説明

有機EL装置の製造方法、有機EL装置、および電子機器

【課題】ダークスポット等の不具合の発生や輝度、寿命低下を抑え信頼性がより高い有機EL装置およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】有機EL装置100は、基体20と、基体20上に配列された画素2と、基体20上に、画素2毎に配置された陽極24と、陽極24上に配置された少なくとも発光層を含む有機機能層30と、有機機能層30上に配置された陰極32と、陰極32の表面に接して設けられ、少なくとも互いに隣り合う画素2同士の間の領域に配置された補助陰極34と、を備えている。有機EL装置100の製造方法は、蒸着マスク50を用いた蒸着法により補助陰極34を形成する工程を有し、補助陰極34を形成する工程では、蒸着マスク50は、補助陰極34を形成する前の基体20の蒸着マスク50に対向する面のうち、互いに隣り合う画素2同士の間の領域の一部である部分32bに接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造方法、有機EL装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス装置(以下有機EL装置と呼ぶ)は、陽極と、少なくとも発光層を含む有機機能層と、陰極とが積層された有機エレクトロルミネセンス素子(以下有機EL素子と呼ぶ)を有している。有機EL装置では、発光層で発生した光が陽極側または陰極側へ射出される。有機EL素子は酸素や水分等で特性が劣化し易いため、有機EL装置内部に酸素や水分等が浸入するのを防止する目的で、例えば無機材料からなる保護膜等が有機EL素子上に設けられる。
【0003】
また、有機EL装置の輝度や効率を高めるとともに均一な発光を実現するため、陰極の上面または下面に接するように補助陰極を設けて、陰極および補助陰極の延在方向に沿って電流が流れる際の電圧降下を小さくする方法が提案されている(例えば、特許文献1)。補助陰極の形成に適用可能な方法としては、例えば、蒸着マスクを用いて蒸着法により有機機能層等を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−123988号公報
【特許文献2】特開2005−158571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蒸着マスクを用いた蒸着法では、蒸着マスクが基板の表面に接触することにより、基板表面に既に形成されている層が損傷を受けることがある。例えば、補助陰極を形成する際に、基板表面に既に形成されている有機機能層あるいは陰極が損傷を受けると、その表面を覆う保護層が損傷を受けた部分を被覆しきれない場合がある。そこから水分等が侵入すると有機EL素子が劣化するため、有機EL装置の輝度や寿命が低下してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る有機EL装置の製造方法は、基体と、前記基体上に配列された画素と、前記基体上に、前記画素毎に配置された第1の電極と、前記第1の電極上に配置された少なくとも発光層を含む有機機能層と、前記有機機能層上に配置された第2の電極と、前記第2の電極の表面に接して設けられ、少なくとも互いに隣り合う前記画素同士の間の領域に配置された補助電極と、を備えた有機EL装置の製造方法であって、蒸着マスクを用いた蒸着法により前記補助電極を形成する工程を有し、前記補助電極を形成する工程では、前記蒸着マスクは、前記補助電極を形成する前の前記基体の前記蒸着マスクに対向する面のうち、互いに隣り合う前記画素同士の間の領域の一部に接触することを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、補助電極を有機機能層上または第2の電極上に形成する工程において、蒸着マスクは、基体の蒸着マスクに対向する面のうち画素同士の間の領域の一部に接触するが、画素の領域を含むその他の領域には接触しない。このため、画素の領域において有機機能層や第2の電極が損傷を受けるリスクを回避できる。これにより、水分等が侵入することによる有機機能層や第2の電極の劣化が抑えられる。この結果、輝度や寿命の低下が少ない有機EL装置を製造することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記蒸着マスクが接触する前記一部は、前記補助電極を形成する前の前記基体において、前記蒸着マスクに対向する面の前記一部を除く領域よりも前記蒸着マスク側に張り出していてもよい。
【0010】
この方法によれば、蒸着マスクが接する一部は、他の部分よりも蒸着マスク側に張り出している。これにより、蒸着マスクがこの張り出した部分以外において基体に接触するのを避けることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記蒸着マスクは、前記基体に対向する側に張り出した張出し部を有し、前記張出し部が前記基体の前記一部に接触してもよい。
【0012】
この方法によれば、蒸着マスクの張出し部が基体に接触するので、蒸着マスクの張出し部以外の部分が基体に接触するのを避けることができる。また、蒸着マスクと基体とのクリアランスが張出し部の高さに相当する分だけ大きくなるので、蒸着マスクの基体に対向する面に異物が付着している場合、その異物が基体の表面に接触するリスクを低減できる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記補助電極を形成する工程は、前記蒸着マスクを用いて順に行う第1の成膜工程と第2の成膜工程とを少なくとも含み、前記第1の成膜工程において前記蒸着マスクが接触する前記一部は、前記第2の成膜工程において前記基体上に前記補助電極が成膜される領域に位置しており、前記第2の成膜工程において前記蒸着マスクが接触する前記一部は、前記第1の成膜工程において前記基体上に前記補助電極が成膜された領域に位置していてもよい。
【0014】
この方法によれば、第1の成膜工程で蒸着マスクが接触することにより有機機能層や第2の電極が損傷を受けた場合でも、第2の成膜工程でこの部分を覆って補助電極が形成される。また、第2の成膜工程で蒸着マスクが接触する部分には、第1の成膜工程で補助電極が形成されている。これにより、蒸着マスクが接触する部分が補助電極により保護されるので、この部分から水分等が侵入することによる有機機能層や第2の電極の損傷の発生を抑えることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記蒸着マスクが接触する前記一部は、形成される前記補助電極の延在方向と交差する方向において、形成される前記補助電極の略中央部に位置していてもよい。
【0016】
この方法によれば、蒸着マスクが接触する部分は、補助電極が形成される領域の略中央部に位置している。このため、基体の表面に対する蒸着マスクの相対的位置がずれた場合でも、蒸着マスクが接触する部分を補助電極が形成される領域内とすることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記第1の成膜工程と前記第2の成膜工程とでは、異なる前記蒸着マスクを用いてもよい。
【0018】
この方法によれば、異なる蒸着マスクを用いることにより、補助電極を形成できる。
【0019】
[適用例7]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記第1の成膜工程と前記第2の成膜工程とでは、同一の前記蒸着マスクを用い、前記蒸着マスクの前記基体に対する相対的な位置を異ならせてもよい。
【0020】
この方法によれば、同一の蒸着マスクの位置を異ならせることにより、補助電極を形成できる。
【0021】
[適用例8]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記表面に接して前記補助電極が配置された前記第2の電極を覆って形成された保護層をさらに備えていてもよい。
【0022】
この方法によれば、補助電極が形成された第2の電極の表面をさらに保護層で覆うので、水分等が侵入することによる有機機能層や第2の電極の損傷の発生をより効果的に抑えることができる。
【0023】
