説明

有機EL表示装置

【課題】発光期間制御用トランジスタのオフ時のリーク電流に起因する表示不良の発生を抑制した有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子と、駆動用トランジスタと、発光期間制御用トランジスタと、を含む複数の画素と、データ線と、制御線と、を有する有機EL表示装置であって、ある画素において、発光期間制御用トランジスタのオフ時における、発光期間制御用トランジスタのソース電極とドレイン電極間の抵抗値Roff_ILMと、駆動用トランジスタのゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加された状態における、駆動用トランジスタのソース電極とドレイン電極間の抵抗値Rbk_Drとは、
Roff_ILM≧Rbk_Dr (1)
の関係を満たすことを特徴とする有機EL表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は有機EL素子を有する画素を基板上にマトリクス状に配置して構成される。各画素において、有機EL素子は有機EL素子を駆動する駆動用トランジスタ(駆動用TR)と、有機EL素子に電源供給する電源線と、直列に接続されている。特許文献1では、更に電源線と有機EL素子の間に直列に、発光期間を制御する発光期間制御用トランジスタを設け、良好な動画表示特性を実現する構成が開示されている。
【0003】
また、有機EL表示装置は自発光型の表示装置であるため、液晶表示装置に比べ高いコントラストを確保できる利点がある。更に、有機EL表示装置によっては、ユーザーが画像データの種類に応じて、高輝度表示モードと低輝度表示モードとを切り替えられる構成のものが開発されている。低輝度表示を実現する構成として、輝度のピーク値を下げて低輝度とする形式があるが、有機EL素子の電流輝度特性は線形でないため、高輝度表示モードの場合とガンマ特性を一定とするために、複雑なシステムを必要とする。これに対し、特許文献2では、輝度のピーク値は高輝度表示モード時と変えずに、発光期間を短くすることで低輝度表示を実現する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−122301号公報
【特許文献2】米国特許第6583775号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように発光期間を制御する駆動を行なう場合、発光期間制御用TRのオフ時のリーク電流により表示不良が発生することがあった。以下にこの理由を説明する。
【0006】
発光期間を制御する駆動では、発光期間における有機EL素子の発光輝度によって所望の階調表示を実現する。電圧書き込み駆動型の有機EL表示装置では、それぞれの画素の駆動用TRに、データ線から、データ信号として階調表示データであるデータ電圧が入力される。データ信号として入力されるデータ電圧は、最小階調表示データ電圧と、最大階調表示データ電圧との間の電圧値をとり、これにより階調表示を行なっている。
【0007】
また、発光期間、非発光期間は発光期間制御用TRのオン、オフによって規定される。発光期間制御用TRのオフ時の抵抗が十分大きくない場合には、駆動シーケンス中の非発光期間においても有機EL素子にリーク電流が流れ、有機EL素子が点灯してしまう。このリーク電流による発光輝度(以下、単に「輝度」とも表記する)が最小階調表示時の発光期間における輝度よりも大きい場合、非発光期間において最小階調表示時の発光期間における輝度よりも大きい発光が重畳される。これにより、輝度ずれ、最小階調表示時の黒浮き等の表示不良が発生する場合があるという問題があった。
【0008】
この問題は、特許文献2のように発光期間を短くすることで低輝度表示を実現する構成においてはより顕著となる。これは、1フレーム期間における非発光期間の占める割合が長くなるためであり、この構成では更に重畳するリーク発光量が増加するためコントラストが低下する。
【0009】
そこで、本発明は、発光期間制御用TRのオフ時のリーク電流に起因する表示不良の発生を抑制した有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、有機EL素子と、ゲート電極の電位に応じた電流を前記有機EL素子に供給する駆動用トランジスタと、前記有機EL素子及び前記駆動用トランジスタと直列に接続され、制御信号により前記有機EL素子の発光を制御する発光期間制御用トランジスタと、を含む複数の画素と、階調表示データに応じたデータ電圧を前記画素に供給するデータ線と、前記制御信号を前記発光期間制御用トランジスタのゲート電極に供給する制御線と、を有する有機EL表示装置であって、ある画素において、前記発光期間制御用トランジスタのオフ時における、前記発光期間制御用トランジスタのソース電極とドレイン電極間の抵抗値Roff_ILMと、前記駆動用トランジスタのゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加された状態における、前記駆動用トランジスタのソース電極とドレイン電極間の抵抗値Rbk_Drとは、
Roff_ILM≧Rbk_Dr (1)
の関係を満たすことを特徴とする有機EL表示装置を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、有機EL素子と、ゲート電極の電位に応じた電流を前記有機EL素子に供給する駆動用トランジスタと、前記有機EL素子及び前記駆動用トランジスタと直列に接続され、制御信号により前記有機EL素子の発光を制御する発光期間制御用トランジスタと、を含む複数の画素と、階調表示データに応じたデータ電圧を前記画素に供給するデータ線と、前記制御信号を前記発光期間制御用トランジスタのゲート電極に供給する制御線と、を有する有機EL表示装置であって、ある画素において、前記駆動用トランジスタのゲート電極に最大階調表示データ電圧が印加され、かつ、前記発光期間制御用トランジスタがオフの時に前記有機EL素子に流れる電流Ileakと、前記駆動用トランジスタのゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加され、かつ、前記発光期間制御用トランジスタがオンの時に前記有機EL素子に流れる電流Ibkとは、
Ibk≧Ileak (2)
の関係を満たすことを特徴とする有機EL表示装置を提供するものである。
【0012】
更に、本発明は、有機EL素子と、ゲート電極の電位に応じた電流を前記有機EL素子に供給する駆動用トランジスタと、前記有機EL素子及び前記駆動用トランジスタと直列に接続され、制御信号により前記有機EL素子の発光を制御する発光期間制御用トランジスタと、を含む複数の画素が、行方向及び列方向に配置されており、前記複数の画素の列毎に設けられ、階調表示データに応じたデータ電圧を前記画素に供給するデータ線と、前記複数の画素の行毎に設けられ、前記制御信号を前記発光期間制御用トランジスタのゲート電極に供給する制御線と、を有する有機EL表示装置であって、少なくとも1行からなる所定行において、前記所定行に含まれる全ての画素の前記駆動用トランジスタのゲート電極に最大階調表示データ電圧が印加され、前記所定行に含まれる全ての前記制御線に接続された全ての前記発光期間制御用トランジスタがオフ状態となった時に、前記所定行に含まれる前記全ての画素の前記有機EL素子を流れる電流Ileakの総和と、前記所定行に含まれる全ての画素の前記駆動用トランジスタのゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加され、前記所定行に含まれる全ての前記制御線に接続された全ての前記発光期間制御用トランジスタがオン状態となった時に、前記所定行に含まれる前記全ての画素の前記有機EL素子を流れる電流Ibkの総和とは、
Ibkの総和≧Ileakの総和
の関係を満たすことを特徴とする有機EL表示装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、有機EL素子と、ゲート電極の電位に応じた電流を前記有機EL素子に供給する駆動用トランジスタと、前記有機EL素子及び前記駆動用トランジスタと直列に接続され、制御信号により前記有機EL素子の発光を制御する発光期間制御用トランジスタと、を含む複数の画素が、行方向及び列方向に配置されており、前記複数の画素の列毎に設けられ、階調表示データに応じたデータ電圧を前記画素に供給するデータ線と、前記複数の画素の行毎に設けられ、前記制御信号を前記発光期間制御用トランジスタのゲート電極に供給する制御線と、を有し、前記発光期間制御用トランジスタのオン時間を変えることにより、複数の表示モードの切り替えを行う有機EL表示装置であって、ある画素において、最大階調表示時の発光期間に前記有機EL素子を流れる電流をIwh、最大階調表示時の1フレーム期間に前記有機EL素子を流れる積算電流量をSwh、最小階調表示時の発光期間に前記有機EL素子を流れる電流をIbk、最小階調表示時の1フレーム期間に前記有機EL素子を流れる積算電流量をSbkとすると、
Swh/Sbk≧0.7×Iwh/Ibk
の関係を満たすことを特徴とする有機EL表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非発光期間における発光期間制御用TRのオフ時のリーク電流による輝度が、発光期間における最小階調表示データに対応した輝度よりも大きくなることがない。従って、輝度ずれ、最小階調表示時の黒浮きの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の有機EL表示装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態1の有機EL表示装置の画素回路とその駆動方法を示す図である。
【図3】有機EL表示装置の表示領域の部分的な断面模式図である。
【図4】図2(a)の画素回路の駆動時の状態を示す図である。
【図5】実施例1の有機EL表示装置を画素単位で評価するための配線図である。
【図6】図5の配線図を用いた評価方法を説明する図である。
【図7】実施例1の有機EL表示装置を行単位で評価するための配線図である。
【図8】実施形態2の有機EL表示装置の構成を示す図である。
【図9】実施形態2の有機EL表示装置の画素回路とその駆動方法を示す図である。
【図10】図9(a)の画素回路の駆動時の状態を示す図である。
【図11】実施形態3の有機EL表示装置の画素回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の有機EL表示装置の好適な実施形態について具体的に説明する。図面上、各部材を認識可能な大きさとしたため、図面の縮尺は実際とは異なる。
【0017】
[実施形態1]
図1は本実施形態の有機EL表示装置1の構成を表す図である。本実施形態の有機EL表示装置1は複数の画素100をm行×n列(m、nは自然数)の2次元状に配列して構成される表示領域10を有する。表示領域10内の各画素100は赤色画素、青色画素、又は緑色画素であり、各画素はそれぞれ有機EL素子と、駆動用トランジスタ(駆動用TR)と、発光期間制御用トランジスタ(発光期間制御用TR)を有している。駆動用TRはゲート電極の電位に応じた電流を有機EL素子に供給する。発光期間制御用TRは駆動用TRのソース電極又はドレイン電極と有機EL素子との間に接続され、制御信号により有機EL素子の発光を制御する。発光期間制御用TRは、電源線と駆動用TRのソース電極又はドレイン電極との間に接続されていてもよい。即ち、発光期間制御用TRは、有機EL素子を流れる電流を遮断できる位置であれば、配線経路上のどこに配置されていてもよく、有機EL素子及び駆動用TRと直列に接続される。有機EL素子、駆動用TR、発光期間制御用TR等により画素回路(図2(a)参照)が構成されている。
【0018】
また、図1の有機EL表示装置1は階調表示データに応じたデータ電圧を画素100に供給するデータ線121を列毎に有し、有機EL素子の発光を制御する制御信号を発光期間制御用TRのゲート電極に供給する制御線112を行毎に有する。
