説明

木材乾燥方法および木材乾燥装置

【課題】出来るだけ加温空気の外部排気を抑制し且つ木材の水分を蒸散させた水蒸気を外部放散出来るようにして無駄なエネルギーを消費しないで木材を効率的に乾燥出来る木材乾燥方法および木材乾燥装置を提供することを目的とする。
【解決手段】断熱部位で囲繞され内部空気を保温出来て内部を加熱して木材の水分を蒸散させ木材を乾燥させる乾燥室において、壁部と天井部に水蒸気を容易に透過出来る断熱部材21を挟んで室内側に空気の透過を抑制出来るとともに水蒸気を透過出来る通気抑制透湿部材22と室外側に透湿機能を有する断熱材保持部材23とで構成された通気抑制断熱部位を配設することにより、水蒸気と空気の分子の大きさの差異と空気中の水蒸気分圧と水蒸気の特性を利用して、乾燥室の室内空気の外部放散を抑制し且つ水蒸気を外部放散させて木材を乾燥出来る様にしたことを最も主要な特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を人工的に乾燥させる木材乾燥方法および木材乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からの主なる木材の人工的な乾燥手段としては、高温空気や高温蒸気を使用する高温乾燥手段、減圧して行う減圧乾燥手段、高周波を用いて行う高周波乾燥手段等が知られている。そして、比較的簡便である高温乾燥手段が普及していて、減圧乾燥手段や高周波乾燥手段は、特殊な装置および乾燥工程管理等が必要であり、費用および乾燥工程管理の難度等から余り普及していない。
【0003】
しかし、普及している従来の高温乾燥手段においては、例えば、特開2005−225103号、特開2004−330473号、特開2001−162604号公報等に見られる様に、加温方法に蒸気または石油やガスの燃焼もしくは電気ヒーターを用いる等の差異や加温空気を送風機等で循環させる手段等の差異はあるとしても、多くが、加温した空気または蒸気を供給し乾燥させようとする木材の水分を水蒸気化させ加温された空気もろとも排気するとともに新たな加温した空気または蒸気を供給することを繰り返して木材を乾燥させる方法である。このため、前記乾燥手段は、室温が高温になるとともに、加温空気を排気し低温空気を加熱して供給するというエネルギー使用効率的には非常にエネルギーロスの大きい乾燥手段であると言える。
【0004】
それは、近年の廃気による地球環境悪化と化石燃料資源枯渇等の問題への対策が必要な現状を考えると再考すべき課題点のある手段であると考えられる。このため、出来るだけエネルギーを消費しないでも木材を効率的に乾燥出来る乾燥手段の提供が望まれている。
【特許文献1】特開2005−225103号公報
【特許文献2】特開2004−330473号公報
【特許文献3】特開2001−162604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、前述の従来技術の問題点を鑑みて、木材を乾燥する乾燥装置において、出来るだけ加温空気の外部排気を抑制し且つ木材の水分を蒸散させた水蒸気を外部放散出来るようにして無駄なエネルギーを消費しないで木材を効率的に乾燥出来る木材乾燥方法および木材乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決し、その目的を達成する手段として、本発明の木材乾燥方法は、室内を加熱して木材の水分を蒸散させ木材を乾燥させる断熱部位で囲繞された乾燥室の壁部と天井部において、水蒸気と空気の分子の大きさの差異と空気中の水蒸気分圧と水蒸気の特性を利用して、室内空気の外部放散を抑制し且つ水蒸気を外部放散させて木材を乾燥出来る様にしたことを最も主要な特徴とする。
【0007】
付加して、前記乾燥室の壁部と天井部において、室内側に空気の透過を抑制出来るとともに水蒸気を透過出来る通気抑制透湿部材を配設し且つその外部側に断熱材として水蒸気を容易に透過出来る断熱材を配設した通気抑制透湿断熱部位を有することを特徴とする。
【0008】
そして、必要に応じて、前記乾燥室の天井部に太陽光が透過出来る太陽光透過部材を用いて太陽光の受光により乾燥室内を加温出来る様にしたことを特徴とする。
【0009】
