説明

木材破砕装置およびそのデフレクタ

【課題】タブ内に投入された木材を、タブの回転を妨げることなく、円滑に破砕機の方向へ供給することが可能な木材破砕装置およびそのデフレクタを提供する。
【解決手段】木材破砕装置10は、破砕機1に対して略円筒形状のタブ2を相対回転させながら、タブ2内に投入された木材を破砕機1の方へ送り込んで木材を破砕する木材破砕装置であって、タブ2の底板7に形成された破砕機1が露出する開口7aのタブ2の回転方向における下流側に、タブ2の回転方向に沿った断面形状が略三角形のデフレクタ15を設けている。そして、デフレクタ15は、略三角形状の断面の頂部15bにおいて、床板7の面よりも上方において木材を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材が投入されるタブを、チェーンやベルト等を介して回転させながら木材を破砕部へと供給して破砕する木材破砕装置およびそのデフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木材を破砕するための木材破砕装置として、自走式の木材破砕装置(木材破砕機械)が用いられている。
この自走式の木材破砕装置は、主要な構成として、ハンマミル等の回転式破砕機(破砕体)と、回転軸を中心として回転して破砕機に木材を供給するタブ(回転式タブ)とを備えている。そして、タブの上部にはホッパが付設されており、このホッパに木材を投入することによってタブ内に木材が供給される。破砕機において破砕された木材は、破砕機の下方へと供給され、搬送コンベアによって外部へ排出される。
【0003】
また、上記タブは、タブ回転装置を介して回転駆動される。そして、タブ回転装置は、タブの外周面に沿って付設されたゴム体によって形成される摩擦部材と、この摩擦部材に巻き掛けられるチェーン(ベルト)と、このチェーンを回転駆動する油圧モータとを含んでいる。また、バネ部材によって引っ張り力を付与されたアイドラが、チェーンの外面に当接してチェーンに張力を与えている。
【0004】
さらに、このタブの底面には、タブの正回転方向における上記開口部の下流側にデフレクタが設けられている。このデフレクタは、タブの正回転時には、破砕機が露出したタブ底面の開口部に対する木材の移動を促進させるとともに、逆回転時にはタブ内において閉塞状態となった木材を分散させる機能を有している(特許文献1参照)。
例えば、特許文献1に開示されたタブグラインダ100に装着されたデフレクタ105は、タブ102の底面103に形成された開口部103aの側方に配置されており、破砕機101の一部を覆うように先端側が延伸している(図9参照)。これにより、タブ102が正転する際には、破砕機101に対して木材を効率よく移動させつつ、破砕機101の上部まで延伸したデフレクタ105の先端側において、破砕機101の回転によって破砕物が上方等に飛び出してしまうことを防止することができる。
【特許文献1】米国特許第5803380号明細書(1998年9月8日登録)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のタブグラインダのデフレクタでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたタブグラインダ100のデフレクタ105では、図9に示すように、破砕機101の一部を覆うように延伸した先端部分が形成されるため、タブ102が正回転する際に木材がデフレクタ105の先端に引っ掛かってタブ102の回転を妨げる負荷となるおそれがある。このようなタブ102の回転に対する負荷が大きくなった場合には、その都度タブ102を逆回転させる必要が生じ、効率よく木材の破砕を行うことができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、タブ内に投入された木材を、タブの回転を妨げることなく、円滑に破砕機の方向へ供給することが可能な木材破砕装置およびそのデフレクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る木材破砕装置は、木材を破砕する破砕部と、略円筒形状のタブと、底板と、デフレクタと、を備えている。略円筒形状のタブは、破砕部の上方において回転軸を中心として破砕部に対して相対回転しながら、破砕部の方向に木材を送り込む。底板は、タブの底面を形成しており、破砕部を露出させる開口を有する。デフレクタは、底板においてタブの正回転方向における開口の下流側に配置されており、タブの回転方向に沿った断面が略三角形状であって、その頂部においてタブ内に投入された木材を底板の面よりも上方において支持する。
【0008】
