説明

木質ボード製造用活性水素成分

【課題】 曲げ強度等の機械物性に優れた木質ボードを得ること。
【解決手段】 活性水素含有基と特定のビニル重合性官能基を有し、下記(a1)〜(a3)から選ばれる1種以上の活性水素化合物(a)、または(a)とビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)を含有する木質ボード製造用活性水素成分を用いる。
(a1)ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルまたは部分不飽和アルキルエーテル
(a2)アミンの不飽和カルボン酸部分アミド化物または部分不飽和アルキル化物
(a3)ポリチオールの不飽和カルボン酸部分チオエステルまたは部分不飽和アルキルチオエーテル

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質ボード製造用活性水素成分、接着剤組成物、および木質ボードに関するものであり、更に詳しくは、木質繊維や木材小片を用いた3層パーチクルボード、ミディアムデンシティーファイバーボードなどの熱圧成形木質ボード製造用活性水素成分および接着剤組成物、並びにこれらを用いて製造される木質ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
木質繊維や木材小片を用いた木質ボードには、パーチクルボード(以下PBともいう)やインシュレーションボード(以下IBともいう)、ミディアムデンシティーファイバーボード(以下MDFともいう)、ハードボード(以下HBともいう)などがあり、住宅の床材、壁材、ドア材、防音材、断熱材、畳心材、家具部材などとして使用されている。
従来、これらの木質ボード製造用の接着剤としては熱硬化性樹脂である尿素樹脂、メラミン樹脂、多価フェノール樹脂などの、ホルマリン系樹脂が多く用いられてきた。しかし、ホルマリン系樹脂では、ホルムアルデヒドがボード内に残存し室内空気中に放散するため、シックハウス症候群の原因物質として問題となっている。
【0003】
一方、最近ではこれらのホルマリン系樹脂の代わりに、ホルムアルデヒドの放散が少ない、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、および/またはそれらの変性物を主成分とする有機ポリイソシアネートを用いた木質ボード製造用接着剤が用いられている(特許文献1参照)が、曲げ強度等の機械物性が不十分であるため密度を上げる必要があり経済的でない等の問題点があった。
【特許文献1】特開2004−209719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、使用する接着剤の量を減らしても、常態曲げ強度等の機械物性に優れた木質ボードが得られる木質ボード製造用活性水素成分ないし接着剤組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明とは、下記3発明である。
(I) 活性水素含有基と下記一般式(1)で示されるビニル重合性官能基を有し、下記(a1)〜(a3)から選ばれる1種以上の活性水素化合物(a)、または(a)とビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)を含有する木質ボード製造用活性水素成分(A)。
(a1)ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルまたは部分不飽和アルキルエーテル
(a2)アミンの不飽和カルボン酸部分アミド化物または部分不飽和アルキル化物
(a3)ポリチオールの不飽和カルボン酸部分チオエステルまたは部分不飽和アルキルチオエーテル

| (1)
CH2=C−
[式中Rは、水素、炭素数1〜15のアルキル基、または炭素数6〜21のアリール基を表す。]
(II) 上記の活性水素成分(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、必要により水および添加剤(C)から選ばれる一種以上を含有する木質ボード製造用接着剤組成物。
(III) 上記の接着剤組成物の、ビニル重合性官能基の重合と共にポリウレタン形成反応を、反応により得られるビニル重合鎖部分とポリウレタン鎖部分の架橋が起こる条件下で行わせて得られる(a)のビニル重合性官能基の重合により形成されたビニル重合鎖部分がポリウレタン鎖部分に架橋した樹脂を含有する木質ボード。
【発明の効果】
【0006】
本発明の木質ボード用活性水素成分、あるいは木質ボード製造用接着剤組成物を用いて強化された木質ボードは、従来に比べ曲げ強度等の機械物性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の木質ボード製造用活性水素成分(A)は、活性水素含有基と下記一般式(1)で示されるビニル重合性官能基を有する活性水素化合物(a)、または(a)とビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)を含有する。

| (1)
CH2=C−
[式中Rは、水素、炭素数1〜15のアルキル基、または炭素数6〜21のアリール基を表す。]
上記Rにおける炭素数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。炭素数6〜21のアリール基としては、フェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられる。