【0019】
更に、図1の有機EL表示装置1は画素回路の動作を制御する行制御回路11と、データ線に供給するデータ電圧を制御する列制御回路12を有する。但し、これらの制御回路と同じ機能を有していれば、図1の構成でなくても良い。
【0020】
行制御回路11にはドライバIC等(不図示)から制御信号が入力され、行制御回路11の各出力端子から画素回路の動作を制御する複数の制御信号P1(1)〜P1(m)、P2(1)〜P2(m)が出力される。制御信号P1は制御線111を介して各行の画素回路に入力され、制御信号P2は制御線112を介して各行の画素回路に入力される。図1では行制御回路11の各出力端子から出力される制御線を2本としたが、2本でなくても良く、画素回路の構成次第では制御線が1本でも良いし、3本以上でも良い。
【0021】
列制御回路12にはドライバIC等(不図示)から映像信号が入力され、各出力端子から映像信号に応じた階調表示データ(データ信号)であるデータ電圧Vdataが出力される。列制御回路12の出力端子から出力されたデータ電圧Vdataはデータ線121を介して各列の画素回路に入力され、最小階調表示データ電圧と、最大階調表示データ電圧との間の電圧値をとり、これにより階調表示を行なう。
【0022】
図2(a)は図1の画素100毎に設けられる画素回路の一例を表す図であり、図2(b)は図2(a)の画素回路の駆動シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【0023】
図2(a)の画素回路はスイッチング用TRである選択用TR161、駆動用TR162、発光期間制御用TR163、保持容量15、有機EL素子17、電源線13、接地線14、データ線121、制御線111、112から構成されている。選択用TR161、発光期間制御用TR163はN型TR、駆動用TR162はP型TRである。選択用TR161はゲート電極が制御線111に、ドレイン電極がデータ線121に、ソース電極が駆動用TR162のゲート電極に接続されている。駆動用TR162はソース電極が電源線13に、ドレイン電極が発光期間制御用TR163のドレイン電極に接続されている。発光期間制御用TR163はゲート電極が制御線112に、ソース電極が有機EL素子17の陽極に接続されている。有機EL素子17は陰極が接地線14に接続されている。保持容量15は電源線13と駆動用TR162のゲート電極間に配置されている。データ線121は、選択用TR161を介して、駆動用TR162のゲート電極及び保持容量15の片側の電極に接続されている。
【0024】
本実施形態のように保持容量15を設けると、駆動用TR162のゲート電極の電位を保持できる点で好ましい。また、本実施形態のように制御線111及び選択用TR161を設けると、制御線111及び選択用TR161によりデータ電圧の供給を制御できる点で好ましい。
【0025】
駆動用TR162はN型TRでも良い。この場合、保持容量15は電源線13と駆動用TR162のゲート電極間ではなく、接地線14と駆動用TR162のゲート電極間に配置するのが望ましい。選択用TR161及び発光期間制御用TR163はP型TRでも良い。
【0026】
図2(b)のタイミングチャートは1フレーム期間をプログラム期間(期間(B))、発光期間(期間(C))、非発光期間(期間(D))の3つの期間に分けている。プログラム期間とは、データ電圧を対象画素に書き込むための期間、発光期間とは対象画素の有機EL素子が発光する期間、非発光期間とは対象画素の有機EL素子が非発光に制御される期間である。発光期間と非発光期間とは、発光期間制御用TRのオン、オフによって規定される。1フレーム期間のプログラム期間以降の発光期間と非発光期間の比率は、任意でよい。本実施形態の有機EL表示装置1の駆動シーケンスでは、期間(C)は期間(B)よりも時間軸として後であれば良く、期間(C)と期間(B)の間に時間的に間隔があっても良い。V(i−1)、V(i)、V(i+1)は、対象列の、(i−1)行(対象行の1行前)、i行(対象行)、(i+1)行(対象行の1行後)の画素回路に入力されるデータ電圧Vdataを示す。
【0027】
期間(A)は、対象行の1行前の行におけるプログラム期間であると同時に対象行の1フレーム前の期間(D)に含まれる期間で、対象行の画素回路において制御線111にLowレベルの信号が入力され、選択用TR161がオフ状態となる。このため、対象行であるi行の画素回路に、1行前の階調表示データであるデータ電圧V(i−1)は入力されない。
【0028】
期間(B)では、対象行の画素回路において、制御線111にHighレベルの信号が入力され、選択用TR161がオン状態となる。このため、対象行であるi行の画素回路に、i行の階調表示データであるデータ電圧V(i)が入力される。これにより、入力されたデータ電圧V(i)に対応する電荷が保持容量15に充電され、階調表示データのプログラムが行なわれる。また、本期間では制御線112にLowレベルの信号が入力され、発光期間制御用TR163がオフ状態となる。このため、有機EL素子17に電流が供給されず、有機EL素子17は発光しない。
【0029】
期間(C)では、対象行の画素回路において、制御線111にLowレベルの信号が入力され、選択用TR161がオフ状態となる。このため、対象行であるi行の画素回路に、次の対象行の階調表示データであるデータ電圧V(i+1)は入力されない。また、本期間では制御線112にHighレベルの信号が入力され、発光期間制御用TR163がオン状態となる。このため、期間(B)で保持容量15に充電された電荷と、駆動用TR162のゲート電極の電位に応じた電流が有機EL素子17に供給され、この供給電流に応じた階調の輝度で有機EL素子17が発光する。
【0030】
期間(D)では、対象行の画素回路において、制御線112にLowレベルの信号が入力され、発光期間制御用TR163がオフ状態となる。このため、有機EL素子17に電流が供給されず、有機EL素子17は発光しない。
【0031】
上述のように、本実施形態の有機EL表示装置1の駆動シーケンスでは制御線112の制御信号P2によって発光期間制御用TR163のオン状態とオフ状態を制御することにより、有機EL素子17の発光期間制御を行なっている。なお、本発明において、発光期間制御とは、駆動シーケンス中で、対象行のプログラムが行なわれている期間(上述の例では、期間(B))以外に、非発光期間(上述の例では、期間(D))を有することをいう。
【0032】
図3は、図1の有機EL表示装置1の表示領域10における断面構成を部分的に示す模式図である。図3の有機EL表示装置1は、基板180上に回路素子層181が形成されている。回路素子層181には、選択用TR(不図示)、駆動用TR(不図示)、発光期間制御用TR(不図示)と制御線、データ線、電源線、接地線の配線構造(不図示)、保持容量(不図示)が形成されている。回路素子層181の上には、平坦化層182が形成されている。平坦化層182には、平坦化層上部に形成される第一電極171と回路素子層181との導通をとるためのコンタクトホール(不図示)が形成されている。第一電極171上には、少なくとも発光層を有する有機化合物層172及び第二電極173がこの順に形成されている。
【0033】
第一電極171は、画素ごとに離間して形成されている。図3では、隣接する画素に連続して有機化合物層172が設けられているが、隣接する画素が異なる発光色の場合には少なくとも発光層を画素毎に形成する必要がある。例えば、発光層の成膜をマスク蒸着法で行う場合には、発光層の成膜領域を、画素に対応した領域に開口部を有するシャドーマスクを用いて規定することができる。第二電極173は表示領域10全域に渡って形成されており、表示領域10の外の領域で接地線14(不図示)に接続されている。尚、第二電極173は、表示領域10内で接地線14に接続されていてもよい。第一電極171と第二電極173と第一電極171および第二電極173に挟まれた有機化合物層172とからなる積層体を、有機EL素子17と呼ぶ。尚、各有機EL素子17の発光領域は、図3に示すように、平坦化層182上に第一電極171のエッジを被覆するように設けられるバンク183によって区画されていてもよい。言い換えれば、第一電極171に対応してバンク183に設けられた開口によって、有機EL素子毎の発光領域が区画されていてもよい。
【0034】
また、図示していないが、第二電極173上に、有機EL素子17を水分や酸素から保護するための封止構造が形成されていてもよい。封止構造としては、単層膜又は複数の層からなる積層膜の保護層を設けた構造や、ガラス基板や封止缶等からなる封止部材を配設した構造、或いは保護層を設けさらにその上部に封止部材を配設した構造等とすることができる。
【0035】
図3の有機EL表示装置1に示される部材は、公知の材料を用い、公知の方法により形成することができる。尚、図3に示される有機EL素子17は、トップエミッション型の有機EL素子であっても、ボトムエミッション型であってもよい。
【0036】
本実施形態の有機EL表示装置1に好適に用いられる駆動回路は、図2(b)のような駆動シーケンスにおいて、下記式(1)又は式(2)を満たすように構成されている。
Roff_ILM≧Rbk_Dr 式(1)
Ibk≧Ileak 式(2)
【0037】
Roff_ILMは発光期間制御用TR163のオフ時における、発光期間制御用TR163のソース電極とドレイン電極間の抵抗値である。ここで、発光期間制御用TR163のオフ時とは、発光期間制御用TR163のゲート、ソース間電圧を閾値電圧以下に設定した状態のことを表わす。Rbk_Drは、最小階調に応じた電流を有機EL素子に流すためのデータ電圧が駆動用TR162のゲート電極に印加された状態における、駆動用TR162のソース電極とドレイン電極間の抵抗値である。Ileakは、最大階調に応じた電流を有機EL素子に流すためのデータ電圧が駆動用TR162のゲート電極に印加された状態で、かつ、発光期間制御用TR163がオフ状態である非発光期間において、有機EL素子に流れるリーク電流値である。Ibkは、駆動用TR162のゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加され、かつ、発光期間制御用TR163がオン状態である発光期間において、有機EL素子を流れる電流値である。以下、最小階調に応じた電流を有機EL素子に流すためのデータ電圧を「最小階調表示データ電圧」、最大階調に応じた電流を有機EL素子に流すためのデータ電圧を「最大階調表示データ電圧」ということもある。
【0038】
駆動回路が式(1)又は式(2)を満たすことにより、本実施形態では、発光期間を制御する駆動を行なう場合でも、輝度について次のことが成り立つ。発光期間制御用TR163のオフ時のリーク電流による有機EL素子の発光輝度が、発光期間における最小階調表示データに対応した輝度(以下、最小階調輝度Lbk)よりも大きくなることがない。従って、非発光期間において、発光期間における最小階調輝度よりも大きい発光が重畳されることがなく、輝度ずれの発生を抑制することができる。
【0039】
上記式(1)又は式(2)を満たしていれば、輝度ずれの発生を抑制できる理由について、図4を用いて説明する。図4は図2(b)の期間(C)と期間(D)における、図2(a)の画素回路の状態を表す。期間(C)及び期間(D)では、選択用TR161はオフ状態であり、データ線121と電気的に分断されているため選択用TR161及びデータ線121を省略して図示している。発光期間制御用TR163は抵抗として図示している。
【0040】
駆動用TR162のゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加されている場合の、期間(C)における画素回路を図4(1)に、期間(D)における画素回路を図4(2)に示す。また、駆動用TR162のゲート電極に最大階調表示データ電圧が印加されている場合の、期間(C)における画素回路を図4(3)に、期間(D)における画素回路を図4(4)に示す。
【0041】
尚、以降の説明では、対象画素のプログラム期間において最小階調表示データ電圧、最大階調表示データ電圧がプログラムされた1フレーム期間を、それぞれ最小階調表示時、最大階調表示時と呼称することがある。
