説明

木質建材

【課題】優れた触感を実現し、さらに意匠性、耐汚染性、および耐擦傷性も有する木質建材を提供する。
【解決手段】シリカ微粒子(A)、ポリエチレン微粒子(B)、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性オリゴマー(C)、反応性モノマー(D)、および光重合開始剤(E)を含有し、シリカ微粒子(A)およびポリエチレン粒子(B)の少なくとも一方が球状粒子である光硬化性樹脂組成物により形成された塗膜を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床材や階段踏み板等のように汚れや傷がつき易い木質建材の表面を保護し、耐汚染性、耐擦傷性を向上させるために、一般にウレタン樹脂組成物や光硬化性樹脂組成物による塗膜で被覆することが行われている。
【0003】
一方、木質建材は、カウンター、手摺、ドア、収納扉等の手が触れる部位や、床材や階段踏み板等の足が接触する部位等に用いられるため、人間の皮膚が直接接触する機会が多い。そのため、近年では耐汚染性や耐擦傷性に加えて、素材感や風合い感、そして触感(滑り性、べたつき感、しっとり感、弾性感)に配慮した上質感を有する木質建材が求められている。
【0004】
従来、触感に優れた塗膜を得る方法として、弾性を有するポリウレタン樹脂微粉末、吸水性を有する皮革粉末、コラーゲン粉末、キチン粉末、キトサン粉末、ケラチン粉末、シルク粉末等の有機天然物粉末を配合した樹脂組成物を用いることが提案されている(特許文献1参照)。また、バインダー樹脂として軟質でゴム弾性を有するものを用いた樹脂組成物や、アクリル樹脂ビーズを主剤塗料中に配合した軟質系ウレタン樹脂組成物が提案されている(特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特許公開平8−199483号公報
【特許文献2】特許公開平2003−212947号公報
【特許文献3】特許公開平9−253577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の方法では、触感に優れた塗膜は得られるものの、耐汚染性や耐擦傷性が必ずしも十分ではなく、また高い意匠性が要求される木質建材には適当ではなかった。すなわち、優れた触感を有するとともに、意匠性や木質建材に必要なレベルの耐汚染性、耐擦傷性も有する木質建材とすることは困難であった。
【0006】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、優れた触感を実現し、さらに意匠性、耐汚染性、および耐擦傷性も有する木質建材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0008】
第1に、本発明の木質建材は、シリカ微粒子(A)、ポリエチレン微粒子(B)、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性オリゴマー(C)、反応性モノマー(D)、および光重合開始剤(E)を含有し、シリカ微粒子(A)およびポリエチレン粒子(B)の少なくとも一方が球状粒子である光硬化性樹脂組成物により形成された塗膜を有することを特徴とする。
【0009】
第2に、上記第1の木質建材において、シリカ微粒子(A)の体積平均粒径は、3〜30μmであることを特徴とする。
【0010】
第3に、上記第1または第2の木質建材において、ポリエチレン微粒子(B)の体積平均粒径は、3〜50μmであることを特徴とする。
【0011】
第4に、上記第1ないし第3のいずれかの光硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂組成物におけるシリカ微粒子(A)およびポリエチレン微粒子(B)の合計含有量は、光硬化性樹脂組成物の固形分に対して5〜60質量%であり、且つ、シリカ微粒子(A)と融点120℃以下のポリエチレン微粒子(B)との含有比率は、質量比で1:10〜10:1の範囲にあることを特徴とする。
【0012】
第5に、上記第1ないし第4のいずれかの木質建材において、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性オリゴマー(C)は、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレートまたはエステル変性されたエポキシアクリレートであることを特徴とする。
【0013】
第6に、上記第1ないし第5のいずれかの木質建材において、反応性モノマー(D)は、その少なくとも一部がアクリロイルモルホリンまたはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートであり、光硬化性樹脂組成物における反応性モノマー(D)の含有量は、光硬化性樹脂組成物全量に対して5〜50質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明によれば、その少なくとも一方が球状粒子であるシリカ微粒子(A)およびポリエチレン微粒子(B)を光硬化性樹脂組成物に配合することで、木質建材に触感(滑り性、さらっと感、ソフト感)および意匠性(透明性と艶消し性)を付与することができる。
【0015】
上記第2の発明によれば、シリカ微粒子(A)の平均粒径を上記の特定範囲内とすることで、上記第1の発明の効果に加え、触感および意匠性を特に優れたものとすることができる。
【0016】
上記第3の発明によれば、ポリエチレン微粒子(B)の平均粒径を上記の特定範囲内とすることで、上記第1および第2の発明の効果に加え、触感および意匠性を特に優れたものとすることができる。
【0017】
