説明

有色飲料排水の脱色処理方法

【課題】安価に優れた脱色処理効果を得ることができる有色飲料排水の脱色処理方法を提供する。
【解決手段】原水は、凝集反応槽1に導入され、次段の沈殿槽2の沈降汚泥と、PACと、pH調整用アルカリとしての水酸化ナトリウムとが添加され、pH6.5〜7程度に維持されて凝集反応処理される。凝集反応水は、沈殿槽2に導入され、沈降分離処理される。沈降した汚泥の一部は反応槽に添加され、その他は余剰汚泥として排出される。沈殿槽2からの上澄水は、濾過器3で濾過される。この濾過器3の濾過水は、次亜塩素酸ナトリウムが添加され、次いで触媒が充填された触媒塔5に通水され、処理水として取り出される。触媒としてはニッケル等の金属の過酸化物が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有色飲料排水を脱色処理する方法に関するものであり、特に凝集処理及び酸化処理により有色飲料排水を脱色する脱色処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、色度成分を含む水から色度成分を除去する方法としては、硫酸アルミニウムや塩化第二鉄等の凝集剤を添加して凝集沈殿処理する方法や、活性炭による吸着処理法、塩素やオゾン等の酸化剤による酸化分解法などがある。
【0003】
また、特開2004−181283号、特開2004−181284号、特開2004−181285号には次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を有色排水に添加すると共に、過酸化金属触媒によって色度成分を酸化処理する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2004−181283号
【特許文献2】特開2004−181284号
【特許文献3】特開2004−181285号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した、従来技術における凝集沈殿処理により色度成分を除去する方法にあっては、処理の際、汚泥が発生するため、その処理費用がかかるという問題があった。そのため、かかる課題の解決が望まれていた。
【0005】
本発明者は、従来技術における凝集沈殿処理方法に、上述した、色度成分の酸化処理方法を併せて行うことにより、処理コストをかけることなく、色度を十分に低下させる方法を提供できることを見出した。即ち、本発明は安価に優れた脱色処理効果を得ることができる有色飲料排水の脱色処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の有色飲料排水の脱色処理方法は、有色飲料排水を、無機凝集剤による凝集処理工程と、酸化剤による酸化処理工程とにより脱色処理することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の有色飲料排水の脱色処理方法は、請求項1において、凝集処理工程の反応槽に金属水酸化物含有汚泥を添加することを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の有色飲料排水の脱色処理方法は、請求項1又は2において、酸化剤は塩素系酸化剤であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の有色飲料排水の脱色処理方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記酸化処理工程において過酸化金属を触媒として用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、処理コストをかけることなく、安価に優れた脱色処理効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明において処理対象とする有色飲料排水としては、ビール、発泡酒、ウィスキー、焼酎、ワイン、ジュース、非アルコール系炭酸飲料等の製造工程からの排水が例示される。この排水の色度は、通常50〜2000程度である。
【0013】
本発明では、この有色飲料排水を無機凝集剤による凝集処理と、酸化剤による酸化処理とによって脱色処理する。この凝集処理と酸化剤とはいずれを先に行ってもよい。
【0014】
この有色飲料排水を凝集処理するための無機凝集剤としては、硫酸バンドやPAC(ポリ塩化アルミニウム)等のアルミニウム化合物が、処理水を着色させないところから好適であり、特に、中和反応させるためのアルカリ添加量が少なくて足りるところからPACが好適である。なお、塩化第2鉄は、色度を増加させる場合があるので、好ましくない。上記の中和用アルカリとしては、水酸化ナトリウム等が好適である。
【0015】
アルミニウム化合物よりなる無機凝集剤による凝集処理を行う場合、凝集反応槽に水酸化アルミニウム含有汚泥を添加することにより、凝集処理に必要とする凝集添加量を減少させることができる。これは、添加される水酸化アルミニウム含有汚泥が凝集核として作用するためである。
【0016】