【0042】
図4(1)及び(2)の状態における駆動用TR162のソース電極とドレイン電極間の抵抗値をRbk_Dr、図4(3)及び(4)の状態における駆動用TR162のソース電極とドレイン電極間の抵抗値をRwh_Drと表す。また、図4(1)及び(3)の状態における発光期間制御用TR163のソース電極とドレイン電極間の抵抗値をRon_ILM、図4(2)及び(4)の状態における発光期間制御用TR163のソース電極とドレイン電極間の抵抗値をRoff_ILMと表す。
【0043】
図4(1)の状態では、電流Ibkが有機EL素子に流れる。電流Ibkは、電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧と、抵抗値Rbk_DrとRon_ILMと、電源線と接地線の間の配線経路における駆動用TR162及び発光期間制御用TR163以外の回路素子での電圧降下とに応じた電流である。このときの有機EL素子の発光輝度は、最小階調輝度Lbkである。
【0044】
図4(2)の状態では、電流Ibk_offが有機EL素子に流れる。電流Ibk_offは、電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧と、抵抗値Rbk_DrとRoff_ILMと、電源線と接地線の間の配線経路における駆動用TR162及び発光期間制御用TR163以外の回路素子での電圧降下とに応じた電流である。
【0045】
図4(3)の状態では、電流Iwhが有機EL素子に流れる。電流Iwhは、電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧と、抵抗値Rwh_DrとRon_ILMと、電源線と接地線の間の配線経路における駆動用TR162及び発光期間制御用TR163以外の回路素子での電圧降下とに応じた電流である。このときの有機EL素子の発光輝度は、最大階調表示データに対応した輝度であり、最大階調輝度Lwhと呼称する。
【0046】
図4(4)の状態では、電流Ileakが有機EL素子に流れる。電流Ileakは、電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧と、抵抗値Rwh_DrとRoff_ILMと、電源線と接地線の間の配線経路における駆動用TR162及び発光期間制御用TR163以外の回路素子での電圧降下とに応じた電流である。このときの有機EL素子の発光輝度を最大階調リーク輝度Lleakと呼称する。以下、駆動用TR162のゲート電極に、最大階調表示データ以外のデータ電圧がプログラムされている場合についても、期間(D)或いは発光期間制御用TR163のオフ時において有機EL素子に流れる電流をリーク電流、発光輝度をリーク輝度と呼称する。
【0047】
図4(1)の状態は最小階調表示時、図4(4)の状態は発光期間制御用TRのオフ時であることから、ともに有機EL素子に流れる電流は微小で、図4(1)及び(4)の状態では、有機EL素子での電圧降下は同等と考えて良い。このため、図4(1)及び(4)の状態において、電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧と、電源線と接地線の間の配線経路における駆動用TR162及び発光期間制御用TR163以外の回路素子での電圧降下は共通である。従って、IbkとIleakとの大小関係は、Rbk_DrとRon_ILMの合成抵抗と、Rwh_DrとRoff_ILMの合成抵抗との大小関係によって定まる。ここで、Ron_ILMとRwh_Drは、それぞれRbk_Dr、Roff_ILMに比べ十分小さいため、IbkとIleakの大小関係は、Rbk_DrとRoff_ILMの大小関係によって定まる。
【0048】
このため、上記式(1)を満たせば、上記式(2)を満たすことができる。また、有機EL素子の電流輝度特性は一般に正の相関を持つ。従って、ある画素において上記式(1)または式(2)の一方の関係を満たすことが確認できれば、その画素では最大階調リーク輝度Lleakは最小階調輝度Lbk以下に制御されていると言うことができる。なお、製造工程で生じた不良TR等を含む不良画素において、偶然上記式(1)または式(2)を満たす場合があるが、本発明はそれらの不良画素を対象とせず正常な画素を対象としている。
【0049】
ここで言う不良画素とは、次のように定義する。表示領域内の全ての画素に同一の階調表示データ電圧をプログラムして、1フレーム期間においてプログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合tを、0<t≦1を満たす値として、有機EL表示装置を駆動させる。このとき、表示領域全体の輝度を測定して得られる表示領域の平均輝度の1フレーム期間における平均輝度Lmeanに対し、ある画素の1フレーム期間における平均輝度が0.8Lmean以下或いは1.2Lmean以上の場合、この画素を不良画素と定義する。輝度が0.8Lmean以下或いは1.2Lmean以上の範囲の画素は、表示領域の均一性を損なってしまうからである。正常な画素とは、この不良画素に該当しない画素を表わすものとする。なお、1フレーム期間における平均輝度は、1フレーム期間中の積算輝度を1フレーム期間の時間で割って得ることができる。ここで、積算輝度とは、有機EL素子の発光輝度を1フレーム期間にわたって時間的に積分した値のことを表わすものとする。
【0050】
尚、表示領域及び画素の輝度は、以下のように測定する。輝度測定手段を用いて、その測定範囲を表示領域全体或いは画素に設定する。この状態で、有機EL表示装置を駆動すれば、輝度測定手段により、表示領域全体或いは画素の輝度を、駆動シーケンス中の各タイミング或いは所定の期間において測定することができる。輝度測定手段としては、フォトセンサをオシロスコープと接続したもの等を用いることができる。
【0051】
具体的な不良画素としては、発光期間においても有機EL素子が発光しない黒点画素や、最小階調表示時や非発光期間等においても有機EL素子が正常画素よりも高い輝度(例としては、最大階調輝度以上の輝度等)で発光する輝点画素等がある。黒点画素は、表示領域内の全ての画素に一例として最大階調表示データ電圧をプログラムし、1フレーム期間においてプログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合tを0.7として有機EL表示装置を駆動した際に、不良画素に該当する。即ち表示領域の平均輝度Lmeanに対して輝度が0.8Lmean以下となる。また、輝点画素は、表示領域内の全ての画素に一例として最小階調表示データ電圧をプログラムし、1フレーム期間においてプログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合tを0.7として有機EL表示装置を駆動した際に、不良画素に該当する。即ち表示領域の平均輝度Lmeanに対して輝度が1.2Lmean以上となる。
【0052】
黒点画素は、具体的には、製造工程での異物等により、第一電極と第二電極とが短絡している場合や、回路素子層の配線が欠落している場合等に発生する。また、輝点画素は、具体的には、製造工程での異物等により、回路素子層の配線間が短絡している場合や、トランジスタのゲート電極と活性層或いはソース電極或いはドレイン電極とが短絡している場合等に発生する。
【0053】
発光期間制御を行なう駆動では、期間(C)の発光期間における有機EL素子の発光輝度を基に階調表示を行なう。そして、各階調は、最小階調輝度と最大階調輝度を基準として、その間の輝度として設定される。なお、発光期間制御を行なう駆動では、1フレーム期間中の積算輝度を1フレーム期間の時間で割って得られる平均輝度が観察者の目に明るさとして視認される。本実施形態の有機EL表示装置1では、期間(C)における発光光に、期間(D)の非発光期間において階調設定の基準となる最小階調輝度よりも大きいリーク輝度での発光光が重畳することがないため、最大階調表示時の輝度ずれを抑制することができる。
【0054】
また、上述の説明では、最小階調輝度と、駆動用TR162のゲート電極に最大階調表示データ電圧が印加されている場合の期間(D)に有機EL素子を流れるリーク輝度だけを比較した。最大階調より低い階調を表示するためのデータ電圧が印加されている場合は、駆動用TR162のソース電極とドレイン電極間の抵抗値はRwh_Drよりも大きくなる。つまり、上記式(1)又は式(2)を満たせば、最大階調より低い階調を表示するためのデータ電圧が印加されている際のリーク電流もIbkよりも小さくすることができ、リーク輝度を最小階調輝度よりも小さく制御することができる。従って、最大階調より低い階調を表示するデータ電圧を印加した場合においても、最大階調表示データ電圧を印加した場合と同様に、各階調表示時における輝度ずれを抑制することができる。
【0055】
このようにして、本実施形態では、発光期間を制御する駆動を行なう場合でも、非発光期間における発光期間制御用TRのオフ時のリーク輝度が、発光期間における最小階調輝度よりも大きくなることがない。従って、輝度ずれの発生を抑制することができる。
【0056】
[実施例1]
実施形態1の有機EL表示装置1の具体的な実施例を示す。尚、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。また、本発明は、後述する実施例に用いたTRの極性やサイズ、画素配列や画素ピッチによって限定されるものではない。
【0057】
本実施例では、図2(a)の画素回路において、選択用TR161がN型、駆動用TR162がP型、発光期間制御用TR163がN型である実施例を示す。
【0058】
本実施例では、図1における画素100の2次元状の配列を、480行×1920列とした。また、画素100の行方向の画素ピッチは94.5μm、列方向の画素ピッチは31.5μmとした。また、画素100は列方向に、それぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)を発光する有機EL素子を有する画素100(R)、100(G)、100(B)(いずれも不図示)がこの順で繰り返し配置された構成とした。本実施例では、赤色を発光する有機EL素子を有する画素100(R)に注目して説明するが、他の色の画素であっても構わない。
【0059】
最大階調表示時の発光期間における各画素の有機EL素子に供給される電流値を5×10-7Aと設定した。更に、1フレーム期間において、プログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合t(0<t≦1)が1の場合のコントラストが100000:1であるように階調表示データを設定した。ここで、コントラストとは、最大階調表示時の積算輝度と最小階調表示時の積算輝度との比を表わすものとし、以降もこの定義を用いる。
【0060】
上記の設計条件の下で、式(1)又は式(2)を満たすことを考慮して、本実施例では駆動用TR162及び発光期間制御用TR163のチャネル長及びチャネル幅をそれぞれ次のように設定し、有機EL表示装置1を作製した。駆動用TR162のチャネル長L1を24μm、チャネル幅W1を10μm、発光期間制御用TR163のチャネル長L2を4μm、チャネル幅W2を2.5μmとした。
【0061】
作製した有機EL表示装置1の電源線13、接地線14を含む配線190を、図5に示すようにフレキシブルプリント基板191を介して駆動手段19に接続した。詳細には、配線190を、有機EL表示装置1内の接続部192を介してフレキシブルプリント基板191内の配線193に接続し、配線193を駆動手段19内の接続部194を介して駆動手段19に接続した。配線190は、有機EL表示装置1内で、外周配線領域101を経て表示領域10内の画素100の画素回路や、行制御回路11、列制御回路12等につながっている。電源線13、接地線14は、有機EL表示装置1内で表示領域10内の画素100の画素回路につながっており、また、それぞれ駆動手段19内のVcc電源131、Vocom電源141に接続されている。
【0062】