上記第4の発明によれば、シリカ微粒子(A)およびポリエチレン微粒子(B)の合計含有量および含有比率を上記の特定範囲内とすることで、上記第1ないし第3の発明の効果に加え、触感および意匠性を特に優れたものとすることができる。
【0018】
上記第5の発明によれば、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性オリゴマー(C)として、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレートまたはエステル変性されたエポキシアクリレートを用いることで、硬質の塗膜を形成することができ、上記第1ないし第4の発明の効果に加え、木質建材に必要な耐汚染性および耐擦傷性を付与することができる。
【0019】
上記6の発明によれば、反応性モノマー(D)として、アクリロイルモルホリンまたはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも一部に含むものを用いて反応性モノマー(D)を上記の特定量配合することで、上記第1ないし第5の発明の効果に加え、表面硬化性を向上させることができ、木質建材に必要な耐汚染性および耐擦傷性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明において、シリカ微粒子(A)としては、例えば、従来公知の乾式法、湿式法で製造されたものを用いることができる。
【0022】
中でも、球状粒子、特に真球度が高くシャープな粒度分布を有するものが好ましい。真球度が高いことで、滑り性の制御(ノンスリップ性)が容易になる。また、シャープな粒度分布を有することで、ソフト感を向上させることができ、さらに塗膜の艶消しに寄与しない粒子の量が少なくなることで透明感が向上し意匠性を向上させることができる。
【0023】
また、シリカ微粒子(A)は硬質であるため耐擦傷性を向上させることができる。
【0024】
球状のシリカ微粒子(A)の体積平均粒径(以下、単に「平均粒径」と記す)は、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜20μmである。平均粒径が小さ過ぎると、塗膜の艶消しに寄与しない粒子の量が増大し、単位配合量当たりの艶消し効果が低下する。そのため、艶消し効果を得るために多量の配合を要し、意匠性が低下する場合がある。また、光硬化性樹脂組成物中で凝集し易くなるため、分散が困難になり光硬化性樹脂組成物の粘度が上昇する場合がある。一方、平均粒径が大き過ぎると、塗膜外観が粗くなり、また、光硬化性樹脂組成物中で沈降し易く、ハンドリング性が低下する場合がある。
【0025】
本発明において、ポリエチレン微粒子(B)としては、従来公知の方法、例えばホモポリマーを重合して製造する方法や、高分子量ポリマーを分解して製造する方法等により得られたものを用いることができる。
【0026】
ポリエチレン微粒子(B)の融点は、好ましくは120℃以下である。融点が120℃以下であることで、さらっと感に加えて、程好いスリップ性とソフト感を付与することができる。
【0027】
ポリエチレン微粒子(B)としては、球状粒子、特に真球度が高くシャープな粒度分布を有するものが好ましい。真球度が高いことで、ソフト感をさらに向上させることができる。また、シャープな粒度分布を有することで、塗膜の艶消しに寄与しない粒子の量が少なくなり、透明感が向上して意匠性を向上させることができる。
【0028】
球状のポリエチレン微粒子(B)の平均粒径は、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μmである。平均粒径が小さ過ぎると、塗膜の触感に寄与しない粒子の量が増大する。そのため、所要の触感を得るために多量の配合を要し、意匠性や耐汚染性が低下する場合がある。また、光硬化性樹脂組成物中で凝集し易くなるため、分散が困難になり光硬化性樹脂組成物の粘度が上昇する場合がある。一方、平均粒径が大き過ぎると、塗膜外観が粗くなり、また、光硬化性樹脂組成物中で沈降し易く、ハンドリング性が低下する場合がある。
【0029】
特に本発明では、光硬化性樹脂組成物に配合するシリカ微粒子(A)およびポリエチレン粒子(B)の少なくとも一方を球状粒子とすることが重要であり、これにより、触感としての滑り性、さらっと感、およびソフト感と、意匠性としての透明性および艶消し性との全てを満足する木質建材を得ることができる。
【0030】
光硬化性樹脂組成物におけるシリカ微粒子(A)およびポリエチレン微粒子(B)の合計含有量は、光硬化性樹脂組成物の固形分に対して好ましくは5〜60質量%である。また、シリカ微粒子(A)とポリエチレン微粒子(B)との含有比率は、質量比で好ましくは1:10〜10:1の範囲である。当該含有量および含有比率をこの範囲内とすることで、触感としての滑り性、さらっと感、およびソフト感と、意匠性としての透明性および艶消し性との全てを満足する木質建材を得ることができ、さらに後述するような適切な樹脂成分との組み合わせによって耐汚染性および耐擦傷性も付与することができる。
【0031】
本発明において、光重合性オリゴマー(C)は、1分子中に2個以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する光硬化性(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られる樹脂である。光硬化性(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル酸エステル共重合体の側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した共重合系(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
