説明

木造住宅高断熱壁施工法

【課題】壁断熱厚みが200mm以上高断熱住宅建築において、壁厚み増加による屋内側面積減少をせずに完結できる工法を提供する。
【解決手段】基礎割増部21を基礎構築段階で同時に一体形成する。次に突出部保持縦柱7、補強板9の組み合わせを別途作成する。このように製作した突出部保持縦柱7、補強板9の組み合わせが基礎1上に固設した土台2の上に立設した複数の柱3に接合される。底部には断熱材保持底板14を固定する。これらを組み合わせて形成した空間に断熱材20を充填して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造住宅の高断熱化において、断熱壁厚増に伴い屋内側空間が縮減する従来の工法を覆すもので屋内側空間を縮減することなく、且つコスト低減化をはかることを可能とした工法に係わる分野。
【技術の背景】
【0002】
木造住宅壁断熱構造は、屋内側(4)に内壁がありその外側に防湿フイルム(6)を張設し、防湿フイルム(6)の外側に断熱材充填部を形成し、その外側に防風透湿フイルム(18)を張設し、更にその外側に胴縁(11)により通気層(13)を構築する。通気層(13)の外側には、外壁パネル(19)、(例えばサイデイグ材)を以って掩覆するのが一般的方法であった。〔図1〕は、その構成を示している。
【0003】
住宅建設における木造住宅建築においては、堅固な基礎(1)を構築し、その上に土台(2)をボルトナット、金具等で堅固に固設し、その上に柱(3)、間柱等を構築して木造住宅の骨組みを構築する。
【0004】
新設住宅の壁断熱は近年益々高断熱化の傾向にあり、そのためには断熱材の性能を上げるか、断熱厚みを厚くする方法が最適と判断されている。しかし、前者製品は断熱性能アップに限界があり、今後壁断熱性能向上には、断熱材密度増加と厚み増加、及び施工技術向上による方法をとるしかなかった。〔図2〕は、従来から行われてきた工法を示しているが、これは屋内側(4)方向に内壁(5)を移動する設計によって断熱層壁厚みを創成する方法であり、必然的に屋内側(4)空間を縮減することになり、屋内側(4)空間等減少が大きな欠点であった。
【0005】
一方、断熱厚みを増加する場合、屋外側(12)方向に断熱材充填部(16)厚み増加分を移動することは、60mm厚を限度として断熱材付加により可能であったが、それ以上は技術的に不可能であった。その理由は、最も条件のよい断熱材として発泡スチロール板材(例えば、スタイロフォーム)を付加する例では、当該断熱材を柱に固定する必要があって、さらに断熱材を貫通して外壁材を柱に固定する事になり、固定するための釘の長さが長くなるために、外壁材荷重を維持できない事がわかっていた。躯体に打ち込んで断熱材保持するには、釘長さは断熱材厚みの2倍を必要とする。従って、断熱材最大厚み60mmであるから、使用出来る釘は120mmを最大とすることになる。釘の半分以下の壁厚増加しかできなかった。即ち、従来法では、外壁側200mm以上の高断熱壁構築は不可能であって、本高断熱化の目的を達成する事ができなかった。
【0006】
本発明で表現している高断熱壁とは、200mm壁厚以上のものをいい、一般的には200mm〜500mmの厚みの断熱層を有する壁であって、ロックウール、グラスウール断熱材のロール品、板状品、それらの綿塊状物及びセルロース解繊維物(以下ブローイング用原綿という)を断熱材充填部(16)に充填施工するものである。高断熱壁は、これら断熱材の充填密度に左右され、当今では、高断熱壁構築においては、最も施工性、施工スピード、安定性からブローイング原綿を吹き込む工法(以下ブローイング工法という)が多用されている。EU諸国のパッシブハウスでは、壁断熱性能は0.1w/mK以下と規定されており、日本国内の次世代推奨等基準(1.6w/mK以下)と比較して極めて厳しい性能が要求されている。熱伝導率λ=0.036w/mkの断熱材を使用しても断熱材厚は360mmに達する。我が国においても今後益々住宅の高断熱性能、耐震性、結露防止が求められてゆく方向にあり、断熱工法としては、断熱厚に自由に対応できるブローイング工法が採用されることが予測できる。そのために、屋内側(4)空間を狭めない高断熱壁構築工法が開発されれば住宅業界の福音となるであろう。
【0007】
