説明

木製品の表面好触感性塗装方法。

【課題】
軽量であると共に、触感、外観および質感が極めて本物の無垢の木製に近い仕上りを有する塗装木製物品を得る。
【解決手段】
木製の物品に表面の下塗り後、平均粒子径1.5〜12ミクロンの硬度が鉛筆硬度F以上であるシリコーン樹脂粒子を10〜60重量%、バインダーのみの塗膜の硬度が鉛筆硬度F以上であるバインダー90〜40重量%とからなる塗料組成物を、木製基材物品に塗装して木製の表面に対して滑り止め効果を示して、手足の感触を良好にしているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製品の前処理塗装を行って得られた、好触感、良質感および外観を有する表面好触感性塗装物品、特に木質器基材の界面処理をして、得られる表面好触感性塗装製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、質感は、物品に高級感などを付与することができるという観点から、例えば、室内の床、階段、および各種容器類、自動車内装部品、家電製品、事務用品、屋内装飾品などへ応用されている。しかし、触感の優れた木製材料を使用した場合には、手触りが十分でなく、また機械的な衝撃に対して強いものでなく、大きな制約がある。木製製品に滑り止めを施しているが、塗装によるものでなく、木目、木材の種類を変えることによってもたらされている。材料、木材の種類の選択で限定的な商品になる。このように住宅で身近な場所において手足の触りが好感な状態が望まれている。とくに玄関の踏み台、玄関の敷き板、あるいは階段の踏み板、手摺などが上記特性を持つもので、滑り止めを施した手法が提案されている(特許文献2〜4参照)。
【0003】
一方、成形性及び耐衝撃性の観点から、木製品へポリメチルメクリレートやポリカーボネートのような樹脂が使用されているが、高級感が発現できなかったり、耐傷付き性も問題があった。樹脂の代わりに木製品の表面仕上げの塗装方法の一つに、塗装表面に手触り用仕上げ方法がある。
【0004】
一般に、木製で手触り良好であり、表面処理の塗料では、艶消しがよく、感触性を発現させる成分として無機系または有機系の体質顔料が用いられている。また無機系の感触がよく、艶消しのよい体質顔料としては、不定形のシリカ粉末、炭酸カルシウム粉末などが挙げられる。有機系の感触のよい、艶消し用の体質顔料としては、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの有機物の粉末が挙げられる。
さらに有機系の粉末として、球状のアクリル樹脂粒子や、ウレタン樹脂粒子なども艶消しの目的で使用されるが、これらは模様調の触感を有する塗料用に広く使用されている。木質の表面に、5〜100μmの球形の固形シリコーン樹脂を配合してなる樹脂組成物を、静電塗装によりサテン模様装飾を施す技術が開示されている。(特許文献1参照)
【0005】
しかし、上記技術による単純な塗料組成物では、手触りの触感、外観、質感の全てを満足するような木材表面の艶消し塗料組成物を得ることは極めて困難であった。
例えばポリエチレンのような有機系粉体を体質顔料に用いた場合では、フィラーそのものが軟質であることから、触感や質感を得ることは困難であり、この点を解決する処方としてシリカ粉末を使用した感触のよく、艶消しできる塗料が考えられるが、この場合その触感や外観は近い仕上がりが得られるものの外部からの機械的衝撃やスクラッチなどにより簡単に傷がつくものであり、質感としても極めて低品位な仕上りであるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平10−329840号公報
【特許文献2】特開平11−303350号公報
【特許文献3】特開平10−227119号公報
【特許文献4】特開2001−123627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、このような従来の問題点に着目してなされたものであって、軽量であると共に、家具、住宅の床などで手足の触感がよく、木製の家具、床などの外観および質感が極めて重量感をもって格調的な家具、床に近い仕上りを付与した物品を提供することであり、特に木製製品の表面にこのような塗膜処理を付与することにより、更に、手触りのよく、耐久性の高い表面好触感性木製製品の塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
木製品の表面を前処理して、前記前処理した木製表面に予めアクリル基を有するバインダーを3〜10ミクロンの厚さに塗布した後、平均粒子径1.5〜12ミクロンで、シリコ