[適用例9]本適用例に係る有機EL装置は、基体と、前記基体上に配列された画素と、前記基体上に、前記画素毎に配置された第1の電極と、前記第1の電極上に配置された少なくとも発光層を含む有機機能層と、前記有機機能層上に配置された第2の電極と、前記第2の電極の表面に接して設けられ、少なくとも互いに隣り合う前記画素同士の間の領域に配置された補助電極と、を備え、前記補助電極が接する前記基体側の表面のうち互いに隣り合う前記画素同士の間の領域の一部が、前記一部を除く領域よりも張り出していることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、補助電極を形成する際に、補助電極が形成される基体側の表面のうち互いに隣り合う画素同士の間の領域の一部が他の領域よりも張り出している。このため、補助電極を形成する工程で用いる治具等が、この張り出した部分以外で基体に接触しにくくなるので、画素の領域において有機機能層や第2の電極が損傷を受けるリスクを低減できる。これにより、水分等が侵入することによる有機機能層や第2の電極の劣化が抑えられる。この結果、輝度や寿命の低下が少ない有機EL装置を提供することができる。
【0025】
[適用例10]上記適用例に係る有機EL装置であって、前記一部は、蒸着マスクを用いた蒸着法により前記補助電極を形成する際に前記蒸着マスクが接触する部分であってもよい。
【0026】
この構成によれば、蒸着マスクを用いて有機機能層上または第2の電極上に補助電極を形成する際に、蒸着マスクは、基体の蒸着マスクに対向する面のうち画素同士の間の領域の一部に接触するが、画素の領域を含むその他の領域には接触しない。このため、画素の領域において有機機能層や第2の電極が損傷を受けるリスクを回避できる。
【0027】
[適用例11]上記適用例に係る有機EL装置であって、前記一部は、前記補助電極の延在方向と交差する方向における前記補助電極の略中央部に位置していてもよい。
【0028】
この構成によれば、蒸着マスクが接触する部分は、補助電極が形成される領域の略中央部に位置している。このため、基体の表面に対する蒸着マスクの相対的位置がずれた場合でも、蒸着マスクが接触する部分を補助電極が形成される領域内とすることができる。
【0029】
[適用例12]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、電子機器は上記の有機EL装置を備えているので、表示部において輝度や寿命の低下が少ない電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL装置の電気的構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す平面図。
【図3】第1の実施形態に係る有機EL装置の発光領域の要部を示す平面図。
【図4】第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図。
【図5】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明するフローチャート。
【図6】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図7】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図8】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図9】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図10】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図11】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図12】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図13】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図14】第2の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図。
【図15】第3の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図。
【図16】電子機器としての携帯電話機を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する図面において、構成をわかりやすく示すため、構成要素の層厚や寸法の比率等は適宜異ならせてある。また、それぞれの図面において、説明する構成要素を誇張して示す場合や、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
【0033】
(第1の実施形態)
<有機EL装置>
まず、第1の実施形態に係る有機EL装置の構成について図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る有機EL装置の電気的構成を示すブロック図である。図2は、第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す平面図である。図3は、第1の実施形態に係る有機EL装置の発光領域の要部を示す平面図である。図4は、第1の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。詳しくは、図4(a)は図3のA−A’線に沿った部分断面図であり、図4(b)は図3のB−B’線に沿った部分断面図である。なお、本明細書では、有機EL装置の光が射出される側表面の法線方向から見ることを「平面視」とも呼ぶ。
【0034】
図1に示すように、第1の実施形態に係る有機EL装置100は、スイッチング素子として薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置である。有機EL装置100は、基板10と、基板10上に設けられた走査線16と、走査線16に対して交差する方向に延在する信号線17と、信号線17に並列に延在する電源線18とを備えている。有機EL装置100において、これら走査線16と信号線17とに囲まれた領域に画素2が配置されている。画素2は、例えば、走査線16の延在方向と信号線17の延在方向とに沿ってマトリクス状に配列されている。
【0035】
画素2には、スイッチング用TFT11と、駆動用TFT12と、保持容量13と、第1の電極としての陽極24と、有機機能層30と、第2の電極としての陰極32と、を備えている。有機機能層30は、発光層を含んでいる。陽極24と、有機機能層30と、陰極32とによって有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)8が構成される。有機EL素子8では、陽極24から注入される正孔と、陰極32から注入される電子とが、発光層で再結合することにより発光が得られる。
【0036】
信号線17には、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路14が接続されている。また、走査線16には、シフトレジスターおよびレベルシフターを備えた走査線駆動回路15が接続されている。
【0037】
有機EL装置100では、走査線16が駆動されてスイッチング用TFT11がオン状態になると、信号線17を介して供給される画像信号が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT12を介して電源線18に導電接続したとき、電源線18から陽極24に駆動電流が流れ、さらに有機機能層30を通じて陰極32に電流が流れる。有機機能層30の発光層は、陽極24と陰極32との間に流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0038】
次に、有機EL装置100の概略構成を説明する。図2に示すように、有機EL装置100は、基板10上に、略矩形の平面形状を有する発光領域4を備えている。発光領域4は、有機EL装置100において、実質的に発光に寄与する領域である。有機EL装置100は、発光領域4の周囲に、実質的に発光に寄与しないダミー領域を備えていてもよい。
【0039】
発光領域4には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかの光を射出する画素2が配列されている。発光領域4の周囲には、2つの走査線駆動回路15と検査回路19とが配置されている。検査回路19は、有機EL装置100の作動状況を検査するための回路である。基板10の外周部には、陰極用配線33が配置されている。