ここでは、木材が投入されるタブを破砕機に対して相対回転させながら、タブ内部に設けられた破砕機によって木材を破砕する木材破砕装置において、破砕機を露出させる開口を有する底板におけるタブの回転方向において上記開口の下流側に、タブの回転方向に沿った断面形状が略三角形のデフレクタを設けている。そして、このデフレクタは、略三角形状の頂部において木材を支持する。
【0009】
これにより、タブの回転方向に沿った断面が略三角形状のデフレクタを設けたことで、タブの回転によりタブ内を移動する木材がデフレクタに引っかかってタブの回転に負荷をかけることを防止することができる。さらに、デフレクタによって木材を底板の面よりも上方において支持することで、木材の重量が破砕機にかかることによる破砕機の負荷も効果的に低減することができる。
この結果、タブ内に投入された木材の移動を必要以上に制限することなく円滑に移動させながら、タブおよび破砕機にかかる負荷を低減して、木材を破砕することができる。
【0010】
第2の発明に係る木材破砕装置は、第1の発明に係る木材破砕装置であって、デフレクタは、平面視においてタブの回転中心から見て外周側の端部が、タブの内周面と略平行になるように形成されている。
【0011】
ここでは、タブの回転方向に沿った断面形状が略三角形のデフレクタにおけるタブの回転中心から見て外周側の端部、つまりタブの内周面に対向する部分が、タブの内周面に対して平行になるように形成されている。
これにより、タブを回転させながらタブ内において破砕する木材をかき回している際に、タブの内周面とデフレクタとの間に移動してきた木材を円滑に移動させて、その間木材が引っ掛かってしまうことを回避することができる。この結果、タブの回転の負荷を低減して、効率よく木材を破砕することが可能になる。
【0012】
第3の発明に係る木材破砕装置は、第1または第2の発明に係る木材破砕装置であって、デフレクタの略三角形状の断面を構成する傾斜面の傾斜角度は、15度以上40度以下の範囲内の角度である。
ここでは、周方向に沿った断面形状が略三角形のデフレクタを構成する傾斜面の角度として、好ましい上記角度範囲を特定している。
【0013】
例えば、デフレクタの傾斜角度が急すぎた場合、タブの回転によって移動する木材がデフレクタによって動きを阻害され過ぎてしまうことになり、タブ内に投入された木材を円滑に破砕機の方へ送り込むことが困難になるという問題がある。一方、傾斜角度が緩すぎる場合には、破砕機上に載りかかる木材の重量を軽くするというデフレクタとしての1つの機能を十分に果たすことができなくなり、破砕機に掛かる負荷を増大させるという問題がある。
【0014】
これにより、上記角度範囲となるようにデフレクタを形成することで、タブ内に投入された木材の動きを必要以上に制限することなく、かつ破砕機にかかる負荷を低減して、デフレクタとしての機能を十分に発揮させることができる。
【0015】
第4の発明に係る木材破砕装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る木材破砕装置であって、タブの略円筒形状の上部の開口部分を覆う蓋部をさらに備えている。
ここでは、木材が投入されて回転するタブに対して、その上部の開口部分を覆う蓋を設けている。
通常、タブ内に投入された木材を破砕する破砕機は、ハンマミル等のように回転しながら木材を粉砕していく。このとき、略水平方向に沿って配置された回転軸を中心として破砕機が回転する場合には、破砕機によって破砕された木片が、回転に伴って上方へと飛び出すおそれがある。
【0016】
従来の木材破砕装置では、このような破砕機の回転に伴う木片の上方への飛び出しを防止するために、デフレクタの先端部分が破砕機の上部にかかるようにデフレクタの形状や配置を決めて配置していた。しかし、このようなデフレクタでは、タブの回転によってタブ内において移動する木材がデフレクタの先端に引っ掛かってタブの回転の負荷となるおそれがある。
【0017】
本発明の木材破砕装置では、破砕機の回転に伴う木片の上方への飛び出しを防止するために、タブの上方の開口部分を覆う蓋部を設けている。
これにより、上述したような断面が略三角形状のデフレクタを設けた場合でも、タブの外部への木片の飛散を防止することができる。
【0018】
第5の発明に係る木材破砕装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る木材破砕装置であって、タブの略円筒形状の内周面には、タブ内に投入された木材をかき回すための複数の突起部が形成されている。
ここでは、被破砕物としての木材が投入されるタブの内周面に、タブの回転によって木材を効果的にかき回すための突起部を形成している。