本発明の活性水素成分(A)は、上記の活性水素含有基を有する1種または2種以上の化合物で構成され、本発明の木質ボードの製造に、(A)単独あるいは有機ポリイソシアネート(B)からなる成分と共に用いられるものである。
【0008】
(a)の活性水素含有基としては、例えば、ヒドロキシル基、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基から選ばれる1種以上が挙げられる。好ましくはヒドロキシル基およびメルカプト基であり、さらに好ましくはヒドロキシル基である。
(a)中の活性水素含有基の数は、通常1個以上、好ましくは1〜8個、更に好ましくは1〜5個である。
ビニル重合性官能基としては、末端オレフィン型(1価のビニル重合性官能基)でも、内部オレフィン型でもよく、例としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基等から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中で好ましくは、(メタ)アクリロイル基、アリル基およびプロペニル基であり、更に好ましくは(メタ)アクリロイル基およびアリル基である。ここで(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタアクリロイル基を意味し、以下同様の記載法を用いる。
(a)中のビニル重合性官能基の数は、通常1個以上、好ましくは1〜10個、更に好ましくは1〜5個である。
【0009】
ビニル重合性官能基を有する活性水素化合物(a)は下記(a1)〜(a3)から選ばれる化合物であり、2種以上を併用してもよい。
(a1)ポリオール〔多価アルコール、多価フェノール、多価アルコールもしくは多価フェノールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記)付加物、アミンのAO付加物、多価アルコールとポリカルボン酸もしくはラクトンとから誘導されるポリエステルポリオールなど〕の不飽和カルボン酸部分エステルまたは部分不飽和アルキルエーテル〔とくに部分(メタ)アクリル酸エステルまたは部分アリルエーテル〕
(a2)アミンの不飽和カルボン酸部分アミド化物または部分不飽和アルキル化物〔とくに部分(メタ)アクリルアミド化物または部分アリル化物〕
(a3)ポリチオールの不飽和カルボン酸部分チオエステルまたは部分不飽和アルキルチオエーテル〔とくに部分(メタ)アクリルチオエステルまたは部分アリル化物〕
【0010】
(a1)の製造に用いる多価アルコールとしては、例えば、炭素数2〜18(好ましくは2〜12)の2価アルコール[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−および1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等]、炭素数3〜18(好ましくは3〜12)の3〜5価の多価アルコール[アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ジグリセリン;糖類およびその誘導体、例えば、α−メチルグルコシド、キシリトール、グルコース、フルクトース;等]、および炭素数5〜18(好ましくは5〜12)の6〜10価またはそれ以上の多価アルコール[6〜10価のアルカンポリオール、および6〜10価のアルカンポリオールもしくは3〜5価のアルカンポリオールの分子内もしくは分子間脱水物、例えば、ジペンタエリスリトール;糖類およびその誘導体、例えば、ソルビトール、マンニール、ショ糖;等]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
(a1)の製造に用いる多価フェノールとしては、多価フェノール〔単環多価フェノール(ハイドロキノン等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF等)など〕、3〜5価の多価フェノール〔単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシン等)、3〜5価の、多価フェノール化合物のホルマリン低縮合物(数平均分子量1000以下)(ノボラック樹脂、レゾールの中間体)など〕、6〜10価またはそれ以上の多価フェノール〔6価以上の、多価フェノール化合物のホルマリン低縮合物(数平均分子量1000以下)(ノボラック樹脂、レゾールの中間体)等〕、多価フェノールとアルカノールアミンとの縮合物(マンニッヒポリオール)、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0011】
(a1)の製造に用いるポリオールのうち、アミンのAO付加物におけるアミンとしては、例えば、アンモニア;炭素数2〜20のアルカノールアミン[モノ−、ジ−もしくはトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等];炭素数1〜20のアルキルアミン[メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、オクチルアミン等];炭素数2〜6のアルキレンジアミン[エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等];アルキレン基の炭素数が2〜6のポリアルキレンポリアミン(重合度2〜8)[ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等];炭素数6〜20の芳香族アミン[アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン、ナフタレンジアミン、アントラセンジアミン等];炭素数4〜15の脂環式アミン[イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン等];炭素数4〜15の複素環式アミン[ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン等]およびこれらの2種以上の併用などが挙げられる。