完成した有機EL表示装置1を、図2(b)の駆動シーケンス条件に従って駆動した。具体的には、1フレーム期間中のプログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合t(0<t≦1)を0.7とし、電源線電圧(電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧)として9.5Vを印加して駆動した。そして、完成した有機EL表示装置1が、式(2)を満たしているかどうかの評価を行った。具体的には、表示領域10内の複数の画素100の中から任意に選択した一つの赤色画素100a(R)の有機EL素子17に流れる電流値を測定した。全ての画素に同じ画素回路を用いて同様に駆動しているため、評価する画素の色は他の色でも構わない。
【0063】
ここで、画素100aに含まれる有機EL素子を流れる電流値の測定方法を、図6を用いて説明する。図6(a)は、測定する画素100aと、画素100aに隣接する複数の画素100bと、画素100aに含まれる有機EL素子の第二電極を他の画素から分離させるために照射するレーザの照射領域を示す平面模式図である。図6(a)では、画素100a及び複数の画素100bの第一電極171と第二電極173の位置関係を示すもので、第一電極171よりも下部の構造、バンク183及び有機化合物層172の図示は省略している。図6(b)は、レーザ照射後の画素100aの画素回路と、電流測定手段の接続形態を示す模式図である。
【0064】
まず、図6(a)に示すように、画素100a内の第一電極171aの周囲(レーザ照射領域)にレーザを照射して、画素100a上の第二電極173aと、画素100b上の第二電極173とを電気的に分断する。レーザ照射領域は、画素100aの第一電極171aにレーザが照射されない領域であればよく、複数の画素100bにレーザが照射されてもよい。バンク183を設ける構成では、第一電極171a上のバンク183の開口部にレーザが照射されない領域であればよい。照射するレーザとしては、YAGレーザ等を用いることができる。
【0065】
次に、図6(b)に示すように、画素100aの第二電極173aと接地線電位Vocomの間に、電流測定手段を電気的に接続する。この状態で、図2(b)に示した駆動シーケンスに従って有機EL表示装置1を駆動すれば、電流測定手段により画素100aの有機EL素子17aに流れる電流値を、駆動シーケンス中の各タイミングにおいて測定することができる。電流測定手段としては、電流計やオシロスコープや半導体パラメータアナライザ等を用いることができる。
【0066】
まず、図2(b)の期間(B)で、画素100a(R)に最小階調表示データ電圧をプログラムした。そして期間(C)で、画素100a(R)の制御線112にHighレベルの信号として12Vを印加した。このとき、上記測定方法を用いて、期間(C)において画素100a(R)の有機EL素子17に流れる電流Ibkを測定したところ、5×10-12Aであった。尚、測定のタイミングは、期間(C)における任意の1タイミングでよい。あるいは、期間(C)に含まれる所定期間の平均電流値をIbkとしてもよい。
【0067】
次に、期間(B)で、画素100a(R)に最大階調表示データ電圧をプログラムした。そして期間(D)で、画素100a(R)の制御線112にLowレベルの信号として0Vを印加した。このとき、期間(D)において画素100a(R)の有機EL素子17に流れる電流Ileakを測定したところ、5.4×10-13Aであった。尚、測定のタイミングは、期間(D)における任意の1タイミングでよいし、あるいは期間(D)に含まれる所定期間の平均電流値をIleakとしてもよい。
【0068】
測定の結果、本実施例の有機EL表示装置1に含まれる画素100a(R)では、Ibk=5×10-12A≧Ileak=5.4×10-13Aとなっており、上記式(2)を満たしていた。従って、画素100a(R)では、発光期間を制御する駆動を行なう場合でも、非発光期間における発光期間制御用TR163のオフ時のリーク電流による有機EL素子の発光輝度が、発光期間における最小階調輝度よりも大きくなることがない。このため、画素100a(R)において輝度ずれの発生を抑制することができた。
【0069】
本実施例の有機EL表示装置1に対し、上記と同様にして他の複数の画素100(R)についても有機EL素子17に流れる電流値を測定したところ、測定を実施した全ての画素において上記式(2)を満たしていた。青色画素、緑色画素にも赤色画素と同様の画素回路を用いているため、全ての色の画素においても赤色画素と同様に輝度ずれの発生を抑制することができる。
【0070】
実際に、画素100a(R)に含まれる有機EL素子の輝度を測定したところ、最大階調リーク輝度Lleakは、最小階調輝度Lbkよりも小さい値であった。画素100a(R)に含まれる有機EL素子の輝度の測定方法について説明する。輝度測定手段を用いて、その測定範囲を画素100a(R)に設定する。この状態で、図6(b)に示した接続状態にて、図2(b)に示した駆動シーケンスに従って有機EL表示装置1を駆動すれば、輝度測定手段により、画素100a(R)の有機EL素子17の輝度を、駆動シーケンス中の各タイミングにおいて測定することができる。この測定方法は、画素100(R)含まれる有機EL素子の輝度の測定のみならず、画素100(G)、100(B)に含まれる有機EL素子の輝度の測定にも同様に適用することができる。輝度測定手段としては、フォトセンサをオシロスコープと接続したもの等を用いることができる。
【0071】
また、輝度の測定は、画素100a(R)上の第二電極173aと、画素100b上の第二電極173とをレーザ照射によって電気的に分断する前に行ってもよい。この場合においても、輝度測定手段の測定範囲を画素100a(R)に設定した状態で、図2(b)に示した駆動シーケンスに従って有機EL表示装置1を駆動すれば、同様に駆動シーケンス中の各タイミングにおいて測定することができる。即ち、画素100a(R)の有機EL素子17の輝度を、駆動シーケンス中の各タイミングにおいて測定することができる。この測定方法は、画素100(R)含まれる有機EL素子の輝度の測定のみならず、画素100(G)、100(B)に含まれる有機EL素子の輝度の測定にも同様に適用することができる。
【0072】
[実施例1の変形例]
本変形例では、1画素毎に有機EL素子に流れる電流を評価するのではなく、行単位で画素100の有機EL素子に流れる電流を評価する点で、実施例1とは異なっている。具体的には、任意に選択した第k行に含まれる各画素の有機EL素子を流れる電流Ibkの総和Ibk_1LINEと、第k行の各画素の有機EL素子に流れる電流Ileakの総和Ileak_1LINEとが、下記式(2)’を満たすかどうかを評価する。ここで、kは自然数である。
Ibk_1LINE≧Ileak_1LINE 式(2)’
【0073】
まず、実施例1と同様に有機EL表示装置1を作製した。作製した有機EL表示装置1の電源線13、接地線14を含む配線190を、図7に示すようにフレキシブルプリント基板191を介して駆動手段19’に接続した。駆動手段19’は、接地線14と接続された接続部194と、Vocom電源141とが接続されていない点を除き、図5の駆動手段19と同一の構成である。そして、図2(b)に示した駆動シーケンスに従って駆動させ、表示領域10内の全ての画素100の有機EL素子17に流れる電流値の総和を評価した。
【0074】
本変形例における、表示領域内の全ての画素の有機EL素子に流れる電流値の総和の測定方法を、図7を用いて説明する。図7は、電流測定手段の接続形態を示す模式図である。
【0075】
図7に示すように、駆動手段19’の中で、接地線14と接続された配線端195と、Vocom電源141に接続された配線端196との間に、電流測定手段を電気的に接続する。この状態で、図2(b)に示した駆動シーケンスに従って有機EL表示装置1を駆動することで、電流測定手段により表示領域内の全ての画素の有機EL素子に流れる電流値の総和を、駆動シーケンス中の各タイミングにおいて測定することができる。電流測定手段としては、電流計やオシロスコープや半導体パラメータアナライザ等を用いることができる。
【0076】
上記測定方法に従い、全ての行に対して、各行の期間(B)で各行に含まれる各画素に最小階調表示データ電圧をプログラムし、各行の期間(C)で各行の制御線112にHighレベルの信号として12Vを印加した。このとき、任意に選択した所定行(第k行)における期間(C)において、表示領域10内の全ての画素100の有機EL素子17に流れる電流値の総和I1を測定したところ、34.1×10-7Aであった。本変形例では、k=50とした。ここで、k=50としたが、本変形例の場合、k≦480を満たす自然数であれば良い。尚、測定のタイミングは、第k行の期間(C)における任意の1タイミングでよい。
【0077】
また、各行の期間(B)で、所定行(第k行)に含まれる各画素には最大階調表示データ電圧、所定行以外(第k行以外)の全ての行に含まれる各画素には最小階調表示データ電圧をプログラムした。そして各行の期間(D)で、各行の各画素の制御線112にLowレベルの信号として0Vを印加した。このとき、第k行における期間(D)において、表示領域10内の全ての画素100の有機EL素子17に流れる電流値の総和I2を測定したところ、34.0×10-7Aであった。尚、測定のタイミングは、第k行の期間(D)における任意の1タイミングでよい。従って、本変形例では、総和I1=34.1×10-7A≧総和I2=34.0×10-7Aとなった。
【0078】
ここで、I1の測定時とI2の測定時において、第k行以外の全行に含まれる各画素に流れる電流の総和が等しい。このため、電流値の総和I1とI2の差分は、第k行に含まれる各画素の有機EL素子17を流れる、電流Ibkの総和Ibk_1LINEと電流Ileakの総和Ileak_1LINEの差分である。
【0079】
従って、本変形例では式(2)’の関係を満たしていた。即ち、第k行に含まれる各画素の有機EL素子に流れる電流Ibkの総和Ibk_1LINEとIleakの総和Ileak_1LINEとが、式(2)’の関係を満たしていた。この場合、各総和電流から算出される第k行に含まれる各画素の有機EL素子を流れる電流値の平均は、式(2)を満たす。このため、第k行において、行単位での平均輝度の輝度ずれを抑制することができた。このように、画素単位でなく行単位の電流の平均値で式(2)の関係を評価することもできる。
【0080】
さらに、連続する複数の行について同様の測定を行って評価してもよい。具体的には、任意に選択した第k行から第(k+q−1)行までの連続するq行に含まれる各画素の有機EL素子を流れる電流Ibkの総和Ibk_LINESと、Ileakの総和Ileak_LINESとが、下記式(2)’’を満たすかどうかを評価する。ここで、k及びqは自然数である。
Ibk_LINES≧Ileak_LINES 式(2)’’
【0081】
このような測定方法によれば、両電流値の差分の値を大きくでき、大小関係の比較を容易にすることができる。
【0082】
連続するq行の行について、1行分の測定と同様にしてq行分のIbkの総和とIleakの総和の差分を測定する方法を説明する。駆動シーケンス中の各行の期間(B)で、全ての行に対して、各行に含まれる各画素に最小階調表示データ電圧をプログラムする。そして各行の期間(C)で、各行の制御線112にHighレベルの信号を印加する。このとき、測定対象となる任意に選択したk行から(k+q−1)行までの連続する行について、表示領域10内の全ての画素100の有機EL素子17に流れる電流値の総和I1’を測定する。測定のタイミングは、これらの行の全ての制御線112にHighレベルの信号が印加されている期間の中の任意のタイミングで行う。
【0083】
また、各行の期間(B)で、測定対象行である、k行から(k+q−1)行までの連続する複数行の各画素には最大階調表示データ電圧を、k行から(k+q−1)行までの行以外の全ての行の各画素には最小階調表示データ電圧をプログラムする。そして各行の期間(D)で、各行の各画素の制御線112にLowレベルの信号を印加する。このとき、k行から(k+q−1)行までの連続する行の全ての制御線112にLowレベルの信号が印加されている期間の中の任意のタイミングで、表示領域10内の全ての画素100の有機EL素子17に流れる電流値の総和I2’を測定する。