【0040】
図3に示すように、基板10上には、格子状の形状を有する隔壁28が設けられている。隔壁28は、開口部28aを有しており、画素2の領域を区画している。画素2は、例えば、略矩形の平面形状を有している。画素2の矩形形状の4つの角は、丸く形成されていてもよい。画素2は、長辺と短辺とを有している。画素2の短辺に沿った方向が、走査線16の延在方向である。また、画素2の長辺に沿った方向が、信号線17の延在方向である。
【0041】
画素2の長辺に沿った方向において隣り合う画素2同士の間の領域には、補助隔壁29が設けられている。補助隔壁29は、例えば、ストライプ状に形成されており、画素2の短辺に沿った方向に延在している。補助隔壁29の延在方向における幅は、例えば5μm以下である。補助隔壁29は、画素2の長辺に沿った方向において隣り合う画素2同士の間の略中央部に位置している。
【0042】
また、画素2の長辺に沿った方向において隣り合う画素2同士の間の領域には、補助電極としての補助陰極34が配置されている。補助陰極34は、例えば、ストライプ状に形成されており、画素2の短辺に沿った方向に延在している。補助陰極34の延在方向における幅W1は、例えば15μm程度である。補助陰極34は、画素2の長辺に沿った方向において、画素2の配置ピッチと略同一のピッチで配置されている。
【0043】
画素2は、有機EL装置100の表示の最小単位であり、赤色(R)光を射出する画素2Rと、緑色(G)光を射出する画素2Gと、青色(B)光を射出する画素2Bとを有している(以下では、対応する色を区別しない場合には単に画素2とも呼ぶ)。有機EL装置100では、画素2R,2G,2Bから一つの画素群6が構成され、それぞれの画素群6において画素2R,2G,2Bのそれぞれの輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。
【0044】
図4(a)は、画素2の短辺に沿った方向における断面を示している。図4(a)に示すように、有機EL装置100は、基板10上に、駆動用TFT12と、層間絶縁層22と、平坦化層26と、陽極24と、隔壁28と、補助隔壁29(図4(b)参照)と、有機機能層30と、陰極32と、補助陰極34(図4(b)参照)と、保護層36と、カラーフィルター38と、封止部40とを備えている。有機EL装置100は、有機機能層30から発した光が封止部40側に射出されるトップエミッション型である。
【0045】
基板10は、有機EL装置100がトップエミッション型であることから、透光性材料および不透光性材料のいずれを用いてもよい。透光性材料としては、例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等があげられる。不透光性材料としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化等の絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、およびそのフィルム(プラスチックフィルム)等があげられる。基板10は、例えば酸化ケイ素(SiO2)等からなる保護層に覆われていてもよい。
【0046】
駆動用TFT12は、基板10上に、画素2に対応して設けられている。駆動用TFT12は、半導体膜12aと、ゲート絶縁層21と、ゲート電極12gと、ドレイン電極12dと、ソース電極12sとを備えている。半導体膜12aには、ソース領域と、ドレイン領域と、チャネル領域とが形成されている。半導体膜12aは、ゲート絶縁層21に覆われている。ゲート電極12gは、ゲート絶縁層21を間に挟んで平面視で半導体膜12aのチャネル領域に重なるように位置している。
【0047】
層間絶縁層22は、ゲート電極12gとゲート絶縁層21とを覆っている。ドレイン電極12dは、層間絶縁層22に設けられたコンタクトホールを介して、半導体膜12aのドレイン領域に導電接続されている。ソース電極12sは、同様にコンタクトホールを介して、半導体膜12aのソース領域に導電接続されている。なお、層間絶縁層22とドレイン電極12dとソース電極12sとを覆って、例えば窒化ケイ素(SiN)等からなる保護層が設けられていてもよい。
【0048】
平坦化層26は、層間絶縁層22とドレイン電極12dとソース電極12sとを覆うように形成されている。平坦化層26は、ドレイン電極12dおよびソース電極12sやその他の配線部による凹凸を反映しないほぼ平坦な表面を有している。平坦化層26は、例えばアクリル樹脂等からなる。なお、以降の説明では、基板10と、基板10上に形成された駆動用TFT12と層間絶縁層22と平坦化層26とを含めて基体20と呼ぶ。
【0049】
陽極24は、基体20上に画素2毎に設けられている。陽極24は、透光性導電材料からなり、例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる。なお、反射性をより高めるために、例えば反射層上に無機絶縁層を間に介して陽極24が積層された構成であってもよい。陽極24は、平坦化層26に設けられたコンタクトホールを介して駆動用TFT12に導電接続されている。
【0050】
隔壁28は、基体20上に形成されている。隔壁28は開口部28aを有しており、画素2の領域を区画している。隔壁28は、開口部28aの周囲に沿って陽極24の周縁部に所定幅で乗り上げるように形成されている。隔壁28の厚さは、例えば2μm程度である。なお、基体20と隔壁28との間に、開口部28aよりも一回り小さい開口部を有する無機絶縁層が設けられていてもよい。
【0051】
有機機能層30は、隔壁28と陽極24との上に配置されている。図示を省略するが、有機機能層30は、例えば、順に積層された正孔輸送層と発光層と電子輸送層とで構成されている。正孔輸送層は、例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等によって形成されている。発光層は、例えば、アルミノウムキノリノール錯体(Alq3)等をホスト材料とし、ルブレン等をドーパントとして形成されている。電子輸送層は、例えば、Alq3等によって形成されている。
【0052】
有機EL装置100では、正孔輸送層から注入される正孔と、電子輸送層から注入される電子とが発光層で再結合することにより、画素2R,2G,2Bにおいて同一色の発光が得られる。有機機能層30の発光色は、例えば白色である。有機機能層30は、画素2R,2G,2Bにおいて同一の膜で形成され、隔壁28と陽極24とを覆うように配置されている。
【0053】
陰極32は、隔壁28と有機機能層30とを覆うように形成されている。陰極32は、発光領域4(図2参照)よりも広い領域を有しており、基体20の外周部で陰極用配線33に導電接続されている。陰極32は、例えばマグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)からなる。陰極32の材料は、カルシウム、ナトリウム、リチウム、またはこれらの金属化合物等であってもよい。有機EL装置100がトップエミッション方式であることから、陰極32は、透光性が得られる層厚に形成されている。陰極32の層厚は、例えば100nm〜200nm程度である。
【0054】
保護層36は、陰極32と補助陰極34とを覆うように形成されている。保護層36は、陰極32よりも広い領域に形成されている。保護層36は、有機EL装置100の内部に酸素や水分等が浸入するのを防止する役割を果たす。保護層36は、高密度の膜で構成され、陰極32と補助陰極34との表面を良好に被覆していることが望ましい。保護層36は、無機材料からなり、例えば酸窒化ケイ素(SiON)からなる。
【0055】
一般に、有機EL素子は大気中の酸素や水分等により劣化することが知られている。このような劣化は、有機EL素子の電極や有機機能層の材料が酸素や水分等と反応して酸化あるいは変質することにより生じる。有機EL素子が劣化すると、例えば暗点やダークスポット等の不具合の発生や輝度低下、寿命低下の原因となる。
【0056】
ここで、暗点とは、例えば電極間ショート等の電気的な不具合により画素の領域が発光しなくなる状態を指す。また、ダークスポットとは、有機機能層の劣化や剥がれ等により、画素内の一部または複数の画素に跨った部分で発光しなくなる状態を指す。有機EL装置100では、大気中の酸素や水分の侵入による有機EL素子8の劣化を防止するため、保護層36によって有機EL素子8を保護している。