【0012】
多価アルコール、多価フェノール、またはアミンに付加させるAOとしては、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−、1,3−、1,4−もしくは2,3−ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド(炭素数5〜30またはそれ以上)、スチレンオキサイドなどおよびこれらの2種以上の併用(併用する場合には、ランダム付加、ブロック付加、これらの組合せのいずれでもよい。)が挙げられる。これらのAOのうち、炭素数2〜8のものが好ましく、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものが更に好ましい。付加反応は、従来公知の通常の方法により行うことができる。1分子当たりのAOの付加モル数は、好ましくは1〜70、更に好ましくは1〜50である。上記および以下において、%は、特に記載のない限り質量%を意味する。
【0013】
(a1)の製造に用いるポリオールのうちポリエステルポリオールに用いる多価アルコールは、前記と同様のものが挙げられ、ポリカルボン酸としては、例えば、炭素数4〜18の脂肪族ポリカルボン酸[コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等]、炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸[フタル酸もしくはその異性体、トリメリット酸等]、これらのポリカルボン酸のエステル形成性誘導体[酸無水物、アルキル基の炭素数が1〜4の低級アルキルエステルなど]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。ラクトンとしては、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
(a)の製造に用いるポリオールとしては、好ましくはヒドロキシル基を2〜8個、更に好ましくは2〜6個有するものである。
【0014】
(a1)は、部分(メタ)アクリル酸エステル、および部分アリルエーテルの場合を例にとると、例えば、以上例示したポリオールを、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基が未反応で残るような当量比で、ハロゲン化(メタ)アクリルまたはハロゲン化アリルを用いて部分(メタ)アクリロイル化または部分アリル化することにより得られる。ハロゲン化(メタ)アクリルとしては、塩化(メタ)アクリロイル、臭化(メタ)アクリロイル、ヨウ化(メタ)アクリロイル、ハロゲン化アリルとしては、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリルおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
また(a1)は、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体、またはアリルアルコール等の不飽和アルコールに前記のAOを付加しても得ることができる。この場合、AOの中では、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものが好ましい。付加反応は、従来公知の通常の方法により行うことができる。AOの付加モル数は、好ましくは1〜70、更に好ましくは1〜50である。
【0015】
(a2)は、前記のアミンのうち、ポリアミンまたはアルカノールアミンと、前記のハロゲン化(メタ)アクリルまたはハロゲン化アリルを、1分子中に少なくとも1個のアミノ基または水酸基(アルカノールアミンの場合)が未反応で残るような当量比で、反応させることにより得られる。
【0016】
(a3)の製造に用いるポリチオールとしては、チオール基を2〜4個有し、炭素数2〜18のものが好ましく、例えば、エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−プロパンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、4−t−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)チオシアヌル酸、ジ(2−メルカプトエチル)スルフィド、ジ(2−メルカプトエチル)エーテルおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
(a3)は、これらポリチオールに、前記のハロゲン化(メタ)アクリルまたはハロゲン化アリルを、1分子中に少なくとも1個のチオール基が未反応で残るような当量比で、反応させることにより得られる。
【0017】