【0084】
このように測定した電流値の総和I1’とI2’の差分は、有機EL素子17に流れる電流Ibkの総和Ibk_LINESと有機EL素子17に流れる電流Ileakの総和Ileak_LINESの差分である。即ち、k行から(k+q−1)行までの連続する行の各画素の有機EL素子17に流れる電流の総和Ibk_LINESと、k行から(k+q−1)行までの連続する行の各画素の有機EL素子17に流れる電流の総和Ileak_LINESの差分である。これは、I1’の測定時とI2’の測定時で、k行から(k+q−1)行までの連続する行以外の全ての行の各画素に流れる電流の総和が等しいためである。
【0085】
このようにすることで、q行分のIbkの総和とIleakの総和の差分を測定することができる。
【0086】
尚、上記のk行から(k+q−1)行までの連続するq行について、これらの行の全ての制御線112にHighレベルの信号が印加されている期間は、以下の式(3)が満たされている場合に存在する。
q/m<t 式(3)
【0087】
また、k行から(k+q−1)行までの連続するq行について、これらの行の全ての制御線112にLowレベルの信号が印加されている期間は、以下の式(4)が満たされている場合に存在する。
q/m<(1−t) 式(4)
【0088】
式(3)及び式(4)において、mは有機EL表示装置の表示領域内の全行数を表わす自然数である。またqは、有機EL素子17に流れる電流Ibkの総和とIleakの総和の差分を測定する、連続する複数の行数qを表わす自然数である。またtは、1フレーム期間において、プログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合t(0<t≦1)を表わす実数である。
【0089】
上記方法にて、実施例1と同様の有機EL表示装置1に対し、q=100とし、任意に選択した第k(=50)行から100行分のIbkの総和とIleakの差分を測定した。作製した有機EL表示装置1は、m=480であり、本実施例ではq=100、t=0.7としたため、式(3)及び式(4)を満たしている。従って、第k行から(k+q−1)行までの連続するq行について、これらの行の全ての制御線112にHighレベルの信号が印加されている期間、及びこれらの行の全ての制御線112にLowレベルの信号が印加されている期間が存在する。尚、各行の期間(C)で制御線112に印加するHighレベルの信号は12V、各行の期間(D)で制御線112に印加するLowレベルの信号は0Vとした。このとき、表示領域10内の全ての画素100の有機EL素子17に流れるIbkの総和I1’及びIleakの総和I2’は、それぞれ36.6×10-7A、28.0×10-7Aであった。従って、本変形例では、第k(=50)行から第(k+99)行までの連続する行に含まれる各画素の有機EL素子を流れる電流Ibkの総和Ibk_LINESと、Ileakの総和Ileak_LINESとが、式(2)’’の関係を満たしていた。このため、各総和電流から算出される第k行から第(k+99)行までの連続する行に含まれる各画素の有機EL素子を流れる電流値の平均は、式(2)を満たす。このため、第k行から第(k+99)行までの連続する行において、100行単位での平均輝度の輝度ずれを抑制することができた。
【0090】
さらに、第k(k=1、101、201、301)行から第(k+99)行までの連続する複数行(100行)と、第401行から第480行までの連続する複数行(80行)について、次の評価を行った。具体的には、それぞれの複数行に含まれる各画素の有機EL素子に流れる電流Ibkの総和Ibk_LINESと、Ileakの総和Ileak_LINESとを評価した。その結果、全ての複数行において、式(2)’’の関係を満たしていた。このため、本変形例の有機EL表示装置1では、表示領域10内の平均輝度の輝度ずれを抑制することができた。
【0091】
尚、各画素に含まれる有機EL素子の輝度の行単位或いは複数行における平均輝度は、実施例1で述べた輝度測定方法において、輝度測定手段の測定範囲を行単位或いは複数行に設定して同様に測定することができる。
【0092】
[比較例1]
本比較例では、選択用TR161がN型、駆動用TR162がP型、発光期間制御用TR163がN型である例を示す。駆動用TR162のチャネル長を24μm、チャネル幅を10μm、発光期間制御用TR163のチャネル長を4μm、チャネル幅を25μmとして有機EL表示装置を作製した。本比較例の有機EL表示装置は発光期間制御用TR163が異なる点を除いて、有機EL表示装置の配線接続構成等は実施例1の有機EL表示装置と同じである。
【0093】
そして、実施例1と同一の駆動シーケンス条件で有機EL表示装置を駆動し、実施例1で述べた方法で、表示領域10内の複数の画素100の中から任意に選択した一つの赤色画素100a’(R)(不図示)の有機EL素子17に流れる電流値を測定した。期間(C)において画素100a’(R)の有機EL素子17に流れる電流Ibkを測定したところ、5×10-12Aであった。また、期間(D)において画素100a’(R)の有機EL素子17に流れる電流Ileakを測定したところ、5.8×10-12Aであった。
【0094】
本比較例の有機EL表示装置では、実施例1と比較して、発光期間制御用TR163のサイズの違いにより、Ileakが実施例1に比べて大きくなり、画素100a’(R)において、上記式(2)を満たしていなかった。また、本比較例の有機EL表示装置に対し、上記と同様にして他の複数の画素100(R)についても有機EL素子17に流れる電流値を測定したところ、測定を実施した全ての画素において上記式(2)を満たしていなかった。
【0095】
リーク電流IeakとIbkが上記式(2)を満たさない場合、次のことが言える。期間(D)の非発光期間におけるリーク電流による有機EL素子の発光輝度(リーク輝度)が、発光期間における最小階調輝度よりも大きくなる。発光期間制御を行なう駆動では、発光期間における有機EL素子の発光輝度を基に階調表示を行なう。このため、リーク輝度が最小階調輝度よりも大きい画素では、発光期間での発光光に、非発光期間における有機EL素子の、階調設定の基準である最小階調輝度よりも大きいリーク輝度での発光光が重畳する。実際、この画素では階調表示が正しく行なえず、輝度ずれが発生した。
【0096】
[実施例2]
実施形態1にかかる有機EL表示装置であって、実施例1とは別の具体的な実施例を示す。本実施例の有機EL表示装置は、画素回路の選択用TR161及び発光期間制御用TR163の極性をP型とした点と、コントラストの設定を10000:1とした点を除き、実施例1の有機EL表示装置と同じである。
【0097】
図2(a)に示した画素回路構成において、選択用TR161をP型、駆動用TR162をP型、発光期間制御用TR163をP型とした。最大階調表示時の発光期間における各色の画素の有機EL素子に供給される電流値を5×10-7Aと設定した。更に、1フレーム期間において、プログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合t(0<t≦1)が1の場合のコントラストが10000:1であるよう階調表示データを設定した。このような設計条件のもとで、式(1)又は式(2)を満たすことを考慮して、本実施例では駆動用TR162及び発光期間制御用TR163のチャネル長及びチャネル幅をそれぞれ次のように設定し、有機EL表示装置1を作製した。各画素回路の駆動用TR162のチャネル長を24μm、チャネル幅を10μm、発光期間制御用TR163のチャネル長を4μm、チャネル幅を10μmとした。
【0098】
作製した有機EL表示装置を、図2(b)の駆動シーケンス条件に従って駆動した。具体的には、1フレーム期間中のプログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合t(0<t≦1)を0.7とし、電源線電圧(電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧)として9.5Vを印加して駆動した。そして、表示領域10内の複数の画素100の中から任意に選択した一つの赤色画素100a(R)に含まれる有機EL素子17に流れる電流値を測定した。電流値の測定方法には、実施例1で述べた画素毎に流れる電流を測定する方法を用いた。
【0099】
期間(B)で、画素100a(R)に最小階調表示データ電圧をプログラムした。そして期間(C)で、画素100a(R)に接続された制御線112に、Lowレベルの信号として0Vを印加した。このとき、期間(C)において画素100a(R)の有機EL素子17に流れる電流Ibkを測定したところ、5×10-11Aであった。また、期間(B)で、画素100a(R)に最大階調表示データ電圧をプログラムした。そして期間(D)で、画素100a(R)に接続された制御線112に、Highレベルの信号として12Vを印加した。このとき、期間(D)において画素100a(R)の有機EL素子17に流れる電流Ileakを測定したところ、2.0×10-11Aであった。
【0100】
従って、本実施例の有機EL表示装置では、画素100a(R)において、上記式(2)を満たしていた。このため、画素100a(R)では、発光期間を制御する駆動を行なう場合でも、輝度について次のことが成り立つ。非発光期間における発光期間制御用TR163のオフ時のリーク電流による有機EL素子の発光輝度が、発光期間における最小階調輝度よりも大きくなることがない。従って、画素100a(R)において輝度ずれの発生を抑制することができた。
【0101】
次に、実施形態1の有機EL表示装置で、発光期間制御用TRを用いて発光期間(C)の長さを変え、高輝度表示モードと低輝度表示モードの切り替えが可能な有機EL表示装置において、より好適な構成について説明する。
【0102】
本実施形態の有機EL表示装置では、発光期間における輝度のピーク値を高輝度表示モードと低輝度表示モードとで変えることなく、発光期間の長さを変える(発光期間制御用TRのオン時間を変える)ことにより、モード切り替えを行う。具体的には、発光期間を短くすることにより低輝度表示モードを実現する。この場合、発光期間を短くして、1フレーム期間における非発光期間の占める割合が長くなるほど、非発光期間でのリーク輝度の重畳による輝度ずれがより顕著となる。また、重畳するリーク輝度が増加するため、コントラストの低下の問題が発生する。
【0103】
以下、コントラストの低下について詳しく説明する。コントラストとは、前述の通り、最大階調表示時の積算輝度と最小階調表示時の積算輝度との比を意味する。
【0104】
1フレーム期間において、プログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合をt(0<t≦1)とする。同じ構成の有機EL表示装置でtの値を変えた装置について、具体的にはt=1の場合のコントラストに対する、t<1でのコントラストの低下度合について説明する。これらのtの値が異なる装置において、電源線電圧(電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧)が共通であるため、有機EL素子の電流輝度特性により、発光輝度は電流値と対応する。また、本実施形態で用いる範囲の電流、電圧領域においては、有機EL素子の電流輝度特性はほぼ線形であるため、コントラストを表わす積算輝度比と積算電流量比とはほぼ一致する。よって、以下では、最大階調表示時の有機EL素子を流れる積算電流量と最小階調表示時の有機EL素子を流れる積算電流量の比を用いることにより、t=1の場合のコントラストに対する、t<1でのコントラストの低下度合を説明する。また、図2(b)の駆動シーケンスにおいて、プログラム期間(B)は、発光期間(C)及び非発光期間(D)に比べて十分短く、以下の議論では無視する。
【0105】