【0057】
保護層36上には、封止部40が配置されている。封止部40は、封止基板42と接着層44とを含む。封止基板42および接着層44は、外部からの衝撃等から有機EL素子8を保護する機能を有している。接着層44は、陰極32を覆うように形成されており、陰極32上に封止基板42を固定させている。接着層44は、例えば、透光性を有するウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等からなる。封止基板42は、透光性を有するガラス、またはアクリル系樹脂やスチレン系樹脂等の樹脂類からなる。
【0058】
カラーフィルター38は、封止基板42の有機EL素子8側に設けられている。カラーフィルター38は、赤色のカラーフィルター38Rと、緑色のカラーフィルター38Gと、青色のカラーフィルター38Bとを有している(以下では、対応する色を区別しない場合には単にカラーフィルター38とも呼ぶ)。カラーフィルター38R,38G,38Bは、画素2R,2G,2Bに対応して配置され、平面視で有機EL素子8に重なるように設けられている。
【0059】
有機EL素子8により発せられる光が、カラーフィルター38R,38G,38Bを透過することで、画素2R,2G,2BにおいてR、G、Bの3つの異なる色の光が射出される。なお、隣り合うカラーフィルター38R,38G,38B同士の間に、遮光層が設けられていてもよい。また、カラーフィルター38R,38G,38Bの有機EL素子8側の表面を覆うとともにその表面の凹凸を緩和する平坦化層が設けられていてもよい。
【0060】
なお、有機EL装置100では、有機機能層30から陰極32側に発せられた光は、封止部40側に射出される。また、有機機能層30から陽極24側に発せられた光は、例えば陽極24により反射されて、封止部40側に射出される。
【0061】
次に、図4(b)は、画素2の長辺に沿った方向における断面を示している。図4(b)に示すように、補助隔壁29は、隔壁28上に設けられている。補助隔壁29は、画素2の長辺に沿った方向における隔壁28の略中央部に位置している。したがって、隔壁28と補助隔壁29とで構成される積層体において、補助隔壁29は隔壁28の上面(有機機能層30に接する面)から有機機能層30側に凸状に張り出した部分となっている。補助隔壁29の厚さは、例えば100nm〜2μm程度である。
【0062】
有機機能層30は、隔壁28と補助隔壁29とを覆うように形成されている。また、陰極32は、有機機能層30を覆うように形成されている。したがって、有機機能層30および陰極32は、隔壁28の上面から張り出した補助隔壁29の形状を反映した表面を有している。陰極32は、平面視で補助隔壁29に重なり封止部40側に張り出した張出し部32aを有している。したがって、張出し部32aは、補助隔壁29の延在方向に沿って延在している。張出し部32aの延在方向における幅W2は、補助隔壁29の幅と同じかやや大きく、例えば5μm程度である。
【0063】
補助陰極34は、陰極32の封止部40側の表面に接して設けられている。補助陰極34は、平面視で隔壁28と補助隔壁29とに重なっている。したがって、補助陰極34は、有機機能層30および陰極32と同様に、隔壁28の上面から張り出した補助隔壁29の形状を反映した表面を有している。陰極32の張出し部32aは、画素2の長辺に沿った方向において補助陰極34の略中央部に位置している。補助陰極34は、その延在方向において発光領域4(図2参照)よりも広い領域を有しており、基体20の外周部で陰極用配線33に導電接続されている。
【0064】
補助陰極34は、陰極32の表面に接して設けられることで、陰極32の延在方向に沿って電流が流れる際の電圧降下を小さくする役割を果たす。これにより、有機EL装置100において、発光の輝度や効率が高められるとともにより均一な発光が得られる。補助陰極34は、例えばアルミニウム(Al)等の高い導電性を有する金属材料で形成される。補助陰極34の層厚は、例えば100nm〜600nm程度である。
【0065】
保護層36は、陰極32と補助陰極34とを覆うように形成されている。したがって、保護層36は、陰極32および補助陰極34と同様に、隔壁28の上面から張り出した補助隔壁29の形状を反映した表面を有している。
【0066】
<有機EL装置の製造方法>
次に、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法について図を参照して説明する。図5は、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明するフローチャートである。図6から図13は、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図である。詳しくは、図6、図7、および図13は、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造プロセスを示す図である。なお、図6、図7、および図13では、図の左側に図3のA−A’線に沿った断面を示し、図の右側に図3のB−B’線に沿った断面を並べて示す。図8は、補助陰極の形成に用いる蒸着装置の一例の構成を説明する図である。図9および図10は、補助陰極の形成に用いる蒸着マスクの構成を説明する図である。図11および図12は、補助陰極の形成方法を説明する図である。
【0067】
図5に示すように、有機EL装置の製造方法は、基体準備工程S10と、陽極形成工程S20と、隔壁形成工程S30と、有機機能層形成工程S40と、陰極形成工程S50と、補助陰極形成工程S60と、保護層形成工程S70と、カラーフィルター形成工程S80と、封止部形成工程S90と、を含んでいる。
【0068】
基体準備工程S10では、基板10上に駆動用TFT12と層間絶縁層22と平坦化層26とを公知の方法で形成し、基体20を準備する。
【0069】
次に、陽極形成工程S20では、図6(a)に示すように、基体20上に画素2毎に陽極24を形成する。まず、平坦化層26を貫通しドレイン電極12dに到達するコンタクトホールを形成する。続いて、スパッタリング法等によりITOからなる導電性膜を成膜し、フォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより陽極24が形成される。陽極24は、コンタクトホールを介してドレイン電極12dに導電接続される。
【0070】
次に、隔壁形成工程S30では、図6(b)に示すように、基体20上に隔壁28を形成し、隔壁28上に補助隔壁29を形成する。まず、スピンコート法等により、基体20と陽極24とを覆うようにアクリル樹脂等からなる隔壁層を形成する。そして、隔壁層をパターニングすることにより画素2の領域を区画する開口部28aを形成する。これにより、隔壁28が形成され、開口部28aにおいて陽極24が露出する。開口部28aは、陽極24の領域よりも一回り小さく形成される。
【0071】
続いて、上記と同様の方法で、隔壁28上に補助隔壁29を形成する。補助隔壁29は、画素2の長辺に沿った方向において、隔壁28の略中央部に配置するように形成される。画素2の長辺に沿った方向における補助隔壁29の幅は、後の陰極形成工程S50で形成される陰極32の張出し部32aの幅W2が所定の値となるように設定される。なお、パターニングを2回行う方法やハーフトーンマスクを用いる方法等により、同一の隔壁層から隔壁28と補助隔壁29とを形成してもよい。
【0072】
次に、有機機能層形成工程S40では、図7(a)に示すように、陽極24と隔壁28と補助隔壁29とを覆うように有機機能層30を形成する。例えば真空蒸着法により、白色の発光が得られる材料を用いて、少なくとも発光領域4内に正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを順に積層して成膜する。形成された有機機能層30の表面には、隔壁28の上面から張り出した補助隔壁29の形状が反映される。なお、有機EL装置100が発光領域4の周囲にダミー領域を備えている場合は、有機機能層30を発光領域4とダミー領域とに亘って形成してもよい。
【0073】