通常、タブの内周面にこのような突起物を設けた場合には、タブの回転によって木材を効果的にかき回すというメリットは得られるものの、逆にデフレクタ等のようなタブ内の他の突起物との間に木材が挟まれてタブの回転の負荷になるおそれがある。
【0019】
本発明の木材破砕装置では、上述したように、タブの回転方向に沿った断面形状が略三角形状のデフレクタを設けている。
これにより、タブの回転の負荷を生じさせるおそれがある突起物をタブの内周面に形成した場合でも、タブを負荷なく円滑に回転させながら、破砕機の方へ木材を送り込むことができる。
【0020】
第6の発明に係る木材破砕装置のデフレクタは、木材を破砕する破砕部と、破砕部の上方において回転軸を中心として破砕部に対して相対回転しながら、破砕部の方向に木材を送り込む略円筒形状のタブと、タブの底面を形成しており、破砕部を露出させる開口を有する底板と、を備えた木材破砕装置に装着されるデフレクタであって、支持部を備えている。そして、デフレクタは、底板においてタブの正回転方向における開口の下流側に配置されており、タブの回転方向に沿った断面が略三角形状であって、タブ内に投入された木材を底板の面よりも上方において支持する支持部を備えている。
【0021】
これにより、タブの回転方向に沿った断面が略三角形状のデフレクタを設けたことで、タブの回転によりタブ内を移動する木材がデフレクタに引っかかってタブの回転に負荷をかけることを防止することができる。さらに、デフレクタによって木材を底板の面よりも上方において支持することで、木材の重量が破砕機にかかることによる破砕機の負荷も効果的に低減することができる。
【0022】
この結果、タブ内に投入された木材の移動を必要以上に制限することなく円滑に移動させながら、タブおよび破砕機にかかる負荷を低減して、木材を破砕することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る木材破砕装置によれば、タブ内に投入された木材の移動を必要以上に制限することなく円滑に移動させながら、タブおよび破砕機にかかる負荷を低減して、木材を破砕することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る木材破砕装置について、図1〜図8を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明において用いた「前」、「後」については、搬送コンベア6が突出している方を「前」、その反対側を「後」と示すものとする。
[木材破砕装置10全体の構成]
本実施形態に係る木材破砕装置10は、図1から図3に示すように、自走式の木材破砕装置であって、破砕機1と、略円筒形状のタブ2と、機台3と、走行体4と、ホッパ5と、搬送コンベア6と、を備えている。
【0025】
破砕機1は、タブ2から供給される木材のブロックを細かく破砕するために、油圧によって駆動されるハンマミル等の破砕装置であって、走行体4が付設された機台3上に配置されている。
タブ2は、機台3の後方側に配置されており、後述する駆動部30(図4参照)によって軸心廻りにおいて回転(正転および反転)し、タブ2の下方に配置された破砕機1に対して木材を供給する。また、タブ2の上方にはホッパ5が取り付けられており、このホッパ5に木材を投入することによって、タブ2内に木材が供給される。
【0026】
機台3は、走行体4に対して取り付けられており、その上面に破砕機1やタブ2、ホッパ5等が載置される。
走行体4は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた履帯を回転させることで、木材破砕装置10を前進、後進させる。
ホッパ5は、水平面に対して傾斜する投入口8が形成されているとともに、投入口8の一部を覆う飛散防止カバー(蓋部)9が設けられている。なお、このホッパ5に形成された投入口8および飛散防止カバー9は、タブ2が回転してもタブ2と共に回転しないように機台3に対して支柱2aを介して取り付けられている。
【0027】
搬送コンベア6は、破砕機1の下部側に配置される略水平状の部材を有しており、所定の大きさの排出孔を通過した所定粒度の破砕物を受け止め、外部へ排出する。なお、搬送コンベア6として、1本のベルトおよび単一の駆動モータによって構成してもよいし、複数本のベルトをそれぞれの駆動モータによって駆動する構成を使用したものであってもよい。
【0028】
木材破砕装置10では、以上のような構成により、木材を破砕機1によって破砕し、その破砕物(木片)をこの破砕機1の下方に供給して、搬送コンベア6によって外部へと排出する。
[タブ2およびその周辺の構成]
(タブ2の構成)