最大階調表示時、最小階調表示時の1フレーム期間に有機EL素子を流れる積算電流量をそれぞれSwh、Sbkと表すと、Swh、Sbkは下記式(5)及び式(6)で表される。
Swh=Iwh×t+Ileak×(1−t) 式(5)
Sbk=Ibk×t+Ibk_off×(1−t) 式(6)
Iwh、Ibk、Ileak、Ibk_offの定義は、前述の通りである。
【0106】
ここで、実施例1で作製した、Iwhが5×10-7A、Ibkが5×10-12Aの有機EL表示装置を考える。この装置でのt=1でのコントラストは、上記式(5)及び式(6)よりSwh/Sbk=Iwh/Ibk=100000である。
【0107】
これに対し、Ileakの値とtの値を変えたときの各々のコントラストのおおよその値を下記表1に示す。ここで、Ileakと発光期間制御用TR163のオフ時におけるソース電極とドレイン電極間の抵抗値Roff_ILMは、下記式(7)の関係を満たしている。
Vcc−Vocom=
(Rwh_Dr+Roff_ILM+Rel)×Ileak 式(7)
【0108】
式(7)は、図4の(4)に示す最大階調表示時の非発光期間の画素回路における、電源線と接地線の間の配線経路の電圧降下の関係式である。Vccは電源線電位、Vocomは接地線電位、Rwh_Drは図4(4)の状態における駆動用TR162のソース電極とドレイン電極間の抵抗値、Relは図4(4)の状態における有機EL素子17の抵抗値である。表1におけるIleakの値は、式(2)を満たし、IleakがIbk=5×10-12A以下の値である場合の電流値である。
【0109】
【表1】

【0110】
t<1の場合はt=1の場合に比べると、非発光時のリーク電流の重畳により、Ileakがどのような値であってもコントラストが低下するが、人の感応性(視認性)において、t=1でのコントラストに対して70%以上のコントラストであることが望ましい。このため、表1から、Ileakは、t=0.5では1×10-12A以下が望ましく、t=0.25では5×10-13A以下が望ましく、t=0.05では1×10-13A以下が望ましいことがわかる。t=0.7では、上記式(2)を満たす有機EL表示装置であれば、70%以上のコントラストを確保することができる。このことは、下記式(8)で表すことができる。即ち、実施形態1の有機EL表示装置を、ユーザーが画像データの種類に応じて高輝度表示モードと低輝度表示モードとを切り替えられる構成とした場合、1フレーム期間における発光期間の占める割合t(0<t≦1)に対し、Ileakの値が、
{Iwh×t+Ileak×(1−t)}/{Ibk×t+Ibk_off×(1−t)}=Swh/Sbk≧0.7×Iwh/Ibk 式(8)
の関係を満たすことが望ましい。
【0111】
このようにすることで、実施形態1の有機EL表示装置で発光期間を短くして低輝度表示を行う場合においても、コントラストが高く良好な表示を実現でき、より好適である。尚、Swh、Sbkは、実施例1又は実施例1の変形例に記載の電流測定方法を用いて、1フレーム期間に渡って測定を行うことで、測定することができる。また、式(8)中のIwh、Ileak、Ibk、Ibk_offは、実施例1又は実施例1の変形例に記載の電流測定方法を用いて、測定することができる。
【0112】
[実施形態2]
図8は本実施形態の有機EL表示装置1の構成を表す図である。本実施形態と実施形態1とは、画素回路の構成および駆動シーケンスが異なっており、それに伴って行制御回路11と列制御回路12が異なっている。表示領域における断面構成は、実施形態1と同様である。
【0113】
まず、有機EL表示装置の構成と駆動シーケンスについて説明する。実施形態1にかかる図1の有機EL表示装置と同じ、もしくは、対応する部材には同じ番号を付し、同じ動作をする場合は説明を省略する場合がある。本実施形態の有機EL表示装置1も、複数の画素100をm行×n列(m、nは自然数)の2次元状に配列して構成される表示領域10を有しており、各画素100は赤色画素、青色画素、又は緑色画素である。
【0114】
行制御回路11の各出力端子から画素回路の動作を制御する複数の制御信号P1(1)〜P1(m)、P2(1)〜P2(m)、P3(1)〜P3(m)が出力される。制御信号P1は制御線111を介して各行の画素回路に入力され、制御信号P2は制御線112を介して各行の画素回路に入力され、制御信号P3は制御線113を介して各行の画素回路に入力される。図8では行制御回路11の各出力端子から出力される制御線を3本としたが、3本でなくても良く、画素回路の構成次第では制御線が2本以下でも良いし、4本以上でも良い。
【0115】
列制御回路12にはドライバIC等(不図示)から映像信号が入力され、各出力端子から映像信号に応じた階調表示データ(データ信号)であるデータ電圧Vdataが出力される。また、各出力端子から基準電圧Vslが出力される。列制御回路12の出力端子から出力されたデータ電圧Vdata及び基準電圧Vslはデータ線121を介して各列の画素回路に入力される。データ電圧を供給するデータ線121と、基準電圧を供給する基準電圧線を別々の配線として接続を切り替えても良い。
【0116】
図9(a)は図8の画素回路の一例を表す図であり、図9(b)は図9(a)の画素回路の駆動シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【0117】
図9(a)の画素回路は、スイッチング用TRである選択用TR161、駆動用TR162、発光期間制御用TR163、消去用TR164、保持容量15、有機EL素子17を有している。
【0118】
選択用TR161、発光期間制御用TR163、消去用TR164はN型TR、駆動用TR162はP型TRである。選択用TR161はゲート電極が制御線111、ドレイン電極がデータ線121、ソース電極が保持容量15と接続している。消去用TR164はゲート電極が制御線113、ソース電極及びドレイン電極のうち片側の電極が駆動用TR162のゲート電極、残りの電極が駆動用TR162のドレイン電極及び発光期間制御用TR163のドレイン電極と接続している。駆動用TR162はソース電極が電源線13に、ドレイン電極が消去用TR164のソース電極及びドレイン電極のうち片側の電極及び発光期間制御用TR163のドレイン電極に接続されている。発光期間制御用TR163はゲート電極が制御線112に、ソース電極が有機EL素子17の陽極に接続されている。有機EL素子17は陰極が接地線14に接続されている。保持容量15は選択用TR161と駆動用TR162のゲート電極及び消去用TR164のソース電極及びドレイン電極のうち片側の電極間に配置されている。
【0119】
本実施形態のように保持容量15を設けると、駆動用TR162のゲート電極の電位を保持できる点で好ましい。また、本実施形態のように制御線111及び選択用TR161を設けると、制御線111及び選択用TR161によりデータ電圧の供給を制御できる点で好ましい。また、本実施形態のように制御線113及び消去用TR164を設けると、制御線113及び消去用TR164により駆動用TRの閾値電圧ばらつきが表示特性に与える影響を低減できる点で好ましい。
【0120】
選択用TR161、発光期間制御用TR163及び消去用TR164はP型でも良い。
【0121】
図9(b)のタイミングチャートは、1フレーム期間をプログラム期間(期間(A)〜期間(D))、発光期間(期間(E))、非発光期間(期間(F))の3つの期間に分けている。図9(b)におけるプログラム期間は、全行に対してプログラムを行う期間である。このプログラム期間は、階調表示データが対象画素に書き込まれる対象行プログラム期間(期間(B)、期間(C))と、対象行以外の画素に階調表示データが書き込まれる他行プログラム期間(期間(A)、期間(D))とからなる。
【0122】
プログラム期間にて全行の画素に対してプログラムが完了した後、発光期間に全行の画素が一斉に点灯、非発光期間に一斉に消灯する。発光期間とは対象画素を含む全画素の有機EL素子が発光する期間、非発光期間とは対象画素を含む全画素の有機EL素子が非発光に制御される期間である。発光期間と非発光期間とは、発光期間制御用TRのオン、オフによって規定される。1フレーム期間のプログラム期間以降の発光期間と非発光期間の比率は、任意でよい。V(i−1)、V(i)、V(i+1)は、対象列の、1フレーム期間における(i−1)行(対象行の1行前)、i行(対象行)、(i+1)行(対象行の1行後)の画素回路に入力されるデータ電圧Vdataを示す。
【0123】
(A)他行プログラム期間(対象行よりも前)
本期間では対象行の画素回路において、制御線111、113にLowレベルの信号が入力され、選択用TR161、消去用TR164がオフ状態となる。このため、対象行であるi行の画素回路には、1行前の階調表示データであるデータ電圧V(i−1)は入力されない。この間、対象行の画素は、対象行プログラム期間が始まるまで、直前のフレーム期間でプログラムされた階調表示データ電圧を容量15に保持している。このとき、発光期間制御用TR163は、オフ状態を維持している。
【0124】
(B)ディスチャージ期間
本期間では対象行の画素回路において、制御線111〜113にHighレベルの信号が入力され、選択用TR161、消去用TR164、発光期間制御用TR163がオン状態となる。このため、データ線121には対象行の階調表示データであるデータ電圧V(i)が設定され、保持容量15のデータ線121側にデータ電圧V(i)が入力される。また、消去用TR164、発光期間制御用TR163がオン状態になる。このため、駆動用TR162のゲート電極と接地線14が有機EL素子17を介して接続される。これにより、駆動用TR162のゲート電極の電位が直前の状態での電位に関わらず、接地線電位Vocomに近い電位となり、駆動用TR162がオン状態となる。
【0125】
(C)プログラム期間
本期間では制御線112にLowレベルの信号が入力され、発光期間制御用TR163がオフ状態となる。このため、駆動用TR162のドレイン電極からゲート電極へと電流が流れ、駆動用TR162のゲート−ソース間電圧が駆動用TR162の閾値電圧に近づく。保持容量15の、駆動用TRのゲート電極と接続されている側に、このときの駆動用TR162のゲート電圧が入力される。また、データ線121には、期間(B)から引き続き、該当行の階調表示データであるデータ電圧V(i)が設定されており、保持容量15のデータ線121側にデータ電圧V(i)が入力される。保持容量15には、駆動用TR162のゲート電圧と、データ電圧V(i)の差分の電圧に対応する電荷が充電され、階調表示データ電圧のプログラムが行われる。
【0126】
(D)他行プログラム期間(対象行よりも後)
本期間では制御線111、113にLowレベルの信号が入力され、選択用TR161、消去用TR164がオフ状態となる。このため、データ線121の電圧が後の行に関する階調表示データであるデータ電圧V(i+1)に変化しても、期間(C)で保持容量15に充電された電荷は保持される。対象行の画素は、他行のプログラムが完了するまで、この状態で待機する。このとき、発光期間制御用TR163は、オフ状態を維持している。
【0127】
(E)発光期間
本期間では全行の制御線111にHighレベルの信号が入力され、全行の画素回路に含まれる選択用TR161がオン状態となる。そして、全列のデータ線121に、基準電圧Vslが設定される。このため、保持容量15のデータ線121側に基準電圧Vslが入力される。本期間では消去用TR164はオフ状態となっているため、期間(C)で保持容量15に充電された電荷は保持されている。従って、データ電圧V(i)と基準電圧Vslの差分だけ、駆動用TR162のゲート電圧が変化する。
【0128】
制御線111には、この後、期間(E)、期間(F)の間、Highレベルの信号が入力され、制御線113には、この後、期間(E)、期間(F)の間、Lowレベルの信号が入力される。このため、選択用TR161のオン状態、及び消去用TR164のオフ状態は期間(E)、期間(F)の間で維持され、駆動用TR162のゲート電圧は、この期間で一定電圧に保たれる。
【0129】
