説明

服用性が改善された錠剤

【課題】従来技術によって製造された塩酸サルポグレラート錠剤と比較して、1.医薬成分である塩酸サルポグレラートを50重量%以上含有し、2.医薬成分の溶出率が試験開始15分後に80%以上であり、3.錠剤の硬度が80N以上である錠剤の無包装、温度60℃、湿度75%RHで保存後の類縁物質の含有率が低減し、4.塩酸サルポグレラートの溶出率が保存前とほぼ変わらず、5.錠剤の硬度の減少が抑制されている塩酸サルポグレラート錠剤を提供することを課題とする。
【解決方法】平均粒子径が1〜100μmの塩酸サルポグレラート、マンニトールおよびクエン酸を使用して塩酸サルポグレラート含有錠剤を製造することにより、課題は解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(±)-2-(Dimethylamino)-1-[[o-(m-methoxyphenethyl)phenoxy]methyl]ethyl hydrogen succinate hydrochlorideで表される塩酸サルポグレラート(化学式1)を有効成分とした錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に水分等に不安定な性質を示す主薬が含まれた錠剤においては、完全に水分等と錠剤とが接触しないことが求められている。その様な錠剤においては、乾燥剤等の添加や、PTP包装をアルミピロー包装したもの、あるいは瓶詰め等の形態で包装されていることが多い。このような最終包装形態がなされることによって、錠剤の長期の保存が可能となっている。
【0003】
しかしながら、実際に患者には事前に薬局などで最終包装を開封し、PTP包装、もしくは無包装の錠剤を分包機で包装することによって処方される例がほとんどである。その際、患者が実際に服用するまでの期間は最終包装形態とは異なっているため、最終包装形態から開封した後の類縁物質量を含めた安定性を担保することも非常に重要となってくる。医薬成分である塩酸サルポグレラートは水分に対して非常に不安定な性質を示しており、開封後(無包装)の安定性が非常に重要となってきている。
【0004】
現在、塩酸サルポグレラートを有効成分として含有している錠剤としては、特許文献1や非特許文献1等により公知となっている。また、塩酸サルポグレラートを有効成分として含有している錠剤(以下、塩酸サルポグレラート錠剤と称す)としてすでに製造販売がなされているアンプラーグ(登録商標)錠100mg錠剤(田辺三菱製薬株式会社製)は、錠剤硬度42N(温度60℃、湿度75%RHにて無包装で3日間保存後に測定)、薬物の溶出率は試験開始15分後にて23.69%(温度60℃、湿度75%RHにて無包装で3日間保存後に水を試験液として使用して測定)、類縁物質の含有量は14.16%(温度60℃、湿度75%RHにて無包装で14日間保存後に測定)であることが出願人による実験から判明している。これらの結果はいずれも錠剤の性質が錠剤の製造直後の結果と比較して変化していることを示している。そのため、これらの錠剤の性質の変化をより小さくし、服用者にとってより安全な錠剤を提供することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明において用いられる医薬成分である塩酸サルポグレラートは、一般的に慢性動脈閉塞症に伴う種々の虚血性諸症状を改善や、間歇性跛行の改善、帯状疱疹後神経痛に伴う疼痛の軽減、虚血性脳血管障害における血栓・塞栓形成の抑制を目的として使用することが出来る。その作用は血管平滑筋及び血小板における5−HTレセプターに対しての特異的な拮抗作用である。その結果、塩酸サルポグレラートの投与により血管収縮抑制作用や血小板凝集抑制作用を示すことが知られている。
【0016】
本発明において用いられる医薬成分である塩酸サルポグレラートとは、(化学式1):(±)-2-(Dimethylamino)-1-[[o-(m-methoxyphenethyl)phenoxy]methyl]ethyl hydrogen succinate hydrochlorideと同義である。本化合物は例えば特開昭58−32847号公報の実施例2に記載の製造方法等によって容易に入手することが可能である。
【0017】
【化1】

【0018】
本発明に用いられる平均粒子径が1〜100μmである塩酸サルポグレラートは、直接製造することも可能であるが、必要に応じてジェットミルやハンマーミルなどを用いた公知の医薬成分の粉砕方法により平均粒径が100μmより大きい塩酸サルポグレラートを粉砕して得ることも可能である。
【0019】