ーン樹脂粒子(a)を10〜60重量%、及び、アクリル基を有するバインダー(b)90〜40重量%からなる表面触感性塗料組成物を処理基材表面に厚さ5〜15ミクロンの塗膜の厚さに形成して硬化する木製品の表面好触感性塗装方法である。
本発明は、木製品における表面の前処理は、木材界面と前記樹脂成分の界面の接合性を増大させるために、水酸基を含有するエステル系オリゴマーと多官能イソシアネート系オリ
ゴマーの塗料で前処理を行う。
【0009】
木製品における塗装表面に、アクリル基を有するバインダーを3〜10ミクロンの厚さに塗布した後、塗料の粘度をフードカップ#4の粘度計で8〜11秒である塗料をスプレ
ーガンによって外観、質感および触感を有する。
木製品の表面触感性塗料組成物に、顔料を0.01〜2.0重量%含有するものである。
木製品の表面触感性塗料組成物中のバインダーが、(メタ)アクリル基を有する化合物からなるものである。表面好触感性塗料組成物を紫外線の照射によって木製品の表面温度を20℃〜40℃の範囲に維持しながら架橋硬化させている塗装方法である。
【0010】
本発明は、平均粒子径1.5〜12ミクロンで、シリコーン樹脂粒子(a)を10〜60重量%、及び、アクリル基を有するバインダー(b)90〜40重量%からなる表面触感性塗料組成物を木製基材表面に厚さ5〜15ミクロンの塗膜形成するように塗布具によって塗装する木製品の表面好触感性塗装方法である。
シリコーン樹脂粒子(a)としては、GE東芝シリコーン(株)製のトスパール130(球状;平均粒子径3.0μm)、トスパール145A(球状;平均粒子径4.5μm)、トスパール2000B(球状;平均粒子径6.0μm)、トスパール3120(GE東芝シリコーン(株)などが例示される。
【0011】
木製品における塗装表面に、下塗りした後、塗料の粘度をフードカップ#4の粘度計で8〜11秒である塗料をスプレーガンによって外観、質感および触感を有する。
木製品の表面触感性塗料組成物に顔料成分を0.01〜2.0重量%含有するのが好ましい。
木製品の表面触感性塗料組成物中のバインダーが、(メタ)アクリル基を有する化合物からなっている木製品の表面好触感性塗装方法である。
【0012】
(メタ)アクリル基を有する化合物(m)としては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート、ならびに2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
これらは、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を併用して使用することもできる。
【0013】
表面好触感性塗料組成物を紫外線の照射によって木製品の表面温度を20℃〜40℃の範囲に維持しながら架橋硬化させる木製品の表面好触感性塗装方法である。
本発明で使用するバインダーとしては、紫外線の活性エネルギー線を照射することによって硬化するようなバインダーを含むアクリル系の硬化型塗料に使用されるもの、さらに好ましくは紫外線硬化型塗料に使用されるものである。
【0014】
活性エネルギー線の照射によって活性化学種(増感剤)を生ずる化合物としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、などのアセトフェノン類、およびベンゾフェノンなどが挙げられる。
これらの化合物は、その1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、それ自体では光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。
【0015】
平均粒子径1.5〜12ミクロンで、鉛筆硬度F以上であるシリコーン樹脂粒子(a)を10〜60重量%、及び、バインダー(b)のみの塗膜の硬度が鉛筆硬度F以上であるバインダー(b)90〜40重量%からなる塗料組成物を木製製品等の物品の表面に塗装することにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は、平均粒子径1.5〜12ミクロンで、鉛筆硬度F以上であるシリコーン樹脂粒子を10〜60重量%、及び、バインダーのみの塗膜の硬度が鉛筆硬度F以上であるバインダー90〜40重量%からなる塗料組成物を木製基材表面に塗装してなる塗装木製物品を提供する。
また本発明は、木質と塗膜界面を前処理することにより前記塗料との接着性を良くする。
【0017】