次に、陰極形成工程S50では、図7(b)に示すように、例えば真空蒸着法により、有機機能層30を覆うように、Mg−Ag合金等からなる陰極32を形成する。これにより、陽極24と有機機能層30と陰極32とで有機EL素子8が形成される。陰極32には、隔壁28の上面から張り出した補助隔壁29の形状が反映された張出し部32aが形成される。
【0074】
張出し部32aの延在方向における幅W2は、後の補助陰極形成工程S60で形成される補助隔壁29の幅W1と、補助陰極形成工程S60におけるパターニングの位置精度に基づき設定される。例えば、補助陰極34の幅W1が15μmであり、パターニングの位置精度が±5μmである場合、張出し部32aの幅W2は5μm以内に設定される。張出し部32aの幅W2をこのように設定すれば、補助陰極34の形成位置が±5μmの範囲でずれた場合でも、張出し部32aは補助陰極34の形成位置の範囲内に相対的に配置されることになる。
【0075】
次に、補助陰極形成工程S60では、図8に示すように、蒸着装置60内で2枚の異なる蒸着マスクを用いて真空蒸着法により、陰極32上に補助陰極34を形成する。補助陰極形成工程S60は、蒸着マスク50を用いて成膜する第1の成膜工程と、蒸着マスク54(図10参照)を用いて成膜する第2の成膜工程とを含む。なお、図8においては、基体20および蒸着マスク50の形状の詳細を省略している。
【0076】
まず、蒸着装置60を説明する。蒸着装置60は、保持部62と蒸発源64とを備えている。保持部62は、蒸着装置60内の上部に設けられている。保持部62により、蒸着マスク50と基体20とが保持される。蒸着マスク50は、基体20よりも底部側に配置され、張出し部52(図9(b)参照)が設けられた側が基体20に対向するように保持される。基体20は、蒸着マスク50よりも上部側に配置され、基体20(陰極32)の表面が蒸着マスク50に対向するように保持される。
【0077】
蒸発源64は、蒸着装置60内の底部に設けられている。蒸発源64には、補助陰極34を形成するAl等の材料が収容される。蒸発源64に収容された補助陰極34の形成材料は、例えば高周波誘導加熱方式等の加熱手段により加熱されて、蒸着装置60内の上部に向かって蒸発する。このとき、基体20(陰極32)の表面が蒸発源64に対向するように配置されているので、蒸発源64から蒸発した補助陰極34の形成材料は基体20(陰極32)の表面に堆積する。これにより、補助陰極34が所定の膜パターンで成膜される。
【0078】
次に、図9および図10を参照して、蒸着マスク50,54を説明する。蒸着マスク50と蒸着マスク54とは、略同一の外形寸法を有している。図9(a)は、蒸着マスク50を基体20に対向配置される側、つまり張出し部52が設けられた側から見た平面図である。図9(b)は、図9(a)のD−D’線に沿った断面図である。図10は、蒸着マスク54と基体20とが互いに対向して配置された状態において、図9(a)と同様に、蒸着マスク54を基体20に対向配置される側から見た平面図である。
【0079】
図9(a)および図9(b)に示すように、蒸着マスク50は、開口部51と張出し部52とを有している。開口部51は、スリット状の平面形状を有しており、蒸着マスク50をその厚さ方向に貫通して形成されている。図9(a)に示すように、開口部51は、ストライプ状に配置されており、補助陰極34の所定の膜パターンの一部に対応している。開口部51の幅は、補助陰極34の幅W1と同じである。換言すれば、開口部51の幅W1によって、補助陰極34の幅が決まる。
【0080】
開口部51は、その延在方向に沿って所定のピッチおよび所定の間隔で配置されている。開口部51の延在方向において隣り合う開口部51同士の間の間隔Gは、開口部51の延在方向における長さFよりも小さい。開口部51の延在方向と交差する方向における開口部51の配置ピッチは、補助陰極34の延在方向と交差する方向における配置ピッチに対応している。なお、開口部51の長さFおよび隣り合う開口部51同士の間隔Gは、画素2の大きさや配置ピッチ等により適宜設定される。
【0081】
張出し部52は、開口部51の延在方向と交差する方向に延在している。図9(b)に示すように、張出し部52は、蒸着マスク50の他の領域から基体20に対向配置される側に高さHだけ張り出している。張出し部52の高さHは、例えば1μm程度である。蒸着マスク50が基体20に対向配置されたとき、張出し部52の表面52aが、基体20から張り出した陰極32の張出し部32a(図12(a)参照)に接触する。
【0082】
図10に示すように、蒸着マスク54は、開口部55と張出し部56とを有している。開口部55および張出し部56は、蒸着マスク50の開口部51および張出し部52に対して配置位置が異なっているが、隣り合う開口部55同士の間の間隔G、および開口部55の延在方向における長さFは同じである。開口部55の幅は、開口部51の幅と同様に、補助陰極34の幅W1と同じである。
【0083】
開口部55の延在方向における配置ピッチは開口部51の配置ピッチと同じであるが、開口部51とは略半ピッチずれて配置されている。したがって、蒸着マスク54を蒸着マスク50に平面的に重ねた場合、開口部55の延在方向における両側で、開口部51に幅Jだけ重なることとなる。このとき、J≒(F−G)/2である。張出し部56は、開口部55の延在方向と交差する方向に延在している。
【0084】
蒸着マスク50,54は、例えばシリコンからなる。シリコンは、金属に比べて引張り強度が高いので、引張り力に対する蒸着マスク50,54の延び量を小さくすることができ、厚さを低減できる。また、蒸着するワークがシリコン基板やガラス基板である場合、蒸着マスク50,54とワークとの熱膨張率がほぼ同じになるので、周囲温度の影響をほとんど受けることなく高精度に膜パターンを形成できる。
【0085】
次に、図11および図12を参照して、補助陰極34の形成方法を説明する。図11(a)は、第1の成膜工程において基体20に蒸着マスク50が対向配置された状態を蒸着マスク50側から見た平面図である。図11(b)は、第2の成膜工程において基体20に蒸着マスク54が対向配置された状態を蒸着マスク54側から見た平面図である。
【0086】
なお、図11(a),(b)における基体20の平面は、図3に示す有機EL装置100の平面に対応している。図11(a)における蒸着マスク50の平面は、図9(a)に示す蒸着マスク50を張出し部52が設けられていない側から見た平面であり、開口部51の領域を右下方向の斜線で示している。また、図11(b)における蒸着マスク54の平面は、図10に示す蒸着マスク54を張出し部56が設けられていない側から見た平面であり、開口部55の領域を左下方向の斜線で示している。
【0087】
図12(a),(b)は、第1の成膜工程において基体20に蒸着マスク50が対向配置された状態を示す断面図である。図12(a)における基体20の断面は、図11(a)のB−B’線に沿った断面を示しており、図4(b)に示す有機EL装置100の断面に対応している。図12(a)における蒸着マスク50の断面は、図9(a)および図11(a)のE−E’線に沿った断面を示している。図12(b)における基体20の断面は、図11(a)のC−C’線に沿った断面を示しており、図12(b)における蒸着マスク50の断面は、図9(a)および図11(a)のD−D’線に沿った断面を示している。なお、図12(a),(b)における基体20と蒸着マスク50との位置関係は、図8における基体20と蒸着マスク50との位置関係と上下が反転している。
【0088】
まず、図11(a)に示すように、基体20に蒸着マスク50を対向配置して第1の成膜工程を行う。第1の成膜工程では、基体20(陰極32)の表面のうち、開口部51に平面視で重なる領域に補助陰極34が成膜される。このとき、陰極32の張出し部32aと蒸着マスク50の張出し部52とは、平面視で互いに交差する位置関係となる。そして、張出し部32aのうち張出し部52に平面視で重なる部分32bに、張出し部52の表面52aが接触する。なお、この張出し部32aにおける一部としての部分32bは、第2の成膜工程において補助陰極34が成膜される部分である。
【0089】
ここで、蒸着マスク50が基体20の表面に接触することにより、基体20表面に既に形成されている陰極32や有機機能層30が傷や剥がれ等の損傷を受けることがある。陰極32や有機機能層30が傷や剥がれ等の損傷を受けると、損傷を受けた部分が画素2同士の間の領域に位置している場合であっても、後の保護層形成工程S70で形成される保護層36が損傷を受けた部分を被覆しきれないと、そこから水分等が侵入して有機EL素子8が劣化し、暗点やダークスポット等の不具合、輝度低下や寿命低下の原因となる。