本発明の平均粒子径は粒度測定装置(レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定が可能である。本発明で用いられる塩酸サルポグレラートの平均粒子径の定義は、測定した塩酸サルポグレラート試料から得られた各粒子の粒子径の値の平均値を算出したものである。ただし、本発明における発明の効果を奏するためには、好ましくは全粒子の粒子数の50%が1〜100μmの粒子径を有する必要があり、より好ましくは全粒子の粒子数の70%が1〜100μmの粒子径を有する必要があり、さらに好ましくは全粒子の粒子数の90%が1〜100μmの粒子径を有する必要があり、最も好ましくはそれらに加えて本発明に用いられる塩酸サルポグレラートの平均粒子径が20〜100μmである必要がある。
【0020】
本発明に用いられる錠剤に添加する添加剤としては、糖アルコールと有機酸が挙げられる。本発明に用いられる糖アルコールとしては、例えばマンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール等が挙げられる。特に好ましい糖アルコールはマンニトールである。また有機酸としては、例えばクエン酸、リン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、乳酸、グルタミン酸などが挙げられる。特に好ましい有機酸はクエン酸である。
【0021】
本発明の効果を奏する限り、糖アルコールと有機酸の錠剤への添加量は限定されない。ただし、有機酸は塩酸サルポグレラートとの反応し塩酸サルポグレラートの類縁物質を生成する場合がある。好ましい有機酸の添加量は、例えば有機酸がクエン酸の場合、錠剤注の塩酸サルポグレラートの重量を100とした場合に対して0.1〜6.0であり、好ましくは0.2〜4.5であり、より好ましくは0.2〜3.0である。
【0022】
本発明の塩酸サルポグレラート製剤として平均粒子径が1〜100μmである塩酸サルポグレラートと錠剤に添加する添加剤としてマンニトールおよびクエン酸を含有した場合、無包装、温度60℃、湿度75%RHの条件で14日間保存後の錠剤の錠剤中の塩酸サルポグレラートの溶出率が保存前とほぼ同程度に保持することが可能であり、また錠剤の類縁物質の含有量を抑制することが可能である。またさらに、無包装、温度60℃、湿度75%RHの条件で3日間保存後の錠剤の硬度の低下が抑制されている。また、温度60℃、湿度75%RHの条件で7日間、14日間保存後の錠剤中の塩酸サルポグレラートの類縁物質の含有率を低減させられることが可能である。
【0023】
本発明の塩酸サルポグレラート製剤として平均粒子径が1〜100μmである塩酸サルポグレラートと添加剤としてマンニトールおよびクエン酸を含有した錠剤の、無包装、温度60℃、湿度75%RHの条件で14日間保存後の錠剤の錠剤中の塩酸サルポグレラートの溶出率は、少なくとも試験開始15分後にて70重量%以上であり、好ましくは試験開始15分後にて75重量%以上である。またさらに、無包装、温度60℃、湿度75%RHの条件で14日間保存後の錠剤の硬度が少なくとも50N以上であり、好ましくは55N以上であり、さらに好ましくは60N以上である。また、無包装、温度60℃、湿度75%RHの条件で7日間保存後の塩酸サルポグレラート類縁物質の含有量は、錠剤あたり少なくとも7重量%未満であり、好ましくは6重量%未満であり、さらに好ましくは5重量%未満である。また、無包装、温度60℃、湿度75%RHの条件で14日間保存後の塩酸サルポグレラート類縁物質の含有量は、錠剤あたり少なくとも14重量%未満であり、好ましくは12重量%未満であり、さらに好ましくは10重量%未満であり、最も好ましくは9重量%未満である。
【0024】
本発明における塩酸サルポグレラートの類縁物質は、例えば(化2)によって表される化合物などが挙げられる。ただし、類縁物質に関してはこれに限らない。
【0025】
【化2】

【0026】
本発明は、糖アルコールおよび有機酸以外にも、発明の効果を奏する限り、必要に応じて添加剤を適宜含有させることが可能である。添加剤としては、例えば賦刑剤、滑沢剤、流動化剤、崩壊剤、結合剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤およびpH調整剤などが挙げられる。
【0027】
本発明における賦刑剤は、例えば、糖類、リン酸カルシウム類、結晶セルロース類、デンプン類、リン酸ナトリウム類およびゼラチンなどが挙げられる。
【0028】
本発明における滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、グリセリンおよびステアリルアルコールなどが挙げられる。