さらに機能性塗料組成物が、手触り良好であって、顔料を0.01〜2.0重量%含有する塗装木製物品を提供する。機能性塗料組成物中のバインダーが、(メタ)アクリル基を有する化合物、及び活性化学種発生化合物からなり、活性化学種の発生により硬化するバインダーである機能性塗装木製物品を提供する。塗料組成物を紫外線の照射によって架橋硬化してなる機能性塗装木製物品を提供する。機能性塗料組成物中のシリコーン樹脂粒子が、シリコーン樹脂粒子のみをフィルム状にした場合の硬度が鉛筆硬度で2H以上である塗装木製物品を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無垢材使用の木製品に非常に近い外観、と手触りであり、触感および質感を有する塗膜を有する木製の塗装物品が得られる。
特に、軽量で強度の高い木製素材に塗装処理を行った場合、無垢の木製製品に極めて近い質感を付与することが可能であり、衝撃による破損も極めて低く、耐久性に優れた質感と外観を有する塗膜をした木製塗装物品を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の方法に係る塗料組成物は、シリコーン樹脂粒子(a)及びバインダー(b)からなる。シリコーン樹脂粒子(a)は、硬質のシリコーン樹脂製である。硬質である理由は、塗膜を作製した場合、シリコーン樹脂粒子(a)が凹凸の凸状の部分に存在することにより、軟質のシリコーン粒子を用いて塗膜を作製しても手触りのよいような質感は得られない。シリコーン樹脂粒子(a)は、シリコーン樹脂粒子(a)をフィルム状にした場合の鉛筆硬度が、常温で、F以上のものであり、H以上であるものが好ましい。
【0020】
シリコーン樹脂粒子(a)の平均粒子径は1.5〜12ミクロン、好ましくは2〜8ミクロンである。
平均粒子径が上記範囲より小さすぎると、塗膜形成時の凹凸が小さくなり、表面感触効果が小さくなると同時に木製表面の質感も低下する。また、平均粒子径が厳選管理された上記範囲より大きいサイズが混入すると塗膜におけるザラ触感が低下する。
シリコーン樹脂粒子(a)の形状としては球状のものが好ましく、この理由としては不定形の粒子を使用した場合と比べてきめの細かな触感が得られるからである。
【0021】
本発明での特徴である木製の触感、外観および質感について説明すると、外観とは、処理された物品の外観を目視した場合の外観を意味する。質感とは、処理された物品に触れた場合の触感の特徴の他に、木製表面を爪で傷付けた場合や、擦りつけた場合に発せられるような、一般的な人には極めて不快と感じられるような音の持つ特徴などが要素として含まれる。
【0022】
特にこのような蝕感、質感の発現には、従来の艶消し塗料組成物では達成困難であり、前記木製表面の質感を発揮させる為の成分として硬質のシリコーン樹脂粒子が重要な要素となるものである。
バインダーの機械的特性も重要な要素であるから、本発明で使用するバインダー(b)は、硬質であることが好ましい。具体的には、バインダーのみ塗膜の鉛筆硬度が、常温で、F以上のものであり、好ましくはH以上であり、さらに好ましくは2H以上である。
この理由としては、塗装された塗膜を照射処理して短時間に硬化させることが可能であり、また感触のよく、硬度の大きい塗膜が得られやすいからである。
【0023】
本発明は、特に木材の表面処理を考慮して、高温での焼付けなどは極めて困難である場合においても、低温で短時間での硬化反応で硬度の大きい塗膜が得られやすい反応を利用するものが好ましい。
【0024】
バインダーは、(メタ)アクリル基を有する化合物及び、任意成分としての活性エネルギー線の照射によって活性化学種を生ずる化合物からなり、照射により架橋硬化してバインダー樹脂となるものである。活性化学種の化合物の添加量は、塗料組成物中の光硬化可能な成分の合計量100重量%に対して、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の割合で添加される。
【0025】
本発明に係る塗料組成物は、上記シリコーン樹脂粒子(a)10〜60重量%、及び、上記バインダー(b)90〜40重量%(シリコーン樹脂粒子(a)とバインダー(b)の合計は100重量%である)からなる。
シリコーン樹脂粒子(a)は、塗料組成物の固形分中に10〜60重量%、好ましくは40〜60重量%、さらに好ましくは45〜55重量%含有される。
【0026】
シリコーン樹脂粒子(a)の含有率が10重量%未満の場合では、シリコーン樹脂粒子(a)のみの添加では塗膜の光沢の低下が少なく、木材の表面としての外観、質感が低下するのと同時に、塗膜表面に形成される凹凸も少ないことから触感としても好ましくない。シリコーン樹脂粒子(a)の含有率が60重量%を超える場合は、バインダー(b)が少なくなり、塗膜強度が低下したり、塗膜表面にクラックが発生するなどの不具合が生じるので外観的に好ましくない。