前述のごとく、今後わが国においても高断熱化、高気密化の要望は益々高まり、EU諸国並みの0.1w/mK以下の性能が要求される事は前述の通りである。即ち、高断熱化は、冷暖房、エネルギー消費量低減、炭酸ガス排出規制が住宅建設での必須条件となるからである。この場合、壁断熱厚200mm以上の断熱厚みが要求されると予測され、従来の工法では屋内側(4)空間を保持し、かつ現状のコストの上昇を防止し、かつ達成することは不可能であり、何らかの方法が求められていた。
【0008】
又、わが国は地震多発国であり、耐震性住宅供給が望まれている。住宅の強度はその構造設計、使用する資材の強度、或いは上部重量に関係して強度が求められている。資材の強度は、使用する木材強度、釘或いは金具類の本数或いは形状、瓦重量、軸組方法などが影響する。すでに、従来法では、350〜450mmの断熱厚とする試みも行われているが、屋内面積を縮減しないですむ方法は提供されていない。この屋内側面積縮減の方法は、高断熱住宅普及を遅延させる要因ともなっていた。
【0009】
この従来法による高断熱化は、断熱厚みを割増しした分、内壁(5)が住宅内側面積を縮減することになることはすでに述べた。即ち、内壁が屋内側(4)に移動する形式であるために屋内側(4)が狭くなる大きな欠点を持っていた。このことは屋内有効面積の減少であり、同一居住面積を保持するためには建設床面積を増加させる必要があり、建設費コストアップの重要な要因となっていた。例えば、100mm厚壁断熱を350mm厚壁断熱とすれば壁1面につき従来仕様より250mm屋内側空間が狭くなる事であり、大きな損失となる事が明白であった。
【0010】
このような事から従来の躯体構築価格と大差ない施工法であって、且つ高断熱性、高気密性、高耐震強度の住宅であって高断熱化により屋内側(4)空間を減じない高断熱壁構築方法が要望されていた。
【特許文献1】「特開2008−127854」
【非特許文献1】「北方型住宅の熱環境計画」北海道リホームセンター編
【非特許文献2】[外断熱仕上げシステムのアイルランド&英国における耐用年数評価」IBPリポート 2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、〔技術の背景〕に述べた従来の方法では解決できなかった高断熱化のための断熱壁厚増加とともに屋内側空間を縮小せざるを得ない問題点に関し、壁断熱厚増加に際しても屋内側空間を縮小せず、物性面での技術的問題点を解決した優れた施工法の提供を課題とした。
【発明が解決するための手段】
【0012】
課題を解決する手段は、次のとおりである。〔図1〕〔図2〕〔図3〕〔図4〕をもって説明する。
〔図1〕は、通常の断熱法であって、地域によって断熱材(20)の厚みは異なっている。例えば、北海道においては100〜140mm厚が通常仕様であり、一般的住宅の断熱に採用されている。ブローイング法、マット或いは板状品の充填法が主力であり、使用されている断熱材としてはロックウール、ガラス繊維、セルロール繊維などのそれら方法に適した製品が採用されている。屋内側(4)には、内壁(5)、その外側に防湿フイルム(6)が構築されており、基礎(1)上に固設した土台(2)上に垂直に配置固定した柱(3)がある。防湿フイルム(6)は土台(2)表面を覆い、内壁(5)屋内側と断熱材充填部(16)間の空気及び水蒸気移動を遮断している。断熱材充填部(16)には、断熱材(20)を充填して設計どおりの厚みとしている。特に、ブローイング法では、吹き込み時の飛散防止のためにネット状シートをもって断熱材充填部(16)を構築してから断熱材吹込みを行うのがほとんどであった。防湿フイルム(6)、防風・透湿フイルム(18)柱(3)で囲まれた空間として断熱材充填部(16)が形成され、その空間に充填断熱材(20)が充填されて屋内側(4)に温度変化の影響を防御するようにしている。このような条件下での高断熱壁構築には、ロール状、マット状断熱材では複数枚の重ね施工が必要となり、層間に空隙部分が発生する危険が強まった。従って、高断熱壁構築には、空隙部を発生させないブローイング原綿を使用してのブローイング工法が最適であり最も好ましい。さらに、充填密度が高く、断熱性能の安定したロックウールが目的達成に好ましい。
【0013】
前述したが、従来法では断熱材充填部(16)の厚みを増加せしめるために、〔図2〕に示すように基礎(1)上を屋内側(14)方向に断熱材充填部(16)を増加せしめる方法をとらざるを得なかった。即ち、高断熱化による断熱層厚み増加は、内壁(5)が屋内側(4)方向に移動する事であり、その分、屋内側(4)空間が狭められる事になる欠点を持っていた。特に居住空間の縮減は居住者にとり家具寸法、威圧感などから耐えられなかった。例えば、断熱材充填部(16)が100mm厚から450mm厚となると内壁(5)が従来よりも350mm屋内側(4)に移動することでありその分空間が縮減することになる。