【0029】
本発明における流動化剤とは、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、酸化チタン、ステアリン酸、トウモロコシゲルおよび重質無水ケイ酸などが挙げられる。
【0030】
本発明における崩壊剤は、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、マクロゴール類およびポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0031】
本発明における結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、デキストリン、アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース類、メタクリル酸コポリマー類およびポリベート80などが挙げられる。
【0032】
本発明における界面活性剤は、例えば、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート類、リン酸水素ナトリウム類およびリン酸水素カリウム類などが挙げられる。
【0033】
本発明における着色剤は、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色4号、アルミニウムキレート、酸化チタンおよびタルクなどが挙げられる。
【0034】
本発明における甘味剤は、例えば、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチンおよびスクラロースなどが挙げられる。
【0035】
本発明におけるpH調整剤は、例えば、コハク酸、酒石酸、乳酸、乳酸塩、フマル酸、グルタミン酸、リン酸ナトリウム類、リン酸カリウム類および乳酸類などが挙げられる。
【0036】
本発明における錠剤の硬度を向上させる添加剤を「含有させる」とは、本発明の効果を奏することが可能な状態において錠剤に本添加剤を含有させることであって、素錠に本添加剤を含有させることである。
【0037】
本発明における錠剤の組成として特に好ましいのは、平均粒子径が1〜100μmである塩酸サルポグレラート、マンニトール、クエン酸およびステアリン酸マグネシウムを含む錠剤などが挙げられる。
【0038】
本発明における錠剤の組成としてマンニトールおよびクエン酸を含むことにより、従来技術によって得られた塩酸サルポグレラート含有錠剤と比較して、少なくとも塩酸サルポグレラートの類縁物質の含有量を低減させることが可能である。
【0039】
本発明における錠剤の硬度とは、具体的には硬度計(錠剤破壊強度測定器)によって測定がなされ、その硬度の単位はN(ニュートン)で表される。
【0040】
本発明における錠剤は、各種コーティングを施すことが可能である。
【0041】
本発明における各種コーティングに使用される各種コーティング剤としては、例えば水溶性コーティング剤、脂溶性コーティング剤、遮光コーティング剤などが挙げられる。
【0042】
本発明における水溶性コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0043】
本発明における脂溶性コーティング剤としては、例えば、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルコポリマー分散液、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートおよびメタクリル酸コポリマー等が挙げられる。
【0044】
本発明における遮光コーティング剤としては、例えば、酸化チタンまたは黄色三二酸化鉄、黄色5号、赤色3号およびタルク等が挙げられる。
【0045】
本発明に係るサルポグレラート含有錠剤は、例えば以下の製造法によって製造が可能である。すなわち、本発明の製造法としては、平均粒子径が1〜100μmである塩酸サルポグレラート及びバレイショデンプンをクエン酸水溶液で造粒させ、乾燥後、D−マンニトール及びステアリン酸マグネシウムを加えて混合する。打錠後、フィルムコーティングを行って錠剤を得た。
【0046】
本発明の製造法によれば、打錠障害を発生することなく、本発明に係るサルポグレラート含有錠剤を得ることが可能となる。
【0047】
本発明における打錠障害の例としては、ステッキングやキャッピングなどが挙げられる。
【0048】