【0027】
本発明に係る塗料組成物において、無垢木製調の一つとして重要であるが、硬質シリコーン樹脂粒子のみを使用した塗料組成物も可能であるが、この場合シリコーン樹脂粒子の含有量は、塗料固形分として45〜55重量%の範囲で、良好な艶消し外観を有すると共に質感や触感にも優れたものが得られる。
【0028】
床、階段、家具などの木製製品の部材を#240のサンドペーパーを使用した研磨機(図1)で木地研磨を施す。前記木製の部材表面に付着した研磨屑を、エアーダスター(図2)を使用して、8〜10kg/cm2のエアー圧のエアーブローによって除去する。次に前記表面にスプレーガン(図3)で多官能性エステル系オリゴマー、あるいは多官能性イソシアネートオリゴマーとを酢酸アルキル類、プチレングリコールモノメチルアセテート類などを溶媒に溶かした物からなる前処理液で行う。
【0029】
これは素材の狂い、割れ等の防止を目的としたものである。とくに木質の表面素材の複合化と改質処理を高めるために、溶媒としては乾燥速度の遅いタイプのセロソルブなどを使用して、スプレーガンの口径は1.3ミリのガンを使用し、3〜4kg/cm2程度のエアー圧で、しかもエアー量を少なくして塗布する。またより安定した塗膜面を得るために低圧霧化式スプレーガンを使用する。
【0030】
塗膜面を乾燥した後、再度下塗り用シーラーの表面を#600サンドペーパー付きのエアーサンダー(図4)で平滑に研磨をする。この研磨の目的は表面の仕上がりを良くするだけでなく、目荒しによるアンカーエコーでの上塗り塗料との密着性を向上させる。
なおエアーサンダーでの研磨ができていない箇所では、(株)シャイネックスのサンドシートEX(商品名)、または(株)コバックスのサンドボール(商品名)などを使用して、研磨漏れがないようにする。
【0031】
次に上塗り工程における使用する好触感性塗料は、シリコーン粒子を含むアクリル系の塗料であるが、図5の塗装表面の模式図に示すように塗料組成物のシリコーン樹脂粒子の厚さや配列具合によりその触感に違いを生じるためそれに見合った塗布作業を行う。下塗りの層とシリコーン粒子を含む好触感性塗料の層とを併せても10〜25μ程度の膜厚になるように仕上がりの均一性を得る。また、膜厚が薄いため被塗物表面の埃が塗膜表面の異物となりやすいため、エアーブローだけでなく、静電気の除去などによって清浄度の高い表面状態にする。
【0032】
好触感性塗料の下塗りであるアクリル基を有するバインダーを3〜5ミクロンの厚さに塗布する。この場合、良好な塗膜面を得るために、口径1.0mm程度のスプレーガンを使用し、4〜5kg/cm2の吹きつけ空気圧にて作業を行う。
好触感性塗料においては、図5の模式図に示すように、シリコーン樹脂粒子の配列の状態がその触感を決定づけるため、低圧霧化式スプレーガンで1.3ミリの口径を使用し、吹きつけ空気圧は2kg/cm2程度で行う。
【0033】
塗膜表面を自然乾燥するか、熱風などによる強制乾燥するかによって、塗料の溶媒を完全に飛散させる。塗膜表面で残留する溶媒が減少したら、ハロゲンランプ式照射装置を用い積算エネルギー、500mj/cm2の紫外線照射を行い、好触感性塗膜で十分にコーティングされた木製製品を得た。
本発明に係る塗料組成物を塗装処理して得られる塗膜の厚みは、5〜20ミクロン、好ましくは8〜12ミクロンである。
以下、実施例により本発明を説明するが、これによって本発明は限定されるものではない。
【0034】
使用原料
前処理(シーラー層)の塗料
ポリヂュールF(ミクニペイント(株) ポリウレタン樹脂をシンナー溶媒にて使用)を使用した。
シリコーン樹脂粒子
トスパール3120(GE東芝シリコーン(株)製;球状;平均粒子径2.0ミクロン、フィルム状にしたときの鉛筆硬度2H以上)
バインダーの調製
アロニックスM402(東亜合成(株)製多官能アクリルモノマー(ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート))45.0g、アロニックスM309(東亜合成(株)製多官能アクリルモノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート))5.0g、バインダーを調製した。
【0035】
好触感性塗料の調製
前記バインダーを50g(固形分25.5g):トスパール3120(球状;平均粒子径12.0μm)30g、TE10P2HO(岐阜セラック(株)製ポリエチレンワックスのトルエン/酢酸エチル混合溶剤溶液;固形分10%)8.0g、ノルマルブタノール12.0gを攪拌して塗料組成物を得た。シリコーン樹脂粒子の含有量は塗料組成物固形分中に53.3重量%であった。
塗膜物品の作製
【0036】