【0014】
これらの問題点を解決するために、本発明者は、以下説明するような屋内側(5)空間を縮減することなく、従来の100〜140mm断熱厚施工原理の全く異なった方法を発明し、高断熱住宅化を容易に可能とする方法として提供する事ができた。即ち、〔図4〕に示すように、突出部保持縦柱(7)を保持するための基礎割増部(21)を30mm以上従来の基礎(1)に割増し、同時に形成して基礎面積をわずかに増加せしめる事により突出部を作る事で問題点を解決する事を課題とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果は、屋外側(12)に突出部を設け、上部からの加重を受け止めるように突出部保持縦柱(7)と補強板(9)を強固に一体化し、その突出部保持縦柱(7)を基礎割増部(21)で保持するようにして断熱材充填部(16)を構築する事により、屋内側(4)空間を狭めることなく高断熱住宅壁を安価に建築できる工法を提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態については、〔図3〕〔図4〕〔図5〕をもってその形態を示し、その詳細を以下説明する。
【0017】
〔図3〕〔図4〕は、断熱材充填部構造側面図である。本発明が対応する高断熱住宅壁の断熱材厚みは200mm以上であるが、本発明の応用として屋内側(4)空間を広げる目的で200mm以下の通常壁断熱においても適用する事が可能である。
先ず、基礎割増部(21)を基礎構築段階で同時に一体化形成する。次に突出部保持縦柱(7)、補強板(9)の組み合わせを別途作成する。補強板(9)は、突出部保持縦柱(7)長さ方向に2以上を固設する。その補強板(9)を固設する方法は、〔図3〕突出部保持縦柱(7)の側面に補強板(9)を固設する方法、或いは〔図6〕のごとく突出部保持縦柱(7)間に固設する方法などが代表的であるが、補強を目的として効果のある方法ならば採用できる。又、補強板(9)形状は、台形が代表的であるが、補強目的を達成できるならば他の形状も採用できる。
その間隔は、好ましくは1200mm以下の間隔で配置作成するのがよい。固設の方法は、釘をもって行うのが一般的であるが、同時に接着剤を併用して高強度とすることが好ましい。補強板(9)の形状は台形が最もよく突出部保持縦柱(7)に固定する側となることが好ましい。その材質は、木質系、或いはプラスチックス製などでよい。又、緊結するための釘は、強固に固定できるものであればよく、さらに接着剤を同時使用することも出来る。接着剤としては、熱硬化性樹脂接着剤であって、高強度を発揮するものが好ましく、その例としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルウレタン系樹脂などからなる接着剤があげられる。
【0018】
このようにして製作した突出部保持縦柱(7)、補強板(9)の組み合わせは、基礎(1)上に固設した土台(2)の上に立設した複数の柱(3)に釘(10)単独、或いは〔図6〕、〔図7〕のごとく接着剤併用によって接合接着すると高強度が得られる。さらに、その後底部には断熱材保持底板(14)を同様に釘(10)、接着剤をもって固定し、断熱材荷重を支える。このようにすれば、突出部保持縦柱(7)、補強板(9)、断熱材保持底板(14)に囲まれた空間が形成できる。これら組み合わせで形成した空間が断熱材充填部(16)であり、この空間に断熱材が充填される。断熱材重量は、ブローイング工法の例では、最大荷重20kg/m以下であり、補強板(9)1個当り釘による保持力が80kg以上であることから極めて確実な工法であることが証明されている。従って、さらに接着剤併用では、補強板(9)1個当り120kg以上の強度が保障されており極めて安全であることを本発明者は証明した。
【0019】
本工法では、断熱材充填後に胴縁(11)で外壁パネル(19)間に通気層を設けるのが好ましい。この通気層は、室内から透過してくる水蒸気を屋外に拡散して壁内結露を防止することを目的としている。尚、その屋内側には防風・透湿フイルムが張設してあり外部からの水・風浸入に対処する事が好ましい。
【0020】
〔図5〕は、これら施工に関する図を斜視図として示した。図のように突出部が屋外側に突出し、屋内側面積縮減に影響を及ぼしていない事が明らかである。このようにすれば、小規模の基礎割増(21)、補強板(9)設置、突出部保持縦柱(7)などにより簡単に高断熱壁を構築することが可能であることを発明した。