【0090】
本実施形態では、図12(a),(b)に示すように、基体20(陰極32)の表面のうち、張出し部32aが他の部分よりも蒸着マスク50側に張り出している。これにより、蒸着マスク50が基体20の張出し部32a以外の領域に接触するのを避けることができる。そして、蒸着マスク50が接触するのは、張出し部32aのうちの一部(部分32b)である。このため、画素2の領域において陰極32や有機機能層30が損傷を受けるリスクを回避できるのは勿論のこと、画素2同士の間の領域においても陰極32や有機機能層30が損傷を受けるリスクを低減できる。
【0091】
また、図12(b)に示すように、蒸着マスク50の張出し部52が基体20に接触するので、蒸着マスク50と基体20の張出し部32aとの間には張出し部52の高さHに相当する間隙ができる。また、基体20の張出し部32a以外の領域においては、蒸着マスク50との間のクリアランスが張出し部52の高さHに相当する分だけ大きくなる。このため、蒸着マスク50の基体20に対向する面に異物が付着している場合でも、その異物が基体20の表面に接触するのをクリアランスが大きくなった分だけ避けることができる。これにより、基体20の表面に異物が接触することにより陰極32や有機機能層30が損傷を受けるリスクを低減できる。
【0092】
次に、第1の成膜工程に続いて、図11(b)に示すように、基体20に蒸着マスク54を対向配置して第2の成膜工程を行う。第2の成膜工程では、基体20(陰極32)の表面のうち、開口部55に平面視で重なる領域に補助陰極34が成膜される。第2の成膜工程においても、第1の成膜工程と同様に、画素2の領域および画素2同士の間の領域において陰極32や有機機能層30が損傷を受けるリスクを低減できる。
【0093】
なお、蒸着マスク54の開口部55は蒸着マスク50の開口部51に幅Jだけ重なる位置関係にあるので、この幅Jの範囲では第1の成膜工程および第2の成膜工程において補助陰極34が成膜される。これにより、補助陰極34をその延在方向に沿って切れ目のないように形成できる。
【0094】
ここで、第2の成膜工程において、蒸着マスク54の張出し部56が基体20に接触するのは、第1の成膜工程で成膜された補助陰極34のうち張出し部32a上に位置する一部(部分34b)である。したがって、第2の成膜工程では、蒸着マスク54が接触するこの部分34bにおいて、その下層の陰極32や有機機能層30が第1の成膜工程で形成された補助陰極34により保護される。これにより、蒸着マスク54が接触することによる陰極32や有機機能層30の損傷を抑えることができる。
【0095】
また、第1の成膜工程で蒸着マスク50が接触した部分32bには、第2の成膜工程において補助陰極34が成膜される。したがって、第1の成膜工程で蒸着マスク50が接触することにより陰極32や有機機能層30が損傷を受けた場合でも、この部分32bを補助陰極34によって覆うことができる。
【0096】
ここで、図12(a)に示すように、蒸着マスク50が接触する部分32bは、形成される補助陰極34の延在方向における幅W1に対して略中央部に位置している。補助陰極34の幅W1は15μm程度であり、部分32b(張出し部32a)の幅W2は5μm程度である。基体20に対する蒸着マスク50の相対的位置のずれが補助陰極34の延在方向と交差する方向に±5μmの範囲内であれば、蒸着マスク50に接触する部分32bの相対的な位置は、補助陰極34が形成される領域(幅W1の範囲)内に収まることになる。したがって、基体20に対する蒸着マスク50の相対的位置がずれた場合でも、蒸着マスク50が接触する部分を補助陰極34が形成される領域内とすることができる。蒸着マスク54についても同様である。
【0097】
これにより、基体20の表面の蒸着マスク50,54が接触する部分が補助陰極34により保護されるとともに、補助陰極34上に形成される保護層36の被覆性がより良好になるので、この部分から水分等が侵入することによる陰極32や有機機能層30の損傷の発生を抑えることができる。以上の工程により、図13(a)に示すように、補助陰極34が形成される。
【0098】
次に、保護層形成工程S70では、図13(b)に示すように、陰極32と補助陰極34とを覆うように保護層36を形成する。例えばイオンプレーティング法により、SiON等の材料を用いて、陰極32よりも広い領域に成膜する。
【0099】
次に、カラーフィルター形成工程S80では、図4(a),(b)に示すように、封止基板42上にカラーフィルター38R,38G,38Bを形成する。図4(a),(b)では、有機EL装置100が完成した状態を示している。カラーフィルター38R,38G,38Bは、例えばR、G、Bの異なる色の光を透過させるような顔料を含む感光性樹脂を塗布してパターン加工することにより形成する。
【0100】
なお、互いに隣り合うカラーフィルター38R,38G,38B同士の間に、例えばクロム(Cr)等からなる遮光層を形成してもよい。また、カラーフィルター38R,38G,38Bの表面を覆うとともにその表面の凹凸を緩和する平坦化層をさらに形成してもよい。
【0101】
次に、封止部形成工程S90では、図4(a),(b)に示すように、保護層36上に接着層44を介して封止基板42を配置し、封止部40を形成する。封止基板42は、カラーフィルター38R,38G,38Bが有機EL素子8に対向するように配置される。以上により、有機EL装置100が完成する。
【0102】
上記第1の実施形態に係る有機EL装置の構成および製造方法によれば、以下の効果が得られる。
【0103】
(1)基体20の表面のうち画素2同士の間に位置する張出し部32aが他の部分よりも蒸着マスク50,54側に張り出している。このため、補助陰極34を形成する際に、蒸着マスク50,54が基体20の張出し部32a以外の領域に接触するのを避けることができる。これにより、蒸着マスク50,54が接触することにより、画素2の領域において陰極32や有機機能層30が損傷を受けるリスクを回避できる。
【0104】
(2)基体20の張出し部32aにおいても、蒸着マスク50,54が一部の領域(部分32b,34b)以外に接触するのを避けることができる。これにより、張出し部32aにおいても陰極32や有機機能層30が損傷を受けるリスクを低減できる。
【0105】
(3)蒸着マスク50,54と基体20とのクリアランスを、張出し部52,56の高さHに相当する分だけ大きくできる。このため、蒸着マスク50,54の基体20に対向する面に異物が付着している場合でも、その異物が基体20の表面に接触するリスクを低減できる。
【0106】
(4)第1の成膜工程で蒸着マスク50が部分32bに接触することにより陰極32や有機機能層30が損傷を受けた場合でも、第2の成膜工程でこの部分32bを補助陰極34によって覆うことができる。第2の成膜工程では、蒸着マスク54が接触する部分34bが第1の成膜工程で形成された補助陰極34により保護される。これにより、蒸着マスク50,54が接触する部分が補助陰極34により保護されるとともに、補助陰極34上に形成される保護層36の被覆性がより良好になるので、この部分から水分等が侵入することによる陰極32や有機機能層30の損傷の発生を抑えることができる。
【0107】
(5)蒸着マスク50,54が接触する部分32b,34bは、形成される補助陰極34の延在方向における幅W1に対して略中央部に位置している。これにより、基体20に対する蒸着マスク50,54の相対的位置がずれた場合でも、蒸着マスク50が接触する部分を補助陰極34が形成される領域内とすることができる。
【0108】
以上により、有機EL素子8における暗点やダークスポット等の不具合の発生や輝度低下、寿命低下が抑えられるので、信頼性がより高い有機EL装置100を提供することができる。
【0109】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る有機EL装置の構成について図を参照して説明する。図14は、第2の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。図14は、図3のB−B’線に沿った断面に対応している。
【0110】
第2の実施形態に係る有機EL装置200は、第1の実施形態に係る有機EL装置100に対して、補助隔壁の代わりに基体にダミーパターンを設けることで基体の張出し部を形成している点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0111】