本発明における「溶出率」は、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)に従い、以下の条件によって行われた試験結果から求めることが可能である。
試験条件
試験液量 :900mL
パドル回転数 :50回転/分
温度 :37.0℃
試験液 :0.2%(w/w)塩化ナトリウム、0.7%(v/v)塩酸水溶液(pH1.2)、水
【0049】
本発明における、塩酸サルポグレラート含有錠剤の投与量は、年齢、体重、性別、健康状態、投与時間、投与方法、食事、排泄速度、他の薬物との組合せ、患者が投与時に治療を行っている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められるが、一般的にはその1日投与量は100〜500mg/人であることが多い。従って、本発明の経口投与製剤には、上記投与量に応じた量の塩酸サルポグレラートを適度含有させた錠剤とすることが好ましい。
【実施例】
【0050】
実施例1
(1)平均粒子径180μmの塩酸サルポグレラートをハンマーミルにて解砕し、平均粒子径を20μmにした。(2)その後、流動層造粒乾燥機(MP−01,パウレック社製)に解砕後のサルポグレラート塩酸塩500部、及びバレイショデンプン50.0部を投入し、クエン酸7.5部を溶解したクエン酸水溶液1500部を噴霧して造粒した後に乾燥した。(3)得られた造粒品を目開き850μmで篩過し、D−マンニトール172.5部及びステアリン酸マグネシウム20.0部を添加してV型混合機で混合後、ロータリー打錠機(菊水製作所社製)で打錠した。得られた錠剤をハイコーター(HCT30N,フロイント社製)に投入し、ヒプロメロース(TC−5)31.5部、マクロゴール(6000)6.3部、酸化チタン6.3部及びタルク4.9部を水493.5部に溶解して得られた溶解液を噴霧してフィルムコーティングを行い、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤を得た。
【0051】
実施例2
(1)平均粒子径180μmの塩酸サルポグレラートをハンマーミルにて解砕し、平均粒子径を50μmにした。(2)その後は実施例1と同様の製法を実施し、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤を得た。
【0052】
実施例3
(1)平均粒子径180μmの塩酸サルポグレラートをハンマーミルにて解砕し、平均粒子径を80μmにした。(2)その後は実施例1と同様の製法を実施し、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤を得た。
【0053】
実施例4
(1)平均粒子径180μmの塩酸サルポグレラートをハンマーミルにて解砕し、平均粒子径を100μmにした。(2)その後は実施例1と同様の製法を実施し、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤を得た。
【0054】
実施例5
(1)平均粒子径180μmの塩酸サルポグレラートをハンマーミルにて解砕し、平均粒子径を20μmにした。(2)その後、流動層造粒乾燥機(MP−01,パウレック社製)に解砕後のサルポグレラート塩酸塩500部、及びバレイショデンプン50.0部を投入し、予め加温した水575部に対してクエン酸7.5部およびD−マンニトール172.5部を溶解して得た溶解液を噴霧して造粒した後に乾燥した。(3)得られた造粒品を目開き850μmで篩過し、ステアリン酸マグネシウム20.0部を添加してV型混合機で混合後、ロータリー打錠機(菊水製作所社製)で打錠した。得られた錠剤をハイコーター(HCT30N,フロイント社製)に投入し、ヒプロメロース(TC−5)31.5部、マクロゴール(6000)6.3部、酸化チタン6.3部及びタルク4.9部を水493.5部に溶解して得られた溶解液を噴霧してフィルムコーティングを行い、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤を得た。
【0055】
比較例1
(1)平均粒子径180μmの塩酸サルポグレラート500部、及びバレイショデンプン50.0部を流動層造粒乾燥機(MP−01,パウレック社製)に投入し、クエン酸7.5部を溶解したクエン酸水溶液1500部を噴霧して造粒及び乾燥した。(2)得られた造粒品を目開き850μmで篩過し、D−マンニトール172.5部及びステアリン酸マグネシウム20.0部を添加してV型混合機で混合後、ロータリー打錠機(菊水製作所社製)で打錠することで、塩酸サルポグレラート含有錠剤を得た。
【0056】
比較例2
アンプラーグ(登録商標)錠(製造販売:田辺三菱製薬株式会社)を用いた。