この水酸化アルミニウム含有汚泥としては、有色飲料排水を凝集反応後、固液分離した際に生じる固液分離汚泥(例えば沈降汚泥)が好適である。この固液分離汚泥は、脱水処理することなく、そのまま凝集反応槽に添加すればよい。
【0017】
通常の有色飲料排水をPACで凝集処理する場合、PAC添加量は400〜600mg/L程度であるが、固液分離汚泥を有色飲料排水1m当り1〜3L特に1.5〜2.5L程度添加することにより、PAC添加量は200〜300mg/L程度で十分なものとなる。
【0018】
有色飲料排水を酸化剤によって脱色処理する場合の酸化剤としては、塩素系酸化剤が好適であり、例えば、塩素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウムなどの次亜塩素酸塩;亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸塩;塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸カルシウムなどの塩素酸塩;過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムなどの過塩素酸塩などを挙げることができる。これらの中で、次亜塩素酸塩は適度の酸化性を有するので、好適に使用することができる。
【0019】
塩素系酸化剤の添加量は、塩素換算値として、2〜50mg−Cl/L特に5〜50mg−Cl/L程度が好適である。
【0020】
本発明では、有色飲料排水に酸化剤を添加すると共に、触媒、好ましくは金属酸化物触媒、特に好ましくは金属過酸化物触媒と接触させるのが好適である。
【0021】
金属過酸化物触媒としては、例えば、過酸化コバルト、過酸化ニッケル、過酸化銅、過酸化銀などの1種又は2種以上、好ましくは過酸化ニッケル及び/又は過酸化コバルトを挙げることができ、特に過酸化ニッケルが好ましい。
【0022】
この金属過酸化物触媒は、リン酸カルシウム系化合物、ゼオライト、チタニア、γ−アルミナ、α−アルミナなどの担体、好ましくはリン酸カルシウム系化合物に担持させて使用することが好ましい。ここで、リン酸カルシウム系化合物としては、ヒドロキシアパタイト(Ca10(POOH)、クロロアパタイト(Ca10(POCl)、フロロアパタイト(Ca10(PO)等のアパタイト、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸カルシウム、好ましくはヒドロキシアパタイト、クロロアパタイト、フロロアパタイト等のアパタイトが挙げられるが、その他、天然産出リン鉱石のような天然鉱物を用いることができる。これらの担体は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0023】
このような金属酸化物担持触媒の金属担持量は、担体の重量当たり0.01〜10重量%とすることが好ましい。この担持量が0.01重量%未満では触媒金属量が少なく、十分な触媒作用を得ることができず、10重量%を超える担持量で担持させることは、技術的に困難である。
【0024】
このような触媒の調製方法を、ヒドロキシアパタイトを担体とする過酸化ニッケル担持触媒を例として、以下に説明する。
【0025】
ヒドロキシアパタイトへのニッケルの担持は、ニッケルの硫酸塩、硝酸塩、塩化物などの水溶液又はこれらの混合水溶液と接触させることにより行う。接触方法としては、ヒドロキシアパタイトの粒子をニッケル化合物水溶液に浸漬する方法、或いは、ヒドロキシアパタイトの粒子をカラムなどに充填し、ニッケル化合物水溶液を一過式又は循環式に通水する方法などが挙げられる。ニッケル化合物水溶液の濃度や接触時間は、ヒドロキシアパタイト上に必要量のニッケルが担持されるように設定すれば良い。ニッケル化合物の水溶液で処理したヒドロキシアパタイトを、水溶液と分離した後、必要に応じて水洗する。
【0026】
次いで、このようにして得られたニッケル担持ヒドロキシアパタイトを、酸化剤を含むアルカリ水溶液と接触させることにより、過酸化ニッケル担持触媒を得る。この場合の接触方法としては、ニッケルイオンを担持したヒドロキシアパタイトを酸化剤を含むアルカリ水溶液に浸漬する方法、或いは、このヒドロキシアパタイトをカラムなどに充填し、酸化剤を含むアルカリ水溶液を一過式又は循環式に通水する方法などが挙げられる。ここで、酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、塩素ガス、電解により発生させた塩素など、遊離塩素を発生する各種の塩素系酸化剤が好適に用いられる。また、アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液を用いることができる。
【0027】
図1は、無機凝集剤(PAC)による凝集処理後に酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)による酸化処理を行う処理装置の一例を示すフロー図である。
【0028】
