説明

木粉又は木屑に対する乾燥方法及び乾燥装置

【課題】 高いコストを伴う電力を消費せずとも、簡単な機械的手法によって木粉又は木屑に対する乾燥方法又は乾燥装置の構成を提供すること。
【解決手段】 10Pa以下の真空度の環境下にて、木粉又は木屑7に対し加圧を行うことに基づいて木粉又は木屑7を乾燥する方法を実現するために、吸引ポンプ2と連通している密閉室1内に、両側から圧力を加える加圧板3を設け、当該加圧板3の少なくとも一方側に連結柱5をパッキング材6によって摺動自在に支持された状態にて密閉室1から突出させ、加圧機構4と連結していることに基づき、前記課題を達成することができる木粉又は木屑7に対する乾燥装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製材において生じた木粉、更には木材に対する加工にて生じた木屑を利用して他の製品の素材と素材に必要な乾燥工程に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木粉又は木屑を利用して、容器、又はマット(人口芝生用マット及びゴルフ場用マットなどを含む。)を素材とすることは、既に周知又は公知の技術的事項である。
【0003】
これらの木粉又は木屑を素材として、他の製品を成型するためには、必然的に接着剤を介して木粉及び木屑を成型加圧する工程を不可欠とするが、このような成型加圧を正確に行うためには、木粉又は木屑が十分乾燥されていることが不可欠である。
【0004】
一般に木材を短時間にて乾燥させるためには、木材が炭化しない程度の高温状態(通常100〜200℃)又は電子レンジと同じような電子ビームの照射を行っているが、木粉又は木屑の場合においても、このような方法によって乾燥することが可能である。
【0005】
しかしながら、このような高温状態の形成又は電子ビームの照射には多大な電力を必要とし、製造コストにおいて極めて不利である。
【0006】
他方、木粉又は木屑に対し、大気中において加圧することによって、内側に含まれている水分を外部に排出する方法も考えられるが、大気中において含有されている水分を外側に抽出する程度の加圧を行った場合には、木粉又は木屑が加圧によって相互に接合し合った状態に至り、木粉又は木屑の状態を維持することができない。
【0007】
【特許文献1】特開昭54−77361号公報
【特許文献2】特開昭62−288004号公報
【特許文献3】特開平05−237812号公報
【特許文献4】特開平07−32315号公報
【特許文献5】特開平10−329110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の場合のような高いコストを伴う電力を消費せずとも、簡単な機械的手法によって木粉又は木屑に対する乾燥方法又は乾燥装置の構成を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)10Pa以下の真空度の環境下にて、木粉又は木屑に対し加圧を行うことに基づいて、木粉又は木屑を乾燥する方法、
(2)吸引ポンプと連通している密閉室内に、両側から圧力を加える加圧板を設け、当該加圧板の少なくとも一方側に連結柱をパッキング材によって摺動自在に支持された状態にて密閉室から突出させ、加圧機構と連結していることに基づく木粉又は木屑に対する乾燥装置
からなる。
【発明の効果】
【0010】
前記(1)、(2)の基本構成に基づいて、本発明においては、高価な電力コストを要せずに、単なる機械的な手法によって短時間に木粉又は木屑を乾燥することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においては、木粉又は木屑7に対し、大気圧よりも減圧した環境内に配置することによって、木粉又は木屑7内に含まれている水の分子が自由に飛散し易くなるという現象を利用したことを基本的技術思想としている。
【0012】
前記(1)の基本構成においては、減圧における真空度を10Pa以下、即ち、1/100気圧以下としているが、この程度の真空度の場合には、木粉又は木屑7に対し含まれている水を抽出するような加圧を行っても、木粉又は木屑7が双方に接着するに至らずに、元の分離した状態を維持することが可能であることに立脚している。
但し、真空度を大きくすることによって乾燥時間は短縮することが可能となる。
【0013】
例えば、1Paの場合に約38秒を要する乾燥条件の場合に、真空度を10−4Paに変化させた場合には、約0.2秒という乾燥時間に短縮することができる。
【0014】
前記(1)の基本構成における加圧の程度は、木粉又は木屑7の平均体積によっても相違するが、通常0.3MPa〜1.5MPa程度の範囲による加圧条件が選択されている。