そして、本発明の木材乾燥装置は、木材を乾燥させる乾燥室が室内を保温出来る断熱部位で囲繞されるとともに加熱装置を有する木材乾燥装置で、乾燥室の壁部と天井部において室内側に空気の透過を抑制出来るとともに水蒸気を透過出来る通気抑制透湿部材を配設し且つその外部側に断熱材として水蒸気を容易に透過出来る断熱材を配設した通気抑制透湿断熱部位を有することにより、木材の水分を蒸散させ室内空気の外部放散を抑制し且つ水蒸気を外部放散させて木材を乾燥出来る様にしたことを最も主要な特徴とする。
【0010】
そして、必要に応じて、前記通気抑制透湿断熱部位の室内側に防湿部材を用いて通気抑制透湿断熱部位の有効面積を調節出来る様にしたことを特徴とする。
【0011】
更に、必要に応じて、前記乾燥室の天井部に太陽光が透過出来る太陽光透過部材を用いて太陽光の受光により乾燥室内を加温出来る様にしたことを特徴とする。
【0012】
更に、必要に応じて、前記乾燥室の下部に車輪を付設して移動出来る様にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、木材の乾燥において加温された空気を排出することなく発生した水蒸気のみを外部放散させ木材が乾燥出来て、空気を加温するためのエネルギーロスを低減出来るので、エネルギーの消費が少なくても木材を効率的に乾燥出来る木材乾燥方法および木材乾燥装置を提供することが出来るようになる。また、木材の乾燥以外にも、例えば、草・竹・穀物等の植物、牛や鶏等の家畜糞、醸造過程での排出スラッジ、工業製品の製造過程での排出スラッジ等の乾燥にも適宜用いることが出来て広範な乾燥用途において貢献することが出来ようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態としては、用途条件により異なるので用途条件を勘案し前述の課題を解決するための手段から適宜選択し用途条件に適合した形態にすれば良い。以下、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。尚、以下に示す実施例は一部の用途条件への対応例を示したもので、本発明の木材乾燥方法および木材乾燥装置は当然であるが下記の例に限定されない。
【0015】
本発明の実施例の説明として、図1は本発明の装置の壁部と天井部に通気抑制透湿断熱部位を有する装置例の建家内に設置する場合の例を示す縦断面図である。図2は図1の例のA−A平断面図であり、図3はB−B平断面図である。図4は壁部と天井部に通気抑制透湿断熱部位を有する装置例の屋外に設置する場合の例を示す縦断面図。図5は天井部に太陽光が透過出来る太陽光透過部材を用いた装置例の縦断面図。図6は通気抑制透湿断熱部位の有効面積を調節出来る様にする例の説明図である。以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
先ず、本発明で壁部と天井部に通気抑制透湿断熱部位を有する装置例の建家内に設置する場合の例を説明する。建家内に設置の場合は、屋根および壁の降雨対策の外装部位が省略出来る。このため、乾燥室1の基本構造としては、例えば、図1〜3に示す様に、主構造部材11と副構造部材12で構造的骨格を形成し、壁部と天井部の通気抑制透湿断熱部位は断熱部材21と室内側に空気の透過を抑制出来かつ水蒸気を透過出来る通気抑制透湿部材22と室外側に透湿機能を有する断熱材保持部材23とで構成される。そして、留め付け部材24を用いて断熱部材21、通気抑制透湿部材22、断熱材保持部材23を留め付ける。また、床部は主構造部材11を適宜な間隔で配設し床板材31が敷設される。そして、空間部には断熱材32が敷設される。そして入口部には断熱扉41が設置される。
【0017】
加熱装置としては、燃焼廃ガスの直接給入以外の加熱方法で、例えば、電気ヒーター加熱も用いることが出来るが、温水または蒸気加熱方法が好ましい。そして、具体的には、例えば、図1、図3に示す様に、H形鋼52を連結して下半分に断熱材53を付設し上部側に温水または蒸気配管51を配設しその上部に角材の木材受材54を適宜な間隔で配設し固定した加熱装置が用いられる。
【0018】
木材の乾燥方法としては、木材100を角状台木61の上に桟木62を介在させ積層して前記木材受材54の上部に載置する。そして、加熱装置で加熱し木材の水分を蒸散させ水蒸気を外部放散させ木材乾燥する。以下、本装置を構成する部位、部材等の特記すべき事項について説明する。
【0019】