タブ2は、図4に示すように、外周面に略水平方向に沿ってチェーン11が巻き掛けられており、駆動部30からの回転駆動力がチェーン11を介して伝達されて回転駆動される略円筒型の部材である。そして、タブ2は、駆動モータMの回転方向により、正転(図4に示す矢印参照)と逆転とを繰り返しながら、タブ2の下方に配置された破砕機1に対して木材を供給する。また、タブ2の外周面には、図4および図5に示すように、その下端部に上下に相対向する一対のガイド用外鍔部20a,20bと、上方のガイド用外鍔部20aよりも上方にチェーン11が巻き掛けられるスプロケット12が配置されている。さらに、タブ2の外周面に隣接する位置には、図4に示すように、タブ2の回転をガイドする横ローラ21と、タブ2を支持する縦ローラ22とが配置されている。
【0029】
ガイド用外鍔部20a,20bは、図4および図5に示すように、それぞれ平板状の本体と本体を支持する支持片によって構成されており、上記縦ローラ22は、ガイド用外鍔部20a,20bの本体部分に当接する。また、各ローラ21,22は、タブ2の外周面に沿って4個ずつ配設されている。
横ローラ21は、図4に示すように、機台3に取り付けたフレーム35上に立設された支柱23に、軸受24,24を介してローラ部21aの部分が回転可能な状態で支持されている。そして、タブ2の外周面に設けられる上下のガイド用外鍔部20a,20b間において転動する。
【0030】
縦ローラ22は、図4に示すように、機台3に取り付けたフレーム35上に立設された支柱23に設けられる支持軸に、軸受24,24を介してローラ部が回転可能な状態で支持されており、ローラ部が上方のガイド用外鍔部20aに当接してタブ2を支持している。
また、タブ2の内周面には、図4に示すように、周方向において略等間隔で突起部2aが形成されている。この突起部2aは、タブ2の内周面からタブ2の回転中心に向かって延伸する部材であって、タブ2の回転に伴ってタブ2内に投入された木材を効果的にかき回すために設けられている。
【0031】
(底板7)
底板7は、破砕機1に対して相対回転する略円筒形のタブ2の底面を形成する板材であって、タブ2内において破砕機1を露出させる開口7aを有している。そして、底板7は、略円筒形のタブ2とは別体として形成されており、タブ2が回転してもタブ2と一緒に回転しないように機台3に固定配置されている。
【0032】
また、底板7には、図4に示すように、タブ2の回転方向における開口7aの直上流側に、2つの整流板7b,7cが固定配置されている。
さらに、底板7には、図4に示すように、タブ2の回転方向における開口7aの直下流側に、後述するデフレクタ15が固定配置されている。
(整流板7b,7cの構成)
整流板7b,7cは、図8(a)および図8(b)に示すように、略円筒形のタブ2の内側であってタブ2の底面を形成する底板7上においてタブ2の回転方向における上流側に載置された底板7の面からの高さが約80mmの突出部である。そして、整流板7b,7cは、タブ2の回転に伴ってタブ2内においてかき回される木材を、底板7に形成された開口7aから露出する破砕機1の方へ誘導する。
【0033】
具体的には、図4に示すように、タブ2の外周側に配置された整流板7bは、破砕機1の外周側の部分に木材を誘導し、タブ2の内周側に配置された整流板7cは、破砕機1の内周側の部分に木材を誘導する。
(デフレクタ15の構成)
デフレクタ15は、図4に示すように、略円筒形のタブ2の内側であってタブ2の底面を形成する底板7上においてタブ2の回転方向における下流側に載置されている。また、デフレクタ15は、図6および図7(b)に示すように、タブ2の回転中心を中心とする円の周方向における断面形状が、略三角形の部材である。
【0034】
また、デフレクタ15は、図4および図6および図7(a)に示すように、外端部15aと、上記略三角形状の頂部15bと、2つの傾斜面15c,15dと、を含むように構成されている。
外端部15aは、デフレクタ15に含まれるタブ2の回転中心を中心とする円弧状の部分であって、平面視においてタブ2の内周面に対して平行になるように形成、配置されている。これにより、タブ2の回転に伴ってタブ2内を移動する木材は、回転するタブ2の内周面とデフレクタ15との間に挟まったりすることなく、タブ2内を円滑に移動させることができる。
【0035】
略三角形の断面における頂部15bは、底板7の面よりも上方に位置しており、底板7の開口7aから突出するように露出する破砕機1上に載りかかる木材の一部を支持する。
傾斜面15c,15dは、図7(b)に示すように、底板7の面に対してほぼ同じ角度で傾斜しており、その傾斜角度は約30度である。これにより、タブ2の正転時には、傾斜面15cにおいて木材が引っ掛かることなく、適度に木材の移動を規制することができる。そして、タブ2の逆転時にも、傾斜面15dにおいて木材が引っ掛かることなく適度に木材の移動を規制しながら、必要以上にタブ2内における木材の移動を抑制することを防止することができる。この結果、タブ2の内周面に複数形成された突起部2aによってかき回される木材が、突起部2aとデフレクタ15との間に引っ掛かってタブ2の回転の負荷となることを防止することができる。