活性水素化合物(a)の活性水素価は、好ましくは50〜1900、更に好ましくは60〜1600、特に好ましくは80〜1000である。
ここで、活性水素価は、”56100/活性水素1個当たりの分子量”を意味し、活性水素を有する基が水酸基の場合、水酸基価に相当する。なお、水酸基価は、試料1gを中和するのに相当するKOHのmgであって、”56100/水酸基1個当たりの分子量”を意味する。なお、ここで56100はKOH1モルのmg数を示している。活性水素価の測定方法は、上記定義の値を測定できる方法であれば公知の方法でよく、特に限定されないが、水酸基価の場合、例えばJIS K1557に記載の方法が挙げられる。
【0018】
これら(a)の中では、好ましくは(a1)および(a2)であり、更に好ましくは(a1)であり、とくに好ましくは、多価アルコールもしくはそのAO付加物の部分アリルエーテル、および多価アルコールもしくはそのAO付加物の部分(メタ)アクリル酸エステルである。
【0019】
本発明の活性水素成分(A)中に(a)以外に、必要により、ビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)を含有してもよい。
(b)はビニル重合性官能基を実質的に有しないポリオールであり、脂肪族アミンのAO付加物(b1)、芳香族アミンのAO付加物(b2)、多価アルコールまたは多価フェノールのAO付加物(b3)、ポリマーポリオール(b4)、および前記(a1)の製造に用いるポリオールとして例示したもののうち上記以外のもの(多価アルコール等)が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
ここで「ビニル重合性官能基を実質的に有しない」とは、JIS K−1557記載の方法で測定された総不飽和度が0.2meq/g以下であることを意味する。
(b1)の脂肪族アミンとしては、1級および/または2級アミンが挙げられ、1級および/または2級アミノ基の数は、好ましくは1〜4個、更に好ましくは1〜3個であり、アミノ基に由来する活性水素の数は、好ましくは2〜8個、更に好ましくは2〜4個である。
(b1)として具体的には、前記(a1)の項で述べた、アルカノールアミン、炭素数1〜20のアルキルアミン、炭素数2〜6のアルキレンジアミン、およびアルキレン基の炭素数が2〜6のポリアルキレンポリアミン(重合度2〜8)等が挙げられる。好ましくはアルカノールアミンおよびアルキレンジアミンである。
付加するAOとして好ましいものは、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものであり、特に好ましくはPO、およびPOとEOの併用である。
AO付加反応は、従来公知の通常の方法により行うことができ、付加時に用いる触媒としては、通常用いられるアルカリ触媒(KOH、CsOH等)の他、特開2000−344881号公報に記載の触媒〔トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等〕、特開2002−308811号公報に記載の触媒(過塩素酸マグネシウム等)を用いてもよい(以下のAO付加物も同様)。
【0020】
(b2)の芳香族アミンとしては、前記(a1)の項で述べた、炭素数6〜20の芳香族アミン等が挙げられる。好ましくはアニリン、フェニレンジアミン、およびトリレンジアミンである。
付加するAOとして好ましいものは、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものであり、特に好ましくはPO、およびPOとEOの併用である
【0021】
(b3)の多価アルコールとしては、(a1)の製造に用いる多価アルコールとして例示したものが挙げられる。
(b3)の多価フェノールとしては、(a1)の製造に用いる多価フェノールとして例示したものが挙げられる。
付加するAOとして好ましいものは、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものであり、特に好ましくはPO、およびPOとEOの併用である。
【0022】
(b4)のポリマーポリオールとしては、通常ポリウレタンフォームに使用されるもの、例えば、前記のポリカルボン酸に前記のAOを付加したポリエーテルポリオール、前記ポリエステルポリオールおよびそのAO付加物、低分子量ポリオール(例えば前記多価アルコール)、前記アルカノールアミン、および前記(b3)から選ばれる1種以上のポリオール中で、ビニルモノマー(アクリロニトリル、スチレンなど)を重合して得られるポリマーポリオール、並びにこれらの混合物が挙げられる。上記AOとして好ましいものは、POおよび/またはEOである。これらの中で好ましくは(b3)から得られるポリマーポリオールである。
(b4)の製造方法は、従来のポリマーポリオールにおける重合法と同様に行うことができる。例えば、必要により分散剤を含むポリオール中で、ビニルモノマーを重合開始剤の存在下に重合させる方法(米国特許第3383351号明細書等に記載の方法)が挙げられる。また、重合は、バッチ式でも連続式でも行うことができ、常圧下、加圧下または減圧下において重合することができる。必要に応じて、溶剤、連鎖移動剤を使用することができる。(b4)の重合体の体積平均粒子径は0.5〜15μmが好ましい。
【0023】
(b)としては、好ましくはヒドロキシル基を2〜8個、更に好ましくは2〜6個有するものが好ましく、(b)の水酸基価は、好ましくは50〜1900、更に好ましくは60〜1600、特に好ましくは80〜1000である。