有機EL装置200は、図14に示すように、基体20にダミーパターン23が設けられており、基体20上に、陽極24と、隔壁28と、有機機能層30と、陰極32と、補助陰極34と、保護層36と、カラーフィルター38と、封止部40とを備えている。
【0112】
ダミーパターン23は、図4(a)に示すドレイン電極12dやソース電極12sと同様に、層間絶縁層22上に設けられている。ダミーパターン23は、平面図での図示を省略するが、補助隔壁29と同様に、画素2の短辺に沿った方向に延在するストライプ状に形成されており、隣り合う画素2同士の間の略中央部に位置している。ダミーパターン23は、層間絶縁層22の上面から平坦化層26側に凸状に張り出した部分となっている。
【0113】
ダミーパターン23の上層に位置する平坦化層26と隔壁28と有機機能層30と陰極32と補助陰極34と保護層36とは、ダミーパターン23の形状を反映した表面を有している。これにより、第1の実施形態と同様に、陰極32に張出し部32aが形成される。ダミーパターン23の幅や厚さは、第1の実施形態における補助隔壁29と同じ程度である。ただし、上層に位置する平坦化層26や隔壁28により、ダミーパターン23による凸部がある程度緩和されるのを考慮して適宜設定される。
【0114】
次に、第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法について説明する。第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法は、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法に対して、基体準備工程S10においてダミーパターン23を形成する点と、隔壁形成工程S30において補助隔壁29を形成しない点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。第1の実施形態と共通する工程については説明を省略する。
【0115】
基体準備工程S10において、ダミーパターン23は、例えばドレイン電極12dやソース電極12sを形成する工程と同一の工程で形成される。また、隔壁形成工程S30においては、補助隔壁29を形成する工程が不要となる。したがって、第1の実施形態に係る有機EL装置100の製造方法に比べて、製造工程が1工程少なくなり製造工数が低減される。
【0116】
第2の実施形態に係る有機EL装置200の構成および製造方法によれば、第1の実施形態に係る有機EL装置100と同様の効果が得られる。なお、ダミーパターン23を設ける代わりに、基体20が備える配線部の引回しパターンを利用する構成としてもよい。
【0117】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る有機EL装置の構成について図を参照して説明する。図15は、第2の実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。図15は、図3のA−A’線に沿った断面に対応している。
【0118】
第3の実施形態に係る有機EL装置300は、第1の実施形態に係る有機EL装置100に対して、陽極の下層に反射層を備え、反射層と陰極との間に光共振器を備えている点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0119】
有機EL装置300は、図15に示すように、基体20上に、反射層25と、絶縁層27と、陽極24と、隔壁28と、有機機能層30と、陰極32と、補助陰極34(図4(b)参照)と、保護層36と、カラーフィルター38と、封止部40とを備えている。
【0120】
反射層25は、基体20上に画素2毎に設けられている。反射層25は、画素2R,2G,2Bから高い輝度の光が射出されるように、高い光反射性を有していることが好ましい。反射層25は、例えば、銀または銀を含む合金からなる。反射層25の材料は、アルミニウムまたはアルミニウムを含む合金であってもよい。
【0121】
絶縁層27は、基体20と反射層25とを覆っている。絶縁層27は、無機材料からなり、例えばSiO2やSiN等からなる。
【0122】
陽極24は、絶縁層27上に設けられている。陽極24は、画素2R,2G,2Bに対応して層厚が異なっている。ここでは、画素2R,2G,2Bに対応させて、陽極24R,24G,24Bと呼ぶこととする。陽極24Gの層厚は陽極24Bの層厚よりも厚く、陽極24Rの層厚は陽極24Gの層厚よりも厚い。
【0123】
陰極32は、光透過性と光反射性とを有している。つまり、陰極32は、半透過反射性を有するハーフミラー状である。
【0124】
有機EL装置300では、反射層25と陰極32との間に、有機機能層30で発せられた光を共振させる光共振器が形成されている。有機機能層30で発せられた光は、反射層25と陰極32との間で往復し、その光学的距離Lに対応した共振波長の光が増幅されて、陰極32側に射出される。このため、射出される光の輝度を高めることができるとともに、幅が狭いスペクトルを有する光を取り出すことができる。
【0125】
光共振器における共振波長は、反射層25と陰極32との間の光学的距離Lを変えることによって調整が可能である。有機機能層30で発せられた光のうち取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとすると、次のような関係式が成り立つ。Φ(ラジアン)は、有機機能層30で発せられた光が光共振器の両端(例えば、反射層25と陰極32と)で反射する際に生じる位相シフトを表す。
(2L)/λ+Φ/(2π)=m(mは整数)
【0126】
ここでは、画素2R,2G,2Bに対応させて、光学的距離LR,LG,LBと呼ぶこととする。有機EL装置300では、R、G、Bの波長の光を射出する画素2R,2G,2Bにおいて、光共振器におけるそれぞれの共振波長が所定の波長λとなるように、陽極24R,24G,24Bの層厚を適宜設定することにより光学的距離LR,LG,LBを調整する構成となっている。
【0127】
R、G、Bの光のうち最も波長が長いのはRの波長の光であるので、画素2R,2G,2Bの中では、画素2Rにおける光学的距離LRが最も長く設定される。このため、補助陰極形成工程S60にける蒸着マスク50,54と基体20とのクリアランスは、画素2Rにおいて最も小さくなる。また、基体20が備える配線部の引回しパターン等と平面的に重なる部分では、蒸着マスク50,54と基体20とのクリアランスがさらに小さくなる場合があり得る。
【0128】
したがって、第3の実施形態に係る有機EL装置300では、第1の実施形態に係る有機EL装置100に比べて、蒸着マスク50,54と基体20とのクリアランスが小さくなる画素2R等において、蒸着マスク50,54や蒸着マスク50,54に付着した異物が基体20に接触することにより、陰極32や有機機能層30が損傷を受けるリスクが高いといえる。
【0129】
第3の実施形態に係る有機EL装置300においても、第1の実施形態に係る有機EL装置100と同様に、基体20の表面のうち画素2同士の間に位置する張出し部32a(図12(a)参照)を有しており、この張出し部32aが他の部分よりも蒸着マスク50,54側に張り出している。このため、補助陰極34を形成する際に、蒸着マスク50,54が基体20の張出し部32a以外の領域に接触するのを避けることができる。これにより、画素2Rの領域においても、蒸着マスク50,54が接触することにより陰極32や有機機能層30が損傷を受けるリスクを回避できる。
【0130】
また、蒸着マスク50,54は、基体20に対向する側に張出し部52,56(図12(b)参照)を有している。このため、蒸着マスク50,54と基体20とのクリアランスを、張出し部52,56の高さHに相当する分だけ大きくできるので、蒸着マスク50,54の基体20に対向する面に異物が付着している場合に、画素2Rの領域においても、その異物が基体20の表面に接触するリスクを低減できる。
【0131】
なお、第3の実施形態に係る有機EL装置300において、第2の実施形態に係る有機EL装置200と同様に、ダミーパターン23を設けることにより基体20の表面に張出し部32aを形成する構成としてもよい。このような構成においても、上記と同様の効果が得られる。
【0132】
<電子機器>