【0036】
また、デフレクタ15は、従来のデフレクタのように、破砕機1の上部に延伸する部分を有していないため、破砕機1の回転に伴って鉛直上向きに飛び出す木片(破砕物)を受け止めることはできない。
ここで、本実施形態の木材破砕装置10では、破砕機1の上方に相当するホッパ5の上部に、飛散防止カバー(蓋部)9を設けている。このため、デフレクタ15によって破砕機1から鉛直上向きに飛び出す木片を受け止めなくても、装置外への木片の飛散を防止することができる。
【0037】
(チェーン11の構成)
チェーン11は、ピンリンクとローラリンクとを交互に組み合わせてピンを介して繋いで構成された無端状のローラチェーンである。また、チェーン11は、図4および図5に示すように、タブ2の外周面に周方向に沿って所定ピッチごとに設けられたスプロケット12と駆動部30のスプロケット31とに巻き掛けられており、図5に示す駆動モータMがスプロケット31を回転駆動することによってタブ2を回転させる。さらに、チェーン11は、上記タブ2の外周面および駆動部30のスプロケット31に巻き掛けられた状態で常に所定の範囲内の張力を保持するために、テンション付与機構40によって張力が付与されている。
【0038】
本実施形態の木材破砕装置10では、以上のように、タブ2の外周面に沿って配設されるチェーン11がタブ2の外周面に形成されたスプロケット12に噛合しながらタブ2を回転させる。このため、タブ2に対してチェーン11を介して駆動モータMからの回転力を確実に伝達することができる。
(駆動部30の構成)
チェーン11を介してタブ2を回転駆動させる駆動部30は、図5に示すように、駆動モータ(油圧モータ)Mと、チェーン11が巻き掛けられるスプロケット31と、を有している。そして、この駆動部30の近傍には、チェーン11に対して張力を付与するテンション付与機構40が配置されている。
【0039】
駆動モータMは、タブ2を正転あるいは逆転させるための回転駆動源であって、木材投入時の木材通過位置の下方以外の位置に配置されている。これにより、木材を投入する際における駆動用モータMへの木材等の落下を防止することができる。この結果、木材等が落下することにより駆動用モータM等の駆動の妨げとなることを回避することができ、タブ2を安定して回転させることができるとともに、駆動用モータMを保護して駆動部30の耐用寿命を延ばすことができる。
【0040】
スプロケット31は、駆動モータMの回転軸の先端部分に固定されており、駆動モータMが回転すると巻き掛けられたチェーン11を所定方向に搬送する。
(テンション付与機構40の構成)
テンション付与機構40は、タブ2の外周に巻き掛けられたチェーン11に対して所定範囲の大きさの張力を付与する機構であって、チェーン11を駆動する駆動部30に近接するように配置されている。
【0041】
[本木材破砕装置10の特徴]
(1)
本実施形態の木材破砕装置10は、破砕機1に対して略円筒形状のタブ2を相対回転させながら、タブ2内に投入された木材を破砕機1の方へ送り込んで木材を破砕する木材破砕装置であって、図4に示すように、タブ2の底板7に形成された破砕機1が露出する開口7aのタブ2の回転方向における下流側に、タブ2の回転方向に沿った断面形状が略三角形のデフレクタ15を設けている。そして、デフレクタ15は、略三角形状の断面の頂部15bにおいて、床板7の面よりも上方において木材を支持する。
【0042】
これにより、デフレクタ15における傾斜面15c,15dにおいて、タブ2内を移動する木材と接触することになるため、デフレクタ15において木材が引っ掛かってタブ2の回転に対する負荷となることはない。また、デフレクタ15の頂部15bにおいて、木材を支持することで、破砕機1上に載りかかる木材の重量の一部をデフレクタ15において受け止めることができる。この結果、タブ2を円滑に回転させながら、破砕機1における回転負荷も低減することができる。
【0043】
(2)
本実施形態の木材破砕装置10では、図4に示すように、タブ2の回転中心を中心とする円の半径方向におけるデフレクタ15の外端部15aが、平面視においてタブ2の内周面と略平行になるように配置されている。
これにより、タブ2を回転させた際に、タブ2とデフレクタ15との間の隙間に木材が挟まってタブ2の回転の負荷になることを防止することができる。この結果、タブ2を円滑に回転させながら木材を破砕機1の方向へ送り込むことができる。
【0044】
(3)
