション型の装置である。30は絶縁性基板、31は第1の電極、32は第1の有機層、33a、33bは第2の電極、34は第2の有機層、35a、35bは第3の電極、36は第3の有機層、41は第4の電極、38b、39aはコンタクトホールを示している。
【0015】
図1に示す様に、第1有機層32は、第1電極31と第2電極33に挟持され、発光色が赤の発光素子を構成している。この上に、第2電極33と第2有機層34と第3電極35からなる発光色が緑の発光素子、第3電極35と第3有機層36と第4電極37からなる発光色が青の発光素子が積層され、サブピクセルを構成している。従って、図1においては、発光素子間の第2電極33と第3電極35電極が共用されている。
【0016】
ここで、後述するように、3つの発光素子のうち少なくとも一つは非発光処理が施されており、かつ、画素内における夫々のサブピクセルで非発光処理されている発光素子或いは発光素子の組み合わせが異なる。
【0017】
本発明では、図3に示すように、サブピクセル内の一の有機層を挟持する一方の電極の基板面への投影形状と他方の電極の基板面への投影形状は、一方が他方を包含している。また、一方の電極と他方の電極の基板面への投影形状の面積の大小関係が、隣接するサブピクセルで逆転している。即ち、第1サブピクセルP1では、第2有機層34を挟持する第2電極33aの基板面への投影形状は、第3電極35aの基板面への投影形状に包含されており、第2電極33aの基板面への投影面積<第3電極35aの基板面への投影面積である。一方、第2サブピクセルP2では、第3電極35bの基板面への投影形状は、第2電極33bの基板面への投影形状に包含され、第3電極35bの基板面への投影面積<第2電極33bの基板面への投影面積である。
【0018】
具体的には、隣接する第2電極同士、隣接する第3電極同士の基板面への投影面積を交互に異ならせることにより、上記構成を実現している。即ち、基板面への投影面積の大小関係を、第1サブピクセルP1の第2電極33a<第2サブピクセルP2の第2電極33b、第1サブピクセルP1の第3電極35a>第2サブピクセルP2の第3電極35bとしている。
【0019】
これにより、本発明では、画素を構成する各サブピクセルの発光面積を、アライメント精度を確保しつつ向上させることが可能となる。
【0020】
尚、第1電極31と第4電極41は共通電極となっており、隣接するサブピクセル間で接続されている。さらに、第1電極31と第4電極41とは接続されており、接続箇所は表示領域内であっても表示領域外でもよく、同じ電圧が供給される。
【0021】
以下、本発明の表示装置の製造方法を説明する。
【0022】
必要に応じてTFT等のスイッチング素子が形成された絶縁性基板30上には、その画素領域に第1電極31が形成されている。第1電極31としては、光反射性の部材であることが好ましく、例えばCr、Al、Ag、Au、Pt等の材料からなることが好ましい。反射率が高い部材であるほど、光取り出し効率を向上できるからである。
【0023】
このような基板に対して、公知の手段により、表示領域の全領域に第1有機層32を堆積する。
【0024】
ここで、図1の例では、有機層は3層構成となっており、電子輸送層/発光層/正孔輸送層で構成されているが、発光層のみでもよいし、発光層とは別に、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層及び電子注入層から選ばれる少なくとも一層を有する構成でもよい。
【0025】
ここで、有機層は、有機発光材料、正孔注入材料、電子注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。正孔注入材料又は正孔輸送材料に有機発光材料をドーピングする、または電子注入材料又は電子輸送材料に有機発光材料をドーピングする等により発色の選択の幅を広げることができる。さらに、有機層は、発光効率の観点からアモルファス膜であることが好ましい。
【0026】
各色の有機発光材料は、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等及びこれらの単独オリゴ体あるいは複合オリゴ体が使用できるが、例示の材料に限定されるものではない。
【0027】
有機層は、正孔注入、正孔輸送、電子注入、電子輸送の各単機能を持つ層であってもよいし、複合機能を持つ層であってもよい。
【0028】
有機層の膜厚は0.05μm〜0.3μm程度が良く、好ましくは0.05μm〜0.15μm程度である。
【0029】
正孔注入及び輸送材料としては、フタロシアニン化合物、トリアリールアミン化合物、導電性高分子、ペリレン系化合物、Eu錯体等が使用できるが、本発明の構成として限定されるものではない。
【0030】
電子注入及び輸送材料の例としては、アルミに8−ヒドロキシキノリンの3量体が配位したAlq3、アゾメチン亜鉛錯体、ジスチリルビフェニル誘導体系等を使用できる。
【0031】