上記塗料組成物を、ブチルセルソルブ25重量部、イソプロピルアルコール25重量部、トルエン25重量部、メチルイソブチルケトン15重量部、ダイアセトンアルコール10重量部からなる塗料用シンナーで稀釈し、塗料粘度がフォードカップ#4で11秒になるように調整した。フローリング床の木製品に、紫外線照射により硬化させて、木製製品を得た。紫外線照射はハロゲンランプ式照射装置(図6)を用い積算エネルギーとして500mJ/cm2の照射を行った。
【実施例1】
【0037】
図7に示すようなフローリングの木製床材を#240のサンドペーパーを使用した研磨機(図1)で素地研磨を施す。フローリングの表面に付着した研磨屑をエアー圧、8〜10kg/cm2のエアーブローを発生するエアーダスター(図2)によって取り除いた。 次にイソシアネートオリゴマーとシンナー系溶媒からなる下塗り用シーラーをスプレーガンの口径は1.3ミリのガンを使用し、エアー圧を3kg/cm2程度のスプレーガン(図3)によって塗布した。とくに溶媒としては乾燥速度の遅いタイプを使用して、しかもエアー量を少なくして塗布した。
【0038】
乾燥後#600サンドペーパーで下塗り用シーラーの表面をエアーサンダー(図4)で平滑に研磨を行った。上記研磨した表面にさらにアクリルモノマー(アロニックスM402)のバインダーをスプレーガンによって5ミクロンの下塗りを行った。
次に上塗りは、好触感性塗料(シリコーン樹脂粒子50重量%、バインダー50重量%、シリコーン樹脂の粒子の径:2〜10ミクロン)で、アンダーコートと好触感性塗料とを併せても15ミクロン程度の膜厚で、好触感性塗料の下塗りであるアクリル基を有するバインダーを5ミクロンの厚さに塗布する。この場合のスプレーガンは口径が1.0ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は4〜5kg/cm2にて作業を行った。
【0039】
好触感性塗料においては、図5に示す模式図に示すように、シリコーン樹脂粒子の配列の状態、低圧霧化式スプレーガンで口径が1.3ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は2kg/cm以下で行った。熱風などによる強制乾燥で溶媒を完全に放散させ、残留溶剤がなくなった後、ハロゲンランプ式照射装置を用い積算エネルギー、500mj/cm2の紫外線照射を行い好触感性塗膜でコーティングされたフローリング床を得た。
【0040】
フローリングの木製床は、木製の触感、外観および質感について、外観は、処理された物品の外観を目視した場合非常に良好であった。質感は、処理された物品に触れた場合の触感の特徴の他に、木製表面を爪で傷付けた場合や、擦りつけた場合に発せられるような、一般的な人には極めて不快と感じられるような音質を持つ。とくに無垢の木製製品に極めて近い質感を付与し、衝撃による破損も極めて低く、耐久性に優れた質感と外観を有する塗膜をしたフローリング床であった。
【実施例2】
【0041】
図8に示すような木製階段踏み板を#240のサンドペーパーを使用した研磨機(図1)で素地研磨を施す。フローリングの表面に付着した研磨屑をエアー圧、8〜10kg/cm2のエアーブローを発生するエアーダスター(図2)によって取り除いた。 次に多官能性活性イソシアネートオリゴマーと溶媒からなる下塗り用シーラーをスプレーガンの口径は1.3ミリのガンを使用し、エアー圧を3kg/cm2程度のスプレーガン(図3)によって塗布した。とくに溶媒としては乾燥速度の遅いタイプを使用して、しかもエアー量を少なくして塗布した。
【0042】
乾燥後#600サンドペーパーで下塗り用シーラーの表面をエアーサンダー(図4)で平滑に研磨を行った。上記研磨した表面にさらにアクリルモノマー(アロニックスM402)のバインダーをスプレーガンによって5ミクロンの下塗りを行った。
次に上塗りは、好触感性塗料(シリコーン樹脂粒子50重量%、バインダー50重量%、シリコーン樹脂の粒子の径:2〜10ミクロン)を10ミクロン程度の厚さに塗布する。この場合のスプレーガンは口径が1.0ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は4〜5kg/cm2にて作業を行った。
【0043】
好触感性塗料においては、模式図5に示すように、シリコーン樹脂粒子の配列の状態、低圧霧化式スプレーガンで口径が1.3ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は2kg/cm以下で行った。熱風などによる強制乾燥で溶媒を完全に放散させ、残留溶剤がなくなった後、図6のハロゲンランプ式照射装置を用い積算エネルギー、500mj/cm2の紫外線照射を行い、好触感性塗膜でコーティングされた階段踏み板を得た。