本実施形態の木材破砕装置10では、図7(a)および図7(b)に示すように、デフレクタ15の断面を構成する2つの傾斜面15c,15dは、床板7の面に対する傾斜角度が約30度になるように形成されている。
これにより、デフレクタ15に接触する木材が、必要以上にデフレクタ15に引っ掛かってタブ2の回転を阻害することはない。この結果、タブ2を円滑に回転させながら、木材を破砕することができる。
【0045】
(4)
本実施形態の木材破砕装置10では、図1に示すように、タブ2の上方に取り付けられたホッパ5の上部に飛散防止カバー9を設けている。
これにより、破砕機1の近傍に配置されたデフレクタ15によって、破砕機1からの木片の飛び出しを防止していなくても、飛散防止カバー9によって装置外への木片の飛散を防止することができる。
【0046】
(5)
本実施形態の木材破砕装置10では、図4に示すように、タブ2の内周面に、複数の突起部2aが設けられている。
これにより、タブ2内へ投入された木材を効果的にかき回すための突起部2aをタブ2の内周面に設けた場合でも、デフレクタ15に接触した木材がデフレクタ15に引っ掛かることはないため、タブ2の突起部2aとデフレクタ15との間に木材が引っ掛かってタブ2の回転の負荷となることを防止できる。
【0047】
(6)
本実施形態の木材破砕装置10のデフレクタ15は、図4に示すように、タブ2の底板7に形成された破砕機1が露出する開口7aのタブ2の回転方向における下流側に設けられている。そして、デフレクタ15は、略三角形状の断面の頂部15bにおいて、床板7の面よりも上方において木材を支持する。
【0048】
これにより、デフレクタ15における傾斜面15c,15dにおいて、タブ2内を移動する木材と接触することになるため、デフレクタ15において木材が引っ掛かってタブ2の回転に対する負荷となることはない。また、デフレクタ15の頂部15bにおいて、木材を支持することで、破砕機1上に載りかかる木材の重量の一部をデフレクタ15において受け止めることができる。この結果、タブ2を円滑に回転させながら、破砕機1における回転負荷も低減することができる。
【0049】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、デフレクタ15として、平面視においてタブ2の内周面に対して平行な外端部15aを有する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
例えば、平面視におけるデフレクタ15の形状としては、タブ2の内周面に対して平行でない部分を有する形状であってもよい。
ただし、この平行でない部分において、タブ2の回転に伴って移動する木材が引っ掛かる等の問題が発生するおそれを考慮すると、上記実施形態のように、外端部15aがタブ2の内周面に対して平行になるようにデフレクタ15が設置されていることがより好ましい。
【0051】
(B)
上記実施形態では、断面が略三角形のデフレクタ15の傾斜面15c,15dの傾斜角度が30度である例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、15度以上40度未満の傾斜角度の傾斜面によって形成されるデフレクタであれば、タブ2の回転に伴って移動する木材の移動を必要以上に規制して、デフレクタ15において木材が引っ掛かることなく、円滑に木材を破砕機1の方へ誘導しながら、破砕機1にかかる負荷を低減するという、上記と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(C)
上記実施形態では、タブ2内において、破砕機1を露出させる開口7aに対して、タブ2の正回転方向における上流側に、2つのレール状の整流板7b,7cを設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
このレール状の整流板は、必ずしも2本設けられている必要はなく、例えば、1本であってもよいし、設けられていなくてもよい。あるいは、3本以上の整流板によって破砕機1の方へ木材を誘導するようにしてもよい。
【0053】
(D)
上記実施形態では、整流板7b,7cとして、床面からの高さが約80mmの突出部を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、高さが80mmより大きい突出部や、80mm未満の突出部を用いてもよい。さらに、整流板の形状としては、断面が略長方形でなくてもよく、例えば、断面が楕円形であったり、四角形や三角形であったりしてもよい。
【0054】
ただし、タブ内に投入された木材の流れを適度に整えながら、円滑に破砕機まで送り込むという観点では、上記実施形態のように、断面が略長方形であって、床面からの高さが約80mmの整流板を用いることがより好ましい。