【0057】
試験例1:塩酸サルポグレラート含有錠剤の溶出試験
各実施例、比較例および参考例によって製造された塩酸サルポグレラート含有錠剤(100mg製剤)の溶出試験を日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)に従って行った。具体的には、測定条件を、試験液量900mL、パドル回転数50回転/分、温度37.0℃とした。また、試験液としては0.2%(w/w)塩化ナトリウム、0.7%(v/v)塩酸水溶液(pH1.2)を使用した。得られた結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

(溶出率:溶出量/錠剤中の含有量)
【0059】
上記(表1)の結果の如く、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤は従来技術の塩酸サルポグレラート含有錠剤と比較して同程度の溶出率を示すことが明らかとなった。
【0060】
試験例2:塩酸サルポグレラート含有錠剤の苛酷条件における錠剤硬度試験
各実施例、比較例および参考例によって製造された塩酸サルポグレラート含有錠剤(100mg製剤)を温度60℃、湿度75%RHの条件で錠剤を無包装の状態にて3日間保存の後の各種錠剤と保存前の各種錠剤の双方について、錠剤硬度試験を硬度計:TABLET TESTER 6D(Schleuniger製)を用いて測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
上記(表2)の結果の如く、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤は従来技術の塩酸サルポグレラート含有錠剤と比較して、保存前の錠剤の硬度が参考例1の錠剤と同程度の硬度を有しており、かつ錠剤の硬度が保存後も60N以上に維持されていることが明らかとなった。
【0063】
試験例3:類縁物質含有量測定試験
各実施例、比較例および参考例によって製造された塩酸サルポグレラート含有錠剤(100mg製剤)の塩酸サルポグレラート類縁物質の含有量を次に示す測定条件によって測定した。
【0064】
試験物質(塩酸サルポグレラート100mg製剤)1錠を移動相50mLに溶かした。その後、初めのろ液2mLを除いた後、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。この液を液体クロマトグラフィーを用いて類縁物質含有量を測定した。
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:272nm)
カラム:内径約4.6mm,長さ15cmのステンレス管に約5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする
カラム温度:40℃ 付近の一定温度
移動相:水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液(1300:700:1)
流量:サルポグレラートの保持時間が約8分になるように調整する
サンプル注入量:10μL
【0065】
前記の試験によって測定された面積比によって求まった塩酸サルポグレラート類縁物質の含有率の結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

(単位:%)
【0067】
上記(表3)の結果の如く、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤は従来技術の塩酸サルポグレラート含有錠剤と比較して、塩酸サルポグレラート類縁物質の含有量が低減されていることが明らかとなった。
【0068】
試験例4:保存安定性試験(類縁物質生成量)
各実施例、比較例および参考例によって製造された塩酸サルポグレラート含有錠剤(50mg製剤および100mg製剤)の保存安定性試験を行った。
保存から3日目、7日目、14日目の時点で製剤を以下の条件によって測定し、安定性の試験を行った。保存条件は、温度60℃、湿度75%RHの条件で錠剤を無包装の状態にて保存した。
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:272nm)
カラム:内径約4.6mm,長さ15cmのステンレス管に約5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする
カラム温度:40℃ 付近の一定温度