【0015】
その根拠としては、0.3MPa、即ち大気圧の3倍程度未満の場合には、真空度10近辺の環境下において効率的な加圧が困難となること、及び1.5MPa以下とするのは、1.5MPaを超えた場合には、木粉又は木屑7が相互に接着し合って分離した形状を維持することが困難になることに由来している。
【0016】
前記(2)の基本構成は、前記(1)の乾燥方法に対応する乾燥装置であって、図1(a)に示すように、両側の加圧板3の間に木粉又は木屑7を配置し、横から加圧を行い、他方密閉室1を吸引ポンプ2によって吸引し、真空度を順次高めることによって木粉又は木屑7に対する乾燥を実現することが可能となる。
尚、図1(a)に示すように、加圧作業を行っている際、木粉又は木屑7が加圧されている範囲から飛散することを防ぐために、変形自在な容器に木粉又は木屑7を収納することが好ましい。
【0017】
加圧機構4においては、通常油圧シリンダによる加圧装置が採用される場合が多い。
【0018】
加圧板3と加圧機構4とを連結する連結柱5は、密閉室1内外に設けられており、かつ長手方向に移動可能であり、かつ当該移動にも拘らず、連結柱5と密閉室1の壁部とが密着状態であって、空気の密閉室1内への流入を極力防止するために、パッキング材6を介して摺動自在な状態にて支持されている。
【0019】
前記パッキング材6による支持構造としては、通常ガスケットパッキングが採用される場合が多い。
【0020】
パッキング材6の支持によって、空気の漏洩防止を十分なものとするためには、図1(b)に示すように、連結柱5の周囲における壁部を二重以上の状態とし、2個以上のパッキング材6によって連結柱5を締め付けた状態とすると良い。
【実施例】
【0021】
実施例においては、図2(a)、(b)に示すように、前記(2)の装置による基本構成において、加圧板3が上下両側に配置されており、下方の加圧板3に抽出された水を落下させるための孔31を設けていることを特徴としている。
【0022】
このような実施例の場合には、密閉室1内における加圧によって、木粉又は木屑7から抽出された水は、下側の加圧板3の孔31を介して密閉室1の底部に落下することになるが、前記底部に水収集容器9を排出することによって、順次抽出した水分を外部に排出することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、効率的に木粉又は木屑に対する乾燥を実現し、これによって木粉又は木屑を素材とする容器、更にはマットの製造分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】前記(2)の基本構成を示す乾燥装置の側断面図であり、(a)は全体構造を示しており、(b)は連結柱と密閉室の壁部による接合部分の構成を示す。
【図2】実施例において、孔を設けた下側の加圧板の構成を示しており、(a)は側断面図であり、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1:密閉室
2:吸引ポンプ
3:加圧板
31:孔
4:加圧機構
5:連結柱
6:パッキング材
7:木粉又は木屑
8:木粉又は木屑に対する普通の変形自在な収納容器
9:水収集容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10Pa以下の真空度の環境下にて、木粉又は木屑に対し加圧を行うことに基づいて木粉又は木屑を乾燥する方法。
【請求項2】
加圧の程度を0.3MPa〜1.5MPaであることを特徴とする請求項1記載の木粉又は木屑の乾燥方法。
【請求項3】
真空度が10Pa以下であることを特徴とする請求項1記載の木粉又は木屑の乾燥方法。
【請求項4】
吸引ポンプと連通している密閉室内に、両側から圧力を加える加圧板を設け、当該加圧板の少なくとも一方側に連結柱をパッキング材によって摺動自在に支持された状態にて密閉室から突出させ、加圧機構と連結していることに基づく木粉又は木屑に対する乾燥装置。
【請求項5】
加圧板が上下両側に配置されており、下方の加圧板に抽出された水を落下させるための孔を設けていることを特徴としている請求項3記載の木粉又は木屑に対する乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−21825(P2007−21825A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205207(P2005−205207)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(505049607)地奨住建株式会社 (2)
【Fターム(参考)】