光重合性オリゴマー(C)としては、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレート、およびエステル変性されたエポキシアクリレートを好ましく用いることができる。これらを用いることで、硬質の塗膜を形成することができ、木質建材に必要な耐汚染性および耐擦傷性を付与することができる。
【0033】
光硬化性樹脂組成物における光重合性オリゴマー(C)の含有量は、光硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。当該含有量が少な過ぎると、光硬化性樹脂組成物による塗膜の強度が十分でない場合がある。一方、当該含有量が多過ぎると、塗膜が硬すぎて脆くなる場合がある。
【0034】
本発明において、反応性モノマー(D)は、光重合性オリゴマー(C)と反応性を有するものであり、光硬化性樹脂組成物の粘度や架橋密度を調整する目的で用いることができる。反応性モノマー(D)としては、単官能モノマー、2官能モノマー、または多官能モノマーを用いることができ、ラジカル重合性のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物を好ましく用いることができる。
【0035】
単官能モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシジブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
2官能モノマーの具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
多官能モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリオキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(ヘキサ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
反応性モノマー(D)の含有量は、光硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。当該含有量が少な過ぎると、光硬化性樹脂組成物の粘度が高く、木質建材への塗布が困難となる場合がある。一方、当該含有量が多過ぎると、十分な塗膜強度が得られない場合がある。
【0039】
また、反応性モノマー(D)のうち、少なくとも一部に高Tgモノマーを含有させることが好ましい。高Tgモノマーを含有させることで、表面硬化性を向上させることができ、木質建材に必要な耐汚染性および耐擦傷性を付与することができる。
【0040】
高Tgモノマーの具体例としては、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルホリン、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、皮膚刺激性(P.I.I)が低いアクリロイルモルホリン、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。これらの配合量は、光硬化性樹脂組成物全量に対して5〜50質量%である。
【0041】
本発明において、光重合開始剤(E)の具体例としては、ベンゾフェノン型、ベンゾイン型、アセトフェノン型、チオキサントン型、アシルホスフィンオキサイド型の光重合開始剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、反応性の点からは、アセトフェノン型の2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、長波長まで吸収端が伸びているアシルホスフィンオキサイド型のモノアシルホスフィンオキサイド、ビスアシルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0042】
光重合開始剤(E)の含有量は、光硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%である。当該配合量が少な過ぎると、塗膜の硬化が不十分となり耐汚染性が低下する場合がある。一方、当該配合量が多過ぎると、塗膜の耐候性が悪く黄変する場合がある。
【0043】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、上記の必須成分(A)〜(E)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内において添加剤(F)を配合することができる。添加剤(F)の具体例としては、イソシアネート、消泡剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等が挙げられる。
【0044】
その他、添加剤(F)として、ポリエチレン微粒子(B)以外の樹脂ビーズを配合することもできる。樹脂ビーズの具体例としては、ウレタン樹脂系ビーズ、アクリル樹脂系ビーズ、ポリスチレン樹脂系ビーズ、シリコン樹脂系ビーズ等が挙げられる。中でも、安価で耐汚染性が高いアクリル樹脂系ビーズや触感が優れるウレタン樹脂系ビーズが好ましい。
【0045】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、適量の有機溶剤を配合してもよいが、作業性、安全性、環境汚染等を考慮した場合、有機溶剤を配合しない無溶剤型である方が望ましい。
【0046】