また、本期間では、制御線112にHighレベルの信号が入力され、発光期間制御用TR163がオン状態となる。このため、駆動用TR162のゲート電極の電位に応じた電流が有機EL素子17に供給され、この供給電流に応じた階調の輝度で有機EL素子17が発光する。
【0130】
(F)非発光期間
本期間では、全行の制御線112にLowレベルの信号が入力され、発光期間制御用TR163がオフ状態となる。このため、本期間では有機EL素子17は非発光となる。
【0131】
上述のように、本実施形態の有機EL表示装置1の駆動シーケンスでは制御線112の制御信号P2によって発光期間制御用TR163のオン状態とオフ状態を制御することにより、有機EL素子17の発光期間制御を行なっている。
【0132】
本実施形態において、非発光期間におけるIleakに起因する輝度ずれを抑制するためには、上記駆動シーケンスにおいて発光期間制御用TR163と駆動用TR162の抵抗値が式(1)を満たし、電流値Ileak及びIbkが式(2)を満たすよう構成する。発光期間制御用TR163の抵抗値Roff_ILMと駆動用TR162の抵抗値Rbk_Dr、及び電流値Ileak及びIbkの定義は、実施形態1と同様である。即ち、抵抗値Roff_ILMは、発光期間制御用TR163のオフ状態における発光期間制御用TR163のソース電極とドレイン電極間の抵抗値である。抵抗値Rbk_Drは、駆動用TR162のゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加されている場合の、発光期間における駆動用TR162のソース電極とドレイン電極間の抵抗値である。電流値Ileakは、駆動用TR162のゲート電極に最大階調表示データ電圧が印加されている場合での、非発光期間における有機EL素子17を流れる電流値である。電流値Ibkは、駆動用TR162のゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加されている場合での、発光期間における有機EL素子17を流れる電流値である。このように構成すれば、本実施形態の有機EL表示装置で発光期間を制御する駆動を行なっても、非発光期間における発光期間制御用TR163のオフ時のリーク電流による有機EL素子の発光輝度が、発光期間における最小階調輝度よりも大きくなることがない。従って、輝度ずれの発生を抑制することができる。
【0133】
ここで、本実施形態の比較例として、本実施形態の有機EL表示装置と同様の構成において、発光期間制御用TR163のサイズ等が異なり上記式(1)及び式(2)を満たさない画素が1個或いは複数個存在する場合を説明する。
【0134】
発光期間制御用TR163と駆動用TR162の抵抗値、及び電流値Ileak、Ibkが、式(1)及び式(2)を満たさない画素では、次のことが言える。非発光期間(F)におけるリーク電流による有機EL素子の発光輝度(リーク輝度)が、期間(E)の発光期間における最小階調輝度よりも大きくなる。また、プログラム期間中の期間(D)におけるリーク電流による有機EL素子の発光輝度(リーク輝度)が、期間(E)の発光期間における最小階調輝度よりも大きくなることがある。具体的には、後述する図10(1)の状態でのRgray_DrとRoff_ILMとの合成抵抗値が、図10(2)の状態でのRbk_DrとRon_ILMとの合成抵抗値よりも小さい場合に、期間(D)におけるリーク電流による有機EL素子の発光輝度(リーク輝度)が、期間(E)の発光期間における最小階調輝度よりも大きくなる。また、プログラム期間中の期間(A)では、直前のフレーム期間でプログラムされたデータ電圧がある階調以上の場合に、期間(A)におけるリーク電流による有機EL素子の発光輝度(リーク輝度)が、期間(E)の発光期間における最小階調輝度よりも大きくなる。発光期間制御を行なう駆動では、発光期間における有機EL素子の発光輝度を基に階調表示を行なう。このため、リーク輝度が最小階調輝度よりも大きい画素では、発光期間での発光光に、非発光期間や期間(A)、期間(D)における有機EL素子の、最小階調輝度よりも大きいリーク輝度での発光光が重畳する。これにより、この画素では階調表示が正しく行なえず、輝度ずれが発生する。
【0135】
さらに、本実施形態の比較例の有機EL表示装置では、輝度ずれに加えて、以下のように黒浮きが起こり、コントラストが低下する課題が発生する場合がある。この課題について図10を用いて説明する。
【0136】
図10は図9(b)の期間(D)、期間(E)、期間(F)における、図9(a)の画素回路の状態を表す。図10では、選択用TR161及びデータ線121を省略して図示している。また、発光期間制御用TR163は抵抗として図示している。
【0137】
期間(D)における画素回路を図10(1)に示す。駆動用TR162のゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加されている場合の、期間(E)における画素回路を図10(2)に、期間(F)における画素回路を図10(3)に示す。駆動用TR162のゲート電極に最大階調表示データ電圧が印加されている場合の、期間(E)における画素回路を図10(4)に、期間(F)における画素回路を図10(5)に示す。
【0138】
駆動シーケンスにおける期間(D)では選択用TR161及び消去用TR164がオフ状態となっているため、期間(C)で保持容量15に充電された電荷が保持されている。この電荷は期間(C)において駆動用TR162のゲート−ソース間電圧が駆動用TR162の閾値電圧に近づいたときの駆動用TR162のゲート電圧に対応する電荷である。このため、プログラム期間(C)でデータ線121に設定される階調表示データ電圧によらず、期間(D)において駆動用TR162は完全にはオフ状態とならない、オン状態とオフ状態の中間的な状態となっている。
【0139】
この状態における、駆動用TR162のソース電極とドレイン電極間の抵抗値をRgray_Drと表す。図10(1)の状態では、電流Ileak2が有機EL素子に流れる。電流Ileak2は、電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧と、抵抗値Rgray_DrとRoff_ILMと、駆動用TR162と発光期間制御用TR163を除いた電源線13と接地線14の間の配線経路における電圧降下とに応じた電流である。このため、有機EL素子がIleak2に応じた輝度で発光する。
【0140】
本実施形態の有機EL表示装置1では、発光期間制御用TR163と駆動用TR162の抵抗値が式(1)を満たす構成であるため、図10(1)の状態においても、有機EL素子の発光輝度を最小階調輝度以下に制御できる。駆動用TR162の中間的な状態におけるRgray_Drは、駆動用TR162のゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加された状態での抵抗値Rbk_Drよりも小さい値である。このため、式(1)を満たす本実施形態の有機EL表示装置1では、Ileak2は図10(2)の状態で有機EL素子に流れる電流Ibkよりも大きい値とならない。このため期間(D)における発光期間制御用TR163のオフ時のリーク電流による有機EL素子の発光輝度を、期間(E)における有機EL素子の最小階調輝度以下に制御することができる。従って、期間(C)において駆動用TR162のゲート電極に、最小階調表示データ電圧をプログラムした場合に、期間(D)において最小階調輝度よりも大きい輝度での発光光が重畳することがないため、最小階調表示時の輝度ずれを抑制することができる。
【0141】
これに対し、本実施形態の比較例の有機EL表示装置には、発光期間制御用TR163と駆動用TR162の抵抗値が上記式(1)を満たさない画素が存在し、この画素では、電流値Ileak2がIbkより大きくなる場合がある。
【0142】
具体的には、図10(1)の状態でのRgray_DrとRoff_ILMとの合成抵抗値が、図10(2)の状態でのRbk_DrとRon_ILMとの合成抵抗値よりも小さい場合に、Ileak2がIbkよりも大きい値となる。この場合、期間(D)のプログラム期間で、期間(E)の発光期間での最小階調輝度よりも大きい輝度での発光が起こる。このため、この画素では、期間(C)において駆動用TR162のゲート電極に、最小階調表示データ電圧をプログラムした場合に、期間(E)での最小階調輝度での発光光に期間(D)で最小階調輝度よりも大きい輝度での発光光が重畳する。これにより、最小階調表示時の輝度ずれが起こり、コントラストが低下する。
【0143】
尚、実施形態2にかかる表示装置が形成されているかどうか評価するには、次のようにすればよい。1画素毎に有機EL素子に流れる電流を評価する場合は、実施例1に記載の電流測定方法を用いて電流値Ileak及びIbkを測定すればよい。また、実施形態2にかかる表示装置では、発光期間に全行の画素が一斉に点灯し、非発光期間に一斉に消灯する。このような駆動を行う表示装置では、実施例1の変形例に記載の電流測定方法を用いて、表示領域内の全行に含まれる各画素の有機EL素子を流れる電流値Ileakの総和及びIbkの総和を測定すればよい。
【0144】
[実施形態3]
実施形態1では、発光期間制御用TRを1つのTRで構成する有機EL表示装置を示した。本実施形態では、発光期間制御用TRが2つのTRが各々のソース電極又はドレイン電極により直列に接続して構成され、この2つのTRのゲート電極に共通の制御線を設ける有機EL表示装置について説明する。本実施形態の画素回路を図11に示す。なお、発光期間制御用TRに関わる構成を除いて、本実施形態は実施形態1の有機EL表示装置1と同一の構成であり、駆動シーケンス等も同一である。
【0145】
本実施形態の有機EL表示装置では、発光期間制御用TR163のオフ抵抗Roff_ILMは、発光期間制御用TR163を構成する複数のTR163Aおよび163Bのオフ時における、それぞれのソース電極とドレイン電極間の抵抗の合成抵抗値となる。従って、2つのTRのオフ抵抗の合成抵抗値をRoff_ILMとして、式(1)を満たすよう構成する。また、電流値Ileak及びIbkが上記式(2)を満たすよう構成する。Ileak及びIbkの定義は、実施形態1と同様である。
【0146】
本実施形態では、発光期間制御用TR163を複数のTR163A、Bで構成するため、以下の効果がある。
【0147】
一般にトランジスタの製造工程中に生じる静電気影響や、ゲート電極端と活性層の結晶粒界とが一致した場合に結晶粒界での準位を介したキャリア輸送が起こること等によって、トランジスタのオフ抵抗値が小さくなる場合がある。発光期間制御用TR163を1つのトランジスタで構成する場合、これらの影響を受けて不良画素が発生する場合がある。しかし、本実施形態のように、発光期間制御用TR163を複数のトランジスタで構成すると、一方のトランジスタが上記の影響を受けてオフ抵抗が小さくなったとしても、もう一方のトランジスタのオフ抵抗との合成抵抗値が式(1)を満たしていれば良い。このため、より確実に式(1)を満たす有機EL表示装置を実現することができる。従って、電流値Ileak及びIbkは式(2)を満たし、輝度ずれの発生を抑制できる。
【0148】
発光期間制御用TR163は、3つ以上の複数のトランジスタを直列に接続した構成とし、これら複数のトランジスタの制御線を共通にした構成としても良い。発光期間制御用TR163を構成する直列に接続したトランジスタの数を増やすほど、輝度ずれ発生の抑制効果を更に高めることができる。
【0149】
[実施例3]
実施形態3にかかる有機EL表示装置1の具体的な実施例を示す。
【0150】
本実施例では、図11の画素回路において、選択用TR161をN型、駆動用TR162をP型、発光期間制御用TR163をN型で形成した。駆動用TR162のチャネル長を24μm、チャネル幅を10μmとした。発光期間制御用TRは、チャネル長が4μm、チャネル幅が2.5μmの2つのN型トランジスタ163A、163Bが各々のソース電極又はドレイン電極で直列に接続された構成とした。更に、この2つのトランジスタのゲート電極の各々に接続される制御線112を共通にした構成として有機EL表示装置を100枚作製した。作製した有機EL表示装置は、発光期間制御用TR163に関する構成が異なる点を除いて、実施例1の有機EL表示装置1と同様である。また、実施例1と同一の作製工程で作製した。