【0044】
木製階段踏み板は、無垢の木製製品に極めて近い質感を付与し、衝撃による破損も極めて低く、耐久性に優れた質感と外観を有する塗膜をした階段踏み板であった。
【実施例3】
【0045】
図9に示すような木製椅子の座を#240のサンドペーパーを使用したエアーサンダー(図5)で素地研磨を施す。木地の表面に付着した研磨屑をエアー圧、8〜10kg/cm2のエアーブローを発生するエアーダスター(図2)によって取り除いた。 次に多官能性活性イソシアネートオリゴマーと溶媒からなる下塗り用シーラーをスプレーガンの口径は1.3ミリのガンを使用し、エアー圧を3kg/cm2程度のスプレーガン(図3)によって塗布した。とくに溶媒としては乾燥速度の遅いタイプを使用して、しかもエアー量を少なくして塗布した。
【0046】
乾燥後#600サンドペーパーで下塗り用シーラーの表面をエアーサンダー(図5)で平滑に研磨を行った。上記研磨した表面にさらにアクリルモノマー(アロニックスM402)のバインダーをスプレーガンによって5ミクロンの下塗りを行った。
次に上塗りは、好触感性塗料(シリコーン樹脂粒子50重量%、バインダー50重量%、シリコーン樹脂の粒子の径:2〜10ミクロン)を5ミクロンの厚さに塗布する。この場合のスプレーガンは口径が1.0ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は4〜5kg/cm2にて作業を行った。
【0047】
好触感性塗料においては、模式図5に示すように、シリコーン樹脂粒子の配列の状態、低圧霧化式スプレーガンで口径が1.3ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は2kg/cm以下で行った。熱風などによる強制乾燥で溶媒を完全に放散させ、残留溶剤がなくなった後、ハロゲンランプ式照射装置を用い積算エネルギー、500mj/cm2の紫外線照射を行い、好触感性塗膜でコーティングされた椅子の木製フレームを得た。
【0048】
木製椅子の座は、木製の触感、外観および質感について、非常に良好であった。木製表面を爪で傷付けた場合や、擦りつけた場合に発せられるような、一般的な人には極めて不快と感じられなかった。耐久性に優れた質感と外観を有する塗膜をした木製椅子の座であった。
【実施例4】
【0049】
図10に示すような自動車の木製ハンドルを#240のサンドペーパーを使用した研磨工具(図5)で素地研磨を施す。フローリングの表面に付着した研磨屑をエアー圧、8〜10kg/cm2でエアーダスター(図2)によって取り除いた。 次に多官能性活性イソシアネートオリゴマーと溶媒からなる下塗り用シーラーをスプレーガンの口径は1.3ミリのガンを使用し、3kg/cm2程度の吹き付けエアー圧でスプレーガン(図3)によって塗布した。とくに溶媒としては乾燥速度の遅いタイプを使用して、しかもエアー量を少なくして塗布した。
【0050】
乾燥後#600サンドペーパーで下塗り用シーラーの表面をエアーサンダー(図5)と手研磨で平滑に研磨を行った。上記研磨した表面にさらにアクリルモノマー(アロニックスM402)のバインダーをスプレーガンによって5ミクロンの下塗りを行った。
次に上塗りは、好触感性塗料(シリコーン樹脂粒子50重量%、バインダー50重量%、シリコーン樹脂の粒子の径:2〜10ミクロン)を5ミクロン程度の厚さに塗布する。この場合のスプレーガンは口径が1.0ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は4〜5kg/cm2にて作業を行った。
【0051】
好触感性塗料においては、模式図に示すように、シリコーン樹脂粒子の配列の状態、がその触感を決定づけるため、低圧霧化式スプレーガンで口径が1.3ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は2kg/cm以下で行った。熱風などによる強制乾燥で溶媒を完全に放散させ、残留溶剤がなくなった後、ハロゲンランプ式照射装置を用い積算エネルギー、500mj/cm2の紫外線照射を行い、好触感性塗膜でコーティングされた木製自動車ハンドルを得た。
【0052】
自動車の木製ハンドルは、木製製品に極めて近い質感を付与し、衝撃による破損も極めて低く、耐久性に優れた質感と外観を有する塗膜をした自動車の木製ハンドルであった。
[比較例1]
【0053】