次に、第1有機層32を除去し、コンタクトホール38bを形成する。形成方法としては、レーザーアブレーションが好ましく、YAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用するものを用いる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、基板上に所定のパターンで照射する。コンタクトホール38bの径としては、2μm〜15μmが好ましい。
【0032】
次に、透明電極を成膜、及び、パターニングを行い、第2電極33a、33bを形成する。このとき、コンタクトホール38bを介して、第1電極31と第2電極33bとが短絡され、第1有機層32を含む発光色が赤の発光素子に非発光処理が施される。
【0033】
第2電極33の材料としては、透過率の高い材料が好ましく、例えば、ITO、IZO、ZnOなどの透明導電膜や、ポリアセチレンなどの有機導電膜からなることが好ましく、さらに、Ag、Alなどの金属を10nm〜30nm程度を形成した半透過膜でもよい。パターニング方法としては、前述のレーザー加工で行うことができるが、電極材料を加熱し、メタルマスクを使用して蒸着によって形成しても良い。また、電極材料が形成された基板を基板30と対向させてレーザーアブレーションにより転写しても良い。
【0034】
次に、上述と同様の方法で、第2有機発光層34、コンタクトホール39a、第3電極35a、35b、第3有機発光層36を順次形成する。ここで、コンタクトホール39aを介して、第2電極33aと第3電極35aとが短絡され、第2有機層34を含む発光色が緑の発光素子に非発光処理が施される。
【0035】
次に、第4電極41をスパッタ等により形成する。尚、第3電極35と第4電極の材料としては、第2電極33と同様に透過率の高い材料が好ましい。
【0036】
さらに保護膜42として、窒化酸化シリコンを成膜し、本発明の表示装置を得た。
【0037】
本発明の有機EL表示装置の等価回路を図4に示す。
【0038】
つぎに、本発明の有機EL装置の駆動方法について図5を参照して説明する。図5は電源手段43により有機EL装置の電極間に印加される電圧波形の一例を示す図である。
【0039】
第1サブピクセルP1の第1有機層32と第2サブピクセルP2の第2有機層34を発光させる場合には、電源手段43により第3電極35a及び35bにマイナス電圧、共通電極(第1電極31、第4電極41)にプラス電圧を印加する。これにより、第1有機層32及び第2有機層34に第2電極33aと第3電極35bから電子が注入されるとともに、第1電極31と第2電極33bからホールが注入される。そして、電子とホールの再結合により励起された有機分子が基底状態に緩和するときに発光が得られ、この発光光が保護層42側から射出される。なお、第3有機層36には逆方向電圧が印加されるため発光しない。
【0040】
次に、第3有機層36を発光させる場合には、電源手段43により、第3電極35a、35bにプラス電圧、第1電極31及び第4電極41にマイナス電圧を印加する。これにより、第3有機層36には、第4電極41から電子が注入されるとともに、画素電極(第3電極)35a、35bからホールが注入される。そして、電子とホールの再結合により励起された有機分子が基底状態に緩和するときに発光が得られ、この発光光が保護膜42側から射出される。このとき、第1発光層32と第2発光層34には逆方向電圧が印加されるため発光しない。
【0041】
また、第1有機層32、第2有機層34と第3有機層36を発光させて、混合色を発光する場合には、図5に示すように電源手段43により第3電極35a、35bと共通電極(第1電極31、第4電極41)間に交流電圧を印加して交流駆動を行う。具体的には、電源手段43は、人間が識別できない程度、例えば60Hz程度あるいはそれ以上高い周期で、電圧をプラス側とマイナス側とに切り替え制御して、各発光輝度を制御する。これにより、第1有機層32、第2有機層34の発光色と第3有機層36の発光色との任意の混合色の光を表現することができる。
【0042】
尚、同一画素内の非発光処理されていない発光素子は同時に発光制御してもよいし、時分割に発光制御してもよい。
【0043】
このような有機EL表示装置においては、電圧が印加される有機EL層は1層のみとなり、電源手段43の電圧としては、1層分の電圧、すなわち約5V程度でよい。従って、従来よりも電圧を1/3に抑えることが出来る。さらに、有機層32、34、36を塗分ける必要が無い上、開口率を高くすることが出来る。
【0044】
図6に本例の有機EL表示装置の画素回路構成を示す。各サブピクセルは、スイッチング用TFT101と駆動用TFT102と、有機発光素子103と、コンデンサ104で構成されている。
【0045】
ここで、スイッチング用TFT101のゲート電極は、ゲート信号線105に接続されている。また、スイッチング用TFT101のソース領域はソース信号線106に、ドレイン領域は駆動用TFT102のゲート電極に接続されている。また、駆動用TFT102のソース領域は電源供給線107に、ドレイン領域は有機EL素子103の一方の電極(サブピクセルP1においては、第3電極35a、サブピクセルP2も同様に第3電極35b)に接続されている。なお、有機発光素子103の他方の電極は対向電極108(第1電極31、第4電極41)に接続されている。またコンデンサ104は電極のそれぞれが、駆動用TFT102のゲート電極とGNDとに接続されるように形成されている。このように、駆動用TFT102と有機EL素子103が直列に接続されており、有機EL素子103に流れる電流を駆動用TFT102で制御する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の有機EL表示装置の1画素の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL表示装置の一例を示す概略斜視図である。