【0151】
作製した有機EL表示装置で、図2(b)の駆動シーケンスにて、全画素に中間階調表示データの中で低階調側の一つの階調表示データ電圧をプログラムして駆動した。具体的には、1フレーム期間中のプログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合t(0<t≦1)を0.7とし、電源線電圧(電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧)として9.5Vを印加して駆動した。ここで、中間階調表示データとは、全ての階調表示データのうち最小階調表示データ及び最大階調表示データを除いた残りの階調表示データを表わす。
【0152】
駆動時に、周囲の画素よりも輝度が高く、表示領域の平均輝度Lmeanに対して輝度が1.2Lmean以上となり視認される不良画素のある有機EL表示装置が作製された枚数は0枚であった。続いて、100枚の有機EL表示装置の中から任意の10枚を選び、実施例1と同一の図2(b)に示した駆動シーケンス条件で有機EL表示装置を駆動した。そして任意に選択した10枚の有機EL表示装置の中の1枚の有機EL表示装置について、複数の画素100の中から任意に選択した一つの赤色画素100a(R)に含まれる有機EL素子17に流れる電流値を、実施例1で述べた方法にて評価した。期間(C)において画素100a(R)の有機EL素子17に流れる電流Ibkを測定したところ、5×10-12Aであった。期間(D)において画素100a(R)の有機EL素子17に流れる電流Ileakを測定したところ、1.8×10-13Aであった。従って、式(2)の関係を満たしていた。上記と同様にして他の複数の画素100(R)についても有機EL素子17に流れる電流値を測定したところ、測定を実施した全ての画素において式(2)の関係を満たしていた。
【0153】
任意に選択した10枚の有機EL表示装置の残る9枚の各有機EL表示装置についても、同様に各有機EL表示装置の表示領域内の複数の画素100(R)について有機EL素子17に流れる電流値を測定した。その結果、いずれの有機EL表示装置でも、測定を実施した全ての画素において式(2)の関係を満たしていた。
【0154】
残る90枚の有機EL表示装置について、実施例1の変形例に記載の方法にて、行毎に各画素に含まれる有機EL素子を流れる電流の総和の評価を行ったところ、いずれの有機EL表示装置も測定を実施した全ての行において式(2)’を満たしていた。
【0155】
本実施例の有機EL表示装置では、画素100a(R)において、上記式(2)を満たしていた。このため、画素100a(R)では、発光期間を制御する駆動を行なっても、非発光期間における発光期間制御用TR163のオフ時のリーク電流による有機EL素子17の発光輝度が、発光期間における最小階調輝度よりも大きくなることがない。従って、画素100a(R)だけでなく他の色の画素においても同様の画素回路を形成しているため、全ての色の画素において輝度ずれの発生を抑制することができる。また、本実施例の有機EL表示装置では、式(2)’を満たしていた。このため、行単位での平均輝度の輝度ずれを抑制することができた。
【0156】
比較例として、実施例1の構成、即ち発光期間制御用TR163を1つのトランジスタで構成した有機EL表示装置を100枚作製した。作製した有機EL表示装置で、図2(b)の駆動シーケンスにて、全画素に実施例3と同一の中間階調表示データ電圧をプログラムして駆動した。具体的には、1フレーム期間中のプログラム期間以外の期間における発光期間の占める割合t(0<t≦1)を0.7とし、電源線電圧(電源線電位Vccと接地線電位Vocom間の電圧)として9.5Vを印加して駆動した。駆動時に、周囲の画素よりも輝度が高く視認される画素が表示領域内に1個乃至は2個存在する有機EL表示装置が15枚含まれていた。
【0157】
周囲の画素よりも輝度が高く視認される画素のある有機EL表示装置について、駆動用TRのゲート電極に最大階調表示データ電圧を印加した状態で、期間(D)の非発光期間にこれらの画素の有機EL素子に流れる電流を実施例1に記載の方法にて評価した。その結果、5.0×10-10A〜6.0×10-9Aであった。これらの画素の輝度を、輝度測定手段の測定範囲を当該画素に設定して測定したところ、表示領域の平均輝度Lmeanに対して輝度が1.2Lmean以上であった。これらの画素は、トランジスタの製造工程中に生じる静電気影響や、ゲート電極端と活性層の結晶粒界とが一致した場合に結晶粒界での準位を介したキャリア輸送が起こること等によって、トランジスタのオフ抵抗値が小さくなった不良画素である。
【0158】
不良画素を含む前記15枚の有機EL表示装置を除く残りの85枚について、実施例1の変形例に記載の方法にて行毎に各画素に含まれる有機EL素子を流れる電流の総和の評価を行った。その結果、いずれの有機EL表示装置も測定を実施した全ての行において式(2)’を満たしていた。
【0159】
以上のように、発光期間制御用TRを、直列に接続した複数のトランジスタで構成することにより、トランジスタ製造工程等に起因する不良を低減し、式(1)、つまり式(2)または式(2)’をより確実に満たすことができる。
【0160】
本実施形態では、実施形態1の有機EL表示装置1に対し、発光期間制御用TRを、2つのTRが各々のソース電極又はドレイン電極により直列に接続して構成され、この2つのTRのゲート電極に共通の制御線を設ける構成とした。この構成は、実施形態2に対しても適用可能である。即ち、実施形態2の有機EL表示装置に対し、発光期間制御用TRを、2つのTRが各々のソース電極又はドレイン電極により直列に接続して構成され、この2つのTRのゲート電極に共通の制御線を設ける構成としてもよい。この場合も、本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0161】
100:画素、111〜113:制御線、121:データ線、162:駆動用TR、163:発光期間制御用TR、17:有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子と、ゲート電極の電位に応じた電流を前記有機EL素子に供給する駆動用トランジスタと、前記有機EL素子及び前記駆動用トランジスタと直列に接続され、制御信号により前記有機EL素子の発光を制御する発光期間制御用トランジスタと、を含む複数の画素と、
階調表示データに応じたデータ電圧を前記画素に供給するデータ線と、
前記制御信号を前記発光期間制御用トランジスタのゲート電極に供給する制御線と、
を有する有機EL表示装置であって、
ある画素において、
前記発光期間制御用トランジスタのオフ時における、前記発光期間制御用トランジスタのソース電極とドレイン電極間の抵抗値Roff_ILMと、
前記駆動用トランジスタのゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加された状態における、前記駆動用トランジスタのソース電極とドレイン電極間の抵抗値Rbk_Drとは、
Roff_ILM≧Rbk_Dr (1)
の関係を満たすことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記発光期間制御用トランジスタは、複数のトランジスタが各々のソース電極又はドレイン電極によって直列に接続され、かつ前記複数のトランジスタの各々のゲート電極に接続される前記制御線が共通であり、
ある画素において、前記複数のトランジスタのオフ時における、前記複数のトランジスタのソース電極とドレイン電極間の抵抗の合成抵抗値をRoff_ILMとすると、Roff_ILMが式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
有機EL素子と、ゲート電極の電位に応じた電流を前記有機EL素子に供給する駆動用トランジスタと、前記有機EL素子及び前記駆動用トランジスタと直列に接続され、制御信号により前記有機EL素子の発光を制御する発光期間制御用トランジスタと、を含む複数の画素と、
階調表示データに応じたデータ電圧を前記画素に供給するデータ線と、
前記制御信号を前記発光期間制御用トランジスタのゲート電極に供給する制御線と、
を有する有機EL表示装置であって、
ある画素において、
前記駆動用トランジスタのゲート電極に最大階調表示データ電圧が印加され、かつ、前記発光期間制御用トランジスタがオフの時に前記有機EL素子に流れる電流Ileakと、
前記駆動用トランジスタのゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加され、かつ、前記発光期間制御用トランジスタがオンの時に前記有機EL素子に流れる電流Ibkとは、
Ibk≧Ileak (2)
の関係を満たすことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
有機EL素子と、ゲート電極の電位に応じた電流を前記有機EL素子に供給する駆動用トランジスタと、前記有機EL素子及び前記駆動用トランジスタと直列に接続され、制御信号により前記有機EL素子の発光を制御する発光期間制御用トランジスタと、を含む複数の画素が、行方向及び列方向に配置されており、
前記複数の画素の列毎に設けられ、階調表示データに応じたデータ電圧を前記画素に供給するデータ線と、
前記複数の画素の行毎に設けられ、前記制御信号を前記発光期間制御用トランジスタのゲート電極に供給する制御線と、
を有する有機EL表示装置であって、
少なくとも1行からなる所定行において、
前記所定行に含まれる全ての画素の前記駆動用トランジスタのゲート電極に最大階調表示データ電圧が印加され、前記所定行に含まれる全ての前記制御線に接続された全ての前記発光期間制御用トランジスタがオフ状態となった時に、前記所定行に含まれる前記全ての画素の前記有機EL素子を流れる電流Ileakの総和と、
前記所定行に含まれる全ての画素の前記駆動用トランジスタのゲート電極に最小階調表示データ電圧が印加され、前記所定行に含まれる全ての前記制御線に接続された全ての前記発光期間制御用トランジスタがオン状態となった時に、前記所定行に含まれる前記全ての画素の前記有機EL素子を流れる電流Ibkの総和とは、
Ibkの総和≧Ileakの総和
の関係を満たすことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
有機EL素子と、ゲート電極の電位に応じた電流を前記有機EL素子に供給する駆動用トランジスタと、前記有機EL素子及び前記駆動用トランジスタと直列に接続され、制御信号により前記有機EL素子の発光を制御する発光期間制御用トランジスタと、を含む複数の画素が、行方向及び列方向に配置されており、
前記複数の画素の列毎に設けられ、階調表示データに応じたデータ電圧を前記画素に供給するデータ線と、
前記複数の画素の行毎に設けられ、前記制御信号を前記発光期間制御用トランジスタのゲート電極に供給する制御線と、
を有し、
前記発光期間制御用トランジスタのオン時間を変えることにより、複数の表示モードの切り替えを行う有機EL表示装置であって、
ある画素において、最大階調表示時の発光期間に前記有機EL素子を流れる電流をIwh、最大階調表示時の1フレーム期間に前記有機EL素子を流れる積算電流量をSwh、最小階調表示時の発光期間に前記有機EL素子を流れる電流をIbk、最小階調表示時の1フレーム期間に前記有機EL素子を流れる積算電流量をSbkとすると、
Swh/Sbk≧0.7×Iwh/Ibk
の関係を満たすことを特徴とする有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−128407(P2012−128407A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247715(P2011−247715)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】