これら(b)の中で、好ましいものは(b3)および多価アルコールであり、さらに好ましくは(b3)の中でも多価アルコールのAO付加物である。
【0024】
活性水素成分(A)中のビニル重合性官能基の濃度は、好ましくは0.6〜62%、更に好ましくは1〜40%、特に好ましくは2〜20%である。0.6%以上だと木質ボードの曲げ強度が発現し易く、62%以下ではウレタン化反応と同時に重合反応を進行させるのが容易である。
ここで、ビニル重合性官能基の濃度は、活性水素成分(Zグラム)に十分な量の水酸化カリウムのエタノール溶液を加え、密閉化70℃で24時間アルカリ分解した後、分取液体クロマトグラフィーにてビニル基含有成分(Eグラム)を分取し、次式により求める。
ビニル重合性官能基濃度(%)=(E/Z)×100
【0025】
活性水素成分(A)中の(a)と(b)の混合比は、好ましくは100/0〜0.5/99.5、更に好ましくは50/50〜0.8/99.2、特に好ましくは30/70〜1/99である。(a)の比率が0.5%以上だと木質ボードの曲げ強度が発現しやすくなる。(a)が50%以下ではウレタン化反応と同時に重合反応を進行させるのが容易となる。
【0026】
本発明の木質ボード製造用接着剤組成物で使用される有機ポリイソシアネート(B)としては、イソシアネート基を分子内に2個以上有する化合物であればよく、ポリウレタン樹脂等の製造に通常使用されるものを用いることができる。このようなイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシヌアレート基、またはオキサゾリドン基含有変性物など)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0027】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物などが挙げられる。具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0028】
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、ショ糖変性TDI、ひまし油変性MDIなどが挙げられる。
本発明で用いる有機ポリイソシアネート(B)としては、好ましくは芳香族ポリイソシアネートであり、更に好ましくは2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、並びにそれらの変性物から選ばれる1種以上のMDI系ポリイソシアネートを主成分とするものである。これらの主成分の含有量は、好ましくは40%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0029】
本発明の接着剤組成物中の(A)と(B)の配合比は、成形品の機械物性の点から、好ましくは5/95〜95/5、更に好ましくは10/90〜75/25である。
【0030】
本発明の組成物中には、必要に応じ水を添加することができる。活性水素成分(A)100部に対する水の添加量は、好ましくは30部以下、更に好ましくは0.5〜25部、特に好ましくは1〜15部である。30部以下とすることによりイソシアネートとの反応による二酸化炭素が発生量が少量であり、外観良好な木質ボードを得ることができ、0.5部以上では木質ボードの曲げ強度が良好である。
なお、上記および以下において、部は、特に記載のない限り質量部を意味する。
【0031】
本発明の組成物において、必要に応じて添加剤(C)を用いることができる。
(C)のうちウレタン化触媒としては、3級アミン触媒(例えばトリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N、N、N’、N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジアミノビシクロオクタン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7など)、および/または金属触媒、(例えばオクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛など)を用いることができる。ウレタン化触媒の量は、活性水素成分(A)100部に対して、好ましくは10部以下、更に好ましくは0.01〜5.0部、特に好ましくは0.1〜3.5部である。10部以下ではウレタン化反応と同時に重合反応を進行させるのが容易であり、0.01部以上では、キュアー性の良好な木質ボードが得られる。
【0032】
(C)のうちラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物(例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタンなど)、有機過酸化物(例えばジベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、過酸化物とジメチルアニリンとの組み合わせ(レドックス触媒)などの水溶性ラジカル重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤の量は、活性水素成分(A)100部に対して、好ましくは3部以下、更に好ましくは0.001〜1部、特に好ましくは0.01〜1部である。3部以下ではウレタン化反応と同時に重合反応を進行させるのが容易であり、0.001部以上では、キュアー性の良好な木質ボードが得られる。