【図3】図1の装置の電極の基板面への投影状態を示す図である。
【図4】本発明の有機EL表示装置の等価回路の一例を示す図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置の電源手段の交流電圧の波形の一例を示す図である。
【図6】本発明の有機EL表示装置の画素回路構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 表示領域
2 画素
30 絶縁性基板
31 第1の電極
32 第1の有機層
33a、33b 第2の電極
34 第2の有機層
35a、35b 第3の電極
36 第3の発光層
38b、39a コンタクトホール
41 第4電極
42 保護膜
43 電源手段
101 スイッチング用TFT
102 駆動用TFT
103 有機発光素子
104 コンデンサ
105 ゲート信号線
106 ソース信号線
107 電源供給線
108 対向電極
P1 第1サブピクセル
P2 第2サブピクセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブピクセルで構成される画素を、少なくとも一つ基板上に有し、
該サブピクセルは、少なくとも、第1の電極、第1の有機層、第2の電極、第2の有機層、第3の電極を含み、かつ前記有機層が2つの前記電極で挟持されてなる発光素子を積層して構成される有機EL表示装置において、
前記サブピクセル内の一の有機層を挟持する一方の電極の基板面への投影形状と他方の電極の基板面への投影形状は、一方が他方を包含し、
かつ、前記一方の電極と他方の電極の基板面への投影形状の面積の大小関係が、隣接するサブピクセルで逆転していることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記発光素子間の一部で前記電極が共用されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記サブピクセルは、発光色が赤、青、緑の3つの発光素子を積層して構成され、該3つの発光素子のうち少なくとも一つは非発光処理が施されており、かつ、前記画素内における夫々のサブピクセルで非発光処理されている発光素子或いは発光素子の組み合わせが異なることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記3つの発光素子のそれぞれの有機層は前記画素を含む表示領域の全領域に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記非発光処理は、有機層を挟持する2つの電極を短絡させることにより行われていることを特徴とする請求項3または4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記短絡は、前記有機層をレーザーアブレーションにより除去することにより行われることを特徴とする請求項5に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記サブピクセル数が2であり、一方のサブピクセルにおいて非発光処理されている発光素子の発光色は緑であり、他方のサブピクセルにおいて非発光処理されている発光素子の発光色は赤であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
同一画素内の非発光処理されていない発光素子は同時に発光制御されることを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
同一画素内の非発光処理されていない発光素子が時分割に発光制御されることを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項10】
前記有機層は、発光層とは別に、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層及び電子注入層から選ばれる少なくとも一層を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項11】
前記電極は透明導電膜からなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−15746(P2010−15746A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173107(P2008−173107)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】