原水は、凝集反応槽1に導入され、次段の沈殿槽2の沈降汚泥と、PACと、pH調整用アルカリとしての水酸化ナトリウムとが添加され、pH6.5〜7程度に維持されて凝集反応処理される。凝集反応水は、沈殿槽2に導入され、沈降分離処理される。沈降した汚泥の一部は反応槽に添加され、その他は余剰汚泥として排出される。沈殿槽2からの上澄水は、濾過器3で濾過される。
【0029】
この濾過器3の濾材としては、アンスラサイト、砂などが好適である。
【0030】
この濾過器3の濾過水は、調整槽4において次亜塩素酸ナトリウムが添加され、次いで触媒が充填された触媒塔5に通水され、処理水として取り出される。
【0031】
なお、図1のフローは本発明の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
例えば、金属酸化物触媒による接触酸化は、触媒塔ではなく、金属酸化物触媒を添加して撹拌する反応槽で行っても良い。触媒塔や濾過器は各々2塔以上設けることも可能である。
【0033】
なお、本発明の有色飲料排水の脱色処理方法によると、排水中の色度成分と共にCOD成分も分解除去することができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0035】
実施例1
図1のフローに従って、有色飲料排水として色度950、CODMn85mg/L飲料水製造工程排水を処理した。なお、触媒塔5内の金属酸化物触媒として、以下の方法で調製した過酸化ニッケル担持ヒドロキシアパタイト触媒を用いた。
【0036】
[過酸化ニッケル担持ヒドロキシアパタイト触媒の調製]
(1) 担体として、ヒドロキシアパタイト(キシダ化学社製特級,粒径0.5mm)1000gを採り、SS成分がなくなるまで洗浄した。
(2) 硫酸ニッケル(NiSO・6HO)112g(25g−Ni/1000g−dry担体)を800mLの超純水に溶解した。これを上記(1)の水洗した担体に添加し、20hr放置した(担体に対して2.5重量%−Ni添加)。
(3) 上記(2)の上澄み液を廃棄した。
(4) 上記(3)で分離した担体を、1000mLの超純水で3度洗浄した。
(5) 35gの水酸化ナトリウム(NaOH)を500mLの超純水に溶解し、400mLの10重量%次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を添加した溶液を上記(4)の担体に添加し、20hr放置した。
(6) (5)の上澄み液を廃棄した後、洗浄水のpHが10になるまで分離した担体を超純水で洗浄した。
【0037】
処理条件は次の通りとした。
反応槽1の滞留時間:10分
PAC添加量:300mg/L
NaOH添加量:pH6.5〜7となるように制御
汚泥添加量:1.8L/m−排水
沈殿槽2の滞留時間:300分
濾過器3の濾材:アンスラサイト
調整槽4の滞留時間:30分
NaClO添加量:55mg−Cl/L
触媒塔5のSV:10h−1
【0038】
処理結果(処理水質等)を表1に示す。
【0039】
比較例1(塩化第2鉄による凝集処理のみ)
次の比較例2において、無機凝集剤としてPACの代りに塩化第2鉄(濃度38wt%)を1200mg/L添加した他は比較例2と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0040】
比較例2(PACによる凝集処理のみ)
無機凝集剤としてPAC1200mg/Lを添加し、凝集反応のみを行ったものを比較例2とする。
即ち、実施例1において、沈殿槽2からの上澄水をこの比較例2の処理水とした。
水質測定結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の通り、本発明によると、色度を十分に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の有色飲料排水の脱色処理方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0044】
1 反応槽
2 沈殿槽
5 触媒塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色飲料排水を、無機凝集剤による凝集処理工程と、酸化剤による酸化処理工程とにより脱色処理することを特徴とする有色飲料排水の脱色処理方法。
【請求項2】
請求項1において、凝集処理工程の反応槽に金属水酸化物含有汚泥を添加することを特徴とする有色飲料排水の脱色処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、酸化剤は塩素系酸化剤であることを特徴とする有色飲料排水の脱色処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記酸化処理工程において過酸化金属を触媒として用いることを特徴とする有色飲料排水の脱色処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−43919(P2008−43919A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224352(P2006−224352)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】