本発明の光硬化性樹脂組成物を木質基材に塗布し、次いで塗膜を硬化することで、木質建材を得ることができる。木質建材の具体例としては、床材、階段踏み板、カウンター、手摺、ドア、収納扉、框、造作、建具枠等が挙げられる。
【0047】
光硬化性樹脂組成物を塗布する木質基材は、突き板貼りであってもよく、無垢材であってもよい。また、木質基材は、素材感や風合い感(外観、肌触り感)を損なわない範囲内で、必要に応じて従来公知の目止処理、着色処理等を予め表面に施すことができる。また、下塗り塗料、さらには中塗り塗料を塗布することもできる。
【0048】
下塗り塗料および中塗り塗料は、一般に塗料を塗布する際に適用されている手段、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装、ロールコーター、およびフローコーター等により塗布することができる。
【0049】
下塗り塗料および中塗り塗料の具体例としては、水系塗料、アクリルラッカー、ポリウレタン塗料、ポリエステル塗料、紫外線硬化型のエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができ、水系エマルジョン型、溶剤型、無溶剤型のいずれを用いることもできるが、作業性、環境性の点からは無溶剤型の塗料が好ましい。
【0050】
下塗り塗料および中塗り塗料の塗布量は、木質基材の種類およびその処理方法により適宜に調節されるが、素材感や風合い感(外観、肌触り感)を損なわない点からは、固形分換算で好ましくは合計20〜110g/m2、より好ましくは30〜80g/m2である。当該塗布量が少な過ぎると、製造した木質建材の耐久性が低下する場合がある。一方、当該塗布量が多過ぎると、導管が埋まり素材感や風合い感を損ねてしまう場合がある。
【0051】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、一般に塗料を塗布する際に適用されている手段、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装、ロールコーター、およびフローコーター等により木質基材に塗布することができる。中でも、木質基材の形状への追従性や塗布処理速度の点からは、ロールコーター塗装、フローコーター塗装が好ましい。
【0052】
なお、塗布直前に光硬化性樹脂組成物を30〜60℃に予熱しておき、さらに塗布直前の木質基材の表面を30〜70℃に予熱しておくことが、良好な塗膜を形成する上で有効である。
【0053】
木質基材への光硬化性樹脂組成物の塗布量は、固形分換算で好ましくは5〜40g/m2、より好ましくは9〜30g/m2である。塗布量が少な過ぎると、木質建材の耐汚染性が低下する場合がある。一方、塗布量が多過ぎると、木質基材の素材感や風合い感等の意匠性を損ねてしまう場合があり、さらに触感も損ねてしまう場合がある。
【0054】
光硬化性樹脂組成物を木質基材に塗布した後、塗膜を硬化する方法としては、有電極または無電極ランプによる紫外線照射や電子線照射を用いることができる。中でも、有電極または無電極ランプによる紫外線照射が好ましい。紫外線照射を適用することで、木質建材の耐汚染性および耐擦傷性を向上させることができる。
【0055】
紫外線照射により塗膜を硬化する場合、紫外線ランプの出力は、好ましくは24〜240W/cm、より好ましくは80〜240W/cmである。紫外線照射量は、好ましくは80〜500mJ/cm2、より好ましくは200〜400mJ/cm2である。紫外線照射は、大気、窒素雰囲気、炭酸ガス雰囲気等で行うことができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
1.光硬化性樹脂組成物の調製
実施例、比較例、および参考例で用いた各成分は以下の通りである。
・シリカ微粒子(A)
サイロスフィアC−1510(球状粒子、平均粒径10μm、富士シリシア化学 (株)製)
P−510(非球状粒子、平均粒径10μm、水澤化学工業(株)製)
・ポリエチレン微粒子(B)
フロービーズLE−1080(球状粒子、平均粒径11μm、融点105℃、住友精
化(株)製)
TEXTYRE U.F(非球状粒子、平均粒径18μm、融点166℃、シャム ロック社製)
CERAFLOUR991(非球状粒子、平均粒径3.5μm、融点105℃、BY
K社製)
・光重合性オリゴマー(C)
UA−6LPA(1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレー
ト、新中村化学工業(株)製)
EB−3500(エポキシアクリレート、ダイセル・サイテック(株)製)
・反応性モノマー(D)
ライトアクリレートDPE−6E(共栄社化学(株)製)
アロニックスM−309(東亞合成(株)製)
アロニックスM−220(東亞合成(株)製)
L−C9A(第一工業製薬(株)製)
ACMO((株)興人製)
4−HBA(大阪有機化学工業(株)製)
・光重合開始剤(E)
IRGACURE184(Ciba社製)
上記各成分を表1の配合量(質量部)で配合し、均一に混合することにより光硬化性樹脂組成物を調製した。
2.木質建材の製造
実施例1〜6、比較例1〜3では次の手順で木質建材を製造した。厚さ12mmのラワン合板と、厚さ0.3mmのナラ材の突き板とからなる木質基材に、着色ステインをロールコーターで塗布し、80℃で1分乾燥後、下塗り塗料および中塗り塗料を固形分換算で合計70g/m2塗布してUV硬化させた。次いで、上塗り塗料として、上記のようにして調製した光硬化性樹脂組成物を、ロールコーターにより固形分換算で10g/m2塗布し、無電極紫外線照射ランプ(出力:120mW/cm、照射線量:350mJ/cm2)により塗膜を硬化させて木質建材を得た。
【0057】
上記のようにして得られた木質建材について、下記の評価を行った。