【0033】
その他の添加剤(C)として、着色剤(染料、顔料)、可塑剤(フタル酸エステル、アジピン酸エステルなど)、有機充填剤(合成短繊維、熱可塑性もしくは熱硬化性樹脂からなる中空微小球など)、難燃剤(リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステルなど)、老化防止剤(トリアゾール系、ベンゾフェノン系など)、抗酸化剤(ヒンダード多価フェノール系、ヒンダードアミン系など)、離型剤(ワックス系、金属石鹸系、またはこれらの混合系)など公知の添加剤の存在下で反応させることができる。また、前記(a)を希釈剤として用いた添加剤〔例えば、アミン系触媒の(a)溶液〕を用いてもよい。
活性水素成分(A)100部に対する添加量は、着色剤、可塑剤、有機充填材、および難燃剤は、好ましくは30部以下、更に好ましくは20部以下である。老化防止剤は、好ましくは1部以下、更に好ましくは0.5部以下である。抗酸化剤は、好ましくは1部以下、更に好ましくは0.5部以下である。
添加剤(C)の総量は、(A)100部に対して、好ましくは50部以下、更に好ましくは30部以下、特に好ましくは20部以下である。50部以下であると、曲げ強度が良好な木質ボードが得られる。
【0034】
本発明に係る木質ボードは、例えば、従来の木質ボード(PB、IB、MDF、HBなど)を原料とし、それに本発明の接着剤組成物をハケ塗り、または浸透によりボード内部に含浸させた後に熱圧加工することで得られる。あるいは、解繊した木質繊維および/または木屑などの木材小片に本発明で得られる接着剤組成物を含浸させた後に熱圧加工して得てもよい。
【0035】
ハケ塗りは接着剤組成物を原料の木質ボードに、通常用いられるハケでハケ塗りすることで実施するが、活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)と、必要により水および/または添加剤(C)はあらかじめ混合し、木質ボードに含侵させる前に接着剤組成物を作成しておいても、2成分以上に分けて別々にハケ塗りして、木質ボード中で接着剤組成物を形成してもよい。
浸透させる場合は、接着剤組成物に木質ボードを浸漬することで実施するが、ハケ塗りの場合と同様に、活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)と、必要により水および/または添加剤(C)はあらかじめ混合しておいても、別々に浸透させてもよい。 ハケ塗り、浸透の回数は含浸量により任意に設定することができる。
【0036】
また、本発明の木質ボードに含浸させる本発明の接着剤組成物は、含浸前の原料木質ボードの質量に対し、0.1〜50%であることが望ましい。更に好ましくは0.5〜40%、特に好ましくは1〜30%である。0.1%以上であると曲げ強度が良好な木質ボードが得られ、50%以下であると木質ボードに含浸させたあと、熱圧加工しても接着剤成分が染み出ることがない。
【0037】
上記の方法で接着剤組成物を含侵させた木質ボードを、熱圧加工することにより本発明の木質ボードが得られるが、熱圧加工時の条件としては、熱盤温度は、好ましくは100〜220℃、更に好ましくは150〜210℃であり、熱盤圧力は、好ましくは2.5〜3.5MPaである。(a)のビニル重合性官能基のビニル重合は、熱圧加工時の熱またはあらかじめ添加していたラジカル重合開始剤の分解により進行する。上記の条件ではビニル重合性官能基の重合と共にポリウレタン形成反応が並行して進行する。
なお、本発明の接着剤組成物の代わりに本発明の木質ボード製造用活性水素成分(A)のみを用いて、同様の方法で木質ボードを製造することもできるが、接着剤組成物を用いるのが好ましい。
【0038】
本発明の木質ボードは、ビニル重合性官能基の重合と共にポリウレタン形成反応を、反応により得られるビニル重合鎖部分とポリウレタン鎖部分の架橋が起こる条件下で行わせることで得られる。ここで、ビニル重合性官能基の重合と共にポリウレタン形成反応をビニル重合鎖部分とポリウレタン鎖部分の架橋が起こる条件下で行わせるということは、ビニル重合性官能基の重合とポリウレタン形成反応とを、少なくとも一部の期間並行して行わせることを意味する。架橋密度を上げて、機械的物性を向上させるためには、一方の反応で硬化して樹脂が形成されてしまう前に、もう一方の反応を開始させて、2つの反応を同時に行わせるのが望ましい。
【0039】
本発明の接着剤組成物、あるいは本発明の活性水素成分(A)を用いて得られる、本発明の木質ボードの密度は、0.1〜10g/cm3が好ましく、0.2〜3g/cm3が更に好ましい。
本発明の木質ボードは、本発明の接着剤組成物、あるいは本発明の活性水素成分(A)を用いることにより、ボードの材料間の結合が強固となり、外部からの応力に対して破断されにくくなり、曲げ強度等の機械物性が強化される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0041】
実施例および比較例における各原料は次の通りである。
(1)ビニル重合性官能基含有活性水素化合物(a)
a−1:アクリル酸にPOを付加させた水酸基価432のビニル重合性官能基含有活性水素化合物
a−2:メタクリル酸にPOを付加させた水酸基価153のビニル重合性官能基含有活性水素化合物
a−3:アリルアルコールにPOを付加させた水酸基価302のビニル重合性官能基含有活性水素化合物
a−4:アクリル酸にEOを付加させた水酸基価484のビニル重合性官能基含有活性水素化合物