【実施例1】
【0021】
以下、実施例により説明するが、その主旨を超えない限り下記実施例に限定されるものでない。
本発明者は、当該発明による高断熱木造住宅建設を北海道小樽市において実践した。
住宅建設においては、基礎構築から開始される。基礎は、小樽地区の凍結深度に配慮し、土盤表面から60cm下方を底部として構築した。その際に、通常の基礎建築位置よりも突出部保持柱を支える幅である5cm屋外方向に拡大して構築した。構築後、コンクリートの養生のために28日放置した後、土台の設置を行った。土台は、コンクリート基礎と係合を目的として埋め込んだ金具突出部ボルトナット方式にて一体化緊結した。次いで柱、梁、間柱など軸組木造住宅建築で基本となる作業を完了した。次に、本発明による壁断熱工法を実施するに当たり、突出部保持縦柱、補強板組み合わせを前もって梯子状に製作した。突出部保持縦柱は38mm×38mm松角材であって長さ3600mmのものを使用し、長さ方向に補強板を600mm間隔で釘及び接着剤をもって固着した。釘は、突出部保持縦柱から補強板方向に埋設するように打設する事によって完結せしめた。接着剤は、突出部保持縦柱及び補強板の接触面に充分に塗布してあり、完全に硬化するまで常温放置した。接着剤は、不飽和ポリエステル樹脂系であって耐久性に配慮してイソフタール酸系のもの(ユーピーボンドWタイプ)であって、常温ゲル化時間30分のものを使用した。接着剤塗布、釘止めによる部材製作後、48時間放置して取り付けに採用した。取り付け方法は、突出部保持縦柱と補強板と接合部を避けて、釘をもってそれぞれの柱に打設固定した。
次にその下部にはその屋内側の一部が基礎割増部に乗るように断熱材保持底板材を固定した。その断熱材保持底板材は、本実施例ではフェノール系接着剤により固化成型した耐水性ボードを使用した。このようにして断熱材ブローイング微細繊維が構築した断熱材充填部(空間)から作業場への飛散を防ぐためにポリエチレン製ネットを張設し、ブローイング装置をもって断熱材を充填した。その後構築した通気層屋外側に外壁を構築し断熱材保持底板材とも緊結して高断熱壁を構築した。
以上のように、本工法では、屋内側面積を減ずることなく高断熱壁構築が可能であり、且つ基礎部を5cm以下の割増のみで完結できた事であり、且つ断熱材充填部構築部材を別途製作し取り付ける効率的方法とした事で施工コスト上昇の欠点を排除する事ができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】壁断熱厚み140mm以下断熱側面図(従来法)
【図2】壁断熱厚み200〜450mm高断熱化工法側面図(従来法)
【図3】本発明断熱材充填部構造側面図
【図4】本発明断熱材充填壁側面図
【図5】本発明断熱材充填部構造斜視図
【図6】突出部梯子状部材側面図
【図7】突出部梯子状部材の取付け側面図
【符号の説明】
【0023】
1基礎
2土台
3柱
4屋内側
5内壁
6防湿フイルム
7突出部保持縦柱
8基礎面
9補強板
10釘
11胴縁
12屋外側
13通気層
14断熱材保持底板材
15水切り
16断熱材充填部
17断熱板
18防風・透湿フイルム
19外壁パネル
20断熱材
21基礎割増部
22土盤
23接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高断熱住宅建築における壁断熱材充填部構築において、コンクリート等基礎地上部を屋外側に割増してなる高断熱壁充填部構築の工法。
【請求項2】
〔請求項1〕の形成において、補強板と突出部保持縦柱の組み合わせによる梯子状部材を製作し、当該部材を土台上に固定した柱、間柱、補強材などに釘、ねじ、金具、接着剤などを用いて固着するか、切り込み法により楔着する事により取り付けて断熱層充填部を構築する工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−248873(P2010−248873A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113978(P2009−113978)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(598023676)
【出願人】(500559972)日本ロックウール株式会社 (3)
【出願人】(509128915)
【Fターム(参考)】