実施例1と同様に、フローリングの木製床材を#240のサンドペーパーを使用した研磨機(図1)で素地研磨を施す。フローリングの表面に付着した研磨屑をエアー圧、8〜10kg/cm2のエアーブローを発生するエアーダスター(図2)によって取り除いた。 下塗り用シーラー塗膜の表面をつけず、上記研磨した表面にさらにアクリルモノマー(アロニックスM402)のバインダーをスプレーガンによって5ミクロンの下塗りを行った。
【0054】
この場合のスプレーガンは口径が1.0ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は4〜5kg/cm2にて作業を行った。
次に上塗りは、好触感性塗料(シリコーン樹脂粒子50重量%、バインダー50重量%、シリコーン樹脂の粒子の径:2〜10ミクロン)においては、通常のスプレーガンで口径が1.3ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は通常の塗装作業の5kg/cm2で膜厚が20ミクロン以上になるように塗布した。
【0055】
熱風などによる強制乾燥で溶媒を完全に放散させ、残留溶剤がなくなった後、ハロゲンランプ式照射装置を用い積算エネルギー、500mj/cm2の紫外線照射を行い、好触感性塗膜でコーティングされたフローリング床を得た。しかし実施例1で得た塗膜と違い触感がザラつき塗膜に爪を立てると簡単に剥離した。フローリングの木製床は、木製の触感、外観および質感について、外観は、処理された物品の外観を目視した場合よくなかった。
[比較例2]
【0056】
実施例1と同様に、フローリングの木製床材を#240のサンドペーパーを使用した研磨機(図1)で素地研磨を施す。フローリングの表面に付着した研磨屑をエアー圧、8〜10kg/cm2のエアーブローを発生するエアーダスター(図2)によって取り除いた。 下塗り用シーラー塗膜の表面をつけず、上記研磨した表面にさらにアクリルモノマー(アロニックスM402)のバインダーをスプレーガンによって5ミクロンの下塗りを行った。
この場合のスプレーガンは口径が1.0ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は4〜5kg/cm2にて作業を行った。
【0057】
次に上塗りは、(シリコーン樹脂粒子70重量%、バインダー30重量%)の塗料によって塗布した。
通常のスプレーガンで口径が1.3ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は通常の塗装作業の5kg/cm2で膜厚が15ミクロン以上になるように塗布した。熱風などによる強制乾燥で溶媒を完全に放散させ、残留溶剤がなくなった後、ハロゲンランプ式照射装置を用い積算エネルギー、500mj/cm2の紫外線照射を行い、好触感性塗膜でコーティングされたフローリング床を得た。しかし実施例1で得た塗膜と違い触感がザラつき塗膜に爪を立てると簡単に剥離した。
[比較例3]
【0058】
実施例1と同様に、フローリングの木製床材を#240のサンドペーパーを使用した研磨機(図1)で素地研磨を施す。フローリングの表面に付着した研磨屑をエアー圧、8〜10kg/cm2のエアーブローを発生するエアーダスター(図2)によって取り除いた。 下塗り用シーラー塗膜の表面をつけず、上記研磨した表面にさらにアクリルモノマー(アロニックスM402)のバインダーをスプレーガンによって5ミクロンの下塗りを行った。
この場合のスプレーガンは口径が1.0ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は4〜5kg/cm2にて作業を行った。
【0059】
次に上塗りは、好触感性塗料(シリコーン樹脂粒子50重量%、バインダー50重量%、シリコーン樹脂粒子:2〜25ミクロン)においては、通常のスプレーガンで口径が1.3ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は通常の塗装作業の5kg/cm2で膜厚が20ミクロン以上になるように塗布した。熱風などによる強制乾燥で溶媒を完全に放散させ、残留溶剤がなくなった後、ハロゲンランプ式照射装置を用い積算エネルギー、500mj/cm2の紫外線照射を行い、好触感性塗膜でコーティングされたフローリング床を得た。しかし実施例1で得た塗膜と違い触感がザラつき塗膜に爪を立てると簡単に剥離した。フローリングの木製床は、木製の触感、外観および質感について、外観は、処理された物品の外観を目視した場合よくなかった。
[比較例4]
【0060】
実施例1と同様に、フローリングの木製床材を#240のサンドペーパーを使用した研磨機(図1)で素地研磨を施す。フローリングの表面に付着した研磨屑をエアー圧、8〜10kg/cm2のエアーブローを発生するエアーダスター(図2)によって取り除いた。 下塗り用シーラー塗膜の表面をつけず、上記研磨した表面にさらにアクリルモノマー(アロニックスM402)のバインダーをスプレーガンによって5ミクロンの下塗りを行った。