[触感]
(滑り性)
JIS A5705付属書に定める「床材の滑り試験方法(斜め引張型)」に従い、素足で歩行した場合の「滑り抵抗係数(C.S.R)」を用いて下記の基準により評価した。
○: 滑り抵抗係数が0.45〜0.9の範囲内
×: 滑り抵抗係数が0.45未満または0.9超
(さらっと感)
木質建材の塗膜形成面を素足で歩行したときの触感を下記の基準により評価した。
○: 歩行時、程好いさらっと感を感じた。
△: 歩行時、ややべとつき感を感じた
×: 歩行時、べとつき感を感じた。
(ソフト感)
木質建材の塗膜形成面を素足で歩行したときの触感を下記の基準により評価した。
○: 歩行時、程好いソフト感を感じた。
△: 歩行時、ややざらつき感や硬さを感じた
×: 歩行時、ざらつき感や硬さを感じた。
[意匠性(外観)]
GM−60(コニカミノルタ製)により光沢値の測定を行った。なお、測定条件は、入射角60度、反射角60度とした。
[耐汚染性]
(耐カレー染色性試験)
木質建材の塗膜にカレー粉(ヱスビー食品(株)製)を湯で溶いたもの(濃度10%)を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、色差計(CM2600:コニカミノルタセンシング(株)製)を用いて、試験前後の表面のLab値を測定し、色差ΔEを算出した。そして下記の基準により評価した。
○: ΔE≦3.0
×: 3.0<Δ
(耐アルカリ性試験)
木質建材の塗膜に5%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、外観状態より下記の基準により評価した。
○: 外観異常なし
×: 塗膜に白化あり
(耐酸性試験)
木質建材の塗膜に1%塩酸%水溶液を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、外観状態より下記の基準により評価した。
○: 外観異常なし
×: 塗膜に白化あり
[耐擦傷性]
(耐摺動性試験)
1.0kgの荷重で雑巾掛けを往復10万回行った後の外観を目視で判定した。
○: 外観異常なし
×: 塗膜に白化または傷あり
評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1より、シリカ微粒子(A)およびポリエチレン微粒子(B)を含有し、これらの少なくとも一方が球状粒子である光硬化性樹脂組成物を用いた実施例1〜6では、触感、意匠性、耐汚染性、耐擦傷性の全てに優れていた。特に、シリカ微粒子(A)およびポリエチレン微粒子(B)の両方が共に球状粒子である光硬化性樹脂組成物を用いた実施例1〜3では、特に触感が優れていた。
【0060】
一方、ポリエチレン微粒子(B)を配合しなかった比較例1では、触感のうち滑り性、さらっと感が低下した。
【0061】
シリカ微粒子(A)を配合しなかった比較例2では、触感のうち滑り性が低下した。
【0062】
シリカ微粒子(A)およびポリエチレン微粒子(B)がいずれも球状粒子でない比較例3では、触感のうちソフト感が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ微粒子(A)、ポリエチレン微粒子(B)、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性オリゴマー(C)、反応性モノマー(D)、および光重合開始剤(E)を含有し、シリカ微粒子(A)およびポリエチレン粒子(B)の少なくとも一方が球状粒子である光硬化性樹脂組成物により形成された塗膜を有することを特徴とする木質建材。
【請求項2】
シリカ微粒子(A)の体積平均粒径は、3〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載の木質建材。
【請求項3】
ポリエチレン微粒子(B)の体積平均粒径は、3〜50μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の木質建材。
【請求項4】
光硬化性樹脂組成物におけるシリカ微粒子(A)およびポリエチレン微粒子(B)の合計含有量は、光硬化性樹脂組成物の固形分に対して5〜60質量%であり、且つ、シリカ微粒子(A)とポリエチレン微粒子(B)との含有比率は、質量比で1:10〜10:1の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の木質建材。
【請求項5】
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性オリゴマー(C)は、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレートまたはエステル変性されたエポキシアクリレートであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の木質建材。
【請求項6】
反応性モノマー(D)は、その少なくとも一部がアクリロイルモルホリンまたはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートであり、光硬化性樹脂組成物における反応性モノマー(D)の含有量は、光硬化性樹脂組成物全量に対して5〜50質量%であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか一項に記載の木質建材。

【公開番号】特開2010−143153(P2010−143153A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324649(P2008−324649)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】