移動相:水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液(1300:700:1)
流量:サルポグレラートの保持時間が約8分になるように調整する
サンプル注入量:10μL
前記の試験によって測定された面積比によって求まった塩酸サルポグレラート類縁物質の含有率の結果を表4に示す。
【0069】
【表4】

(単位:%)
【0070】
上記(表4)の結果の如く、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤は従来技術の塩酸サルポグレラート含有錠剤と比較して、長期保存を行った場合の類縁物質等の生成が低減し、安定性が向上していることが明らかとなった。
【0071】
試験例5:保存安定性試験(溶出率)
各実施例および各比較例によって製造された塩酸サルポグレラート含有錠剤(50mg製剤および100mg製剤)の保存安定性試験を行った。保存から14日目の時点で製剤を以下の条件によって測定し、安定性の試験を行った。
試験条件
保存条件は、温度60℃、湿度75%RHの条件で保存した。保存は無包装の状態とし、上記保存期間後に試験例1に記載の溶出試験の測定条件によって錠剤の溶出率を測定した。また、試験液には水を用いた。
【0072】
【表5】

(溶出率:溶出量/錠剤中の含有量)
【0073】
上記(表5)の結果の如く、本発明の塩酸サルポグレラート含有錠剤は従来技術の塩酸サルポグレラート含有錠剤と比較して、温度60℃、湿度75%RHの条件という苛酷な条件で14日間保存した場合においても錠剤の溶出率が保存前の錠剤と比較して変化が小さく、安定性が向上していることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、従来技術によって製造された塩酸サルポグレラート錠剤と比較して、製造直後の類縁物質の錠剤中の含有率が0.20重量%以下に低減されており、かつ温度60.0℃、湿度75%RHで3日間保存後の錠剤硬度が60N以上に維持されていて、かつ温度60.0℃、湿度75%RHで7日間保存後の類縁物質の錠剤中の含有率が5重量%以下に低減されており、かつ温度60.0℃、湿度75%RHで14日間保存後の類縁物質の錠剤中の含有率が10重量%以下に低減されており、かつ医薬成分である塩酸サルポグレラートを50重量%以上含有し、医薬成分の溶出率が保存前に試験開始15分後にて80%以上であり、温度60.0℃、湿度75%RHで14日間保存後においても試験開始15分後にて75%以上である塩酸サルポグレラート錠剤を提供することが可能となった。
【0075】
これにより従来技術によって製造された塩酸サルポグレラート錠剤と比較して、より服用感が向上し、かつ長期保存に優れた塩酸サルポグレラート含有錠剤の提供が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸サルポグレラートを含有する錠剤であって、
前記塩酸サルポグレラートの平均粒子径が1〜100μmであり、かつ錠剤に添加する添加剤として糖アルコールおよび有機酸を含有する塩酸サルポグレラート含有錠剤。
【請求項2】
前記糖アルコールがマンニトールである、請求項1記載の塩酸サルポグレラート含有経口投与剤。
【請求項3】
前記有機酸がクエン酸である、請求項1および請求項2記載の塩酸サルポグレラート含有錠剤。
【請求項4】
前記塩酸サルポグレラート含有錠剤が、医薬成分である塩酸サルポグレラートの試験開始15分後の溶出率が無包装、温度60℃、湿度75%RHの条件で14日間保存後に70%以上である特徴を有する、請求項1〜請求項3記載の塩酸サルポグレラート含有錠剤。
【請求項5】
前記塩酸サルポグレラート含有錠剤が、錠剤全体の重量に対して塩酸サルポグレラートを少なくとも50重量%含有し、かつ錠剤中の類縁物質の含有率が、無包装、温度60℃、湿度75%RHの条件で14日間保存後に10%未満である特徴を有する、請求項1〜請求項4記載の塩酸サルポグレラート含有錠剤。
【請求項6】
塩酸サルポグレラートを含有する錠剤の製造方法であって、
平均粒子径が1〜100μmである塩酸サルポグレラート、マンニトールおよびクエン酸を含む組成物を打錠する方法を備える、塩酸サルポグレラート含有錠剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−209137(P2009−209137A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24517(P2009−24517)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】