(E)
上記実施形態では、破砕機1としてハンマミルを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
例えば、ハンマミル以外の他の破砕装置を用いて木材を破砕する木材破砕装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の木材破砕装置は、タブ内に投入された木材の移動を必要以上に制限することなく円滑に移動させながら、タブおよび破砕機にかかる負荷を低減して、木材を破砕することができるという効果を奏することから、回転体の中に被破砕物等を投入して破砕物を形成する各種装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る木材破砕装置の外観を示す正面図。
【図2】図1の木材破砕装置の側面図。
【図3】図1の木材破砕装置の平面図。
【図4】図1の木材破砕装置に含まれるタブ内部およびその周辺の構成を示す平面図。
【図5】図4のタブ周辺の構成を示す側面図。
【図6】図4のタブ内において露出した破砕機周辺の構成を示す斜視図。
【図7】(a),(b)は、図4のタブ内に設置されたデフレクタの形状を示す平面図および側断面図。
【図8】(a),(b)は、図4のタブ内に設置された整流板の形状を示す平面図および側断面図。
【図9】従来の木材破砕装置に搭載された破砕機付近の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1 破砕機(破砕部)
2 タブ
2a 突起部
3 機台
4 走行体
5 ホッパ
6 搬送コンベア
7 底板
7a 開口
7b 整流板
7c 整流板
8 投入口
9 飛散防止カバー(蓋部)
10 木材破砕装置
11 チェーン
12 スプロケット
15 デフレクタ
15a 外端部
15b 頂部
15c 傾斜面
15d 傾斜面
20a ガイド用外鍔部
20b ガイド用外鍔部
21 横ローラ
22 縦ローラ
23 支柱
24 軸受
25 支持軸
30 駆動部
31 スプロケット
35 フレーム
40 テンション付与機構
M 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を破砕する破砕部と、
前記破砕部の上方において回転軸を中心として前記破砕部に対して相対回転しながら、前記破砕部の方向に前記木材を送り込む略円筒形状のタブと、
前記タブの底面を形成しており、前記破砕部を露出させる開口を有する底板と、
前記底板において前記タブの正回転方向における前記開口の下流側に配置されており、前記タブの回転方向に沿った断面が略三角形状であって、その頂部において前記タブ内に投入された前記木材を前記底板の面よりも上方において支持するデフレクタと、
を備えている木材破砕装置。
【請求項2】
前記デフレクタは、平面視において前記タブの回転中心から見て外周側の端部が、前記タブの内周面と略平行になるように形成されている、
請求項1に記載の木材破砕装置。
【請求項3】
前記デフレクタの略三角形状の断面を構成する傾斜面の傾斜角度は、15度以上40度以下の範囲内の角度である、
請求項1または2に記載の木材破砕装置。
【請求項4】
前記タブの略円筒形状の上部の開口部分を覆う蓋部をさらに備えている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の木材破砕装置。
【請求項5】
前記タブの略円筒形状の内周面には、前記タブ内に投入された前記木材をかき回すための複数の突起部が形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の木材破砕装置。
【請求項6】
木材を破砕する破砕部と、前記破砕部の上方において回転軸を中心として前記破砕部に対して相対回転しながら、前記破砕部の方向に前記木材を送り込む略円筒状のタブと、前記タブの底面を形成しており、前記破砕部を露出させる開口を有する底板と、を備えた木材破砕装置に装着されるデフレクタであって、
前記底板において前記タブの正回転方向における前記開口の下流側に配置されており、前記タブの回転方向に沿った断面が略三角形状であって、
前記タブ内に投入された前記木材を前記底板の面よりも上方において支持する支持部を、
備えた木材破砕装置のデフレクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−283160(P2007−283160A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109982(P2006−109982)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】