a−5:グリセリンとメタクリル酸を反応させた水酸基価701のビニル重合性官能基含有活性水素化合物
a−6:グリセリンとメタクリル酸を反応させた水酸基価246のビニル重合性官能基含有活性水素化合物
(2)ビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)
b−1:グリセリンにPOを付加させた水酸基価281のポリオール
b−2:ペンタエリスリトールにPOを付加させた水酸基価561のポリオール
b−3:プロピレングリコール(旭電化工業(株)製)
(3)ラジカル重合開始剤:t−ブチルハイドロパーオキサイド〔日本油脂(株)製「パーブチルH−69」〕
【0042】
(4)有機ポリイソシアネ−ト(B):粗製MDI〔日本ポリウレタン工業(株)製「MR−200」〕、NCO%=31.0
【0043】
なお、表1に示した測定条件は次のとおりである。
常態曲げ強度は、JIS−A5908に準じて測定した。
ビニル重合性官能基濃度の測定条件は下記のとおりである。
装置:LC−09〔日本分析工業(株)製〕
カラム:JAIGEL 3H+2H+2H
溶媒:クロロホルム
流速:2.8ml/min
試料濃度:2%
注入量:3ml
分取回数:数回〜数十回
【0044】
実施例1〜16、比較例1〜5
木質ボードの含浸熱圧加工:
30cm×30cm×0.5cm、重量230gの市販のMDFに、表1記載の部数の水およびラジカル重合開始剤をあらかじめ添加混合した活性水素成分(A)と、有機ポリイソシアネート(B)とをハケで交互に〔実施例の一部は(A)のみを、比較例の一部は(B)と水のみを〕合計で6回塗りつけ十分含浸させた後、熱プレス機で熱圧成形し木質ボードを得た。(熱盤温度:180℃、熱盤圧力:3MPa、加圧時間:180秒)
【0045】
各実施例および比較例により得られた木質ボードの、ビニル重合性官能基濃度および常態曲げ強度の測定結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示されるように、本発明の木質ボード製造用接着剤組成物または活性水素成分(A)を含浸させたMDFは、有機ポリイソシアネート(B)のみを含浸したもの、および従来のポリオールを含浸させたものに比べ、同じ接着剤量で比較した場合、常態曲げ強度に優れる結果が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の活性水素成分を含有する本発明の木質ボード製造用接着剤組成物、または本発明の活性水素成分を用いることにより、機械物性に優れた木質ボードを得ることができる。本発明の木質ボードは、機械物性に優れていることから、住宅の床材、壁材、ドア材、防音材、断熱材、畳心材、家具部材等の用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素含有基と下記一般式(1)で示されるビニル重合性官能基を有し、下記(a1)〜(a3)から選ばれる1種以上の活性水素化合物(a)、または(a)とビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)を含有する木質ボード製造用活性水素成分(A)。
(a1)ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルまたは部分不飽和アルキルエーテル
(a2)アミンの不飽和カルボン酸部分アミド化物または部分不飽和アルキル化物
(a3)ポリチオールの不飽和カルボン酸部分チオエステルまたは部分不飽和アルキルチオエーテル

| (1)
CH2=C−
[式中Rは、水素、炭素数1〜15のアルキル基、または炭素数6〜21のアリール基を表す。]
【請求項2】
活性水素化合物(a)が分子内に、1〜10個のビニル重合性官能基と1〜8個の活性水素含有基を有し、かつ活性水素価が50〜1900である請求項1記載の活性水素成分(A)。
【請求項3】
活性水素成分(A)中のビニル重合性官能基濃度が0.6〜62質量%である請求項1または2記載の活性水素成分(A)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の活性水素成分(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、必要により水および添加剤(C)から選ばれる一種以上を含有する木質ボード製造用接着剤組成物。
【請求項5】
有機ポリイソシアネート(B)が、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、並びにそれらの変性物から選ばれる1種以上を主成分とする請求項4記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項4または5記載の接着剤組成物の、ビニル重合性官能基の重合と共にポリウレタン形成反応を、反応により得られるビニル重合鎖部分とポリウレタン鎖部分の架橋が起こる条件下で行わせて得られる(a)のビニル重合性官能基の重合により形成されたビニル重合鎖部分がポリウレタン鎖部分に架橋した樹脂を含有する木質ボード。

【公開番号】特開2007−92047(P2007−92047A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234722(P2006−234722)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】