主構造部材11は、構造強度を確保出来る強度と耐久性を有する材質のものなら用いることが出来るが、例えば、鋼材等の金属材が好ましく、更には、角管材が好適である。この場合には内部空間を断熱材11aを充填し、その材質としては例えば温度が90℃程度でも材質変化が余り生じない発泡樹脂断熱材が好ましい。そして、副構造部材12は、主構造部材11に準じた材質のものが用いられ、断熱部材21の保持を勘案して形状はL字型が好適である。
【0020】
断熱部材21は、透湿性能の良好な材質のものが用いられ、例えば、グラスウール等の繊維系断熱材が好適であるが、その他には温度が90℃程度にでも材質変化が余り生じないスポンジ状の断熱材が用いられても良い。そして、通気抑制透湿部材22は、温度が90℃程度でも材質変化が余り生じず水蒸気を通過させ通気は抑制出来る機能を有する材質のもので、例えば、近年、断熱気密住宅部材として用いられている防風透湿シートの性能判定試験(試験方法/JIS・A6111)に準拠した数値表示で示すと、透湿性においては約0.1〜0.15m・s・Pa/μgを目処とし、通気の抑制性能の目安となる防風性(通過時間)では約30〜180秒を目処とした性能を有する材質のものが用いられる。具体的には、例えば、従来から建築物の防風透湿シートや衣料として用いられているタイベック(商標名)を用いることが出来るとともに好ましい。そして、断熱材保持部材23は、通気抑制透湿部材22と同等以上の透湿性能を有するもので、降雨等の外部からの水対策が図られていれば、断熱部材21を保持出来るネット状または格子状の部材でも用いることが出来る。そして、留め付け部材24は、板状部材が好ましく、温度が90℃程度でも材質変化が生じ難い材質のもので、例えば、鉄またはアルミニウム等の金属材もしくは硬質で耐衝撃性を有するポリアミド等のプラスチック材が好ましい。
【0021】
床板材31は、鋼板等の金属材が好ましい。そして、断熱材32及び断熱材53は、材質としては例えば温度が90℃程度でも材質変化が余り生じない発泡樹脂断熱材が好ましい。そして、断熱扉41は、両側面が鉄またはアルミニウム等の金属板で内部が温度が90℃程度でも材質変化が余り生じない発泡樹脂断熱材の構造のものが好ましい。そして、木材受材54は、H形または角管状の鋼材が好ましい。
【実施例2】
【0022】
次に、本発明で壁部と天井部に通気抑制透湿断熱部位を有する装置例の屋外に設置する場合の例を説明する。屋外に設置の場合は、屋根および壁の降雨対策の外装部位が必要となる。このため、乾燥室1の基本構造としては、例えば、図4に示す様に、実施例1の構造に追加して、外部側に主構造部材11を追加して配設し、屋根部には通気が容易に出来る様に通気空間を設けて屋根材71敷設し、壁部には通気が容易に出来る様に通気空間を設けて外壁材72を敷設する。以下、部位、部材等の特記すべき事項について説明する。
【0023】
屋根材71は、強度と耐候性を有する材質で、鉄やアルミニウム等の金属またはポリカーボネート等の硬質プラスチックが好ましく、形状としては波形または折板状のものが好ましい。また、通気空間71aとしては少なくとも10cm以上の間隔を確保し望ましくは20cm以上の間隔を確保することが好ましい。そして、外壁材72は、一般的に外壁材として用いられている材質のものを用いることが出来る。また、通気空間72aとしては少なくとも5cm以上の間隔を確保し望ましくは10cm以上の間隔を確保することが好ましい。
【実施例3】
【0024】
次に、天井部に太陽光が透過出来る太陽光透過部材を用いた装置例を説明する。基本構造としては、例えば、図5に示す様に、実施例2の構造の屋根部と天井部に変えて、太陽光が透過出来る材質の太陽光透過部材81を配設する。以下、部材等の特記すべき事項について説明する。
【0025】
太陽光透過部材81は、太陽光が透過出来て使用に耐える強度と耐候性を有する材質のものなら用いることが出来るが、例えば、透明ガラスまたはポリカーボネート等の高強度エンジニアリングプラスチックが好ましい。そして、断熱性を高めるため密封された空気層を設ける構造が好ましく、更には空気層が分割された構造が好ましい。
【実施例4】
【0026】
次に、通気抑制透湿断熱部位の有効面積を調節出来る様にする例の説明をする。室内側に防湿部材を配設し、例えば、ロールカーテン方式または折り畳み方式またはスライド方式により通気抑制透湿断熱部位の有効面積を調節出来る様にする。ロールカーテン方式の例としては、例えば、図6に示す様に、ロール状に巻いた防湿部材91を壁および天井部の中央部に設置し両側に伸縮させて調節する。以下、部材等の特記すべき事項について説明する。