上述した有機EL装置100,200,300は、例えば、図16に示すように、電子機器としての携帯電話機500に搭載して用いることができる。携帯電話機500は、表示部502に有機EL装置100,200,300を備えている。この構成により、表示部502を有する携帯電話機500は、輝度や寿命の低下が少なく信頼性が高い。
【0133】
また、電子機器は、電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオカメラ、カーナビゲーション装置の車載モニター等であってもよい。
【0134】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0135】
(変形例1)
上記実施形態の有機EL装置は、補助陰極34が、陰極32上であって画素2同士の間の領域に、画素2の短辺に沿った方向にストライプ状に形成された構成を有していたが、上記の形態に限定されない。補助陰極34は、陰極32の表面に接していれば、有機機能層30上に形成されていてもよい。このような構成であっても、補助陰極形成工程S60において、蒸着マスク50,54が接触することにより有機機能層30が損傷を受けるリスクを低減できる。
【0136】
また、補助陰極34は、画素2同士の間の領域にストライプ状以外の形状で形成されていてもよいし、画素2同士の間の領域だけでなく画素2の領域に形成されていてもよい。このような構成であっても、補助陰極形成工程S60において、蒸着マスク50,54が一部の領域(部分32b,34b)以外に接触するのを避けることができる。
【0137】
(変形例2)
上記実施形態の有機EL装置の製造方法では、蒸着マスク50,54は張出し部52,56を有するシリコンマスクであったが、上記の形態に限定されない。蒸着マスクは、張出し部を有していなくてもよい。また、蒸着マスクは、シリコンマスクでなくメタルマスクであってもよい。このような構成の蒸着マスクであっても、補助陰極形成工程S60において、蒸着マスクが一部の領域(張出し部32a)以外に接触するのを避けることができる。
【0138】
(変形例3)
上記実施形態の有機EL装置の製造方法では、補助陰極形成工程S60の第1の成膜工程および第2の成膜工程において異なる2つの蒸着マスク50,54を成膜に用いたが、上記の形態に限定されない。例えば基体20に対して蒸着マスクを移動させたり回転させたりする等により、蒸着マスクの基体20に対する相対的な位置を異ならせることで、第1の成膜工程および第2の成膜工程において同一の蒸着マスクを用いるようにしてもよい。また、補助陰極形成工程S60が第2の成膜工程以降の成膜工程をさらに有し、それらの成膜工程において異なる3つ以上の蒸着マスクを用いるようにしてもよい。
【0139】
(変形例4)
上記実施形態の有機EL装置の製造方法では、有機機能層30を白色の発光が得られる材料を用いて真空蒸着法により形成したが、上記の形態に限定されない。有機機能層30を、画素2R,2G,2Bに対応して、R、G、Bの3色の異なる発光が得られる材料を用いて形成してもよい。また、有機機能層30を、インクジェット法やスピンコート法等により塗布する方法を適用して形成してもよい。
【0140】
(変形例5)
上記実施形態の有機EL装置では、画素2は、略矩形の平面形状を有していたが、上記の形態に限定されない。画素2は、円形や楕円形等の他の平面形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0141】
2…画素、20…基体、24…第1の電極としての陽極、30…有機機能層、32…第2の電極としての陰極、32a…張出し部、32b…一部としての部分、34…補助電極としての補助陰極、36…保護層、50,54…蒸着マスク、52,56…張出し部、100,200,300…有機EL装置、500…電子機器としての携帯電話機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体上に配列された画素と、
前記基体上に、前記画素毎に配置された第1の電極と、
前記第1の電極上に配置された少なくとも発光層を含む有機機能層と、
前記有機機能層上に配置された第2の電極と、
前記第2の電極の表面に接して設けられ、少なくとも互いに隣り合う前記画素同士の間の領域に配置された補助電極と、を備えた有機EL装置の製造方法であって、
蒸着マスクを用いた蒸着法により前記補助電極を形成する工程を有し、
前記補助電極を形成する工程では、前記蒸着マスクは、前記補助電極を形成する前の前記基体の前記蒸着マスクに対向する面のうち、互いに隣り合う前記画素同士の間の領域の一部に接触することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記蒸着マスクが接触する前記一部は、前記補助電極を形成する前の前記基体において、前記蒸着マスクに対向する面の前記一部を除く領域よりも前記蒸着マスク側に張り出していることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記蒸着マスクは、前記基体に対向する側に張り出した張出し部を有し、
前記張出し部が前記基体の前記一部に接触することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記補助電極を形成する工程は、前記蒸着マスクを用いて順に行う第1の成膜工程と第2の成膜工程とを少なくとも含み、
前記第1の成膜工程において前記蒸着マスクが接触する前記一部は、前記第2の成膜工程において前記基体上に前記補助電極が成膜される領域に位置しており、
前記第2の成膜工程において前記蒸着マスクが接触する前記一部は、前記第1の成膜工程において前記基体上に前記補助電極が成膜された領域に位置していることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記蒸着マスクが接触する前記一部は、形成される前記補助電極の延在方向と交差する方向において、形成される前記補助電極の略中央部に位置していることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記第1の成膜工程と前記第2の成膜工程とでは、異なる前記蒸着マスクを用いることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4または5に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記第1の成膜工程と前記第2の成膜工程とでは、同一の前記蒸着マスクを用い、前記蒸着マスクの前記基体に対する相対的な位置を異ならせることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記表面に接して前記補助電極が配置された前記第2の電極を覆って形成された保護層をさらに備えたことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
基体と、
前記基体上に配列された画素と、
前記基体上に、前記画素毎に配置された第1の電極と、
前記第1の電極上に配置された少なくとも発光層を含む有機機能層と、
前記有機機能層上に配置された第2の電極と、
前記第2の電極の表面に接して設けられ、少なくとも互いに隣り合う前記画素同士の間の領域に配置された補助電極と、を備え、
前記補助電極が接する前記基体側の表面のうち互いに隣り合う前記画素同士の間の領域の一部が、前記一部を除く領域よりも張り出していることを特徴とする有機EL装置。
【請求項10】
請求項9に記載の有機EL装置であって、
前記一部は、蒸着マスクを用いた蒸着法により前記補助電極を形成する際に前記蒸着マスクが接触する部分であることを特徴とする有機EL装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の有機EL装置であって、
前記一部は、前記補助電極の延在方向と交差する方向における前記補助電極の略中央部に位置していることを特徴とする有機EL装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−225416(P2010−225416A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71466(P2009−71466)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】