【0061】
この場合のスプレーガンは口径が1.0ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は4〜5kg/cm2にて作業を行った。
次に上塗りは、好触感性塗料(シリコーン樹脂粒子50重量%、バインダー50重量%)においては、通常のスプレーガンで口径が1.3ミリのスプレーガンを使用し、吹きつけ空気圧は通常の塗装作業の5kg/cm2で膜厚が20ミクロン以上になるように塗布した。熱風などによる強制乾燥で溶媒を完全に放散させ、残留溶剤がなくなった後、紫外線照射をせずに、通常の乾燥のみ行った。好触感性塗膜でコーティングされたフローリング床を得た。しかし実施例1で得た塗膜と比較して塗膜形成が十分でなく、違い触感がザラつき塗膜の形成ができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】研磨機の図
【図2】本発明に使用したエアーダスター図
【図3】本発明に使用したスプレーガン図
【図4】本発明に使用したエアーサンダー図
【図5】塗膜表面の模式図
【図6】紫外線照射装置の図
【図7】フローリング床板(a)と施工床板(b)
【図8】階段の木製踏み板
【図9】椅子の座板
【図10】自動車の木製ハンドル
【図11】塗膜の工程図
【符号の説明】
【0063】
1.挿入口
2.取り出し口
3.ペーパー交換部
4.エアー吹き出し口
5.塗料カップ
6.塗料吹き出し口
7.パタン調整部
8.塗料吐出調整部
9.研磨部材
10.エアーモーター部
11.エアー吹き出し部
12.エアー供給部
13.木製木地
14.シーラー層
15.下塗り層
16.上塗り層
17.シリコーン粒子
18.照射ランプ
19.電源
20.フローリング床板
21.オザネ
22.メザネ
23.施工状況
24.巾木
25.壁
26.踏み板
27.ササラ
28.蹴込み板
29.木製座、および背部
30.スチールパイプ脚
31.リング
32.スポーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製品の表面を前処理して、前記前処理した木製表面に予めアクリル基を有するバインダ
ーを3〜10ミクロンの厚さに塗布した後、平均粒子径1.5〜12ミクロンで、シリコーン樹脂粒子(a)を10〜60重量%、及び、アクリル基を有するバインダー(b)90〜40重量%からなる表面触感性塗料組成物を処理基材表面に厚さ5〜15ミクロンの塗膜厚に形成して硬化することを特徴とする木製品の表面好触感性塗装方法。
【請求項2】
請求項1において、木製品における表面の前処理は、木材表面と前記樹脂成分の接合性を増大させるために、水酸基を含有するエステル系オリゴマーと多官能イソシアネート系オ
リゴマー含浸塗装法による前処理技術を特徴とする木製品の表面好触感性塗装方法。
【請求項3】
請求項1において、前処理した木製品における塗装表面に、予めアクリル基を有するバイ
ンダーを3〜10ミクロンの厚さに塗布した後、塗料の粘度をフードカップ#4の粘度計で8〜11秒である表面触感性塗料組成物の塗料をスプレーガンの塗布具によって外観、質感および触感を有することを特徴とする木製品の表面好触感性塗装方法。
【請求項4】
請求項1において、木製品の表面触感性塗料組成物に、顔料成分を0.01〜2.0重量%を含有することを特徴とする木製品の表面好触感性塗装方法。
【請求項5】
請求項1において、木製品の表面触感性塗料組成物のバインダーは、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、を主体とする(メタ)アクリル基を有する化合物であることを特徴とする木製品の表面好触感性塗装方法。
【請求項6】
請求項1において、表面好触感性塗料組成物の硬化は、ハロゲンランプ式照射装置を用い
た積算エネルギー500mj/cm2の紫外線照射によって、木製品の表面温度を20℃〜40℃の範囲に維持しながら架橋硬化させていることを特徴とする木製品の表面好触感性塗装方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−50822(P2009−50822A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222088(P2007−222088)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(307017833)株式会社 ジャパンコーティング (2)
【Fターム(参考)】