【0027】
防湿部材91は、温度が90℃程度でも材質変化が余り生じず防湿性能を有するものなら用いることが出来るが、例えば、ポリアミド等の耐衝撃性と耐久性が良いエンジニアリングプラスチックが好ましい。また、ロールカーテン方式の場合は繊維の織布に防湿コーティングをしたものが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
例えば、草・竹・穀物等の植物の乾燥、牛や鶏や豚等の家畜糞等の乾燥、醸造過程での排出スラッジ等の乾燥、工業製品の製造過程での排出スラッジ等の乾燥、干物用の魚貝類の乾燥、小規模な製塩の乾燥工程等の広範な乾燥用途において利用の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の装置の壁部と天井部に通気抑制透湿断熱部位を有する装置例の建家 内に設置する場合の例を示す縦断面図
【図2】図1の例のA−A平断面図
【図3】図1の例のB−B平断面図
【図4】壁部と天井部に通気抑制透湿断熱部位を有する装置例の屋外に設置する場合 の例を示す縦断面図
【図5】天井部に太陽光が透過出来る太陽光透過部材を用いた装置例の縦断面図
【図6】通気抑制透湿断熱部位の有効面積を調節出来る様にする例の説明図
【符号の説明】
【0030】
1 ;乾燥室
11 ;主構造部材
12 ;副構造部材
21 ;通気抑制透湿断熱部位の断熱部材
22 ;通気抑制透湿部材
23 ;断熱材保持部材
24 ;留め付け部材
31 ;床板材
32 ;断熱材
41 ;断熱扉
51 ;温水または蒸気配管
52 ;H形鋼
53 ;断熱材
54 ;木材受材
100 ;木材
110 ;土間コンクリートまたは地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を加熱して木材の水分を蒸散させ木材を乾燥させる断熱部位で囲繞された乾燥室の壁部と天井部において、水蒸気と空気の分子の大きさの差異と空気中の水蒸気分圧と水蒸気の特性を利用して、室内空気の外部放散を抑制し且つ水蒸気を外部放散させて木材を乾燥出来る様にしたことを特徴とする木材乾燥方法。
【請求項2】
前記乾燥室の壁部と天井部において、室内側に空気の透過を抑制出来るとともに水蒸気を透過出来る通気抑制透湿部材を配設し且つその外部側に断熱材として水蒸気を容易に透過出来る断熱材を配設した通気抑制透湿断熱部位を有することを特徴とする請求項1に記載の木材乾燥方法。
【請求項3】
前記乾燥室の天井部に太陽光が透過出来る太陽光透過部材を用いて太陽光の受光により乾燥室内を加温出来る様にしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の木材乾燥方法。
【請求項4】
木材を乾燥させる乾燥室が室内を保温出来る断熱部位で囲繞されるとともに加熱装置を有する木材乾燥装置で、乾燥室の壁部と天井部において室内側に空気の透過を抑制出来るとともに水蒸気を透過出来る通気抑制透湿部材を配設し且つその外部側に断熱材として水蒸気を容易に透過出来る断熱材を配設した通気抑制透湿断熱部位を有することにより、木材の水分を蒸散させ室内空気の外部放散を抑制し且つ水蒸気を外部放散させて木材を乾燥出来る様にしたことを特徴とする木材乾燥装置。
【請求項5】
前記通気抑制透湿断熱部位の室内側に防湿部材を用いて通気抑制透湿断熱部位の有効面積を調節出来る様にしたことを特徴とする請求項4に記載の木材乾燥装置。
【請求項6】
前記乾燥室の天井部に太陽光が透過出来る太陽光透過部材を用いて太陽光の受光により乾燥室内を加温出来る様にしたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の木材乾燥装置。
【請求項7】
前記乾燥室の下部に車輪を付設して移動出来る様にしたことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の木材乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−879(P2009−879A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163295(P2007−163295)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(599121115)
【Fターム(参考)】